IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

特開2023-44449情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム
<>
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図1
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図2
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図3
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図4
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図5
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図6
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図7
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図8
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図9
  • 特開-情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044449
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システム
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/00 20060101AFI20230323BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20230323BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20230323BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20230323BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B24B27/00 A
B24B49/10
G05B19/42 J
G05B19/4155 V
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152486
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB71
3C034CA16
3C034CB04
3C034DD20
3C158AA05
3C158AA16
3C158AB01
3C158AB03
3C158AB04
3C158AB06
3C158AC02
3C158BA02
3C158BA05
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158BC01
3C158CB07
3C269AB33
3C269BB03
3C269CC09
3C269EF02
3C269EF66
3C269MN26
3C269MN40
3C269MN44
3C269QB02
3C269SA17
3C269SA30
3C269SA31
3C269SA37
3C707AS12
3C707BS10
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX10
3C707LW12
3C707LW15
(57)【要約】
【課題】ロボットに、研磨する材料と、目的とする仕上げの種類とに応じた適切な研磨を実行させる。
【解決手段】情報処理装置(1A)のプロセッサ(10)は、材料情報と仕上げ情報とを入力情報として取得する取得ステップ(S11)と、材料情報および仕上げ情報に基づいて研磨条件を特定する特定ステップ(S12)と、特定した研磨条件で材料を研磨するよう、研磨ロボット(2A)を制御する教示ステップ(S13~14)と、を実行し、研磨条件には、材料の研磨機(3)への押し当て力を示すパラメータが含まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、研磨対象の材料に関する情報である材料情報と、研磨の仕上げの種類を示す仕上げ情報と、を入力情報として取得する取得ステップと、
前記入力情報に基づいて、前記研磨の仕方を示す情報である研磨条件を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて特定した前記研磨条件で前記材料を研磨するよう、研磨ロボットを制御する制御ステップと、を実行し、
前記研磨条件には、前記材料の研磨機への押し当て力を示すパラメータが含まれていることを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記制御ステップにおいて、
特定された前記研磨条件で前記研磨ロボットが研磨を実行するための教示データを作成する教示データ作成ステップと、
前記教示データ作成ステップにおいて作成した前記教示データを前記研磨ロボットに送信する教示データ送信ステップと、を実行することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得ステップにおいて取得される入力情報、または、前記特定ステップにおいて特定される前記研磨条件のいずれか一方には、前記研磨機の種類を示す研磨ツール情報が含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得ステップにおいて取得される入力情報、または、前記特定ステップにおいて特定される前記研磨条件のいずれか一方には、前記材料の研磨完了までに実行する研磨の種類および回数を示す研磨回数情報が含まれていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記特定ステップにおいて特定される前記研磨条件には、前記研磨ロボットの研磨スピードおよび前記研磨機の研磨スピードの少なくともいずれかを示す研磨スピード情報が含まれていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記特定ステップにおいて、
前記入力情報に含まれる各種情報と、前記研磨条件に含まれる各種情報との関係を機械学習させた学習済モデルに、前記入力情報の少なくとも一部の情報を入力することによって、前記研磨条件を推定する推定ステップを実行することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記入力情報と前記研磨条件とを組み合わせた学習用データを取得または作成する学習用データ準備ステップと、
前記学習用データを用いた教師あり学習によって、前記入力情報に含まれる各種情報と、前記研磨条件に含まれる各種情報との関係を機械学習させた学習済モデルを構築する学習済モデル構築ステップと、を実行する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
一または複数のプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
入力情報と研磨条件とを組み合わせた学習用データを取得または作成する学習用データ準備ステップと、
前記学習用データを用いた教師あり学習によって、前記入力情報に含まれる各種情報と、前記研磨条件に含まれる各種情報との関係を機械学習させた学習済モデルを構築する学習済モデル構築ステップと、を実行し、
前記入力情報は、研磨対象の材料に関する情報である材料情報と、研磨の仕上げの種類を示す仕上げ情報とを少なくとも含み、前記研磨条件は、材料の研磨機への押し当て力を示すパラメータを少なくとも含むことを特徴とする、情報処理装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置と通信する研磨ロボットであって、
研磨する材料をセットするためのロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
前記ロボットアームにセットされた前記材料の前記研磨機への押し当て力を測定する力覚センサと、を備え、
前記制御部は、前記情報処理装置の制御に従って前記ロボットアームを動作させることを特徴とする、研磨ロボット。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
請求項9に記載の研磨ロボットと、
前記研磨機と、を含むことを特徴とする、研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、研磨ロボット、および研磨システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料または金属材料等の研磨をロボットに行わせるための技術が種々開発されている。例えば、特許文献1には、半導体ウェハを研磨する研磨装置に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、仕上げ加工をする際の加工ツールの力制御に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-053550号公報
【特許文献2】特開2019-089144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の技術は、半導体ウェハという特定の研磨対象物を精度良く研磨するための技術である。換言すると、特許文献1に記載の技術では、研磨対象物の材質、および、研磨の仕上げの種類はほぼ固定である。一方、種々の材料を、所望の仕上がりまで研磨可能なロボットを実現したいという需要も存在する。
【0005】
本発明の一態様は、ロボットに、研磨する材料と、目的とする仕上げの種類とに応じた適切な研磨を実行させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、一または複数のプロセッサを備えた情報処理装置である。前記プロセッサは、研磨対象の材料に関する情報である材料情報と、研磨の仕上げの種類を示す仕上げ情報と、を入力情報として取得する取得ステップと、前記入力情報に基づいて、前記研磨の仕方を示す情報である研磨条件を特定する特定ステップと、前記特定ステップにおいて特定した前記研磨条件で前記材料を研磨するよう、研磨ロボットを制御する制御ステップと、を実行する。前記研磨条件には、前記材料の研磨機への押し当て力を示すパラメータが含まれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ロボットに、研磨する材料と、目的とする仕上げの種類とに応じた適切な研磨を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る研磨システムの概要を示す図である。
図2】実施形態1に係る研磨ロボットの構造の一例を示す図である。
図3】力覚センサの構造と、力覚センサが検出するパラメータとを示す図である。
図4】実施形態1に係る情報処理装置および研磨ロボットの内部構成を示すブロック図である。
図5】実施形態1に係る情報処理装置のメモリに格納されているデータを示す図である。
図6】実施形態1に係る情報処理装置のプロセッサにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係る学習システムの概要を示す図である。
図8】実施形態2に係る情報処理装置のメモリに格納されているデータを示す図である。
図9】実施形態2に係る情報処理装置のプロセッサにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態3に係る研磨システムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本実施形態に係る研磨システムは、研磨対象および仕上げ状態に応じた適切な研磨条件を特定するためのシステムである。また、本実施形態に係る研磨システムは、特定した研磨条件で研磨が行われるように、研磨ロボットを制御するためのシステムである。以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0010】
≪研磨システムの概要≫
図1は、本実施形態に係る研磨システム100の概要を示す図である。研磨システム100は、情報処理装置1Aと、研磨ロボット2Aと、研磨機3と、を含む。なお、図1では、情報処理装置1Aを操作するユーザ、および、研磨対象となるワークWも併せて図示している。情報処理装置1Aと研磨ロボット2Aは有線または無線で接続されている。また、情報処理装置1Aと研磨機3との間も有線または無線で接続されていてよい。
【0011】
(情報処理装置1A)
情報処理装置1Aは、自身に入力された情報から、研磨ロボット2Aが研磨機3を用いてワークWを適切に研磨するための研磨の仕方の諸条件(すなわち、研磨条件)を特定する。本実施形態では、情報処理装置1Aには材料情報および仕上げ情報が入力される。「材料情報」とは、研磨対象である材料(すなわち、ワークW)に関する情報である。材料に関する情報とは、例えば、材料の素材の種類および寸法である。「仕上げ情報」とは、研磨の仕上げの種類を示す情報である。仕上げの種類とは、例えば、荒仕上げ、艶消し仕上げ、鏡面仕上げ等、研磨完了後(すなわち、仕上げ後)のワークWの表面の状態の種類を示している。情報処理装置1Aには、この他にも、研磨条件の特定に影響する種々の情報が入力されてよい。これらの、研磨条件の特定のために入力される情報を、以降は「入力情報」と称する。
【0012】
ここで、「ワークWの研磨完了」とは、ワークWに対し、後述する教示データによって規定される一連の処置が完了したことを意味する。例えば、教示データがワークWの研磨のある一工程の研磨の動作を規定している場合、ワークWの研磨完了とは、当該一工程の研磨が完了したことを意味する。また例えば、教示データがワークWの出荷までの全工程の研磨の動作を規定している場合、ワークWの研磨完了とは、ワークWの全工程の研磨が完了したことを意味する。
【0013】
また、情報処理装置1Aは、研磨ロボット2Aを直接的に、または間接的に制御する装置である。なお、情報処理装置1Aと研磨機3とが接続されている場合、情報処理装置1Aは研磨機3の動作を制御してもよい。本実施形態では一例として、情報処理装置1Aは、研磨ロボット2Aに教示データを送信することとする。これにより、情報処理装置1Aは、研磨ロボット2Aを間接的に制御することができる。
【0014】
「教示データ」とは、研磨ロボット2Aに特定の動作を実行させるためのプログラムおよび/またはパラメータである。本実施形態における教示データは、研磨ロボット2AにワークWを研磨させるための一連の動作を実行させるためのプログラムおよび/またはパラメータである。情報処理装置1Aは、特定した研磨条件に応じた教示データを作成して、研磨ロボット2Aに送信する。そして、研磨ロボット2Aにおいてこの教示データに基づく動作が実行される。これにより、情報処理装置1Aは、教示データの規定通りに、研磨ロボット2AにワークWを研磨させることができる。
【0015】
(研磨ロボット2Aと研磨機3)
研磨ロボット2Aは、情報処理装置1Aの制御に従ってワークWを研磨するロボットである。研磨ロボット2Aの具体的な構造は後述する。研磨機3は、ワークWを研磨するための研磨材が取り付けられた機械である。本実施形態では、研磨機3は図1に示すように、金属やすり、紙やすり、ポリッシャー等の研磨材が円柱状の芯材の表面に取り付けられた構造をしている。研磨機3は、芯材をモータ等の動力で回転させることによって、研磨材を芯材とともに回転させる。研磨ロボット2Aは、自身のロボットアーム24の先に取り付けられたワークWを回転している研磨材に押し当てることで、ワークWを研磨する。
【0016】
(研磨システム100の動作概要)
図1に示すように、あるユーザが情報処理装置1Aに対して材料情報および仕上げ情報を入力すると、情報処理装置1Aは当該入力を受け付け、材料情報および仕上げ情報を取得する。情報処理装置1Aは取得した材料情報および仕上げ情報から、適切な研磨条件を特定する。「適切な研磨条件」とは、入力された材料情報が示す性質を有するワークを、入力された仕上げ情報が示す仕上げの種類での品質チェックを通過する状態になるまで研磨する場合の条件を意味する。
【0017】
情報処理装置1Aは特定した研磨条件に応じた教示データを作成して、研磨ロボット2Aに送信する。研磨ロボット2Aは教示データを受信すると、当該教示データを実行する。これにより、研磨ロボット2Aにおいて、ユーザが入力した材料情報および仕上げ情報に適した研磨動作が実行され、ワークWが研磨される。
【0018】
≪研磨ロボット2Aの構造≫
図2は、研磨ロボット2Aの構造の一例を示す図である。研磨ロボット2Aは、図2に示す通り、土台22と、基部23と、ロボットアーム24と、ジョイント部25と、を含む。また、ロボットアーム24とジョイント部25との間には、力覚センサ40が組み込まれている。
【0019】
土台22は、研磨ロボット2Aの土台である。土台22は回転可能であってもよい。土台22が回転すると、土台22に固定されている基部23、ならびに基部23と接続している通信IF26、力覚センサ40、およびジョイント部25が併せて回転する。これにより研磨ロボット2Aは向きを変えることができる。なお、土台22はAGV(Automatic Guides Vehicle)等、自走可能な機構に固定されていてもよい。換言すると、研磨ロボット2Aは自走可能なロボットであってもよい。
【0020】
基部23は、土台22とロボットアーム24とを繋ぐ構造物である。後述する制御部20、記憶部21、および通信IF26は、基部23か土台22に内蔵されていてよい。また、基部23はロボットアーム24を動かすためのモータ等の動力源が内蔵されていてもよい。
【0021】
ロボットアーム24は、研磨ロボット2Aが作業を行う際の「手」となるアームである。ロボットアーム24は図2に示すように、多関節で構成されていてよい。ロボットアーム24は間接部分の折り曲げ角度を調節することによって、ジョイント部25の先の位置および向きを調節することができる。ロボットアーム24の先端は、力覚センサ40が取り付け可能な構造になっている。ジョイント部25は、ワークWをロボットアーム24にセットするための構造物である。本実施形態では、ジョイント部25はワークWを固定するための構造と、力覚センサ40に取り付けるための構造とを有している。そして、ロボットアーム24とジョイント部25との間に力覚センサ40が取り付けられる。
【0022】
力覚センサ40は、ワークWにかかる力及びモーメントを検出するためのセンサである。図2の例では、力覚センサ40は、ロボットアーム24とジョイント部25との間に取り付けられているが、力覚センサ40の取り付け位置は図2の例に限定されない。力覚センサ40は、ワークWにかかる力及びモーメントを検出可能な位置であれば、研磨ロボット2Aのどの位置に取り付けられても構わない。
【0023】
≪力覚センサ40の構造≫
図3は、図2に示す力覚センサ40の構造と、力覚センサ40が検出するパラメータとを示す図である。図2と同様、図3の例でも、力覚センサ40は、ロボットアーム24とジョイント部25との間に取り付けられていることとする。
【0024】
図3に示すように、力覚センサ40は、第1面401を有する第1部材と、第2面402を有する第2部材と、第1部材及び第2部材の間に配置された起歪体(図示しない)とを有する。力覚センサ40の第1面401は、ロボットアーム24に取り付けられる。
【0025】
第2面402は、ジョイント部25に取り付けられる。力覚センサ40は、内部の起歪体の変形を検出することにより、力覚センサ40において3軸(x軸、y軸、z軸)の各方向に対し作用する力の大きさ(図3のfx、fy、fz)と、各軸回りのモーメントの大きさ(図3のmx、my、mz)とを検出する。本実施形態では、力覚センサ40は、ジョイント部25を介してワークWと接続している。したがって、力覚センサ40の検出する各種力およびモーメントは、ワークWにかかる各種力およびモーメントと略同一であるとみなすことができる。
【0026】
なお、力覚センサ40は上述の力およびモーメントのうち、少なくともZ軸に対する力の大きさ(fz)を検出可能であれば、他の力およびモーメントの検出は必須ではない。ロボットアーム24の動作によってワークWが何らかの物体に押し当てられたとき、ワークWにfz方向への力がかかる。すなわち、本実施形態において、ワークWの研磨機3への押し当て力を示すパラメータには、少なくともfzが関与するといえる。
【0027】
≪情報処理装置1Aおよび研磨ロボット2Aの内部構成≫
図4は、情報処理装置1Aおよび研磨ロボット2Aの内部構成を示すブロック図である。情報処理装置1Aは、プロセッサ10と、メモリ11と、入力インタフェース(IF)12と、出力IF13と、通信IF14と、とを含む。プロセッサ10、メモリ11、入力IF12、出力IF13、および通信IF14は、バスを介して相互に接続されている。
【0028】
研磨ロボット2Aは、制御部20、記憶部21、通信IF26と、力覚センサ40を含む。制御部20、記憶部21、および通信IF26はバスを介して相互に接続されている。なお、土台22がモータ等の電気的構成を有する場合、土台22もバスを介し、上述した各構成と相互に接続されていてもよい。
【0029】
研磨ロボット2Aは、自身に取り付けられた力覚センサ40と接続する。研磨ロボット2Aと力覚センサ40との接続IFは特に限定されない。例えば、力覚センサ40はロボットアーム24の端部を介して、研磨ロボット2Aのバスと接続する構成であってもよい。
【0030】
(情報処理装置1Aの内部構成)
メモリ11は、情報処理装置1Aの動作に必要なデータおよびプログラムを記憶する。メモリ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。
【0031】
図5は、メモリ11に格納されているデータを示す図である。本実施形態において、メモリ11には、例えば学習済モデルM1および教示データT1が格納されている。なお、メモリ11にはこの他に、情報処理装置1Aのオペレーションシステム(OS)のプログラム等、情報処理装置1Aを動作させるための種々のデータおよびプログラムが格納されていてよい。また、メモリ11には、力覚センサ40が検出した各種パラメータが時系列で記録されていてもよい。
【0032】
学習済モデルM1は、入力情報に含まれる各種情報(例えば、材料情報と、仕上げ情報)と、研磨条件に含まれる各種情報(例えば、押し付け力fz)との関係を機械学習させた学習済モデルである。本実施形態において、情報処理装置1Aが学習済モデルM1を取得する手段および方法は特に限定されない。
【0033】
なお、学習済モデルM1のデータ構造は、当該学習済モデルM1が研磨条件を推定可能であるならば、特に限定されない。例えば、学習済モデルM1は、各ノードの出力に対する重み付け係数が機械学習により最適化されたニューラルネットワーク(NN:Neural Network)であってもよい。なお、学習済モデルM1がNNである場合、学習済モデルM1は、高い特定精度が期待できる多層(例えば、4層以上)のNNであることが好ましい。
【0034】
教示データT1は、研磨ロボット2Aを動作させるための教示データである。教示データT1は、プロセッサ10によって作成される。
【0035】
プロセッサ10は、メモリ11に格納されているプログラムに記述された命令を実行することで、各種演算を実行する演算装置である。プロセッサ10として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、または、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0036】
入力IF12は、情報処理装置1Aが入力装置からの入力を受け付けるためのインタフェースである。入力IF12の具体的な規格としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などが挙げられる。入力装置としては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、または、これらの組み合わせが挙げられる。例えば図1に示した例の場合、情報処理装置1Aは入力装置であるキーボードおよび/またはマウスに対する入力操作を受け付ける。ユーザはキーボードおよび/またはマウスを用いて、材料情報および仕上げ情報を入力する。
【0037】
出力IF13は、情報処理装置1Aが出力装置にデータを出力するためのインタフェースである。出力IF13の具体的な規格例は入力IF12と同様である。出力装置としては、ディスプレイおよびスピーカ等が挙げられる。例えば図1に示した例の場合、情報処理装置1Aは出力装置であるディスプレイに、ユーザの入力した材料情報および仕上げ情報、および、研磨条件を表示してもよい。
【0038】
通信IF14は、情報処理装置1Aと研磨ロボット2Aとを接続するためのインタフェースである。通信IF14の具体的な規格としては、例えば、イーサネット(登録商標)、LAN、およびWi-Fi(登録商標)等のインタフェースを用いることができる。
【0039】
(研磨ロボット2Aの内部構成)
記憶部21は、研磨ロボット2Aの動作に必要なデータおよびプログラムを記憶する。本実施形態では、記憶部21は、研磨ロボット2Aが情報処理装置1Aから受信した教示データT1を記憶している。
【0040】
制御部20は、記憶部21に格納されているプログラムに記述された命令を実行することで、研磨ロボット2Aを統括的に制御する。より具体的には、制御部20は、記憶部21に記憶されている教示データT1を読み出して実行することにより、教示データT1により指定される通りに土台22、基部23、ロボットアーム24、およびジョイント部25に備えられている各種モータおよびギア等の駆動機構を動作させる。これにより、制御部20は、研磨ロボット2A全体を、教示データT1の指示通りに動かすことができる。
【0041】
通信IF26は、研磨ロボット2Aと情報処理装置1Aを接続する通信IFである。通信IF26の具体的な規格例は、通信IF14と同様である。
【0042】
力覚センサ40は制御部20に対し、自身が検出した力およびモーメントのパラメータを送信する。力覚センサ40のパラメータの検出および送信は、随時行われてよい。また、制御部20は力覚センサ40からの検出値を監視し、当該検出値に応じて研磨ロボット2A全体をフィードバック制御してもよい。
【0043】
≪処理の流れ≫
(情報処理装置1A全体の処理)
図6は、情報処理装置1Aのプロセッサ10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。プロセッサ10は、ユーザによる材料情報および仕上げ情報の入力を受け付けた場合、図6に示す一連の処理を実行する。
【0044】
初めに、プロセッサ10は、入力IF12を介して入力情報を取得する(S11、取得ステップ)。本実施形態では、プロセッサ10は少なくとも、材料情報と仕上げ情報を取得する。なお、プロセッサ10は取得した入力情報をメモリ11に記憶させてもよい。
【0045】
次に、プロセッサ10は、入力情報に基づいて研磨条件を特定する(S12、特定ステップ)。研磨条件の特定方法については後で詳述する。前述の通り、特定した研磨条件には少なくとも、ワークWの研磨機3への押し当て力を示すパラメータ(少なくともfzを含む、ワークWにかかる力およびモーメントを示すパラメータ)が含まれている。なお、プロセッサ10は特定した研磨条件を、出力IF13を介してディスプレイ等に表示させてもよい。
【0046】
続いて、プロセッサ10は、特定した研磨条件でワークWを研磨するよう、研磨ロボット2Aを制御する(S13~S14、制御ステップ)。本実施形態では、プロセッサ10はまず、特定した研磨条件で研磨ロボット2Aが研磨を実行するための教示データT1を作成する(S13、教示データ作成ステップ)。例えば、プロセッサ10は、研磨条件として特定した押し当て力から所定の範囲内を、研磨ロボット2Aが研磨を実行するときの押し当て力の閾値に設定した教示データT1を作成する。次に、プロセッサ10は、作成した教示データT1を、通信IF14を介して研磨ロボット2Aに送信する(S14、教示データ送信ステップ)。なお、プロセッサ10は作成した教示データT1をメモリ11に記憶しておいてもよい。
【0047】
教示データT1を受信した研磨ロボット2Aは、当該教示データT1を記憶部21に格納し、任意のタイミングで記憶部21を実行する。これにより、研磨ロボット2Aは例えば、力覚センサ40からの検出値を監視しながら、ワークWの押し当て力が研磨条件に応じた押し当て力になるように調整しつつ研磨を実行することができる。なお、情報処理装置1Aのプロセッサ10は、教示データT1の送信時に、研磨ロボット2Aに教示データT1の実行タイミングを指示してもよい。もしくは、教示データT1には、当該教示データT1の実行タイミングを規定する情報が含まれていてもよい。
【0048】
以上の処理によれば、研磨する材料の情報と、研磨の仕上げの種類とに応じて、適切な研磨条件を特定することができる。そして、特定した研磨条件を研磨ロボットに教示することができる。これにより、研磨ロボット2Aに、研磨する材料と、目的とする仕上げの種類とに応じた適切な研磨を実行させることができる。また、以上の処理によれば、研磨ロボット2Aに教示データT1を送信することによって、研磨ロボットに、研磨する材料、および目的とする仕上げの種類に応じた適切な研磨を実行させることができる。
【0049】
(研磨条件の特定方法)
図6のS12における、研磨条件の特定方法についてさらに詳述する。研磨システム100において、プロセッサ10は学習済モデルM1を用いて研磨条件を推定する(推定ステップ)。前述の通り、学習済モデルM1は、入力情報に含まれる各種情報と、研磨条件に含まれる各種情報との関係を機械学習させた学習済モデルである。
【0050】
プロセッサ10は、入力情報の少なくとも一部の情報を、学習済モデルM1に入力する。例えば、プロセッサ10は、材料情報と、仕上げ情報とを学習済モデルM1に入力する。なお、入力情報にこれ以外の他の情報が含まれており、学習済モデルM1も当該他の情報と、研磨条件との関係を学習済である場合、プロセッサ10は当該他の情報もともに学習済モデルM1に入力してもよい。
【0051】
学習済モデルM1は、入力された情報に応じた研磨条件を出力する。すなわち、学習済モデルM1は、研磨条件を推定する。例えば、学習済モデルM1は、材料情報および仕上げ情報が入力された場合、材料情報が示すワークWの素材および寸法で、仕上げ情報が示す仕上げ状態を満たすための、研磨条件を推定する。
【0052】
なお、学習済モデルM1は、入力された情報が示す条件を満たす研磨条件が複数パターン存在する場合、当該複数パターンの研磨条件を全て出力してもよいし、1つだけ出力してもよい。複数パターンの研磨条件が出力される場合、プロセッサ10は、そのうち1つの研磨条件を、教示データT1の作成に用いる研磨条件として特定する。特定方法は特に限定されない。1つのパターンの研磨条件のみが学習済モデルM1から出力される場合、プロセッサ10はその1つの研磨条件を、教示データT1の作成に用いる研磨条件として特定する。
【0053】
このように、本実施形態に係る研磨システム100によれば、学習済モデルM1を用いて、入力情報から適切な研磨条件を推定することができる。
【0054】
≪実施形態1の変形例1≫
図1の例では、1台の情報処理装置1Aに対して1台の研磨ロボット2Aが接続されていることとした。しかしながら、研磨システム100において、情報処理装置1Aと研磨ロボット2Aとは1対1の関係でなくてもよい。例えば、情報処理装置1Aは複数の研磨ロボット2Aと通信してもよい。そして、情報処理装置1Aは、各研磨ロボット2Aについての入力情報に対応する教示データT1を作成して、各研磨ロボット2Aに送信してもよい。また、研磨ロボット2Aは複数の情報処理装置1Aと通信してもよい。そして、研磨ロボット2Aは、例えばあるユーザが所有する情報処理装置1Aから教示データT1を受信すると、その教示データT1を用いて動作する構成であってもよい。さらに言えば、研磨システム100は、複数の情報処理装置1Aがそれぞれ、複数の研磨ロボット2Aと通信する構成であってもよい。
【0055】
≪実施形態1の変形例2≫
以上の説明では、学習済モデルM1を用いて、入力情報から研磨条件を推定および特定する例について説明した。しかしながら、本実施形態に係る情報処理装置1Aは、学習済モデルM1を用いずに、入力情報から研磨条件を特定する構成であってもよい。
【0056】
例えば、情報処理装置1Aのメモリ11は、入力情報に含まれる各種情報の組み合わせに、最適な研磨条件を対応付けたデータテーブルを記憶していてもよい。そして、プロセッサ10は、図6のS12において、S11で得た入力情報に応じた研磨条件を、前述のデータテーブルを参照することで特定してもよい。なお、このデータテーブルは複数のテーブルが組み合わされたものであってもよいし、多次元のテーブルであってもよい。
【0057】
〔実施形態2〕
実施形態1において説明した学習済モデルM1は、下記(i)または(ii)を学習用データとして、当該学習用データを用いた教師あり学習によって構築されたモデルであってもよい。
(i)ワークWを実際に研磨したときの入力情報および研磨条件の組み合わせ
(ii)ワークWの研磨をシミュレートして作成した、入力情報および研磨条件の組み合わせ
以下、本開示の第2の実施形態について図7図9を用いて説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは以降の実施形態についても同様である。
【0058】
図7は、本実施形態に係る学習システム200の概要を示す図である。学習システム200は、前述の学習済モデルM1を構築するためのシステムである。以下、本発明の第2の実施形態について説明する。学習システム200は、情報処理装置1Bと、研磨ロボット2Bと、研磨機3と、を含む。
【0059】
情報処理装置1Bおよび研磨ロボット2Bのハードウェア構成はそれぞれ、情報処理装置1Aおよび研磨ロボット2Aと同様である。ただし、研磨ロボット2Bは、ダイレクトティーチングが可能なロボットである。すなわち、ユーザは研磨ロボット2Bを、手動で動作させてワークWを研磨することができる。そして、研磨ロボット2Bは、手動で動作させられた場合のロボットアーム24の駆動に係るパラメータ、および力覚センサ40の検出値を、記憶部21に記録することが可能なロボットである。
【0060】
研磨ロボット2Bを手動で動作させた場合、得られる前述のパラメータおよび検出値は、研磨作業が進むとともに(すなわち、時間が経過するとともに)刻一刻と変化する。研磨ロボット2Bの制御部20は、このように一連の研磨動作の中で変化するパラメータおよび検出値を、記憶部21に時系列で記録させる。換言すると、研磨ロボット2Bは、手動で動作させられた場合の、自機の駆動に係る各種パラメータおよび力覚センサ40の検出値のログデータを記録可能なロボットであるといえる。以降、このログデータのことを「ティーチングログ」とも称する。
【0061】
また、情報処理装置1Bにおいて、入力IF12と出力IF13は必須の構成ではない。そして、本実施形態に係るメモリ11は記憶している情報が実施形態1に係るメモリ11と異なる。メモリ11の記憶する情報については後述する。
【0062】
(学習システム200の動作概要)
図7に示す学習システム200では、研磨ロボット2Bはダイレクトティーチングを受ける。このとき、研磨ロボット2Bはティーチングログを記録する。研磨ロボット2Bはティーチングログを情報処理装置1Bに送信する。情報処理装置1Bは研磨ロボット2Bからティーチングログを受信する。また、情報処理装置1Bは、受信したティーチングログが示す研磨動作を行ったときの、研磨条件に影響する種々の設定情報と、品質情報と、を取得する。
【0063】
ここで、「研磨条件に影響する種々の設定情報」は、実施形態1における入力情報と同じ種類の情報である。すなわち、「研磨条件に影響する種々の設定情報」とは、例えば材料情報と仕上げ情報である。以下、本実施形態でも「研磨条件に影響する種々の設定情報」のことを、便宜上「入力情報」と称することとする。
【0064】
また、「品質情報」とは、研磨ロボット2Bによる研磨の品質評価を示す情報である。研磨の品質評価とは、例えば、人の目視、またはセンサ機器の測定値に基づいて、ワークWの表面が目標とする表面特性をどの程度満たしているかを評価したものである。本実施形態では、品質情報は「研磨OK」と「研磨NG」の2種類いずれかを示すこととする。研磨OKとは、研磨後のワークWが問題ない品質であることを示す。研磨NGとは、研磨が不十分または過剰である場合等、研磨後のワークWの品質に問題があることを示す。
【0065】
情報処理装置1Bにおける入力情報および品質情報の取得方法は特に限定されない。ただし、情報処理装置1Bが取得した入力情報および品質情報は、少なくともいずれかのティーチングログが示す研磨が実行された際の情報である。すなわち、情報処理装置1Bは、入力情報および品質情報を、これらの情報に対応するティーチングログが特定可能な方法で取得することが望ましい。
【0066】
例えば、情報処理装置1Bは、入力情報および/または品質情報を、研磨ロボット2Bを介して取得してもよい。この場合、研磨ロボット2Bはユーザの入力操作を受け付ける入力IFを備える。そして、ダイレクトティーチングの前後いずれかのタイミングで、研磨ロボット2Bは、入力IFを介して手入力された入力情報を、当該ダイレクトティーチングに対応する入力情報として取得する。また、ダイレクトティーチングの後に、研磨ロボット2Bは当該入力IFを介して手入力された品質情報を、当該ダイレクトティーチングに対応する品質情報として取得する。研磨ロボット2Bは、取得した入力情報および/または品質情報を、ティーチングログと対応付けて情報処理装置1Bに送信する。
【0067】
また例えば、情報処理装置1Bは、入力情報および/または品質情報を、入力IF12を介しユーザに手入力させてもよい。またその際、ユーザに、該ユーザが入力した入力情報および/または品質情報が、いずれのティーチングログの入力情報および/または品質情報であるかを指定させてもよい。
【0068】
このように、情報処理装置1Bは、ティーチングログと、該ティーチングログが示す研磨動作のときの入力情報と、該ティーチングログが示す研磨の結果を示す品質情報と、を取得する。情報処理装置1Bは、取得したティーチングログと、入力情報と、品質情報とに基づいて、学習用データD1を作成する。その後、任意のタイミングで、情報処理装置1Bは学習用データD1を用いて未学習モデルに機械学習を行わせる。これにより、学習済モデルが構築される。ここで構築される学習済モデルは、実施形態1にて説明した学習済モデルM1と同様のものであってよい。以降の説明では、情報処理装置1Bは学習済モデルM1を構築することとする。
【0069】
図8は、情報処理装置1Bのメモリに格納されているデータを示す図である。図8に示すように、情報処理装置1Bのメモリ11には、少なくとも、学習用データD1と、学習済モデルM1と、が格納される。なお、図8は、学習済モデル構築後のメモリ11を示している。学習済モデルM1の構築前の場合、メモリ11には、少なくとも、未学習モデルが記憶されている。未学習モデルとは、学習済モデルM1の機械学習前のデータである。
【0070】
学習用データD1は、学習済モデルM1の構築のための機械学習に用いられる、1つ以上の教師データである。学習用データD1は、少なくとも研磨条件および入力情報に、品質情報(例えば、研磨OKか研磨NGか)が対応付けられたデータである。なお、メモリ11にはこの他にも、ティーチングログと、入力情報と、品質情報とが、それぞれ対応付けられて記憶されていてもよい。
【0071】
研磨ロボット2Bは、ダイレクトティーチングが行われたときの動作パラメータおよび検出値を、ティーチングログとして記録する。ここでのダイレクトティーチングは、「研磨ロボット2Bが研磨機3を用いてワークWを研磨する」動きの教示である。研磨ロボット2Bの記憶部21には、力覚センサ40の検出値を含む種々の研磨条件と、研磨を行ったときの入力情報とが記録される。
【0072】
なお、本実施形態における学習用データD1の収集方法は前述した方法に限定されない。例えば、研磨ロボット2Bの制御部20が、(i)ティーチングログに含まれる研磨条件と、(ii)自身が取得した入力情報とに、(iii)自身が取得した品質情報を対応付けることで、学習用データD1を作成してもよい。このように、研磨ロボット2Bが学習用データD1を作成する場合、情報処理装置1Bは、研磨ロボット2Bからティーチングデータ等を取得するのではなく、学習用データD1を取得する。そして、取得した学習用データD1に基づいて、機械学習を実行する。
【0073】
また例えば、情報処理装置1Bは、オンラインティーチングおよび/またはオフラインティーチングで作成された教示データで研磨ロボット2Bを動作させたときの(i)入力情報および(ii)ティーチングログに含まれる研磨条件を、(iii)品質情報と対応付けることによって、学習用データD1を作成してもよい。また、学習システム200では、研磨ロボット2Bを用いずに人間が研磨機3を用いて種々の材料を研磨するときの研磨条件(例えば、押し当て力)をセンシングしてもよい。そして、当該センシングした研磨条件および入力情報と、品質情報との組み合わせを学習用データD1として、情報処理装置1Bに記憶させてもよい。
【0074】
≪処理の流れ≫
図9は、情報処理装置1Bのプロセッサ10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図9の処理の開始タイミングは特に限定されない。
【0075】
情報処理装置1Bのプロセッサ10は、研磨ロボット2Bから取得したティーチングログ、入力情報、および品質情報から、学習用データD1を作成する(S21、学習用データ準備ステップ)。もしくは、情報処理装置1Bは、研磨ロボット2Bから学習用データD1を取得する(S21、学習用データ準備ステップ)。プロセッサ10は作成または取得した学習用データD1をメモリ11に格納する。
【0076】
次に、プロセッサ10は、学習用データD1を用いて、未学習モデルに機械学習を実施させることで、学習済モデルM1を構築する(S22、学習済モデル構築ステップ)。学習済モデルM1の構造、および、機械学習の方法は特に限定されない。例えば、学習済モデルM1として、入力情報の少なくとも一部を入力すると、品質情報が「研磨OK」となる研磨条件を出力するニューラルネットワークを構築すると仮定する。この場合、未学習の同ニューラルネットワークの各ノードの出力に対する重み付け係数を、学習用データD1を教師データとする機械学習により最適化する。これにより、未学習モデルから学習済モデルM1を作成することができる。なお、前述の通り、学習用データD1の一群の中には、品質情報が「研磨NG」を示すデータが含まれ得る。このような、いわば研磨に失敗した場合のデータについては、機械学習に用いても、用いなくてもよい。
【0077】
以上の処理によれば、入力情報から、品質情報が研磨OKを示す研磨条件(すなわち、研磨の結果が良品質となる研磨条件)を推定することができる学習済モデルM1を構築することができる。
【0078】
〔実施形態3〕
なお、実施形態1に係る研磨システム100と、実施形態2に係る学習システム200とは組み合わせて実施されてもよい。以下、本開示の第3の実施形態について図10を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る研磨システム300の概要を示す図である。図10に示す通り、研磨システム300は、研磨システム100と学習システム200とを組み合わせたシステムである。
【0079】
情報処理装置1Cは、情報処理装置1Aと情報処理装置1Bとの両方の機能を備えた情報処理装置である。すなわち、情報処理装置1Cは、下記(1)~(3)の機能を有している。
【0080】
(1)学習済モデルM1を構築する機能
(2)構築した学習済モデルM1を用いて研磨条件を推定する機能
(3)推定した研磨条件の中から1つの研磨条件を特定し、当該研磨条件に応じた教示データを作成する機能
なお、研磨ロボット2Aと研磨ロボット2Bとは同一の装置であってもよいし、別の装置であってもよい。また、図10における学習用データD1の一部または全部は、学習システム200と同様に、オンラインティーチングおよびオフラインティーチングから得られてもよい。
【0081】
図10に示す構成によれば、学習システム200と同様の方法で構築した学習済モデルM1を用いて、研磨システム100と同様の方法で研磨条件を特定することができる。
【0082】
〔変形例〕
(研磨手法の変形例)
また、前述の各実施形態に記載の方法以外の方法でワークWを研磨してもよい。例えば、ワークWを撮影可能なカメラを予め設置する(もしくは、研磨ロボット2Aまたは2Bに搭載)しておき、当該カメラでワークWを撮像してもよい。そして、制御部20は、カメラの映像を解析することによって、ワークWにおいて特に凸凹が存在する箇所を特定し、当該箇所を重点的に研磨する(すなわち、重点的に押し当てる)ようにロボットアーム24を動作させてもよい。これにより、より効率的な研磨が実行できる。また、当該効率的な研磨における、研磨条件を特定可能になる。
【0083】
(研磨機3の変形例)
前述の各実施形態では、固定されている研磨機3に対し、ロボットアーム24の先に付いたワークWを押し当てることによって研磨が行われていた。しかしながら、研磨機3とワークWの位置関係は逆であってもよい。つまり、ロボットアーム24の先に研磨機が取り付けられており、その研磨機を振動または回転等させながら、固定されているワークWに押し当てることによって、ワークWの研磨が行われてもよい。
【0084】
ワークWに研磨機3を押し当てるのではなく、研磨機をワークWに押し当てることにはなるが、押し当て力のパラメータについては、前述の実施形態と同様の測定方法で測定してよい。
【0085】
(入力情報に含まれる各種情報の変形例)
前述の各実施形態において、入力情報には研磨ツール情報および/または研磨回数情報が含まれていてもよい。より多種の入力情報に基づいて学習済モデルM1を構築することにより、適切な研磨条件をより正確に推定することが可能な学習済モデルM1を構築することができる。また、より多種の入力情報を学習済モデルM1に入力することによって、学習済モデルM1に適切な研磨条件をより正確に推定させることができる。
【0086】
より具体的には、「研磨ツール情報」とは、研磨機3の種類および/または研磨機3に装着されている研磨材の種類を示す情報である。研磨機3の種類によっては、適切な研磨条件(例えば、ワークWの押しつけ力)が変わる可能性がある。また、研磨機3に装着されている研磨剤の種類によっても、適切な研磨条件が変わる可能性がある。したがって、入力情報に研磨ツール情報を含むことによって、研磨機3の種類および/または研磨剤の種類に応じた、より適切な研磨条件を特定することができる。
【0087】
また、「研磨回数情報」とは、研磨対象の材料の研磨が完了する(すなわち、仕上げ)までに実行する研磨の種類および回数を示す情報である。例えば金属を鏡面仕上げにする場合、荒研磨を何回分か行った後、細かい目のサンドペーパーで表面の凹凸が少なくなるよう研磨して、その後、ポリッシュで鏡面に磨き上げることがある。このように、ある材料をある仕上がりにするまでに、複数種類および/または複数回数、研磨を行う必要がある場合がある。研磨回数情報は、このような研磨の種類および回数を規定する情報である。換言すると、研磨回数情報は、研磨の手順を示しているともいえる。
【0088】
(研磨条件に含まれる各種情報の変形例)
前述の各実施形態において、研磨条件には研磨ツール情報、研磨回数情報、および研磨スピード情報のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。なお、研磨ツール情報および研磨回数情報については、入力情報に含まれている場合、研磨条件には含まれない。
【0089】
「研磨スピード情報」とは、前記研磨ロボットの研磨スピードおよび前記研磨機の研磨スピードの少なくともいずれかを示す情報である。研磨スピード情報とは、換言すると、ワークWが研磨機3に接している時間を示す情報であるともいえる。
【0090】
研磨条件に研磨ツール情報が含まれている場合は、入力情報に応じて、適切な研磨機の種類を特定することができる。したがって、研磨ロボットに、材料をより適切に研磨させることができる。研磨条件に研磨回数情報が含まれている場合は、入力情報に応じて、研磨完了までに行うべき適切な研磨の種類と回数を特定することができる。したがって、研磨ロボットに、材料をより適切に研磨させることができる。研磨条件に研磨スピード情報が含まれている場合は、入力情報に応じて、研磨ロボットおよび/または研磨機の適切な研磨スピードを特定することができる。したがって、研磨ロボットに、材料をより適切に研磨させることができる。
【0091】
(押し当て力を示すパラメータの変形例)
ワークWの押し当て力を示すパラメータは、fzに限られない。例えば、ワークWの研磨面が平面でない場合、すなわち、研磨対象物の一部に傾斜および/または曲面が存在する場合、ワークWを研磨機3に押し当てると、ワークWおよびロボットアーム24にがたつきが生じる。力覚センサ40の検出するmxおよびmyは、このようにワークWおよびロボットアーム24にかかるモーメントを示す。力覚センサ40がmxおよびmyを検出する場合、ワークWの押し当て力とは、fz、mx、およびmyのパラメータの組み合わせで表わされてもよい。
【0092】
また、力覚センサ40が検出するMzも同様に、ワークWの押し当て力を示すパラメータに含まれていてもよい。例えば、ロボットアーム24の先に研磨機が付いており、それを固定されているワークWに押し当てて研磨する場合、ロボットアーム24の先の研磨機が不規則に回転する(ぶれる)ことがある。このぶれをMzの値として検出することができる。
【0093】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1A、1B、および1C(以下、これらを総称して「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0094】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0095】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0096】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
100、300 研磨システム
200 学習システム
1A、1B、1C 情報処理装置
2A、2B 研磨ロボット
3 研磨機
10 プロセッサ
11 メモリ
12 入力IF
13 出力IF
14 通信IF
20 制御部
21 記憶部
22 土台
23 基部
24 ロボットアーム
25 ジョイント部
26 通信IF
40 力覚センサ
D1 学習用データ
M1 学習済モデル
S11 取得ステップ
S12 特定ステップ
S13 教示ステップ
T1 教示データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10