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特開2023-4421抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法、抗菌性または抗ウイルス性塗膜、積層体および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004421
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法、抗菌性または抗ウイルス性塗膜、積層体および物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230110BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20230110BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230110BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230110BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230110BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20230110BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D1/00
C09D7/61
C09D133/00
C09D7/63
C09D5/16
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106062
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイントホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健
(72)【発明者】
【氏名】米田 眞起子
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宣征
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】和泉 治
(72)【発明者】
【氏名】北村 直孝
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA20B
4F100AB12B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK45A
4F100AK49B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH46B
4F100EJ86B
4F100GB33
4F100JC00B
4F100YY00B
4J038CE021
4J038CG001
4J038DA131
4J038DG001
4J038DM011
4J038HA442
4J038HA456
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA10
4J038NA05
4J038PA06
4J038PB07
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】対イオン性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】密着官能基を有する有機系バインダーと、チタンを含む光触媒と、無機系バインダーとを含む、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物であって、有機系バインダーの質量が、塗料組成物の総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、光触媒の質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.01~10質量%であり、無機系バインダーの質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、有機系バインダーの質量に対する、光触媒および無機系バインダーの合計質量の比が、0.1~100の範囲である、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の密着官能基を有する有機系バインダーと、
チタンを含む光触媒と、
無機系バインダーと、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物であって、
前記有機系バインダーの質量が、前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記光触媒の質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.01~10質量%であり、
前記無機系バインダーの質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記有機系バインダーの固形分質量に対する、前記光触媒および前記無機系バインダーの合計固形分質量の比が、0.1~100の範囲である、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項2】
前記密着官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン酸基からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項3】
前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物100質量部と水道水10質量部からなる混合液の、波長400nmにおける吸光度が、950以下である、請求項1または2に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項4】
前記光触媒が、銅および銀からなる群より選択される1種以上をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項5】
前記無機系バインダーが、コロイダルシリカである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項6】
前記有機系バインダーが、硬化剤またはアクリル樹脂エマルションを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項7】
前記硬化剤が、カルボジイミド樹脂である、請求項6に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物。
【請求項8】
抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を準備する工程(A)と、
前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を、布を用いての塗装およびスプレー塗装からなる群より選択される1つ以上の手段によって塗装する工程(B)と、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記スプレー塗装時の霧化粒径が0.1~100μmである、請求項8に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を用いた、抗菌性または抗ウイルス性塗膜。
【請求項11】
前記塗膜の膜厚が、1μm以下であり、
前記塗膜中のチタン濃度が1~1000mg/mである、請求項10に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜。
【請求項12】
ラビング後にチタン残存率が40%以上かつ透明外観を有する、請求項10または11に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜。
【請求項13】
順に、
少なくとも表面がプラスチック製の基材と、
請求項10~12のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、積層体。
【請求項14】
順に、
少なくとも表面がプラスチック製である被塗物と、
請求項10~12のいずれか一項に記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法、抗菌性または抗ウイルス性塗膜、積層体および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材に対して抗菌性または抗ウイルス性を付与する手段が知られている。例えば、エタノールなどのアルコールを基材に塗布または噴霧することで抗菌性または抗ウイルス性を付与することができるが、アルコールはすぐに揮発するため、効果が持続しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-264747号公報
【特許文献2】特開2020-125259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、光触媒コーティング液を開示しているが、このコーティング液では、イオン混入時の安定性(以下、「対イオン安定性」という)が低く、また、このコーティング液を用いた塗膜では、塗膜外観不良および耐ラビング性不良という欠点があった。対イオン安定性が低い場合、カルシウムイオンなどを含む水道水などをコーティング液に混合すると、無機粒子の電荷バランスが崩れることによって凝集してコーティング液が白濁する。
【0005】
また、特許文献2では、抗ウイルス用組成物を開示しているが、この組成物を用いた塗膜では、光触媒に比べて抗ウイルス性が弱く、また耐ラビング性不良となる欠点があった。
【0006】
本明細書では、耐ラビング性は、基材上の塗膜を指または布でこすった場合であっても、有効成分が塗膜から失われずに塗膜中に残存することを意味する。
【0007】
そこで、本発明は、対イオン安定性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、そのような塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、そのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を提供することである。また、本発明の別の目的は、プラスチック製の基材とそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜との積層体を提供することである。また、本発明の別の目的は、プラスチック製表面を有する被塗物にそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を有する物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物は、
1種以上の密着官能基を有する有機系バインダーと、
チタンを含む光触媒と、
無機系バインダーと、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物であって、
前記有機系バインダーの質量が、前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記光触媒の質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.01~10質量%であり、
前記無機系バインダーの質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記有機系バインダーの質量に対する、前記光触媒および前記無機系バインダーの合計質量の比が、0.1~100の範囲である、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物である。これによって、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の対イオン安定性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成することができる。
【0009】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記密着官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン酸基からなる群より選択される1種以上である。
【0010】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物100質量部と水道水10質量部からなる混合液の、波長400nmにおける吸光度が、950以下である。
【0011】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記光触媒が、銅および銀からなる群より選択される1種以上をさらに含む。
【0012】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記無機系バインダーが、コロイダルシリカである。
【0013】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、有機系バインダーが、硬化剤またはアクリル樹脂エマルションを含む。
【0014】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記硬化剤が、カルボジイミド樹脂である。
【0015】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法は、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を準備する工程(A)と、
前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を、布を用いての塗装およびスプレー塗装からなる群より選択される1つ以上の手段によって塗装する工程(B)と、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法である。これによって、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成することができる。
【0016】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法の一実施形態では、前記スプレー塗装時の霧化粒径が0.1~100μmである。
【0017】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜は、上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を用いた、抗菌性または抗ウイルス性塗膜である。これによって、塗膜は、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好である。
【0018】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の一実施形態では、前記塗膜の膜厚が、1μm以下であり、
前記塗膜中のチタン濃度が1~1000mg/mである。
【0019】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の一実施形態では、ラビング後にチタン残存率が40%以上かつ透明外観を有する。
【0020】
本発明に係る積層体は、順に、
少なくとも表面がプラスチック製の基材と、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、積層体である。これによって、積層体は、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および塗膜の耐ラビング性が良好である。
【0021】
本発明に係る物品は、順に、
少なくとも表面がプラスチック製である被塗物と、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、物品である。これによって、物品は、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および塗膜の耐ラビング性が良好である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対イオン安定性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのような塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法を提供することができる。また、本発明によれば、そのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、プラスチック製の基材とそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜との積層体を提供することができる。また、本発明によれば、プラスチック製表面を有する被塗物にそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を有する物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0025】
本発明において、用語「固形分」は、固形分、不揮発分および有効成分を包括する概念である。
【0026】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、0.001~10質量%は、0.001質量%以上10質量%以下の範囲を意味する。
【0027】
本明細書では、密着官能基を有する有機系バインダー、チタンを含む光触媒、および無機系バインダーを、それぞれ、単に「A成分」、「B成分」、および「C成分」ということがある。
【0028】
本明細書では、本発明の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物、および抗菌性または抗ウイルス性塗膜をそれぞれ、単に「塗料組成物I」および「塗膜I」ということがある。
【0029】
(抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物)
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物は、
1種以上の密着官能基を有する有機系バインダーと、
チタンを含む光触媒と、
無機系バインダーと、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物であって、
前記有機系バインダーの質量が、前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記光触媒の質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.01~10質量%であり、
前記無機系バインダーの質量が、前記総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%であり、
前記有機系バインダーの質量に対する、前記光触媒および前記無機系バインダーの合計質量の比が、0.1~100の範囲である、抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物である。
【0030】
以下、塗料組成物Iの必須成分であるA、BおよびC成分を例示説明する。
【0031】
・A成分
A成分は、1種以上の密着官能基を有する有機系バインダーである。A成分は、塗料組成物Iの対イオン安定性、塗膜外観、および塗膜Iの耐ラビング性を高める働きを有する。
【0032】
A成分が有する密着官能基としては、例えば、水道水などに含まれるカルシウムイオンなどのイオンと結合を形成可能な、またはキレートを形成可能な官能基が挙げられる。密着官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0033】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記密着官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン酸基マグネシウムからなる群より選択される1種以上である。塗料組成物Iの別の実施形態では、密着官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン酸基マグネシウムからなる群より選択される2種である。塗料組成物Iのさらに別の実施形態では、密着官能基は、ヒドロキシル基およびカルボキシル基である。
【0034】
また、密着官能基が結合ないしキレートを形成可能なイオンとしては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0035】
A成分としては、例えば、キレート樹脂が挙げられる。
【0036】
A成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、リン酸樹脂、ポリビニルホルムアミド、硬化剤、アニオン系アクリルエマルション、マイクロゲルなどが挙げられる。
【0037】
A成分としては、市販品を用いてもよい。A成分であるアクリル樹脂の市販品としては、例えば、楠本化成社製の商品名「NeoCryl A-614」、「NeoCryl A-633」、「NeoCryl A-639」、「NeoCryl A-655」、「NeoCryl A-662」、「NeoCryl A-1091」、「NeoCryl A-1092」、「NeoCryl A-1093」、「NeoCryl A-1094」、「NeoCryl A-1105」、「NeoCryl A-1125」、「NeoCryl A-1127」、「NeoCryl A-2091」、「NeoCryl A-2092」、「NeoCryl A-6016」、「NeoCryl A-6057」、「NeoCryl A-6069」、「NeoCryl A-6092」、「NeoCryl XK-12」、「NeoCryl XK-16」、「NeoCryl XK-30」、「NeoCryl XK-36」、「NeoCryl XK-52」、「NeoCryl XK-190」、「NeoCryl XK-188」、「NeoCryl XK-240」などのNeoCrylシリーズが挙げられる。
【0038】
また、A成分であるポリウレタン樹脂の市販品としては、例えば、三洋化成工業社製の商品名「ユーコート D-338」などのユーコート(登録商標)シリーズ;DSM社製の商品名「NEOREZ(登録商標) R-4000」などが挙げられる。
【0039】
また、A成分であるポリアクリル酸の市販品としては、例えば、東亜合成社製の商品名「ジュリマー AC-10L」、「ジュリマー AC-10H」、「ジュリマー AC-10SH」、「ジュリマー EM-178」、「ジュリマー SH-8」などのジュリマー(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0040】
また、A成分であるポリビニルアルコールの市販品としては、例えば、クラレ社製の商品名「クラレポバール 25-98R」などのクラレポバールシリーズが挙げられる。
【0041】
また、A成分であるリン酸樹脂の市販品としては、例えば、日本ペイント社製の商品名「ACS 1016」などが挙げられる。
【0042】
また、A成分であるポリビニルホルムアミドの市販品としては、例えば、ハイモ社製の商品名「ハイモ―ビス(登録商標) PS-800」などが挙げられる。
【0043】
A成分は上述したA成分に加えて、硬化剤、アクリル樹脂エマルションおよびマイクロゲルを含むことが好ましい。硬化剤、アクリル樹脂エマルションおよびマイクロゲルは、塗料組成物Iの造膜性を高めて耐ラビング性、特にWETラビン性を向上する働きを有する。
【0044】
硬化剤としては、例えば、カルボジイミド樹脂、エポキシ、アミン、イソシアネートなどが挙げられる。常温で反応し安定性が優れている点でカルボジイミド樹脂が望ましい
【0045】
カルボジイミド樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の商品名「V-02」、「V-02-L2」、「SV-02」、「V-04」、「V-10」、「SW-12G」、「E-02」、「E-05」などが挙げられる。
【0046】
カルボジイミド樹脂以外のA成分が有する密着官能基がカルボキシル基である場合、カルボジイミド樹脂はカルボキシル基に対して0.01~2当量が好ましく、0.05~1当量がより好ましい。0.01当量より多いと、バインダーのラビング性が高まり、2当量以下であると、未反応のカルボジイミド樹脂を抑制することができる。
【0047】
A成分以外の有機系バインダーとしては、例えば、アニオン系アクリルエマルション、マイクロゲルなどが挙げられる。
【0048】
アニオン系アクリルエマルションの市販品としては、例えば、大成ファインケミカル社製の商品名「3MF-320」、「3MF-333」、「3MF-407」などが挙げられる。
【0049】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記有機系バインダーが、硬化剤またはアクリル樹脂エマルションを含む。
【0050】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記硬化剤が、カルボジイミド樹脂である。
【0051】
硬化剤、アニオン系アクリルエマルションまたはマイクロゲルの量は、例えば、B成分とC成分の合計質量に対し、10~10000質量%である。
【0052】
A成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
A成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%である。一実施形態では、A成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上または7.0質量%以上である。別の実施形態では、A成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で10.0質量%以下、7.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下または0.01質量%以下である。
【0054】
・B成分
B成分は、チタンを含む光触媒である。B成分は、塗膜Iに抗菌性または抗ウイルス性を付与する。
【0055】
B成分としては、チタンを含む公知の光触媒を用いることができる。B成分としては、例えば、光触媒型酸化チタンが挙げられる。また、特許文献1に記載の光触媒粒子を用いてもよい。
【0056】
B成分は、市販品を用いてもよい。B成分である光触媒型酸化チタンの市販品としては、例えば、石原産業社製の商品名「ST-01」、「ST-21」、「ST-31」、「ST-41」などの紫外線応答型光触媒;商品名「MPT-623」、「STS-427」などの可視光応答型光触媒などが挙げられる。
【0057】
B成分は、チタンを含むが、他の抗菌性または抗ウイルス性を発現する金属元素をさらに含んでいてもよい。このような金属元素としては、例えば、銅、銀、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、鉛、白金、金などが挙げられる。
【0058】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記光触媒が、銅および銀からなる群より選択される1種以上をさらに含む。
【0059】
B成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
B成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.01~10質量%である。一実施形態では、B成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上または7.0質量%以上である。別の実施形態では、B成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で10.0質量%以下、7.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.1質量%以下または0.05質量%以下である。
【0061】
・C成分
C成分は、無機系バインダーである。C成分は、塗膜Iの耐ラビング性を高める働きを有する。
【0062】
C成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア、チタン酸バリウム、層状ケイ酸塩鉱物(例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)などが挙げられる。
【0063】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記無機系バインダーが、コロイダルシリカである。
【0064】
シリカとしては、コロイダルシリカが好ましい。
【0065】
C成分は、市販品を用いてもよい。C成分であるコロイダルシリカの市販品としては、例えば、日産化学社製の商品名「スノーテックス ST-OXS」、「スノーテックス ST-OS」、「スノーテックス ST-O」、「スノーテックス ST-O-40」、「スノーテックス ST-OL」、「スノーテックス ST-OYL」、「スノーテックス ST-OUP」、「スノーテックス ST-PS-SO」、「スノーテックス ST-PS-MO」などのスノーテックス(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0066】
C成分である層状ケイ酸塩鉱物の市販品としては、例えば、クニミネ工業社製の商品名「スメクトン-SWF」、「スメクトン-SWN」、「スメクトン-SA」、「スメクトン-ST」などのスメクトンシリーズが挙げられる。
【0067】
C成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
C成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.001~10質量%である。一実施形態では、C成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上または7.0質量%以上である。別の実施形態では、C成分の量は、塗料組成物Iの総質量に対し、固形分量で10.0質量%以下、7.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下または0.01質量%以下である。
【0069】
塗料組成物Iでは、A成分の固形分質量に対する、B成分およびC成分の合計固形分質量の比、(B+C)/Aは、0.1~100の範囲である。当該比が0.1未満では、抗菌性または抗ウイルス性が不十分、または耐ラビング性が不十分となる。当該比が100を超えると、塗料組成物Iの対イオン安定性、塗膜外観、および塗膜Iの耐ラビング性が不十分となる。一実施形態では、当該比は、0.1以上、0.5以上、1.0以上、2.0以上、3.0以上、5.0以上、10.0以上、15.0以上、20.0以上、30.0以上、50.0以上または80.0以上である。別の実施形態では、当該比は、100.0以下、80.0以下、50.0以下、30.0以下、20.0以下、10.0以下、5.0以下、3.0以下、2.0以下、1.0以下または0.5以下である。
【0070】
塗料組成物Iは、A、BおよびC成分以外に、公知の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物または一般的な塗料組成物に用いられるその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、水;有機溶剤;顔料;表面調整剤、粘性剤などが挙げられる。
【0071】
水または有機溶媒を用いる場合、塗料組成物Iの固形分が、0.001~10質量%となる量とすることができる。
【0072】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエンなどが挙げられる。この他、特許文献2に記載の有機溶媒も挙げられる。
【0073】
塗料組成物Iの波長400nmにおける吸光度は、濁度を表す指標である。塗料組成物Iの波長400nmにおける吸光度は、例えば、200~1000、200~700または200~600である。吸光度が小さいほど、塗料組成物Iの濁度が小さいことを表す。
【0074】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の一実施形態では、前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物100質量部と水道水10質量部からなる混合液の、波長400nmにおける吸光度が、950以下である。
【0075】
・抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の調製方法
塗料組成物Iの調製方法は特に限定されず、A、BおよびC成分、任意にその他の成分を任意の順序で混合し、撹拌することで調製することができる。
【0076】
・抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物の用途
塗料組成物Iの用途は、特に限定されず、適宜選択することができる。塗料組成物Iの用途ないし塗装対象としては、例えば、自動車、電車などの車両の内装;航空機の内装;建築物の内装;便器、ドアノブ、ボタン、手すり、買い物かご、蛇口のハンドルないしレバー、テーブル、机、いす、キーボード、タッチパネル、スマートフォン、タブレットコンピューター、リモコン、玩具、冷蔵庫などの家電製品、医療機器、アクリル板などの飛沫感染防止用パーティションなどが挙げられる。
【0077】
塗料組成物Iを塗装する対象の材料としては、金属、プラスチック、塗膜、木材などが挙げられる。塗料組成物Iを用いた塗膜Iは、プラスチック基材との密着性にも優れる。
【0078】
一実施形態では、塗料組成物Iの用途は、自動車の内装である。別の実施形態では、塗料組成物Iの用途は、自動車の内装のプラスチック基材である。
【0079】
(抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法)
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法は、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を準備する工程(A)と、
前記抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を、布を用いての塗装およびスプレー塗装からなる群より選択される1つ以上の手段によって塗装する工程(B)と、
を含む、抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法である。
【0080】
・工程(A)
工程(A)では、上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を準備する。
【0081】
・工程(B)
工程(B)では、塗料組成物Iを、布を用いての塗装(以下、単に「布塗装」ということがある)およびスプレー塗装からなる群より選択される1つ以上の手段によって塗装する。
【0082】
布塗装またはスプレー塗装によって、それ以外のはけ塗装、ローラー塗装などの塗装に比べて、塗布ムラが発生しにくいという効果ないし利点がある。
【0083】
布塗装で用いる布は、特に限定されないが、例えば、ワイプオール(日本製紙クレシア製)などが挙げられる。
【0084】
スプレー塗装は、公知のスプレー塗装を用いることができ、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装などが挙げられる。また、スプレー塗装の塗装具は、特に限定されず、例えば、スプレーガン、アトマイザーなどの公知のスプレー塗装具を用いることができる。
【0085】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法の一実施形態では、前記スプレー塗装時の霧化粒径が0.1~100μmである。
【0086】
塗料組成物Iを塗装する対象としては、上述した塗装対象が挙げられる。
【0087】
塗料組成物Iを塗装する量は、例えば、1~1000g/mである。あるいは、乾燥膜厚0.01~2μmとなるように、塗料組成物Iを塗装してもよい。
【0088】
塗膜Iの形成方法では、工程(A)および(B)以外の工程を含んでいてもよい。例えば、工程(B)で塗装した塗料組成物Iの液膜または未硬化膜を乾燥させる工程などである。塗料組成物Iの液膜または未硬化膜を乾燥させる温度は、例えば、0~60℃であり、時間は、1~1800秒である。
【0089】
(抗菌性または抗ウイルス性塗膜)
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜は、上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を用いた、抗菌性または抗ウイルス性塗膜である。
【0090】
塗膜Iの乾燥膜厚は、例えば、0.01~2μmとすることができる。
【0091】
塗膜Iのチタン濃度は、例えば、1~1000mg/mとすることができる。
【0092】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の一実施形態では、前記塗膜の膜厚が、1μm以下であり、
前記塗膜中のチタン濃度が1~1000mg/mである。
【0093】
塗膜Iの色および透明度は特に限定されず、適宜設定することができる。一実施形態では、塗膜Iは、透明外観を有する。本発明において、「透明外観」は、塗布されていない部分と目視で差がないことを意味する。
【0094】
塗膜Iは、ラビング後のチタン残存率を40~100%とすることができる。ここで、ラビングの条件は、耐摩耗試験器(大栄科学精機製作所製)でネルを1cm角の平角磨耗子の先端に巻き、耐荷重8kg/100cmで往復速度30回/分にて往復距離12cmを100回往復後の評価である。
【0095】
本発明に係る抗菌性または抗ウイルス性塗膜の一実施形態では、ラビング後にチタン残存率が30%以上かつ透明外観を有する。
【0096】
(積層体)
本発明に係る積層体は、順に、
少なくとも表面がプラスチック製の基材と、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、積層体である。
【0097】
基材は、少なくとも表面がプラスチック製であればよく、表面よりも基材内側が金属などのプラスチック製以外の材料であってもよい。また、基材は、塗膜Iと積層される表面の少なくとも一部がプラスチック製であればよい。そのため、基材は、表面の一部がプラスチック製であり、表面の他の部分がプラスチック製以外の材料であってもよい。
【0098】
基材としては、例えば、自動車のステアリングホイール、ドアハンドル、ドアアームレスト、シフトノブ、エアコンパネル、ナビモニター、ダッシュボード、シート、アクセルペダル、フロアマット、シートベルト、センターアームレストなどが挙げられる。
【0099】
積層体では、順に、基材のプラスチック製部分と、塗膜Iとを有すればよく、基材のプラスチック製部分と塗膜Iとの間に、他の塗膜があってもよいし、なくてもよい。一実施形態では、積層体は、順に隣接して、少なくとも表面がプラスチック製の基材と、塗膜Iとを有する。
【0100】
(物品)
本発明に係る物品は、順に、
少なくとも表面がプラスチック製である被塗物と、
上記いずれかに記載の抗菌性または抗ウイルス性塗膜と、
を有する、物品である。
【0101】
被塗物は、少なくとも表面がプラスチック製であればよく、表面よりも被塗物内側が金属などのプラスチック製以外の材料であってもよい。また、被塗物は、塗膜Iと積層される表面の少なくとも一部がプラスチック製であればよい。そのため、被塗物は、表面の一部がプラスチック製であり、表面の他の部分がプラスチック製以外の材料であってもよい。
【0102】
被塗物としては、例えば、自動車のステアリングホイール、ドアハンドル、ドアアームレスト、シフトノブ、エアコンパネル、ナビモニター、ダッシュボード、シート、アクセルペダル、フロアマット、シートベルト、センターアームレストなどが挙げられる。
【0103】
物品では、順に、被塗物のプラスチック製部分と、塗膜Iとを有すればよく、被塗物のプラスチック製部分と塗膜Iとの間に、他の塗膜があってもよいし、なくてもよい。一実施形態では、物品は、順に隣接して、少なくとも表面がプラスチック製の被塗物と、塗膜Iとを有する。
【実施例0104】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0105】
実施例で用いた材料は以下のとおりである。
・A成分
アクリル樹脂1:楠本化成社製の商品名「NeoCryl A-2092」、アクリルエマルション、密着官能基:カルボキシル基、固形分47%
アクリル樹脂2:楠本化成社製の商品名「NeoCryl XK-190」、アクリルエマルション、密着官能基:カルボキシル基、固形分45%
アクリル樹脂3:楠本化成社製の商品名「NeoCryl A-1127」、アクリルエマルション、密着官能基:カルボキシル基、固形分44%
ポリウレタン樹脂:三洋化成工業社製の商品名「ユーコート D-338」、密着官能基:ヒドロキシル基、固形分35%
ポリアクリル酸:東亜合成社製の商品名「ジュリマー AC-10L」、密着官能基:カルボキシル基、固形分40%
ポリビニルアルコール:クラレ社製の商品名「クラレポバール 25-98R」、密着官能基:ヒドロキシル基、固形分93.5%
リン酸樹脂:日本ペイント社製の商品名「ACS 1016」、密着官能基:リン酸基、固形分51%
ポリビニルホルムアミド:ハイモ社製の商品名「ハイモ―ビス PS-800」、密着官能基:アミノ基
ポリカルボジイミド樹脂(硬化剤):日清紡ケミカル社製の商品名「カルボジライト E-02」、密着官能基:カルボジイミド基、固形分40質量%
アニオン系アクリルエマルション:大成ファインケミカル社製の商品名「3MF-333」、密着官能基:カルボキシル基、ヒドロキシル基、固形分45.5質量%
・B成分
光触媒酸化チタン:石原産業社製の商品名「STS-427」、水分散体、固形分20質量%
・C成分
コロイダルシリカ:日産化学社製の商品名「スノーテックス ST-O」、固形分20質量%
ケイ酸アルミニウムマグネシウム:クニミネ工業社製の商品名「スメクトン-SA」
・溶剤
エタノール
・その他(抗ウイルス剤)
酢酸銅:試薬 薬理純薬購入
酢酸銀:試薬 薬理純薬購入
【0106】
実施例で用いたその他の材料と装置は以下のとおりである。
・プラスチック基材:ポリカーボネート―ポリブチレンテレフタレートアロイ樹脂基材(150mm×50mm×2mm)
・黒色塗料(外観評価基板調製用):日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製のブラック塗装R2271
・スプレーガン:アネスト岩田社製の商品名「W-1」
・アトマイザースプレー:アズワン社製の商品名「トリガーノズル式スプレー」
・分光光度計:島津製作所社製の商品名「UVmini-1240」
・耐摩耗試験器:大栄科学精機製作所製
【0107】
実施例1
表1に示す配合(固形分、質量部)で、各成分を混合して塗料組成物Iを調製した。その塗料組成物Iをプラスチック基材上にスプレーガンで霧化粒径20μmで塗装し、温度25℃で12時間乾燥させて乾燥膜厚0.03μmの塗膜Iを形成した。
【0108】
実施例2~21および比較例1~6
配合または塗装条件を表1~3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様に塗料組成物Iまたは比較塗料組成物を調製し、プラスチック基材上に塗装して、塗膜Iまたは比較塗膜を得た。表1~3中、塗装方法のSGはスプレーガンによる塗装を表し、ASはアトマイザースプレーによる塗装を表す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
・対イオン安定性の評価
得られた塗料組成物Iまたは比較塗料組成物100gに対して、水道水10gを添加して撹拌した。そしてその混合液の吸光度absを分光光度計を用いて測定した。ブランクは純水とした。そして、濁度=吸光度×10000として、濁度を求めた。結果を表1~3に合わせて示す。
【0113】
・塗膜外観の評価
プラスチック基材に黒色塗料を塗装した。そのプラスチック基材上に塗料組成物Iまたは比較塗料組成物を塗装して、塗膜Iまたは比較塗膜を作製した。得られた塗膜Iまたは比較塗膜に対して、目視で塗膜の外観を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1~3に合わせて示す。
5:変化せず
4:わずかに塗布ムラ
3:ムラ発生
2:白化ムラ発生
1:顕著な白化ムラ
【0114】
・塗膜中のチタン濃度の測定
得られた塗膜Iまたは比較塗膜を、XRFにてチタン量を測定した。その量を表1~3に示す。
【0115】
・抗ウイルス性の評価
抗ウイルス性をJIS R1706に記載の方法に従って測定した。そして、以下の基準で評価した。結果を表1~3に合わせて示す。
合格:明所または暗所での抗ウイルス活性値が2.0以上
不合格:明所または暗所での抗ウイルス活性値が2.0未満
【0116】
・耐ラビング性(ドライ)の評価
耐摩耗試験器でネルを磨耗子の装置先端に巻き、耐荷重8kg/100cmで100回往復した。その後、ラビング前後のチタン量を、XRFで測定した。そして、以下の基準で評価した。結果を表1~3に合わせて示す。
5:チタンの残存率が80%以上
4:チタンの残存率が60%以上80%未満
3:チタンの残存率が40%以上60%未満
2:チタンの残存率が20%以上40%未満
1:チタンの残存率が20%未満
【0117】
・耐ラビング性(WET)の評価
ネルを脱イオン水で濡らしたこと以外は、ドライ条件の耐ラビング性と同様に試験した。そして、ラビング前後のチタン量を、XRFでのようにして測定した。そして、以下の基準で評価した。結果を表1~3に合わせて示す。
5:チタンの残存率が80%以上
4:チタンの残存率が60%以上80%未満
3:チタンの残存率が40%以上60%未満
2:チタンの残存率が20%以上40%未満
1:チタンの残存率が20%未満
【0118】
本発明によれば、対イオン性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を提供することができた。また、本発明によれば、そのような塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法を提供することができた。また、本発明によれば、そのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を提供することができた。また、本発明によれば、プラスチック製の基材とそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜との積層体を提供することができた。また、本発明によれば、プラスチック製表面を有する被塗物にそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を有する物品を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、対イオン性が良好であり、抗菌性または抗ウイルス性を有し、塗膜外観および耐ラビング性が良好な塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのような塗膜を形成可能な抗菌性または抗ウイルス性塗膜の形成方法を提供することができる。また、本発明によれば、そのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、プラスチック製の基材とそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜との積層体を提供することができる。また、本発明によれば、プラスチック製表面を有する被塗物にそのような抗菌性または抗ウイルス性塗膜を有する物品を提供することができる。