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特開2023-44515皺検出装置、皺検出方法、及び皺検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044515
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】皺検出装置、皺検出方法、及び皺検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20230323BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
A61B5/11 120
A61B5/107 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152573
(22)【出願日】2021-09-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月15日 https://www.kracie.co.jp/release/10169255_3833.htmlにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521411770
【氏名又は名称】坂本 一民
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 沙織
(72)【発明者】
【氏名】岩永 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一民
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】容易に皺の評価を行うことが可能となる。
【解決手段】皺検出装置は、顔を撮影した撮影画像を取得する取得部と、撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成する特徴強調処理部と、特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより複数の照射方向のエンボス画像を生成するエンボス処理部と、複数の照射方向のエンボス画像と、撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成する合成部と、複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出する周波数成分算出部と、周波数成分に基づいて顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔を撮影した撮影画像を取得する取得部と、
前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成する特徴強調処理部と、
特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成するエンボス処理部と、
前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成する合成部と、
複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出する周波数成分算出部と、
前記周波数成分のパワーに基づいて、前記顔の皺が深さ毎に色分けされた皺強調画像を出力するように制御する制御部と、
を備えた皺検出装置。
【請求項2】
前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、
前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより2/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、
前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を静止画像として出力するように制御する
請求項1記載の皺検出装置。
【請求項3】
前記特徴強調処理部は、前記合成元画像に対して平滑化フィルタを用いて平滑化処理する
請求項1又は請求項2記載の皺検出装置。
【請求項4】
前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、
前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより1/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、
前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が二値化された皺強調画像を静止画像として出力するように制御する
請求項1記載の皺検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記顔の対象領域が二値化された二値化画像に基づいて前記皺の面積率を算出する
請求項4記載の皺検出装置。
【請求項6】
前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、
前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより1/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、
前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が二値化された皺強調画像を動画像として出力するように制御する
請求項1記載の皺検出装置。
【請求項7】
コンピュータが、
顔を撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成し、
特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成し、
前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成し、
複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出し、
前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する
処理を実行する皺検出方法。
【請求項8】
コンピュータに、
顔を撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成し、
特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成し、
前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成し、
複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出し、
前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する
処理を実行させる皺検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皺検出装置、皺検出方法、及び皺検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔の皺を検出する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、顔の皺を評価する方法としては、目視及び写真により評価する方法、レプリカ法、in vivo法等がある。
【0003】
目視及び写真により評価する方法は、専門家が目視した皺又は写真の皺と、皺のグレード毎の標準写真と、を比較して皺をスコア化する方法である。
【0004】
レプリカ法は、シリコンを用いて皺のレプリカ(型)を取り、このレプリカに光を当てることにより発生した影を利用して凹凸を解析する方法や、専用の装置を用いて皺にレーザーを照射し、線の歪みから凹凸を識別する方法がある。レプリカ法では、皺の深さ、体積、及び面積率を算出することが可能である。
【0005】
in vivo法は、専用の装置を用いて皺にレーザーを照射し、線の歪みから凹凸を識別する方法である。in vivo法では、皺の深さ、体積、個数、及び面積率を算出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-15118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、目視及び写真により皺を評価する方法は、専門家による評価が必要であり、定量化が困難であった。また、レプリカ法は、同じ表情をし続ける必要がある、レプリカを取るのにコツが必要である、細かい皺の解析が困難である、気泡及び汗の影響を受けやすい等の問題がある。また、in vivo法は、同じ表情をし続ける必要がある、装置が大型で高価である、レーザーのピント合わせにコツが必要である等の問題がある。
【0008】
何れの方法においても、被験者及び評価者の負担が大きく、基本的に無表情の皺しか評価できない等の問題がある。
【0009】
本発明は、容易に皺の評価を行うことが可能となる皺検出装置、皺検出方法、及び皺検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係る皺検出装置は、顔を撮影した撮影画像を取得する取得部と、前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成する特徴強調処理部と、特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成するエンボス処理部と、前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成する合成部と、複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出する周波数成分算出部と、前記周波数成分のパワーに基づいて、前記顔の皺が深さ毎に色分けされた皺強調画像を出力するように制御する制御部と、を備える。
【0011】
第1態様に係る皺検出装置において、前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより2/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を静止画像として出力するように制御するようにしてもよい。
【0012】
第1態様に係る皺検出装置において、前記特徴強調処理部は、前記合成元画像に対して平滑化フィルタを用いて平滑化処理するようにしてもよい。
【0013】
第1態様に係る皺検出装置において、前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより1/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が二値化された皺強調画像を静止画像として出力するように制御するようにしてもよい。
【0014】
第1態様に係る皺検出装置において、前記制御部は、前記顔の対象領域が二値化された二値化画像に基づいて前記皺の面積率を算出するようにしてもよい。
【0015】
第1態様に係る皺検出装置において、前記複数の照射方向は、8個の異なる方向であり、前記周波数成分算出部は、8個の画素の濃度値変化情報に対して、フーリエ変換することにより1/8(周期/画素)の空間周波数における周波数成分を算出し、前記制御部は、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を動画像として出力するように制御するようにしてもよい。
【0016】
第2態様に係る皺検出方法は、コンピュータが、顔を撮影した撮影画像を取得し、前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成し、特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成し、前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成し、複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出し、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する処理を実行する。
【0017】
第3態様に係る皺検出プログラムは、コンピュータに、顔を撮影した撮影画像を取得し、前記撮影画像に基づく合成対象画像に対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像を生成し、特徴強調処理が施された特徴強調画像に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより前記複数の照射方向のエンボス画像を生成し、前記複数の照射方向のエンボス画像と、前記撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより前記複数の照射方向の画像特徴合成画像を生成し、複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出し、前記周波数成分に基づいて、前記顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容易に皺の評価を行うことが可能となる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】皺検出装置のハードウェア構成を示す構成図である。
図2】皺検出装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】皺検出処理の全体的な処理の流れを説明するための図である。
図4】照射方向について説明するための図である。
図5】濃度値変化情報について説明するための図である。
図6】空間周波数について説明するための図である。
図7】皺検出プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】元画像の一例を示す図である。
図9】皺強調画像の一例を示す図である。
図10】皺強調画像の一例を示す図である。
図11】皺強調画像の一例を示す図である。
図12】対象領域の二値化画像の一例を示す図である。
図13】レプリカ法を用いて20~50代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代のレプリカを示す図である。
図14】レプリカ法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフである。
図15】in vivo法を用いて20~50代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代の皺を撮影した画像である。
図16】in vivo法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフである。
図17】本実施形態に係る方法を用いて20~50代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代の皺を撮影した画像を二値化した画像である。
図18】本実施形態に係る方法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、皺検出装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、皺検出装置10は、コントローラ12を備える。コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)12A、ROM(Read Only Memory)12B、RAM(Random Access Memory)12C、及び入出力インターフェース(I/O)12Dを備える。そして、CPU12A、ROM12B、RAM12C、及びI/O12Dがシステムバス12Eを介して各々接続されている。システムバス12Eは、コントロールバス、アドレスバス、及びデータバスを含む。
【0022】
また、I/O12Dには、カメラ14、操作部16、表示部18、通信部20、及び記憶部22が接続されている。
【0023】
カメラ14は、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を含んで構成され、被写体を撮影した撮影画像をコントローラ12に出力する。
【0024】
操作部16は、例えばマウス及びキーボードを含んで構成される。
【0025】
表示部18は、例えば液晶ディスプレイ等で構成される。
【0026】
通信部20は、外部装置とデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0027】
記憶部22は、ハードディスク等の不揮発性の外部記憶装置で構成され、皺検出プログラム22A等を記憶する。CPU12Aは、記憶部22に記憶された皺検出プログラム22AをRAM12Cに読み込んで実行する。
【0028】
図2は、皺検出装置10のCPU12Aの機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、CPU12Aは、機能的には、取得部24、特徴強調処理部26、エンボス処理部28、合成部30、周波数成分算出部32、及び制御部34を備える。
【0029】
取得部24は、顔を撮影した撮影画像をカメラ14から取得する。本実施形態では、図3に示すように、撮影画像がR(赤色)、G(緑)、B(青)の3原色のR画像36R、G画像36G、B画像36Bを含むRGBカラー画像36である場合について説明する。
【0030】
特徴強調処理部26は、図3に示すように、取得部24が取得した撮影画像に基づく合成対象画像であるR画像36Rに対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像38を生成する。本実施形態は、図3に示すように、合成対象画像がRGBカラー画像のうちR画像36Rである場合について説明するが、合成対象画像をG画像又はB画像としてもよい。
【0031】
具体的には、特徴強調処理部26は、合成対象画像に対して公知の特徴強調処理を施す。公知の特徴強調処理としては、例えば下記参考文献1に記載された処理が挙げられ、テクスチャ強調処理及びエッジ強調処理等が行われる。
【0032】
(参考文献1) 特許第6021053号公報
【0033】
テクスチャ強調処理では、例えば合成対象画像に対して、相関、分散、コントラスト、エントロピー等のフィルタを適用した画像処理を行う。また、エッジ強調処理では、合成対象画像に対して、1次微分・差分型のPrewittフィルタや、1次微分・テンプレート型のRobinsonフィルタ等を適用した画像処理を行う。なお、特徴強調処理は、テクスチャ強調処理及びエッジ強調処理に限られるものではない。
【0034】
エンボス処理部28は、図3に示すように、特徴強調処理部26により合成対象画像に対して特徴強調処理が施された特徴強調画像38に対して、複数の照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより複数の照射方向のエンボス画像40を生成する。具体的には、公知の手法、例えば上記参考文献1に記載された公知の手法を用いてエンボス処理を行う。
【0035】
本実施形態では、複数の照射方向は、図4に示すように、8個の異なる方向であり、特徴強調画像38の上側を0度として右回りに45度ずつ角度をずらした0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、及び315度の8個の異なる方向を照射方向とする。
【0036】
エンボス処理部28は、照射方向毎に設定された3×3の行列で表されるフィルタ係数を用いて、各照射方向から光を照射した場合におけるエンボス処理を施した8個のエンボス画像40を生成する。なお、エンボス処理では複数の画素の差が求められるため、特徴強調画像38に対してエンボス処理が施されると、特徴強調画像38のエッジが強調されることになる。
【0037】
合成部30は、図3に示すように、エンボス処理部28により生成された複数の照射方向、すなわち8方向毎のエンボス画像40と、撮影画像に基づく合成元画像と、を各々合成することにより画像特徴合成画像42を生成する。本実施形態では、合成元画像は撮影画像、すなわちRGBカラー画像36である場合について説明する。この場合、8個のエンボス画像40とR画像36Rとを合成した8個の画像特徴合成画像42Rと、8個のエンボス画像40とG画像36Gとを合成した8個の画像特徴合成画像42Gと、8個のエンボス画像40とB画像36Bとを合成した8個の画像特徴合成画像42Bと、が生成される。
【0038】
周波数成分算出部32は、合成部30により生成された複数の照射方向の画像特徴合成画像42における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換して各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出する。
【0039】
具体的には、周波数成分算出部32は、図3に示すように、画像特徴合成画像42Rにおける各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報44Rを生成する。同様に、周波数成分算出部32は、画像特徴合成画像42Gにおける各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報44G、画像特徴合成画像42Bにおける各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報44B、を生成する。
【0040】
図5には、濃度値変化情報の一例を示す。図5では、説明を簡単にするために画像特徴合成画像42Rの一部である3×3画素のうち中央の画素の濃度値の変化の一例を示した。なお、濃度値は一例として8ビットで表され、0~255の値を取り得る。本実施形態では、8個の異なる方向を照射方向とするので、同じ画素について8個の濃度値が得られる。
【0041】
図5に示すように、中央の画素の濃度値は、8個の照射方向0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の順に「100」、「140」、「160」、「140」、「100」、「60」、「40」、「60」と変化する。このように、濃度値変化情報は、濃度値の変化を表す情報であり、複数の照射方向と濃度値との対応関係を表す情報である。周波数成分算出部32は、このような濃度値の変化を表す濃度値変化情報を各画像特徴合成画像の各画素について算出する。
【0042】
そして、周波数成分算出部32は、図3に示すように、濃度値変化情報44R、44G、44Bを平均化した濃度値変化情報44を生成する。すなわち、濃度値変化情報44R、44G、44Bの各画素について、濃度値を3で除算することにより濃度値変化情報44を生成する。
【0043】
次に、周波数成分算出部32は、図3に示すように、濃度値変化情報44をフーリエ変換して各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分としてのパワー(振幅)を表すパワースペクトル情報46を算出する。本実施形態では、1つの画素の濃度変化情報には、8個の濃度値が含まれるため、図6に示す4つの空間周波数(基底関数)f1~f4(f4>f1)ごとのパワー(振幅)が算出される。なお、空間周波数f1~f4のそれぞれは、1/8、2/8、3/8、4/8(周期/画素)となる。このパワーの大きさが皺の深さに対応し、パワーが大きいほど皺が深く、パワーが小さいほど皺が浅い。
【0044】
制御部34は、周波数成分算出部32が算出した空間周波数f1~f4のうち、空間周波数f2、すなわち2/8(周期/画素)の空間周波数におけるパワーに基づいて、顔の皺が強調された皺強調画像を出力するように制御する。例えば、制御部34は、取得部24が取得したRGBカラー画像36に対して、画素毎にパワーの大きさに応じた色を付与した皺強調画像を生成し、表示部18に表示させる。すなわち、皺の深さ毎に色分けされた皺強調画像を表示する。これにより、皺を深さ毎に明確に把握することが可能となる。なお、生成した皺強調画像を記憶部22に出力して記憶させてもよい。
【0045】
次に、CPU12Aで実行される皺検出処理について図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0046】
ステップS100では、CPU12Aが、取得部24として、カメラ14で人間の顔を撮影した撮影画像であるRGBカラー画像36をカメラ14から取得する。
【0047】
ステップS102では、CPU12Aが、特徴強調処理部26として、ステップS100で取得したRGBカラー画像36に基づく合成対象画像であるR画像36Rに対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像38を生成する。
【0048】
ステップS104では、CPU12Aが、エンボス処理部28として、ステップS104で生成された特徴強調画像38に対して、8個の異なる照射方向から擬似的に光を照射した場合におけるエンボス処理を行うことにより8個の照射方向の各々に対応するエンボス画像40を生成する。なお、エンボス処理においては、エンボス係数を調整することによりエンボスの程度、すなわち浮き出しの程度を調整できるが、本実施形態では、一例としてエンボス係数を最大値に設定する。これにより浮き出しの程度が最大となる。
【0049】
ステップS106では、CPU12Aが、合成部30として、ステップS104で生成された8個の照射方向毎のエンボス画像40と、合成元画像であるRGBカラー画像36と、を各々合成することにより画像特徴合成画像42R、42G、42Bを生成する。
【0050】
ステップS108では、CPU12Aが、周波数成分算出部32として、ステップS106で生成された画像特徴合成画像42R、42G、42Bにおける各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報44R、44G、44Bを生成し、これらを平均化した濃度値変化情報44を生成する。そして、濃度値変化情報44に対してフーリエ変換する。これにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分としてのパワーが空間周波数f1~f4の各々について算出される。
【0051】
ステップS110では、CPU12Aが、制御部34として、ステップS108で空間周波数f1~f4毎に算出した各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分のうち、空間周波数f2の周波数成分としてのパワーに基づいて、顔の皺が強調された皺強調画像を静止画像として表示部18に表示させる。すなわち、例えば図8に示すような元画像であるRGBカラー画像36に対して、画素毎にパワーの大きさに応じた色を付与した図9に示すような皺強調画像48を生成し、表示部18に表示させる。これにより、皺の深さ毎に異なる色が元画像に付与されるため、皺を明確に把握することが可能となる、なお、パワーが取り得る範囲において上限閾値及び下限閾値を設定し、下限閾値以上で且つ上限閾値以下の範囲のパワーのみ色を付与した皺強調画像48を生成してもよい。これにより、所望の深さの皺だけを表示することができる。
【0052】
ちなみに、空間周波数f2に代えて空間周波数f1の周波数成分としてのパワーに基づいて、顔の皺が強調された皺強調画像48を静止画像として表示部18に表示させると、皺以外の質感も検出されて表示されてしまうため、空間周波数f1は皺の検出に適さない。これは、肌には毛穴及び毛等の凹凸が多く、空間周波数f1を用いると、それらも抽出してしまうからと考えられる。
【0053】
ところで、空間周波数f2のパワーに基づいて皺強調画像48を生成すると、図9に示すように、皺以外の細かい点がノイズとして表示されてしまう場合がある。そこで、ステップS102において、CPU12Aが、特徴強調処理部26として、合成元画像であるRGBカラー画像36に対して平滑化フィルタを用いて平滑化処理し、平滑化処理されたR画像36Rに対して特徴強調処理を行うことにより特徴強調画像38を生成してもよい。これにより、図10に示すように、ほぼ皺だけが強調された皺強調画像48を表示することができる。なお、平滑化処理を実行するか否かをユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0054】
また、図9の例では、皺の深さ毎に異なる色が表示されるが、深さに関係なく皺全てを表示したい場合には、空間周波数f1のパワーに基づいて皺強調画像48を生成する方がよい場合もある。この場合、上限閾値及び下限閾値を共に「0」に設定する。これにより、皺が凡例外となり、図11に示すように、凡例外を表す色(例えば赤)で皺が強調された皺強調画像48が得られる。
【0055】
なお、皺の面積率、すなわち単位面積当たりの皺の面積を算出したい場合には、例えば図12に示すように、面積率を算出したい対象領域の凡例外の色(例えば赤色)の領域を白色、凡例外の色以外の領域を黒色とした二値化画像50を生成し、生成した二値化画像に基づいて皺の面積率を算出してもよい。具体的には、二値化画像50の白色領域の面積を算出し、算出した白色領域の面積を二値化画像50全体の面積で除算することにより皺の面積率を算出すればよい。
【0056】
ここで、図13には、レプリカ法を用いて20代、30代、40代、50代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代のレプリカを示し、図14には、図13のレプリカに基づいてレプリカ法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフを示した。
【0057】
また、図15には、in vivo法を用いて各年代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代の皺を撮影した画像を示し、図16には、図15の画像に基づいてin vivo法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフを示した。
【0058】
また、図17には、前述した本実施形態に係る方法を用いて各年代の顔の皺の面積率を算出したときの各年代の皺を撮影した画像の対象領域を二値化した二値化画像を示し、図18には、図17の二値化画像に基づいて本実施形態に係る方法を用いて算出した各年代の面積率を表すグラフを示した。
【0059】
図18に示すように、本実施形態に係る方法は、レプリカ法及びin vivo法と比較して、30代の浅い皺を精度良く検出できることが分かった。
【0060】
また、ステップS110では、皺強調画像48を静止画像として表示部18に表示しているが、動画像として表示してもよい。すなわち、ステップS100で取得する撮影画像を動画像とし、動画像を構成する各フレーム画像についてステップS102~S110の処理を行うようにしてもよい。この場合、ステップS102で平滑化処理を行った皺強調画像48を生成して動画像として表示すると、処理負荷が重くスムーズに表示できない場合がある。この場合、前述したように、上限閾値及び下限閾値を共に「0」に設定して空間周波数f1のパワーに基づいて皺強調画像48を生成し、動画像として表示してもよい。これにより、スムーズに皺強調画像48を動画表示することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、複数の照射方向の画像特徴合成画像における各画素の濃度値の変化を表す濃度値変化情報をフーリエ変換することにより、各画素の濃度値の変化に応じた周波数成分を算出し、算出した周波数成分に基づいて、顔の皺が強調された皺強調画像を表示するので、容易に皺の評価を行うことが可能となる。
【0062】
また、従来では評価できなかった「表情皺」の評価が可能となる。なお、「表情皺」とは、顔や表情の動きに伴い、深さや形状が変化した顔の皺のことを意味する。従来の評価方法は、無表情の際の皺を対象とした手法であり、被験者が同じ表情をし続ける必要があることから、表情皺の評価が非常に困難であった。これに対し、本願発明によれば、動画像やリアルタイムでの動的な皺の評価が可能となるめ、表情皺の評価が可能となる。
【0063】
以上、実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、顔の皺以外の首や手の甲の皺評価にも応用できる。
【0064】
なお、本実施形態では、皺検出プログラム22Aが記憶部22にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係る皺検出プログラム22Aを、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、本実施形態に係る皺検出プログラム22Aを、CD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、本実施形態に係る皺検出プログラム22Aを、通信部20に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 皺検出装置
12 コントローラ
14 カメラ
16 操作部
18 表示部
20 通信部
22 記憶部
22A 皺検出プログラム
24 取得部
26 特徴強調処理部
28 エンボス処理部
30 合成部
32 周波数成分算出部
34 制御部
36 RGBカラー画像
38 特徴強調画像
40 エンボス画像
42 画像特徴合成画像
44 濃度値変化情報
46 パワースペクトル情報
48 皺強調画像
50 二値化画像
図1
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