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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044209
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】モータおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152116
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福原 翔
(72)【発明者】
【氏名】水池 宏友
(72)【発明者】
【氏名】大山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】長澤 直裕
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604CC01
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インシュレータからステータコアが軸方向に相対的に抜ける虞を低減する。
【解決手段】モータは、上下方向に延びる中心軸を中心に回転するロータと、ロータと径方向に対向するステータと、を備える。ステータは、ステータコアと、インシュレータ32と、を有する。ステータコアは、周方向に延びるコアバックと、コアバックから径方向に突出するティースと、を有する。ステータコアは、上面および下面と、上面と下面とを連結する側面と、を有する。インシュレータ32は、ステータコアの上面または下面と対向する平板部321と、互いに周方向に離れて位置し、平板部321と連結されて軸方向に延びる一対の壁部322と、を有する。一対の壁部の少なくとも一方は、ステータコアの側面に向かって突出して側面と接触する突起部322Pを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸を中心に回転するロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、を備え、
前記ステータは、ステータコアと、インシュレータと、を有し、
前記ステータコアは、
周方向に延びるコアバックと、
前記コアバックから径方向に突出するティースと、を有し、
前記ステータコアは、
上面および下面と、
前記上面と前記下面とを連結する側面と、を有し、
前記インシュレータは、
前記ステータコアの前記上面または前記下面と対向する平板部と、
互いに周方向に離れて位置し、前記平板部と連結されて軸方向に延びる一対の壁部と、を有し、
前記一対の壁部の少なくとも一方は、前記ステータコアの前記側面に向かって突出して前記側面と接触する突起部を有する、モータ。
【請求項2】
前記突起部は、前記一対の壁部の少なくとも一方において、軸方向に延びて位置する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記突起部は、前記一対の壁部の少なくとも一方において、軸方向下端から軸方向上端まで延びる、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記一対の壁部は、それぞれ、
径方向に延びる胴体部と、
前記胴体部に対して径方向内方に位置して前記胴体部と連結される第1脚部と、
前記胴体部に対して径方向外方に位置して前記胴体部と連結される第2脚部と、を有し、
前記突起部は、前記第1脚部と前記第2脚部とのうち、少なくとも前記第2脚部に位置する、請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記第2脚部は、
前記胴体部と連結される根元部と、
前記根元部から最も離れて位置する先端部と、を有し、
前記第2脚部は、前記突起部を少なくとも1つ有し、
少なくとも1つの前記突起部は、前記根元部よりも前記先端部に近い、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記突起部は、前記第2脚部および前記第1脚部の両方に位置し、
前記第1脚部は、
前記胴体部と連結される基端部と、
前記基端部から最も離れて位置する脚端部と、を有し、
前記第1脚部は、前記突起部を少なくとも1つ有し、
少なくとも1つの前記突起部は、前記基端部よりも前記脚端部に近い、請求項4または5に記載のモータ。
【請求項7】
前記ティースは、軸方向から見て、径方向に延びる対称線で線対称となる形状を有し、
前記突起部は、軸方向から見て、前記対称線に対して線対称となる位置に配置される、請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記突起部は、前記ステータコアの前記側面に向かって膨らんだ曲面部を有し、
前記曲面部が前記側面と接触する、請求項1から7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記インシュレータを2つ備え、
2つの前記インシュレータは、軸方向に並んで位置し、
一方の前記インシュレータの前記壁部と、他方の前記インシュレータの前記壁部とは、軸方向に隙間を介して並んで位置する、請求項1から8のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のモータと、
前輪および後輪と、
前記モータからの出力を伝達して、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に動力を付与する補助動力部と、を備える、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータコアとコイルとの間には、両者の絶縁のためにインシュレータが設けられる。例えば特許文献1では、上記インシュレータとして、インシュレータ部材Aと、インシュレータ部材Bと、が用いられている。インシュレータ部材Aは、ステータコアに対して上方から嵌め込まれる。インシュレータ部材Bは、ステータコアに対して下方から嵌め込まれる。これにより、ステータコアがインシュレータ部材Aおよびインシュレータ部材Bによって保持される(例えば、特開2017-229169号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-229169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの製造過程では、ステータコアの周囲にコイルを形成する前に、ステータコアがインシュレータ部材Aまたはインシュレータ部材Bから相対的に抜けることを防止することが必要である。ステータコアの抜け防止対策として、例えば、インシュレータ部材Aの下端およびインシュレータ部材Bの上端に、互いに嵌め合う構造を設けることが考えられる。しかし、この対策では、上記構造の強度を確保するために、インシュレータ部材Aおよびインシュレータ部材Bの肉厚を増大させることが必要となる。モータの内部では、ステータコアの周囲に導線を巻いてコイルを形成するスペースは限られている。上記肉厚の増大は、上記導線の巻数の減少をもたらし、結果的にモータの特性低下を招く可能性があるため、望ましくはない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、複数のインシュレータに特殊な接合構造を設けることなく、モータ製造時におけるインシュレータからのステータコアの相対的な抜けを抑制することができるモータと、そのモータを備えた電動車両と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、上下方向に延びる中心軸を中心に回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を備え、前記ステータは、ステータコアと、インシュレータと、を有し、前記ステータコアは、周方向に延びるコアバックと、前記コアバックから径方向に突出するティースと、を有し、前記ステータコアは、上面および下面と、前記上面と前記下面とを連結する側面と、を有し、前記インシュレータは、前記ステータコアの前記上面または前記下面と対向する平板部と、互いに周方向に離れて位置し、前記平板部と連結されて軸方向に延びる一対の壁部と、を有し、前記一対の壁部の少なくとも一方は、前記ステータコアの前記側面に向かって突出して前記側面と接触する突起部を有する。
【0007】
本発明の例示的な電動車両は、上記のモータと、前輪および後輪と、前記モータからの出力を伝達して、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に動力を付与する補助動力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモータの構成によれば、複数のインシュレータに特殊な接合構造を設けることなく、モータ製造時におけるインシュレータからのステータコアの相対的な抜けを抑制することができる。
【0009】
本発明のモータは、電動車両に適用可能である。すなわち、電動車両に適用されるモータの製造時に、インシュレータからステータコアが軸方向に相対的に抜ける虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態に係るモータの概略の構成を示す断面図である。
図2図2は、モータのステータの一部を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、図2のステータの一部を分解して示す斜視図である。
図4図4は、ステータのインシュレータとしての第1インシュレータを拡大して示す斜視図である。
図5図5は、インシュレータの底面図である。
図6図6は、ステータコアおよびインシュレータの底面図である。
図7図7は、ステータコアおよび他のインシュレータの底面図である。
図8図8は、インシュレータが有する壁部の第2脚部を拡大して示す底面図である。
図9図9は、壁部の第1脚部を拡大して示す底面図である。
図10図10は、第2脚部の突起部を拡大して示す底面図である。
図11図11は、電動アシスト自転車の概略の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、モータのシャフトの回転中心となる軸を「中心軸」と呼ぶ。そして、中心軸が延びる方向を「軸方向」と呼ぶ。本明細書では、軸方向を上下方向として、各部の形状および位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義が、モータの使用時の向きおよび位置関係を限定するわけではない。
【0012】
本明細書では、軸方向の一方を「上」とし、軸方向の他方を「下」とする。したがって、「上方」とは、軸方向上方を意味し、「下方」とは、軸方向下方を意味する。なお、図面では、適宜、軸方向上方を+Zの符号で示し、軸方向下方を-Zの符号で示す。また、軸方向において、部材の上方の端部を「軸方向上端」と呼び、部材の下方の端部を「軸方向下端」と呼ぶ。さらに、部材において、上方を向く面を「上面」と呼び、下方を向く面を「下面」と呼ぶ。
【0013】
本明細書では、中心軸を起点として中心軸と直交する方向を「径方向」と呼ぶ。そして、径方向において、中心軸から離れる方向を「径方向外方」と呼び、中心軸に近づく方向を「径方向内方」と呼ぶ。なお、図面では、適宜、径方向外方を+Rの符号で示し、径方向内方を-Rの符号で示す。また、中心軸を中心として描かれる円弧に沿う方向を「周方向」と呼ぶ。
【0014】
〔1.モータの概略の構成〕
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るモータ1の概略の構成を示す断面図である。モータ1は、ロータ2と、ステータ3と、モータハウジング4と、を備える。本実施形態のモータ1は、ステータ3の径方向内方にロータ2が位置するインナーロータ型である。しかし、モータ1は、ステータ3の径方向外方にロータ2が位置するアウターロータ型であってもよい。すなわち、モータ1は、ロータ2と径方向に対向するステータ3を備える。
【0015】
(1-1.ロータ)
ロータ2は、回転子とも呼ばれる。ロータ2は、シャフト21と、ロータコア22と、マグネット片23と、を備える。
【0016】
シャフト21は、上下方向に延びる中心軸Cを中心として回転する。シャフト21は、例えば、金属によって構成される柱状の部材である。シャフト21は柱状には限定されず、例えば、筒状等の柱状とは異なる形状であってもよい。シャフト21は金属以外の素材で構成されてもよい。
【0017】
シャフト21は、モータハウジング4の後述する上カバー41に第1軸受5を介して回転可能に保持されるとともに、下カバー42に第2軸受6を介して回転可能に保持される。シャフト21は、上カバー41に形成された後述する第1軸受収容部411と、下カバー41に形成された後述する第2軸受収容部421と、を貫通する。なお、シャフト21は、第1軸受収容部411および第2軸受収容部421のいずれか一方のみを貫通する構成であってもよい。
【0018】
ロータコア22は、シャフト21に固定される。ロータコア22は、例えば電磁鋼板を軸方向に積層して構成されるが、これに限定されない。例えば、ロータコア22は樹脂の成形体であってもよい。
【0019】
シャフト21およびロータコア22は、中心軸Cを中心に一体的に回転する。つまり、シャフト21およびロータコア22を有するロータ2が、中心軸Cを中心に回転する。したがって、モータ1は、上下方向に延びる中心軸Cを中心に回転するロータ2を備える。
【0020】
ロータコア22は、シャフト貫通孔221と、マグネット装着部222と、を備える。シャフト貫通孔221は、ロータコア22の中央に中心軸Cに沿って延びる貫通孔である。本実施形態では、シャフト21がシャフト貫通孔221に圧入されることにより、シャフト21とロータコア22とが固定される。なお、シャフト21のロータコア22への固定は、圧入に限定されず、接着、溶接等の固定方法も採用可能である。
【0021】
マグネット装着部222は、ロータコア22に複数個備えられており、周方向に等間隔で配置される。マグネット装着部222は、貫通孔である。マグネット装着部222の内部には、マグネット片23が固定される。なお、マグネット装着部222は、マグネット片23を固定することが可能であれば、貫通孔でなくてもよい。マグネット片23は、マグネット装着部222と同数設けられる。
【0022】
なお、ロータ2は、ロータコア22と、ロータコア22に保持される複数のマグネット片23とを備える構成に替えて、磁性体の筒体にN極とS極とを交互に着磁したマグネット片を備える構成であってもよい。
【0023】
(1-2.ステータ)
ステータ3は、駆動電流に応じて磁束を発生させる電機子である。ステータ3は、ステータコア31と、インシュレータ32と、を有する。また、ステータ3は、複数のコイル33をさらに有する。
【0024】
ステータコア31は磁性体である。ステータコア31は、例えば電磁鋼板を軸方向に積層して構成される。インシュレータ32は絶縁体である。インシュレータ32の材料には、例えば樹脂が用いられる。インシュレータ32は、ステータコア31の少なくとも一部を覆う。コイル33は、インシュレータ32を介してステータコア31の後述するティース31T(図3参照)に導線を巻くことによって構成される。なお、ステータ3の詳細については後述する。
【0025】
(1-3.モータハウジング)
モータハウジング4は、ロータ2の一部と、ステータ3の少なくとも一部と、を収容する。モータハウジング4は、上カバー41と、下カバー42と、を有する。上カバー41は、下カバー42に対して上方に位置する。図1では、上カバー41および下カバー42は、上下方向に離れて配置されているが、接して配置されてもよいし、他の部材を介して連結されてもよい。
【0026】
上カバー41には、第1軸受収容部411が設けられる。第1軸受収容部411は、上カバー41を軸方向に貫通して設けられ、第1軸受5を収容する。下カバー42には、第2軸受収容部421が設けられる。第2軸受収容部421は、下カバー42を軸方向に貫通して設けられ、第2軸受6を収容する。第1軸受5および第2軸受6は、シャフト21を回転可能に支持する。具体的には、第1軸受5は、シャフト21におけるロータコア22よりも上方を支持する。第2軸受6は、シャフト21におけるロータコア22よりも下方を支持する。
【0027】
本実施形態では、第1軸受5および第2軸受6は、ボールベアリングである。したがって、上記したシャフト21は、第1軸受5の内輪および第2軸受6の内輪にそれぞれ固定される。また、第1軸受5の外輪および第2軸受6の外輪は、第1軸受収容部411および第2軸受収容部421にそれぞれ固定される。
【0028】
なお、第1軸受5および第2軸受6は、スリーブベアリングなど、他の軸受で構成されてもよい。また、第1軸受5および第2軸受6は、本実施形態では1つずつ設けられるが、それぞれの数は適宜変更可能である。
【0029】
ステータコア31の径方向外面は、上カバー41の径方向内面および下カバー42の径方向内面と直接接触し、固定される。これにより、ステータ3がモータハウジング4の内部に固定される。なお、ステータコア31の径方向外面は、上カバー41の径方向内面および下カバー42の径方向内面と、リング部材(図示せず)を介して固定されてもよい。
【0030】
〔2.ステータの詳細〕
(2‐1.ステータコアの詳細)
図2は、ステータ3の一部を拡大して示す斜視図である。図3は、図2のステータ3の一部を分解して示す斜視図である。図3に示すように、ステータコア31は、コアバック31Cと、ティース31Tと、を有する。コアバック31Cおよびティース31Tは、いずれも複数の電磁鋼板の積層体の一部で構成される。
【0031】
コアバック31Cは、周方向に延び、中心軸C(図1参照)の周りに円環状に位置する。なお、図2および図3では、コアバック31Cの周方向の一部のみを図示している。ティース31Tは、コアバック31Cから径方向内方に突出し、周方向に等間隔で複数設けられる。このように、ステータコア31は、周方向に延びるコアバック31Cと、コアバック31Cから径方向に突出するティース31Tと、を有する。なお、モータ1がアウターロータ型である場合、ティース31Tは、コアバック31Cから径方向外方に突出して位置する。
【0032】
ティース31Tは、本体部T1と、突出端部T2と、を有する。本体部T1は、コアバック31Cと連結され、コアバック31Cに対して径方向内方に位置する。本体部T1は、径方向内方に向かうにつれて周方向の幅が狭くなる形状であるが、この形状には限定されない。突出端部T2は、本体部T1と連結され、本体部T1に対して径方向内方に位置して周方向の両側に突出する。突出端部T2は、径方向内方に向かうにつれて周方向の幅が広くなる形状であるが、この形状には限定されない。
【0033】
ステータコア31は、上面311と、下面312と、側面313と、を有する。側面313は、上面311と下面312とを連結する。すなわち、ステータコア31は、上面311および下面312と、上面311と下面312とを連結する側面313と、を有する。
【0034】
ステータコア31の上面311は、ステータコア31の最も上方に位置する面であり、径方向内方から径方向外方に向かって延びる。ステータコア31の上面311は、第1上面311Aと、第2上面311Bと、第3上面311Cと、を含む。第1上面311Aは、ティース31Tの本体部T1の上面である。第2上面311Bは、ティース31Tの突出端部T2の上面である。第3上面311Cは、コアバック31Cの上面である。
【0035】
ステータコア31の下面312は、ステータコア31の最も下方に位置する面であり、径方向内方から径方向外方に向かって延びる。ステータコア31の下面312は、第1下面312Aと、第2下面312Bと、第3下面312Cと、を含む。第1下面312Aは、ティース31Tの本体部T1の下面である。第2下面312Bは、ティース31Tの突出端部T2の下面である。第3下面312Cは、コアバック31Cの下面である。
【0036】
ステータコア31の側面313は、上面311の縁と下面312の縁とを軸方向に連結する。側面313は、第1側面313Aと、第2側面313Bと、第3側面313Cと、を含む。第1側面313Aは、ティース31Tの本体部T1の側面である。第2側面313Bは、ティース31Tの突出端部T2の側面である。第3側面313Cは、コアバック31Cの側面である。
【0037】
(2‐2.インシュレータの詳細)
ステータ3では、ステータコア31のティース31Tのそれぞれにつき、2つのインシュレータ32が割り当てられ、配置される。上記2つのインシュレータ32を、ここでは、第1インシュレータ32Aおよび第2インシュレータ32Bと称し、必要に応じて互いに区別する。図3に示すように、第1インシュレータ32Aは、ステータコア31のティース31Tに対して上方から嵌め込まれて、ティース31Tの上半分を部分的に覆う。第2インシュレータ32Bは、ステータコア31のティース31Tに対して下方から嵌め込まれて、ティース31Tの下半分を部分的に覆う。
【0038】
以下、インシュレータ32の詳細について説明する。なお、第1インシュレータ32Aと第2インシュレータ32Bとは、ステータコア31のティース31Tに対する軸方向の配置位置および向きが異なるだけで、形状および構成は全く同じである。そこで、以下では、インシュレータ32として第1インシュレータ32Aを例に挙げて、第2インシュレータ32Bと共通する構成について説明する。そして、第2インシュレータ32Bについての説明を省略する。なお、第2インシュレータ32Bに特有の構成については、必要に応じて説明を補う。
【0039】
図4は、インシュレータ32としての第1インシュレータ32Aを拡大して示す斜視図である。インシュレータ32は、平板部321を有する。平板部321は、第1インシュレータ32Aにおいては、図3で示したステータコア31の上面311よりも上方に位置し、上面311と対向して位置する。一方、第2インシュレータ32Bでは、平板部321は、ステータコア31の下面312よりも下方に位置し、下面312と対向して位置する。すなわち、インシュレータ32は、ステータコア31の上面311または下面312と対向する平板部321を有する。
【0040】
平板部321には、第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3が設けられている。第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3は、第1インシュレータ32Aにおいては、平板部321から上方に突出し、第2インシュレータ32Bにおいては、平板部321から下方に突出する。
【0041】
第1突出部P1は、平板部321において、径方向の中央位置よりも径方向内方に位置する。第2突出部P2は、平板部321において、径方向の中央位置よりも径方向外方に位置する。ステータコア31の周囲にインシュレータ32を介して導線を巻くときには、第1突出部P1と第2突出部P2との間で導線が巻かれて、図1に示すコイル33が形成される。
【0042】
第3突出部P3は、平板部321において、第2突出部P2に対して周方向の一方側に位置する。第3突出部P3は、コイル33(図1参照)の引出線と接続されるバスバーを配置するための突起であり、スナップフィット形状を有する。
【0043】
また、インシュレータ32は、一対の壁部322をさらに有する。一対の壁部322は、互いに周方向に離れて位置する。そして、図2および図3に示すように、第1インシュレータ32Aにおいては、一対の壁部322は、平板部321の外縁と連結されて下方に延びる。一方、第2インシュレータ32Bにおいては、一対の壁部322は、平板部322の外縁と連結されて上方に延びる。すなわち、インシュレータ32は、互いに周方向に離れて位置し、平板部321と連結されて軸方向に延びる一対の壁部322を有する。
【0044】
図5は、インシュレータ32の底面図である。以下、図2図4に加えて、図5も参照しながらインシュレータ32について説明する。インシュレータ32の一対の壁部322は、それぞれ、胴体部322Aと、第1脚部322Bと、第2脚部322Cと、を有する。
【0045】
胴体部322Aは、径方向内方から径方向外方に向かって延び、図3で示したステータコア31の本体部T1の側面と対向して位置する。つまり、胴体部322Aは、ステータコア31の第1側面313Aと対向して位置する。本実施形態では、ステータコア31の本体部T1は、上述したように、径方向内方に向かうにつれて周方向の幅が狭くなる形状を有する。このため、一方の壁部322の胴体部322Aと、他方の壁部322の胴体部322Aとは、径方向内方に向かうにつれて互いの周方向の間隔が狭くなる。
【0046】
なお、一方の壁部322の胴体部322Aと、他方の壁部322の胴体部322Aとの周方向の間隔は、ステータコア31の本体部T1の形状に応じて設定される。したがって、本体部T1の形状によっては、上記間隔が径方向内方に向かうにつれて広くなる、または径方向のどの位置でも等しい、などの場合もあり得る。
【0047】
第1脚部322Bは、胴体部322Aに対して径方向内方に位置する。第1脚部322Bは、胴体部322Aと連結される。第1脚部322Bは、ステータコア31の突出端部T2の側面の一部と対向して位置する。つまり、第1脚部322Bは、ステータコア31の第2側面313Bの一部と対向して位置する。突出端部T2は、上述したように、径方向内方に向かうにつれて周方向の幅が広がる形状を有する。このため、一方の壁部322の第1脚部322Bと、他方の壁部322の第1脚部322Bとは、径方向内方に向かうにつれて互いの周方向の間隔が広がる。
【0048】
第2脚部322Cは、胴体部322Aに対して径方向外方に位置する。第2脚部322Cは、胴体部322Aと連結されて周方向に延びる。この結果、第2脚部322Cは、ステータコア31のコアバック31Cの側面の一部と対向して位置する。つまり、第2脚部322Cは、ステータコア31の第3側面313Cの一部と対向して位置する。
【0049】
このように、一対の壁部322は、それぞれ、径方向に延びる胴体部322Aと、胴体部322Aに対して径方向内方に位置して胴体部322Aと連結される第1脚部322Bと、胴体部322Aに対して径方向外方に位置して胴体部322Aと連結される第2脚部322Cと、を有する。
【0050】
一対の壁部322の少なくとも一方は、突起部322Pを有する。図5では、一対の壁部322の両方が突起部322Pを有する構成を図示している。しかも、一対の壁部322のそれぞれは、2個の突起部322Pを有する。一方の壁部322において、突起部322Pは、第1脚部322Bと、第2脚部322Cと、に位置する。他方の壁部322においても、突起部322Pは、第1脚部322Bと、第2脚部322Cと、に位置する。
【0051】
図6は、ステータコア31に対して、図5のインシュレータ32を上方から嵌め込んだ状態での、ステータコア31およびインシュレータ32の底面図である。同図に示すように、一対の壁部322のそれぞれにおいて、第1脚部322Bに位置する突起部322Pは、ステータコア31の第2側面313Bと接触する。また、第2脚部322Cに位置する突起部322Pは、ステータコア31の第3側面313Cと接触する。
【0052】
このように、突起部322Pがステータコア31の側面313と接触することにより、平板部321に連結された一対の壁部322が、突起部322Pを介してステータコア31を保持することができる。しかも、第1脚部322Bに位置する突起部322Pにより、第1脚部322Bに対してステータコア31の第2側面313Bを押圧することができる。また、第2脚部322Cに位置する突起部322Pにより、第2脚部322Cに対してステータコア31の第3側面313Cを押圧することができる。これにより、一対の壁部322がステータコア31を保持する上記の効果を高めることができる。
【0053】
図7は、インシュレータ32の他の構成を示すとともに、ステータコア31に対して上記インシュレータ32を上方から嵌め込んだ状態での、ステータコア31およびインシュレータ32の底面図である。上記の突起部322Pは、一対の壁部322のいずれか一方に、1つのみ設けられてもよい。図7では、一方の壁部322の第1脚部322Bにのみ、突起部322Pが位置する構成を示している。
【0054】
このように、インシュレータ32に設けられる突起部322Pが1つのみであっても、一方の壁部322は突起部322Pを介してステータコア31の側面313と接触し、他方の壁部322はステータコア31の側面313と直接接触する。これにより、一対の壁部322でステータコア31を保持することができる。しかも、第1脚部322Bに位置する突起部322Pにより、第1脚部322Bに対してステータコア31の第2側面313Bを押圧することができる。これにより、一対の壁部322がステータコア31を保持する上記の効果を高めることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、一対の壁部322の少なくとも一方は、ステータコア31の側面313に向かって突出して側面313と接触する突起部322Pを有する。この構成では、上述したように、一対の壁部322がステータコア31を保持することができる。また、突起部322Pによるステータコア31の側面313の押圧により、一対の壁部322がステータコア31を保持する効果を高めることができる。これにより、モータ1の製造時にステータコア31がインシュレータ32から軸方向に相対的に抜ける虞を低減することができる。例えば、モータ1の製造時に、図2で示した第1インシュレータ32Aからステータコア31が下方に抜ける虞、または、ステータコア31から第2インシュレータ32Bが下方に外れる虞を低減することができる。
【0056】
したがって、ステータコア31のインシュレータ32からの相対的な抜けを防止するために、2個のインシュレータ32において、軸方向に対向する各端部に、上記端部同士を嵌め合う特殊な接合構造を形成しなくても済む。このため、上記端部を有する壁部322の肉厚を薄くしたインシュレータ32を、樹脂成形によって容易に製造することができる。よって、ステータコア31の周囲にインシュレータ32を介して導線を巻いてコイル33を形成する場合でも、ステータコア31の周囲の限られたスペースで巻かれる導線の巻数を確保して、所望の特性のモータ1を実現することができる。
【0057】
突起部322Pは、一対の壁部322の少なくとも一方において、軸方向に延びて位置することが望ましい。本実施形態では、図4および図5に示すように、突起部322Pは、一対の壁部322の両方において、軸方向に延びて位置する。
【0058】
例えば、壁部322において、突起部322Pは点在していてもよい。しかし、この場合、突起部322Pとステータコア31の側面313とはほぼ点接触となり、接触面積が小さくなる。
【0059】
突起部322Pが軸方向に延びて位置する構成では、突起部322Pとステータコア31の側面313との接触を線接触とすることができる。これにより、突起部322Pが点在する構成に比べて、突起部322Pとステータコア31の側面313との接触面積が増大する。したがって、突起部322Pによって側面313を効率よく押圧することができる。その結果、一対の壁部322によるステータコア31の保持力を増大させることができる。また、金型を用いた樹脂成形によってインシュレータ32を製造する場合には、金型を軸方向に抜いてインシュレータ32を製造することができる。このため、インシュレータ32の製造が容易となる。
【0060】
なお、突起部322Pは、軸方向と交差する方向に延びて位置していてもよい。例えば、樹脂成形の際に、軸方向に抜ける金型と、水平方向に抜ける金型とを併用することにより、軸方向と交差する方向に突起部322Pが延びて位置するインシュレータ32を製造することは可能である。
【0061】
突起部322Pは、一対の壁部322の少なくとも一方において、軸方向下端から軸方向上端まで延びることが望ましい、本実施形態では、図4に示すように、突起部322Pは、一対の壁部322の両方において、軸方向下端から軸方向上端まで延びる。
【0062】
この構成では、突起部322Pの軸方向の長さが、例えば軸方向下端から軸方向上端までの長さよりも短い場合に比べて、突起部322Pとステータコア31の側面313との接触面積が増大する。これにより、一対の壁部322によってステータコア31の保持力を増大させる効果を高めることができる。
【0063】
なお、突起部322Pの軸方向の長さが、軸方向下端から軸方向上端までの長さよりも短くてもよい。ただし、この場合、金型を軸方向に抜いてインシュレータ32を成形することを考えると、突起部322Pの軸方向下端または軸方向上端は、壁部322と平板部321との交差部と一致することが望ましい。
【0064】
図5および図6で示したように、突起部322Pは、第1脚部322Bと第2脚部322Cとのうち、少なくとも第2脚部322Cに位置することが望ましい。
【0065】
モータ1の製造時には、ステータコア31にインシュレータ32を挿入した後、次工程に移行する。次工程では、ステータコア31の周囲にインシュレータ32を介して導線を巻いてコイル33(図1参照)を形成する。ステータコア31にインシュレータ32を挿入した後、次工程に移行する際に、インシュレータ32がステータコア31を安定して保持していないと、例えばインシュレータ32としての第2インシュレータ32B(図2参照)がステータコア31から下方に抜け落ちる虞がある。
【0066】
突起部322Pが少なくとも第2脚部322Cに位置することにより、ステータコア31の側面313を径方向外方の位置で突起部322Pによって押圧して、インシュレータ32によるステータコア31の保持を安定させることができる。これにより、モータ1の製造過程において、ステータコア31の周囲にコイル32を形成する前に、ステータコア31から第2インシュレータ32Bが抜け落ちる虞を低減することができる。
【0067】
本実施形態では、図6に示すように、ステータコア31のティース31Tは、軸方向から見て、径方向に延びる対称線Lで線対称となる形状を有する。図5のように、一対の壁部322の両方に突起部322Pが配置される場合、突起部322Pは、対称線Lから周方向一方側および周方向他方側に等距離となる位置に配置されることが望ましい。すなわち、突起部322Pは、軸方向から見て、対称線Lに対して線対称となる位置に配置されることが望ましい。
【0068】
この構成では、ステータコア31の側面313が、対称線Lに対して線対称な位置に配置される各突起部322Pによって均等に押圧される。これにより、インシュレータ32によるステータコア31の保持を安定させることができる。
【0069】
なお、ステータコア31は、対称線Lに対して非対称の形状であってもよい。ステータコア31が対称線Lに対して非対称な形状であっても、本実施形態のインシュレータ32を採用することが可能である。
【0070】
図8は、一方の壁部322の第2脚部322Cを拡大して示す底面図である。第2脚部322Cは、根元部322C-1と、先端部322C-2と、を有する。根元部322C-1は、胴体部322Aと連結される。先端部322C-2は、第2脚部322Cにおいて根元部322C-1とは反対側の端部である。すなわち、第2脚部322Cは、胴体部322Aと連結される根元部322C-1と、根元部322C-1から最も離れて位置する先端部322C-2と、を有する。
【0071】
また、第2脚部322Cは、突起部322Pを1つのみ有してもよく、複数有してもよい。すなわち、第2脚部322Cは、突起部322Pを少なくとも1つ有する。この構成において、少なくとも1つの突起部322Pは、根元部322C-1よりも先端部322C-2に近いことが望ましい。例えば、最も先端部322C-2側に位置する突起部322Pと、根元部322C-1との距離をD21(mm)とする。また、上記突起部322Pと先端部322C-2との距離をD22(mm)とする。この場合、距離D22は、距離D21よりも短いことが望ましい。
【0072】
上述したように、モータ1の製造過程において、ステータコア31にインシュレータ32を挿入した後、次工程に移行する際に、インシュレータ32がステータコア31を安定して保持していないと、例えば第2インシュレータ32B(図2参照)がステータコア31から下方に抜け落ちる虞がある。
【0073】
少なくとも1つの突起部322Pが、根元部322C-1よりも先端部322C-2に近いことにより、突起部322Pがステータコア31の側面313を先端部322C-2に近い位置で押圧する。これにより、インシュレータ32によるステータコア31の保持を安定させる効果を高めることができる。したがって、モータ1の製造過程において、ステータコア31の周囲にコイル32を形成する前に、ステータコア31から第2インシュレータ32Bが抜け落ちる虞を低減する効果を高めることができる。
【0074】
突起部322Pは、第2脚部322Bおよび第1脚部322Cの両方に位置することが望ましい。ここで、図9は、一方の壁部322の第1脚部322Bを拡大して示す底面図である。第1脚部322Bは、基端部322B-1と、脚端部322B-2と、を有する。基端部322B-1は、胴体部322Aと連結される。脚端部322B-2は、第1脚部322Bにおいて基端部322B-1とは反対側の端部である。すなわち、第1脚部322Bは、胴体部322Aと連結される基端部322B-1と、基端部322B-1から最も離れて位置する脚端部322B-2と、を有する。
【0075】
また、第1脚部322Bは、突起部322Pを1つのみ有してもよく、複数有してもよい。すなわち、第1脚部322Bは、突起部322Pを少なくとも1つ有する。この構成において、少なくとも1つの突起部322Pは、基端部322B-1よりも脚端部322B-2に近いことが望ましい。例えば、最も脚端部322B-2側に位置する突起部322Pと、基端部322B-1との距離をD11(mm)とする。また、上記突起部322Pと脚端部322B-2との距離をD12(mm)とする。この場合、距離D12は、距離D11よりも短いことが望ましい。
【0076】
この構成では、モータ1の製造時のステータコア31の振動に起因するインシュレータ32の位置ずれを、例えば距離D12が距離D11よりも長い構成に比べて効率よく抑えることができる。その結果、インシュレータ32によるステータコア31の保持を安定させる効果を高めることができる。
【0077】
図10は、第2脚部322Cの突起部322Pを拡大して示す底面図である。突起部322Pは、ステータコア31の側面313に向かって膨らんだ曲面部322Sを有し、曲面部322Sが側面313と接触することが望ましい。なお、第1脚部322Bの突起部322Pについても同様であり、上記突起部322Pが曲面部322Sを有してステータコア31の側面313と接触することが望ましい。曲面部322Sは、半円形状であってもよいし、楕円形状などの他の曲面形状であってもよい。
【0078】
突起部322Pが曲面部322Sを有する構成では、突起部322Pがステータコア31の側面313と接触して側面313を押圧したときに、突起部322Pが変形して面接触に近い状態で側面313と接触する。この場合、例えば、突起部322Pの先端が尖っており、尖っている突起部322Pの先端がステータコア31の側面313と接触する構成に比べて、突起部322Pと側面313との接触面積が増大する。したがって、突起部322Pが側面313を押圧することによって、一対の壁部322がステータコア31を保持する効果を高めることができる。
【0079】
本実施形態のモータ1は、図2で示したように、第1インシュレータ32Aと、第2インシュレータ32Bと、を備える。第1インシュレータ32Aおよび第2インシュレータ32Bは、ステータコア31のティース31Tに対して軸方向から嵌め込まれ、ティース31Tを部分的に覆う。このとき、第1インシュレータ32Aおよび第2インシュレータ32Bは、軸方向に隙間Tを介して並んで位置する。つまり、モータ1は、インシュレータ32を2つ備える。2つのインシュレータ32、32は、軸方向に並んで位置する。一方のインシュレータの壁部322と、他方のインシュレータ32の壁部322とは、軸方向に隙間Tを介して並んで位置する。
【0080】
2つのインシュレータ32、32が隙間Tを介して軸方向に離れて位置する配置であっても、突起部322Pがステータコア31の側面313を押圧する構成により、ステータコア31をそれぞれのインシュレータ32、32で保持することができる。したがって、ステータコア31のインシュレータ32からの抜けを防止するために、2つのインシュレータ32、32のそれぞれに互いに嵌め合う構造を設ける必要がなくなる。つまり、インシュレータ32の簡単な構成で、ステータコア31のインシュレータ32からの抜けを抑制することができる。
【0081】
〔3.電動車両〕
図11は、電動アシスト自転車100の概略の構成を示す説明図である。電動アシスト自転車100は、本実施形態のモータ1が適用可能な電動車両の一例である。電動アシスト自転車100は、車体101と、2個の車輪102と、動力伝達部103と、補助動力部104と、電源部105と、を備える。
【0082】
車体101は、ハンドル110と、サドル111と、を含む。2個の車輪102、動力伝達部103、補助動力部104および電源部105は、車体101に取り付けられる。2個の車輪102は、車体101の前部に前輪102Fとして、後部に後輪102Rとして取り付けられる。後輪102Rには、動力伝達部103が接続される。
【0083】
動力伝達部103は、回転軸106と、クランク107と、ペダル108と、を備える。また、動力伝達部103には、回転軸106に取り付けられた駆動ギヤと、後輪102Rに取り付けられた従動ギヤと、駆動ギヤと従動ギヤとを連結するチェーン(いずれも不図示)をさらに含む。回転軸106は、車体101に回転可能に取り付けられる。クランク107は、回転軸106に固定される。さらに、クランク107の先端には、ペダル108が回転可能に取り付けられる。
【0084】
動力伝達部103には、補助動力部104が取り付けられる。補助動力部104は、内部にモータ1を備える。また、補助動力部104は、モータ1のシャフト21(図1参照)からの出力を回転軸106に伝達する伝達部(不図示)を備える。補助動力部104は、使用者がペダル108を踏む力を補助して、回転軸106に力を付与する。なお、本実施形態において、補助動力部104は、回転軸106に力を付与しているがこれに限定されない。これ以外にも、例えば、動力伝達部103のチェーンに動力を付与する構成、前輪102Fおよび後輪102Rの少なくとも一方に動力を付与する構成等を挙げることができる。すなわち、補助動力部104としては、使用者の力による車輪の回転を補助できる構成を広く採用できる。
【0085】
このように、電動車両としての電動アシスト自転車100は、前輪102Fおよび後輪102Rと、モータ1からの出力を伝達して、前輪102Fおよび後輪102Rの少なくとも一方に動力を付与する補助動力部104と、を備える。
【0086】
電源部105は、車体101に取り付けられる。電源部105は、不図示の配線を介して補助動力部104に接続される。電源部105は、補助動力部104のモータ1に電力を供給する。
【0087】
電動アシスト自転車100の運転時には、使用者はサドル111にまたがり、ハンドル110を握って、足でペダル108を踏む。ペダル108を踏む力が、クランク107を介して回転軸106に伝達される。これにより、回転軸106には、回転方向の力が作用し、回転軸106が回転する。回転軸106に作用する力は、動力伝達部103によって後輪102Rに伝達される。
【0088】
そして、補助動力部104は、必要に応じてモータ1を駆動して、モータ1からの動力を回転軸106に伝達する。これにより、使用者のペダル108を踏む力が上記動力で補助される。これにより、使用者は、楽な力でペダル108を踏んで、電動アシスト自転車100を運転することができる。
【0089】
このように、本実施形態のモータ1は、電動アシスト自転車100などの電動車両に適用可能である。上述した本実施形態のインシュレータ32の構成は、特に電動車両に適用されるモータ1の製造時に、インシュレータ32からステータコア31が軸方向に抜ける虞を低減できる点で非常に有効である。
【0090】
〔4.その他〕
本実施形態では、一対の壁部322において、第1脚部322Bまたは第2脚部322Cに突起部322Pを設ける構成について説明したが、胴体部322Aに突起部322Pを設けるようにしてもよい。ただし、突起部322Pの大きさによっては、壁部322における突起部322P以外の部分とステータコア31の側面313との間の隙間が大きくなる。この場合、ステータコア31の周囲にインシュレータ32を介して導線を巻くスペースが狭くなって、導線の巻数の減少が必要になる虞がある。このため、突起部322Pは、第1脚部322Bおよび第2脚部322Cの少なくとも一方に設けることが望ましい。
【0091】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態やその変形例は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のモータは、例えば電動アシスト自転車などの電動車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
31 ステータコア
31C コアバック
31T ティース
311 上面
312 下面
313 側面
32 インシュレータ
321 平板部
322 壁部
322A 胴体部
322B 第1脚部
322B-1 基端部
322B-2 脚端部
322C 第2脚部
322C-1 根元部
322C-2 先端部
322P 突起部
322S 曲面部
100 電動アシスト自転車(電動車両)
102F 前輪
102R 後輪
104 補助動力部
C 中心軸
L 対称線
T 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11