(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044337
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】pn接合ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20230323BHJP
H01L 29/201 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01L29/91 F
H01L29/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152316
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高塚 章夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
(57)【要約】
【課題】単純な構造をとる場合であっても、低い立ち上がり電圧の実現とリーク電流の抑制を両立することのできるpn接合ダイオードを提供する。
【解決手段】一実施の形態として、(Ga
xAl
yIn
1-x-y)
2O
3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層11と、n型半導体層11とpn接合を形成する、Cu
2O、NiO、Ag
2O、Ge、Si
xGe
1-x(0<x<1)、CuInO
2、CuGaO
2、CuAlO
2、CuAl
xGa
yIn
1-x-yO
2(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)、又はCuOであるp型半導体からなるp型半導体層12と、を備え、立ち上がり電圧が1.2V以下である、pn接合ダイオード1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、
前記n型半導体層とpn接合を形成する、Cu2O、NiO、Ag2O、Ge、SixGe1-x(0<x<1)、CuInO2、CuGaO2、CuAlO2、CuAlxGayIn1-x-yO2(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)、又はCuOであるp型半導体からなるp型半導体層と、
を備え、
立ち上がり電圧が1.2V以下である、
pn接合ダイオード。
【請求項2】
(GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、
前記n型半導体層とpn接合を形成する、多結晶Si又はアモルファスSiであるp型半導体からなるp型半導体層と、
を備え、
立ち上がり電圧が1.2V以下である、
pn接合ダイオード。
【請求項3】
(GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、
前記n型半導体層とpn接合を形成する、単結晶Siであるp型半導体からなるp型半導体層と、
を備え、
立ち上がり電圧が1.2V以下である、
pn接合ダイオード。
【請求項4】
前記p型半導体の電子親和力χpと仕事関数φp、及び前記n型半導体の電子親和力χnと仕事関数φnが、0eV≦χn-χp+φp-φn≦1.2eVの式で表される条件を満たす、
請求項1~3のいずれか1項に記載のpn接合ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pn接合ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Ga2O3系単結晶からなるn型半導体層と、NiOからなるp型半導体層とが積層されたpn接合ダイオードが知られている(特許文献1参照)。p型のGa2O3の形成は困難であるため、特許文献1に記載のpn接合ダイオードにおいては、Ga2O3系単結晶ヘテロpn接合を形成することができるNiO単結晶がp型半導体層の材料に用いられている。
【0003】
また、特許文献1には、トレンチを有するGa2O3系単結晶からなるn型半導体層と、n型半導体層のトレンチ内に埋め込まれたNiOからなるp型半導体層とを備えるトレンチ型ジャンクションバリアショットキー(JBS)ダイオードが開示されている。一般的に、ショットキーバリアダイオードは、pn接合ダイオードと比較して順方向特性における立ち上がり電圧を小さくすることができるが、ショットキー接合界面のトンネル現象に起因したリーク電流が生じ得るという問題がある。特許文献1におけるJBSダイオードでは、n型半導体層とトレンチ内のp型半導体層とのpn接合によりショットキー接合界面のトンネル現象に起因したリーク電流を抑え、低い立ち上がり電圧の実現とリーク電流の抑制を両立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のJBSダイオードは、トレンチ内にp型半導体層が埋め込まれた複雑な構造を有するため、その製造には複雑な工程が必要である。
【0006】
本発明の目的は、単純な構造をとる場合であっても、低い立ち上がり電圧の実現とリーク電流の抑制を両立することのできるpn接合ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[4]のpn接合ダイオードを提供する。
【0008】
[1](GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、前記n型半導体層とpn接合を形成する、Cu2O、NiO、Ag2O、Ge、SixGe1-x(0<x<1)、CuInO2、CuGaO2、CuAlO2、CuAlxGayIn1-x-yO2(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)、又はCuOであるp型半導体からなるp型半導体層と、を備え、立ち上がり電圧が1.2V以下である、pn接合ダイオード。
[2](GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、前記n型半導体層とpn接合を形成する、多結晶Si又はアモルファスSiであるp型半導体からなるp型半導体層と、を備え、立ち上がり電圧が1.2V以下である、pn接合ダイオード。
[3](GaxAlyIn1-x-y)2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)の組成を有するn型半導体の単結晶からなるn型半導体層と、前記n型半導体層とpn接合を形成する、単結晶Siであるp型半導体からなるp型半導体層と、を備え、立ち上がり電圧が1.2V以下である、pn接合ダイオード。
[4]前記p型半導体の電子親和力χpと仕事関数φp、及び前記n型半導体の電子親和力χnと仕事関数φnが、0eV≦χn-χp+φp-φn≦1.2eVの式で表される条件を満たす、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のpn接合ダイオード。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単純な構造をとる場合であっても、低い立ち上がり電圧の実現とリーク電流の抑制を両立することのできるpn接合ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るpn接合ダイオードの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(pn接合ダイオードの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るpn接合ダイオード1の垂直断面図である。pn接合ダイオード1は、n型のGa
2O
3系半導体の単結晶からなるn型半導体層11と、n型半導体層11とpn接合を形成する、p型半導体からなるp型半導体層12と、を備える。
【0012】
ここで、Ga2O3系半導体とは、Ga2O3、又は、Al、Inの一方若しくは両方が添加されたGa2O3であり、(GaxAlyIn(1-x-y))2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)で表される組成を有する。Ga2O3にAlを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。なお、n型半導体層11を構成するGa2O3系半導体の単結晶は、典型的には、β型の結晶構造を有する。
【0013】
また、上述のように、n型半導体層11はn型のGa2O3系半導体の単結晶からなるが、“単結晶からなる”とは、その全体又はほぼ全体が1つの単結晶体であることをいい、多数の粒状やフレーク状の微細な単結晶の集合体のようなものは該当しない。n型半導体層11がGa2O3系半導体の単結晶からなるため、pn接合ダイオード1の特性オン抵抗は材料性能で決まる理想値に近い値が実現できる。しかしながら、上記のGa2O3系半導体の単結晶の代わりにフレーク状の微細な結晶の集合体を用いて、キャリア濃度及び厚さが等しくなるようにn型半導体層11を作成した場合は、上記のGa2O3系半導体の単結晶を用いる場合と比べて、pn接合ダイオード1の特性オン抵抗が数倍以上高くなるものと考えられ、実用的ではない。
【0014】
図1に示される例では、n型半導体層11はn型半導体基板10上にエピタキシャル結晶成長により形成された、n型のGa
2O
3系半導体の単結晶からなる層であり、そのn型半導体層11上にp型半導体層12が積層されている。そして、p型半導体層12のn型半導体層11と反対側の面上にアノード電極13が形成され、n型半導体基板10のn型半導体層11と反対側の面上にカソード電極14が形成されている。
【0015】
pn接合ダイオード1は、n型半導体層11とp型半導体層12のpn接合の整流性を利用している。pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧は、1.2V以下である。また、pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧は、例えば、0.3V以上である。ここで、電流密度-電圧特性を示す曲線上の電流密度が1×102cm-2、2×102cm-2である2点を結ぶ直線を外挿したときの、その外挿直線と横軸(電流密度が0cm-2の直線)との交点における電圧を立ち上がり電圧とする。
【0016】
pn接合ダイオード1においては、アノード電極13とカソード電極14との間に順方向の電圧(アノード電極13側が正電位)を印加することにより、n型半導体層11から見たp型半導体層12とn型半導体層11との界面のポテンシャル障壁が低下し、アノード電極13からカソード電極14へ電流が流れる。一方、アノード電極13とカソード電極14との間に逆方向の電圧(アノード電極13側が負電位)を印加したときは、pn間のポテンシャル障壁により、電流が流れない。
【0017】
n型半導体基板10は、n型のGa2O3系半導体の単結晶からなる基板である。n型半導体基板10は、Si、Snなどのドナー不純物を含む。n型半導体基板10のドナー濃度は、例えば、1.0×1018cm-3以上かつ1.0×1020cm-3以下である。n型半導体基板10の厚さは、例えば、10μm以上かつ600μm以下である。
【0018】
n型のGa2O3系単結晶からなるn型半導体層11は、Si、Snなどのドナー不純物を含む。n型半導体層11のドナー濃度は、例えば、1×1013cm-3以上かつ1×1018cm-3以下である。n型半導体層11の厚さは、例えば、1μm以上かつ100μm以下である。
【0019】
pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧を1.2V以下とするためには、立ち上がり電圧の理論値に相当するアノード電極13とカソード電極14との間のポテンシャル障壁の高さが1.2V以下となるように、p型半導体層12の材料であるp型半導体の電子親和力χpと仕事関数φp、及びn型半導体層11の材料であるn型半導体の電子親和力χnと仕事関数φnは、0eV≦χn-χp+φp-φn≦1.2eVの式で表される条件を満たすことが好ましい。なお、上記の仕事関数は、真空順位とフェルミ準位とのエネルギー差に等しい。
【0020】
n型半導体層11の材料である(GaxAlyIn(1-x-y))2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)のχnは、およそ0.7~4.5eVであり、組成比(x、y、zの値)によりこれらの範囲内で調整することができる。φnは組成比(x、y、z)及びn型半導体層のキャリア濃度Ndによって調整することができ、およそ0.7~5.5eVである。
【0021】
p型半導体層12の材料であるp型半導体は、例えば、Cu2O、NiO、Ag2O、Si、Ge、SixGe1-x(0<x<1)、CuInO2、CuGaO2、CuAlO2、CuAlxGayIn1-x-yO2(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)、又はCuOである。ここで、これらのp型半導体は、多結晶、単結晶、アモルファスのいずれであってもよい。
【0022】
p型半導体層12の材料であるp型半導体は、多結晶Si又はアモルファスSiであることが好ましい。多結晶Si又はアモルファスSiをp型半導体として用いた場合、CVD法、プラズマCVD法等の最も成熟した公知の成膜技術が利用でき、また、成熟した技術のためp型キャリア濃度をドーパント流量により精度よく制御できる。
【0023】
非特許文献“H.M.Manasevit and W.I.Simpson:"Single-Crystal Silicon on a Sapphire Substrate"JAP Vol.35 p.1349-1351, 1964”に記載されているように、CVD技術を用いて(AlxGayIn1-x-y)2O3基板上へp型単結晶Si膜を成膜することができることが知られている。しかしながら、Si膜をエピタキシャル成長した直後は、(AlGaIn)2O3単結晶と単結晶Siの格子不整合のため、Si膜側の界面に、多数の格子欠陥が発生する。非特許文献“M.L.Burgener and R.E.Reedy:"Minimum charge FET fabricated on an ultrathin silicon on sapphire wafer" United States Patent No.5,416,043, 1995”には、これらの格子欠陥を除去するために、Si膜のエピタキシャル成長後にイオン注入、高温アニールなどの工程を実施する方法が記載されているが、これらの工程は複雑で、プロセスコストが高くなるという問題がある。これに対し、(AlxGayIn1-x-y)2O3基板上にp型多結晶Si、p型アモルファスSiの膜を成膜する場合、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリング法などの種々の公知の方法を用いることができ、また、上記のp型単結晶Si膜を成膜する場合のイオン注入などによる欠陥回復工程も必要としないため、より簡便に成膜が可能である。
【0024】
p型半導体層12の材料であるp型半導体は、単結晶Siであってもよい。単結晶Siは、キャリア濃度が制御された安価で高品質なp型単結晶Siを商用利用できる。また、単結晶Siからなるp型半導体層12は、常温で表面活性化接合法によりn型半導体層11と接合でき、CVD装置で用いられる爆発性の原料ガスやキャリアガスを使用しない安全なプロセスにて、pn接合形成が可能である。
【0025】
下記の表1に、p型半導体層12の材料として用いることができる材料の電子親和力χp及び仕事関数φpを示す。φpの値は、p型半導体層12のアクセプタ濃度を変化させることにより、表1に示すような範囲で調整できる。また、p型半導体層12の材料が単結晶SixGe1-x、多結晶SixGe1-x、又はアモルファスSixGe1-xであるときは、組成比xによってχp及びφpを調整することもできる。
【0026】
【0027】
p型半導体層12の形成には、例えば、スパッタ法、真空蒸着、MBE、PLD、CVD、直接接合、ゾルゲル法、スプレー法、塗布法を用いることができる。スパッタや真空蒸着法はプロセスコストが比較的低いが、成膜法の特性上、結晶性の高い膜を得ることは比較的難しく、所望のキャリア濃度を得ることが困難である。Cu2Oのスパッタ法による成膜は、例えば非特許文献“Applied Physics Letters 111, 093501(2017)”に記載されている要領で可能である。一方、MBE、PLD、CVDは、プロセスコストが高価だが、単結晶を比較的容易に得ることができ、バックグラウンドの不純物ガス濃度を比較的低く抑えられるため、所望の電気特性を得ることが比較的容易である。多結晶Si、アモルファスSi、多結晶Ge、アモルファスGeはCVD法等の公知の手法により成膜が可能である。直接接合は、予め用意された高品質のp型半導体層を使用することができる。ゾルゲル法については、例えばNiOを同法で成膜する場合は、非特許文献「Y. Kokubun, S. Kubo, S. Nakagomi, Applied Physics Express 9, 091101 (2016)」に記載された方法などを用いることができる。
【0028】
ここで、pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧を1.2V以下とするための具体的な構成例を示す。例えば、n型半導体層11の材料であるn型半導体が単結晶Ga2O3、p型半導体層12の材料であるp型半導体が多結晶Siである場合は、n型半導体層11のドナー濃度を2×1016cm-3、p型半導体層12のアクセプタ濃度を1×1018cm-3とすることにより、pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧がおよそ0.9Vとなる。また、n型半導体層11の材料であるn型半導体が(Al0.37Ga0.62)2O3、p型半導体層12の材料であるp型半導体が多結晶Geである場合は、n型半導体層11のドナー濃度を1×1017cm-3、p型半導体層12のアクセプタ濃度を1×1017cm-3とすることにより、pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧がおよそ1.0Vとなる。
【0029】
上述のように、pn接合ダイオード1の立ち上がり電圧を1.2V以下という低い値にするためには、n型半導体層11の材料にGa2O3系半導体の単結晶を用いること、アノード電極13とカソード電極14の材料の組み合わせが、これらの間のポテンシャル障壁の高さが1.2V以下となるようなものであることが求められ、これらの条件を満たさない場合には立ち上がり電圧を1.2V以下とすることはできない。
【0030】
例えば、上記の特許文献1(特開2019-36593号公報)に実施例1として記載されているpn接合ダイオードは、n型半導体層がキャリア濃度6×1016cm-3のGa2O3からなり、p型半導体層がNiOからなる。このpn接合ダイオードにおいては、Ga2O3の電子親和力χnが4.0eV、NiOの電子親和力χpが1.8eV、Ga2O3の仕事関数φnがおよそ4.1eV、NiOの仕事関数φpがおよそ5.2~5.5eVであるため、χn-χp+φp-φnから導出される立ち上がり電圧の理論値に相当するポテンシャル障壁の高さがおよそ3.3~3.6Vであり、立ち上がり電圧が1.2V以下となることはない。
【0031】
アノード電極13は、p型半導体層12とオーミック接合を形成するPtやNiなどの導電性材料からなる。アノード電極13の厚さは、例えば、0.01μm以上かつ10μm以下である。
【0032】
カソード電極14は、n型半導体基板10と接触する部分がGa2O3系単結晶とオーミック接合を形成するTiなどの導電性材料からなる。すなわち、カソード電極14が単層構造を有する場合はその全体がTiなどからなり、多層構造を有する場合はn型半導体基板10と接触する層がTiなどからなる。カソード電極14の多層構造としては、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Ni/Au、又はTi/Al/Ni/Auが挙げられる。カソード電極14の厚さは、例えば、0.01μm以上かつ5μm以下である。なお、pn接合ダイオード1がn型半導体基板10を備えず、カソード電極14がn型半導体層11に直接接続される場合は、n型半導体層11がカソード電極14とオーミック接触する。
【0033】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係るpn接合ダイオード1によれば、
図1に示されるような単純な積層構造をとる場合であっても、低い立ち上がり電圧の実現とリーク電流の抑制を両立することができる。このため、例えば、pn接合ダイオード1を用いて、電力損失が小さく、かつ信頼性の高いACDCコンバータなどの電力変換回路を製造することができる。
【0034】
ダイオード導通時の損失は順方向電圧VFに比例するが、このVFは、電流導通時は立ち上がり電圧Vthに特性オン抵抗と電流密度を乗して求められる電圧成分VRを加算して算出される。例えば、現在市販されている600V耐圧SiCショットキーバリアダイオードは、Vthが0.9V程度、特性オン抵抗が1mΩcm2程度である。このため、電流密度400A/cm2で電流導通した場合、VFは1.3Vとなる。
【0035】
一方、SiCのバリガ性能指数が340であるのに対し、酸化ガリウムのバリガ性能指数は3444程度とされているため、酸化ガリウムダイオードはSiCダイオードの約10倍の性能指数を有する。このため、pn接合ダイオード1によれば、0.1mΩcm2程度の特性オン抵抗を実現することができ、Vthが1.2V以下であれば、電流密度400A/cm2で電流導通した場合のVFは1.24V以下となり、上記のSiCショットキーバリアダイオードのVFを下回る。すなわち、上記のSiCショットキーバリアダイオードよりも導通損失を小さくすることができる。
【0036】
また、酸化ガリウムpnダイオードであるpn接合ダイオード1は、融液成長法により低コストで容易に製造することができ、また機械加工も容易なバルクウエハを利用することができるため、バルクウエハ製造のコストが高く、加工の困難性に課題がある材料を使用する必要があるSiCショットキーバリアダイオードよりも、製造容易性において優れている。
【0037】
このため、pn接合ダイオード1のVthが1.2V以下であり、電気的性能と製造容易性の両面で上記のSiCショットキーバリアダイオードを上回ることができれば、現在上記のSiCショットキーバリアダイオードが応用されている分野において、SiCショットキーバリアダイオードの替わりに利用することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。例えば、pn接合ダイオード1の構造は
図1に示されるものに限られず、n型半導体層11とp型半導体層12のpn接合を含む構造であればよく、また、n型半導体層11とp型半導体層12の形状やpn接合ダイオード1中の配置なども特に限定されない。
【0039】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0040】
1…pn接合ダイオード、 10…n型半導体基板、 11…n型半導体層、 12…p型半導体層、 13…アノード電極、 14…カソード電極