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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044229
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】除菌状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
A61L2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152145
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】521411150
【氏名又は名称】山本 理浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】山本 理浩
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA29
4C058CC05
4C058DD14
4C058EE26
4C058JJ06
(57)【要約】
【課題】使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置において、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であっても、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能な除菌状態判定装置を提供する。
【解決手段】除菌状態判定装置1は、手の温度を検知するための温度検知機構2と、温度検知機構2が電気的に接続される制御部5とを備えており、制御部5は、温度検知機構2によって検知される温度である第1温度と、第1温度が検知された後の所定時間内に温度検知機構2によって検知される温度である第2温度とを記憶するとともに、第1温度と第2温度との差である第1温度差に基づいて、手の除菌状態の良否を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が除菌用の溶液を手につけてから前記手を擦り合わせて前記手の除菌を行った後に、前記手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置であって、
前記手の温度を検知するための温度検知機構と、前記温度検知機構が電気的に接続される制御部とを備え、
前記制御部は、前記温度検知機構によって検知される温度である第1温度と、前記第1温度が検知された後の所定時間内に前記温度検知機構によって検知される温度である第2温度とを記憶するとともに、前記第1温度と前記第2温度との差である第1温度差に基づいて、前記手の除菌状態の良否を判定することを特徴とする除菌状態判定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1温度が検知される前の所定時間内に前記温度検知機構によって検知された温度である第3温度を記憶するとともに、前記第3温度と前記第1温度との差である第2温度差と前記第1温度差とに基づいて、前記手の除菌状態の良否を判定することを特徴とする請求項1記載の除菌状態判定装置。
【請求項3】
前記温度検知機構が内部に取り付けられる筺体と、前記筺体の内部に前記手が入れられたことを検知するための検知機構と、前記筺体の内部で前記溶液を噴射する溶液噴射機構とを備え、
前記制御部には、前記検知機構と前記溶液噴射機構とが電気的に接続され、
前記制御部は、前記筺体の内部に前記手が入れられたことが前記検知機構によって検知されると、前記第3温度を記憶し、その後、前記溶液噴射機構に前記溶液を噴射させてから前記第1温度を記憶し、その後、前記第2温度を記憶するとともに、前記第1温度差と前記第2温度差とに基づいて、前記手の除菌状態の良否を判定することを特徴とする請求項2記載の除菌状態判定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記手の除菌状態が不良であると判定すると、判定後の所定時間内に前記温度検知機構によって検知される温度である第4温度を記憶するとともに、前記第1温度と前記第4温度との差である第3温度差に基づいて、前記手の除菌状態の良否を再判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の除菌状態判定装置。
【請求項5】
前記温度検知機構が内部に取り付けられる筺体と、前記筺体の内部に配置されるとともに紫外光を照射する紫外線照明とを備え、
前記制御部には、前記紫外線照明が電気的に接続され、
前記溶液には、紫外光が当たると発光する蛍光剤が含まれており、
前記制御部は、前記手の除菌状態が不良であると判定すると、前記紫外線照明に紫外光を照射させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の除菌状態判定装置。
【請求項6】
前記筐体の内部を撮影する撮影機構を備え、
前記制御部には、前記撮影機構が電気的に接続され、
前記制御部は、前記紫外線照明に紫外光を照射させた状態で前記撮影機構に画像を撮影させ、前記撮影機構に撮影させた前記画像を取り込むとともに、取り込んだ前記画像に基づいて、前記手の除菌状態の良否を再判定することを特徴とする請求項5記載の除菌状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、UV反応性媒体が含まれた消毒液を手につけてから手を擦り合わせて手の消毒を行った後に、手の消毒の質を評価して消毒状態の良否を判定するための判定装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の判定装置は、筺体と、筺体の内部に配置されるUV照明と、筺体の内部に配置された手を撮影するためのデジタルカメラと、デジタルカメラが接続されるコンピュータとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の判定装置で消毒状態の良否を判定するときには、使用者は、消毒液を手につけて手を擦り合わせた後に、筺体の内部に手を入れる。筺体の内部に手が入ると、UV照明が手に向かって紫外光を照射する。デジタルカメラは、紫外光を照射された手の画像を撮影する。コンピュータは、デジタルカメラが撮影した画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて、消毒状態の良否(すなわち、消毒の質が許容範囲内であるのか否か)を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3209337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の判定装置では、消毒状態の良否を判定するためのデータとして画像が利用されているため、消毒状態の良否を判定するためのデータの容量が大きくなるおそれがある。また、消毒状態の良否を判定するためのデータの容量が大きくなると、コンピュータでの処理に時間がかかって、消毒状態の良否の判定に時間がかかるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置において、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であっても、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能な除菌状態判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願発明者は種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度と、除菌用の溶液が手の全体に行き亘るように除菌用の溶液がついた手をしっかりと擦り合わせた後の手の温度とに明らかな差が生じることを知見するに至った。具体的には、手を擦り合わせるときの摩擦熱の影響で、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度よりも、除菌用の溶液がついた手をしっかりと擦り合わせた後の手の温度の方が明らかに高くなることを知見するに至った。
【0008】
また、本願発明者は、この温度の差を指標として、手の除菌状態の良否を適切に推定することが可能であることを知見するに至った。すなわち、本願発明者は、この温度差に基づいて、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であることを知見するに至った。さらに、本願発明者は、手の温度を利用して手の除菌状態の良否を判定すると、除菌状態の良否を判定するためのデータの容量が小さくなって、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になることを知見するに至った。
【0009】
本発明の除菌状態判定装置は、これらの新たな知見に基づくものであり、使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置であって、手の温度を検知するための温度検知機構と、温度検知機構が電気的に接続される制御部とを備え、制御部は、温度検知機構によって検知される温度である第1温度と、第1温度が検知された後の所定時間内に温度検知機構によって検知される温度である第2温度とを記憶するとともに、第1温度と第2温度との差である第1温度差に基づいて、手の除菌状態の良否を判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の除菌状態判定装置では、制御部は、第1温度と、第1温度が検知された後の所定時間内に検知される第2温度との差である第1温度差に基づいて、手の除菌状態の良否を判定している。そのため、本発明では、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度が第1温度となり、除菌用の溶液をつけてから擦り合わせた後の手の温度が第2温度となるように、使用者が手の温度を測定することで、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になる。また、本発明では、手の温度を利用して手の除菌状態の良否を判定しているため、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になる。すなわち、本発明では、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であっても、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、手の温度を利用して手の除菌状態の良否を判定しているため、紫外光が当たると発光する蛍光剤が除菌用の溶液に含まれていなくても、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になる。また、本発明では、特許文献1に記載された判定装置のようにデジタルカメラを備えていなくても、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になるため、除菌状態判定装置の構成を簡素化して、除菌状態判定装置のコストを低減することが可能になる。
【0012】
本発明において、制御部は、第1温度が検知される前の所定時間内に温度検知機構によって検知された温度である第3温度を記憶するとともに、第3温度と第1温度との差である第2温度差と第1温度差とに基づいて、手の除菌状態の良否を判定することが好ましい。本願発明者の検討によると、除菌用の溶液をつける前の手の温度と、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度とに明らかな差が生じるため、このように構成すると、除菌用の溶液をつける前の手の温度が第3温度となるように、使用者が手の温度を測定することで、第2温度差に基づいて、除菌用の溶液が手につけられたのか否かを適切に判定することが可能になる。したがって、第1温度差と第2温度差とに基づいて、手の除菌状態の良否をより適切に判定することが可能になる。
【0013】
本発明において、除菌状態判定装置は、温度検知機構が内部に取り付けられる筺体と、筺体の内部に手が入れられたことを検知するための検知機構と、筺体の内部で溶液を噴射する溶液噴射機構とを備え、制御部には、検知機構と溶液噴射機構とが電気的に接続され、制御部は、筺体の内部に手が入れられたことが検知機構によって検知されると、第3温度を記憶し、その後、溶液噴射機構に溶液を噴射させてから第1温度を記憶し、その後、第2温度を記憶するとともに、第1温度差と第2温度差とに基づいて、手の除菌状態の良否を判定することが好ましい。このように構成すると、除菌用の溶液をつける前の手の温度が第3温度となり、かつ、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度が第1温度となるように、使用者の手の温度を自動的に測定することが可能になる。
【0014】
本発明において、制御部は、手の除菌状態が不良であると判定すると、判定後の所定時間内に温度検知機構によって検知される温度である第4温度を記憶するとともに、第1温度と第4温度との差である第3温度差に基づいて、手の除菌状態の良否を再判定することが好ましい。このように構成すると、手の除菌状態が不良であると判定されてから再度擦り合わせた後の手の温度が第4温度となるように、使用者が手の温度を測定することで、再度擦り合わせた後の手の除菌状態の良否を判定することが可能になる。
【0015】
本発明において、除菌状態判定装置は、温度検知機構が内部に取り付けられる筺体と、筺体の内部に配置されるとともに紫外光を照射する紫外線照明とを備え、制御部には、紫外線照明が電気的に接続され、溶液には、紫外光が当たると発光する蛍光剤が含まれており、制御部は、手の除菌状態が不良であると判定すると、紫外線照明に紫外光を照射させることが好ましい。このように構成すると、筺体の内部に配置された手に照射される紫外光によって、除菌用の溶液が全体に行き亘っていない手を不均一に光らせることが可能になる。したがって、手の中で、除菌用の溶液が行き亘っていない箇所を、たとえば、目視で確認することが可能になる。
【0016】
本発明において、除菌状態判定装置は、筐体の内部を撮影する撮影機構を備え、制御部には、撮影機構が電気的に接続され、制御部は、紫外線照明に紫外光を照射させた状態で撮影機構に画像を撮影させ、撮影機構に撮影させた画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて、手の除菌状態の良否を再判定することが好ましい。このように構成すると、手の温度を使用して手の除菌状態を判定することに加えて、手の画像を利用して手の除菌状態を再判定することができるため、手の除菌状態の良否の再判定に時間がかかるおそれはあるが、手の除菌状態の良否の判定精度を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための除菌状態判定装置において、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であっても、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかる除菌状態判定装置の機械的な構成を説明するための概略図である。
図2図1に示す除菌状態判定装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3図1に示す除菌状態判定装置を用いた手の除菌状態の良否の判定手順を説明するためのフローチャートである。
図4図1に示す除菌状態判定装置を用いた手の除菌状態の良否の判定方法の変更例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(除菌状態判定装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる除菌状態判定装置1の機械的な構成を説明するための概略図である。図2は、図1に示す除菌状態判定装置1の構成を説明するためのブロック図である。
【0021】
本形態の除菌状態判定装置1は、使用者が除菌用の溶液を手につけてから手を擦り合わせて手の除菌を行った後に、手の除菌状態の良否を判定するための装置である。より具体的には、除菌状態判定装置1は、使用者が除菌用の溶液を片手または両手をつけてから両手を擦り合わせて両手の除菌を行った後に、両手の除菌状態の良否を判定するための装置である。除菌用の溶液は、たとえば、エタノール溶液等の除菌用のアルコール溶液(アルコール消毒液)である。除菌用の溶液は、使用者が手動で操作することで溶液を吐出する吐出容器に収容されている。除菌状態判定装置1は、たとえば、吐出容器が設置される店舗等の店頭や、吐出容器が設置される洗面台等の近傍に設置されている。なお、本明細書における「除菌用の溶液」には、ジェル状のものも含まれている。
【0022】
除菌状態判定装置1は、手の温度を検知するための温度検知機構2と、温度検知機構2が内部に取り付けられる筺体3と、筺体3に手が入れられたことを検知するための検知機構4と、温度検知機構2および検知機構4が電気的に接続される制御部5とを備えている。筺体3は、たとえば、前面に開口を有する直方体の箱状に形成されている。使用者は、筺体3の前面の開口から筺体3の内部に手を入れることが可能になっている。
【0023】
温度検知機構2は、非接触式の温度センサである。また、温度検知機構2は、たとえば、1箇所の温度を検知することが可能な温度センサ、または、サーモグラフィー等で使用される複数箇所の温度を検知することが可能な多点式の温度センサである。温度検知機構2は、たとえば、筺体3の内部の天面に取り付けられている。温度検知機構2は、筐体3の内部に配置された手の温度を測定する。検知機構4は、人感センサである。検知機構4は、たとえば、筺体3の内部に取り付けられている。制御部5は、たとえば、エッジPCであり、筺体3に取り付けられるか、または、筐体3の近傍に設置されている。
【0024】
(手の除菌状態の良否の判定手順)
図3は、図1に示す除菌状態判定装置1を用いた手の除菌状態の良否の判定手順を説明するためのフローチャートである。図3において、左側に記載される各ステップでの行為は、使用者が行う行為であり、右側に記載される各ステップでの処理は、制御部5が行う処理である。
【0025】
除菌状態判定装置1を用いて手の除菌状態の良否を判定するときには、まず、使用者は、除菌用の溶液を手につける(ステップST1)。その後、使用者は、筺体3の内部に手を入れる(ステップST2)。筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第1温度T1を記憶する(ステップST3)。その後、使用者は、筺体3の内部から手を出し、手を擦り合わせて手の除菌を行う(ステップST4)。ステップST4では、使用者は、両手を擦り合わせて両手の除菌を行う。その後、使用者は、筺体3の内部に手を入れる(ステップST5)。
【0026】
筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第2温度T2を記憶する(ステップST6)。その後、制御部5は、第1温度T1と第2温度T2との差である第1温度差ΔT1を算出し、算出した第1温度差ΔT1に基づいて手の除菌状態の良否を判定する(ステップST7)。具体的には、ステップST4において、除菌用の溶液が手の全体に行き亘るように除菌用の溶液がついた手をしっかりと擦り合わせていれば、第2温度T2が高くなって、第1温度差ΔT1が所定の基準値以上となるため、制御部5は、ステップST7において、第1温度差ΔT1が基準値以上であれば、手の除菌状態が良好であると判定し、第1温度差ΔT1が基準値未満であれば、手の除菌状態が不良であると判定する。
【0027】
このように、制御部5は、温度検知機構2によって検知される温度である第1温度T1と、第1温度T1が検知された後の所定時間内に温度検知機構2によって検知される温度である第2温度T2とを記憶するとともに、第1温度T1と第2温度T2との差である第1温度差ΔT1に基づいて、手の除菌状態の良否を判定する。
【0028】
また、制御部5は、手の除菌状態の良否の判定結果を使用者に知らせる。たとえば、制御部5は、筺体3の上面等に取り付けられる光源を発光させることで、手の除菌状態の良否の判定結果を使用者に知らせる。この場合、制御部5は、たとえば、手の除菌状態が良好であれば、緑色の光源を発光させ、手の除菌状態が不良であれば、赤色の光源を発光させる。また、制御部5は、筺体3に取り付けられるスピーカーから発せられる音声を用いて判定結果を使用者に知らせても良いし、筺体3の上面等に取り付けられるディスプレイに判定結果として「OK」または「NG」を表示させても良い。
【0029】
なお、使用者は、除菌用の溶液がついている手を筺体3の内部から出さずに、筺体3の内部に手を入れた状態で手を擦り合わせて手の除菌を行っても良い。この場合には、制御部5は、第1温度T1を記憶した後、一定時間が経過すると、第2温度T2を記憶する。
【0030】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度が第1温度T1となり、除菌用の溶液をつけてから擦り合わせた後の手の温度が第2温度T2となるように、使用者の手の温度が測定されている。また、本形態では、制御部5は、第1温度T1と第2温度T2との差である第1温度差ΔT1に基づいて、手の除菌状態の良否を判定している。そのため、本形態では、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になる。また、本形態では、手の温度を利用して手の除菌状態の良否を判定しているため、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になる。すなわち、本形態では、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能であっても、除菌状態の良否の判定時間を短縮することが可能になる。
【0031】
また、本形態では、手の温度を利用して手の除菌状態の良否を判定しているため、紫外光が当たると発光する蛍光剤が除菌用の溶液に含まれていなくても、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になる。また、本形態では、上述の特許文献1に記載された判定装置のようにデジタルカメラを備えていなくても、手の除菌状態の良否を適切に判定することが可能になるため、除菌状態判定装置1の構成を簡素化して、除菌状態判定装置1のコストを低減することが可能になる。
【0032】
(手の除菌状態の良否の判定方法の変更例1)
図4は、図1に示す除菌状態判定装置1を用いた手の除菌状態の良否の判定方法の変更例を説明するためのフローチャートである。図4において、左側に記載される各ステップでの行為は、使用者が行う行為であり、右側に記載される各ステップでの処理は、制御部5が行う処理である。
【0033】
本願発明者の検討によると、除菌用の溶液をつける前の手の温度と、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度とに明らかな差が生じる。そのため、上述した形態において、制御部5は、除菌状態判定装置1を用いて手の除菌状態の良否を判定するときに、温度検知機構2で検知される手の温度を利用して、除菌用の溶液が手につけられたのか否かを判定するとともに、除菌用の溶液が手につけられたのか否かを、手の除菌状態の良否を判定するときの判定材料にしても良い。
【0034】
この場合には、まず、使用者は、除菌用の溶液を手につける前に筺体3の内部に手を入れる(ステップST11)。筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第3温度T3を記憶する(ステップST12)。その後、使用者は、筺体3の内部から手を出して除菌用の溶液を手につける(ステップST13)。
【0035】
その後、上述した形態と同様に、使用者は、筺体3の内部に手を入れ(ステップST14)、筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第1温度T1を記憶する(ステップST15)。また、上述した形態と同様に、その後、使用者は、筺体3の内部から手を出し、手を擦り合わせて手の除菌を行ってから(ステップST16)、筺体3の内部に手を入れ(ステップST17)、筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第2温度T2を記憶する(ステップST18)。
【0036】
その後、制御部5は、第3温度T3と第1温度T1との差である第2温度差ΔT2と第1温度差ΔT1とを算出し、算出した第2温度差ΔT2と第1温度差ΔT1に基づいて手の除菌状態の良否を判定する(ステップST19)。具体的には、ステップST13において、除菌用の溶液が手につけられていれば、第2温度差ΔT2が所定の基準値以上となるため、制御部5は、ステップST19において、第2温度差ΔT2が基準値以上であって、かつ、第1温度差ΔT1が基準値以上であれば、手の除菌状態が良好であると判定し、第1温度差ΔT1および第2温度差ΔT2の少なくともいずれか一方が基準値未満であれば、手の除菌状態が不良であると判定する。
【0037】
このように、この変更例では、制御部5は、第1温度T1が検知される前の所定時間内に温度検知機構2によって検知された温度である第3温度T3を記憶するとともに、第3温度T3と第1温度T1との差である第2温度差ΔT2と第1温度差ΔT1とに基づいて、手の除菌状態の良否を判定する。また、制御部5は、上述した形態と同様に、手の除菌状態の良否の判定結果を使用者に知らせる。
【0038】
この変更例では、除菌用の溶液をつける前の手の温度が第3温度T3となるように、使用者の手の温度が測定されているため、第2温度差ΔT2に基づいて、除菌用の溶液が手につけられたのか否かを適切に判定することが可能になる。したがって、この変更例では、第1温度差ΔT1と第2温度差ΔT2とに基づいて、手の除菌状態の良否をより適切に判定することが可能になる。
【0039】
なお、この変更例において、制御部5は、ステップST15で第1温度T1を記憶したら、そのまま、第2温度差ΔT2を算出しても良い。この場合には、制御部5は、たとえば、第2温度差ΔT2が基準値以上になっていれば、筺体3の上面等に取り付けられる緑色の光源を発光させ、第2温度差ΔT2が基準値未満になっていれば、筺体3の上面等に取り付けられる赤色の光源を発光させる。緑色の光源が発光しているのを確認した使用者は、ステップST16に進む。一方、赤色の光源が発光しているのを確認した使用者は、ステップST13に戻る。また、この場合には、ステップST19において、制御部5は、第1温度差ΔT1のみを算出し、第1温度差ΔT1に基づいて手の除菌状態の良否を判定する。また、この変更例においても、使用者は、除菌用の溶液がついている手を筺体3の内部から出さずに、筺体3の内部に手を入れた状態で手を擦り合わせて手の除菌を行っても良い。
【0040】
(手の除菌状態の良否の判定方法の変更例2)
上述した形態において、ステップST7で、手の除菌状態が不良であると制御部5が判定したときに、使用者は、筺体3の内部から手を出し、再度手を擦り合わせて手の除菌を行ってから、筺体3の内部に手を入れるとともに、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第4温度T4を記憶しても良い。この場合には、制御部5は、第1温度T1と第4温度T4との差である第3温度差ΔT3を算出し、算出した第3温度差ΔT3に基づいて手の除菌状態の良否を再判定する。
【0041】
すなわち、上述した形態において、制御部5は、手の除菌状態が不良であると判定すると、判定後の所定時間内に温度検知機構2によって検知される温度である第4温度T4を記憶するとともに、第1温度T1と第4温度T4との差である第3温度差ΔT3に基づいて、手の除菌状態の良否を再判定しても良い。この場合には、再度擦り合わせた後の手の温度が第4温度T4となるように使用者の手の温度が測定されているため、再度擦り合わせた後の手の除菌状態の良否を判定することが可能になる。
【0042】
また、上述の変更例において、ステップST19で、手の除菌状態が不良であると制御部5が判定したときに、使用者は、筺体3の内部から手を出し、再度手を擦り合わせて手の除菌を行ってから、筺体3の内部に手を入れるとともに、制御部5は、温度検知機構2によって検知される手の温度である第4温度T4を記憶して、第3温度差ΔT3に基づいて手の除菌状態の良否を判定しても良い。
【0043】
(除菌状態判定装置の変更例1)
上述した形態において、除菌状態判定装置1は、筺体3の内部で除菌用の溶液を噴射する溶液噴射機構7(図2参照)を備えていても良い。溶液噴射機構7は、筺体3の内部に配置されており、筐体3の内部に配置される使用者の手に向かって一定量の溶液を自動で噴射する。溶液噴射機構7は、制御部5に電気的に接続されている。この場合、除菌状態判定装置1を用いて手の除菌状態の良否を判定するときには、まず、使用者が筺体3の内部に手を入れる。筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、溶液噴射機構7に溶液を噴射させてから第1温度T1を記憶し、その後、ステップST4に進む。
【0044】
すなわち、制御部5は、筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、溶液噴射機構7に溶液を噴射させてから第1温度T1を記憶し、その後、第2温度T2を記憶するとともに、第1温度差ΔT1に基づいて、手の除菌状態の良否を判定する。この場合には、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度が第1温度T1となるように、使用者の手の温度を自動的に測定することが可能になる。
【0045】
また、除菌状態判定装置1が溶液噴射機構7を備えている場合、上述した手の除菌状態の良否の判定方法の変更例1において、手の除菌状態の良否を判定するときには、まず、使用者が筺体3の内部に手を入れる。筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、制御部5は、第3温度T3を記憶し、その後、溶液噴射機構7に溶液を噴射させてから第1温度T1を記憶し、その後、ステップST16に進む。
【0046】
すなわち、制御部5は、筺体3の内部に手が入れられたことが検知機構4によって検知されると、第3温度T3を記憶し、その後、溶液噴射機構7に溶液を噴射させてから第1温度T1を記憶し、その後、第2温度T2を記憶するとともに、第1温度差ΔT1と第2温度差ΔT2とに基づいて、手の除菌状態の良否を判定する。この場合には、除菌用の溶液をつける前の手の温度が第3温度T3となり、かつ、除菌用の溶液をつけた直後の手の温度が第1温度T1となるように、使用者の手の温度を自動的に測定することが可能になる。
【0047】
(除菌状態判定装置の変更例2)
上述した形態および上述した変更例において、除菌用の溶液に、紫外光が当たると発光する蛍光剤が含まれていても良い。この場合には、除菌状態判定装置1は、筺体3の内部に配置されるとともに紫外光を照射する紫外線照明9(図2参照)を備えている。筺体3の内面は、たとえば、つや消しの黒色となっている。蛍光剤は、たとえば、ビタミンB2である。除菌用の溶液には、蛍光剤に加えてセリシンが含まれていても良い。紫外線照明9は、たとえば、筐体3の内部の天面に取り付けられている。紫外線照明9は、たとえば、複数の紫外線光源によって構成されている。紫外線照明9は、制御部5に電気的に接続されている。紫外線照明9は、たとえば、紫外光としてUV-Aを照射する。
【0048】
この場合には、制御部5は、ステップST7またはステップST19において、手の除菌状態が不良であると判定すると、紫外線照明9に紫外光を照射させる。この場合には、筺体3の内部に配置された手に照射される紫外光によって、除菌用の溶液が全体に行き亘っていない手を不均一に光らせることが可能になる。したがって、この場合には、手の中で、除菌用の溶液が行き亘っていない箇所を、たとえば、目視で確認することが可能になる。なお、紫外線照明9は、筺体3とは別の筺体の内部に配置されていても良い。この場合には、ステップST7またはステップST19において、手の除菌状態が不良であると判定されると、使用者は、筺体3の内部から手を出した後、紫外線照明9が内部に配置されている筺体の内部に手を入れる。
【0049】
(除菌状態判定装置の変更例3)
上述した除菌状態判定装置の変更例2において、除菌状態判定装置1は、筐体3の内部を撮影する撮影機構11(図2参照)を備えていても良い。撮影機構11は、たとえば、デジタルカメラである。撮影機構11は、制御部5に電気的に接続されている。この場合には、制御部5は、紫外線照明9に紫外光を照射させた状態で撮影機構11に画像を撮影させ、撮影機構11に撮影させた画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて、手の除菌状態の良否を再判定する。
【0050】
制御部5は、たとえば、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の画像認識によって手の除菌状態の良否を再判定する。具体的には、制御部5は、手の除菌状態が良好であると判定する基準となる画像に対応するデータと、手の除菌状態が不良であると判定する基準となる画像に対応するデータとに基づいて機械学習によって生成された学習済みモデルを使用して、手の除菌状態の良否を再判定する。
【0051】
この場合には、手の温度を使用して手の除菌状態を判定することに加えて、手の画像を利用して手の除菌状態を再判定することができるため、手の除菌状態の良否の再判定に時間がかかるおそれはあるが、手の除菌状態の良否の判定精度を高めることが可能になる。なお、紫外線照明9が筺体3とは別の筺体の内部に配置されている場合には、撮影機構11は、紫外線照明9が配置される筺体の内部に配置されており、紫外線照明9が配置される筺体の内部を撮影する。
【0052】
(他の実施の形態)
上述した形態において、除菌状態判定装置1は、検知機構4を備えていなくても良い。この場合には、たとえば、除菌状態判定装置1に判定開始用の押しボタンが設けられており、使用者は、この押しボタンを押してから、ステップST1またはステップST11に進んで、除菌用の溶液を手につける。
【符号の説明】
【0053】
1 除菌状態判定装置
2 温度検知機構
3 筺体
4 検知機構
5 制御部
7 溶液噴射機構
9 紫外線照明
11 撮影機構
図1
図2
図3
図4