(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044368
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】水蒸気量の観測装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20230323BHJP
G01N 22/04 20060101ALI20230323BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G01W1/00 C
G01N22/04 A
G01N22/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152365
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】比留間 利通
(72)【発明者】
【氏名】北井 信則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 琢也
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純一
(72)【発明者】
【氏名】花土 弘
(72)【発明者】
【氏名】川村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】金丸 佳矢
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝広
(57)【要約】
【課題】 1つの観測点において水蒸気量の観測を容易に行うことができる水蒸気量の観測装置を提供する。
【解決手段】 観測装置20において、入力端子INから入力された直達波と反射波の受信信号が受信ユニット54aに入力され、受信信号の複素遅延プロファイルが生成される。受信ユニットから出力された複素遅延プロファイルのデータは通信ユニット55に入力され、ピークが検索されて直達波と反射波のピークの位相情報が計算されると共に、直達波と反射波の位相情報間の位相差分データが生成される。位相差分データに基づいて、観測装置20と反射体との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められる。水蒸気量のデータは、通信アンテナ91からクラウド90にアップロードされる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、
該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、
放送局と反射体との間の観測点に設置されて、前記入力端子に、前記放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、該地上デジタル放送波が前記反射体で反射された反射波との受信信号が入力された際に、前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記反射波のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記反射波のピークの位相情報との間の位相差分データに基づいて、前記観測点と前記反射体との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを特徴とする水蒸気量の観測装置。
【請求項2】
複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、
該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、
放送局から見てギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局とを備えるギャップフィラーシステムを超えた観測点に設置されて、前記入力端子に、前記放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、前記ギャップフィラー受信局で受信され伝送線路で伝送された地上デジタル放送波が前記ギャップフィラー送信局から再送信された再送信波との受信信号が入力された際に、
前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記再送信波のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記再送信波のピークの位相情報との間の位相差分データに基づいて、前記ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを特徴とする水蒸気量の観測装置。
【請求項3】
複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、
該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、
ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局とを備えるギャップフィラーシステムにおける前記ギャップフィラー受信局と同じ位置の観測点に設置されて、前記入力端子に、放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、前記ギャップフィラー受信局で受信され第1伝送線路で伝送された地上デジタル放送波が前記ギャップフィラー送信局から再送信された再送信波と、前記ギャップフィラー送信局から再送信される地上デジタル放送の信号が第2伝送線路で伝送された地上デジタル放送信号との受信信号が入力された際に、
前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記再送信波のピークおよび前記地上デジタル放送信号のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記再送信波のピークの位相情報との間の第1位相差分データと、前記直達波のピークの位相情報と前記地上デジタル放送信号のピークの位相情報との間の第2位相差分データとに基づいて、前記観測点とギャップフィラー送信局との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを特徴とする水蒸気量の観測装置。
【請求項4】
前記通信ユニットは、求められた水蒸気量のデータをインターネット上のクラウドにアップロードすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の水蒸気量の観測装置。
【請求項5】
前記通信ユニットには、外部に設置された地上気象測器から気象データが入力されており、前記通信ユニットは、求められた水蒸気量のデータおよび前記気象データをインターネット上のクラウドにアップロードすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の水蒸気量の観測装置。
【請求項6】
前記複数の受信ユニット、前記通信ユニット、前記複数の受信ユニットと前記通信ユニットとに電源を供給可能な電源ユニットとが筐体に収納されており、該筐体が前記観測点に設置されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の水蒸気量の観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気量の観測を容易に行うことができる水蒸気量の観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)・組織的な積乱雲群にもたらされる線状降水帯・梅雨前線・台風などによる豪雨災害が多発し、社会問題となっている。気象庁・国土交通省などで全国展開されている気象レーダにより、詳細な降雨観測が行われているが、これらは雨粒・雪片・氷晶など、液体・固体の“水”からの電波の反射を利用し、現況を観測している。すなわち、気象レーダによる観測では、降雨を予測することはできず、降雨を予測するには大気中の水蒸気の観測が重要である。水蒸気は大気を構成する成分の中では、気相・液相・固相と相変化し、降雨・降雪として上空から地表面へ落下したり、水面での蒸発で地表面から上空へ上昇するなどの時空間的な変化が激しく観測の難しい要素である。広域の水蒸気量の分布を観測する手段として、現在実用化されている手法として、GPSに代表されるGNSS(全球測位衛星システム)衛星からの電波における対流圏遅延から算出される鉛直積算水蒸気量(可降水量)を求める方法がある。この方法は、国土地理院に設置された全国約1,300カ所の電子基準点網(GEONET)での観測データから得られた水蒸気の情報が気象庁メソ数値予報モデル(MSM)の初期値を作成するメソ解析で利用され、降水の予報の精度向上が行われている。これと同じ原理に基づき、地上デジタル放送波の電波伝搬時の遅延量を高精度測定し、伝搬路、特に地上付近の水蒸気の積算量を観測する手法が研究されている。
ところで、電波の伝搬速度は、伝搬する空間に存在する水蒸気の量によって変化することが知られており、観測地点で受信される電波の伝搬時間を測定することにより、水蒸気量を算出する従来の水蒸気量測定装置が特許文献1,特許文献2に記載されている。また、地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行うことが非特許文献1,非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-212750号公報
【特許文献2】特開2007-10460号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"地デジ放送波を使った水蒸気量推定手法の開発に成功 ~ピコ秒精度で電波の伝搬遅延を計測、ゲリラ豪雨の予測精度向上へ~"、2017年3月9日[online]、国立研究開発法人情報通信研究機構、[令和3年6月16日検索]、インターネット〈URL:https://www.nict.go.jp/press/2017/03/09-1.html〉
【非特許文献2】S.KAWAMURA 他14名、"Water vapor estimation using digital terrestrial broadcasting waves"、[online]、National Institute of Information and Communications Technology、[令和3年6月16日検索]、インターネット〈URL:https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/2016RS006191〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2に記載されている地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の方法を
図21ないし
図23を参照して説明する。
図21は地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の同期法を説明する図であり、
図22は地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の反射法を説明する図であり、
図23は
図22に示す反射法における複素遅延プロファイルの例を示す図である。
図21に示す地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の同期法は、放送局500から放射された地上デジタル放送波を受信する測定点Aと、測定点Aと放送局500との間に配置された測定点Bとを備えており、測定点Aと測定点Bとの間における大気中の水蒸気量を観測している。ここで、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延する。例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延する。すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となる。これを利用して、従来の同期法では、地上デジタル放送波を用いて伝搬遅延時間を高精度に測定することで、水蒸気量の情報を得ることが可能とされる。なお、地上デジタル放送波の伝搬時間は、地上デジタル放送波の位相回転(角度)とされる位相情報で表すこともできる。
【0006】
測定点Aおよび測定点Bには、地上デジタル放送波を受信可能な受信部がそれぞれ設けられている。ここで、放送局500から放射された地上デジタル放送波が測定点Aに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτAとし、放送局500から放射された地上デジタル放送波が測定点Bに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτBとし、放送局500における送信部の位相雑音をφT、測定点Aにおける受信部の位相雑音をφA、測定点Bにおける受信部の位相雑音をφBとする。すると、測定点Aで測定される地上デジタル放送波の伝搬時間に相当する位相情報MAは、
MA=τA+φT+φA (1)
となり、測定点Bで測定される地上デジタル放送波の伝搬時間に相当する位相情報MBは、
MB=τB+φT+φB (2)
となる。地上デジタル放送波が測定点Bから測定点Aに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報は(MA-MB)で求められる。すなわち、
(MA-MB)=(τA-τB)+(φA-φB) (3)
となる。(3)式における(φA-φB)の位相雑音の項は測定誤差となることから、(φA-φB)=0とする必要がある。ここで、測定点Aと測定点Bとの同期をとればφA=φBとなることは明らかである。すなわち、同期法では、測定点Aと測定点Bとの同期をとることで(φA-φB)=0として、次に示す(4)式のように測定誤差が生じないようにしている。
(MA-MB)=(τA-τB) (4)
(4)式に示す伝搬時間に相当する位相情報(τA-τB)と、真空中の電波の速度(2.99792458×108m/s )に基づいて求められる地上デジタル放送波が測定点Bから測定点Aに到達するまでの伝搬時間との差である伝搬遅延時間に基づいて、測定点Aと測定点Bとの間における大気中の水蒸気量を観測することができる。
【0007】
次に、
図22に示す地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の反射法は、放送局500から放射された地上デジタル放送波を反射する反射体Rと、反射体Rと放送局500との間の測定点Cとを備えており、反射体Rと測定点Cとの間における大気中の水蒸気量を観測している。反射法も、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延すること、例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延、すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となることを利用している。反射法では、地上デジタル放送波を用いて伝搬遅延時間を高精度に測定することで、水蒸気量の情報を得ている。
【0008】
測定点Cには、地上デジタル放送波を受信可能な受信部が設けられている。ここで、放送局500から放射された地上デジタル放送波が反射体Rで反射されて測定点Cに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτRとし、放送局500から放射された地上デジタル放送波が測定点Cに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτCとし、放送局500における送信部の位相雑音をφT、測定点Cにおける受信部の位相雑音をφCとする。すると、測定点Cで測定される放送局500からの直達波の伝搬時間に相当する位相情報MC1は、
MC1=τC+φT+φC (5)
となり、測定点Cで測定される反射体Rで反射された反射波の伝搬時間に相当する位相情報MC2は、
MC2=τR+φT+φC (6)
となる。
【0009】
測定点Cにおいて観測される複素遅延プロファイルが
図23に示されている。複素遅延プロファイルは横軸が時間軸とされ、縦軸が振幅軸とされて、横軸により伝搬時間が示されている。
図23に示す複素遅延プロファイルでは、時刻t1で凸状のピークが現れており、時刻t2においても凸状のピークが現れている。時刻t1のピークは、測定点Cで受信された放送局500からの直達波であり、ピーク位置の時刻t1から位相情報MC1が得られる。また、時刻t2のピークは、測定点Cで受信された反射体Rで反射された反射波であり、ピーク位置の時刻t2から位相情報MC2が得られる。位相情報MC1が測定される測定点Cから反射体Rに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτMとすると、反射体Rの反射波が測定点Cに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報もτMとなる。そして、地上デジタル放送波が測定点Cから反射体Rに到達して、反射体Rで反射された反射波が測定点Cまで戻るまでの伝搬時間に相当する位相情報は(MC2-MC1)で求められる。すなわち、
(MC2-MC1)=(τR-τC) (7)
となる。
図23を参照すると明らかなように、(7)式で示す(MC2-MC1)は反射体Rと測定点Cとの間の往復の伝搬時間に相当する位相情報であるから、(MC2-MC1)は2τMに等しくなり、
τM=(MC2-MC1)/2=(τR-τC)/2 (8)
となる。(8)式に示すように、反射法では、同期手段を必要とすることなく放送局500と測定点Cとの位相雑音を相殺することができる。反射法では、反射体Rと測定点Cとの間の伝搬時間に相当する位相情報τMと、真空中の電波の速度(2.99792458×10
8m/s )に基づいて求められる地上デジタル放送波が反射体Rから測定点Cに到達するまでの伝搬時間との差である伝搬遅延時間に基づいて、反射体Rと測定点Cとの間における大気中の水蒸気量を観測することができる。
【0010】
上記説明した同期法では、水蒸気量を観測したい場所を間に置く2つの測定点が必要になると共に、2つの測定点との間で同期をとるための同期手段が必要になるという問題点があった。さらに、水蒸気量の観測はピコ秒オーダのわずかな伝搬遅延時間を利用することから高精度の同期手段とする必要があり、同期手段が高額になるという問題点があった。
また、上記説明した反射法では、反射体があれば1つの測定点において水蒸気量の観測を容易に行うことができるため、2つの測定点との間で同期をとるための同期手段を必要としていない。
そこで、本発明は1つの観測点において水蒸気量の観測を容易に行うことができる水蒸気量の観測装置を提供することを目的としている。
また、利用できる反射体を得ることが困難なケースが考えられることから、本発明は反射体を利用することなく1つの観測点において水蒸気量の観測を容易に行うことができる水蒸気量の観測装置を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的を達成することができる本発明の水蒸気量の観測装置は、複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、放送局と反射体との間の観測点に設置されて、前記入力端子に、前記放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、該地上デジタル放送波が前記反射体で反射された反射波との受信信号が入力された際に、前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記反射波のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記反射波のピークの位相情報との間の位相差分データに基づいて、前記観測点と前記反射体との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを最も主要な特徴としている。
【0012】
上記本発明の他の目的を達成することができる本発明の他の水蒸気量の観測装置は、複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、放送局から見てギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局とを備えるギャップフィラーシステムを超えた観測点に設置されて、前記入力端子に、前記放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、前記ギャップフィラー受信局で受信され伝送線路で伝送された地上デジタル放送波が前記ギャップフィラー送信局から再送信された再送信波との受信信号が入力された際に、前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記再送信波のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記再送信波のピークの位相情報との間の位相差分データに基づいて、前記ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを最も主要な特徴としている。
【0013】
上記本発明の他の目的を達成することができる本発明の他の水蒸気量の観測装置は、複数の入力端子から入力された受信信号のそれぞれが入力され、該受信信号の複素遅延プロファイルを生成して該複素遅延プロファイルのデータをそれぞれ出力する複数の受信ユニットと、該受信ユニットから出力された前記複素遅延プロファイルのデータからピークが検索され、検索された該ピークの内の最も早い時刻の第1のピークの位相情報と、該第1のピークを除く他のピークの位相情報との間の位相差分データが生成され、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータが求められて送信される通信ユニットとを備え、ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局とを備えるギャップフィラーシステムにおける前記ギャップフィラー受信局と同じ位置の観測点に設置されて、前記入力端子に、放送局からの地上デジタル放送波の直達波と、前記ギャップフィラー受信局で受信され第1伝送線路で伝送された地上デジタル放送波が前記ギャップフィラー送信局から再送信された再送信波と、前記ギャップフィラー送信局から再送信される地上デジタル放送の信号が第2伝送線路で伝送された地上デジタル放送信号との受信信号が入力された際に、前記通信ユニットでは、前記直達波のピークが第1のピークとして検索されると共に、前記再送信波のピークおよび前記地上デジタル放送信号のピークが検索されて、前記直達波のピークの位相情報と前記再送信波のピークの位相情報との間の第1位相差分データと、前記直達波のピークの位相情報と前記地上デジタル放送信号のピークの位相情報との間の第2位相差分データとに基づいて、前記観測点とギャップフィラー送信局との間の空間における大気中の水蒸気量のデータが求められることを最も主要な特徴としている。
【0014】
また、上記本発明の水蒸気量の観測装置では、前記通信ユニットは、求められた水蒸気量のデータをインターネット上のクラウドにアップロードしている。
さらに、上記本発明の水蒸気量の観測装置では、前記通信ユニットには、外部に設置された地上気象測器から気象データが入力されており、前記通信ユニットは、求められた水蒸気量のデータおよび前記気象データをインターネット上のクラウドにアップロードしている。
さらにまた、上記本発明の水蒸気量の観測装置では、前記複数の受信ユニット、前記通信ユニット、前記複数の受信ユニットと前記通信ユニットとに電源を供給可能な電源ユニットとが筐体に収納されており、該筐体が前記観測点に設置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水蒸気量の観測装置を、放送局と反射体との間の観測点に設置すると、観測点では、放送局から直接到達する地上デジタル放送波と、反射体で反射された地上デジタル放送波の反射波とが受信される。これにより、本発明の水蒸気量の観測装置は、観測点と反射体との間における大気中の水蒸気量の観測を、1つの観測点において容易に行うことができる
また、本発明の水蒸気量の観測装置を、放送局から見てギャップフィラー受信局およびギャップフィラー送信局とを超えた位置の観測点に設置すると、観測点では、放送局から直接到達する地上デジタル放送波と、ギャップフィラー受信局で受信され伝送線路でギャップフィラー送信局に伝送され、ギャップフィラー送信局から再送信された地上デジタル放送波とが受信される。これにより、本発明の水蒸気量の観測装置は、ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局との間における大気中の水蒸気量の観測を、反射体を利用することなく1つの観測点において容易に行うことができる。
さらに、本発明の水蒸気量の観測装置をギャップフィラー受信局と同じ位置の観測点に設置すると、観測点では、放送局から直接到達する地上デジタル放送波と、ギャップフィラー受信局で受信され第1伝送線路でギャップフィラー送信局に伝送され、ギャップフィラー送信局が再送信した地上デジタル放送波と、ギャップフィラー受信局で受信され第1伝送線路でギャップフィラー送信局に伝送され、ギャップフィラー送信局から第2伝送線路で伝送された地上デジタル放送信号とが受信される。これにより、観測点とギャップフィラー送信局との間における大気中の水蒸気量を観測することができる。これにより、本発明の水蒸気量の観測装置は、観測点とギャップフィラー送信局との間における大気中の水蒸気量の観測を、反射体を利用することなく1つの観測点において容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施例の観測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施例の観測装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施例の観測装置の受信ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施例の観測装置の受信ユニットの他の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施例の観測装置の通信ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第1実施例の観測装置の信号分配部および電源重畳部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第1実施例の観測装置の電源ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】本発明の第1実施例の観測装置の接続態様を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施例の観測装置の接続態様を示す他の斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施例の観測装置の水蒸気量演算処理のフローチャートである。
【
図11】本発明の第1実施例の観測装置の通信ユニットで実行される外部気象測器のデータ処理のフローチャートである。
【
図12】本発明の第1実施例の観測装置の通信ユニットで実行される外部気象測器時刻同期処理のフローチャートである。
【
図13】本発明の第1実施例の観測装置の通信ユニットで実行される通信処理のフローチャートである。
【
図14】本発明の第1実施例の観測装置が適用された水蒸気量観測システムの構成およびクラウドの概略構成を示すブロック図である。
【
図15】ギャップフィラーシステムの構成を示すブロック図である。
【
図16】本発明の第1実施例の観測装置が適用された他の水蒸気量観測システムの構成を示すブロック図である。
【
図17】
図16に示す水蒸気量観測システムの観測点における実際の複素遅延プロファイルの例を示す図である。
【
図18】本発明の第2実施例の観測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図19】本発明の第2実施例の観測装置が適用された水蒸気量観測システムの構成を示すブロック図である。
【
図20】
図19に示す水蒸気量観測システムの観測点における実際の複素遅延プロファイルの例を示す図である。
【
図21】地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の同期法の構成を示すブロック図である。
【
図22】地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の反射法の構成を示すブロック図である。
【
図23】地上デジタル放送波を用いて水蒸気観測を行う従来の反射法における複素遅延プロファイルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の第1実施例>
本発明の第1実施例の水蒸気量を観測する観測装置20の構成を示す機能ブロック図を
図1に示し、本発明の第1実施例の観測装置20の詳細な構成を示す機能ブロック図を
図2に示す。これらの図に示す本発明の観測装置20は、
図22に示す反射法に適用して水蒸気量を観測している。また、本発明の第1実施例の観測装置20は、後述するギャップフィラーシステムに適用して水蒸気量を観測することができる。
図1および
図2に示すように観測装置20は筐体40を備えており、筐体40の内部に避雷回路部51と、電源重畳部52と、信号分配部53と、所望の数の受信ユニット54a,54b,54c・・・・からなる受信ユニット54と、通信ユニット55と、中継ボード56と、電源ユニット57とが収納されており、ユニット化されている受信ユニット54,通信ユニット55および電源ユニット57は筐体40に対して着脱自在に収納されている。筐体40は金属製とされるが、合成樹脂製とすることもできる。
【0018】
筐体40には入力端子INが設けられ、この入力端子INは複数の入力端子を備えており、そのうちの1つの入力端子には、混合器(MIX)41で混合された第1アンテナ21の受信信号と第2アンテナ22の受信信号とが入力されている。第1アンテナ21は放送局から直接到来した地上デジタル放送波(以下、「直達波」という)を受信可能とされ、第2アンテナ22は反射体で反射された地上デジタル放送波(以下、「反射波」という)を受信可能とされている。
避雷回路部51は、入力端子INの複数の入力端子からのそれぞれのライン間にバリスタやアレスタ等の避雷素子が接続されて構成されており、入力端子INのそれぞれに印加された誘導雷サージや他の激しい過渡現象を抑制して、観測装置20の各部を保護している。
電源重畳部52は、電源ユニット57からの駆動電源を入力端子INが接続されているそれぞれのラインに重畳して、入力端子INのそれぞれから出力している。図示する場合は、入力端子INから出力された駆動電源はプリアンプ42に動作電源として供給されている。これにより、プリアンプ42は、第1アンテナ21で受信された直達波の地上デジタル放送信号と、第2アンテナ22で受信された反射波の地上デジタル放送信号とを所定のレベルになるよう増幅している。
【0019】
ここで、本発明の観測装置20の入力端子INと電源重畳部52および信号分配部53の構成が
図6の機能ブロック図に示されており、
図6を参照して観測装置20の入力部を説明する。なお、
図6においては入力端子INと電源重畳部52との間に設けられている避雷回路部51は省略されている。以下の説明において、「受信信号」は「受信された地上デジタル放送信号」と同義である。
図6に示すように、入力端子INはINa,INb,INc,INd・・・INnのn個の入力端子を備えており、INa~IN(n-1)はタイプ1入力の入力端子とされ、INnはタイプ2入力の入力端子とされている。タイプ1入力は受信ユニット54a,54b,54c,54d,・・・54(n-1)のそれぞれの1つに入力され、タイプ2入力は信号分配部53の分配器(DIV)170で分配されて受信ユニット54a~54(n-1)の複数に入力される点で異なっている。なお、タイプ1入力とタイプ2入力の入力端子には直達波と反射波との受信信号が入力されるが、タイプ1入力のINa~IN(n-1)にはそれぞれ異なるアンテナで受信された直達波と反射波との受信信号が入力され、タイプ2入力のINnには1のアンテナで受信された直達波と反射波との受信信号が入力され、DIV170で分配される。
【0020】
電源重畳部52において、INaに接続されたラインには高周波信号のみを通過させるコンデンサCaが直列に接続されると共に、該ラインに高周波信号を阻止するチョークコイルLaの一端が接続されており、チョークコイルLaの他端にはSW171を介して電源ユニット57からの駆動用の電源が供給されている。SW171は入力端子INの数と同数の複数の切換スイッチから構成され、それぞれの切換スイッチには対応するINa~INnからのラインが接続されており、それぞれの切換スイッチは独立して切換操作することができる。INa用の切換スイッチの可動接点e1を固定接点d1側に切り換えると電源ユニット57からの駆動用の電源がINaから外部へ出力され、内部へはコンデンサCaの作用により供給されない。INaから出力された電源は、例えばプリアンプ42に動作電源として供給される。INb~INn用の切換スイッチを操作した場合も同様の動作が行われる。
【0021】
電源重畳部52において、INnに接続されたラインには高周波信号のみを通過させるコンデンサCnが直列に接続されると共に、該ラインに高周波信号を阻止するチョークコイルLnの一端が接続されており、チョークコイルLnの他端にはSW171を介して電源ユニット57からの駆動用の電源が供給されている。INn用の切換スイッチの可動接点enを固定接点dn側に切り換えると電源ユニット57からの駆動用の電源がINnから外部へ出力される。INnから出力された電源は、INnに接続されているプリアンプ等に動作電源として供給され、内部へはコンデンサCnの作用により供給されない。
【0022】
信号分配部53において、コンデンサCaを介したINaからのラインがSW172に接続されている。SW172はタイプ1入力の入力端子INa~IN(n-1)の数と同数の複数の切換スイッチから構成され、それぞれの切換スイッチの入力側には対応するINa~IN(n-1)からのラインが接続されており、出力側には受信ユニット54a~54(n-1)がそれぞれ接続されて、それぞれの切換スイッチは独立して切換操作することができる。また、それぞれの切換スイッチにはDIV170で分配された受信信号が入力されている。INaに対応する切換スイッチの可動接点c1を固定接点a1側に切り換えるとINaに入力されたタイプ1入力の受信信号が可動接点c1から出力されて受信ユニット54の内の受信ユニット54aに入力される。そして、INaに対応する切換スイッチの可動接点c1を固定接点b1側に切り換えるとDIV170で分配されたタイプ2入力の受信信号が可動接点c1から出力されて受信ユニット54の内の受信ユニット54aに入力される。INa~IN(n-1)に対応する切換スイッチを操作した場合も同様の切換動作が行われる。
【0023】
信号分配部53において、コンデンサCnを介したタイプ2入力のINnからのラインは分配器170に接続されており、タイプ2入力の入力端子INnに入力された受信信号は分配器170により(n-1)分配される。分配されたそれぞれの受信信号はSW172の(n-1)個の切換スイッチの入力側にそれぞれ入力される。これにより、上記したように、INa用の切換スイッチの可動接点c1を固定接点b1側に切り換えるとINnに入力されて分配されたタイプ2入力の受信信号が可動接点c1から出力されて受信ユニット54の内の受信ユニット54aに入力される。INa~IN(n-1)用の切換スイッチを操作した場合も同様の切換動作が行われる。
【0024】
なお、INb~IN(n-1)においては、コンデンサCaがコンデンサCb~C(n-1)に置き換わると共に、SW171において可動接点e1が可動接点e2~e(n-1)に、固定接点d1が固定接点d2~d(n-1)に置き換わり、SW172において可動接点c1が可動接点c2~c(n-1)に、固定接点a1が固定接点a2~a(n-1)に、固定接点b1が固定接点b2~b(n-1)に置き換わることになる。これにより、SW172において可動接点c1~c(n-1)を固定接点a1~a(n-1)側に切り換えると、切り換えられた切換スイッチに対応する受信ユニット54a~54(n-1)においては、INa~IN(n-1)に入力されたタイプ1入力の受信信号が入力され、可動接点c1~c(n-1)を固定接点b1~b(n-1)側に切り換えると、切り換えられた切換スイッチに対応する受信ユニット54a~54(n-1)においては、分配器170で分配されたINnに入力されたタイプ2入力の受信信号が入力されるようになる。
【0025】
受信ユニット54には、信号分配部53からの受信信号がそれぞれ入力される(n-1)台の受信ユニット54a~54(n-1)から構成されている。受信ユニット54a~54(n-1)は、同じ構成とされており第1の実施態様の受信ユニット54-1の構成を示す機能ブロック図を
図3に示す。
図3に示す第1の実施態様の受信ユニット54-1においては、信号分配部53からの受信信号が入力されるチューナ部101と、チューナ部101で選局されたチャンネルの受信信号が入力される複素遅延プロファイル生成部102とから構成され、複素遅延プロファイル生成部102で生成された複素遅延プロファイルのデータが通信ユニット55に出力される。チューナ部101では、入力された受信信号の内の任意のチャンネルを選局して受信できる。チューナ部101で受信した受信信号は、複素遅延プロファイル生成部102においてベースバンドの受信信号に復調され、複素遅延プロファイルのデータが生成されて、受信ユニット54-1から出力される。複素遅延プロファイルを表す場合は、横軸が時間軸、縦軸が振幅軸で表わされ、横軸により受信信号の伝搬時間が示される。すなわち、複素遅延プロファイルでは、直達波のピークの時刻で直達波の伝搬時間が示され、反射波のピークの時刻で反射波の伝搬時間が示される。
なお、DIV170において分配されたタイプ2入力が受信ユニット54-1の実施態様の受信ユニット54a~54(n-1)の複数に入力されている場合は、それぞれの受信ユニット54a~54(n-1)において異なるチャンネルをチューナ部101で選局して、異なるチャンネル毎の複素遅延プロファイルのデータを複素遅延プロファイル生成部102で生成して、受信ユニット54-1から出力するのが好適とされる。
【0026】
受信ユニット54の第2の実施態様の受信ユニット54-2の構成を示す機能ブロック図を
図4に示す。第2の実施態様の受信ユニット54-2は、多チャンネル処理が可能とされている。
図4に示す第2の実施態様の受信ユニット54-2においては、信号分配部53からの受信信号を分配する分配器103と、分配器103で分配された受信信号がそれぞれ入力される複数のチューナ部101a,101b,・・・,101mと、複数のチューナ部101a~101mでそれぞれ選局されたmチャンネルの受信信号が入力される複素遅延プロファイル生成部102-2から構成され、複素遅延プロファイル生成部102-2で生成されたmチャンネルの複素遅延プロファイルのデータが通信ユニット55に出力される。チューナ部101a~101mでは、受信ユニット54-2に入力された受信信号が分配器103で分配されてそれぞれのチューナ部101a~101mに入力され、入力された受信信号の内の任意のチャンネルを選局して受信できる。チューナ部101a~101mで受信したmチャンネルの受信信号は、複素遅延プロファイル生成部102-2においてベースバンドのmチャンネルの受信信号に復調され、mチャンネル分の複数の複素遅延プロファイルのデータが生成される。この複数の複素遅延プロファイルのデータは、平均化されて1つの複素遅延プロファイルのデータが受信ユニット54-2から出力される。
チューナ部101a~101mでは、互いに異なるチャンネルを選局して、異なるチャンネルにおける複素遅延プロファイルのデータを複素遅延プロファイル生成部102-2で生成して平均化するのが好適とされる。
【0027】
次に、受信ユニット54a~54(n-1)から出力される複素遅延プロファイルのデータはバス56a上に出力される。バス56aには、受信ユニット54a~54(n-1)および通信ユニット55が接続されており、通信ユニット55はバス56aを介して受信ユニット54a~54(n-1)から複素遅延プロファイルのデータを受信することができる。バス56aは、例えばI2C(Inter-Integrated Circuit)のシリアルバスとされている。バス56aは、中継ボード56に構築されており、中継ボード56には電源ラインも設けられており、この電源ラインに電源ユニット57から駆動電源が供給されて、駆動電源は受信ユニット54a~54(n-1)および通信ユニット55に中継ボード56を介して動作電源として供給されている。
【0028】
次に、通信ユニット55は受信ユニット54a~54(n-1)からの複素遅延プロファイルのデータから位相差分データを計算し、位相差分データに基づいて水蒸気量を求めている。通信ユニット55の構成を示す機能ブロック図を
図5に示す。
図5に示す通信ユニット55は、位相差分データを算出する位相差分データ計算部151と、そこで求められた位相差分データに基づいて水蒸気量や、その他の計算を行う各種計算部(水蒸気量)152とを備えるマイコン処理部150と、インターネット上のクラウド90への通信を行える無線通信部160とを備えている。また、通信ユニット55には、無線通信部160からの高周波の通信信号を出力する同軸端子(RFOUT)と、各種データおよび各種信号の授受を行えるシリアルやRS232Cのインターフェース(I/F)ポート161と、観測装置20の各種設定や状態監視などをLAN(Local Area Network)を介して行うことができるLANポート162とが設けられている。マイコン処理部150は、演算・制御装置(CPU)、メモリ装置(RAMやROM)、入出力回路(I/O)、タイマー回路などを備えており、コンピュータとしての一通りの機能を有している。マイコン処理部150が所定のソフトウェアを実行することで、位相差分データ計算部151と各種計算部152とが実現されている。位相差分データ計算部151では、入力された複素遅延プロファイルのデータから直達波と反射波とのピーク位置の計算とピーク位置に対応する位相情報の計算を行う。この場合、計算で得られたソースを同じとする位相情報が複数ある場合は、その平均の計算を行う。これにより、観測装置20の設置位置である観測点において受信した地上デジタル放送の直達波の第1の位相情報と、例えば反射体で反射され観測装置20が受信した地上デジタル放送の反射波の第2の位相情報とが求められる。そして、第1の位相情報と第2の位相情報との間の位相差分データを計算して位相差分データが求められ、求められた位相差分データの平均および標準偏差の計算が行われる。次いで、位相差分データ計算部151で求められた位相差分データに基づいて、各種計算部(水蒸気量)152で水蒸気量のデータを求め、この水蒸気量のデータを無線通信部160に送る。なお、位相情報は地上デジタル放送波の直達波(反射波)が観測装置20に達するまでの伝搬時間に相当し、位相情報は、地上デジタル放送波の位相回転(角度)で表すことができる。
また、受信ユニット54a~54(n-1)の複数にタイプ2入力の受信信号が入力されている場合は、複数の受信ユニット54a~54(n-1)から受信した複素遅延プロファイルのデータ毎に直達波と反射波とのピーク位置の計算とピーク位置に対応する位相情報の計算を行う。この場合は、ソースを同じとする位相情報が複数あることになるので、得られた複数の位相情報の平均を計算し、その計算結果に基づく位相情報から上記した位相差分データを計算して求めている。
【0029】
ここで、位相差分データについて説明すると、
図1および
図2に示すように観測装置20に第1アンテナ21で受信された直達波とされる地上デジタル放送信号と、第2アンテナ22で受信された反射波の地上デジタル放送信号が入力される場合は、受信ユニット54から通信ユニット55に入力される複素遅延プロファイルのデータは、例えば
図23に示すような複素遅延プロファイルとされ、位相差分データ計算部151においては上記(8)式に示す計算が行われてτMが位相差分データとして得られる。位相差分データ計算部151は、各種計算部(水蒸気量)152に位相差分データτMを渡し、各種計算部(水蒸気量)152は位相差分データτMに基づいて、第1アンテナ21の位置である観測装置20の設置位置と、反射波が反射された反射体との間における大気中の水蒸気量のデータを算出する計算を行っている。この場合、各種計算部(水蒸気量)152では、次に示す水蒸気量のデータを算出する計算を行っている。
位相差分データτMにおいて、地上デジタル放送波の波長をλとすると、伝搬遅延量Δは、
Δ=λ・τM
で表され、観測装置20と反射体との距離をDRとすると、位相差分データτMから求められる単位距離あたりの伝搬遅延量τPは(9-1)式に示すように表される。
τP=Δ/DR=(λ・τM)/DR (9-1)
ここで、電波の屈折指数をNは、大気の屈折率nの1からの増分の10
6倍と定義されるから、乾燥大気の分圧をPd、水蒸気の分圧をPv、気温(絶対温度)Tとすると、(9-2)式に示すように近似的に電波の屈折指数をNは表される。
N=10
6[n-1]=k1・(Pd/T)+k2・(Pv/T)
+k3・(Pv/T
2 ) (9-2)
(9-2)式において、
k1=77.60 [K hPa
-1]
k2=70.4 [K hPa
-1]
k3=3.739×10
5 [K
2 hPa
-1]]
とされている(Bevis et. al. 1994)。また、絶対温度Tは、
T[K] = t[℃]+273.15
と表される。
そして、屈折率nの大気中の電磁波の速度vは、
v = c/n
であるから、距離Lを伝搬する場合の伝搬遅延量ΔDは、
ΔD=(L/v)-(L/c)=(L/c)・(n-1)
と表れる。ただし、cは光速である。そうすると、電波の屈折指数Nを用いて表現した単位距離あたりの伝搬遅延量τZは、(9-3)式に示すように表される。
τZ=ΔD/L=(N/c)・10
6 (9-3)
(9-1)式で示す伝搬遅延量τPと(9-3)式で示す伝搬遅延量τZとを等しいとおいて、気温T、乾燥大気の分圧Pdを仮定すると水蒸気の分圧Pvを算出することができる。水蒸気の分圧Pvは水蒸気量と比例関係にあることから、水蒸気量のデータに相当し、上記した計算により水蒸気量のデータが算出される。
各種計算部(水蒸気量)152において計算により算出された水蒸気量のデータは無線通信部160に送られる。
また、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延すること、例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延、すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となることを利用して、求められた位相差分データτMから湿度を求めることができ、求められた湿度から第1アンテナ21の位置である観測装置20の設置位置と、反射波が反射された反射体との間における大気中の水蒸気量を求めるようにしてもよい。
【0030】
ところで、タイプ1入力の(n-1)個の入力端子INa~IN(n-1)を設けると、異なる複数の空間の水蒸気量を観測装置20で観測することができる。
すなわち、地上デジタル放送を送信する放送局は複数あり、観測装置20に複数のアンテナを設置して、それぞれのアンテナを複数の放送局のそれぞれに向けることにより、複数の放送局から送信された地上デジタル放送をそれぞれ受信することができる。この場合、観測装置20から見て互いに異なる方向に放送局が存在するのが一般的であることから、異なる方向の放送局から送信された地上デジタル放送の直達波とその反射波との受信信号をタイプ1入力のINa~IN(n-1)にそれぞれ入力する。INa~IN(n-1)のそれぞれに入力された直達波と反射波との受信信号は、信号分配部53を介してそれぞれに対応している受信ユニット54a~54(n-1)の1つづつに入力される。そして、当該受信ユニット54a~54(n-1)において、上記異なる方向に対応する複素遅延プロファイルのデータがそれぞれ生成される。位相差分データ処理部151では、複素遅延プロファイルのデータに基づいて上記したように水蒸気量のデータが求められるが、上記異なる方向に対応する複素遅延プロファイルのデータとされる場合は、上記異なる方向に対応する空間毎の水蒸気量を求めることができる。これにより、観測装置20では、上記異なる方向に対応する空間毎の水蒸気量を観測することができる。
【0031】
また、タイプ2入力の入力端子INnを設けると、1の放送局から送信された地上デジタル放送の直達波とその反射波とをアンテナで受信してタイプ2入力のINnに入力することができる。INnに入力された直達波と反射波との受信信号は、信号分配部53において分配されて受信ユニット54a~54(n-1)の複数に入力することができる。そして、当該受信ユニット54a~54(n-1)では互いに異なるチャンネルが選局されて異なるチャンネル毎の複素遅延プロファイルのデータが生成されるようになる。位相差分データ処理部151では、この複数の複素遅延プロファイルのデータに基づく直達波と反射波の位相情報を算出し、算出した位相情報の平均を算出する。その算出結果に基づく位相情報から位相差分データを計算して、各種計算部(水蒸気量)152で水蒸気量のデータを算出する。これにより、観測装置20では、上記1の放送局の方向に対応する空間の水蒸気量を信頼性と品質を保証して観測することができるようになる。
【0032】
次に、
図2に示すように、観測装置20にはケーブル導入孔40cを介して地上気象測器92から気象データが入力されており、地上気象測器92からの気象データが通信ユニット55のI/Fポート161に入力されて、無線通信部160に入力されている。この場合、地上気象測器92から気象データは、気温、気圧、風向、その他の気象データとされ、これらの気象データを各種計算部152に入力して様々なデータ加工を施して無線通信部160に入力しても良い。
無線通信部160では、送られた水蒸気量のデータと、地上気象測器92からの気象データあるいは各種計算部152でデータ加工された地上気象測器92からの気象データとを変調して高周波の通信信号として、RFOUTから出力している。RFOUTから出力された通信信号は、
図2に示すように通信アンテナ91から放射されて、インターネット上のクラウド90に通信信号が送信されるようになる。これにより、水蒸気量のデータ等を必要とする関係機関へは、クラウド90を介してデータ提供を容易に行うことができるようになる。
【0033】
次に、電源ユニット57の構成を示す機能ブロック図を
図7に示す。
図7に示すように、電源ユニット57は整流回路部183とトランス部184とを備えており、整流回路部183には商用電源からのACあるいはトランス部184からのACがSW181で選択されて供給されている。トランス部184にはAC1受電端子145に供給されたAC60VあるいはAC30VのAC1が供給されている。トランス部184では、入力されたAC1を商用電源の電圧に変換してSW181に供給していると共に、AC30Vを電源重畳部52に供給する駆動電源AC2として出力している。整流回路部183は、供給されたACを整流して所定の電圧のDCに変換し、動作電源として観測装置20の各ユニットに供給している。商用電源からのACは
図2に示す筐体40の電源入力40bを介して電源ケーブルが導入されて電源ユニット57に供給され、AC1受電端子145は電源入力40bに設けられている。
【0034】
<本発明の第1実施例の観測装置の接続態様>
次に、本発明の第1実施例の観測装置20に接続される各種ラインの接続態様を示す斜視図を
図8に示し、接続態様を示す他の斜視図を
図9に示す。
これらの図に示す接続態様は1つの図に構成のすべてを示せないことから2つの図に分けて示しており、実際の接続態様では
図8および
図9に示す接続態様を併せ持っている。本発明にかかる観測装置20は、前面が開口された矩形の箱状の本体部141と、本体部141の前面の開口を閉塞するよう本体部141の前面に回転可能に取り付けられている蓋部142とから構成される筐体40を備えている。本体部141の1の長辺の側縁と対向する蓋部142の1の長辺の側縁とは例えば蝶番で回転可能に固着され、本体部141の他の長辺の側縁と対向する蓋部142の他の長辺の側縁とは留め外し自在な留め具で固着されている。蓋部142を回転させて本体部141の前面を覆い留め具を固着することにより、本体部141の前面が蓋部142で閉塞された状態の筐体40は水密構造となる。本体部141の内部には、図示されていない避雷回路部51と電源重畳部52と信号分配部53と中継ボード56とが収納されていると共に、4台までの受信ユニット54と、通信ユニット55と、電源ユニット57とが収納されており、受信ユニット54と、通信ユニット55と、電源ユニット57とは本体部141に対して着脱可能とされて、これらのユニットは容易に交換できるようにされている。本体部141の下面には入力端子INとなる3つの入力端子143と、ACケーブルの導入孔と、インタフェースケーブルや通信ケーブルが導入されるケーブル導入口144と、AC1受電端子145とが設けられている。
【0035】
図示する場合は、入力端子143の1つに地上デジタル放送波の直達波を受信するための第1アンテナ21の受信信号と、反射体で反射された地上デジタル放送波を受信するための第2アンテナ22の受信信号とを混合器(MIX)41で混合した受信信号が入力されており、この混合された受信信号は最終的に受信ユニット54に入力される。ACケーブルの導入孔を介して商用電源が電源ユニット57に供給されて、電源ユニット57から各ユニットに動作電源が供給される。あるいは、図示するように共聴受信用電源供給器93からのAC1がAC1受電端子145に接続されている場合は、AC1が電源ユニット57に供給されて、電源ユニット57から各ユニットに動作電源が供給される。また、地上気象測器92から導出されたケーブルがケーブル導入口144から導入されて気象データが通信ユニット55に入力される。さらに、通信ユニット55のRFOUTから導出された通信ケーブルがケーブル導入口144から導出されて通信アンテナ91に接続されている。通信アンテナ91からは、上記した水蒸気量のデータや地上気象測器92からの気象データがインターネット上のクラウド90に送信される。
【0036】
<通信ユニットの処理>
次に、本発明の第1実施例の観測装置20の通信ユニット55におけるマイコン処理部150の位相差分データ処理部151および各種計算部(水蒸気量)152で実行される水蒸気量演算処理のフローチャートを
図10に示す。
図10に示す水蒸気量演算処理は、観測装置20の電源が投入された際に開始され、ステップS10にて複素遅延プロファイルのデータを受信ユニット54から受信したか否かが判断される。複素遅延プロファイルのデータを受信していない場合はNOと判断されて、複素遅延プロファイルのデータを受信するまでステップS10で待機され、複素遅延プロファイルのデータを受信するとYESと判断されてステップS11に進む。ステップS11では、複素遅延プロファイルのデータからピークが検索されステップS12に進む。この場合、複素遅延プロファイルは、時間軸(=遅延時刻)に離散的に強度(対数表現)と位相(角度)との組み合わせとされていることから、ステップS11では、強度の信号について所定の遅延時刻の区間において、上に凸となる二次関数となるかが検出される。そして、上に凸となる検出結果の場合は正常なピーク位置(=遅延時刻)を検出できていると判断される。また、下に凸となる検出結果の場合はピーク検出に失敗したと判断する。これにより、ステップS11では
図23に示すような直達波と反射波とのピークが検索される。次いで、ステップS11で検索された直達波と反射波とのピークの位相情報がステップS12にて計算され、ステップS13に進む。ステップS12では、そのピーク位置での位相情報をピーク位置の前後の位相(角度)データを線形補間することで求める。
ところで、複素遅延プロファイルは反射体の状況や別の反射物(例えば、上空を通過する航空機など)の影響で、短期的に変化することがあり、その場合は検出結果として得られるピークの強度、ピークの位相が変動することになる。そこで、ステップS12において、これらの平均と標準偏差を算出すると、標準偏差が十分小さな値であれば観測データ品質が良好、大きな値となる場合は観測データの品質が劣悪という判断を行うことが可能となる。
【0037】
ステップS13では、ソースが同じ複数の位相情報の平均が計算されて、位相情報が平均化されステップS14に進む。なお、受信ユニット54からは受信ユニット54a~54(n-1)からの複素遅延プロファイルのデータが順次所定時間毎に出力されることから、同じ受信ユニット54a~54(n-1)から出力された複素遅延プロファイルのデータに基づいて計算された位相情報がソースが同じ位相情報となる。ステップS14では直達波と反射波との位相情報から位相差分データが計算される。位相差分データは、直達波と反射波の時刻位置との時間差が直達波と反射波とにおける伝搬時間の差に相当し、位相回転量(角度)でも表すことができる。ステップS14で位相差分データが生成されると、ステップS15にて位相差分データの平均化が行われると共に標準偏差が計算され、ステップS16に進む。ステップS15では位相差分データを角度単位に変えて平均化することができる。また、標準偏差から位相差分データのバラツキを検出することで、突発的なバーストやデータ取得エラーなどの異常データを感知して、位相差分データの信頼性と品質を保証することができる。
【0038】
ステップS16にて、上述した(9-1)式ないし(9-3)式に示すように、ステップS15で求められた位相差分データで表した伝搬遅延量と、電波の屈折指数を用いて表わした単位距離あたりの伝搬遅延量とを等しいと置いて計算することにより、水蒸気量のデータに相当する水蒸気の分圧を求めることができる。また、ステップS16の水蒸気量の算出では、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延すること、例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延、すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となることを利用して、位相差分データから湿度を求め、求められた湿度から水蒸気量のデータを計算してもよい。なお、反射波の伝搬時間は、観測装置20の設置位置と反射体との間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響を受けており、位相差分データが、第1アンテナ21で受信された直達波の受信信号のピークと、第2アンテナ22で受信された反射波のピークとの間の位相差分データとされていることから、観測装置20の設置位置と反射体との間における大気中の水蒸気量のデータが求められることになる。
なお、ステップS15で計算された標準偏差のデータを水蒸気量のデータと共に無線通信部160に送ってもよい。
【0039】
なお、タイプ1入力を用いて異なる方向の放送局から送信された地上デジタル放送の直達波とその反射波との複素遅延プロファイルのデータが受信ユニット54a~54(n-1)から順次に通信ユニット55に入力されている場合は、ステップS10ないしステップS17の処理により、上記異なる方向に対応する複素遅延プロファイルのデータから直達波とその反射波とのピークが検索されて、検索されたピークの位相情報が計算される。そして、ピークの位相情報から直達波と反射波との間の位相差分データが計算され、上記異なる方向に対応する空間の水蒸気量のデータがそれぞれ求められる。これにより、観測装置20に異なる方向の放送局から送信された地上デジタル放送の直達波とその反射波との受信信号がタイプ1入力から複数入力されている場合には、観測装置20の設置位置と異なる反射体との方向に対応する複数の空間の大気中の水蒸気量のデータを求めることができるようになる。
また、受信ユニット54a~54(n-1)から放送局から送信された地上デジタル放送の直達波とその反射波とのソースが同じ複素遅延プロファイルの複数のデータが通信ユニット55に入力されている場合は、ステップS10ないしステップS17の処理により、複数の複素遅延プロファイルデータのそれぞれから直達波とその反射波とのピークが検索されて、検索されたピークの位相情報が計算され、計算された同じピークから得られた複数の位相情報から水蒸気量のデータを算出後に平均値を算出することで、観測装置20の設置位置と反射体との方向に対応する空間の大気中の水蒸気量のデータを求めることができる。これにより、観測装置20の設置位置と反射体との方向に対応する空間の大気中の水蒸気量のデータを信頼性と品質を保証して観測することができるようになる。
【0040】
次に、本発明の第1実施例の観測装置20の通信ユニット55におけるマイコン処理部150で実行される外部気象測器データ処理のフローチャートを
図11に示す。
図11に示す外部気象測器データ処理は、観測装置20の電源が投入された際に開始され、ステップS20にてシリアル通信が設定される。この設定では、I/Fポート161を介して外部気象測器である地上気象測器92から気象データが取り込まれるようにシリアル通信が設定される。次いで、ステップS21にて地上気象測器92の時刻同期処理が行われ、時刻同期処理が終了するとステップS22に進む。ステップS22では、地上気象測器92からの気象データが待ち受けられ、I/Fポート161を介して気象データを受信すると、ステップS23に進み気象測器データが取り込まれて一時的に保存され、ステップS24に進む。ステップS24では、観測装置20からインターネット上のクラウド90に気象データを送信する時刻になったか否かが判断され、気象データの送信時間に達しない場合はNOと判断されてステップS21に戻り、ステップS21ないしステップS23の処理が行われて、次の気象データが取り込まれて一時的に保存される。そして、ステップS24にて気象データの送信時間に達したと判断された場合は、ステップS25に進み一時保存された複数の気象データの平均処理が行われて、ステップS26にて平均化された気象データが無線通信部160に送られる。
【0041】
ステップS21で行われる外部気象測器時刻同期処理のサブルーチンのフローチャートを
図12に示す。ステップS21の処理が開始されると、
図12に示す外部気象測器時刻同期処理に移行し、ステップS30にて外部気象測器データ処理が起動されてから初めて外部気象測器時刻同期処理が行われるか否かが判断されると共に、同期処理を行う指定時刻に達したか否かが判断される。これらの2つの判断において2つとも否と判断された場合は、NOと判断されてサブルーチンは終了し、ステップS22に戻る。また、ステップS30にて2つの判断が1つでも肯と判断された場合はYESと判断されてステップS31に進む。ステップS31では、外部気象測器である地上気象測器92の時刻が現在の時刻に更新されて、サブルーチンは終了し、ステップS22に戻るようになる。
【0042】
次に、本発明の第1実施例の観測装置20の通信ユニット55における無線通信部160で実行される通信処理のフローチャートを
図13に示す。
図13に示す通信処理は、観測装置20の電源が投入された際に開始され、ステップS40にて観測装置20をインターネットを介してクラウド90に接続する処理が行われる。観測装置20とクラウド90間の通信が確立されると、ステップS41に進み無線通信部160がマイコン処理部150から水蒸気量のデータを受信したか否かが判断される。ここで、水蒸気量のデータを受信していない場合はNOと判断されてステップS43に進み、水蒸気量のデータを受信した場合はYESと判断されてステップS42に進む。ステップS42では、受信した水蒸気量のデータが接続されているクラウド90にアップロードされる。また、ステップS43ではマイコン処理部150から気象データを受信したか否かが判断される。ここで、気象データを受信していない場合はNOと判断されてステップS41に戻る。この場合は、ステップS41およびステップS43の処理が繰り返し行われる。また、ステップS43にて気象データを受信した場合はYESと判断されてステップS44に進む。ステップS44では、受信した気象データが接続されているクラウド90にアップロードされる。なお、水蒸気量演算処理にて計算された標準偏差のデータが水蒸気量のデータと共に無線通信部160に送られている場合は、水蒸気量のデータに加えて標準偏差のデータもクラウド90にアップロードされる。
通信処理が実行されることにより、無線通信部160が受信した水蒸気量のデータや標準偏差のデータおよび気象データは、次々にインターネット上のクラウド90にアップロードされて、クラウド90に保存されるようになる。
【0043】
<本発明の第1実施例の観測装置が適用された水蒸気量観測システム>
本発明の第1実施例の観測装置が適用された水蒸気量観測システムの構成を示すブロック図を
図14(a)に、クラウド90の概略構成を
図14(b)に示す。
図14(a)に示す水蒸気量観測システム120は、複数台の本発明の第1実施例の観測装置20a~20pを備えており、観測装置20a~20pはそれぞれ上記したように少なくとも1の空間の水蒸気量を観測して、その水蒸気量のデータをインターネット190上のクラウド90にアップロードしている。クラウド90は、
図14(b)に示すようにデータベース(DB)90aとAPI接続サービス部90bとから構成されており、DB90aには複数の観測装置20a~20pからそれぞれアップロードされた水蒸気量のデータおよび地上気象測器92で観測された気象データが格納されている。DB90aでは、水蒸気量のデータ毎にどこの場所の空間の水蒸気量のデータであるかを示す位置情報(ID1)が付されており、気象データ毎に気象データが観測された位置情報(ID2)が付されている。大学・気象研究機関・予報会社などの関係機関191,192,193,194がクラウド90にアクセスした際に、API接続サービス部90bは、API(Application Programming Interface)により水蒸気量のデータや気象データなどの必要とするデータの提供を関係機関191~194にタイムリーに行うことができる。
【0044】
<本発明の第1実施例の観測装置の適用>
以上説明した本発明の第1実施例の観測装置20は、地上デジタル放送波の直達波と反射波とを利用して観測装置20を設置した観測点と反射体との間の水蒸気量を観測することを前提としている。そうすると、観測点との間で水蒸気量を観測したい場所を挟む反射体が必要になる。しかし、低山の山間部や山陰で電波が遮断されるような広大な穀倉地帯などにおいては、高層ビル・マンションのような建造物がなく、利用できる反射体を得ることが困難なケースがある。
本発明の第1実施例の観測装置20は、反射体を必要とすることなく水蒸気量の観測をすることもできる。この場合は、本発明の第1実施例の観測装置20をギャップフィラーシステムに適用すればよい。そこで、まず、本発明の第1実施例の観測装置20を適用できるギャップフィラーシステムの説明を
図15を参照して行う。
図15は一般的なギャップフィラーシステム200の構成を示すブロック図である。
【0045】
<一般的なギャップフィラーシステム>
ギャップフィラーシステムは、地上デジタル放送波が伝搬する際に障害となる山等の障害物Sが存在している場合に、障害物Sを超えた側において地上デジタル放送波を良好に受信できるように設置される。
図15に示すギャップフィラーシステム200では、地上デジタル放送波を送信する放送局500(あるいは中継局)と、地上デジタル放送波を受信する住宅Hとの間に地上デジタル放送波が伝搬する際に障害となる山等の障害物Sが存在している。そこで、ギャップフィラー受信局Rxを地上デジタル放送波を良好に受信できる障害物Sである山の頂上近傍に設置する。ギャップフィラー受信局Rxは、放送局500から送信される地上デジタル放送波をアンテナ411および受信部410により地上デジタル放送信号を受信する。受信した地上デジタル放送信号は、受信部410から光ファイバーや同軸線からなる伝送線路Tに送出されて、ギャップフィラー送信局Txの送信部530に伝送される。ギャップフィラー送信局Txは、障害物Sを超えたところに点在している複数の住宅Hを見渡せる場所に設置される。ギャップフィラー送信局Txの送信部530は、ギャップフィラー受信局Rxから伝送線路Tを介して伝送された地上デジタル放送信号を分配器533で分配して、それぞれの分配信号を増幅して第1送信アンテナ531および第2送信アンテナ532から送信する。これにより、第1送信アンテナ531および第2送信アンテナ532から地上デジタル放送波がそれぞれ再送信され、放送局500から見て障害物Sを超えた側にある複数の住宅Hのそれぞれにより再送信された地上デジタル放送波が受信される。この場合、ギャップフィラー送信局Txは住宅Hを見渡せる場所に設置されていることから、住宅Hでは良好に地上デジタル放送波を受信できるようになる。
【0046】
<本発明の第1実施例の観測装置が適用された他の水蒸気量観測システム>
図1ないし
図13で説明した本発明の第1実施例の観測装置20は、
図15に示すギャップフィラーシステム200に適用されている。本発明の第1実施例の観測装置20をギャップフィラーシステム200に適用した水蒸気量観測システムの構成を
図16に示す。
図16に示す水蒸気量観測システム1は、ギャップフィラーシステム200に本発明の観測装置20を適用して構成されている。ギャップフィラーシステム200は、通常は既設とされており、放送局BRから見てギャップフィラーシステム200を超えた地点に本発明の観測装置20が設置されている。本発明の第1実施例の観測装置20の設置点が観測点Mとなる。
図16において、ギャップフィラーシステム200は、放送局BRから放射された地上デジタル放送波を受信する受信アンテナ01とギャップフィラー受信局Rx、および、ギャップフィラー受信局Rxから光線路13を介して伝送された地上デジタル放送信号を地上デジタル放送波として再送信するギャップフィラー送信局Txと送信アンテナ02とで示されている。本発明の第1実施例の観測装置20は、放送局BRとギャップフィラーシステム200とを結ぶ直線の延長線上に設置され、放送局BRから放射された地上デジタル放送波、および、ギャップフィラー送信局Txから再送信された地上デジタル放送波をアンテナ21で受信している。水蒸気量観測システム1では、ギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量を、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延すること、例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延、すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となることを利用して観測している。この場合、本発明の観測装置20では、反射波に替えてギャップフィラー送信局Txから再送信された地上デジタル放送波を用いてギャップフィラー送信局Txから本発明の観測装置20への伝搬時間を高精度に観測することで、水蒸気量のデータを得ている。
【0047】
図16示す水蒸気量観測システム1を詳細に説明すると、ギャップフィラー受信局Rxは、受信アンテナ01を備えており、受信アンテナ01で受信された放送局BRから送信された地上デジタル放送波の地上デジタル放送信号を受信している。ギャップフィラー受信局Rxで受信された地上デジタル放送信号は光信号とされて光線路03を介してギャップフィラー送信局Txに伝送される。ギャップフィラー送信局Txでは伝送された光信号とされている地上デジタル放送信号が高周波信号に戻されて、送信アンテナ02から地上デジタル放送波が、放送局BRからの地上デジタル放送波が良好に受信できない地域に向けて再送信される。放送局BRとギャップフィラーシステム200とを結ぶ直線の延長線上の観測点Mに設置された本発明の第1実施例の観測装置20では、放送局BRから送信された地上デジタル放送信号の直達波がアンテナ21で受信されると共に、ギャップフィラー送信局Txから再送信された地上デジタル放送波もアンテナ21で受信される。観測点Mに設置された本発明の第1実施例の観測装置20では、放送局BRからの直達波とギャップフィラー送信局Txからの再送信波との複素遅延プロファイルが観測され、観測された複素遅延プロファイルから放送局BRからの直達波とギャップフィラー送信局Txからの再送信波との位相差分データが算出される。
【0048】
ここで、観測点Mに設置された本発明の第1実施例の観測装置20で観測される複素遅延プロファイルの例を
図17に示す。
図17に示す複素遅延プロファイルでは、放送局BRから送信された地上デジタル放送波が空間を伝搬してギャップフィラー受信局Rxに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報がτ
Aで、放送局BRから送信された地上デジタル放送波が空間を伝搬してギャップフィラー受信局Rxからギャップフィラー送信局Txに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報がτ
Bで、ギャップフィラー送信局Txから再送信された地上デジタル放送波が空間を伝搬して観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報がτ
Cで示され、ギャップフィラー受信局Rxで受信された地上デジタル放送信号が、ギャップフィラー受信局Rxから光線路03で伝送されてギャップフィラー送信局Txに到達し、ギャップフィラー送信局Txから再送信されるまでの伝搬時間に相当する位相情報がτ
GFで示されている。また、
図16に示すように放送局BRにおける送信部の局部発振器の位相雑音がφ
T、観測点Mにおける本発明の第1実施例の観測装置20の位相雑音がφ
Rで示されている。なお、τ
Bはギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響を受けるようになる。
【0049】
図17に示す複素遅延プロファイルにおいて上記の表記とすると、放送局BRから時刻t10で送信された地上デジタル放送波が空間を伝搬して観測点Mに直達波として時刻t13に到達して複素遅延プロファイルとして観測されるが、その伝搬時間(t13-t10)に相当する位相情報G1は、
G1=φ
T+τ
A +τ
B +τ
C+φ
R (10)
となる。また、放送局BRから時刻t10で送信された地上デジタル放送波がギャップフィラー受信局Rxで時刻t11で受信されて光線路03でギャップフィラー送信局Txに伝送され、ギャップフィラー送信局Txから時刻t12で再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに時刻t14で到達するまでの伝搬時間(t14-t10)に相当する位相情報をG2とすると、
G2=φ
T+τ
A +τ
GF +τ
C+φ
R (11)
となる。ここで、位相情報G1,G2は観測点Mにおいて複素遅延プロファイルにおけるピークとして
図17に示すように表される。
【0050】
水蒸気量観測システム1では、位相情報G1と位相情報G2との差である位相差分データに基づいてギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量を観測することができる。この場合、τ
GFの伝搬時間は正確な推定を行うことができ、ギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響は受けない。ここで、位相情報G1と位相情報G2との差の位相差分データHを求めると、
H=G2-G1=τ
GF-τ
B (12)
となる。この場合、誤差の原因となる放送局BRの位相雑音φ
Tと、観測点Mにおける本発明の第1実施例の観測装置20の位相雑音φ
Rとが位相差分データHでは取り除かれていることが分かる。上記(12)式から位相情報τ
Bを求めると、
τ
B=τ
GF-H (13)
となる。位相差分データHは、例えば
図17に示す複素遅延プロファイルにおける2つのピーク間の差として求められ、ギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響を受けている位相情報となる。そして、複素遅延プロファイルから求めた位相差分データHと正確な推定ができるτ
GFの伝搬時間とから位相情報τ
Bを算出し、真空中の電波の速度(2.99792458×10
8m/s )に基づいて求められる地上デジタル放送波がギャップフィラー受信局Rxからギャップフィラー送信局Txに到達するまでの伝搬時間との差である伝搬遅延時間に基づいて、ギャップフィラー受信局Rxとギャップフィラー送信局Txとの間における大気中の水蒸気量を観測することができる。
【0051】
この場合、上述した(9-1)式ないし(9-3)式に示すように、求められた位相差分データHで表した伝搬遅延量と、電波の屈折指数を用いて表わした単位距離あたりの伝搬遅延量とを等しいと置いて計算することにより、水蒸気量のデータに相当する水蒸気の分圧を求めることができる。なお、電波が伝搬するとき5kmの距離では、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%増加すると、伝搬遅延時間が約17ps(ピコ秒)となり、この伝搬遅延時間は長さ約5mmの伝搬時間に相当することになる。このように水蒸気量が与える伝搬遅延時間の大きさは非常に小さいため、効果的な観測には非常に正確な測定(少なくとも数十psのオーダー)が必要となる。水蒸気量観測システム1では、誤差の原因となる放送局BRの位相雑音φTと、本発明の第1実施例の観測装置20の位相雑音φRとが取り除かれると共に、τGFの伝搬時間は正確な推定ができることから、非常に正確な水蒸気量の観測を行うことができる。
なお、本発明の第1実施例の観測装置20においては複素遅延プロファイルを測定して同相成分であるI信号と直交成分であるQ信号とから位相回転を観測しているが、本発明の第1実施例の観測装置20において複素遅延プロファイルに替えて遅延プロファイルを測定して、振幅情報から直達波と再送信波とのピーク位置を検索して位相回転を観測するようにしてもよい。
【0052】
<本発明の第2実施例>
本発明の第2実施例の水蒸気量を観測する観測装置20Bの構成を示す機能ブロック図を
図18に示す。この図に示す本発明の第2実施例の観測装置20Bは、ギャップフィラーシステムに適用されて水蒸気量を観測している。
図18に示す第2実施例の観測装置20Bは、第1実施例の観測装置20において混合部(MIX)45と光受信部(PD)47とをさらに備える点で相違しており、他の構成は第1実施例の観測装置20と同様の構成とされている。すなわち、第2実施例の観測装置20Bも筐体40を備えており、筐体40の内部に避雷回路部51と、電源重畳部52と、信号分配部53と、所望の数の受信ユニット54a~54(n-1)からなる受信ユニット54と、通信ユニット55と、中継ボード56と、電源ユニット57とが着脱自在に収納されている。筐体40は金属製とされるが、合成樹脂製とすることもできる。
筐体40には入力端子INが設けられており、入力端子INは複数の入力端子を備えており、そのうちの1つの入力端子には、MIX45で混合された第1アンテナ21で受信された直達波の受信信号と、第2アンテナ22で受信されたギャップフィラーシステムから再送信された再送信波の受信信号と、後述するPD47からの再送信信号とが入力されている。
【0053】
第2実施例の観測装置20Bでは、受信ユニット54において複素遅延プロファイルが生成されるが、この複素遅延プロファイルには直達波および再送信波のピークに加えて再送信信号のピークが現れている。受信ユニット54から出力された複素遅延プロファイルのデータは通信ユニット55に入力されて直達波のピークと再送信波のピークとの間の第1の位相差分データと、直達波のピークと再送信信号のピークとの間の第2位相差分データとが生成され、生成された第1位相差分データおよび第2位相差分データに基づいてギャップフィラーシステムにおける受信アンテナと再送信アンテナとの間の水蒸気量のデータを求めることができる。なお、第2実施例の観測装置20Bは、ギャップフィラーシステムにおける受信アンテナの設置位置と同じ位置に設置されている。
【0054】
<本発明の第2実施例の観測装置が適用された水蒸気量観測システム>
本発明の第2実施例の観測装置20Bが適用された水蒸気量観測システム2の構成を示すブロック図を
図19に示す。
図19に示す水蒸気量観測システム2は、上述した
図15に示すギャップフィラーシステム200を利用しており、既設されているギャップフィラーシステム200に本発明の第2実施例の観測装置20Bを設置した構成とされている。水蒸気量観測システム2は、地上デジタル放送波を水平面内の全方向に送信する放送局BRと、放送局BRから放射された地上デジタル放送波を受信するギャップフィラー受信局GRxと、ギャップフィラー受信局GRxから第1光線路12を介して伝送された地上デジタル放送信号を地上デジタル放送波として再送信するギャップフィラー送信局GTxと、ギャップフィラー受信局GRxと同じ地点に設置され、放送局BRから放射された地上デジタル放送波、および、ギャップフィラー送信局GTxから再送信され空間を伝搬する地上デジタル放送波を受信すると共に、ギャップフィラー送信局GTxから第2光線路13を介して伝送された地上デジタル放送信号を受信する本発明の第2実施例の観測装置20Bとを備えている。本発明の第2実施例の観測装置20Bが設置されている位置が観測点Mとなる。水蒸気量観測システム2は、観測点Mとギャップフィラー送信局GTxとの間における大気中の水蒸気量を、大気中の水蒸気量が増加すると電波の伝搬時間がわずかに遅延すること、例えば、伝搬路が5kmで、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%上昇すると伝搬時間は約17ピコ秒遅延、すなわち、伝搬遅延時間が17ピコ秒となることを利用して観測している。この場合、本発明の第2実施例の観測装置20Bでは、ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波を用いて伝搬遅延時間を高精度に測定することで、水蒸気量の情報を得ている。
【0055】
水蒸気量観測システム2の説明を
図18および
図19を参照して説明する。ギャップフィラー受信局GRxは、放送局BRから送信される地上デジタル放送波を受信するためのアンテナ11と受信部10とを少なくとも備えている。受信部10では、アンテナ11で受信した地上デジタル放送信号が所定のレベル値で出力されるようにゲイン調整し、ベースバンドの地上デジタル放送信号に戻している。ベースバンドの地上デジタル放送信号は、レーザダイオード(LD)48に供給されて光信号とされ、第1光線路12に送出されてギャップフィラー送信局GTxに伝送される。
ギャップフィラー送信局GTxは、送信部30と第1送信アンテナ31と第2送信アンテナ32とを備えている。送信部30には、第1光線路12を介してギャップフィラー受信局GRxから伝送された光信号とされている地上デジタル放送信号が入力される。入力された光信号とされている地上デジタル放送信号は、2分配されて分配された一方の光信号とされている地上デジタル放送信号は、第2光線路13に送出されて本発明の第2実施例の観測装置20Bに伝送される。分配された他方の光信号とされている地上デジタル放送信号は、フォトダイオードにより電気信号の地上デジタル放送信号に戻されて送信部30内の送信機から出力される。送信機から出力された地上デジタル放送信号は、2分配されて分配された一方の地上デジタル放送信号は第1送信アンテナ31に供給され、分配された他方の地上デジタル放送信号は第2送信アンテナ32に供給される。これにより、第1送信アンテナ31と第2送信アンテナ32から地上デジタル放送波が再送信される。
なお、第1光線路12および第2光線路13は、多芯の光ファイバーを備える1本の光ファイバーケーブルで構成され、第1光線路12および第2光線路13には多芯の光ファイバーのそれぞれの光ファイバーが割り当てられている。このため、第1光線路12および第2光線路13は同じ長さとされると共に、伝送特性もほぼ同様となっている。
【0056】
図18に示す本発明の第2実施例の観測装置20Bには、第1アンテナ21で受信された放送局BRからの直達波の地上デジタル放送信号M1’と、第2アンテナ22で受信されたギャップフィラー送信局GTxからの再送信波の地上デジタル放送信号M2’とが入力されている。さらに、第2光線路13を介してギャップフィラー送信局GTxから伝送された光信号とされている地上デジタル放送信号R2’が入力されて、PD47により電気信号とされる。地上デジタル放送信号M1’と地上デジタル放送信号M2’と地上デジタル放送信号R2’とは、混合器(MIX)45により混合されて受信ユニット54に入力される。そして、受信ユニット54において地上デジタル放送信号M1’、地上デジタル放送信号M2’、地上デジタル放送信号R2’の複素遅延プロファイルが生成されて、生成された複素遅延プロファイルのデータが通信ユニット55に出力される。通信ユニット55では、複素遅延プロファイルのデータに基づいて地上デジタル放送信号M1’の位相情報M1と、地上デジタル放送信号M2’の位相情報M2と、地上デジタル放送信号R2’の位相情報R2とが計算され、位相情報M1と位相情報M2との位相差分データD1と、位相情報M1と位相情報R2との位相差分データD2とが生成される。そして、位相差分データD1および位相差分データD2に基づいて水蒸気量のデータが求められ、求められた水蒸気量のデータが通信アンテナ91からインターネット上のクラウド90にアップロードされる。水蒸気量のデータは、本発明の第2実施例の観測装置20Bが設置された観測点Mとギャップフィラー送信局GTxとの間の空間の水蒸気量とされる。
【0057】
上記したように、ギャップフィラー受信局GRxの受信部10で受信された地上デジタル放送信号が第1光線路12を介してギャップフィラー送信局GTxに伝送されて、ギャップフィラー送信局GTxにおいて分配された光信号の地上デジタル放送信号が、第2光線路13を介して本発明の第2実施例の観測装置20Bに伝送されている。この場合、第1光線路12と第2光線路13には、上述したように多芯構造の光ファイバーケーブルの1本ずつの光ファイバーが割り当てられており、同じ線路長とされると共に同じ伝送特性を示すようにされている。
受信ユニット54から出力される複素遅延プロファイルの一例を
図20に示す。
図20に示す複素遅延プロファイルを参照すると、直達波の地上デジタル放送信号M1’のピークが時刻t21に、再送信波の地上デジタル放送信号M2’のピークが時刻t23に、光信号としての地上デジタル放送信号R2’のピークが時刻t24にそれぞれ表れていることが分かる。
【0058】
放送局BRから送信された地上デジタル放送波が同地点に設置されているギャップフィラー受信局GRxおよび本発明の第2実施例の観測装置20B(観測点M)に到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτ1とし、ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報をτaとし、地上デジタル放送信号が第1光線路12で伝送されてギャップフィラー受信局GRxからギャップフィラー送信局GTxに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報を(τb+τc)とし、地上デジタル放送信号が第2光線路13で伝送されてギャップフィラー送信局GTxからギャップフィラー受信局GRxに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報を(τb+τc)とする。また、放送局BRにおける送信部の局部発振器の位相雑音をφT、観測点Mにおける本発明の第2実施例の観測装置20Bの受信ユニット54における局部発振器の位相雑音をφMとする。なお、第1光線路12および第2光線路13は同じ線路長とされると共に同じ伝送特性を示すことから伝搬時間は等しくなるが、その位相情報を(τb+τc)としているのは、第1光線路12および第2光線路13における光ファイバー線路は、一般に石英系グラスファイバーが使われており、その膨張係数はきわめて小さいが光線路の長さが長くなると誤差となることから、膨張係数に基づく伸縮長の伝搬時間に相当する位相情報をτcとおいている。すなわち、温度に応じて伝搬時間が変化することになるので、固定の伝搬時間に相当する位相情報τbと温度に応じて変化する伝搬時間に相当する位相情報τcの和により、第1光線路12および第2光線路13の伝搬時間に相当する位相情報を表すようにしているからである。
【0059】
上記の表記とすると、放送局BRから送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬遅延時間(t21)に相当する位相情報M1は、
M1=τ1+φ
T+φ
M (14)
となる。また、観測点Mと同地点に設置されているギャップフィラー受信局GRxで受信された地上デジタル放送信号が第1光線路12を介してギャップフィラー送信局GTxに到達するまでの伝搬時間(t22)に相当する位相情報をR1とすると、
R1=τ1+τb+τc+φ
T (15)
となる。ただし、位相情報R1は説明のための位相情報とされており、ギャップフィラー送信局GTxにおいて実際に位相情報R1の計算は行われていない。そして、ギャップフィラー送信局GTxから地上デジタル放送波が再送信されると、再送信された地上デジタル放送波は観測点Mにおいて受信される。ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬時間(t23)に相当する位相情報M2は、
M2=R1+τa+φ
M=τ1+τa+τb+τc+φ
T+φ
M (16)
となる。また、ギャップフィラー送信局GTxから第2光線路13を介して伝送された地上デジタル放送信号が観測点Mに到達するまでの伝搬時間(t24)に相当する位相情報R2は、
R2=R1+τb+τc+φ
M=(τ1+τb+τc+φ
T)+τb+τc+φ
M
=τ1+2(τb+τc)+φ
T+φ
M (17)
となる。ここで、本発明の第2実施例の観測装置20Bにおける受信ユニット54で生成された複素遅延プロファイルの一例を
図20に示し、位相情報M1,M2,R2は通信ユニット55において複素遅延プロファイルのデータから計算される。
【0060】
図20に示すように、複素遅延プロファイルは横軸が時間軸とされ、縦軸が振幅軸とされて、横軸により伝搬時間が示されている。ギャップフィラー受信局GRxで受信された地上デジタル放送信号が、第1光線路12によりギャップフィラー送信局GTxまで伝送され、さらに、地上デジタル放送波がギャップフィラー送信局GTxから再送信されて観測点Mに到達するまでの伝搬時間(t23-t21)に相当する位相差分データD1は(M2-M1)で求められる。すなわち、
D1=(M2-M1)=(τ1+τa+τb+τc+φ
T+φ
M)-(τ1+φ
T+φ
M)
=τa+τb+τc (18)
となる。この場合、誤差の原因となる放送局BRの位相雑音φ
Tと、本発明の第2実施例の観測装置20Bの位相雑音φ
Mとが位相差分データD1では取り除かれていることが分かる。また、放送局BRから送信されてギャップフィラー受信局GRxで受信された地上デジタル放送信号が、第1光線路12によりギャップフィラー送信局GTxまで伝送されて、ギャップフィラー送信局GTxから第2光線路13を介して折り返されて観測点Mに到達するまでの伝搬時間(t24-t21)に相当する位相差分データD2は(R2-M1)で求められる。すなわち、
D2=(R2-M1)={τ1+2(τb+τc)+φ
T+φ
M}-(τ1+φ
T+φ
M)
=2(τb+τc) (19)
となる。この場合、誤差の原因となる放送局BRの位相雑音φ
Tと、本発明の第2実施例の観測装置20Bの位相雑音φ
Mとが位相差分データD2では取り除かれていることが分かる。また、D2はギャップフィラー受信局GRxとギャップフィラー送信局GTxとを光線路で往復する伝搬時間に相当するから、ギャップフィラー受信局GRxとギャップフィラー送信局GTxとの間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響は受けないし、ギャップフィラー受信局GRxとギャップフィラー送信局GTxとの間の光線路の片道の伝搬時間に相当する位相情報は(D2/2)となることは明らかである。そうすると、ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相差分データD3は(D1-D2/2)で求められるから、
D3=D1-D2/2=(τa+τb+τc)-(τb+τc)=τa (20)
となり、ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報がτaとして求められる。この場合、第1光線路12および第2光線路13における遅延時間は相殺されており、光ファイバーの膨張係数の影響が取り除かれていることが分かる。また、τaはギャップフィラー受信局GRxとギャップフィラー送信局GTxとの間における大気中の水蒸気量に応じた伝搬遅延時間の影響を受けている位相情報となる。通信ユニット55では、位相差分データD1,D2を
図20に示す複素遅延プロファイルのデータから計算し、位相差分データD3(=τa)を(20)式から算出することができる。
【0061】
上記したように、本発明の第2実施例の観測装置20Bでは、放送局BRからの地上デジタル放送波とギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波とが位相同期していることを利用することにより、同期手段を必要とすることなく放送局BRと観測点Mとの位相雑音を取り除くことができる。本発明の第2実施例の観測装置20Bでは、ギャップフィラー送信局GTxから再送信された地上デジタル放送波が観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相差分データD3(=τa)と、真空中の電波の速度(2.99792458×108m/s )に基づいて計算した地上デジタル放送波がギャップフィラー送信局GTxから観測点Mに到達するまでの伝搬時間に相当する位相情報との差である伝搬遅延時間に基づいて、ギャップフィラー送信局GTxと観測点Mとの間における大気中の水蒸気量を求めることができる。
この場合、上述した(9-1)式ないし(9-3)式に示すように、求められた位相差分データD3(=τa)で表した伝搬遅延量と、電波の屈折指数を用いて表わした単位距離あたりの伝搬遅延量とを等しいと置いて計算することにより、水蒸気量のデータに相当する水蒸気の分圧を求めることができる。なお、電波が伝搬するとき5kmの距離では、地上気圧、気温20℃の条件で、湿度が1%増加すると、伝搬遅延時間が約17ps(ピコ秒)となり、この伝搬遅延時間は長さ約5mmの伝搬時間に相当することになる。このように水蒸気量が与える伝搬遅延時間の大きさは非常に小さいため、効果的な観測には非常に正確な測定(少なくとも数十psのオーダー)が必要となる。水蒸気量観測システム2では、誤差の原因となる放送局BRの位相雑音φTと、本発明の第2実施例の観測装置20Bの位相雑音φMとが取り除かれると共に、第1光線路12および第2光線路13における遅延時間が相殺されていることから、非常に正確な水蒸気量の観測を行うことができる。
なお、本発明の第2実施例の観測装置20Bにおいては複素遅延プロファイルを測定して同相成分であるI信号と直交成分であるQ信号とから位相情報を生成しているが、本発明の第2実施例の観測装置20Bにおいて複素遅延プロファイルに替えて遅延プロファイルを生成して、その振幅情報から位相情報を計算するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明した本発明にかかる水蒸気量の観測装置を放送局と反射体との間の観測点に設置することで、反射体と観測点との間の大気中の水蒸気量を観測することができる。また、本発明にかかる水蒸気量の観測装置を放送局とギャップフィラー受信局およびギャップフィラー送信局とを結ぶ直線の延長線上の観測点に設置することで、ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局との間の大気中の水蒸気量を観測することができる。さらに、本発明にかかる水蒸気量の観測装置をギャップフィラー受信局と同じ地点の観測点に設置することで、ギャップフィラー受信局とギャップフィラー送信局との間の大気中の水蒸気量を観測することができる。なお、ギャップフィラー受信局およびギャップフィラー送信局を備えるギャップフィラーシステムは、一般に既設とされていることから、ギャップフィラー受信局の局舎に余裕があるときは、ギャップフィラー受信局の局舎に本発明にかかる水蒸気量の観測装置を設置するようにしても良い。また、ギャップフィラーシステムを新設する場合は、ギャップフィラー受信局と本発明にかかる水蒸気量の観測装置とを一つにすることもできる。
以上説明した本発明にかかる水蒸気量の観測装置は、放送局からの地上デジタル放送波と反射体で反射された地上デジタル放送波の反射波あるいはギャップフィラー送信局から再送信された地上デジタル放送波とが位相同期していることを利用しており、アンテナを備える本発明にかかる水蒸気量の観測装置を観測点を設置するだけで、観測点と反射体あるいはギャップフィラー送信局との間の水蒸気量の観測を行うことができるようになる。このため、観測点は1つだけでよく、2つの観測点を必要としないことから、2つの観測点における同期をとる必要がなくなる。また、ギャップフィラー受信局と同じ地点に設置する場合は放送局と観測点とを結ぶ一直線上にギャップフィラー送信局を配置する必要がなくなる。
さらに、本発明にかかる水蒸気量の観測装置を、ギャップフィラー受信局と同じ地点に設置する場合は、ギャップフィラーシステムが既設されていることから第1光線路を構成する多芯構造の光ファイバーケーブルは既設とされており、ギャップフィラー送信局と観測点とを結ぶ第2光線路としては、既設の第1光線路を構成する多芯構造の光ファイバーケーブルにおける使用されていない光ファイバーを利用することができる。このように、新たに光線路を敷設する作業を不要とすることができる。なお、第1光線路および第2光線路に替えて同軸線路を用いることもできるが、ギャップフィラー受信局から遠い距離を隔ててギャップフィラー送信局が設置されている場合は、同軸線路では伝送損失が大きくなり適していない。従って、第1光線路および第2光線路を用いるのが好適とされる。
さらにまた、本発明にかかる水蒸気量の観測装置では、測定誤差となる送信局および本発明にかかる水蒸気量の観測装置の位相雑音を取り除くことができると共に、ギャップフィラー受信局と同じ地点に設置する場合は測定誤差となる光線路の伸縮に基づく遅延時間の変化を相殺することができる。
さらにまた、本発明にかかる水蒸気量の観測装置では、複素遅延プロファイルを生成して同相成分であるI信号と直交成分であるQ信号とから位相情報とされる位相回転を計算していると説明したが、本発明にかかる水蒸気量の観測装置において複素遅延プロファイルに替えて遅延プロファイルを生成して、振幅情報から位相回転を計算するようにしてもよい。
さらにまた、本発明にかかる水蒸気量の観測装置では、位相差分データに基づいて水蒸気量のデータを求めていたが、位相差分データをインターネット上のクラウドにアップロードして、クラウドにおいて位相差分データに基づいて水蒸気量のデータを求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,2 水蒸気量観測システム、01 受信アンテナ、02 送信アンテナ、03 光線路、10 受信部、11 アンテナ、12 第1光線路、13 第2光線路、20,20B,20a~20p 観測装置、21 第1アンテナ、22 第2アンテナ、30 送信部、31 第1送信アンテナ、32 第2送信アンテナ、40 筐体、40b 電源入力、40c ケーブル導入孔、42 プリアンプ、51 避雷回路部、52 電源重畳部、53 信号分配部、54,54-1,54-2 受信ユニット、54a~54(n-1) 受信ユニット、55 通信ユニット、56 中継ボード、56a バス、57 電源ユニット、90 クラウド、90b API接続サービス部、91 通信アンテナ、92 地上気象測器、93 共聴受信用電源供給器、101,101a~101m チューナ部、102,102-2 複素遅延プロファイル生成部、103 分配器、120 水蒸気量観測システム、141 本体部、142 蓋部、143 入力端子、144 ケーブル導入口、145 受電端子、150 マイコン処理部、151 位相差分データ処理部、151 位相差分データ計算部、152 各種計算部、160 無線通信部、161 I/Fポート、162 LANポート、170 分配器、190 インターネット、191~194 関係機関、183 整流回路部、184 トランス部、200 ギャップフィラーシステム、410 受信部、411 アンテナ、500 放送局、530 送信部、531 送信アンテナ、532 送信アンテナ、533 分配器、AC2 駆動電源、BR 放送局、Ca~Cn コンデンサ、GRx ギャップフィラー受信局、GTx ギャップフィラー送信局、H 住宅、IN 入力端子、INa~INn 入力端子、La~ Ln チョークコイル、M 観測点、R 反射体、Rx ギャップフィラー受信局、S 障害物、T 伝送線路、Tx ギャップフィラー送信局