(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044320
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】新主枝伸長誘導管理支柱
(51)【国際特許分類】
A01G 17/10 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
A01G17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152284
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】514185998
【氏名又は名称】三共包材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤田 仁
(72)【発明者】
【氏名】門井 馨一
【テーマコード(参考)】
2B023
【Fターム(参考)】
2B023AC02
2B023BA09
2B023BA10
2B023BB06
(57)【要約】
【課題】果樹の新主枝の伸長のための誘導管理の作業について、簡略化、効率化、及び安定化を図る、新主枝伸長誘導管理支柱を提供する。
【解決手段】鋼線で形成され、鋼線を二股に曲げ加工し、鋼線の略中央部分には新主枝及び添え棒が固定可能な谷部を有し、二股に曲げ加工された足部、足部先端には固定部が形成されている誘導支柱であって、足部間の間隔に関して谷部近傍における間隔が固定部近傍における間隔よりも広くなっている誘導支柱。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
谷部、足部、及び固定部を備え、鋼線から形成される新主枝伸長誘導管理支柱であって、足部間の間隔が、谷部近傍における間隔が固定部近傍における間隔よりも広くなっていることを特徴とする新主枝伸長誘導管理支柱。。
【請求項2】
足部間の間隔が、谷部近傍から固定部近傍にかけて漸次狭くなることを特徴とする請求項1記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【請求項3】
鋼線が、炭素鋼からなる鋼線であることを特徴とする請求項1記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【請求項4】
固定部が、輪状の形状を有することを特徴とする請求項1記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【請求項5】
谷部及び固定部が、被覆されていることを特徴とする請求項1記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【請求項6】
鋼線が、メッキ処理が施されていることを特徴とする請求項1記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹の新主枝の適切な伸長のための誘導管理に用いられる支柱に関する。
具体的には、梨などの果樹の新主枝の適切な伸長のための誘導管理に用いられる鋼線から形成される誘導支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
果実の安定的な収穫と収穫作業の効率の向上のため、果樹の枝、とりわけ、新主枝の適切な伸長のための誘導管理は果樹農家にとって重要な作業の一つとなっている。果樹農家は、通常、新主枝の先端を紐の一端で縛ることで新主枝の伸長する高さ、方向を決めると共に、紐の他端をあらかじめ設置されている栽培棚の棚線に縛ることで、新主枝を固定している。さらに、新主枝の伸長の度合いに合わせて、紐の長さや固定する位置を随時変えることなどにより、新主枝の伸長のための誘導管理をしている。
【0003】
梨の栽培管理においても、同様に新主枝の適切な伸長のための誘導管理が重要な作業となっている。梨の栽培管理においては、果実の効率的な生育を図るために、主枝、側枝、亜主枝と呼ばれる枝について、選定、誘引等の処理を行い、枝全体の配置を整えることで、適切な成長を促している。こうした枝の処理にあって、とりわけ主枝の処理は最も重要な作業となっている。梨の主枝の場合、主枝を棚線の形成する栽培棚の棚面から20cm程度に納めることが必要であると共に、主枝の先端の位置を棚面から40cm程度上げた角度に常に保つ必要がある。主枝の先端部である一番高い部分が栄養分を引き上げ、成長することから、主枝の適切な誘導管理により、主枝の先端の位置を適正に保つことで、果実の成長に必要な栄養分が側枝、亜主枝にも安定的に増幅されて供給でき、安定的な高い梨の成長効果が望めることが知られている。
【0004】
しかし、紐や針金等を使った新主枝の伸長のための誘導管理については、上記のとおり、新主枝の伸長の度合いに合わせて、紐の長さや固定する位置を変える必要があることに加えて、主枝の先端の位置を安定した、確実性のある角度に維持することが困難であるという課題があった。
【0005】
こうした背景を受けて、植物の枝あるいはその枝の案内棒を固定する植物栽培用フレームに関して、従来から種々の提案がなされている。
例えば、下記特許文献1には、優孤状の把持部、支柱部及び支柱部の先端に巻き付け部を備えたフレームが提案されている。下記特許文献1では、優孤状の把持部を1つ備えたフレームにおいては支柱部の間隔を狭くした場合には把持部の締め付け機能が損なわれ、枝あるいは案内棒の固定が不確実になることから、優孤状の把持部を3個以上連接したフレームが提案されている。しかしながら、把持部を3個以上連接したフレームはフレーム自体が大きく、重くなり、しかも、フレームを固定・移動する際に巻き付け部の着脱に時間がかかることから、作業上の困難性が生じる恐れがあった。
【0006】
したがって、新主枝の誘導管理のための部材について、新主枝の伸長に応じて固定位置・角度を調整する必要が生じた場合や、風雨により固定位置・角度が適切でなくなり修正する必要が生じた場合に迅速に対応ができることで、作業時間を短縮でき、新主枝の安定的な固定化が図られる誘導管理の手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、果樹の新主枝の伸長のための誘導管理の作業について、簡略化、効率化、及び安定化を図る、新主枝伸長誘導管理支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、伸長させる新主枝について、伸長させる高さ及び方向を決め、新主枝のみを、又は新主枝を添え棒と共に誘導支柱の谷部に固定し、誘導支柱の足部を固定部を介して棚線に固定することにより、新主枝の固定が安定的に実現し、また、新主枝の伸長に合わせて誘導支柱の足部の位置を棚線上を移動させることで簡便に高さ及び角度を変えられることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の特定事項により特定されるとおりのものである。
【0010】
(1)谷部、足部、及び固定部を備え、鋼線から形成される新主枝伸長誘導管理支柱であって、足部間の間隔が、谷部近傍における間隔が固定部近傍における間隔よりも広くなっていることを特徴とする新主枝伸長誘導管理支柱。
(2)足部間の間隔が、谷部近傍から固定部近傍にかけて漸次狭くなることを特徴とする(1)記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
(3)鋼線が、炭素鋼からなる鋼線であることを特徴とする(1)記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
(4)固定部が、輪状の形状を有することを特徴とする(1)記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
(5)谷部及び固定部が、被覆されていることを特徴とする(1)記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
(6)鋼線が、メッキ処理が施されていることを特徴とする(1)記載の新主枝伸長誘導管理支柱。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、果樹の新主枝の伸長のための誘導管理の作業について、簡略化、効率化、及び安定化を図る有用な選択肢を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】誘導支柱1を棚線5に固定して、主枝6を固定した概要図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鋼線で形成され、鋼線を二股に曲げ加工し、鋼線の略中央部分には新主枝及び添え棒が固定可能な谷部を有し、二股に曲げ加工された足部、足部先端には固定部が形成されている誘導支柱であって、足部間の間隔が、谷部近傍における間隔が固定部近傍における間隔よりも広くなっていることを特徴とする誘導支柱である。以下に、その態様を実施するための具体的な形態について説明する。
【0014】
本発明に使用している鋼線については、鋼線であれば、特に制限はないが、主枝先端を保持するために必要な強度と作業性からの十分な軽さとを備えていることが望ましい。加工が容易であり、原価も安いことから、鋼線の材料として炭素鋼を用いることができる。炭素鋼を用いた場合の炭素含有量は硬さなどの求められる特性により適宜選択できるが、0.6%以下の低炭素鋼あるいは中炭素鋼を用いることができる。また、鋼線は、40~60%のカーボン含有のメッキ処理をすることで、防錆処理を施すことができる。
【0015】
本発明に係る誘導支柱は、例えば、鋼線を二股に曲げ加工し、鋼線の略中央部部に主枝及び添え棒が固定可能な凹部を谷部として形成し、二股に曲げ加工された足部の先端に固定部を形成することにより得られる。鋼線の曲げ加工の手法については、特に制限はなく、一般的な鋼線加工の技術が適用され、また、曲げ加工の順序についても特に制限はない。また、鋼線材料として炭素鋼を用いた場合には、焼き戻しを行うことで、誘導支柱に所望のじん性、硬度、強度、粘りなどを与えることができる。
【0016】
本発明に係る誘導支柱の備える谷部については、主枝及び添え棒が固定できれば、特に大きさ、形状について制限はないが、主枝及び通常用いられる添え棒の直径・形状を考慮すれば、好ましくは約5cmの凹部形状である。谷部が凹部形状を取ることにより、以下に記載する足部の構成と協働して、足部の間隔を広げて、固定部により誘導支柱を棚線に固定する際に、凹部形状が固定前に比べて、狭く変形することとなり、より安定した固定が得られる。
【0017】
本発明に係る誘導支柱は、足部の間隔に関して、谷部近傍における間隔が固定部近傍における間隔よりも広くなっていることを特徴とする誘導支柱である。足部の構成として、谷部近傍における足間の間隔が固定部近傍における足部の間隔よりも広くなっていることにより、固定部近傍の足部の間隔を広げて、棚線に固定する際に、谷部近傍においては内向きの力が加わり、すなわち、谷部上部を狭くする方向の力が加わることにより、谷部における主枝及び添え棒の固定をより安定的なものとするものである。谷部近傍における間隔と固定部近傍における間隔については、上記の関係を満たすことで、谷部近傍において内向きの力が加わるものであれば特に制限はないが、足部の間隔が谷部近傍から固定部近傍に向けて漸次狭くなる態様が、加工の容易性から好ましい。
【0018】
本発明に係る誘導支柱の足部先端に設けられる固定部については、棚線に容易に固定でき、誘導支柱が棚線を容易に移動し得る形状であれば特に制限はないが、好ましくは輪状であり、より好ましくは直径約3cmの輪状である。固定部が輪状の形状を取ることにより、誘導支柱を棚線に対して略垂直とすることで、誘導支柱は棚線を容易に移動できるものであり、また、誘導支柱が所望の位置まで移動したら、棚線に対して一定の角度で寝かせることにより、位置を固定することが可能となる。さらに、固定部が直径約3cmの輪状の形状を取ることにより、棚線から約40cmの範囲で新主枝の先端を固定することができる。
【0019】
本発明に係る誘導支柱は、全面にメッキ処理が施された鋼線を用いることができ、メッキ処理を施すことにより防錆性が向上する。また、誘導支柱における谷部及び固定部における安定した固定を確保するために、谷部及び固定部を被覆することにより、谷部と主枝及び添え棒とのより安定した固定、並びに固定部と棚線とのより安定した固定が得られる。
【0020】
以下、具体的な態様を第1図及び第2図を用いて説明する。なお、本発明に係る誘導支柱は、図面に示された具体的な態様によって、何ら限定されるものではない。
【0021】
第1図に示すように、本発明に係る誘導支柱1は、谷部2、足部3及び固定部4を備えるものである。誘導支柱1の具体的な態様としては、直径約4mm、全長約100cmの炭素鋼である鋼線を二股に曲げ加工し足部3を形成し、さらに、鋼線の略中央部には谷部2として約5cmの凹部を形成し、足部3の両先端部には直径約3cmの輪状の固定部4を形成する。鋼線を二股に曲げ加工し、形成される足部3の長さは約50cmである。
足部3の間隔については、谷部2近傍における間隔が固定部4近傍に向けて漸次狭くなるように形成し、第1図においては、足部3の間隔として、谷部2近傍における間隔は固定部4近傍の間隔の約2倍となっている。
【0022】
第2図は、本発明に係る誘導支柱1を固定部4を介して棚線5に固定し、主枝6を谷部2に固定した態様を示すものである。誘導支柱1は棚線5の任意の位置に、輪状の固定部4を棚線5に通し、傾けることにより固定できる。また、誘導支柱1を棚線5に対して略垂直に立てることにより、誘導支柱1は容易に棚線5を移動し、任意の位置において誘導支柱1を傾けることにより固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る誘導支柱は、果樹の新主枝の伸長のための誘導管理の作業について、簡略化、効率化、及び安定化を図ることができることから、特に果樹農家にとって有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 誘導支柱
2 谷部
3 足部
4 固定部
5 棚線
6 主枝