(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044217
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】全閉型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H02K9/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152128
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中濱 敬文
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰平
(72)【発明者】
【氏名】王 蕾
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP08
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR03
5H609RR16
5H609RR23
5H609RR24
5H609RR37
5H609RR38
(57)【要約】
【課題】より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成の全閉型回転電機を得る。
【解決手段】実施形態の全閉型回転電機は、ケースと、ステータと、ロータ鉄心と、ロータシャフトと、第一ファンと、第二ファンと、を備える。第一ファンは、ステータの内径よりも大きな外径を有し、ロータ鉄心およびロータシャフトと一体に回転することによって第一軸受を冷却可能に構成される。第二ファンは、ステータの内径よりも小さな外径を有し、ロータ鉄心およびロータシャフトと一体に回転することによって第二軸受を冷却可能に構成される。ロータシャフトには、軸方向の両端部のうち少なくとも一方の軸端面に開口しケースの外側に臨んだ第一開口と、当該ロータシャフトの外周面に開口しケース内の第二ファンと第二軸受との間の空間に臨んだ第二開口と、を含み、第一開口から第二開口に向けて当該ロータシャフトの内部を延びた空気通路が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレームと、前記フレームの軸方向の両端部を覆った一対の端壁と、を有したケースと、
前記フレームの内周面に固定されたステータと、
前記ステータの内周面と対向して配置されたロータ鉄心と、
前記ロータ鉄心の内周部に固定され、前記軸方向の一端部に設けられた第一軸受および前記軸方向の他端部に設けられた第二軸受を介して前記一対の端壁に回転可能に支持されたロータシャフトと、
前記ロータ鉄心の前記軸方向の一端部に固定され、前記ステータの内径よりも大きな外径を有し、前記ロータ鉄心および前記ロータシャフトと一体に回転することによって前記第一軸受を冷却可能に構成された第一ファンと、
前記ロータ鉄心の前記軸方向の他端部に固定され、前記ステータの内径よりも小さな外径を有し、前記ロータ鉄心および前記ロータシャフトと一体に回転することによって前記第二軸受を冷却可能に構成された第二ファンと、
を備え、
前記ロータシャフトには、前記軸方向の両端部のうち少なくとも一方の軸端面に開口し前記ケースの外側に臨んだ第一開口と、当該ロータシャフトの外周面に開口し前記ケース内の前記第二ファンと前記第二軸受との間の空間に臨んだ第二開口と、を含み、前記第一開口から前記第二開口に向けて当該ロータシャフトの内部を延びた空気通路が設けられた、全閉型回転電機。
【請求項2】
前記第二ファンは、前記第二軸受を冷却する空気流を生成する羽根を有し、
前記羽根は、前記第二ファンの径方向外方の端部から前記第二開口と面する位置まで前記径方向内方に延びた、請求項1に記載の全閉型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、全閉型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースの内周面に固定されたステータと、ステータの内周面と対向して配置されたロータ鉄心と、ロータ鉄心の内周部に固定されケースに一対の軸受を介して回転可能に支持されたロータシャフトと、ロータ鉄心の軸方向の一端部に固定され、ステータの内径よりも大きな外径を有した第一ファンと、ロータ鉄心の軸方向の他端部に固定され、ステータの内径よりも小さな外径を有した第二ファンと、を備えた全閉型回転電機が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の全閉型回転電機では、より不都合が少なくなるよう改善された新規な構成が得られれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の全閉型回転電機は、ケースと、ステータと、ロータ鉄心と、ロータシャフトと、第一ファンと、第二ファンと、を備える。ケースは、筒状のフレームと、フレームの軸方向の両端部を覆った一対の端壁と、を有する。ステータは、フレームの内周面に固定される。ロータ鉄心は、ステータの内周面と対向して配置される。ロータシャフトは、ロータ鉄心の内周部に固定され、軸方向の一端部に設けられた第一軸受および軸方向の他端部に設けられた第二軸受を介して一対の端壁に回転可能に支持される。第一ファンは、ロータ鉄心の軸方向の一端部に固定され、ステータの内径よりも大きな外径を有し、ロータ鉄心およびロータシャフトと一体に回転することによって第一軸受を冷却可能に構成される。第二ファンは、ロータ鉄心の軸方向の他端部に固定され、ステータの内径よりも小さな外径を有し、ロータ鉄心およびロータシャフトと一体に回転することによって第二軸受を冷却可能に構成される。ロータシャフトには、軸方向の両端部のうち少なくとも一方の軸端面に開口しケースの外側に臨んだ第一開口と、当該ロータシャフトの外周面に開口しケース内の第二ファンと第二軸受との間の空間に臨んだ第二開口と、を含み、第一開口から第二開口に向けて当該ロータシャフトの内部を延びた空気通路が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
【
図5】
図5は、第2変形例の全閉型回転電機の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0008】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
[実施形態]
図1は、実施形態の全閉型回転電機1の断面図である。
図1に示される全閉型回転電機1は、鉄道車両に搭載されるモータとして構成されており、ステータ3や、ケース5、ロータシャフト6、ロータ鉄心8、ファン10等を備えている。本実施形態では、ステータ3およびケース5は、全閉型回転電機1の固定子9aを構成し、ロータシャフト6、ロータ鉄心8およびファン10は、全閉型回転電機1の回転子9bを構成している。全閉型回転電機1は、ロータシャフト6の一端部6aに設けられたカップリング19等を介して回転力(トルク)を鉄道車両の車輪に伝達できるように接続されている。
【0010】
なお、以下の説明では、便宜上、全閉型回転電機1の回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。また、図中、軸方向の一端部側(駆動側、カップリング19側)を矢印Xで示し、径方向の外方を矢印Rで示す。
【0011】
ケース5は、フレーム2と、一対のブラケット15と、を有している。フレーム2は、回転中心Axを中心とした二重の円筒状に構成されている。すなわち、フレーム2は、外筒部2aと、内筒部2bと、を有している。外筒部2aと内筒部2bとの間には、後述するファン10の回転によって生成される空気流W1が通過する外側通路17が設けられている。
【0012】
外筒部2aの軸方向の中央部には、排気口18が設けられている。排気口18は、外筒部2aを径方向に貫通した貫通孔である。排気口18は、外筒部2aや、内筒部2b、ブラケット15、ファン10等によって囲まれステータ3の周囲を囲むように延びた外側通路17と連通している。
【0013】
外筒部2aの軸方向の両端部には、一対の端壁2c,2dが設けられている。端壁2cは、外筒部2aの軸方向の一端部から径方向内方に延びている。端壁2cの径方向内方の端部には、ブラケット15がネジやボルト等の結合具によって固定(一体化)されている。ブラケット15は、径方向および周方向に沿って広がった円盤状に構成され、端壁2cとともに外側通路17を軸方向の一端部側から覆っている。ブラケット15および端壁2cは、フレーム2の軸方向の一端部を覆った第一端壁の一例である。
【0014】
ブラケット15の内周面には、軸受7aが取り付けられている。軸受7aは、コロ軸受や玉軸受等によって構成され、ロータシャフト6を回転中心Ax回りに回転可能に支持している。また、ブラケット15における軸受7aの近傍には、吸気口16が設けられている。吸気口16は、ブラケット15を軸方向に貫通した貫通孔であり、外側通路17と連通している。吸気口16は、第一吸気口の一例であり、軸受7aは、第一軸受の一例である。
【0015】
端壁2dは、外筒部2aの軸方向の他端部から径方向内方に延びている。端壁2dの径方向内方の端部には、ブラケット15がネジやボルト等の結合具によって固定(一体化)されている。ブラケット15は、径方向および周方向に沿って広がった円盤状に構成され、端壁2dとともに外側通路17を軸方向の他端部側から覆っている。ブラケット15および端壁2dは、フレーム2の軸方向の他端部を覆った第二端壁の一例である。
【0016】
ブラケット15の内周面には、軸受7bが取り付けられている。軸受7bは、コロ軸受や玉軸受等によって構成され、ロータシャフト6を回転中心Ax回りに回転可能に支持している。また、ブラケット15における軸受7bの近傍には、吸気口16が設けられている。吸気口16は、ブラケット15を軸方向に貫通した貫通孔であり、外側通路17と連通している。吸気口16は、第二吸気口の一例であり、軸受7bは、第二軸受の一例である。
【0017】
ステータ3は、ステータ鉄心3aと、コイル4と、を有している。ステータ鉄心3aは、回転中心Axを中心とした円環状に構成され、フレーム2(内筒部2b)の内周面2eに固定されている。ステータ鉄心3aは、磁性材によって作られた複数の鋼板を軸方向に積層することによって構成された所謂積層コアである。
【0018】
コイル4は、ステータ鉄心3aのティース3tに巻回されている。コイル4のコイルエンドは、ステータ鉄心3aの軸方向の両端面から張り出している。また、コイル4には、ティース3tに対向して径方向に延びた隙間4eが設けられている。隙間4eは、後述するファン10の回転によって生成される空気流W2が循環する内側通路27を構成している。
【0019】
本実施形態では、ステータ3は、外側通路17の内側で内筒部2bや、ロータ鉄心8、ファン10等によって囲まれた密閉空間25に収容されている。ステータ3は、コイル4への通電によってケース5の内部に磁界を発生させ、当該磁界との相互作用によってステータ3の径方向内方に位置されたロータ鉄心8ひいてはロータシャフト6を回転中心Ax回りの周方向に回転させる。
【0020】
ロータ鉄心8は、円環状に構成されている。ロータ鉄心8の外周面は、僅かな径方向の隙間を介してステータ鉄心3aの内周面3bと対向している。また、ロータ鉄心8の内周部にはロータシャフト6が取り付けられている。ロータシャフト6は、軸方向の両端部に設けられた一対の軸受7a,7bを介してブラケット15に回転可能に支持されている。ロータシャフト6の軸方向の一端部6aは、ケース5の外側に突出しており、この突出部分にカップリング19、具体的にはギヤカップリングの軸端嵌合部等が結合される。
【0021】
ロータ鉄心8は、ロータシャフト6の外周面6cに圧入やキー嵌合等によって固定されている。ロータ鉄心8は、磁性材によって作られた複数の鋼板8aを軸方向に積層することによって構成されている。また、ロータ鉄心8は、ファン10のうち軸方向の一端部側に位置された第一ファン10xと軸方向の他端部側に位置された第二ファン10yとの間に挟まれた状態で固定されている。第一ファン10xおよび第二ファン10yは、ロータ鉄心8の鉄心押さえとしても機能している。
【0022】
図2は、
図1の第一ファン10xの拡大図である。
図2に示されるように、第一ファン10xは、主板10aと、複数の羽根11,13と、複数のシュラウド12,14と、を有している。主板10aは、漏斗形状(ラッパ形状)に構成されている。具体的には、主板10aは、
図2の断面視では、ロータ鉄心8側から端壁2cに向けて軸方向の一端部側ほど径方向外方に向かうように傾斜して延びている。主板10aは、ロータシャフト6の外周面6cに圧入やキー嵌合等によって固定されている。
【0023】
また、主板10aの外周縁部10bは、内筒部11bの軸方向の一端部から径方向内方に延びた端壁2fと僅かな径方向の微小隙間を介して対向している。本実施形態では、このような主板10aおよび端壁2fによって、ケース5内がステータ3側の略密閉された密閉空間25(内側通路27)と軸受7a側の外側通路17とに仕切られている。外側通路17は、密閉空間25よりも軸方向の一端部側で吸気口16から径方向外方に延びかつ密閉空間25よりも径方向外方で軸方向の中央部側に向けて延びて排気口18へと至る。なお、端壁2fと端壁2cとの間の径方向内方の端部には、外側通路17におけるブラケット15側の空間と連通する連通孔2hが設けられている。
【0024】
羽根11は、主板10aの傾斜部分における密閉空間25側の面に設けられている。主板10aには、複数の羽根11が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。複数の羽根11は、周方向に等間隔または不等間隔で配置される。また、複数の羽根11のステータ3側、すなわち主板10aとは反対側の端部は、円環状のシュラウド12と連結されている。
【0025】
第一ファン10xは、回転中心Ax回りの羽根11の回転によって密閉空間25内で内側通路27を循環する空気流W2を生成可能である。空気流W2は、内側通路27を構成するコイル4の隙間4eや、シュラウド12と周方向に並んだ複数の羽根11と主板10aの間の隙間、コイル4と内筒部2bとの間の隙間等を循環し、発熱部としてのコイル4と熱交換を行う。羽根11は、内側ブレード等とも称され、空気流W2は、第二空気流等とも称される。
【0026】
羽根13は、主板10aの傾斜部分における外側通路17側の面に設けられている。主板10aには、複数の羽根13が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。複数の羽根13は、周方向に等間隔または不等間隔で配置される。また、複数の羽根13の軸受7a側、すなわち主板10aとは反対側の端部は、円環状のシュラウド14と連結されている。
【0027】
第一ファン10xは、回転中心Ax回りの羽根13の回転によって吸気口16から外側通路17に吸気され排気口18から排気される空気流W1を生成可能である。空気流W1は、外側通路17を構成するブラケット15(軸受7a)と主板10aとの間の隙間や、シュラウド14と周方向に並んだ複数の羽根13と主板10aとの間の隙間、外筒部2aと内筒部2bとの間の隙間等を流れ、発熱部としての軸受7aと熱交換を行う。羽根13は、外側ブレード等とも称され、空気流W1は、第一空気流等とも称される。
【0028】
図3は、第二ファン10yの拡大図である。
図3に示されるように、第二ファン10yは、主板10aと、複数の羽根11,13と、複数のシュラウド12,14と、を有している。主板10aは、漏斗形状(ラッパ形状)に構成されている。具体的には、主板10aは、
図3の断面視では、ロータ鉄心8側から端壁2dに向けて軸方向の他端部側ほど径方向外方に向かうように傾斜して延びている。主板10aは、ロータシャフト6の外周面6cに圧入やキー嵌合等によって固定されている。
【0029】
また、主板10aの外周縁部10bは、内筒部11bの軸方向の他端部から径方向内方に延びた端壁2gと僅かな径方向の微小隙間を介して対向している。本実施形態では、このような主板10aおよび端壁2gによって、ケース5内がステータ3側の密閉空間25と軸受7b側の外側通路17とに仕切られている。外側通路17は、密閉空間25よりも軸方向の他端部側で吸気口16から径方向外方に延びかつ密閉空間25よりも径方向外方で軸方向の中央部側に向けて延びて排気口18へと至る。なお、端壁2gと端壁2dとの間の径方向内方の端部には、外側通路17におけるブラケット15(軸受7b)側の空間と連通する連通孔2iが設けられている。
【0030】
羽根11は、主板10aの傾斜部分における密閉空間25側の面に設けられている。主板10aには、複数の羽根11が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。複数の羽根11は、周方向に等間隔または不等間隔で配置される。また、複数の羽根11のステータ3側、すなわち主板10aとは反対側の端部は、円環状のシュラウド12と連結されている。
【0031】
第二ファン10yは、回転中心Ax回りの羽根11の回転によって密閉空間25内で内側通路27を循環する空気流W2を生成可能である。空気流W2は、内側通路27を構成するコイル4の隙間4eや、シュラウド12と周方向に並んだ複数の羽根11と主板10aの間の隙間、コイル4と内筒部2bとの間の隙間等を循環し、発熱部としてのコイル4と熱交換を行う。
【0032】
羽根13は、主板10aの傾斜部分における外側通路17側の面に設けられている。主板10aには、複数の羽根13が回転中心Axを中心として放射状に延びた状態に設けられている。複数の羽根13は、周方向に等間隔または不等間隔で配置される。また、複数の羽根13の軸受7b側、すなわち主板10aとは反対側の端部は、円環状のシュラウド14と連結されている。
【0033】
第二ファン10yは、回転中心Ax回りの羽根13の回転によって吸気口16から外側通路17に吸気され排気口18から排気される空気流W1を生成可能である。空気流W1は、外側通路17を構成するブラケット15(軸受7b)と主板10aとの間の隙間や、シュラウド14と周方向に並んだ複数の羽根13と主板10aとの間の隙間、外筒部2aと内筒部2bとの間の隙間等を流れ、発熱部としての軸受7bと熱交換を行う。
【0034】
このような構成の全閉型回転電機1において、回転子9bはロータシャフト6に第一ファン10xおよび第二ファン10yが一体化された状態でステータ3の内周部に軸方向の一端部側から挿入して組み立てられる。そのため、第一ファン10xおよび第二ファン10yのうちいずれか一方は、ステータ3の内径Drよりも小さくする必要がある。
【0035】
一方、第一ファン10xおよび第二ファン10yは、外径が大きくなるほど遠心力や静圧が大きくなり、内気流量および外気流量が増大するという利点がある。そこで、本実施形態では、第二ファン10yの最大径D’dは、ステータ3の内径Drよりも小さく設定され、第一ファン10xの最大径Dd(
図2参照)は、ステータ3の内径Drよりも大きく設定されている。
【0036】
また、本実施形態では、第一ファン10xおよび第二ファン10yの内側通路27側の羽根11の枚数は、外側通路17側の羽根13の枚数よりも多く設定されている。さらに、内側通路27側の羽根11の外径は、外側通路17側の羽根13の外径よりも大きく設定されている。回転子9bが角速度で回転している場合、羽根11,13にはそれらの外径および内径の二乗差で静圧が生じる。
【0037】
ここで、第一ファン10xの羽根13の静圧をΔPx、空気密度をρ、回転子9bが回転する際の角速度をω、羽根13の外径をDbo、羽根13の内径をDboiとすると、第一ファン10xの羽根13の回転による静圧ΔPxを次の式1で表すことができる。
【0038】
ΔPx=ρω2(Dbo2-Dboi2)/8・・・(式1)
【0039】
また、第二ファン10yの羽根13の静圧をΔPy、空気密度をρ、回転子9bが回転する際の角速度をω、羽根13の外径をD’bo、羽根13の内径をD’boiとすると、第二ファン10yの羽根13の回転による静圧ΔPyを次の式2で表すことができる。
【0040】
ΔPy=ρω2(D’bo2-D’boi2)/8・・・(式2)
【0041】
このように、本実施形態では、第二ファン10yの羽根13の回転による静圧ΔPyは、第一ファン10xの羽根13の回転による静圧ΔPxよりも小さい。よって、第二ファン10y側の外気流量は、第一ファン10x側の外気流量よりも少なくなる。したがって、空気流W1による第二ファン10y側の軸受7bの冷却性が第一ファン10x側の軸受7aの冷却性と比べて低下し、ひいては軸受7a,7bに温度バラツキが生じてしまう虞がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、ロータシャフト6の内部に空気通路20が設けられている。空気通路20は、軸方向に延びた第一部分21と、径方向に延びた第二部分22と、を有している。本実施形態では、第一部分21は、ロータシャフト6の軸方向の他端部6bの軸端面6b1に開口した入口開口20aから軸方向の一端部側に向けて延びている。第一部分21は、入口開口20aを介してケース5の外側の空間と連通している。入口開口20aは、第一開口の一例である。
【0043】
第二部分22は、ロータシャフト6の外周面6cに開口した出口開口20bから径方向内方に向けて延び第一部分21と連通している。第二部分22は、出口開口20bを介してケース5内の第二ファン10yと軸受7bとの間の空間、すなわち外側通路17と連通している。ロータシャフト6には、周方向に互いに間隔をあけて複数の第二部分22が設けられている。出口開口20bは、第二開口の一例である。
【0044】
本実施形態では、回転子9bが角速度で回転している場合、空気通路20が設けられたロータシャフト6にも静圧が生じる。ここで、ロータシャフト6の静圧をΔPs、空気密度をρ、回転子9bが回転する際の角速度をω、ロータシャフト6の外径をDs、ロータシャフト6の内径を0とすると、ロータシャフト6の回転による静圧ΔPsを次の式3で表すことができる。
【0045】
ΔPs=ρω2(Ds2)/8・・・(式3)
【0046】
本実施形態では、このロータシャフト6の回転による静圧ΔPsが第二ファン10yの羽根13の回転による静圧ΔPyに加わることで、吸気口16および空気通路20から第二ファン10yの外側通路17に導入される空気流W1の流量が増大する。ロータシャフト6の回転による遠心力によって空気通路20から第二ファン10y側に外気が導入される。よって、第一ファン10x側と第二ファン10y側の流量差がより小さくなり、ひいては一対の軸受7a,7bの冷却性のアンバランスを抑制することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態では、全閉型回転電機1は、筒状のフレーム2と、フレーム2の軸方向の両端部を覆った一対の端壁2c,2dと、を有したケース5と、フレーム2の内周面2b1に固定されたステータ3と、ステータ3の内周面3bと対向して配置されたロータ鉄心8と、ロータ鉄心8の内周部に固定され、軸方向の一端部に設けられた軸受7a(第一軸受)および軸方向の他端部に設けられた軸受7b(第二軸受)を介して一対の端壁2c,2dに回転可能に支持されたロータシャフト6と、ロータ鉄心8の軸方向の一端部に固定され、ステータ3の内径Drよりも大きな外径Dbを有し、ロータ鉄心8およびロータシャフト6と一体に回転することによって軸受7aを冷却可能に構成された第一ファン10xと、ロータ鉄心8の軸方向の他端部に固定され、ステータ3の内径Drよりも小さな外径D’dを有し、ロータ鉄心8およびロータシャフト6と一体に回転することによって軸受7bを冷却可能に構成された第二ファン10yと、を備え、ロータシャフト6には、軸方向の両端部のうち少なくとも一方の軸端面6b1に開口しケース5の外側に臨んだ入口開口20a(第一開口)と、当該ロータシャフト6の外周面6cに開口しケース5内の第二ファン10yと軸受7bとの間の外側通路17(空間)に臨んだ出口開口20b(第二開口)と、を含み、入口開口20aから出口開口20bに向けて当該ロータシャフト6の内部を延びる空気通路20が設けられている。
【0048】
このような構成によれば、空気通路20によって第二ファン10y側の外気流量が増大するため、軸受7bの温度上昇をより効果的に抑制することができ、ひいては第二ファン10yによる軸受7bの冷却性が第一ファン10xによる軸受7aの冷却性と比べて低下するのを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、空気通路20が第二ファン10y側、すなわちカップリング19とは反対側となるロータシャフト6の軸方向の他端部6bに設けられているため、ロータシャフト6の剛性や強度の低下を抑制できたり、空気通路20内で軸受7bの近傍を流れる空気流W1との熱交換によって軸受7bの温度上昇をより効果的に抑制することができたりする場合がある。
【0050】
なお、本実施形態では、空気通路20の入口開口20aが第二ファン10y側の軸端面6b1に設けられた場合が例示されたが、この例には限定されず、第一ファン10x側、すなわちカップリング19側の軸端面に設けられてもよい。
【0051】
[第1変形例]
図4は、第1変形例の全閉型回転電機1Aの断面図である。全閉型回転電機1Aは、上記実施形態の全閉型回転電機1と同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0052】
ただし、本変形例では、
図4に示されるように、第二ファン10yの羽根13Aが主板10aの外周縁部10bから出口開口20bと面する位置まで径方向内方に延びている点が、上記実施形態と相違している。羽根13Aの径方向内方の端部は、出口開口20bの近傍に隣接して位置されている。このように、本変形例では、第二ファン10yは、羽根13Aの外径D’boと内径D’boiとの差がより大きくなるように構成されている。外周縁部10bは、径方向外方の端部の一例である。
【0053】
上述したように、回転子9bが角速度ωで回転している場合、羽根13Aにはその外径D’boおよび内径D’boiの二乗差で静圧が生じる。したがって、本変形例によれば、第二ファン10yの羽根13Aの回転による静圧ΔPyがより大きくなり、吸気口16および空気通路20から第二ファン10yの外側通路17に導入される空気流W1の流量が増大する。
【0054】
よって、本変形例によれば、軸受7bの温度上昇をより一層効果的に抑制することができ、ひいては第二ファン10yによる軸受7bの冷却性が第一ファン10xによる軸受7aの冷却性と比べて低下するのをより抑制することができる。
【0055】
[第2変形例]
図5は、第2変形例の全閉型回転電機1Bの断面図である。全閉型回転電機1Bは、上記実施形態の全閉型回転電機1と同様の構成を備えている。よって、全閉型回転電機1Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
ただし、本変形例では、
図5に示されるように、ロータシャフト6の軸方向の両端部に空気通路20,20Aが設けられている点が、上記実施形態と相違している。空気通路20は、上述したロータシャフト6の軸方向の他端部6bの軸端面6b1に開口した入口開口20aと、ロータシャフト6の外周面6cに開口した出口開口20bと、を有し、ケース5の外側とケース5内の第二ファン10yと軸受7bとの間の空間(外側通路17)とを連通している。
【0057】
一方、空気通路20Aは、ロータシャフト6の軸方向の一端部6aの軸端面6a1に開口した入口開口20aと、ロータシャフト6の外周面6cに開口した出口開口20bと、を有し、ケース5の外側とケース5内の第一ファン10xと軸受7aとの間の空間(外側通路17)とを連通している。
【0058】
本変形例によれば、一対の空気通路20,20Aによって、第一ファン10xの羽根13の回転による静圧ΔPxや、第二ファン10yの羽根13Aの回転による静圧ΔPyを調整することにより、一対の軸受7a,7bの冷却性のアンバランスをより抑制することができる場合がある。
【0059】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B…全閉型回転電機、2…フレーム、2c,2d…端壁、2e…内周面、3…ステータ、3b…内周面、5…ケース、6…ロータシャフト、7a…軸受(第一軸受)、7b…軸受(第二軸受)、8…ロータ鉄心、10b…外周縁部(端部)、10x…第一ファン、10y…第二ファン、13,13A…羽根、17…外側通路(空間)、20…空気通路、20a…入口開口(第一開口)、20b…出口開口(第二開口)、R…径方向、W1…空気流、X…軸方向。