(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044394
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】インキ色提供装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/00 20140101AFI20230323BHJP
【FI】
C09D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152413
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 靖志
(72)【発明者】
【氏名】西川 知明
(72)【発明者】
【氏名】大越 あや
(72)【発明者】
【氏名】飛世 博愛
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 千夏
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BC09
4J039BC13
4J039BC35
4J039BC37
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE28
4J039CA03
4J039EA15
4J039EA16
4J039EA17
4J039EA21
4J039EA29
4J039EA44
4J039GA26
4J039GA27
4J039GA28
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】ユーザが所望する所望色の実現方法を容易に提供する。
【解決手段】実施形態のインキ色提供装置10は、受付部20Aと、導出部20Bと、を備える。受付部20Aは、ユーザが所望する所望色63の入力を受付ける。表示制御部20Cは、所望色63の調色に用いる複数の基本インキの配合比を表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所望する所望色の入力を受付ける受付部と、
前記所望色の調色に用いる複数の基本インキの配合比を表示する表示制御部と、
を備えるインキ色提供装置。
【請求項2】
前記受付部は、
軌跡入力操作により入力された入力軌跡を更に受付け、
前記表示制御部は、
前記入力軌跡を前記所望色で表示する、
請求項1に記載のインキ色提供装置。
【請求項3】
前記受付部は、
記録対象の記録媒体の色の入力を更に受付け、
前記表示制御部は、
受付けた前記色の前記記録媒体上に、受付けた前記色の前記記録媒体に前記所望色のインキを記録した記録色調の前記入力軌跡を重畳した、重畳画像を表示する、
請求項2に記載のインキ色提供装置。
【請求項4】
前記受付部は、
前記入力軌跡の線幅の入力を更に受付け、
前記表示制御部は、受付けた前記線幅の前記入力軌跡を表示する、
請求項2または請求項3に記載のインキ色提供装置。
【請求項5】
ユーザの所望する前記所望色の印象を表す印象情報を取得する取得部を備え、
前記表示制御部は、
前記印象情報に対応する色の一覧を表す色見本を表示し、
前記受付部は、
前記色見本から選択された色を前記所望色として受付ける、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のインキ色提供装置。
【請求項6】
前記受付部は、
複数の前記基本インキの識別情報および複数の該基本インキの配合比の入力を受付け、
前記表示制御部は、
受付けた該配合比で複数の該基本インキを調色した色調の前記所望色を表示する、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のインキ色提供装置。
【請求項7】
複数の前記基本インキは、
それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、かつ互いに色の異なる第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物の各々であり、
前記第1インキ組成物の最大吸収波長と前記第2インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上であり、
前記第2インキ組成物の最大吸収波長と前記第3インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上である、
請求項1~請求項6の何れか1項に記載のインキ色提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インキ色提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆やマーカー類等の筆記具に用いられる複数色のインキ組成物を混合することで、ユーザの所望の色調のインキを調色することが行われている。例えば、調色に用いるインキ組成物として、イエロー色、マゼンタ色、シアン色の各々のインキを用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、調色に用いるインキ組成物として、イエロー、ピンク、ブルー、グレイ、および透明の5色のインキを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術では、ユーザ所望の所望色を実現する方法が提供されておらず、ユーザは様々なインキ組成物の配合比を自身で試行錯誤しながら調整して調色する必要があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザが所望する所望色の実現方法を容易に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、上記課題を解決するために
「1.ユーザが所望する所望色の入力を受付ける受付部と、前記所望色の調色に用いる複数の基本インキの配合比を表示する表示制御部と、を備えるインキ色提供装置。
2.前記受付部は、軌跡入力操作により入力された入力軌跡を更に受付け、前記表示制御部は、前記入力軌跡を前記所望色で表示する、第1項に記載のインキ色提供装置。
3.前記受付部は、記録対象の記録媒体の色の入力を更に受付け、前記表示制御部は、受付けた前記色の前記記録媒体上に、受付けた前記色の前記記録媒体に前記所望色のインキを記録した記録色調の前記入力軌跡を重畳した、重畳画像を表示する、第2項に記載のインキ色提供装置。
4.前記受付部は、前記入力軌跡の線幅の入力を更に受付け、前記表示制御部は、受付けた前記線幅の前記入力軌跡を表示する、第2項または第3項に記載のインキ色提供装置。
5.ユーザの所望する前記所望色の印象を表す印象情報を取得する取得部を備え、前記表示制御部は、前記印象情報に対応する色の一覧を表す色見本を表示し、前記受付部は、前記色見本から選択された色を前記所望色として受付ける、第1項~第4項の何れか1項に記載のインキ色提供装置。
6.前記受付部は、複数の前記基本インキの識別情報および複数の該基本インキの配合比の入力を受付け、前記表示制御部は、受付けた該配合比で複数の該基本インキを調色した色調の前記所望色を表示する、第1項~第5項の何れか1項に記載のインキ色提供装置。
7.複数の前記基本インキは、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、かつ互いに色の異なる第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物の各々であり、前記第1インキ組成物の最大吸収波長と前記第2インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上であり、前記第2インキ組成物の最大吸収波長と前記第3インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上である、第1項~第6項の何れか1項に記載のインキ色提供装置。」とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、インキ色提供システムの一例を示す模式図である。
【
図3A】
図3Aは、調色管理DBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図3B】
図3Bは、基本インキ管理DBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図3C】
図3Cは、ユーザ管理DBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図3D】
図3Dは、記録媒体管理DBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図3E】
図3Eは、筆記具管理DBのデータ構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、インキ色提供処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施例および比較例のインキ組成物の吸収波長の測定結果を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例1の筆記具用水性インキセットに含まれるインキ組成物の吸収波長の測定結果を示す図である。
【
図8】
図8は、比較例1の比較水性インキセットに含まれるインキ組成物の吸収波長の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、比較例2の比較水性インキセットに含まれるインキ組成物の吸収波長の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、インキ色提供装置の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態のインキ色提供システム1の一例を示す模式図である。
【0010】
インキ色提供システム1は、インキ色提供装置10と、サーバ装置30と、を備える。インキ色提供装置10とサーバ装置30とは、ネットワークN等を介して通信可能に接続されている。
【0011】
インキ色提供装置10は、ユーザに対してユーザ所望の所望色の実現方法を提供する情報処理装置である。
【0012】
所望色とは、ユーザが実現を希望する色調の色を意味する。所望色は、1または複数の基本インキを配合することによって調色される。
【0013】
基本インキは、所望色の調色に用いられるインキ組成物である。複数の基本インキは、互いに異なる色調である。複数の基本インキは、例えば、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色、透明色、などの色調のインキ組成物である。なお、複数の基本インキは、これらの5種類の色調のインキ組成物に限定されない、複数の基本インキは、互いに色調の異なる2種類以上のインキ組成物であればよく、互いに色調の異なる6種類以上のインキ組成物であってよい。インキ組成物の詳細は後述する。
【0014】
インキ色提供装置10は、ユーザによって操作される情報処理装置である。インキ色提供装置10は、例えば、携帯端末、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、などの情報処理装置である。携帯端末は、例えば、スマートフォンなどである。本実施形態では、インキ色提供装置10が、携帯端末である形態を一例として説明する。なお、
図1には、1台のインキ色提供装置10を模式的に示した。しかし、インキ色提供システム1は、複数のユーザの各々によって操作される複数のインキ色提供装置10を備えた構成であってよい。
【0015】
サーバ装置30は、ネットワークN上で扱われる各種のデータを管理する情報処理装置である。サーバ装置30は、例えば、基本インキや筆記具などの各種の製品の販売サーバ、各種のデータを管理するデータ管理サーバ、などである。また、サーバ装置30は、インキ色提供装置10で実行されるインキ色提供プロラムを配信する配信サーバであってもよい。なお、
図1には、1台のサーバ装置30を模式的に示した。しかし、インキ色提供システム1は、1または複数のサーバ装置30を備えた構成であってよい。
【0016】
インキ色提供装置10およびサーバ装置30のハードウェア構成を説明する。
【0017】
図2は、インキ色提供装置10およびサーバ装置30の一例のハードウェア構成図である。
【0018】
インキ色提供装置10およびサーバ装置30は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、およびI/F11D等がバス11Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0019】
CPU11Aは、本実施形態のインキ色提供装置10およびサーバ装置30を制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。I/F11Dは、ディスプレイや記憶装置などとの通信インターフェースである。
【0020】
本実施形態のインキ色提供装置10およびサーバ装置30で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM11B等に予め組み込んで提供される。なお、本実施形態のインキ色提供装置10およびサーバ装置30で実行されるプログラムは、インキ色提供装置10およびサーバ装置30の各々にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0021】
【0022】
インキ色提供装置10は、記憶部12と、UI(ユーザ・インターフェース)部14と、通信部16と、制御部20と、を備える。記憶部12、UI部14、通信部16、および制御部20は、バス18などを介して通信可能に接続されている。
【0023】
記憶部12は、各種のデータを記憶する。記憶部12は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。なお、記憶部12は、インキ色提供装置10の外部に設けられた記憶装置であってもよい。
【0024】
本実施形態では、記憶部12は、例えば、調色管理DB(データベース)12A、基本インキ管理DB12B、ユーザ管理DB12C、記録媒体管理DB12D、および筆記具管理DB12E、等を記憶する。これらのDBの少なくとも1つは、サーバ装置30等の外部の情報処理装置に記憶された形態であってよい。また、これらのデータベースのデータ形式は、テーブル等であってもよく、データベースに限定されない。
【0025】
図3Aは、調色管理DB12Aのデータ構成の一例を示す模式図である。調色管理DB12Aは、基本インキで調色可能な色に関する情報を管理するためのデータベースである。例えば、調色管理DB12Aには、調色可能な色と、調色に用いる基本インキの基本インキ識別情報と、配合比と、印象情報と、が対応付けて予め登録されている。
【0026】
調色可能な色とは、1または複数の基本インキを用いて調色可能な色を表す情報である。調色管理DB12Aには、1または複数の基本インキを用いて調色可能な複数の色の各々を表す情報が調色可能な色として予め登録されている。
【0027】
基本インキ識別情報とは、基本インキを識別するための識別情報である。基本インキ識別情報には、例えば、基本インキの種類、および、基本インキに付与された名称を表す情報などが用いられる。調色管理DB12Aには、調色可能な色ごとに、該調色可能な色を実現するために用いられる1または複数の基本インキの基本インキ識別情報が予め登録されている。
【0028】
配合比とは、基本インキの配合比を表す情報である。配合比は、例えば、重量比または体積比などで表される。調色管理DB12Aには、調色可能な色ごとに、該調色可能な色を実現するために用いられる基本インキの配合比が予め登録されている。すなわち、調色管理DB12Aには、調色可能な色の各々を実現するための基本インキ識別情報の群ごとに、該群に属する1または複数の基本インキ識別情報によって識別される基本インキの配合比が予め登録されている。
【0029】
印象情報とは、対応する調色可能な色から想起される印象を表す情報である。印象情報は、例えば、春夏秋冬などの四季を表す情報、1月2月などの時期を表す情報、嬉しい楽しいなどの感情を表す情報、明るい暗いなどの色の明るさを表す情報、鮮やかさである彩度を表す情報、などである。調色管理DB12Aには、調色可能な色ごとに、印象情報が予め登録されている。なお、調色管理DB12Aには、1つの色調可能な色に対して、複数の印象情報が登録されていてよい。本実施形態では、調色管理DB12Aには、調色可能な色ごとに、1または複数の印象情報が予め登録されている形態を一例として説明する。
【0030】
図3Bは、基本インキ管理DB12Bのデータ構成の一例を示す模式図である。基本インキ管理DB12Bは、基本インキの製品に関する情報を管理するためのデータベースである。例えば、基本インキ管理DB12Bには、基本インキ識別情報と、販売サーバへのアクセス情報と、製品情報と、が対応付けて予め登録されている。
【0031】
基本インキ管理DB12Bに登録されている販売サーバへのアクセス情報および製品情報は、例えば、対応する基本インキ識別情報によって識別される基本インキの発売を管理する販売サーバへのアクセス情報および基本インキの製品情報である。販売サーバへのアクセス情報は、例えば、URL(Uniform Resource Locator)等で表される。基本インキ管理DB12Bには、基本インキ識別情報に対応する、販売サーバへのアクセス情報および製品情報が予め登録されている形態を一例として説明する。
【0032】
図3Cは、ユーザ管理DB12Cのデータ構成の一例を示す模式図である。ユーザ管理DB12Cは、ユーザを管理するためのデータベースである。例えば、ユーザ管理DB12Cには、ユーザ情報と、所望色と、基本インキ識別情報と、配合比と、色の名称と、が対応付けて登録される。
【0033】
ユーザ情報は、ユーザを識別可能な情報である。ユーザ情報には、例えば、ユーザの名前、ユーザの通称、ネットワークN上で用いられるアカウント名、などが用いられる。色の名称は、ユーザ管理DB12Cにおける対応する所望色の名称である。ユーザ管理DB12Cは、後述する制御部20によって更新される。
【0034】
図3Dは、記録媒体管理DB12Dのデータ構成の一例を示す模式図である。記録媒体管理DB12Dは、記録対象の記録媒体を管理するためのデータベースである。記録媒体管理DB12Dには、記録媒体の色と、販売サーバへのアクセス情報と、製品情報と、が対応付けて予め登録されている。
【0035】
記録媒体の色は、所望色のインキで記録する対象の記録媒体の色を表す情報である。記録媒体管理DB12Dに登録されている販売サーバへのアクセス情報および製品情報は、対応する記録媒体の色の記録媒体の発売を管理する販売サーバへのアクセス情報および記録媒体の製品情報である。ユーザ管理DB12Cには、記録媒体の色に対応する、販売サーバへのアクセス情報および製品情報が予め登録されている形態を一例として説明する。
【0036】
図3Eは、筆記具管理DB12Eのデータ構成の一例を示す模式図である。筆記具管理DB12Eは、筆記具を管理するためのデータベースである。筆記具管理DB12Eには、例えば、筆記具識別情報と、使用可能な基本インキ識別情報と、実現可能な線幅と、販売サーバへのアクセス情報と、製品情報と、が対応付けて予め登録されている。
【0037】
筆記具識別情報は、筆記具を識別可能な情報である。筆記具識別情報には、例えば、筆記具の名称、筆記具の種類、などを表す情報が用いられる。使用可能な基本インキ識別情報は、対応する筆記具識別情報によって識別される筆記具で用いる事の可能な基本インキの識別情報である。実現可能な線幅は、対応する筆記具識別情報によって識別される筆記具で実現可能な線幅を表す情報である。筆記具管理DB12Eに登録されている販売サーバへのアクセス情報および製品情報は、対応する筆記具識別情報によって識別される筆記具の発売を管理する販売サーバへのアクセス情報および筆記具の製品情報である。筆記具管理DB12Eには、筆記具識別情報に対応する、使用可能な基本インキ識別情報、実現可能な線幅、販売サーバへのアクセス情報、および製品情報が予め登録されている形態を一例として説明する。
【0038】
【0039】
UI部14は、ユーザによる入力の受付および各種の情報の出力を行う。例えば、UI部14は、入力部14Aおよび表示部14Bを有する。
【0040】
入力部14Aは、ユーザによる各種の操作を受付ける。入力部14Aは、例えば、キーボード、および、マウスやペンタブレットなどのポインティングデバイスである。表示部14Bは、各種の情報を表示するディスプレイである。UI部14は、入力部14Aと表示部14Bとを一体的に構成したタッチパネルであってもよい。
【0041】
通信部16は、ネットワークNなどを介してサーバ装置30などの他の情報処理装置と通信する通信インターフェースである。
【0042】
制御部20は、情報処理を実行する。制御部20は、受付部20Aと、導出部20Bと、表示制御部20Cと、取得部20Dと、を備える。
【0043】
受付部20A、導出部20B、表示制御部20C、および取得部20Dは、1つまたは複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU11Aなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してよい。上記各部は、専用のIC(integrated circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2つ以上を実現してもよい。
【0044】
なお、受付部20A、導出部20B、表示制御部20C、および取得部20Dの少なくとも1つは、サーバ装置30等の外部の情報処理装置に搭載された形態であってもよい。
【0045】
受付部20Aは、ユーザが所望する所望色の入力を受付ける。
【0046】
例えば、表示制御部20Cは、色見本をUI部14に表示する。
【0047】
図4Aは、色見本60の表示画面50Aの一例を示す模式図である。表示画面50Aは、表示部14Bに表示される表示画面50の一例である。
【0048】
色見本60は、1または複数の基本インキで調色可能な複数の色の色画像62の一覧を含む。例えば、表示制御部20Cは、調色管理DB12Aに登録されている複数の調色可能な色の各々を表す色画像62を含む色見本60を、表示画面50Aに表示する。
【0049】
図4Aには、色見本60が、色画像62A~色画像62Lの9色の色画像62を含む形態を一例として示す。なお、色見本60には、複数の色画像62が含まれていればよく、9色に限定されない。例えば、色見本60には、10色以上の色画像62が含まれていてよい。
【0050】
なお、表示制御部20Cは、印象情報に対応する色の一覧を表す色見本60を表示してもよい。
【0051】
例えば、取得部20Dは、ユーザの所望する所望色の印象を表す印象情報を取得する。ユーザは、入力部14Aを操作することで、「明るい」、「嬉しい」、「夏」などの所望色の印象を表す1または複数の印象情報を入力する。取得部20Dは、ユーザによる入力部14Aの操作指示によって入力された印象情報を該入力部14Aから受付けることで、入力部14Aから印象情報を取得する。
【0052】
表示制御部20Cは、取得した印象情報に対応する調色可能な色を調色管理DB12Aから読取る。そして、表示制御部20Cは、読取った調色可能な色を表す色画像62を含む色見本60を、表示画面50Aへ表示すればよい。
【0053】
この場合、表示制御部20Cは、ユーザの所望する印象情報に応じた色画像62を含む色見本60を表示することができる。
【0054】
また、記憶部12は、推奨の印象情報を予め記憶してもよい。推奨の印象情報は、例えば、インキ色提供システム1の管理者によって推奨される印象情報である。記憶部12に記憶される推薦の印象情報は、例えば、インキ色提供システム1の管理者などによって適宜変更されてよい。この場合、取得部20Dは、記憶部12から推奨の印象情報を読取ることで、印象情報を取得する。表示制御部20Cは、取得した印象情報に対応する調色可能な色を調色管理DB12Aから読取り、該調色可能な色を表す色画像62を含む色見本60を、表示画面50Aへ表示すればよい。
【0055】
この場合、表示制御部20Cは、インキ色提供システム1の管理者の推奨する印象情報に応じた色画像62を含む色見本60を表示することができる。
【0056】
ユーザは、色見本60を参照しながら入力部14Aを操作することで、色見本60に含まれる複数の色画像62の中から所望の色画像62を選択する。受付部20Aは、ユーザにより色見本60から選択された色画像62の色を、所望色63として受付ける。例えば、色見本60に含まれる色画像62の内、色画像62Cの色が所望色63として選択された場面を想定する。この場合、受付部20Aは、色画像62Cの色を所望色63として受付ける。
【0057】
図1に戻り説明を続ける。導出部20Bは、受付部20Aで受付けた所望色63の調色に用いる複数の基本インキの配合比を導出する。
【0058】
詳細には、導出部20Bは、受付部20Aで受付けた所望色63を表す調色可能な色に対応する、調色に用いる基本インキ識別情報および配合比を、調色管理DB12Aから読取ることで、複数の基本インキの配合比を導出する。なお、導出部20Bは、所望色に用いる複数の基本インキの基本インキ識別情報および配合比を、予め定めたアルゴリズム等を用いて算出することで導出してもよい。
【0059】
表示制御部20Cは、所望色63の調色に用いる複数の基本インキの配合比を表示する。詳細には、表示制御部20Cは、導出部20Bで導出された基本インキ識別情報および配合比を含む表示画面50を表示部14Bに表示する。
【0060】
図4Bは、所望色63の調色に用いる複数の基本インキの配合比の表示画面50Bの一例を示す模式図である。表示画面50Bは、表示画面50の一例である。
【0061】
図4Bには、色画像62Cの色である所望色63の調色に用いる複数の基本インキ識別情報として、「C01」、「M02」、「Y03」、および「K03」を一例として示す。「C01」は、シアン色の基本インキの基本インキ識別情報の一例である。「M02」は、マゼンタ色の基本インキの基本インキ識別情報の一例である。「Y03」は、イエロー色の基本インキの基本インキ識別情報の一例である。「K03」は、ブラック色の基本インキの基本インキ識別情報の一例である。
【0062】
また、
図4Bには、これらの基本インキ識別情報によって識別される基本インキの配合比が、「C01」:「M02」:「Y03」:「K03」=1:3:4:2である場合を一例として示す。
【0063】
ユーザは、表示画面50Bを視認することで、所望色63の調色に用いる基本インキおよび基本インキの配合比を、容易に確認することができる。すなわち、表示制御部20Cは、基本インキを用いた所望色63の実現方法を容易に提供することができる。
【0064】
なお、表示制御部20Cは、基本インキの販売サーバへのアクセス情報および基本インキの製品情報の少なくとも一方を更に含む表示画面50を表示部14Bに表示してもよい。この場合、表示制御部20Cは、所望色63の調色に用いる基本インキ識別情報に対応する販売サーバへのアクセス情報および製品情報を基本インキ管理DB12Bから読取る。そして、表示制御部20Cは、読取った販売サーバへのアクセス情報および製品情報を、表示画面50に表示すればよい。
【0065】
図4Bには、基本インキ識別情報によって識別される基本インキの販売サーバへのアクセス情報を表すURLおよび製品情報を含む表示画面50Bを一例として示す。
【0066】
ユーザは、表示された販売サーバへのアクセス情報を表すURLおよび製品情報を視認することで、所望色63の調色に用いる基本インキの製品情報および基本インキの販売サーバへのアクセス情報を容易に確認することができる。
【0067】
また、ユーザが入力部14Aを操作することで販売サーバへのアクセス情報の表示欄を選択した場合、制御部20は、該アクセス情報によって示される販売サーバへアクセスし、該販売サーバから提供される製品購入画面などの表示画面を表示してよい。
【0068】
また、表示画面50Bには、ユーザによって選択された所望色63の色画像62Cを更に表示してよい(
図4B参照)。
【0069】
図1に戻り説明を続ける。受付部20Aは、軌跡入力操作により入力された入力軌跡を更に受付けてよい。ユーザは、入力部14Aを操作することで入力軌跡によって表される線または線によって表される文字などを入力する。
【0070】
図4Cは、入力軌跡64の一例の模式図である。例えば、英数字である「A」「B」を表す入力軌跡64が入力された場面を想定して説明する。この場合、受付部20Aは、例えば、英数字である「A」「B」を表す入力軌跡64を受付ける。
【0071】
表示制御部20Cは、受付けた入力軌跡64を所望色63で表示する。
【0072】
図4Dは、所望色63で表示された入力軌跡64Bを含む表示画面50Cの一例を示す模式図である。表示画面50Cは表示画面50の一例である。入力軌跡64Bは、黒色などの予め定めた基準の色の入力軌跡64A(
図4C参照)を、所望色63で表した入力軌跡64である。
【0073】
ユーザは、所望色63で表示された入力軌跡64Bを視認することで、線や文字などを所望色63で記入したときのイメージを容易に確認することができる。
【0074】
なお、受付部20Aは、記入文字見本を受付けてもよい。記入文字見本は、手書きで記入された形状の文字である。この場合、例えば、記憶部12は、1または複数の記入文字見本を表す情報を予め記憶すればよい。そして、表示制御部20Cは、記憶部12に記憶された記入文字見本を表す情報を読取り、選択可能に表示画面50に表示する。受付部20Aは、表示された記入文字見本の内、ユーザによる入力部14Aの操作指示によって選択された記入文字見本を受付ける。そして、表示制御部20Cは、受付けた記入文字見本を所望色63で表示すればよい。また、表示制御部20Cは、記憶部12に記憶されている1または複数の記入文字見本を表す情報を読取り、所望色63で表示してもよい。
【0075】
ユーザは、所望色63で表示された記入文字見本を視認することで、線や文字などを所望色63で記入したときのイメージを容易に確認することができる。
【0076】
なお、受付部20Aは、記録対象の記録媒体の色の入力を更に受付けてよい。例えば、表示制御部20Cは、記録媒体の色見本を表示部14Bに表示する。
【0077】
図4Eは、記録媒体の色見本66の表示画面50Dの一例を示す模式図である。表示画面50Dは、表示画面50の一例である。
【0078】
記録媒体の色見本66は、互いに異なる色の記録媒体の色画像68を含む。
図4Eには、一例として、記録媒体の色画像68A~記録媒体の色画像68Cを示す。なお、記録媒体の色見本66は、2種類または4種類以上の記録媒体の色画像68を含んだ構成であってもよい。
【0079】
ユーザは、表示画面50Dに表示された記録媒体の色見本66を視認しながら入力部14Aを操作することで、所望の記録媒体の色画像68を選択する。受付部20Aは、選択された記録媒体の色画像68の色を、記録対象の記録媒体の色として受付ければよい。
【0080】
表示制御部20Cは、受付けた色の記録媒体上に、受付けた色の記録媒体に所望色63のインキを記録した記録色調の入力軌跡64を重畳した、重畳画像を表示する。
【0081】
図4Fは、重畳画像67を含む表示画面50Eの一例の模式図である。表示画面50Eは、表示画面50の一例である。
【0082】
例えば、
図4Eに示す記録媒体の色画像68の内、記録媒体の色画像68Bの色の入力を受付けた場面を想定する。この場合、
図4Fに示すように、表示制御部20Cは、色画像68Bによって表される色の記録媒体上に、所望色63のインキで記録した記録色調の入力軌跡64Cを重畳した、重畳画像67を表示する。
【0083】
なお、表示制御部20Cは、受付けたまたは読取った記入文字見本についても同様に、色画像68Bによって表される色の記録媒体上に、所望色63のインキで記録した記録色調の記入文字見本を重畳した、重畳画像67を表示すればよい。
【0084】
このため、ユーザは、表示された重畳画像67を視認することで、線や文字を所望色63のインキで所望の色の記録媒体に記録した時の記録色調を、容易に確認することができる。
【0085】
なお、受付部20Aは、入力軌跡64や記入文字見本の線幅の入力を更に受付けてよい。この場合、表示制御部20Cは、入力軌跡64や記入文字見本を受付けた線幅で表示すればよい。
【0086】
なお、表示制御部20Cは、所望色63に調色されたインキを用いて記録する、筆記具の識別情報、筆記具の販売サーバへのアクセス情報、および筆記具の製品情報の少なくとも1つを更に表示してよい。
【0087】
図4Gは、表示画面50Fの一例の模式図である。表示画面50Fは、表示画面50の一例である。
【0088】
表示画面50Fには、例えば、
図4Bの表示画面50Bと同様に、色画像62Cの色である所望色63の調色に用いる複数の基本インキの基本インキ識別情報、基本インキの配合比、基本インキの販売サーバへのアクセス情報、および製品情報が含まれる。また、表示画面50Fには、例えば、該基本インキを用い、且つ、受付けた線幅で線や文字を記入可能な筆記具の識別情報、該筆記具の製品情報、該筆記具の販売サーバへのアクセス情報が含まれる。
【0089】
表示制御部20Cは、所望色63の調色に用いる基本インキ識別情報および受付けた線幅に対応する、筆記具識別情報、販売サーバへのアクセス情報、および製品情報を筆記具管理DB12Eから読取る。そして、表示制御部20Cは、読取ったこれらの情報を含む表示画面50Fを表示部14Bに表示すればよい。
【0090】
ユーザは、表示された筆記具の識別情報、筆記具の製品情報、および筆記具の販売サーバへのアクセス情報を視認することで、調色された所望色63のインキの記入に用いる筆記具に関する情報を容易に確認することができる。
【0091】
また、ユーザが入力部14Aを操作することで、筆記具の販売サーバへのアクセス情報の表示欄を選択した場合、制御部20は、該アクセス情報によって示される販売サーバへアクセスし、該販売サーバから提供される製品購入画面などの表示画面を表示してよい。
【0092】
図1に戻り説明を続ける。受付部20Aは、複数の基本インキの識別情報である複数の基本インキ識別情報および複数の該基本インキの配合比の入力を受付けてもよい。
【0093】
例えば、表示制御部20Cは、基本インキ識別情報および配合比の入力を受付けるための表示画面50を表示部14Bに表示する。
【0094】
図4Hは、表示画面50Gの一例の模式図である。表示画面50Gは、表示画面50の一例である。例えば、表示画面50Gには、基本インキ識別情報の入力欄および配合比の入力欄が含まれる。ユーザは、入力部14Aを操作することで、基本インキ識別情報の入力欄に、所望の基本インキ識別情報を入力する。なお、表示制御部20Cは、調色管理DB12Aに記憶されている基本インキ識別情報の一覧を選択可能に表示部14Bに表示してもよい。またこのとき、表示制御部20Cは、該基本インキ識別情報によって識別される基本インキの色を表す色画像と基本インキ識別情報との対の群を、表示部14Bに表示してよい。ユーザは、入力部14Aを操作することで、表示された基本インキ識別情報の一覧から所望の基本インキ識別情報を選択することによって、基本インキ識別情報を入力してよい。
【0095】
また、ユーザは、入力部14Aを操作することで、入力または選択した1または複数の基本インキ識別情報の配合比を、配合比の入力欄に入力すればよい。
【0096】
受付部20Aが、複数の基本インキの識別情報である複数の基本インキ識別情報および複数の該基本インキの配合比の入力を受付けると、表示制御部20Cは、受付けた該配合比で複数の該基本インキ識別情報によって識別される基本インキを調色した色調の所望色63を表示する。
【0097】
詳細には、表示制御部20Cは、受付けた基本インキ識別情報の組み合わせおよび配合比に対応する調色可能な色を、調色管理DB12Aから取得する。そして、表示制御部20Cは、取得した調色可能な色を該配合比によって実現される所望色63として、表示部14Bに表示すればよい(
図4H参照)。
【0098】
このため、表示画面50Gを視認することで、ユーザは、所望の基本インキを所望の配合比で調色したときに実現される色を容易に確認することができる。
【0099】
表示制御部20Cは、表示画面50Gに表示した所望色63、基本インキ識別情報、および配合比を、該基本インキ識別情報および配合比を入力したユーザのユーザ情報に対応付けてユーザ管理DB12Cに登録する。
【0100】
表示制御部20Cは、例えば、インキ色提供装置10へのログイン時に用いられるユーザ名をユーザ情報として用いればよい。また、記憶部12に、ユーザのユーザ情報を予め記憶してもよい。この場合、表示制御部20Cは、記憶部12からユーザ情報を読取り、ユーザ管理DB12Cに登録すればよい。
【0101】
また、表示制御部20Cは、登録された所望色63に対応する色の名称を更に対応付けてユーザ管理DB12Cに登録してよい。例えば、表示制御部20Cは、ユーザによる入力部14Aの操作指示によって該所望色63に付与された色の名称を、ユーザ管理DB12Cに登録する。また、例えば、ユーザ管理DB12Cをサーバ装置30で管理する場面を想定する。この場合、サーバ装置30は、インキ色提供システム1の管理者などが公募などによって募集し採用された色の名称を、該所望色63に対応付けてユーザ管理DB12Cに登録すればよい。
【0102】
ユーザ情報、所望色63、基本インキ識別情報、配合比、および色の名称を対応付けてユーザ管理DB12Cへ登録することで、ユーザ管理DB12Cをユーザ参加型システムなどの各種のシステムに適用することができる。
【0103】
例えば、インキ色提供装置10およびサーバ装置30は、特定のユーザによって特有の配合比によって調色された所望色63を、該ユーザによって調色された色として管理することができる。また、インキ色提供装置10およびサーバ装置30は、所望色63を、該ユーザによって調色された色としてネットワークNに接続された他の情報処理装置などに対して公開することができる。また、インキ色提供装置10およびサーバ装置30は、所望色63の色の名称を、他の複数のユーザなどによって操作される情報処理装置や他のインキ色提供装置10などからネットワークNを介して受信する。そして、インキ色提供装置10およびサーバ装置30は、受信した色の名称の内、管理者等によって採用された色の名称を、該所望色63に対応付けてユーザ管理DB12Cに登録することができる。
【0104】
次に、インキ色提供装置10が実行するインキ色提供処理の流れの一例を説明する。インキ色提供処理は、インキ色提供装置10が実行する情報処理の一例である。
【0105】
図5は、本実施形態のインキ色提供装置10で実行されるインキ色提供処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0106】
受付部20Aは、所望色63の配合比の表示要求を受付けたか、配合比からの所望色の表示要求を受付けたかを判断する(ステップS100)。例えば、ユーザは、所望色63の配合比の表示を希望する場合、入力部14Aを操作することで、所望色63の配合比の表示要求を受付ける受付ボタンを操作する。この場合、受付部20Aは、所望色63の配合比の表示要求を受付けたと判断する。また、例えば、ユーザは、所望の配合比で調色した所望色63の表示を希望する場合、入力部14Aを操作することで、配合比から所望色63を表示する表示要求を受付ける受付ボタンを操作する。この場合、受付部20Aは、配合比からの所望色の表示要求を受付けたと判断する。
【0107】
所望色63の配合比の表示要求を受付けたと判断した場合(ステップS100:Yes)、ステップS102へ進む。
【0108】
ステップS102では、取得部20Dが、ユーザの所望する所望色63の印象を表す印象情報を取得する(ステップS102)。
【0109】
表示制御部20Cは、ステップS102で取得した印象情報に対応する色の一覧を表す色見本60を表示部14Bに表示する(ステップS104)。表示制御部20Cは、ステップS102で取得した印象情報に対応する調色可能な色を調色管理DB12Aから読取る。そして、表示制御部20Cは、読取った調色可能な色を表す色画像62を含む色見本60を、表示画面50へ表示する(
図4A参照)。
【0110】
受付部20Aは、所望色63の入力を受付ける(ステップS106)。ユーザは、色見本60を参照しながら入力部14Aを操作することで、色見本60に含まれる複数の色画像62の中から実現を所望する色画像62を選択する。受付部20Aは、選択された色画像62の色を所望色として受付ける。
【0111】
導出部20Bは、ステップS106で受付けた所望色63の調色に用いる複数の基本インキの基本インキ識別情報および配合比を導出する(ステップS108)。導出部20Bは、ステップS106で受付けた所望色を表す調色可能な色に対応する、調色に用いる基本インキ識別情報および配合比を調色管理DB12Aから読取ることで、基本インキ識別情報および配合比を導出する。
【0112】
表示制御部20Cは、ステップS108で導出された基本インキ識別情報および配合比を表示部14Bに表示する(ステップS110)。このため、例えば、表示部14Bには、
図4Bに示す表示画面50Bが表示される。
【0113】
次に、受付部20Aは、入力部14Aから入力軌跡64を受付けたか否かを判断する(ステップS112)。ステップS112で肯定判断すると(ステップS112:Yes)、ステップS114へ進む。
【0114】
ステップS114では、表示制御部20Cは、ステップS112で受付けた入力軌跡64をステップS106で受付けた所望色63で表示する(ステップS114)。ステップS114の処理によって、例えば、
図4Dに示す入力軌跡64Aを含む表示画面50Cが表示部14Bに表示される。そして、ステップS120へ進む。
【0115】
一方、ステップS112で否定判断すると(ステップS112:No)、ステップS116へ進む。ステップS116では、受付部20Aは、記入文字見本を受付けまたは記憶部12から読取る(ステップS116)。表示制御部20Cは、ステップS116で受付けまたは読取った記入文字見本を、ステップ106で受付けた所望色63で表示する(ステップS118)。そして、ステップS120へ進む。
【0116】
ステップS120では、受付部20Aが、記録対象の記録媒体の色の入力を受付けたか否かを判断する(ステップS120)。ステップS120で否定判断すると(ステップS120:No)、後述するステップS124へ進む。ステップS120で肯定判断すると(ステップS120:Yes)、ステップS122へ進む。
【0117】
ステップS122では、表示制御部20Cは、ステップS120で受付けた色の記録媒体上に、該色の記録媒体にステップS106で受付けた所望色63のインキを記録した記録色調の入力軌跡64または記入文字見本を重畳した、重畳画像67を表示する(ステップS122)。
【0118】
次に、受付部20Aは、入力軌跡64や記入文字見本の線幅の入力を受付けたか否かを判断する(ステップS124)。ステップS124で否定判断すると(ステップS124:No)、後述するステップS128へ進む。ステップS124で肯定判断すると(ステップS124:Yes)、ステップS126へ進む。
【0119】
ステップS126では、表示制御部20Cは、入力軌跡64または記入文字見本を、ステップS124で受付けた線幅で表示する(ステップS126)。そして、ステップS128へ進む。
【0120】
ステップS128では、制御部20は、インキ色提処理を終了するか否かを判断する(ステップS128)。例えば、制御部20は、インキ色提供処理の終了指示を入力部14Aから受付けたか否を判別することで、ステップS128の判断を行う。ステップS128で否定判断すると(ステップS128:No)、上記ステップS100に戻る。ステップS128で肯定判断すると(ステップS128:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0121】
一方、上記ステップS100で、配合比からの所望色の表示要求を受付けたと判断すると(ステップS100:No)、ステップS130へ進む。
【0122】
ステップS130では、受付部20Aは、複数の基本インキ識別情報および複数の該基本インキの配合比の入力を受付ける(ステップS130)。
【0123】
表示制御部20Cは、ステップS130で受付けた配合比で、ステップS130で受付けた複数の基本インキ識別情報によって識別される基本インキを調色した色調の所望色63を表示する(ステップS132)。
【0124】
表示制御部20Cは、ステップS132で表示した所望色63、基本インキ識別情報、および配合比を、該基本インキ識別情報および配合比を入力したユーザのユーザ情報に対応付けてユーザ管理DB12Cに登録する(ステップS134)。そして、上記ステップS128へ進む。
【0125】
以上説明したように、本実施形態のインキ色提供装置10は、受付部20Aと、導出部20Bと、を備える。受付部20Aは、ユーザが所望する所望色63の入力を受付ける。表示制御部20Cは、所望色63の調色に用いる複数の基本インキの配合比を表示する。
【0126】
ここで、従来技術では、ユーザ所望の所望色63を実現する方法が提供されておらず、ユーザは様々な基本インキの配合比を自身で試行錯誤しながら調整して調色する必要があった。
【0127】
一方、本実施形態のインキ色提供装置10では、ユーザが所望する所望色63の調色に用いる基本インキの配合比を表示する。このため、ユーザは、表示された基本インキの配合比を確認することで、所望色63の基本インキによる実現方法を容易に確認することができる。
【0128】
従って、本実施形態のインキ色提供装置10は、ユーザが所望する所望色63の実現方法を容易に提供することができる。
【0129】
(基本インキ)
次に、所望色63の調色に用いられる基本インキについて詳細に説明する。上述したように、基本インキは、所望色63の調色に用いられるインキ組成物であればよい。
【0130】
インキ色提供装置10で用いられる複数の基本インキは、幅広い色調に調色可能である観点から、以下の筆記具用水性インキセットを含む事が好ましい。また、以下に示す筆記具用水性インキセットは、使用環境に拘わらず幅広い色調に調色可能であるため、インキ色提供装置10の基本インキとして用いる事が好ましい。
【0131】
以下、本実施形態のインキ色提供装置10に好適に用いられる筆記具用水性インキセットについて、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、および「比」等は、特に基準を示さない限り質量基準である。
【0132】
本実施形態の筆記具用水性インキセットは、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、かつ互いに色の異なる第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物を備える。第1インキ組成物の最大吸収波長と第2インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上であり、第2インキ組成物の最大吸収波長と第3インキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上である。
【0133】
可視光領域とは、人の目により視認可能な光の波長範囲の領域である。JIS Z8120の定義によれば、可視光領域の下限は360nm以上400nm以下の範囲であり、上限は760nm以上830nm以下の範囲である。
【0134】
本実施形態の筆記具用水性インキセットは、最大吸収波長の差が上記関係を示す。このため、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、第1インキ組成物と第2インキ組成物、および第2インキ組成物と第3インキ組成物、の少なくとも一方の最大吸収波長の差が100nm未満である場合に比べて、可視光領域における調整可能な色調の範囲を広げることができる。
【0135】
従って、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物を任意の混合比で混合することで、幅広い色調のインキを調色することができる。インキとは、複数のインキ組成物の混合物を表す。
【0136】
第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物は、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、最大吸収波長の差が上記関係を満たし、かつ互いに色の異なるインキ組成物であればよい。本実施形態では、第1インキ組成物がシアン色のインキ組成物であり、第2インキ組成物がマゼンタ色のインキ組成物であり、第3インキ組成物がイエロー色のインキ組成物である形態を一例として説明する。
【0137】
本実施形態の筆記具用水性インキセットは、透明色の第4インキ組成物を更に備えることが好ましい。透明色の第4インキ組成物を更に備えることで、インキの濃度や明度を調整することが可能となる。
【0138】
また、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、第5インキ組成物を更に備えることが好ましい。第5インキ組成物は、第1インキ組成物、第2インキ組成物、および第3インキ組成物のいずれか2つの最大吸収波長の間に最大吸収波長を有するインキ組成物である。
【0139】
本実施形態では、第5インキ組成物が、シアン色の第1インキ組成物の最大吸収波長とマゼンタ色の第2インキ組成物の最大吸収波長との間に最大吸収波長を有するインキ組成物である場合を一例として説明する。具体的には、本実施形態では、第5インキ組成物が、ブラック色のインキ組成物である形態を一例として説明する。
【0140】
本実施形態の筆記具用水性インキセットは、ブラック色の第5インキ組成物を更に備えることで、インキの彩度を容易に調整することが可能となる。
【0141】
なお、以下では、第1インキ組成物をシアン色のインキ組成物、第2インキ組成物をマゼンタ色のインキ組成物、第3インキ組成物をイエロー色のインキ組成物、と称して説明する場合がある。また、第4インキ組成物を透明色のインキ組成物と称し、第5インキ組成物をブラック色のインキ組成物と称して説明する場合がある。また、第1インキ組成物、第2インキ組成物、第3インキ組成物、第4インキ組成物、および第5インキ組成物を総称して説明する場合には、単に、インキ組成物と称して説明する場合がある。
【0142】
以下、インキ組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0143】
インキ組成物は、着色剤と、水性媒体と、を含む。なお、透明色のインキ組成物は、着色剤を含まない形態であってよい。
【0144】
(着色剤)
本実施形態のインキ組成物に含まれる着色剤について説明する。インキ組成物に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
【0145】
染料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料および食用色素等の各種の染料が挙げられる。これらの染料は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。染料の含有量は、インキ組成物の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0146】
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23(タートラジン)、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドレッド388、C.I.アシッドレッド87(エオシン)、C.I.アシッドレッド92(フロキシン)、C.I.アシッドレッド97、C.I.アシッドレッド51(エリスロシン)、C.I.アシッドレッド94(ローズベンガル)、アクリジンレッド(C.I.45000)、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン6G(C.I.ベーシックレッド1)、ローダミン6Gエキストラ、ローダミン116、ローダミンB(C.I.45170)、テトラメチルローダミン過塩素酸塩、ローダミン3B、ローダミン19、スルホローダミン、ピロニンG(C.I.45005)、ローダミンS(C.I.45050)、ローダミンG(C.I.45150)、エチルローダミンB(C.I.45175)、ローダミン4G(C.I.45166)、ローダミン3GO(C.I.45215)、スルホローダミンG等が挙げられる。
【0147】
塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が挙げられる。
【0148】
直接染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19等が挙げられる。
【0149】
食用色素としては、例えば、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が挙げられる。
【0150】
顔料としては、例えば、無機、有機、加工顔料等が挙げられる。具体的には、顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、顔料として、マイクロカプセル顔料を用いてもよい。マイクロカプセル顔料は、顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法等により樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたものである。更に、顔料としては、顔料を透明または半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子や、無色樹脂粒子を顔料もしくは染料で着色したもの等を用いることもできる。
【0151】
なお、これらの顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してよい。顔料の含有量は、インキ組成物の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。また、染料と顔料を組み合わせて使用してもよい。
【0152】
(水性媒体)
次に水性媒体について説明する。インキ組成物に含まれる水性媒体は、水と、必要により水溶性有機溶剤と、を含む。
【0153】
水は特に限定されるものではなく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水、蒸留水等を例示できる。水の含有量は、インキ組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以上95質量%以下、より好ましくは40質量%以上95質量%以下である。
【0154】
水溶性有機溶剤としては、例えば、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの2価アルコール、またはグリセリン等の3価のアルコール、などの多価アルコール類、(ii)メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール類、および(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシブタノール、または3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0155】
水溶性有機溶剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0156】
(その他の添加剤)
本実施形態のインキ組成物に含まれる水性媒体は、インキ物性や機能を向上させる目的で、pH調整剤、保湿剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、キレート剤等の各種の添加剤を含んでもよい。
【0157】
pH調整剤としては、例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等のアルカノールアミンなどの水溶性の塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸等が挙げられる。
【0158】
pH調整剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0159】
保湿剤としては、例えば、尿素、ソルビット等が挙げられる。保湿剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0160】
界面活性剤としては、インキに用いられる公知の界面活性剤を用いる事ができる。例えば、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0161】
本実施形態においては、界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン系界面活性剤およびアセチレン系界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0162】
ポリオキシアルキレン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、下記一般式(1)で表される化合物であり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとが任意の配列で重合した構造を持つコポリマーである。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、一般式(1)の式中のRがHの化合物である。
【0163】
【0164】
一般式(1)中、Rはアルキル基またはHを示し、mおよびnはそれぞれ独立して1以上40以下の整数を示す。
【0165】
アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などが挙げられ、具体的には、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールおよび2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールおよび2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0166】
界面活性剤としては、インキのボタ落ち、滲み、および裏抜けの抑制の観点から、上記界面活性剤の内、ポリオキシアルキレン系界面活性剤を用いることが好ましく、さらには、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いる事がより好ましい。
【0167】
さらには、下記一般式(2)である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いる事が特に好ましい。
【0168】
【0169】
一般式(2)中、a、bおよびcは、それぞれ正数を示す。
【0170】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの平均分子量は、100以上100000以下であることが好ましく、1000以上50000以下であることがより好ましく、5000以上30000以下であることがさらに好ましく、10000以上15000以下であることが特に好ましい。
【0171】
なお、ボタ落ちとは、インキを用いて筆記するペンのペン先を鉛直下向き状態にした場合、非筆記時であっても、大気圧の変化によるインキの溢れ出し、または衝撃や振動によるインキの漏れ出し、が生じる現象をいう。なお、以下では、鉛直下向きを、単に、下向きと称して説明する場合がある。着色剤を含まないインキ組成物である透明色のインキ組成物は、特にボタ落ちが発生しやすい傾向にある。このため、透明色のインキ組成物は、特に、界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含むことが好ましい。
【0172】
界面活性剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0173】
防腐剤としては、例えば、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート、安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾールおよびフェノール等が挙げられる。以下、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンをBITと表記する場合がある。
【0174】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素等が挙げられる。また、水溶性樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。さらに、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等含むエマルジョンを添加することができる。
【0175】
さらには、インキ組成物の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
【0176】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩等が挙げられる。
【0177】
本実施形態のインキ組成物およびインキは、後述する万年筆のように、一時的にインキを貯留するくし溝と、インキ流通路と、空気通路と、を有するペン芯を介してインキをペン先に供給する機構を備える筆記具に好適に用いられる。また、本実施形態のインキ組成物およびインキは、ガラス瓶などのインキ収容器に収容される場合がある。ガラス瓶は、安価で成形が容易であり且つ所望の強度が得られやすい。その反面、ガラス瓶として特に廉価で汎用性の高いソーダ石灰ガラスなどを用いた場合には、水性インキ組成物を長期間収容することで、水性インキ組成物中にガラス中のアルカリ成分が溶出する可能性が高い。この溶出したアルカリ成分と水性インキ組成物の成分とが反応し、析出物が形成される可能性がある。このため、この析出物により、上記インキ流通路が塞がれてしまい、筆跡のかすれや、筆記不能等が生じる場合がある。
【0178】
このため、上記析出物を抑制し、筆跡のかすれや筆記不能等の発生を抑制する観点から、本実施形態のインキ組成物は、キレート剤を含むことが好ましい。インキ組成物がキレート剤を含むことで、ガラス製のインキ収容器から溶出するアルカリ成分をキレート剤が捕捉し、該アルカリ成分とインキ組成物中の成分が反応して生じる水に不溶な析出物などの発生を抑制することができる。
【0179】
また、アルカリ成分の十分な補足、および水性インキ組成物のキレート剤の配合前後の物性や性能に変化を与えにくいことなどを考慮すると、キレート剤の中でも、アミノカルボン酸およびその塩を用いることが好ましく、より考慮すれば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩を用いることが好ましい。
【0180】
ここで、イエロー色の着色剤を含むインキ組成物は、用いる着色剤によっては、混合時のインキがくすんでしまうなど、混合時のインキ発色鮮明性に課題が生じたり、また、花咲き現象が生じやすい傾向がある。花咲き現象とは、水分の蒸発によってインキ組成物中の着色剤などの固形成分が筆記具のペン先に析出する現象である。
【0181】
そこで、上述した着色剤のうち、イエロー色のインキ組成物に含まれる着色剤としては、混合時のインキ発色鮮明性の向上の観点から、C.I.アシッドイエロー23(タートラジン)を用いる事が好ましい。
【0182】
また、インキ組成物に含まれる水性媒体は、花咲き現象の抑制の観点から、多価アルコールおよびアルカノールアミンを含むことが好ましい。また、花咲き現象の更なる抑制効果を考慮すると、インキ組成物に含まれる水性媒体は、尿素を更に含むことが好ましい。
【0183】
また、花咲き現象の抑制の観点から、多価アルコールについては、グリセリンを用いることが好ましい。さらには、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物の全てのインキ組成物における経時安定性を良好にし、且つ混色時のインキ安定性も考慮すると、多価アルコールは、グリセリンとジエチレングリコールを含んでなることが特に好ましい。
【0184】
また、アルカノールアミンは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基をもつ化合物である。本実施形態においては、下記式(3)で表されるアルカノールアミンを用いることが好ましい。
【0185】
【0186】
式(3)中、R1はエチレン基、トリメチレン基、またはプロピレン基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立に水素、メチル基、エチル基、または-R1-OH基を示す。
【0187】
このようなアルカノールアミンの具体例として、例えば、メチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0188】
本実施形態においては、インキの経時安定性、および花咲き現象の抑制を考慮すると、上記アルカノールアミンの中でも、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。
【0189】
よって、インキ組成物に含まれる水性媒体は、花咲き現象の抑制、およびインキ組成物およびインキの経時安定性を考慮すると、グリセリン、トリエタノールアミン、および尿素を含んでなることが特に好ましく、さらには、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、および尿素を含んでなることが最も好ましい。
【0190】
(インキ組成物の製造方法)
本実施形態の筆記具用水性インキセットに含まれるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を必要量配合し、マグネットスターラー、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー攪拌機、ホモディスパー、ホモミキサー、または自転公転攪拌機等の各種攪拌機やビーズミル等の各種分散機等にて混合し製造することができる。
【0191】
本実施形態では、添加する着色剤の種類を調整することで、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、最大吸収波長の差が上記関係を満たし、かつ互いに色の異なるシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物、の各々を製造する。
【0192】
また、添加する着色剤の種類を調整することで、最大吸収波長が上記関係を満たすブラック色のインキ組成物を製造することができる。すなわち、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物のいずれか2つの最大吸収波長の間に最大吸収波長を有するブラック色のインキ組成物を製造することができる。
【0193】
透明色のインキ組成物は、着色剤を含まないインキ組成物として製造すればよい。
【0194】
インキ組成物の最大吸収波長は、以下の方法により測定される。具体的には、最大吸収波長は、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計UV-2550を用いて、インキ組成物をイオン交換水で5000倍に希釈した溶液を光路長10mmの石英セルに装填し、波長範囲400nm以上900nm以下、スキャンスピード中速、サンプリングピッチ2.0nmの条件により吸収波長を測定する。そして、測定結果から最大吸収波長を特定する。
【0195】
(筆記具用水性インキセット)
本実施形態の筆記具用水性インキセットは、上記したシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物を少なくとも備える。
【0196】
詳細には、筆記具用水性インキセットは、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、かつ互いに色の異なるシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物を備える。そして、シアン色のインキ組成物の最大吸収波長とマゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上であり、マゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長とイエロー色のインキ組成物の最大吸収波長との差が100nm以上である。
【0197】
このように、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、最大吸収波長の差が上記関係を示す。このため、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、これらのインキ組成物の混合により調色可能な色調の範囲を広げることができる。従って、本実施形態の筆記具用水性インキセットは、シアン色のインキ組成物とマゼンタ色のインキ組成物、およびマゼンタ色のインキ組成物とイエロー色のインキ組成物、の少なくとも一方の最大吸収波長の差が100nm未満である場合に比べて、可視光領域における調整可能な色調の範囲を広げることができる。
【0198】
筆記具用水性インキセットに含まれる、シアン色のインキ組成物の最大吸収波長とマゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長との差、およびマゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長とイエロー色のインキ組成物の最大吸収波長との差、の各々の上限値は限定されない。これらの上限値は、可視光領域の波長の下限値と上限値との差以下であればよい。
【0199】
可視光領域において、良好に幅広い色調の調整を図ることを考慮すると、シアン色のインキ組成物の最大吸収波長とマゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長との差、およびマゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長とイエロー色のインキ組成物の最大吸収波長との差は、180nm以下であることが好ましく、160nm以下であることがより好ましく、155nm以下であることがさらに好ましい。
【0200】
また、筆記具用水性インキセットは、上記した透明色のインキ組成物およびブラック色のインキ組成物の少なくとも一方を更に備えることが好ましい。
【0201】
また、色調調整を良化し、混色時の発色鮮明性に優れたインキを得ることを考慮すると、シアン色のインキ組成物の最大吸収波長は、610nm以上750nm以下であることが好ましく、マゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長は500nm以上560nm以下であることが好ましく、イエロー色のインキ組成物の最大吸収波長は400nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0202】
さらには、幅広い色調の調整の良化を考慮すると、シアン色のインキ組成物の最大吸収波長は、650nm以上700nm以下であることが特に好ましく、マゼンタ色のインキ組成物の最大吸収波長は、500nm以上530nm以下であることが特に好ましく、イエロー色のインキ組成物の最大吸収波長は、420nm以上450nm以下であることが特に好ましい。
【0203】
なお、筆記具用水性インキセットを構成するシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物の各々の着色剤の含有量の差は、0質量%以上1.0質量%未満であることが好ましい。また、この含有量の差は、0質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%以上0.1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0204】
また、筆記具用水性インキセットが、シアン色、マゼンタ色、およびイエロー色以外の他の色であるブラック色のインキ組成物を含む構成である場合についても、これらのインキ組成物に含まれる着色剤の含有量の差を、上記範囲内としてもよい。
【0205】
筆記具用水性インキセットを構成する複数のインキ組成物の着色剤の含有量の差が上記範囲内であると、複数のインキ組成物間における着色剤の溶解状態または分散状態が略同一となる。このため、筆記具用水性インキセットに含まれる複数のインキ組成物を混合して調色する際に、着色剤の濃度変化が起こりにくくなるため、着色剤同士の凝集や析出を抑制することができ、インキ安定性の向上を図ることが出来る。
【0206】
また、筆記具用水性インキセットを構成するシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物に含まれる水性媒体の主成分は、同一であることが好ましい。主成分とは、水性媒体の80質量%以上、好ましくは90質量%以上の成分を意味する。
【0207】
また、筆記具用水性インキセットを構成する上記以外のインキ組成物の各々に含まれる水性媒体の主成分も、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、イエロー色のインキ組成物と同一であることが好ましい。すなわち、筆記具用水性インキセットが、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物と、ブラック色のインキ組成物および透明色のインキ組成物の少なくとも一方と、を備える場合がある。このような場合についても、これらのインキ組成物に含まれる水性媒体の主成分は、同一であることが好ましい。
【0208】
筆記具用水性インキセットを構成する複数のインキ組成物の各々に含まれる水性媒体の主成分を同一とすることで、複数のインキ組成物を混合して調色する際に、水性媒体の主成分の濃度変化が起こりにくくなるため、着色剤同士の凝集や析出を抑制することができ、インキ安定性の向上を図ることができる。
【0209】
(筆記具用水性インキセットの製造方法)
筆記具用水性インキセットは、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、最大吸収波長が上記関係を満たし、かつ互いに色の異なる複数のインキ組成物を組み合わせることで製造することができる。
【0210】
詳細には、添加する着色剤の種類を調整することで、それぞれが可視光領域に最大吸収波長を有し、最大吸収波長の差が上記関係を満たし、かつ互いに色の異なるシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物、の各々を製造する。そして、これらのインキ組成物を、筆記具用水性インキセットとして用いる。
【0211】
また、筆記具用水性インキセットは、該筆記具用水性インキセットに含まれるシアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物のいずれか2つの最大吸収波長の間に最大吸収波長を有するブラック色のインキ組成物を更に組み合わせてよい。また、筆記具用水性インキセットは、透明色のインキ組成物を更に組み合わせてよい。
【0212】
(水性インキ製品)
シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、イエロー色のインキ組成物、透明色のインキ組成物、およびブラック色のインキ組成物は、それぞれガラス等のインキ収容器に収容することで、例えば、水性インキ製品として提供される。
【0213】
インキ収容器の構成材料は限定されない。例えば、インキ収容器は、ガラス瓶等の二酸化ケイ素を主成分とした容器やプラスチックで構成された容器等が挙げられる。
【0214】
本実施形態において、各インキ組成物をガラス瓶の容器に収容する形態は、インキ中の水分が蒸発しにくく、意匠性に優れ、インキの色調や残量を確認しやすい観点から、好ましい形態のひとつである。
【0215】
また、インキ組成物を収容したインキ収容器と、空容器、スポイト、メスシリンダ、および調色見本の少なくとも1つと、を水性インキ製品としてもよい。空容器は、複数のインキ組成物の混合に用いる空の容器である。スポイトは、インキ収容器内のインキ組成物を吸い上げて空容器等の別の容器等に移動させるときに用いる部材の一例である。メスシリンダは、インキ組成物の定量に用いる部材の一例である。調色見本は、筆記具用水性インキセットに含まれるインキ組成物の混合比と該混合比によって実現される色と、の対応を示す情報の記載された紙媒体または電子媒体である。調色見本に示される混合比と該混合比によって実現される色との対応を示す情報は、上述した色見本60に含まれる少なくとも一部の色画像62と、色画像62を実現するための基本インキの配合比と、の対応を示す情報であることが好ましい。
【0216】
ユーザは、本実施形態の複数のインキ組成物を任意の混合比で混合することにより、所望の色調のインキを調色することができる。
【0217】
なお、本実施形態のインキ組成物および調色されたインキは、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィー用のペン、つけペン、各種マーカー類等の各種の筆記具用の水性インキとして用いることができる。
【0218】
本実施形態のインキ組成物およびインキの適用対象の一例である筆記具の構造および形状は特に限定されるものではない。
【0219】
例えば、筆記具としては、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップをペン先としたマーキングペンや、ボールペンチップ等をペン先としたボールペン、さらに、金属製のペン先を用いた万年筆等が挙げられる。
【0220】
なお、筆記具は、筆記具本体内部をインキ貯蔵体とし、インキ組成物またインキを直に充填する構成であってもよい。また、筆記具は、インキ組成物またはインキを充填するインキ貯蔵体を筆記具本体内部に具備した構成であってもよい。
【0221】
インキ貯蔵体としては、筆記具本体やペン芯などに着脱自在に交換可能であり、予めインキ組成物またはインキが充填されたカートリッジ式や、インキ瓶などのようなインキ収容体からインキ組成物またはインキを充填することが可能な吸入機構を備えたインキ吸入式、などが挙げられる。
【0222】
吸入機構は、筆記具本体内に直に設ける構成であってもよく、コンバーターのように筆記具本体やペン芯などに着脱可能に装着する構成であってもよい。
【0223】
また、筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式等の軸筒内にペン先を収容可能な出没式筆記具が挙げられる。
【0224】
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、インキ供給機構は、例えば、以下の機構1~機構4等であってもよい。
【0225】
(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構2)一時的にインキを貯留するくし溝とインキ流通路と空気通路を有するペン芯を介して水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構。
(機構4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、水性インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構。
【0226】
特には、本実施形態のインキ組成物およびインキを用いる筆記具は、上記(機構2)を有する筆記具、すなわち、一時的にインキを貯留するくし溝とインキ流通路と空気通路を有するペン芯を備える筆記具に特に好適に用いることができる。
【0227】
これは、本実施形態のインキ組成物およびインキを用いると、ペン芯の機能を十分に働かせ、インキ貯蔵部からインキ組成物を筆記先端に供給し、かつ、インキ貯蔵部の内圧上昇に伴って溢出したインキ組成物を一時的に保持することが容易となるためである。また、ペン先からのインキ吐出性が良化し、カスレの少ない明瞭な筆跡を形成することが可能となるためである。また、外気温の変化やキャップの着脱などによって、インキ貯蔵体の内圧が変化した場合でも、くし溝間にインキが保持され、ペン先からのインキ漏れが抑制でき、優れた耐ボタ落ち性能を得ることができるためである。なお、上記筆記具の具体的例としては、万年筆、ボールペン、カリグラフィー用ペンなどが挙げられるが、中でも、本実施形態のインキ組成物は、万年筆用のインキ組成物として特に好適に用いることができる。
【実施例0228】
以下に本実施形態のインキ色提供装置10の基本インキとして好適に用いられる筆記具用水性インキセットについて、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明で用いられる筆記具用水性インキセットはこれらの実施例に制限されるものではない。
【0229】
(シアン色のインキ組成物(1))
・ジエチレングリコール 1.00質量%
・グリセリン 1.00質量%
・トリエタノールアミン 2.00質量%
・尿素 1.00質量%
・ユニルーブ75DE-2620(日油株式会社製)
(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール) 0.05質量%
・BIT 0.05質量%
・WaterBlue105(C.I.アシッドブルー90) 2.00質量%
・イオン交換水 残部
上記組成物をプロペラ撹拌機により撹拌混合を行い、シアン色のインキ組成物(1)を得た。
【0230】
(インキ組成物(2)~インキ組成物(31))
インキ組成物に含まれる各成分を表1および表2に表される組成に変更した以外は、インキ組成物(1)と同様にしてインキ組成物を得た。
【0231】
なお、表1および表2中には、着色剤として商品名を示した。各々の商品名の着色剤の製造元およびカラーインデックス名は以下の通りである。
【0232】
・Water Blue 105(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.アシッドブルー90
・Water Blue 9(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.アシッドブルー9
・Water Blue 117-L(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.ダイレクトブルー87 ※着色剤成分25%の水溶液。表1および表2中、25%aqと示す。
・Water Red 2(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.アシッドレッド87(エオシン)
・Daiwa IJ Red 319H(ダイワ化成株式会社製):C.I.アシッドレッド289
・紅不二フロキシン(紅不二化学工業株式会社製):C.I.アシッドレッド92
・Water Red 27(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.アシッドレッド52
・Water Yellow 6C(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.アシッドイエロー42
・Water Orange 25(オリエント化学工業株式会社製):C.I.アシッドイエロー42+C.I.アシッドレッド97
・Spilon Yellow WS-1(保土谷化学工業株式会社製):C.I.アシッドイエロー23(タートラジン)
・Bayscript Black SP(LANXESS社製)※着色剤成分30%の水溶液。表1および表2中、30%aqと示す。
・Water Black 191-L(オリヱント化学工業株式会社製):C.I.ダイレクトブラック19 ※着色剤成分15%の水溶液。表1および表2中、15%aqと示す。
【0233】
また、表1および表2中、ユニルーブ75DE-2620は日油株式会社製、ニューポールPE128は三洋化成工業株式会社製、エパン450は第一工業製薬株式会社製の、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの商品名である。オルフィンE1010は、日信化学工業株式会社製のアセチレングリコール系界面活性剤の商品名である。
【0234】
作製したインキ組成物(1)~インキ組成物(31)の各々の吸収波長は、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計UV-2550を用いて、インキ組成物をイオン交換水で5000倍に希釈した溶液を光路長10mmの石英セルに装填し、波長範囲400nm以上900nm以下、スキャンスピード中速、サンプリングピッチ2.0nmの条件により測定する。そして、測定結果から最大吸収波長を特定した。特定結果を表1および表2に示した。
【0235】
【0236】
【0237】
(実施例1)
シアン色のインキ組成物(4)、マゼンタ色のインキ組成物(8)、イエロー色のインキ組成物(19)、ブラック色のインキ組成物(25)、および透明色のインキ組成物(27)を、実施例1の筆記具用水性インキセットとした。
【0238】
(実施例2~実施例17,比較例1~比較例6)
筆記具用水性インキセットとして用いるインキ組成物の組み合わせを表3および表4に表される組合せに変更した以外は、実施例1と同様にして筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットを得た。
【0239】
【0240】
【0241】
図6は、実施例および比較例で用いたインキ組成物(1)~インキ組成物(31)の各々の吸収波長の測定結果を示す図である。
図7~
図9は、実施例および比較例の筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットに含まれるインキ組成物の吸収波長の測定結果を示す図である。
図6~
図9中、横軸は波長を示し、縦軸は吸光度を示す。
【0242】
図7は、実施例1の筆記具用水性インキセットに含まれるインキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示す図である。
図8には、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、イエロー色のインキ組成物、およびブラック色のインキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示した。
図7に示すように、実施例1の筆記具用水性インキセットに含まれるシアン色のインキ組成物とマゼンタ色のインキ組成物との最大吸収波長の差は138nmであった。また、マゼンタ色のインキ組成物とイエロー色のインキ組成物との最大吸収波長の差は102nmであった。
【0243】
図8は、比較例1の比較水性インキセットに含まれるインキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示す図である。
図8には、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、イエロー色のインキ組成物、およびブラック色のインキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示した。
図8に示すように、比較例1の比較水性インキセットに含まれるシアン色のインキ組成物とマゼンタ色のインキ組成物との最大吸収波長の差は92nmであった。また、マゼンタ色のインキ組成物とイエロー色のインキ組成物との最大吸収波長の差は112nmであった。
【0244】
図9は、比較例2の比較水性インキセットに含まれるインキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示す図である。
図9には、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、イエロー色のインキ組成物、およびブラック色インキ組成物の各々の吸収波長の測定結果を示した。
図9に示すように、比較例2の比較水性インキセットに含まれるシアン色のインキ組成物とマゼンタ色のインキ組成物との最大吸収波長の差は64nmであった。また、マゼンタ色のインキ組成物とイエロー色のインキ組成物との最大吸収波長の差は154nmであった。
【0245】
実施例2~実施例17、および比較例3~比較例6についても同様にして吸収波長を測定し、最大吸収波長の差を算出した。結果を表3および表4に示した。
【0246】
(評価)
-色調調整評価-
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、色調調整評価を行った。
【0247】
色調調整評価として、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々について、含まれるインキ組成物の混合比を調整し、可視光領域における調整可能な波長領域を確認した。評価基準を下記に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0248】
A:幅広い色調に調色可能。
B:幅広い色調にやや調整可能。
C:幅広い色調に調整不可能。
【0249】
―花咲き現象評価―
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、花咲き現象を評価した。詳細には、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々に含まれるイエロー色のインキ組成物を、花咲き現象の評価に用いた。
【0250】
イエロー色のインキ組成物を樹脂製のコンバーター(株式会社パイロットコーポレーション製、CON-40、インキ容量0.4ml)に開口部から0.4ml注入した。このコンバーターを、万年筆形態のペン先を有する筆記具(株式会社パイロットコーポレーション製、万年筆、商品名:カクノ(字幅M))に装着した。この筆記具を試験用ペンAとした。そして、試験用ペンAを暫くペン先下向き状態にし、充填されたインキ組成物をペン先まで流入させ、筆記可能な状態とし、20℃、湿度65%の環境下に、ペン先を水平方向に向けた状態としたまま、キャップを装着せずに4週間放置した。そして、試験用ペンAのペン先への着色剤や尿素等の固形分の析出状態を評価した。花咲き現象の評価基準を下記に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0251】
花咲き現象の評価基準
A:析出が全く発生しない(すなわち、花咲き現象の発生なし)。
B:析出が発生(すなわち、花咲き現象の発生あり)。
C:析出が多量に発生(すなわち、花咲き現象の評価基準Bに比べて、より顕著な発生が確認できる)。
【0252】
―インキ安定性評価―
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、混合時のインキ安定性を評価した。詳細には、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々について、シアン色のインキ組成物、マゼンタ色のインキ組成物、およびイエロー色のインキ組成物を、1対1対1の質量比で混合しインキを調整した。調整したインキをガラス製の容器(アズワン株式会社製,製品名ラボランスクリュー管瓶50ml)に50ml入れ、容器に蓋をした状態で、50℃環境下に12週間放置した。そして、容器の底部からインキを採取し、当該インキを顕微鏡観察により観察した。インキ安定性評価の評価基準を下記に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0253】
インキ安定性評価の評価基準
A:析出物が全く見られない。
B:析出物が観察される。
【0254】
―インキ発色鮮明性評価―
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、混合時のインキにより得られる筆跡の発色鮮明性を評価した。詳細には、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々について、含まれるイエロー色のインキ組成物と、シアン色のインキ組成物、を質量比で49対1の混合比で混合し、インキを調整した。
【0255】
調整したインキを、樹脂製のコンバーター(株式会社パイロットコーポレーション製、CON-40、インキ容量0.4ml)に開口部から0.4ml注入した。このコンバーターを、万年筆形態のペン先を有する筆記具(株式会社パイロットコーポレーション製、万年筆、商品名:カクノ(字幅M))に装着した。この筆記具を試験用ペンBとした。この試験用ペンBを暫くペン先下向き状態にし、充填されたインキをペン先まで流入させ、筆記可能な状態とした。そして、試験用ペンBで任意の文字を筆記し、得られた筆跡の状態を目視により観察し、インキ発色鮮明性を評価した。インキ発色鮮明性評価の評価基準を下記に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0256】
インキ発色鮮明性評価の評価基準
A:鮮やかな色調を調整可能。
B:色調がくすみ、鮮やかな色調を調整不可能。
【0257】
―ボタ落ち評価―
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、ボタ落ちを評価した。詳細には、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々に含まれる透明色のインキ組成物をボタ落ちの評価に用いた。
【0258】
透明色のインキ組成物を、樹脂製のインキ貯蔵体(インキ容量0.9ml)に、その開口部から0.3ml注入した。このインキ貯蔵体を、金メッキしたステンレス製の字幅Mのペン先を有し、一時的にインキを貯留するくし溝とインキ流通路と空気通路を有するペン芯を備えたノック式の万年筆(株式会社パイロットコーポレーション製、商品名:キャップレス(字幅M))に装着した。この筆記具を試験用ペンCとした。
【0259】
作製した試験用ペンCを、ペン先下向き状態にし、減圧デシケータ中に静置した。この状態で、5分間でデシケータ内を大気圧との相対圧力で-70mmHgまで減圧させた。その後、大気圧との相対圧力で-70mmHgの減圧状態を保持したまま、更に5分間、デシケータ中に試験用ペンCを放置した。減圧時および減圧状態の保持時における、試験用ペンCのペン先からのインキの漏れ出しであるボタ落ちの有無を確認した。ボタ落ち評価の評価基準を以下に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0260】
ボタ落ち評価の評価基準
A:ペン先からのインキ組成物のボタ落ち発生なし。
B:ペン先からのインキ組成物のボタ落ち発生あり。
【0261】
―滲み・裏抜け評価―
実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセット、および比較例1~比較例6の比較水性インキセットの各々について、滲み・裏抜けを評価した。詳細には、筆記具用水性インキセットおよび比較水性インキセットの各々に含まれるマゼンタ色のインキ組成物を滲み・裏抜けの評価に用いた。
【0262】
マゼンタ色のインキ組成物を樹脂製のコンバーター(株式会社パイロットコーポレーション製、CON-40、インキ容量0.4ml)に開口部から0.4ml注入した。このコンバーターを、万年筆形態のペン先を有する筆記具(株式会社パイロットコーポレーション製、万年筆、商品名:カクノ(字幅M))に装着した。この筆記具を試験用ペンDとした。作製した試験用ペンDを、ペン先下向き状態にし、充填されたインキ組成物をペン先まで流入させ、筆記可能な状態とした。その状態で、筆記試験用紙(JIS P3201 筆記用紙A)上に「永」という文字(文字の大きさは縦横約1cm)を筆記した。筆記したインキによる筆跡の滲み・裏抜けを評価した。滲み・裏抜けの評価基準を以下に示した。また、評価結果を表3および表4に示した。
【0263】
滲み・裏抜けの評価基準
A:滲みおよび裏抜けがない。
B:微少な滲みおよび裏抜けがある。
C:滲みおよび裏抜けがあるが、実用上問題なし。
【0264】
上記評価結果から明らかなように、実施例1~実施例17の筆記具用水性インキセットは、比較例1~比較例6の比較水性インキセットに比べて、幅広い色調に調整可能であった。
【0265】
また、実施例1~実施例3に示すように、ブラック色のインキ組成物を含む実施例1の筆記具用水性インキセットは、ブラック色のインキ組成物を含まない実施例2および実施例3の筆記具用水性インキセットに比べて、更に幅広い色調に調整可能であった。
【0266】
また、着色剤としてタートラジンを用いたイエロー色のインキ組成物による実施例1~実施例4および実施例11~実施例17は、タートラジン以外の着色剤を用いたイエロー色のインキ組成物による実施例5~実施例10に比べて、良好なインキ発色鮮明性の評価結果が得られた。
【0267】
また、着色剤としてタートラジンを用いたイエロー色のインキ組成物による実施例1~実施例4および実施例11~実施例17の内、多価アルコールおよびアルカノールアミンを含む実施例11、多価アルコール、アルカノールアミン、および尿素を含む実施例1~実施例4、実施例12~実施例13、並びに実施例15~実施例17は、多価アルコール、アルカノールアミン、および尿素を含まない実施例14に比べて、花咲き現象の発生が抑制された。
【0268】
また、含まれる複数のインキ組成物の水性媒体の主成分が同一、および、着色剤の含有量の差が0質量%以上1.0質量%未満、の双方の要件を満たす実施例1~実施例6、実施例9、および実施例10は、これらの主成分および含有量の少なくとも一方を満たさない実施例7~実施例8および実施例11~実施例17に比べて、インキ安定性について良好な評価結果が得られた。
【0269】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含むマゼンタ色のインキ組成物を用いた実施例1~実施例16は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含まないマゼンタ色のインキ組成物を用いた実施例17に比べて、滲み・裏抜け評価で良好な結果が得られた。
【0270】
なお、上記には、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明によるインキ色提供装置10は、万年筆、ボールペン、筆ペン、カリグラフィー用のペン、つけペン、各種マーカー類等の各種の筆記具に用いられるインキの所望色の実現方法を提供することができる。