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  • 特開-加熱殺菌発酵乳及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044444
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】加熱殺菌発酵乳及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
A23C9/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152477
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】519032767
【氏名又は名称】株式会社エルビー
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】永里 太暉
(72)【発明者】
【氏名】満月 眞寿
(72)【発明者】
【氏名】國光 真奈美
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC36
4B001AC43
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC14
4B001EC01
(57)【要約】
【課題】加熱殺菌及び常温長期保管しても自然な風味が損なわれることがない加熱殺菌発酵乳を提供する。
【解決手段】酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を含み加熱殺菌してなる発酵乳。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を含み加熱殺菌してなることを特徴とする加熱殺菌発酵乳。
【請求項2】
前記炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類を含む香料が酪酸ブチル、オクタン酸プロピル、デカン酸プロピルから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の加熱殺菌発酵乳。
【請求項3】
未殺菌の原料用発酵乳に酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を添加した後に加熱殺菌することを特徴とする加熱殺菌発酵乳の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱殺菌発酵乳及びその製造方法に関する。詳しくは、加熱殺菌及び常温長期保管しても自然な風味が損なわれることがない加熱殺菌発酵乳及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳には、加熱殺菌により使用可能期間が延長されるように処理されたものも提供されているが、加熱殺菌によっても、また、常温長期保管中にも自然な風味が損なわれることが多い。
【0003】
従来、加熱殺菌によって損なわれる自然なプレーンヨーグルト風味や、香料添加による香味バランスの崩れや人工感のない飲食品原料用発酵乳および当該飲食品原料用発酵乳とその製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
前記飲食品原料用発酵乳は、炭素数が2個~6個の酸類及び炭素数が4個~10個のケトン類を含む香料、並びに乳酸酸度が1.2%以上の発酵乳を含んでなる加熱殺菌発酵乳を含有することを特徴とする。
【0005】
前記製造方法は、乳を12時間以上培養して乳酸酸度が1.2%以上の発酵乳とする発酵工程と、前記発酵乳に炭素数が2個~6個の酸類、および炭素数が4個~10個のケトン類を含む香料を添加して未加熱原料とする工程と、前記未加熱原料を加熱殺菌することを特徴とする飲食品原料用発酵乳の製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-180307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加熱殺菌及び常温長期保管しても自然な風味が損なわれることがない加熱殺菌発酵乳及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の加熱殺菌発酵乳は、酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を含み加熱殺菌してなることを特徴とする(請求項1)。前記本発明の加熱殺菌発酵乳は、酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を含有することにより加熱殺菌にもかかわらず常温長期保管しても自然の風味が損なわれることがない。
【0009】
なお、前記酸化防止剤としては、ローズマリー抽出物、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、ブドウ種子抽出物、ヤマモモ抽出物、ビタミンC、ルチン、酵素処理ルチン、酵素処理イソクエルシトリン等を使用することができる。
【0010】
本発明の実施の一形態は、前記炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類を含む香料が酪酸ブチル、オクタン酸プロピル、デカン酸プロピルから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする(請求項2)。
【0011】
この実施の一形態によれば、加熱殺菌にもかかわらず常温長期保管しても自然の風味を損なうことがないとともに香味バランスを保つことができる。
【0012】
前記課題を解決する本発明の加熱殺菌発酵乳の製造方法は、未殺菌の原料用発酵乳に酸化防止剤及び炭素数が4~10個の脂肪酸からなる脂肪酸エステル類の香料を添加した後に加熱殺菌することを特徴とする(請求項3)。この実施の一形態によれば、前記の加熱殺菌発酵乳を有効に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
前記本発明の加熱殺菌発酵乳は、加熱殺菌及び常温長期保管しても自然な風味が損なわれることがない効果を有する。また、前記の製造方法によれば該効果を有する加熱殺菌発酵乳を有効に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の加熱殺菌発酵乳の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0016】
まず、原料用発酵乳についてその製造方法の一例を説明する。
【0017】
培養タンクに原料の乳及び乳製品(乳等政令)と該使用する原料が水を必要とする場合には必要量の加水を行い撹拌溶解して発酵に用いる乳原料を得る。
【0018】
つぎに加熱処理を行う。加熱処理は乳等省令に63℃で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法と定められていることに応じて行われた。
【0019】
つぎに冷却処理を行う。冷却処理は使用する乳酸菌により至適温度に合わせて行う。続いてスターターの添加を行う。一例としてフリーズドライの固形乳酸菌が添加された。
【0020】
つぎに発酵処理を行う。発酵処理は使用する乳酸菌により発酵条件が決定される。一般的には至適温度は20~50℃程度とされている。また、発酵時間は5~24時間程度と菌種と発酵温度により幅が広くなっている。
【0021】
前記の各工程を経て原料用発酵乳の製造が行われた。なお、乳等省令の乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり)10,000,000以上であることを確認した。
【0022】
つぎに、本発明の加熱殺菌発酵乳の製造方法の一例を説明する。
【0023】
図1はフローチャートである。なお、フローチャートに示された工程順序は固定されたものではない。
【0024】
同図において、原料用発酵乳と副原料の配合比はそれぞれ50.00重量%である。まず、調合タンクにおいて原料用発酵乳及び副原料を供給及び撹拌混合が行われる。つぎに順次、均質化処理、加熱殺菌処理、冷却処理及び密封充填工程を経て加熱殺菌発酵乳が製造された。
【0025】
前記の副原料の一例は以下の通りである。安定化剤:ペクチン、カラギナン、ジェランガム、大豆多糖類等、酸化防止剤:前掲、甘味類:果糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料、酸味料:クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、リン酸又はそれらの塩類等、香料:株式会社サンアロマ社提供香料等。なお、上記の他、効果に影響のない範囲で他の成分を加えてもよい。
【0026】
なお、加熱殺菌処理は乳等省令に準じて条件で行った。乳等省令で、発酵乳には乳酸菌数10,000,000/ml以上の規定があり、また、「ただし、発酵させた後において、摂氏75度以上で15分間加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌したものは、この限りでない。」とされている。
【0027】
本発明の加熱殺菌発酵乳は、前記図1に示すように原料用発酵乳及び副原料を混合し、均質処理及び加熱処理によって製造される。さらに冷却及び容器に密封充填される。
【0028】
前記本発明の加熱殺菌乳酸菌発酵乳の官能評価は以下の通りである。
【0029】
※加熱殺菌工程時の官能評価(パネラー5名)。
【表1】
※◎:「マスキング効果あり」4名以上
〇:「マスキング効果あり」2~3名
×:「マスキング効果あり」1名以下
【0030】
前記加熱殺菌発酵乳の官能評価によれば喫食時有効濃度は0.0001ppb~10000ppbであり好ましい喫食時濃度は0.1ppb~100ppbである。
【0031】
マスキング効果が確認され、加熱殺菌によっても自然な風味が維持されていることが確認された。
【0032】
※常温長期保管後の官能評価(パネラー5名)。
【表2】
※ 試験条件 常温保管9ヶ月相当(加速試験)
※ ◎:「マスキング効果あり」4名以上
〇:「マスキング効果あり」2~3名
×:「マスキング効果あり」1名以下
【0033】
前記常温長期保管の官能評価によれば喫食時有効濃度は0.001ppb~10000ppbであり、好ましい喫食時濃度は0.1ppb~100ppbである。
【0034】
マスキング効果が確認され、常温長期保管後も自然な風味が維持されていることが確認された。
図1