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特開2023-44239エレクトロスプレー用ノズル、及びエレクトロスプレー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044239
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】エレクトロスプレー用ノズル、及びエレクトロスプレー装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20230323BHJP
   B05B 1/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B05B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152162
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】村田 正美
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
4F034AA03
4F034BA04
4F034BB04
4F034BB12
4F034BB15
4F034BB16
4F034BB25
(57)【要約】
【課題】細かい粒径で多量の液体の噴霧を行う。
【解決手段】エレクトロスプレー用ノズルは、エレクトロスプレーイオン化法により液体を噴霧するエレクトロスプレー用のノズルであって、筒状に形成されその筒状の内周面に沿って液体を通過させ、筒状の先端部から液体を流出可能に構成されて、外部から供給された電源により筒状の先端部から流出した液体に過剰電荷を供給するための液滴形成部材を備え、液滴形成部材は、液滴形成部材の先端側に筒状の先端側から基端側へ向かって切り欠いて形成された複数の溝部を有し、先端部は、相互に隣接する溝部の間に形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロスプレーイオン化法により液体を噴霧するエレクトロスプレー用のノズルであって、
筒状に形成されその筒状の内周面に沿って液体を通過させ前記筒状の先端部から液体を流出可能に構成されて、外部から供給された電源により前記筒状の前記先端部から流出した液体に過剰電荷を供給するための液滴形成部材を備え、
前記液滴形成部材は、前記液滴形成部材の先端側に前記筒状の先端側から基端側へ向かって切り欠いて形成された複数の溝部を有し、
前記先端部は、相互に隣接する前記溝部の間に形成される、
エレクトロスプレー用ノズル。
【請求項2】
前記先端部の先端は、角を有さない連続した曲線形状に形成されている、
請求項1に記載のエレクトロスプレー用ノズル。
【請求項3】
前記先端部と前記溝部とは、角を有さない連続した曲線形状で接続されている、
請求項1又は2に記載のエレクトロスプレー用ノズル。
【請求項4】
筒状に形成されて前記液滴形成部材の内側に一部が収容された状態で前記液滴形成部材を支持可能な支持部材と、筒状に形成されて前記支持部材の先端側に配置され前記液滴形成部材との間に液体が通過可能な液体流路を形成する本体部と、を有し、前記液体流路を流れる液体に対して外部から供給された前記電源により液体を帯電させる電極部材を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロスプレー用ノズル。
【請求項5】
前記電極部材は、前記支持部材と前記本体部とを繋ぐ連結部材を更に有し、
前記本体部は、前記本体部の先端側であって前記本体部の周方向に所定間隔をあけて前記本体部の軸方向に沿って延びて形成された複数の荷電電極部を有し、相互に隣接する前記荷電電極部の間に前記液体流路を通過した液体が通過可能な隙間が形成され、
前記連結部材は、前記隙間から流れた液体と接触する、
請求項4に記載のエレクトロスプレー用ノズル。
【請求項6】
前記液滴形成部材と前記支持部材及び前記本体部と前記連結部材とは、それぞれ軽圧入により取付けられる、
請求項5に記載のエレクトロスプレー用ノズル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のエレクトロスプレー用ノズルと、
前記ノズルに液体を供給する液体供給装置と、
前記ノズルに電源を供給する電源供給装置と、
を備えるエレクトロスプレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレクトロスプレー用ノズル、及びエレクトロスプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液や塗料などの塗布技術としてエレクトロスプレー法が注目されている。エレクトロスプレー法は、ノズルと対向電極との間に高電圧を印可することにより、ノズル先端部に液だまりとなった液体と対向電極との間に高電圧が印可され、当該液体を過剰な電荷を帯びた微細な液滴にして、対向電極に向けて噴霧させ、対向電極に引き寄せて塗布する技術である。
【0003】
エレクトロスプレー法において、ノズルから吐出された液体は、対向電極との間に高電圧が印可されると、ノズルの先端部においてテイラーコーンと呼ばれる円錐形状となる。そして、ノズルから吐出された液体は、このテイラーコーンの先端部から多数の微細な液滴つまり霧状に分裂して対向電極に噴霧される。
【0004】
ところで、液滴を1系統のテイラーコーンで生成する場合、使用する液体の物理的特性等にも依るが、安定して噴霧できる量には限りがある。このため、従来構成では、エレクトロスプレー法を様々な分野へ応用するにあたり、多量の微粒子を噴霧する点において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-131961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、細かい粒径で多量の液体の噴霧を実現することができるエレクトロスプレー用ノズル、及びエレクトロスプレー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレクトロスプレー用ノズルは、エレクトロスプレーイオン化法により液体を噴霧するエレクトロスプレー用のノズルであって、筒状に形成されその筒状の内周面に沿って液体を通過させ前記筒状の先端部から液体を流出可能に構成されて、外部から供給された電源により前記筒状の前記先端部から流出した液体に過剰電荷を供給するための液滴形成部材を備え、前記液滴形成部材は、前記液滴形成部材の先端側に前記筒状の先端側から基端側へ向かって切り欠いて形成された複数の溝部を有し、前記先端部は、相互に隣接する前記溝部の間に形成される。
【0008】
実施形態のエレクトロスプレー装置は、上記エレクトロスプレー用ノズルと、前記ノズルに電源を供給する電源供給装置と、前記液体流路に液体を供給する液体供給装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるエレクトロスプレー装置の概略構成を模式的に示す図
図2】一実施形態によるエレクトロスプレー用ノズルの構成の一例を模式的に示す断面図
図3】一実施形態によるエレクトロスプレー用ノズルの構成の一例を模式的に示す斜視断面図
図4】一実施形態によるエレクトロスプレー用ノズルの先端周辺の構成の一例をノズル先端側から見た図
図5】一実施形態による液滴形成部材の構成の一例を模式的に示す斜視図
図6】一実施形態による液滴形成部材の構成の一例を模式的に示す展開図
図7】一実施形態によるエレクトロスプレー装置を用いた場合の液体の噴霧状況を示すもので、図2の矢印X7部分を拡大して示す図
図8】一実施形態によるエレクトロスプレー装置を用いた場合の液体の噴霧パターンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
図1に示すエレクトロスプレー装置1は、例えば薬液や塗料などの液体をエレクトロスプレー法によって噴霧し、これにより対向電極90に液体を塗布することができる装置である。エレクトロスプレー装置1は、図1に示すように、液体供給装置10、電源供給装置20、制御装置30、固定部材40、及びエレクトロスプレー用ノズル50を備えている。以下の説明では、エレクトロスプレー用ノズル50を単にノズル50と称する。なお、本実施形態では、図1における紙面の下側が液体の吐出方向側であってノズル50の先端側となり、図1における紙面の上側が液体の吐出方向と反対側であってノズル50の基端側となる。
【0012】
液体供給装置10は、ノズル50に対して薬液や塗料などの液体を供給するためのものである。液体供給装置10は、例えば液体タンク11及び液体供給ポンプ12を有して構成できる。液体タンク11は、薬液や塗料などの液体を貯留可能に構成されている。液体供給ポンプ12は、液体タンク11内の液体を所定の吐出圧でノズル50に供給するためのものである。液体供給ポンプ12の吸い込み口は、液体ホース13を介して液体タンク11に接続されている。液体供給ポンプ12の吐出口は、液体ホース13及び固定部材40を介してノズル50に接続されている。本実施形態の場合、液体ホース13は、電気絶縁性を有する例えば合成樹脂製である。また、液体供給ポンプ12は、例えばシリンジポンプで構成されており、ノズル50に対する液体の供給量を高精度で制御することができる。なお、液体供給ポンプ12は、シリンジポンプに限られない。
【0013】
電源供給装置20は、ノズル50と対向電極90との間に、例えば数kV~十数kVの高電圧を印加する機能を有する。電源供給装置20は、昇圧回路や整流回路を有しており、エレクトロスプレー装置1の駆動に必要な電源、つまり液体を帯電させるために必要な直流の高電圧を供給する。電源供給装置20の出力側は電源ケーブル21等を介してノズル50に接続されている。また、電源供給装置20及び対向電極90は、アース線22を介して接地されている。
【0014】
制御装置30は、図示しないCPUや、ROM、RAM等を有したマイクロコンピュータにより構成されている。制御装置30は、図1に示すように、液体供給ポンプ12及び電源供給装置20に電気的に接続されており、液体供給ポンプ12の吐出量及び電源供給装置20の出力電圧を制御することができる。これにより、制御装置30は、ノズル50に供給する液体の量とその液体に印加する電圧とを自動又は半自動で制御することができる。
【0015】
なお、エレクトロスプレー装置1は、必ずしも制御装置30を備えている必要はない。エレクトロスプレー装置1が制御装置30を備えない場合、エレクトロスプレー装置1のユーザは、液体供給ポンプ12と電源供給装置20とを手動で調整することで、液体の供給量と印加電圧とを調整することができる。すなわち、液体供給ポンプ12による液体の供給量の調整及び液体への印加電圧の調整は、ユーザが液体の噴霧状態等を確認しながら液体供給ポンプ12や電源供給装置20の制御パラメータを手作業で変更するなどして手動で行う構成とすることができる。
【0016】
固定部材40は、ノズル50が取付けられてノズル50を支持するとともに、液体ホース13とノズル50とを接続するためのものである。固定部材40は、例えば電気絶縁性を有する樹脂部材で構成されている。固定部材40は、例えばノズル50に着脱可能に構成されている。このようにして、ユーザは、例えばノズル50内に液体の目詰まり等が発生し、メンテナンスが必要となった場合に処置を容易に行うことができる。
【0017】
ノズル50は、液体供給装置10から供給された液体を、エレクトロスプレーイオン化法によって噴霧する機能を有する。ノズル50は、図2等に示すように、電極部材60及び液滴形成部材70を有している。電極部材60は、導電性を有する部材、例えば金属部材によって構成されている。電極部材60は、例えばアルミニウム、鉄、金、銀、チタン、ステンレス、クロムで構成することができるが、これらに限られない。そして、電極部材60は、電源供給装置20から供給された高電圧を、液滴形成部材70へ供給する機能を有する。この場合、電極部材60は、電源ケーブル21等を介して電源供給装置20に電気的に接続されている。
【0018】
電極部材60は、図2等に示すように、例えば支持部材61、連結部材62、及び本体部63を有して構成することができる。支持部材61は、例えば筒状に形成されており、軸方向の両端部が開放して形成されている。そして、支持部材61の先端側が液滴形成部材70と接続されており、基端側が固定部材40に取付けられている。連結部材62は、図2及び図3に示すように、全体として略棒状に形成されており、基端側が支持部材61の内側に収容され、先端側が支持部材61の内側からノズル50の先端側へ向かって突出して延びている。この場合、連結部材62は、支持部材61に例えば軽圧入によって取付けられており、支持部材61に対してノズル50の軸方向に沿って移動可能に構成されている。
【0019】
連結部材62は、ベース部621及び棒状部622を有している。本実施形態では、ベース部621と棒状部622とは、一体的に構成されている。ベース部621は、連結部材62の基端側に設けられている。ベース部621は、面状部621a及び円弧状部621bを有している。面状部621a及び円弧状部621bは、図3に示すように、ベース部621の周面に形成されている。面状部621aは、ベース部621の先端側の周面の一部つまり径方向に対向する2箇所を平面状に加工して形成されている。円弧状部621bは、ベース部621の面状部621aが形成された周面のうち面状部621a以外の部分であり、支持部材61の内周面に沿って円弧状に形成されている。
【0020】
円弧状部621bが形成された部分のベース部621の外径は、支持部材61の内径よりもやや大きい寸法に形成されている。この場合、円弧状部621bと支持部材61の内周面とを接触させることによって連結部材62が支持部材61に保持される。連結部材62が支持部材61に保持された状態において、面状部621aと支持部材61の内周面との間には、液体が通過可能な空間が形成される。そして、液体ホース13から支持部材61内に供給された液体は、当該空間を通過してノズル50の先端側へ流れる。
【0021】
棒状部622は、連結部材62の先端側に設けられている。棒状部622は、図2等に示すように、例えばノズル50の軸方向に沿って直線状に延びる円柱棒状に形成されている。棒状部622は、基端側の端部がベース部621の先端部に配置され、先端側の端部が支持部材61の内側から突出して延びている。棒状部622の外径は、ベース部621の外径及び支持部材61の内径よりも小さい寸法で形成されている。そして、棒状部622は、その先端が例えば球面状で形成されている。
【0022】
本体部63は、例えば筒状に形成されており、軸方向の両端部が開放して形成されている。本体部63は、ノズル50の先端側へ軸方向に延びて形成されている。本体部63は、連結部材62この場合棒状部622に例えば軽圧入によって取付けられており、連結部材62に対してノズル50の軸方向に沿って移動可能に構成されている。すなわち、連結部材62は、支持部材61と本体部63とを繋いでいる。そして、本体部63は、支持部材61の内側に一部が収容されて配置されている。支持部材61、連結部材62、及び本体部63の軸方向の中心はそれぞれ一致している。
【0023】
本体部63は、筒部631及び荷電電極部632を有している。筒部631は、図2及び図3に示すように、本体部63の基端側に設けられている。筒部631は、例えば円筒形状に構成されている。筒部631の基端側は、筒部631の外周面と支持部材61の内周面とが所定間隔をあけて離れた状態で、支持部材61の内側に収容されている。また、筒部631の内径は、棒状部622の外径よりもやや小さい寸法で形成されている。そして、筒部631の内周面と棒状部622の外周面とを接触させることによって本体部63が連結部材62に保持される。このようにして、支持部材61内を通過した液体は、筒部631の外周面に沿ってノズル50の先端側へ流れる。
【0024】
荷電電極部632は、本体部63の先端側であって筒部631から連続して設けられている。荷電電極部632は、図2から図5に示すように、本体部63の周方向に所定間隔この場合等間隔をあけて複数、この場合4つ形成されている。複数の荷電電極部632は、同一形状に構成することができる。また、複数の荷電電極部632は、本体部63の軸方向に沿って延びており、図2等に示すように、ノズル50の先端側へ向かうほど電極部材60の径方向の中心Oから離れるように傾斜して形成されている。そして、荷電電極部632の先端は、棒状部622つまり連結部材62の先端よりもノズル50の先端側に位置するように設けられている。
【0025】
荷電電極部632の先端部は、図2及び図3等に示すように、その幅方向の角が面取りされた湾曲面に形成されている。荷電電極部632の先端部は、湾曲面に限らず、先細るように概ね尖って形成されていても良い。本明細書中において、角とは、2辺が交わることで形成される点を意味し、曲線ではない尖った部分を示す。
【0026】
また、図4に示すように、相互に隣接する荷電電極部632同士の間には、隙間633が形成されている。すなわち、本実施形態では、隙間633は、4つ形成されている。隙間633は、図3に示すように、少なくとも棒状部622の先端と重なる位置に形成されている。
【0027】
液滴形成部材70は、例えば筒状に形成されており、軸方向の両端部が開放して形成されている。液滴形成部材70は、その筒状の内周面701に沿って液体を通過させ、液滴形成部材70の先端部71から液体を流出可能に構成されている。つまり、先端部71は、ノズル50の出口を構成している。
【0028】
液滴形成部材70は、導電性を有する部材、例えば金属部材によって構成されている。液滴形成部材70は、例えばアルミニウム、鉄、金、銀、チタン、ステンレス、クロムで構成することができるが、これらに限られない。液滴形成部材70は、液体供給装置10から供給されて筒状内を流れる液体に対して、電源供給装置20から電極部材60を介して供給された高電圧を液体に印加する機能を有する。この場合、液滴形成部材70は、電極部材60を介して間接的に電源供給装置20に電気的に接続されている。よって、電極部材60と液滴形成部材70とは、電源供給装置20から供給される電圧によって同電位となるように構成されている。
【0029】
図2に示すように、液滴形成部材70の基端側は、支持部材61に例えば軽圧入によって取付けられており、支持部材61に対してノズル50の軸方向に沿って移動可能に構成されている。すなわち、支持部材61の外径は、液滴形成部材70の内径よりもやや大きい寸法で形成されている。そして、支持部材61の外周面と液滴形成部材70の内周面701とを接触させることによって液滴形成部材70が支持部材61に保持される。
【0030】
本実施形態では、図2等に示すように、液滴形成部材70の内周面701と本体部63の外周面634との間に、液体流路80が形成されている。液体流路80は、液体ホース13から支持部材61内を介して供給される液体を、液滴形成部材70の内周面701と本体部63の外周面634との間の空間を通して液滴形成部材70の先端部71に導く経路である。すなわち、液体供給装置10から供給されて支持部材61内を通過した液体は、液体流路80を流れて、先端部71からノズル50の外部に吐出される。
【0031】
本体部63の先端側には、上述したように、相互に隣接する荷電電極部632同士の間に隙間633が形成されている。そして、この隙間633からは液体流路80を流れる液体の一部が流出する。一方、隙間633は、荷電電極部632の内側に位置する棒状部622の先端と重なる位置に形成されているため、隙間633から流出した液体は棒状部622の先端に案内される。そして、棒状部622の先端部の液体の付着のしやすさ、つまり濡れ性によって、隙間633から流出した液体が液滴形成部材70の中心付近から垂れ落ちることを抑制する。
【0032】
液滴形成部材70は、溝部72を有する。溝部72は、図4から図6に示すように、液滴形成部材70の先端側の周方向に沿って所定間隔この場合等間隔をあけて、その先端側から基端側へ向かって切り欠いて形成されている。溝部72は、複数、この場合4つ形成されている。そして、相互に隣接する溝部72同士の間には先端部71が形成される。つまり、本実施形態では、先端部71は、4つ形成されている。複数の先端部71及び溝部72は、それぞれ同一形状に構成することができる。
【0033】
複数の先端部71は、図4に示すように、ノズル50の周方向において、それぞれ対応する荷電電極部632と重なる位置に設けられている。また、複数の溝部72は、ノズル50の周方向において、それぞれ対応する隙間633と重なる位置に設けられている。この場合、先端部71の幅寸法W1は、荷電電極部632の幅寸法W2よりも大きい寸法で構成されている。そして、溝部72の幅寸法G1は、隙間633の幅寸法G2よりも小さい寸法で構成されている。
【0034】
また、溝部72と先端部71とは、図5及び図6に示すように、例えば角を有さない連続した曲線形状で接続されている。本明細書中において、曲線形状とは、曲率半径が一定のものに限らず、曲率半径が変化するものであっても良い。このように、液滴形成部材70の先端側には、複数の溝部72と先端部71とが交互に形成されている。そして、先端部71の幅寸法W1は、溝部72の幅寸法G1よりも大きい寸法で構成することができる。この場合、先端部71の幅寸法W1は、例えば2~3mm程度、溝部72の幅寸法G1は、0.3~1mm程度に構成することができる。また、先端部71及び溝部72は、山部71及び谷部72と言い換えることができる。
【0035】
また、先端部71の先端は、図6に示すように、例えば角を有さない連続した曲線形状に形成されている。そして、図7等に示すように、先端部71は、ノズル50の軸方向において、棒状部622よりもノズル50の先端側であって、かつ、荷電電極部632の先端よりもノズル50の基端側に位置している。すなわち、荷電電極部632は、ノズル50の先端側から突出して設けられている。
【0036】
このようなエレクトロスプレー装置1の構成において、液体供給装置10からノズル50に供給された液体は、ノズル50の液体流路80を通過し、液滴形成部材70の先端部71の内周面701に到達する。当該液体は、先端部71の内面との濡れ性により、先端部71の内周面701から先端部71の端面より先端側に液だまりとなって漏出する。この液だまりは、本体部63の荷電電極部632を内部に包み込む形で生成される。そして、この液だまりは、先端部71の内周面701、先端部71の端面、及び荷電電極部632から過剰な電荷の供給を受けて、対向電極90との間の強電界により液だまり表面には過剰電極が集中する。これにより、図7に示すような円錐形状のテイラーコーン91が形成される。
【0037】
本実施形態では、先端部71は、4つ設けられている。そのため、テイラーコーン91は、先端部71に対応して、独立して4つ形成される。すなわち、ノズル50において、テイラーコーン91は、単一ではなく複数、この場合4つに分割して形成される。更に、複数の先端部71は、それぞれ同一形状でありかつ筒状に形成された液滴形成部材70の各先端側の周方向に沿って均等に配置されているため、生成される各テイラーコーン91は略均一な形状となる。
【0038】
そして、液体表面に集中する過剰な電荷が液体の表面張力を上回ると、複数のテイラーコーン91の先端から微細な帯電液滴92がそれぞれ放出される。これら微細な帯電液滴92は、いわゆるクーロン爆発と液剤蒸発の促進により更に細分化されて微細な霧になる。この微細な霧は、自らが持つ電荷によって対向電極90に引き寄せられ、図8に示すように、対向電極90に吸着する。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、ノズル50は、エレクトロスプレーイオン化法により液体を噴霧するエレクトロスプレー用のノズルであって、液滴形成部材70を備える。液滴形成部材70は、筒状に形成されその筒状の内周面に沿って液体を通過させ、筒状の先端部71から液体を流出可能に構成されて、外部から供給された電源により、筒状の先端部71から流出した液体に過剰電荷を供給する。また、液滴形成部材70は、複数の溝部72を有する。複数の溝部72は、液滴形成部材70の先端側に筒状の先端側から基端側へ向かって切り欠いて形成されている。そして、先端部71は、相互に隣接する溝部72の間に形成される。
【0040】
ここで、テイラーコーンは噴霧する液体の量が増えると、粒径が荒くなる。そのため、ノズルに対して単一のテイラーコーンを生成して、粒径が細かい状態で噴霧量を増加させることは困難である。そこで、本実施形態では、液滴形成部材70の先端側に複数の先端部71を設けている。そのため、複数の先端部71に液体を供給することで、各先端部71にそれぞれテイラーコーン91を生成することができる。このようにして、分割したテイラーコーン91を生成することで各テイラーコーン91が受けもつ噴霧量を抑えることができ、各テイラーコーン91で噴霧される粒子の微粒化を図ることができる。これにより、ノズルに対して単一のテイラーコーンを生成して液体を噴霧する場合に比べて、細かい粒径でノズル50全体として多量の液体を噴霧することができる。
【0041】
また、先端部71の先端は、角を有さない連続した曲線形状に形成されている。ここで、例えば先端部71の先端に直線部分が存在すると、テイラーコーン91がその直線部分において不規則に発生するおそれがあり、安定した噴霧が乱れる可能性がある。そこで、先端部71の先端を、角を有さない連続した曲線形状とすることで、先端部71の最頂部付近で確実にテイラーコーン91を生成することができる。これにより、所望の噴霧範囲に対して良好に液体を噴霧することができる。
【0042】
更に、先端部71と溝部72とは、角を有さない連続した曲線形状で接続されている。エレクトロスプレー法では、高電圧を印可することによって鋭角部に電界が集中してコロナ放電が発生しやすくなる。そのため、先端部71と溝部72との接続部分に角が存在すると、その角からコロナ放電が発生してしまうおそれがあり、先端部71において安定してテイラーコーンを生成することが阻害される可能性がある。そこで、先端部71と溝部72との接続部分を曲線形状とすることで、先端部71の最頂部付近で確実にテイラーコーンを生成することができる。これにより、所望の噴霧範囲に対して良好に液体を噴霧することができる。
【0043】
ノズル50は、電極部材60を更に備える。電極部材60は、液体流路80を流れる液体に対して外部から供給された電源により液体を帯電させる。電極部材60は、支持部材61及び本体部63を有する。支持部材61は、筒状に形成されて、液滴形成部材70の内側に一部が収容された状態で、液滴形成部材70を支持可能である。本体部63は、筒状に形成されて、支持部材61の先端側に配置され、液滴形成部材70との間に液体が通過可能な液体流路80を形成する。
【0044】
これによれば、電極部材60と液滴形成部材70との間に液体流路80を形成し、当該液体流路80を流れる液体に対して電源を供給、つまり電圧を印可することによって、液滴形成部材70の先端部71に供給される液体に対して円滑に過剰電荷を供給することができる。これにより、連続的に安定したテイラーコーンを生成し易くすることができる。
【0045】
また、電極部材60は、連結部材62を更に有する。連結部材62は、支持部材61と本体部63とを繋ぐ。本体部63は、複数の荷電電極部632を有する。複数の荷電電極部632は、本体部63の先端側であって、本体部63の周方向に所定間隔をあけて本体部63の軸方向に沿って延びて形成されている。また、相互に隣接する荷電電極部632の間に、液体流路80を通過した液体が通過可能な隙間633が形成される。そして、連結部材62は、隙間633から流れた液体と接触する。
【0046】
これによれば、液体流路80を流れて隙間633を通過した液体を連結部材62に接触させることで、液体が液滴形成部材70の内部から滴となって垂れ落ちるいわゆるボタ落ちが発生することを抑制することができる。これにより、液滴形成部材70の先端部71へ液体を円滑に導くことができる。よって、良好な噴霧を実現することができる。
【0047】
液滴形成部材70と支持部材61及び本体部63と連結部材62とは、それぞれ軽圧入により取付けられる。これによれば、液滴形成部材70と支持部材61及び本体部63と連結部材62とを、それぞれ軽圧入により取付けることで、各部材をノズル50の軸方向に沿って移動可能に構成することができる。これにより、各部材のそれぞれの位置関係の微調整を容易に行うことができる。よって、液体の供給量や印可電圧等の諸条件に応じて、安定したテイラーコーンが生成しやすい位置に各部材の位置を変更することができる。したがって、良好な噴霧の実現することができる。
【0048】
以上説明した、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…エレクトロスプレー装置、10…液体供給装置、20…電源供給装置、50…エレクトロスプレー用ノズル、60…電極部材、61…支持部材、62…連結部材、63…本体部、632…荷電電極部、633…隙間、70…液滴形成部材、71…先端部、72…溝部、80…液体流路
図1
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図8