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  • 特開-熱伝導性複合粒子及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004420
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】熱伝導性複合粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20230110BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C01B21/064 M
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106061
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】591051335
【氏名又は名称】河合石灰工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109597
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 章
(72)【発明者】
【氏名】木方 宏和
(72)【発明者】
【氏名】太田 康博
(72)【発明者】
【氏名】青木 宣和
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB09
4G072CC14
4G072GG02
4G072MM02
4G072MM40
4G072QQ01
4G072UU01
4G072UU09
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】窒化ホウ素にシリカを被覆させることにより、樹脂との親和性を向上させて樹脂組成物への充填量を高め、樹脂組成物に高い熱伝導性を付与できる熱伝導性複合粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱伝導性複合粒子は、窒化ホウ素の表面にシリカが被覆されてなる熱伝導性複合粒子であって、前記シリカの被覆量は前記窒化ホウ素の質量に対し、0.5質量%未満である。また、当該熱伝導性複合粒子は、窒化ホウ素と沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、乾燥シリカから選ばれる1以上のシリカを乾式法でメカノケミカル処理することにより製造できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素の表面にシリカが被覆されてなる熱伝導性複合粒子であって、前記シリカの被覆量は前記窒化ホウ素の質量に対し、0.5質量%未満であることを特徴とする熱伝導性複合粒子。
【請求項2】
前記シリカの被覆量が窒化ホウ素の質量に対し、0.3質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性複合粒子。
【請求項3】
窒化ホウ素と沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、乾燥シリカから選ばれる1以上のシリカを乾式法でメカノケミカル処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記シリカが沈殿法シリカであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性複合粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ホウ素の表面に所定量のシリカを被覆することにより樹脂組成物への充填量を高め、樹脂組成物に高い熱伝導性を付与できる熱伝導性複合粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスやIC等の電気・電子機器の小型化や軽量化に伴い、電子部品の高密度実装化が進んでおり、電子部品からの発熱が増大する傾向にある。発生した熱が電子部品に蓄積されると耐久性に悪影響が及ぶため、発生した熱を電子部品から効率よく放出できる高熱伝導性フィラーのニーズが高まっている。
高熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、マグネシア等が挙げられる。これらの中でも、窒化ホウ素は熱伝導率が高い、絶縁性を有する、比重が小さい等の優れた特性を示すが、粒子の平板面に官能基がないため、樹脂との親和性が低く、樹脂組成物への充填量が低いという課題がある。
そのため、窒化ホウ素に他の材料を複合させることにより、樹脂との親和性を向上させて充填量を高め、熱伝導率の高い樹脂組成物を提供することを可能とする熱伝導性複合粒子が望まれている。
【0003】
従来、窒化ホウ素に他の材料を複合した熱伝導性複合粒子についての提案がある。例えば、窒化ホウ素にシリカが被覆した熱伝導性複合粒子(第1フィラー)の開示がある(特許文献1参照)。また、板状粒子または棒状粒子である熱伝導性フィラーと、無機粒子とを混合し、メカノケミカル処理を行って得られる熱伝導性複合粒子についての開示があり、板状粒子及び無機粒子には窒化ホウ素が包含される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-2830号公報
【特許文献2】特開2015-214639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の窒化ホウ素にシリカを被覆した熱伝導性複合粒子は、樹脂組成物に充填した窒化ホウ素が加水分解して電子部品、基板あるいはヒートシンクなどを腐食するおそれがあるため、窒化ホウ素を加水分解されにくいシリカで被覆し耐湿性を改善したものであり、樹脂との親和性を向上させて樹脂組成物への充填量を高めることについては記載も示唆もない。また、メカノケミカル処理により窒化ホウ素にシリカを被覆させることについては記載も示唆もない。特許文献2に開示の熱伝導性複合粒子は、コアとなる無機粒子の表面に板状粒子または棒状粒子が結合し、機械的強度により充填された成形体の熱伝導率の異方性を低減させるもので、樹脂との親和性を向上させて樹脂組成物への充填量を高めることについては記載も示唆もない。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、窒化ホウ素にシリカを被覆(複合)させることにより、樹脂との親和性を向上させて樹脂組成物への充填量を高め、樹脂組成物に高い熱伝導性を付与できる熱伝導性複合粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するため、種々検討を重ね本発明に想到した。すなわち、本発明は、窒化ホウ素の表面にシリカが被覆されてなる熱伝導性複合粒子であって、前記シリカの被覆量は前記窒化ホウ素の質量に対し、0.5質量%未満であることを特徴とする熱伝導性複合粒子に関する。当該発明において、シリカの被覆量は窒化ホウ素の質量に対し、0.3質量%以下でもよい。
【0008】
また、本発明は、窒化ホウ素と沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、乾燥シリカから選ばれる1以上のシリカを乾式法でメカノケミカル処理することを特徴とする上記の熱伝導性複合粒子の製造方法に関する。当該発明において、シリカは沈殿法シリカでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱伝導性複合粒子は、樹脂との親和性が向上させられているため、樹脂組成物への充填量が高められ、樹脂組成物に高い熱伝導性を付与でき有用である。
【0010】
本発明の熱伝導性複合粒子の製造方法は、窒化ホウ素とシリカを乾式法でメカノケミカル処理するだけで行えるので、熱伝導性複合粒子を簡易に製造でき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の複合粒子のSEM写真である。
図2】比較例1の窒化ホウ素のSEM写真である。
図3】比較例2のメカノケミカル処理された窒化ホウ素のSEM写真である。
図4】比較例3の複合粒子のSEM写真である。
図5】実施例1の複合粒子が樹脂に充填された場合と比較例2の窒化ホウ素が樹脂に充填された場合を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱伝導性複合粒子は、窒化ホウ素とシリカをメカノケミカル処理することにより製造できる。窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素でも立方晶窒化ホウ素でもよいが、熱伝導性に優れる六方晶窒化ホウ素が好ましい。また、シリカは、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、乾燥シリカから選ばれる1以上を用いることができるが、二次粒子の凝集性が低い(凝集がほぐれ易い)という点及び易解砕性という点から沈殿法シリカを用いることが好ましい。
【0013】
メカノケミカル処理とは、対象となる原料にせん断、圧縮、摩擦、曲げ、衝撃等の機械的エネルギーを与え、原料の表面を改質する処理方法である。メカノケミカル処理の手段は特に限定されないが、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等のメディア分散機やジェットミル粉砕機等の公知の手段を用いることができる。メカノケミカル処理の処理時間や処理条件等は、使用する手段に応じて適宜設定することができる。
【0014】
また、メカノケミカル処理は、分散媒を用いる湿式法と分散媒を用いない乾式法があるが、本発明の熱伝導性複合粒子の製造は乾式法のメカノケミカル処理が好ましい。
【0015】
本発明の熱伝導性複合粒子におけるシリカの被覆量は、窒化ホウ素の質量に対し、0.5質量%未満である。シリカの被覆量が0.5質量%以上になると、シリカが増加して複合粒子が嵩高くなり、充填する樹脂組成物の粘度が高められるために練込限界量が減少し、樹脂組成物に充填される窒化ホウ素も減少するからである。また、シリカは熱伝導率が低いため、シリカが増加することにより充填する樹脂組成物の熱伝導率の低下を招くからである。
【0016】
また、本発明の熱伝導性複合粒子におけるシリカの被覆量は、窒化ホウ素の質量に対し、0.3質量%以下であることが好ましく、0.3質量%がより好ましい。シリカの被覆量が0.3質量%以下になると、練込限界量が増加し、樹脂組成物に充填される窒化ホウ素も増加するからである。
【0017】
本発明の熱伝導性複合粒子は、樹脂組成物、特に基板、半導体パッケージ又は工業用樹脂材料に充填し、熱伝導性フィラーとして使用することができる。ここで、工業用樹脂材料とは、耐食、耐薬品性、加工性(特に切断、曲げ、溶接)等が要求される樹脂材料で例えば工業用プレートを挙げられる。樹脂組成物に用いられる樹脂は特に限定されないが、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ナイロン等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、アラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の汎用樹脂等を例示できる。
【実施例0018】
次いで、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
〔実施例1〕(シリカの被覆量が0.3質量%の複合粒子)
窒化ホウ素(グレード名:HS、エアブラウン株式会社製)300gと沈殿法シリカ(グレード名:Nipsil LP、東ソー株式会社製)0.9gを高速混合造粒機により高速撹拌させること(メカノケミカル処理、乾式法)で図1に示す窒化ホウ素の質量に対してシリカの被覆量が0.3質量%の複合粒子を得た。高速混合造粒機の容積は2Lで、撹拌速度5000rpm、混合時間は20分である。図1に示す複合粒子のSEM写真は、得られた複合粒子をカーボンテープの上に張り付け、走査型電子顕微鏡(装置名:日本電子株式会社製、JSM-7500FA)を用いて複合粒子の表面及び形状を観察したものである。以下の図2図4も同様である。
【0020】
〔比較例1〕(未処理の窒化ホウ素)
窒化ホウ素(グレード名:HS、エアブラウン株式会社)をそのまま使用した。図2に示すように、窒化ホウ素の表面は平滑である。
【0021】
〔比較例2〕(メカノケミカル処理された窒化ホウ素)
沈殿法シリカを添加しない以外は、実施例1と同様の方法で窒化ホウ素をメカノケミカル処理した。図3に示す窒化ホウ素は、表面が改質されている。
【0022】
〔比較例3〕(シリカの被覆量が0.5質量%の複合粒子)
窒化ホウ素(グレード名:HS、エアブラウン株式会社)300gと沈殿法シリカ(グレード名:Nipsil LP、東ソー株式会社製)1.5gを高速混合造粒機により高速撹拌させること(メカノケミカル処理、乾式法)で図4に示す窒化ホウ素の質量に対してシリカの被覆量が0.5質量%の複合粒子を得た。高速混合造粒機の容積は2Lで、撹拌速度5000rpm、混合時間は20 分である。
【0023】
上記の実施例1及び比較例1~3の各試料(複合粒子又は窒化ホウ素)について、下記の測定を行った。
【0024】
1.水分量
試料の吸湿性を評価する。吸湿性が高いと樹脂組成物の特性に悪影響を与える可能性がある。
試料5gを水分計(装置名:株式会社エー・アンド・デイ製、MX-50)に載せ、130℃強熱時の重量減少率を測定し、水分量とした。
2.比表面積
メカノケミカル処理によって、試料が破砕/磨砕されて微細化が進行していないかを評価する。微細化が進行すると、熱伝導率の低下や水分量の増加(耐吸湿性の低下)を招く可能性がある。
全自動比表面積測定装置(装置名:株式会社マウンテック製、Macsorb(登録商標) HM model-1200)を使用して試料のBET比表面積を測定した。測定前に150℃で30分の真空加熱排気による前処理を行い、液体窒素温度近傍(77K)でBET流動法(1点法)により測定した。
3.中心粒子径
メカノケミカル処理によって、試料が破壊されて微細化していないかを評価する。熱伝導性フィラーの粒子径が大きくなると熱伝導パスが長く太くなり熱伝導率が向上し、逆に粒子径が小さくなると熱伝導率が低下することはよく知られている。本発明においても、複合粒子又は窒化ホウ素が破壊されて中心粒子径が小さくなると、熱伝導率の低下を招く可能性がある。
0.2%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液に試料を分散させ、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000)を用いて粒度分布を測定し、D50の値を読み取った。
4.吸液量
樹脂への練り込み易さを評価する。樹脂へ練り込み易くなる(多量に充填できる)ことによって、樹脂組成物の熱伝導率の向上が期待できる。
吸液量測定は、流動パラフィンを用いてJIS5101-13-2の煮あまに油法を参考とした。測定手順は次のとおりである。
(1)試料2gを秤量し、ガラス製の測定板の上に置いた。
(2)流動パラフィンをスポイトから1回につき4~5滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで流動パラフィンに試料を練り込んだ。
(3)上記(2)の操作を繰り返し行い、流動パラフィンと試料の塊ができるところまで滴下を続けた。
(4)以後、流動パラフィンを1滴ずつ滴下し、完全に混練するようにして繰り返し、ペーストが柔らかな硬さになったところを終点とした。
(5)終点迄に要した流動パラフィンの重量を100倍し、吸液量(単位g/100g)とした。
5.分散液試験(pH・電気伝導度)
メカノケミカル処理によって、窒化ホウ素の分解に伴う酸化ホウ素(B2O3)の発生等、不純物の含有量が増加していないかを評価する。例えば、B2O3の発生量が多いと、最終製品(樹脂組成物)の特性に悪影響を与える可能性がある。
純水1Lに試料10gを入れて撹拌して懸濁液を得た。ハンディpH・電気伝導率計(装置名:東亜ディーケーケー株式会社製、WM-32EP)を使用して、pH及び電気伝導度(率)を測定した。
6.酸化ホウ素含有量
メカノケミカル処理によって、窒化ホウ素の分解に伴う酸化ホウ素(B2O3)の発生が進んでいないかを評価する。B2O3の発生量が多いと、最終製品(樹脂組成物)の特性に悪影響を与える可能性がある。また、電気伝導度やpH値に影響を与える。
純水1Lに試料10gを入れて撹拌して懸濁液を固液分離した後、ICP発光分光分析装置(装置名:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iCAP7200Duo)を使用してホウ素濃度を測定し、その測定値から酸化ホウ素含有量を算出した。
7.熱伝導率
(1)205mLの紙コップにエポキシ樹脂(三井化学株式会社製、エポミックR140P)40gを入れ、練込限界量になるまで試料を徐々に配合し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製ARE-310)で混合する作業を繰り返した。練込限界量まで配合・混合後、2-エチル-4-メチルイミダゾール(和光純薬工業株式会社製)を0.8g加えて十分に混合・脱泡し、120℃で2時間加熱硬化した。
練込限界量における体積充填率は次の式により導出した。
試料の体積充填率(vol%)=(試料の体積(cm3)/(試料の体積(cm3)+エポキシ樹脂の体積(cm3)))×100 (式1)
試料の体積(cm3)= 試料重量(g)/試料の密度(g/cm3) (式2)
エポキシ樹脂の体積(cm3)= エポキシ樹脂の重量(g)/エポキシ樹脂の密度(g/cm3) (式3)
比較例1、比較例2の試料の密度は窒化ホウ素の密度を使用した。
実施例1、比較例3は(式4)~(式6)を用いて試料の密度を算出した。
試料の密度(g/cm3)= 窒化ホウ素の密度(g/cm3)×(試料中の窒化ホウ素の割合(質量%)/ 100)+ シリカの密度(g/cm3)×(試料中のシリカの割合(質量%)/100) (式4)
試料中の窒化ホウ素の割合(質量%)=(窒化ホウ素の処理質量(g)/(窒化ホウ素の処理質量(g)+ シリカの処理質量(g)))×100 (式5)
試料中のシリカの割合(質量%)=(シリカの処理質量(g)/(窒化ホウ素の処理質量(g)+ シリカの処理質量(g)))×100 (式6)
窒化ホウ素の密度:2.27g/cm3、エポキシ樹脂の密度:1.16g/cm3、沈殿法シリカの密度:2.2g/cm3
(2)硬化した樹脂組成物を研磨し、直径5cm、厚さ2cmの熱伝導率測定用試験試料を作製した。
(3)熱伝導率測定用試験試料を25℃の恒温槽で2時間以上保持した後、迅速熱伝導計(京都電子工業株式会社製、QTM-500)を使用して樹脂組成物の熱伝導率を測定した。
【0025】
実施例1及び比較例1~3の測定結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3について、以下の解析ができる。
実施例1:樹脂組成物に練込限界量(樹脂組成物に充填できる最大量)を充填した場合、樹脂組成物の熱伝導率は各比較例と比べて最も高く、窒化ホウ素の有する高度な熱伝導性能を樹脂組成物に十分に付与することができる。また、実施例1と比較例2のそれぞれの練込限界量に差違がない、すなわち樹脂組成物に充填される窒化ホウ素の量に差違がないにも拘わらず、実施例1の練込限界量を充填した樹脂組成物の熱伝導率が比較例2のそれより高いのは、実施例1は効率の良い熱伝導パスが形成されるからである。その理由については次のように考えられる。図5の左図に示すように、樹脂との混練時に窒化ホウ素の表面の微量の微少シリカがスペーサーの役割をすることにより、ランダムな方向に向いた窒化ホウ素は、「窒化ホウ素の端面-窒化ホウ素の平面」の接触点の形成が促進され、効率の良い三次元的な熱伝導パスのネットワークが形成されることにより熱伝導率が高められるからと考えられる。この機序から、窒化ホウ素にごく僅かでもシリカが被覆されている限り、比較例2の樹脂組成物の熱伝導率を凌駕する。したがって、本発明の熱伝導性複合粒子におけるシリカの被覆量の下限を設定することは特に馴染まないが、例えば窒化ホウ素の質量に対し、シリカの被覆量が0.01質量%でも0.05質量%でも比較例2の樹脂組成物の熱伝導率を凌駕する。
比較例1:吸液量が実施例1や他の比較例より高いことから、樹脂との親和性が最も低く練込限界量が低いので、練込限界量を充填しても熱伝導率の高い樹脂組成物を得られないことが分かる。
比較例2:メカノケミカル処理で窒化ホウ素の表面が改質されているため、樹脂との親和性が高められ、比較例1より吸液量が低く、樹脂組成物への練込限界量は比較例1より高い。しかし、比較例2は比較例1に比べて練込限界量が高いにも拘わらず、両者の樹脂組成物の熱伝導率にほとんど差違がないのは、以下の理由によると考えられる。比較例2は、図5の右図に示すように、シリカのスペーサーが存在しないため、メカノケミカル処理された窒化ホウ素を樹脂に充填した場合、実施例1のような三次元的な熱伝導パスのネットワークが形成されないばかりか、窒化ホウ素-樹脂-窒化ホウ素という接触(熱伝導パス)が実施例1より多くなり、樹脂は熱伝導率が低いために窒化ホウ素-樹脂のその境界面の熱抵抗が大きくなる(熱伝導率が悪くなる)からと考えられる。他方、未処理の窒化ホウ素の比較例1は、比較例2よりも中心粒子径が大きい(比較例1:26.6 μm、比較例2:18.8 μm)ため、比較例2と比べて長く太い熱伝導パスを形成できるため、練込限界量が低いにも拘わらず熱伝導率が高くなると考えられる。
比較例3:樹脂組成物に練込限界量を充填した場合の熱伝導率は、被覆されるシリカの増加で樹脂組成物の粘度が高まり練込限界量が減少すること及び熱伝導率が低いシリカの増加で樹脂組成物の熱伝導率が低下することにより、比較例1、比較例2と比べて若干高いものの、実施例1に比べて低い。また、電気伝導度及びB2O3含有量が実施例1より高く、B2O3等の不純物の含有量が実施例1より増加し、樹脂組成物の特性に悪影響を与える可能性がある。したがって、シリカの被覆量が0.5質量%の比較例3は本発明の熱伝導性複合粒子の境界点であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の熱伝導性複合粒子は、樹脂に充填することにより樹脂に高い熱伝導性を付与できるので、電子部品等の放熱が必要な樹脂成形体に好適である。
図1
図2
図3
図4
図5