(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044414
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
B62K 23/04 20060101AFI20230323BHJP
B62J 45/413 20200101ALI20230323BHJP
B62K 23/02 20060101ALI20230323BHJP
F02D 11/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B62K23/04
B62J45/413
B62K23/02
F02D11/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152436
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 健生
【テーマコード(参考)】
3D013
3G065
【Fターム(参考)】
3D013CH01
3G065BA01
3G065CA22
3G065JA03
(57)【要約】
【課題】第1ケース部材及び第2ケース部材の開口に対してスロットルグリップの基端部を設定された正規の向きで容易に組付けることができるスロットルグリップ装置を提供する。
【解決手段】磁気センサ7で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされるスロットルグリップ装置であって、スロットルグリップGの基端部は、周方向の所定範囲に亘って形成された第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcを有し、当該第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcは、スロットルグリップGの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcに応じた位置に第1支持部Sa3及び第2支持部Sb3がそれぞれ突出形成されたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルバーに取り付けられ、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
前記スロットルグリップの基端部を挿通する開口が形成されるとともに、前記連動部材及び回転角度検出手段が収容された第1ケース部材及び第2ケース部材と、
前記第1ケース部材及び第2ケース部材にそれぞれ突出形成され、突端が前記ハンドルバーの外周面に当接して当該第1ケース部材及び第2ケース部材を支持するとともに、前記スロットルグリップの基端部と対峙して位置決めする第1支持部及び第2支持部と、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされるスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップの基端部は、周方向の所定範囲に亘って形成された第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部を有し、当該第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部は、前記スロットルグリップの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、前記第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部に応じた位置に前記第1支持部及び第2支持部がそれぞれ突出形成されたことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記第1フランジ領域と第2フランジ領域との境界部に前記オフセットに応じた段部が形成されるとともに、前記第1ケース部材及び第2ケース部材の少なくとも一方の開口縁部には、前記段部と当接して前記スロットルグリップの回転範囲を規制するストッパ部が形成されたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記第1ケース部材の開口は、前記第2ケース部材の開口より径寸法が大きく設定されるとともに、前記第1ケース部材の開口と前記スロットルグリップの基端部との間の間隙は、前記第1フランジ領域部で覆われ、且つ、前記第2ケース部材の開口縁部は、前記スロットルグリップの基端部における前記第2フランジ領域部を覆って抜け止め可能な抜け止め部が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記スロットルグリップの基端部における前記第2フランジ領域部は、前記第2支持部と前記抜け止め部との間に位置して取り付けられたことを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記第1ケース部材及び第2ケース部材は、車両の種々電装品を操作する操作スイッチが形成されたハンドルスイッチケースから成ることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたものが普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スロットルグリップと係合して連動する連動部材と、連動部材の回転角度を検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出する磁気センサと、スロットルグリップの基端部を挿通する開口が形成されるとともに、前記連動部材及び回転角度検出手段が収容された第1ケース部材及び第2ケース部材とを有し、回転角度検出手段で検出されたスロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスロットルグリップ装置においては、スロットルグリップの基端部が周方向及び軸方向に対称形状とされていたため、誤った向きで第1ケース部材及び第2ケース部材の開口に組付けてしまう虞があった。特に、第1ケース部材及び第2ケース部材の開口縁部にスロットルグリップの回転範囲を規制するためのストッパ部が形成されている場合、第1ケース部材及び第2ケース部材の開口にスロットルグリップを誤った向きで組付けてしまうと、スロットルグリップの回転範囲を正規位置で規制することができない不具合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、第1ケース部材及び第2ケース部材の開口に対してスロットルグリップの基端部を設定された正規の向きで容易に組付けることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両のハンドルバーに取り付けられ、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、前記スロットルグリップの基端部を挿通する開口が形成されるとともに、前記連動部材及び回転角度検出手段が収容された第1ケース部材及び第2ケース部材と、前記第1ケース部材及び第2ケース部材にそれぞれ突出形成され、突端が前記ハンドルバーの外周面に当接して当該第1ケース部材及び第2ケース部材を支持するとともに、前記スロットルグリップの基端部と対峙して位置決めする第1支持部及び第2支持部とを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされるスロットルグリップ装置であって、前記スロットルグリップの基端部は、周方向の所定範囲に亘って形成された第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部を有し、当該第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部は、前記スロットルグリップの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、前記第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部に応じた位置に前記第1支持部及び第2支持部がそれぞれ突出形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記第1フランジ領域と第2フランジ領域との境界部に前記オフセットに応じた段部が形成されるとともに、前記第1ケース部材及び第2ケース部材の少なくとも一方の開口縁部には、前記段部と当接して前記スロットルグリップの回転範囲を規制するストッパ部が形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記第1ケース部材の開口は、前記第2ケース部材の開口より径寸法が大きく設定されるとともに、前記第1ケース部材の開口と前記スロットルグリップの基端部との間の間隙は、前記第1フランジ領域部で覆われ、且つ、前記第2ケース部材の開口縁部は、前記スロットルグリップの基端部における前記第2フランジ領域部を覆って抜け止め可能な抜け止め部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記スロットルグリップの基端部における前記第2フランジ領域部は、前記第2支持部と前記抜け止め部との間に位置して取り付けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記第1ケース部材及び第2ケース部材は、車両の種々電装品を操作する操作スイッチが形成されたハンドルスイッチケースから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部は、スロットルグリップの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部に応じた位置に第1支持部及び第2支持部がそれぞれ突出形成されたので、第1ケース部材及び第2ケース部材の開口に対してスロットルグリップの基端部を設定された正規の向きで容易に組付けることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、第1フランジ領域と第2フランジ領域との境界部にオフセットに応じた段部が形成されるとともに、第1ケース部材及び第2ケース部材の少なくとも一方の開口縁部には、段部と当接してスロットルグリップの回転範囲を規制するストッパ部が形成されたので、第1フランジ領域と第2フランジ領域との間のオフセットを利用してストッパ部に当接する段部を形成することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、第1ケース部材の開口は、第2ケース部材の開口より径寸法が大きく設定されるとともに、第1ケース部材の開口とスロットルグリップの基端部との間の間隙は、第1フランジ領域部で覆われ、且つ、第2ケース部材の開口縁部は、スロットルグリップの基端部における第2フランジ領域部を覆って抜け止め可能な抜け止め部が形成されたので、第1ケース部材に対するスロットルグリップの組付け時の作業性を向上させつつ第1ケース部材の開口とスロットルグリップの基端部との間の間隙を第1フランジ領域部で覆って防塵性を向上することができるとともに、スロットルグリップの引っ張り方向の荷重に十分耐えて抜け止めすることができる。
【0015】
すなわち、開口寸法の大きい第1ケース部材の開口にスロットルグリップの基端部を取り付けた後、第2ケース部材を第1ケース部材に組付けることにより、スロットルグリップの組付け時の作業性を向上させることができるとともに、第1ケース部材の開口とスロットルグリップの基端部との間隙を第1フランジ領域部で覆うことにより目隠しして防塵性を向上させることができ、且つ、スロットルグリップに対して引っ張り方向の荷重が付与されたとき、抜け止め部によってスロットルグリップを確実に抜け止めすることができるのである。
【0016】
請求項4の発明によれば、スロットルグリップの基端部における第2フランジ領域部は、第2支持部と抜け止め部との間に位置して取り付けられたので、第2フランジ領域部を第2支持部と抜け止め部との間に保持するとともに、スロットルグリップに対する引っ張り方向の荷重が付与されたとき、第2フランジ領域部が抜け止め部と当接して引っ張り方向の荷重に十分耐えることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、第1ケース部材及び第2ケース部材は、車両の種々電装品を操作する操作スイッチが形成されたハンドルスイッチケースから成るので、連動部材及び回転角度検出手段を収容する機能と、ハンドルスイッチとしての機能とを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置を示す斜視図
【
図4】同スロットルグリップ装置の第2ケース部材を取り外した状態を示す斜視図
【
図5】同スロットルグリップ装置の第2ケース部材を取り外した状態を示す正面図
【
図6】同スロットルグリップ装置の収容ケース(当該収容ケースに部品が収容された状態)を示す斜視図
【
図7】同スロットルグリップ装置の収容ケース(当該収容ケースに部品が収容された状態)を示す正面図及び側面図
【
図9】同スロットルグリップ装置の収容ケースから蓋部材を取り外した状態を示す斜視図
【
図10】同スロットルグリップ装置の収容ケースから蓋部材を取り外した状態を示す正面図
【
図11】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図
【
図12】同スロットルグリップの基端部を示す正面図及び側面図
【
図13】同スロットルグリップ装置の第1ケース部材を示す斜視図
【
図15】同スロットルグリップ装置の第2ケース部材を示す斜視図
【
図17】同スロットルグリップ装置における第1ケース部材、第2ケース部材及びスロットルグリップを示す分解斜視図
【
図18】同スロットルグリップ装置における第1ケース部材、第2ケース部材及びスロットルグリップを示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、二輪車のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送るためのもので、
図1~12に示すように、スロットルグリップGと、ハンドルスイッチケースSと、収容ケース1と、連動部材2と、付勢力付与手段3と、ねじりコイルバネ4と、コイルスプリング5と、回転部材6と、磁気センサ7(回転角度検出手段)とを有して構成されている。なお、図中符号h1、h2は、磁気センサ7及び操作スイッチMから延設された配線を示している。
【0020】
収容ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたハンドルスイッチケースS内に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2、付勢力付与手段3及び回転部材6等を回転自在に保持するものである。また、収容ケース1には、蓋部材Fが取り付けられており、当該蓋部材Fに開口Faが形成され、連動部材2の正面(係合部2aが形成された面)を外部に臨ませた状態としている。
【0021】
スロットルグリップGは、ハンドルスイッチケースSから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、
図1に示すように、初期位置から軸回りに所定方向の正回転a及び当該所定方向とは逆方向の逆回転bが可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端部には、
図11、12に示すように、一対の突出部から成る係合部Gaが形成されており、係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(
図6、7等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0022】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの正回転a及び逆回転bに連動して回転し得るものである。また、本実施形態に係る連動部材2は、
図9、10に示すように、一対の被係合部2aの他、外周縁の一部にギア部2bが形成されており、当該ギア部2bが回転部材6の外周縁全域に亘って形成されたギア部6bと噛み合って組付けられている。
【0023】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凹形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、スロットルグリップGの回転に伴って連動部材2も回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、コイルスプリング5が取り付けられている。
【0024】
回転部材6は、連動部材2のギア部2bと噛み合ったギア部6bを有し、連動部材2と連動して回転し得るもので、収容ケース1の所定位置に収容されるとともに、軸L(
図8~10参照)を中心として回転自在とされている。このような構成により、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて回転部材6が軸Lを中心として回転するようになっている。
【0025】
また、軸Lには、磁石6aが取り付けられており、回転部材6と共に当該磁石6aが回転し、その回転に伴って磁石6aから生じる磁力が変化するよう構成されている。かかる磁石6aと対向する位置には、基板8が固定されており、当該基板8には回転角度検出手段としての磁気センサ7が取り付けられている。なお、磁石6a及び基板8の周囲には、磁気を遮蔽するシールドケースEが取り付けられている。
【0026】
磁気センサ7(回転角度検出手段)は、磁気の変化を検出可能なセンサから成り、回転部材6と共に回転する磁石6aから生じる磁気の変化を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ7は、磁石6aの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。
【0027】
そして、スロットルグリップGが正回転aするのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材6も連動して回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石6aも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。
【0028】
一方、スロットルグリップGが逆回転bするのに伴って連動部材が同方向に回転すると、回転部材6も連動して回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石6aも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、スロットルグリップGの逆回転bを検出することができる。
【0029】
このように、スロットルグリップGの逆回転bが検出されると、二輪車が具備する所定の機能を作動又は非作動とすることができるようになっている。本実施形態においては、走行速度を一定に保持する定車速保持装置(オートクルーズ装置)を備えた二輪車に適用されており、スロットルグリップGを逆回転b(初期位置からスロットルを全開させる正回転aの方向とは逆方向の回転操作)させると、当該定車速の保持制御を停止(キャンセル)させ得るよう構成されている。
【0030】
ねじりコイルバネ4は、一端が収容ケース1に固定されつつ他端が連動部材1に固定されて組付けられ、スロットルグリップGが正回転aしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。すなわち、スロットルグリップGを正回転aさせると、ねじりコイルバネ4の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0031】
コイルスプリング5は、連動部材1に取り付けられ、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのものである。すなわち、スロットルグリップGを逆回転bさせると、コイルスプリング5の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0032】
付勢力付与手段3は、連動部材1と隣接した位置に取り付けられるとともに、スロットルグリップGが正回転aしたとき、コイルスプリング5の付勢力を連動部材2に付与させず(このとき、ねじりコイルバネ4の付勢力のみが連動部材に付与される)、スロットルグリップGが逆回転bしたとき、コイルスプリング5の付勢力を連動部材2に付与し得るよう構成されたものである。
【0033】
ハンドルスイッチケースSは、
図1、2に示すように、車両の種々電装品を操作する操作スイッチMが形成され、ハンドルバーHの先端部に固定されるもので、収容ケース1が固定される第1ケース部材Saと、第1ケース部材Saと合致して収容ケース1を覆う収容空間が形成される第2ケース部材Sbとを有して構成されている。すなわち、本実施形態に係るハンドルスイッチケースSは、半割形状の第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbを有して構成され、これらを合致させて形成される収容空間に連動部材2、磁気センサ7等が配設された収容ケース1を収容させているのである。
【0034】
第1ケース部材Saは、
図13、14に示すように、一方の側面にスロットルグリップGの基端部を挿通する開口Sa1が形成されるとともに、他方の側面にハンドルバーHを挿通させる開口Sa2が形成されている。そして、第1ケース部材Saは、
図4、5に示すように、連動部材2や磁気センサ7等が収容された収容ケース1が組付けられるとともに、その収容ケース1に収容された連動部材2にスロットルグリップGが取り付けられるようになっている。
【0035】
さらに、第1ケース部材Saの開口Sa1より内側部位には、第1支持部Sa3が突出形成されている。かかる第1支持部Sa3は、その突端がハンドルバーHの外周面に当接して第1ケース部材Saを上下方向に対して支持するとともに、スロットルグリップGの基端部と対峙して当該スロットルグリップGを押し込む方向(
図3における左方向)に対して位置決めするようになっている。
【0036】
第2カバー部材Sbは、
図15、16に示すように、一方の側面にスロットルグリップGの基端部を挿通させる開口Sb1が形成されるとともに、他方の側面にハンドルバーHを挿通させる開口Sb2が形成されている。また、第2カバー部材Sbは、車両の種々電装品を操作する操作スイッチMが取り付けられており、収容ケース1が組付けられた第1ケース部材Saと合致して組付けられることにより、ハンドルスイッチケースSを構成する。
【0037】
さらに、第2ケース部材Sbの開口Sb1より内側部位には、第2支持部Sb3が突出形成されている。かかる第2支持部Sb3は、その突端がハンドルバーHの外周面に当接して当該第2ケース部材Sbを上下方向に対して支持するとともに、スロットルグリップGの基端部と対峙して当該スロットルグリップGを押し込む方向(
図3における左方向)に対して位置決めするようになっている。
【0038】
ここで、本実施形態に係るスロットルグリップGの基端部は、
図11、12に示すように、係合部Gaに加えて、周方向の所定範囲に亘って形成された第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcを有し、当該第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcは、
図12に示すように、スロットルグリップGの軸方向(同図左右方向)に対して所定寸法tだけオフセットした位置にそれぞれ形成されている。また、第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbには、第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcに応じた位置に第1支持部Sa3及び第2支持部Sb3がそれぞれ突出形成されている。
【0039】
より具体的には、スロットルグリップGの基端部には、周方向に延設されたフランジが形成されており、当該フランジには、
図11、12に示すように、1対の係合部Gaと、第1フランジ領域部Gbと、第2フランジ領域部Gcとが周方向に亘って形成されるとともに、第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcが互いに軸方向にオフセットしている(ずれている)のである。
【0040】
第1フランジ領域部Gbは、第2フランジ領域GcよりスロットルグリップGの先端側(
図12の右側)に形成された領域から成り、
図3に示すように、第1ケース部材Saの開口Sa1にスロットルグリップGの基端部が取り付けられた状態において、第1支持部Sa3と対峙するようになっている。すなわち、第1支持部Sa3は、
図17に示すように、第1フランジ領域部Gbに応じた位置に突出形成されており、第1ケース部材Saの開口Sa1にスロットルグリップGの基端部を組付ける際、第1フランジ領域部Gbと対峙してスロットルグリップGの基端部を押し込み方向に対して位置決め可能とされている。
【0041】
第2フランジ領域部Gcは、第1フランジ領域GbよりスロットルグリップGの基端側(
図12の左側)に形成された領域から成り、
図3に示すように、第2ケース部材Sbの開口Sb1にスロットルグリップGの基端部が取り付けられた状態において、第2支持部Sb3と対峙するようになっている。すなわち、第2支持部Sb3は、
図18に示すように、第2フランジ領域部Gcに応じた位置に突出形成されており、第2ケース部材Sbの開口Sb1にスロットルグリップGの基端部を組付ける際、第2フランジ領域部Gcと対峙してスロットルグリップGの基端部を押し込み方向に対して位置決め可能とされている。
【0042】
また、
図1、2に示すように、第1ケース部材Saの開口Sa1は、第2ケース部材Sbの開口Sb1より径寸法が大きく設定(開口Sa1の開口径>開口Sb1の開口径に設定)されるとともに、第1ケース部材Saの開口Sa1とスロットルグリップGの基端部との間の間隙は、第1フランジ領域部Gbで覆われ、且つ、第2ケース部材Sbの開口Sb1の縁部は、スロットルグリップGの基端部における第2フランジ領域部Gcを覆って抜け止め可能な抜け止め部Sb4が形成されている。
【0043】
すなわち、第1ケース部材Saの開口Sa1は、大きく開口してスロットルグリップGの組付け性を良好にするとともに、大きく開口したことで生じた第1ケース部材Saの開口Sa1とスロットルグリップGの基端部との間の間隙は、スロットルグリップGの基端部に形成された第1フランジ領域部Gbで覆われるようになっている。また、第2ケース部材Sbの開口Sb1は、開口Sa1より小さく開口したことでスロットルグリップGの基端部に形成された第2フランジ領域部Gcを覆って抜け止め可能な抜け止め部Sb4を形成可能とされている。
【0044】
一方、スロットルグリップGの基端部における第2フランジ領域部Gcは、
図3に示すように、第2支持部Sb3と抜け止め部Sb4との間に位置して取り付けられることとなる。すなわち、
図15、16に示すように、第2支持部Sb3と抜け止め部Sb4との間には、第2フランジ領域部Gcの厚さ寸法に応じた間隙が形成されており、第2ケース部材Sbの開口Sb1にスロットルグリップGの基端部が取り付けられた状態において、当該間隙に第2フランジ領域部Gcが嵌入するようになっている。
【0045】
これにより、第2フランジ領域部Gcの一方の面は、第2支持部Sb3と対峙するとともに、当該第2フランジ領域部Gcの他方の面は、抜け止め部Sb4と対峙することとなる。したがって、スロットルグリップGに対して引っ張り方向の荷重が付与された場合、第2フランジ領域部Gcの他方面が第2支持部Sb3と当接して荷重に十分耐えつつ抜け止め可能とされている。
【0046】
さらに、スロットルグリップGの基端部には、
図12に示すように、第1フランジ領域Gbと第2フランジ領域Gcとの境界部にオフセットに応じた一対の段部Gd(周方向に一方の段部Gdと他方の段部Gdの2つ)が形成されるとともに、第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbの少なくとも一方の開口(Sa1、Sb1)の縁部(本実施形態においては、第2ケース部材Sbの開口Sb1の縁部)には、
図1、15、16に示すように、段部Gdと当接してスロットルグリップGの回転範囲を規制するストッパ部P(一方の段部Gdと当接する一方のストッパ部Pと、他方の段部Gdと当接する他方のストッパ部Pの2つ)が形成されている。
【0047】
これにより、スロットルグリップGが正回転aする過程において、上限の回転角度に達した際に一方の段部Gdが一方のストッパ部Pと干渉し、更なる正回転aの回転操作を規制することができるとともに、スロットルグリップGが逆回転bする過程において、上限の回転角度に達した際に他方の段部Gdが他方のストッパ部Pと干渉し、更なる逆回転bの回転操作を規制することができる。
【0048】
次に、スロットルグリップGの組み付け方法について説明する。
まず、連動部材2や磁気センサ7等が組み付けられた収容ケース1を第1ケース部材Sa内の所定位置にネジ等にて固定した後、
図4、5に示すように、スロットルグリップGの基端部を開口Sa1に挿通させる。このとき、スロットルグリップGの基端部における第1フランジ領域部Gbが第1ケース部材Saの第1支持部Sa3と対峙することとなる。これにより、スロットルグリップGに対して押し込み方向の荷重が付与された場合、第1フランジ領域部Gbの一方の面が第1支持部Sa3と当接して荷重に十分耐えることができる。
【0049】
その後、第1ケース部材Saに第2ケース部材Sbを組付けてハンドルスイッチケースSを構成する。このとき、スロットルグリップGの基端部における第2フランジ領域部Gcが第2ケース部材Sbの第2支持部Sb3と対峙することとなる。このようにして、ハンドルスイッチケースS内にケース1を収容しつつスロットルグリップGが組み付けられたスロットルグリップ装置を得ることができる。
【0050】
本実施形態によれば、第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcは、スロットルグリップGの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、第1フランジ領域部Gb及び第2フランジ領域部Gcに応じた位置に第1支持部Sa3及び第2支持部Sb3がそれぞれ突出形成されたので、第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbの開口(Sa1、Sb1)に対してスロットルグリップGの基端部を設定された正規の向きで容易に組付けることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第1フランジ領域Gbと第2フランジ領域Gcとの境界部にオフセットに応じた段部Gdが形成されるとともに、第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbの少なくとも一方の開口縁部には、段部Gdと当接してスロットルグリップGの回転範囲を規制するストッパ部Pが形成されたので、第1フランジ領域Gbと第2フランジ領域Gcとの間のオフセットを利用してストッパ部Pに当接する段部Gdを形成することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、第1ケース部材Saの開口Sa1は、第2ケース部材Sbの開口Sb1より径寸法が大きく設定されるとともに、第1ケース部材Saの開口Sa1とスロットルグリップGの基端部との間の間隙は、第1フランジ領域部Gbで覆われ、且つ、第2ケース部材Sbの開口Sb1の縁部は、スロットルグリップGの基端部における第2フランジ領域部Gcを覆って抜け止め可能な抜け止め部Sb4が形成されたので、第1ケース部材Saに対するスロットルグリップGの組付け時の作業性を向上させつつ第1ケース部材Saの開口Sa1とスロットルグリップGの基端部との間の間隙を第1フランジ領域部Gbで覆って防塵性を向上することができるとともに、スロットルグリップGの引っ張り方向の荷重に十分耐えて抜け止めすることができる。
【0053】
すなわち、開口寸法の大きい第1ケース部材Saの開口Sa1にスロットルグリップGの基端部を取り付けた後、第2ケース部材Sbを第1ケース部材Saに組付けることにより、スロットルグリップGの組付け時の作業性を向上させることができるとともに、第1ケース部材Saの開口Sa1とスロットルグリップGの基端部との間隙を第1フランジ領域部Gbで覆うことにより目隠しして防塵性を向上させることができ、且つ、スロットルグリップGに対して引っ張り方向の荷重が付与されたとき、抜け止め部Sb4によってスロットルグリップGを確実に抜け止めすることができるのである。
【0054】
またさらに、スロットルグリップGの基端部における第2フランジ領域部Gcは、第2支持部Sb3と抜け止め部Sb4との間に位置して取り付けられたので、第2フランジ領域部Gcを第2支持部Sb3と抜け止め部Sb4との間に保持するとともに、スロットルグリップGに対する引っ張り方向の荷重が付与されたとき、第2フランジ領域部Gcが抜け止め部Sb4と当接して引っ張り方向の荷重に十分耐えることができる。
【0055】
加えて、第1ケース部材Sa及び第2ケース部材Sbは、車両の種々電装品を操作する操作スイッチMが形成されたハンドルスイッチケースSから成るので、連動部材2及び磁気センサ7(回転角度検出手段)を収容(具体的には、連動部材2及び磁気センサ7等を有した収容ケース1を収容)する機能と、ハンドルスイッチとしての機能とを兼ね備えることができる。
【0056】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば本実施形態の如くスロットルグリップGが正回転a及び逆回転bが可能なものに限らず、専ら正回転aの回転操作が可能なスロットルグリップGを具備したものであってもよく、ねじりコイルバネ4及びコイルスプリング5とは異なる形態の付勢手段を具備したもの、或いは何れか一方の付勢手段を具備したものであってもよい。
【0057】
さらに、本実施形態においては、スロットルグリップGを逆回転bさせると、定車速保持装置(オートクルーズ装置)の定車速の保持制御を停止(キャンセル)させるよう構成されているが、スロットルグリップGの逆方向の回転を検知すると、車両が具備する所定の機能を作動又は非作動するものであれば足りる。例えば、スロットルグリップGの逆方向の回転により、イモビシステムやスマートエントリシステムにおける認証開始、エンジンを始動させるスタータの作動、ハザード等の緊急時点灯手段の作動等を行わせるものとしてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
スロットルグリップの基端部は、周方向の所定範囲に亘って形成された第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部を有し、当該第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部は、スロットルグリップの軸方向に対して所定寸法オフセットした位置にそれぞれ形成されるとともに、第1フランジ領域部及び第2フランジ領域部に応じた位置に第1支持部及び第2支持部がそれぞれ突出形成されたスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 収容ケース
2 連動部材
2a 被係合部
2b ギア部
3 付勢力付与手段
4 ねじりコイルバネ
5 コイルスプリング
6 回転部材
6a 磁石
6b ギア部
7 磁気センサ(回転角度検出手段)
8 プリント基板
G スロットルグリップ
Ga 係合部
Gb 第1フランジ領域部
Gc 第2フランジ領域部
Gd 段部
S ハンドルスイッチケース
Sa 第1ケース部材
Sb 第2ケース部材
Sa1、Sa2 開口
Sb1、Sb2 開口
Sa3 第1支持部
Sb3 第2支持部
Sb4 抜け止め部
M 操作スイッチ
H ハンドルバー
h1、h2 配線
E シールドケース
F 蓋部材
Fa 開口
L 回転軸