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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044537
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】建築物の入札システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/08 20120101AFI20230323BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20230323BHJP
【FI】
G06Q30/08
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152608
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳司
(72)【発明者】
【氏名】関根 章義
(72)【発明者】
【氏名】林 保宏
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 孝行
(72)【発明者】
【氏名】滝 悟
(72)【発明者】
【氏名】岩間 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB73
5L049CC27
(57)【要約】
【課題】土地活用事業を事業として合理的に成立させることのできる入札システムを提供すること。
【解決手段】独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物の設計に基づいて、電気通信回線を通じ、前記建築物の少なくとも建築費用について建築業者に入札させる建築費用入札装置300と、前記設計に基づいて、前記区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させる区画入札装置400と、を有し、前記区画入札装置は、前記販売基準価格を、前記建築物の前記建築費用についての入札額に応じて変動させる、建築物の入札システム10。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物の設計に基づいて、電気通信回線を通じ、前記建築物の少なくとも建築費用について建築業者に入札させる建築費用入札装置と、
前記設計に基づいて、前記区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させる区画入札装置と、
を有し、
前記区画入札装置は、前記販売基準価格を、前記建築物の前記建築費用についての入札額に応じて変動させる、
建築物の入札システム。
【請求項2】
前記販売基準価格は、前記区画の最低販売価格であり、前記区画入札装置は、前記購入希望者に前記区画の購入金額を入札させる、請求項1に記載の建築物の入札システム。
【請求項3】
前記販売基準価格は、前記区画の基準販売価格であり、前記区画入札装置は、前記購入希望者に前記基準販売価格に付加されるプレミア金額を入札させる、請求項1に記載の建築物の入札システム。
【請求項4】
前記建築物の前記建築費用についての入札額、並びに、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定する可否判定装置を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の建築物の入札システム。
【請求項5】
前記建築物の建築計画の実行の可否は、前記建築物の前記建築費用についての入札額と所定の固定費に必要な利益を加算した額と、前記複数の区画についての入札額の合計とを比較して判定される、請求項4に記載の建築物の入札システム。
【請求項6】
前記設計は複数用意され、
前記建築費用入札装置は、複数の前記設計それぞれについて、前記建築物の少なくとも建築費用について、前記建築業者に入札させ、
前記区画入札装置は、複数の前記設計それぞれについて、前記区画のそれぞれについて、前記販売基準価格を提示するとともに、前記購入希望者に入札させ、
前記可否判定装置は、複数の前記設計ごとに、前記建築物の前記建築費用についての入札額、並びに、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定する、
請求項4又は5に記載の建築物の入札システム。
【請求項7】
前記可否判定装置は、所定の入札期間の経過時点において、実行可と判定される条件を満足する前記設計の中から、最も利益の額が大きい設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定する、請求項6に記載の建築物の入札システム。
【請求項8】
前記可否判定装置は、複数の前記設計のいずれか一が実行可と判定される条件を満足した時点で、当該設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定する、請求項6に記載の建築物の入札システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の入札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遊休地等における建物建設についての合意を得ることができるマッチングシステムであって、土地提供者が入力した土地情報を閲覧した建築会社に要出資数を含む建築計画を入力させ、土地提供者が当該建築計画に同意した後、同建築計画を検索した出資者に希望出資数を含む出資情報を入力させ、入力された出資情報とマッチングデータとに基づいて、要出資数に到達したと判定したとき、マッチング成立情報の出力を行うものが記載されている。
【0003】
同文献記載のマッチングシステムにおいては、出資者は、建築計画に含まれる、1戸当たりの出資額や、設計・施行を行う建築会社の会社名および支店名、建築時期、保証会社の会社名等を確認して建築計画への参加の有無を判定する(段落0052)。
【0004】
特許文献2には、敷地情報に対応した建築物を自動設計する自動CAD設計システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-178090号公報
【特許文献2】特開2013-228825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
土地活用として、集合住宅等の多数の販売区画を有する建築物を建築し、区画を販売することにより利益を得る土地活用事業が事業として合理的に成立するためには、建築計画及びその建築物に係る建築費用と、各区画の販売価格及び現実の販売数が適合しなければならない。しかしながら、各区画の販売価格は、活用しようとする土地の周辺の相場等を勘案して定めるものの、多分に予測の域を出ず、土地活用事業が不成立に終わったり、あるいは土地活用事業の遂行を優先するあまり、事業としての利益が過少となったりする恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、土地活用事業を事業として合理的に成立させることのできる入札システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
【0009】
(1)独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物の設計に基づいて、電気通信回線を通じ、前記建築物の少なくとも建築費用について建築業者に入札させる建築費用入札装置と、前記設計に基づいて、前記区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させる区画入札装置と、を有し、前記区画入札装置は、前記販売基準価格を、前記建築物の前記建築費用についての入札額に応じて変動させる、
建築物の入札システム。
【0010】
(2)(1)において、前記販売基準価格は、前記区画の最低販売価格であり、前記区画入札装置は、前記購入希望者に前記区画の購入金額を入札させる、建築物の入札システム。
【0011】
(3)(1)において、前記販売基準価格は、前記区画の基準販売価格であり、前記区画入札装置は、前記購入希望者に前記基準販売価格に付加されるプレミア金額を入札させる、建築物の入札システム。
【0012】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記建築物の前記建築費用についての入札額、並びに、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定する可否判定装置を有する、建築物の入札システム。
【0013】
(5)(4)において、前記建築物の建築計画の実行の可否は、前記建築物の前記建築費用についての入札額と所定の固定費に必要な利益を加算した額と、前記複数の区画についての入札額の合計とを比較して判定される、建築物の入札システム。
【0014】
(6)(4)又は(5)において、前記設計は複数用意され、前記建築費用入札装置は、複数の前記設計それぞれについて、前記建築物の少なくとも建築費用について、前記建築業者に入札させ、前記区画入札装置は、複数の前記設計それぞれについて、前記区画のそれぞれについて、前記販売基準価格を提示するとともに、前記購入希望者に入札させ、前記可否判定装置は、複数の前記設計ごとに、前記建築物の前記建築費用についての入札額、並びに、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定する、建築物の入札システム。
【0015】
(7)(6)において、前記可否判定装置は、所定の入札期間の経過時点において、実行可と判定される条件を満足する前記設計の中から、最も利益の額が大きい設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定する、建築物の入札システム。
【0016】
(8)(6)において、前記可否判定装置は、複数の前記設計のいずれか一が実行可と判定される条件を満足した時点で、当該設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定する、建築物の入札システム。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好適な実施形態に係る建築物の入札システムの全体の構成を示す概念図である。
図2】一般的なコンピュータの代表的な物理構成を示す構成図である。
図3】入札システムにより実行される処理の全体のフローを示すフロー図である。
図4】自動設計装置の機能的構成を示すブロック図である。
図5】土地活用事業にかかる土地の情報を入力するためのインタフェースの一例である。
図6】自動設計部及び収支計算部より得られた建築設計と、各種の収支計算結果等の概要を示す概念図である。
図7】販売基準価格を算定する方法の一例を説明する図である。
図8】入札システムにおける、自動設計装置により得られた設計についての入札についての動作を示す図である。
図9】建設費用入札装置の機能的構成を示す図である。
図10】建設費用の入札のためのインタフェースの一例である。
図11】区画入札装置の機能的構成を示す図である。
図12】区画の入札のためのインタフェースの一例である。
図13】区画の入札のためのインタフェースの一例である。
図14図13に示したインタフェースの別の例を示す図である。
図15】可否判定装置の機能的構成を示す図である。
図16】入札期間として、基本期間と延長期間が設定されている場合の判定器におけるフローの一例を示す図である。
図17】一の土地活用事業について複数の設計に対する入札を行うようにした場合の建築計画の実行の可否の判定を模式的に説明する図である。
図18】参考例に係る建築物の入札システムの全体の構成を示す概念図である。
図19】参考例に係る入札システムを利用して実行される処理の全体のフローを示すフロー図である。
図20】参考例に係る区画入札装置の機能的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る建築物の入札システム10の全体の構成を示す概念図である。
【0019】
入札システム10は、インターネットなどの公衆電気通信回線を用いたコンピュータ間通信のためのネットワークNに、それぞれ通信可能に、ストレージ100、自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400、可否判定装置500、施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800が接続されている態様として観念される。
【0020】
ストレージ100は、自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500で用いる情報を共通に記憶するデバイスであり、一般的なストレージサーバであってよい。また、自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500は、一般的なサーバコンピュータを用いて構築してよい。
【0021】
なお、図1では、ストレージ100、自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500をそれぞれ独立した装置として、また、それぞれ独立してネットワークNに接続されるものとして示したが、これは各装置が機能的に図1に示したような態様となっていれば足ることを示しているのであり、各装置の現実の物理的構成を限定するものではない。例えば、各装置は、クラウドコンピューティングサービスとして知られるネットワークサーバ上に仮想的に構築されてよく、本明細書でいう特定の「装置」が、複数台の物理的な機器に分散されて構築されていても、あるいは複数の「装置」が同一の物理的な機器上に構築されていてもよいのであり、現実の機器の構成、配置及び所在には制限されない。
【0022】
施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800は、一般的なPCでよく、入札システム10にネットワークNを介して接続および利用をするユーザが使用する端末を指している。したがって、これらの施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800の数は限定されず、また、常にこれらの端末が入札システム10に接続されているとは限らない。また、施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800との表現は、PCの利用形態に即したものである。すなわち、例えば、施主端末600についていえば、あるユーザが「施主」として入札システム10を利用する際に用いるPCを「施主端末」と称するのであり、同一のユーザ、同一のPCであっても、当該ユーザが「建築業者」として入札システム10を利用するならば、かかるPCは「建築業者端末」と観念される。したがって、施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800はいずれも、これらの端末の用途に特化した専用機である必要はない。
【0023】
以上説明した自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500並びに、施主端末600、建築業者端末700、購入者端末800は、物理的には、一般的なコンピュータを用いて実現して良い。図2はそのような一般的なコンピュータ1の代表的な物理構成を示す構成図である。
【0024】
コンピュータ1は、CPU(Central Processing Unit)1a、RAM(Random Access Memory)1b、外部記憶装置1c、GC(Graphics Controller)1d、入力デバイス1e及びI/O(Inpur/Output)1fがデータバス1gにより相互に電気信号のやり取りができるよう接続されている。ここで、外部記憶装置1cはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の静的に情報を記録できる装置である。またGC1dからの信号はCRT(Cathode Ray Tube)やいわゆるフラットパネルディスプレイ等の、使用者が視覚的に画像を認識するモニタ1hに出力され、画像として表示される。入力デバイス1eはキーボードやマウス、タッチパネル等の、ユーザが情報を入力するための機器であり、I/O1fはコンピュータ1が外部の機器と情報をやり取りするためのインタフェースである。CPU1aはコンピュータ1が必要とする情報処理の負荷に応じて、複数用意されて並列演算がなされるように構成されていてもよい。
【0025】
コンピュータ1を上述の各装置として機能させるための命令列を含むアプリケーションプログラムは、外部記憶装置1cにインストールされ、必要に応じてRAM1bに読みだされてCPU1aにより実行される。また、かかるプログラムは、適宜の光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の適宜のコンピュータ可読情報記録媒体に記録されて提供されても、インターネット等の情報通信回線を介して提供されてもよい。また、上述の各装置を使用者が使用するためのインタフェースは、コンピュータ1自身にかかるインタフェースが実装され、使用者が直接コンピュータ1を操作するものであってもよいし、他のコンピュータ上でwebブラウザのような汎用のソフトウェアを用い、I/O1fを介してコンピュータ1から機能が提供される、いわゆるクラウドコンピューティングの方法によってもよく、さらに、コンピュータ1が他のコンピュータに対してAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用可能に提供することにより、他のコンピュータからの求めに応じてコンピュータ1が上述の各装置として動作するものであってもよい。
【0026】
APIを利用する方法の一例としては、入札システム10を構成する装置群のうち、自動設計装置200、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500から各ユーザに提供されるサービスをワンストップで提供する窓口となるサーバを追加で設けてもよい。入札システム10からのサービスをWWW等のwebサービスを利用して提供する場合には、かかるサーバがいわゆるポータルとなり、かかるサーバが各ユーザに提供するポータルサイトを通じて各ユーザが利用する端末との情報通信を行い、ポータルサーバは、APIを利用して入札システム10を構成する装置群と必要な情報のやり取りを行うこととなる。
【0027】
図3は、入札システム10により実行される処理の全体のフローを示すフロー図である。同図を参照して、入札システム10が実行する処理の概要と、併せて、その技術上及び実用上の意味について以下説明する。
【0028】
入札システム10においては、まず、ステップS1にて、土地情報の入力がなされる。この土地情報の入力は、図1の施主端末600を用いて施主によりなされる。ここでいう土地は、遊休地や、現用途の終了が見込まれる土地など、今後の活用が見込まれる土地であり、当該土地に、独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物を建設し、当該区画の売却により事業収益を得ようとしているものを指す。入力された土地情報は、ストレージ100に記憶される。
【0029】
ここで、「施主」は、当該土地の所有者等の管理主体であり、上述の土地活用事業の事業主となるべき主体である。また、「区画」は独立に売買の対象となるものであるが、具体例としては、代表的には、集合住宅における各戸が「区画」に該当する。各区画の用途は居住用に限定するものではなく、オフィススペース、テナントスペースや会議室その他どのようなものであってもよいが、例えば区分所有権の移転を伴うなど、区画ごとに売買がなされる。「建築物」は複数の区画を有するものであればどのようなものでもよく、代表的には集合住宅やオフィスビル・テナントビルであるが、それ以外の建物であっても、また、複数の建物の集合体からなる施設であってもよい。また、「土地情報」は、当該土地に関する情報全般を指すが、特に、次のステップS2において説明するように、その土地上に建築する建築物の設計を行うにあたって十分な情報を含んでいる。
【0030】
入札システム10が行う処理の狙いは、実用上は、土地活用事業において、施主と、建築業者及び購入者のマッチングを行うとともに、同事業の実現可能性および収益性を高めることである。そしてそのため、技術的には、後述するように、建築費用の入札と区画への入札を相互に関連しつつ、並行して行う情報処理システムが構築される。
【0031】
ステップS2において、施主により入力された土地情報に基づいて、当該土地上に建築する建築物の自動設計が行われる。かかる自動設計は、自動設計装置200によってなされる。得られた設計は、ステップS3において、やはりストレージ100に記憶される。
【0032】
なお、本実施形態では、建築物の設計を自動設計装置200によるものとしたが、これに限られず、設計自体は適宜の設計業者に依頼し、あるいはコンペ等で公募したり、web上で入札させたりしてもよい。しかしながら、定型性・反復性の高い集合住宅やオフィスビル・テナントビルの場合には、自動設計を行うことにより、設計に要する時間及びコストを大きく低減することができ、結果として、事業の実現可能性および収益性は高くなりやすい。一方で、アミューズメント施設など一意性の高い施設の場合には、自動設計を採用しない場合もあり得る。
【0033】
ステップS4の建設費用の入札と、ステップS5の区画への入札は、同時並行でなされる。建築費用の入札の処理は建築費用入札装置300によって行われ、建築業者が建築業者端末700を通じて入札システム10にアクセスすることによってなされる。また、区画への入札の処理は区画入札装置400によって行われ、購入者が購入者端末800を通じて入札システム10にアクセスすることによってなされる。なお、ここで「建築業者」は、建築物の設計の施行を現実に引き受ける意思のある主体を指しており、入札の結果、落札できなかった者も含む。また、「購入者」は、区画の購入の意思のある主体を指しており、同様に、入札の結果、落札できなかった者も含み、また、個人であるか、法人その他組織であるかの別は問わない。
【0034】
そして、建築費用の入札(ステップS4)及び区画への入札(ステップS5)の結果及び/又は状況に応じて、ステップS6にて建築計画の実行の可否が判定される。かかる可否判定は、可否判定装置500によりなされる。可否判定装置500が行うことは、建築費用の入札の結果又は状況と、区画への入札の結果又は状況に応じて、マッチングが成立しているか、すなわち、上述の土地活用事業が成立するかを判定することであり、さらに、事業として収益性の高い設計についての建築計画を選択することを含んでよい。
【0035】
すなわち、本実施形態に係る入札システム10では、建築費用の入札と区画への入札を並行して行い、それぞれの入札の結果又は状況に応じて建築計画の実行の可否を判定することにより、土地活用事業の実現可能性および収益性を高め、以て、建築プロジェクトを事業として合理的に成立させるものである。以下、各フローについて実施形態に即してより詳細に説明する。
【0036】
図4は、自動設計装置200の機能的構成を示すブロック図である。本実施形態においては、自動設計装置200は、図3のフローのステップS1(土地情報入力)及びステップS2(建築物自動設計)の実行を担っているほか、ステップS6(可否判定)の一部に関連している。
【0037】
土地情報入力部201は、施主端末600を通じて入札システム10にアクセスする施主に対し、土地活用事業にかかる土地の情報を入力するためのインタフェースを提供する。図5は、そのようなインタフェースの一例であり、入札システム10、ここでは自動設計装置200にアクセスした施主が使用する施主端末600の画面上に表示され、必要事項の入力を促すものとなっている。
【0038】
土地情報は、該当する土地の所在と権利関係、及び当該土地についての土地活用事業を定めるにあたって必要な情報を含む。図5に示したインタフェースでは、土地の所在に対応するものとして「敷地情報」の入力を促している。「敷地情報」には、その土地の住所と面積が含まれている。また、図5に示したように「地図から選ぶ」ボタンコントロールが用意され、「敷地情報」を画面上に表示した地図上で該当箇所を指定することにより自動入力するようにしてもよい。
【0039】
また、同インタフェースでは、権利関係に対応するものとして、「権利種別」及び「権利者情報」の入力を促している。「権利種別」は、活用しようとする土地の権利の種別を指定するものであり、所有権、貸借権、地上権といったものや、一部貸借権を含む所有権など、必要なものを選択もしくは入力することができる。また、「権利者情報」は、「権利種別」で指定した権利主体に関する情報である。具体的には、所有権に対してはその所有権者、貸借権に対してはその貸借権者を特定することができる情報であり、一般的には、氏名又は名称及び住所又は名称をもって「権利者情報」としている。なお、ここでの権利者(所有権者等)と施主は一致する場合もあれば、一致しない場合もあり得る。例えば、権利者から土地活用事業の実施の委託を受けた第三者が施主となることも考えられる。
【0040】
さらに、同インタフェースでは、当該土地についての土地活用事業を定めるにあたって必要な情報に対応するものとして、「活用用途」及び「目標利益率」の入力を促している。「活用用途」は、活用しようとする土地にどのような目的の建築物を建築してその活用を図っていくかを指定するものであり、例えば、集合住宅の建築及び分譲を図るのか、あるいはテナントビル・オフィスビルその他の施設の建築及び分譲を図るのかといった区分を選択もしくは入力することができる。さらに、当該土地についての土地活用事業を定めるにあたって必要な情報として、「活用用途」以外の情報の入力ができるようにしてもよい。そのような情報としては、建築物のデザイン種別、例えば和風/洋風、モダン/クラシックといったデザインコンセプトの指定などが考えられる。「目標利益率」は、土地活用事業自体が目標とする事業収益における利益率を指定するものである。
【0041】
なお、本実施形態では、土地情報の入力のインタフェースは、自動設計装置200により施主に提供されるが、これに限定されなくともよい。土地情報の入力インタフェースを提供する別のサーバを用いてもよいし、施主端末600自身にアプリケーションプログラムをインストールし、当該アプリケーションプログラムによりインタフェースが提供されてもよい。入力された土地情報は、直接自動設計装置200に送信されてもよいし、ストレージ100に一旦記憶され、自動設計装置200はストレージ100に記憶された土地情報を参照するものとしてもよい。
【0042】
図4に戻り、入力された土地情報は、自動設計部202へと受け渡され、当該土地上に建築する建築物の自動設計がなされる。自動設計部202では、当該土地の所在に基づいて、地図・地形情報DB204を参照し、当該土地の平面形状や高低差などの詳細な土地形状を取得し、当該土地上に建築する建築物の設計を行う。この際、法令・規制情報DB205を参照して、当該土地における建築の法令上及び行政による規制、例えば、住居地域・商業地域・工業地域等の用途地域の別や、建蔽率・容積率・高さ制限・北側斜線制限・緑化率等を設計に対する制限として用い、当該土地についての土地活用事業を定めるにあたって必要な情報に応じて、設計データテンプレートDB206を参照して、施主から指定された土地活用事業に適合した建築物の構造を構築する。例えば、土地活用事業として、集合住宅の建築及び分譲が指定されている場合には、設計データテンプレートDB206に用意されている集合住宅のテンプレートから適合するものを組み合わせて、構造強度を担保しつつ、法令や規制に適合するようにフロアを積み上げ、必要なスペースを配置していくことにより建築物の建築設計を行う。この時、不動産情報DB207を参照し、近隣での不動産需要や相場から、売却可能性および販売益が最適化されるようにテンプレートを選択する。例えば、当該土地の近隣で、単身者向け物件の需要が旺盛で相場が高ければ単身者向けの区画のテンプレートを優先的に用い、ファミリー向け物件の需要が旺盛であればファミリー向けの区画のテンプレートを優先的に用いるなどである。自動設計部202でなされる自動設計のアルゴリズムについては、機械学習を利用するものを含む種々のものが利用可能であるが、いずれにせよ公知のものを用いてよく、その詳細な説明は省略する。なお、ここでいう建築設計には、構造設計、意匠設計及び設備設計が含まれていてよく、またさらには建築のための工法及び工程計画が含まれていてよい。
【0043】
得られた建築設計は、収支計算部203へと受け渡され、建築事業としての各種の費用計算を含む収支が計算される。この際、資材マスタ208から建築資材等の価格情報、工費マスタ209から建築に係る工事費用の価格情報が参照される。またさらに、管理費マスタ210から建築中の事務所費、各種の当局に対する申請等の事務手続費、宣伝広告費等の各種販売管理費等の管理費の価格情報が参照される。
【0044】
図6は、自動設計部202及び収支計算部203より得られた建築設計と、各種の収支計算結果等の概要を示す概念図である。同図には、土地上に配置された建築物のBIM(Building Information Modeling)等の3Dモデルと、建築物その他工作物の設計図、建築工事の工程計画の工程図、資材や機材のリスト、強度計算、収支計画その他の計算書類、そして、収支計算部203により見積もられた建築費用(以下、「初期建築費用」という。)に基づいて、施主により入力された目標利益率を実現できるように設定された、建築設計に係る建築物に含まれる各区画の販売価格である販売基準価格が示されている。以降、本明細書では、これら建築設計と工程計画、収支計算を含む各種計算書類を含めて、「設計」と称する。
【0045】
なお、販売基準価格は、一例として、図7に示す方法で算定してよい。図7の左側の積み上げ縦棒グラフは、事業コストを示しており、その内訳はおおむね、土地価格、建築費用、管理費及び利益の和である。ここで、土地価格は、土地活用事業に係る土地の価値のうち、同事業に供する部分の価格であり、建築物の区分所有権に係る敷地権として土地を売却するのであればその土地の価格、また、貸借権や地上権を設定する場合にはそれぞれ対応する権利の評価額である。建築費用は、上ですでに説明した初期建築費用であり、管理費には、販売管理費等も含まれる。利益は、施主により入力された目標利益率に相当する額が事業コスト全体に対して占めるように計算される。例えば、目標利益率を15%とすると、土地価格、建設費用及び管理費が事業コスト全体に占める割合は85%であり、残り15%が利益となる。
【0046】
右側の棒グラフは総販売価格、すなわち、全区画の基準販売価格の総計を示している。ここで、総販売価格は、区画の販売総数が、全区画数に対する目標販売率に到達した場合に事業コストを賄うことができるように設定される。図7に示した例では、目標販売率が80%に設定されているため、全区画のうち、8割の売買契約が成立したならば、事業コストを回収して所望の利益が得られ、この土地活用事業は事業として成立することとなる。
【0047】
各区画に対する基準販売価格は、このようにして得られた総販売価格を各区画に対して配分することにより得られる。この販売は、必ずしも総販売価格を各区画に均等に割り振る必要はなく、それぞれの区画の価値の高低に応じて傾斜配分してよい。例えば、面積の大きい区画ほど高い価値がある、階層の高い区画ほど高い価値がある、眺望や採光の良い区画ほど高い価値がある、等とすることができる。
【0048】
以上のようにして得られた設計は、ストレージ100に、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500からアクセス可能に記憶される(図3のステップS3)。
【0049】
図4に戻り、自動設計装置200の収支計算部203は、さらに、再計算部211を備えている。再計算部211は、収支計算部203の一部の機能を流用するものであり、設計における建築費用が初期建築費用から修正された際に、各区画の販売基準価格を再計算するというものである。再計算部211の入札システム10中における動作については後述する。
【0050】
なお、図4に示した例では、地図・地形情報DB204、法令・規制情報DB205、設計データテンプレートDB206、不動産情報DB207、資材マスタ208、工費マスタ209、及び管理費マスタ210は自動設計装置200に含まれるものとして示したが、これらの全て又は一部を外部のサーバ、例えば、ストレージ100に保存するものとして、適宜自動設計装置200からアクセスするものとしてもよい。また、再計算部211は、その機能は収支計算部203の一部と重複しているため、自動設計装置200に設けることが合理的ではあるが、必ずしもかかる構成に限定されず、外部の別のサーバ、例えば、建築費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500のいずれか又はそれ以外のサーバに設けてもよい。
【0051】
図8は、入札システム10における、自動設計装置200により得られた設計についての入札についての動作を示す図である。同図では、自動設計装置200の構成中、収支計算部203及び再計算部211のみを示している。また、同図では、自動設計装置200、建設費用入札装置300、区画入札装置400及び可否判定装置500が互いに直接やり取りをしているように描かれているが、これらのやり取りは、ストレージ100を介した間接的なものでよい(もちろん直接やり取りをしても差し支えない)。同図は、動作の流れを説明するために、各装置間の関係を概念的に示したものである。
【0052】
まず、自動設計装置200により得られ、初期建築費用及び販売基準価格が含まれる設計が建築費用入札装置300及び区画入札装置400により参照され、それぞれ、建築費用の入札及び、各区画に対する入札が行われる。この2種の入札は、並行して行われる。
【0053】
設計には、自動設計装置200による計算により得られた初期建築費用が含まれているが、土地活用事業を現実に遂行するにあたって生じる現実の建築費用は、同事業の建築を落札した建築業者が提示した落札価格であり、初期建築費用とは異なることが予想される。したがって、設計についての建築費用は、建築費用の入札状況に応じて実際には変動する。
【0054】
同様に、設計には、自動設計装置200による計算により得られた販売基準価格が含まれているが、土地活用事業を現実に遂行するにあたって、区画の販売により得られる現実の販売価格は、同区画を落札した購入者が提示した落札価格であり、販売基準価格とは異なることが予想される。したがって、各区画についての販売価格もまた、各区画の入札状況に応じて実際には変動する。
【0055】
そしてそれだけにとどまらず、建築費用入札装置300における入札の過程において、より低い建築費用を提示する入札が行われたならば、図7に示した事業コストにおける建築費用が、初期建築費用より低くなることを意味するから、事業コスト自体が圧縮されることになる。その場合、事業コストから算出される区画の総販売価格、ひいては各戸の販売基準価格自体が低くなる。すなわち、入札の進展に伴って、区画入札装置400において入札しようとする購入者により低価格の販売基準価格を提示できるため、購入者に入札を促し、区画に対する売買契約がより成立しやすくなる。すなわち、この土地活用事業が合理的に成立する可能性がより高まる。
【0056】
そのため、建築費用入札装置300は、入札状況に応じて、実際に入札のあった建築費用を建築費用見込として再計算部211に通知する。再計算部は、設計時に得られた初期建築費用に替えて、通知された建築費用見込を用いて販売基準価格を再計算し、区画入札装置400に通知する。区画入札装置400は、通知を受けた更新された販売基準価格を購入者に提示しつつ入札を続行する。
【0057】
この入札の進展状況は、可否判定装置500によりモニタされ、当該土地活用事業における建築物の建築計画の実行の可否が、所定の条件に基づいて、随時判定される。その条件の詳細は後述するが、通常は、この土地活用事業が合理的に成立する、すなわち、所望の利益を確保できるだけの数の区画の販売の確定(購入者からの申し込み)により、土地活用事業が成立すると判定してよい。
【0058】
図9は、建設費用入札装置300の機能的構成を示す図である。建設費用入札装置300は、図3のステップS4にて、入札システム10に建築業者端末700を介してアクセスする建築業者に対して、土地活用事業における建築工事についての建設費用の入札環境を提供するものであり、独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物の設計に基づいて、電気通信回線を通じ、前記建築物の少なくとも建築費用について建築業者に入札させるものである。
【0059】
建設費用入札装置300は、設計受付部301、入札受付部302、入札管理部303を有しており、入札管理部303にはさらに、入札評価部304及び入札状況通知部305が設けられている。設計受付部301は、自動設計装置200により設計がなされた場合に、その設計を入札管理部303に登録する。具体的には、設計受付部301は、ストレージ100を定期的にモニタし、新規に設計が登録された場合にこれを登録してもよいし、自動設計装置200から新規に設計がなされた旨の通知を受けて、これを登録するようにしてもよい。なお、ここでいう登録は、設計のデータそのもののコピーを入札管理部303に保存することを必ずしも意味しない。入札管理部303は、入札を管理すべき設計が存在することを把握していれば足り、必要な情報は都度、ストレージ100にアクセスして取得するものとしてよい。後述する入札状況についても同じであり、入札状況を示す情報そのものはストレージ100に記憶され、入札管理部303が必要に応じて都度アクセスするものとしてもよいし、入札管理部303自身が入札状況を示す情報を記憶管理してもよい。
【0060】
入札受付部302は、入札管理部303においてその入札が管理されている設計について、建築業者端末700を介して入札システム10にアクセスする建築業者に対して、入札のためのインタフェースを提供する。入札に関し必要な情報は入札管理部303から提供を受け、受け付けた入札は入札評価部304へと受け渡される。
【0061】
入札管理部303は、自動設計装置200によりなされた設計についての建築費用の入札を管理する。入札管理部303にて管理される設計は、必ずしも1つに限られる必要はなく、複数の設計についての入札が同時並行して行われてよい。図9では、設計1、設計2、設計3の3つが入札管理部303により管理されている様子を模式的に示している。
【0062】
それぞれの設計には、各設計についての最新の入札状況が紐づけられて管理される。ここで、入札状況には、入札期間に関する情報、入札者に関する情報、それぞれの入札の評価に関する情報が含まれていてよい。
【0063】
入札期間は、一般に入札の開始日時と終了日時により管理され、入札期間中の入札について入札受付部302にて受け付ける。そのほかにも、より複雑な期間管理、例えば、基本期間と延長期間を設けておき、基本期間中は後述する可否判定装置500の可否判定の如何に関らず入札を受け付け、そのあとの延長期間では、可否判定装置500による、建築計画の実行可と判定されるまでの間入札を受け付けるものとしてよい。すなわち、基本期間中に建築計画の実行可との判定がなされていれば、基本期間の終了時点をもって入札を終了し、建築計画が実行可と判定されるに十分な入札がなされていない場合には、延長期間を上限としてさらに入札を待つことも可能であるなど、入札の状況に応じて入札期間を変動させるものとしてもよい。
【0064】
入札者に関する情報は、入札した建築業者と、その入札内容である。入札内容には、建築費用についての入札額が含まれる。
【0065】
それぞれの入札の評価は、各入札の優劣を、例えば数値(スコア)をつけるなどして、所定の基準に基づいて評価したものである。もっとも単純な評価は、入札額が最も低いものを優とするものであるが、この評価については、入札評価部304により行われる。
【0066】
入札受付部302は、入札期間中の建築業者からの入札を受け付ける。入札受付部は、入札管理部303に登録された設計について、必要な情報をネットワークN上で公開し、入札システム10にアクセスする建築業者に閲覧できるようにする。建築業者は、一又は複数の設計について、その建築設計や各種計算書、工程表等、及び、初期建築費用を参照し、自身の判断に基づいて、当該建築を施工できる建築費用を入札する。
【0067】
図10は、入札受付部302が建築業者端末700の画面上に表示する、建設費用の入札のためのインタフェースの一例である。入札システム10にアクセスした建設業者は、現在入札が行われている設計を、プロジェクト選択より選択し、その設計の必要な情報を取得することができる。図10の例では、設計を選ぶと、インタフェース上にプロジェクト種別、すなわち、建築しようとする建築物の集合住宅やテナントビルといった種別、入札期間やその所在といった概要及び初期建築費用(同インタフェース上では、「参考建築価格」として示されている)が表示され、また、設計に含まれる3Dモデル(BIMモデル)や設計図面、各種計算書及び工程表といった、建築費用を算定するために必要なすべての情報をダウンロードし参照することができるようにボタンコントロールが設けられている。なお、同インタフェースでは、所在の欄に設けられた地図参照のボタンコントロールを選択することで、例えば、外部の地図情報サービス等をネットワークNを通じて呼び出し、その所在を地図上で確認できるようになっている。
【0068】
建設業者は、必要な情報に基づいて各々検討を行い、当該設計についての建築を引き受けてもよいと考える場合には、必要な情報をインタフェースに入力し、入札と表示されたボタンコントロールを選択することにより、入札することができる。本例では、建設業者には、その名称と入札価格の他に、入札時VE(Value Engineering)提案を記入する欄が用意されている。また、VE提案に必要な電子ファイル等の資料が必要な場合には、入札時に合わせて添付することができるようになっている。
【0069】
図9に戻り、受け付けられた入札は、入札評価部304へと受け渡され、当該入札の評価が行われる。もっとも単純な入札の評価は、その入札額に基づくものであるが、建築工事の施工の確実性や品質等を担保するため、その他の評価基準をさらに導入してもよい。例えば、入札額の初期建築費用からの削減額(又は削減割合)を60%、当該建築業者のこれまでの実績や信頼を20%、VE提案の有無等の付加価値を20%などと重みづけをしたスコアを作成し、当該スコアをその入札の評価としてよい。
【0070】
入札状況通知部305は、各設計の入札状況を自動設計装置200及び可否判定装置500に通知する。自動設計装置200に対しては、一の設計について、入札状況において、最も評価の高い入札における入札価格を再計算部211に通知する。これにより、図8にて示したように、当該設計についての販売基準価格が再計算部211により再計算され、区画入札装置400へと通知される。すなわち、ある特定の時点において、最も評価の高い入札における建築価格は、それを上回る評価の入札がなされない限りは、土地活用事業を現実に遂行するにあたって生じる現実の建築費用となると見込まれるため、販売基準価格は、当該建築価格に基づいて算定されるべきだからである。入札状況通知部305から自動設計装置200への通知は、定期的に行ってもよいが、最も評価の高い入札が更新された時点で行うと、当該入札から販売基準価格の改定までのタイムラグが短く好ましい。
【0071】
一方、可否判定装置500に対しては、必要な時点での通知でよい。例えば、入札期間の経過を待ち、入札期間の終了時点で、最も評価の高い入札における入札価格を通知するようにしてよい。また、前述したように、入札期間が基本期間と延長期間からなる場合には、基本期間中は特に通知を行わず、基本期間の終了時点に入札価格を通知し、延長期間中は、最も評価の高い入札が更新されるたびに入札価格を通知するようにすればよい。
【0072】
あるいは、入札期間(又は基本機関)の経過の有無にかかわらず、最も評価の高い入札が更新されるたびに入札価格を通知してもよい。この場合には、可否判定装置500における事業の可否判定の進展の経過を施主が確認することも可能となる。
【0073】
図11は、区画入札装置400の機能的構成を示す図である。区画入札装置400は、図3のステップS5にて、土地活用事業における区画の販売についての入札環境を提供するものであり、設計に基づいて、区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させるものである。
【0074】
区画入札装置400は、設計受付部401、入札受付部402、入札管理部403及び再計算受付部406を有しており、入札管理部403にはさらに、入札状況通知部405が設けられている。設計受付部401は、自動設計装置200により設計がなされた場合に、その設計を入札管理部403に登録する。先に説明した建設費用入札装置300の設計受付部301と同様に、設計受付部301は、ストレージ100を定期的にモニタし、新規に設計が登録された場合にこれを登録してもよいし、自動設計装置200から新規に設計がなされた旨の通知を受けて、これを登録するようにしてもよい。また、登録が必ずしも、設計のデータそのもののコピーを入札管理部403に保存することを意味しないのは、建設費用入札装置300についてすでに述べたとおりである。
【0075】
入札受付部402は、入札管理部403においてその入札が管理されている設計について、購入者端末800を介して入札システム10にアクセスする購入者に対して、入札のためのインタフェースを提供する。入札に関し必要な情報は入札管理部403から提供を受け、受け付けた入札は入札状況に反映される。
【0076】
入札管理部403は、自動設計装置200によりなされた設計に含まれる建築物の各区画についての入札を管理する。入札管理部403にて管理される設計は、必ずしも1つに限られる必要はなく、複数の設計についての入札が同時並行して行われてよい。図11では、建設費用入札装置300について示した図9と同様に、設計1、設計2、設計3の3つが入札管理部403により管理されている様子を模式的に示している。
【0077】
ここでも、それぞれの設計には、各設計についての最新の入札状況が紐づけられて管理される。ここで、入札状況には、入札期間に関する情報、入札者に関する情報、入札価格に関する情報が含まれていてよい。
【0078】
入札期間は、通常は、建設費用入札装置300において設定した建設費用についての入札期間と同一としてよいが、これより長くしてもよい。区画の入札は、建設費用の入札と異なり、可否判定装置500が建築計画を実行可と判定した場合においても、ひきつづき未入札の区画が存在し得るからである。そのような場合には、区画ごとに入札の期間を設定する、例えば、未入札の区画については、最初の入札から1週間を入札期間として指定してもよいし、可否判定装置500が建築計画を実行可と判定した後は、事実上入札を実施せず、提示されている販売基準価格(又はそれ以上)での入札をもって落札したものとしてもよい。
【0079】
入札者に関する情報は、入札した購入者を特定する情報と、入札額である。
【0080】
入札受付部402は、入札期間中の購入者からの入札を受け付ける。入札受付部は、入札管理部403に登録された設計についての建築物の情報と、区画の情報等、必要な情報をネットワークN上で公開し、入札システム10にアクセスする購入者に閲覧できるようにする。購入者は、一又は複数の設計について、建築物の情報と、各区画の情報を参照しながら、自身が購入を希望する区画についての入札を行う。
【0081】
図12及び図13は、入札受付部402が購入者端末800の画面上に表示する、区画の入札のためのインタフェースの一例である。入札システム10にアクセスした購入者の購入者端末800には、図12に示すようなインタフェースが表示され、購入者が、現在入札が行われている建築物及び区画に関する情報を、プロジェクト選択より選択し、区画を購入するか否かを判断するために必要な情報を取得することができるようになっている。図12の例では、プロジェクト選択より設計を選ぶと、インタフェース上にその設計についての建築物の種別、すなわち、建築しようとする建築物の集合住宅やテナントビルといった種別や階数などの概要、入札期間やその所在、近隣環境についての情報といった、購入者が区画の購入を判断する上で考慮するであろう各種の情報が表示されるようになっている。なお、同インタフェースでは、所在の欄に設けられた地図参照のボタンコントロールを選択することで、例えば、外部の地図情報サービス等をネットワークNを通じて呼び出し、その所在を地図上で確認できるようになっている。
【0082】
また、インタフェース上には、選択された設計に係る建築物の完成予想図を表示してよく、購入者が購入を検討する際に、当該建築物の完成イメージを把握しやすくしている。また、かかる完成予想図は、設計に含まれるBIMモデル等に基づく3Dグラフィックスとして表示してよく、購入者がインタフェース上で自由に視点を変えるなどして、より詳細な検討がしやすくなっている。
【0083】
購入者が、選択した設計に係る建築物に興味を持ち、その購入を希望する場合には、図12のインタフェースの「区画入札」のボタンコントロールを選択する。そうすると、図13に示すインタフェースが表示され、入札に係る各区画の詳細な情報を確認するとともに、入札に参加できるようになっている。すなわち、区画入札装置400では、購入者による各区画の購入は入札方式になっており、各々の区画について、入札期間内になされた有効な入札のうち、最も高い額の入札を行ったものが落札し、その区画を購入できるようになっている。
【0084】
図13のインタフェースは、入札に係る各区画をタイル表示の形で購入者に一覧できるように示しており、それぞれの区画を示す記号(同図では、区画番号)と、その状態(入札を受け付けているか否か等)、現在の入札価格(すなわち、有効な入札のうち、最も高い金額)が示されている。同図における入札価格は、1万円単位で示されている。また、同図のインタフェースでは、各区画を示すタイルには、「間取図」、「VR」及び「入札」のボタンコントロールが設けられている。
【0085】
「間取図」のボタンコントロールを選択すると、各区画の間取りを示す平面図が表示され、各区画の具体的な広さや各部屋、設備等の配置を確認することができる。また、「VR」のボタンコントロールを選択すると、3Dグラフィックスを用いて、建築物の完成後の当該区画内部の様子をリアルに確認することができる。なお、図13に示したものは、各タイルに表示する情報の一例を示すものであり、必ずしもこれらの全てが表示されていなくともよく、また、ここで示したもの以外の情報が示されていてもよい。
【0086】
区画について確認及び検討を行った購入者は、その区画の購入を希望する場合、「入札」のボタンコントロールを選択する。その場合、入札に必要な情報を入力するインタフェースが表示され(図示は省略する)、入札額と、購入者に関する情報、例えば、氏名又は名称と住所又は所在、連絡先等を入力する。また、入札の確実性を担保するため、入札にあたっては、所定の契約前払金の入金を要求してもよい。かかる契約前払金は、落札後、売買契約時に購入代金の一部として充当される性質のものとしてよく、落札に失敗するなど、契約不成立の場合には返金するものとしてよい。
【0087】
購入者は、区画の購入を検討するにあたって、その現在価格を考慮の対象とするが、入札がまだない区画については、当該区画についての販売基準価格を現在価格として表示する。すなわち、区画入札装置400は、各区画の最初の現在価格として、販売基準価格を購入者に提示している。購入者は、入札の際、購入を希望する区画の購入金額を入札するから、落札するためには、当該区画の現在価格を上回る額での入札を行う必要がある。したがって、販売基準価格は、本例では、当該区画の最低販売価格であり、区画入札装置400は、購入希望者に当該区画の購入金額を入札させるものとなっている。
【0088】
なお、上の例では、図12に示したインタフェースと図13に示したインタフェースは別々のものとして示したが、両者を一のインタフェースとして、例えばスクロールさせることによりその全体を閲覧可能としてもよいし、また、必要な情報を任意の数のインタフェースに分離するようにしてもよい。
【0089】
図14は、図13に示したインタフェースの別の例を示す図である。図14のインタフェースでは、各区画を示すタイルに対し、入札中の区画の購入金額の最大値ではなく、基準販売価格とプレミア価格が示されるようになっている。ここで、基準販売価格とは、販売基準価格に等しく、当該区画の最低販売価格を示している。そして、プレミア価格とは、基準販売価格に付加される金額であり、購入者が区画を購入するにあたって必要となる当該区画の購入金額は、基準販売価格とプレミア価格の和となる。
【0090】
そして、図14のインタフェースでは、「入札」のボタンコントロールを選択した購入者が入札額として提示するのは、プレミア価格である。すなわち、購入者は、基準販売価格に対して、どれだけの購入価格の上乗せができるかを入札することとなる。
【0091】
図13のインタフェースと図14のインタフェースは、販売基準価格が設計時のもののまま変化しないならば、これは単に購入者に対して、情報をどのように提示するかの差でしかなく、両者に技術上の、あるいは、入札システム10を利用する上での利便性に本質的な差はない。しかしながら、図8に示したように、再計算部211は、建築費用の入札状況に応じて、販売基準価格を再計算し、改定する。そして再計算された販売基準価格は、図11に示した再計算受付部406によって区画入札装置400に受け付けられ、入札受付部402へと受け渡される。
【0092】
そして、図13及び図14に示したインタフェースにおいて示される価格は、販売基準価格の改定に伴い変更される。すなわち、区画入札装置400においては、販売基準価格は、当該設計に係る建築物の建築費用についての建築費用入札装置300における入札額に応じて変動させられることとなる。
【0093】
具体的には、図13のインタフェースにおいて、区画1501に示された現在価格:12,000が入札によるものである場合、これは購入者が当該区画に対して認めた評価額であるから、これをそのまま維持する一方、区画1502に示された現在価格:11,000が未入札の販売基準価格であり、再計算によりこの価格が10,500に変動した場合、現在価格は再計算に係る販売基準価格である10,500に改められる。このように、未入札の区画についての販売基準価格を再計算したものに改めていくことにより、未入札区画に対する入札が促進され、後述する可否判定装置500において、建築計画の実行が可能であると判定される可能性が高まる。
【0094】
一方、図14のインタフェースにおいては、全ての区画に対し基準販売価格が示されており、購入者が区画の購入のために必要とする金額は基準販売価格とプレミア価格の和である。この場合、基準販売価格は販売基準価格を示しているから、再計算により、販売基準価格が変動すると、それに応じて、表示される基準販売価格も変動することとなる。したがって、この場合には、図13の例と同様に、未入札区画に対する入札が促進されると同時に、建築費用の入札状況に応じて、すでに入札のあった区画についても区画の購入金額が変動する、すなわち、価格が下がるため、入札期間の早い段階において入札する購入者と、同期間の終わり近くに入札する購入者との間の不公平感を解消でき、例えば、入札期間の終わり間際に入札が集中するなどして、実質的に入札期間が十分に確保されない事態を防止できる。
【0095】
図15は、可否判定装置500の機能的構成を示す図である。可否判定装置500は、図3のステップS6にて、土地活用事業、すなわち、建築計画の実行の可否を判定するものであり、建築費用入札装置300における入札における建築物の建築費用についての入札額、並びに、区画入札装置400における入札における複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定するものである。
【0096】
可否判定装置500は、設計受付部501、入札状況受付部507、可否判定部508、結果送信部510を有しており、可否判定部508はさらに、判定器509が設けられている。設計受付部501は、ストレージ100より、自動設計装置200により得られた設計を受け付け、可否判定部508に登録する。なお、登録が必ずしも、設計のデータそのもののコピーを入札管理部403に保存することを意味しないのは、先の建設費用入札装置300及び区画入札装置400と同様である。また、設計のデータのコピーを可否判定部508に記憶管理する場合であっても、設計のデータ全てを可否判定部508に保存する必要はなく、建築計画の実行の可否の判定に必要な部分だけでよい。具体的には、収支計算に係る計算書が含まれていればよく、建築設計や工程計画に関する部分は必ずしも必要ではない。
【0097】
入札状況受付部507は、建築費用入札装置300における建築費用についての入札状況及び区画入札装置400における建築費用についての入札状況を随時受け付け、可否判定部508における該当する設計に紐づけ、登録する。入札状況受付部507における入札状況の受付は、建築費用入札装置300及び区画入札装置400から直接入札状況の通知を受けて行ってよいし、ストレージ100を介して間接的に入札状況を受け付けるものとしてもよい。ストレージ100を介する場合には、例えば1時間毎など定期的にストレージ100にアクセスし、記憶された入札状況に更新がないか確認するようにしてもよいし、入札状況に更新があった旨の通知を建築費用入札装置300及び区画入札装置400から受けてストレージ100にアクセスするようにしても、又はその両方であってもよい。
【0098】
判定器509は、可否判定部508に登録された各々の設計の入札状況を参照して、当該設計についての建築計画が実行可能か否かを判定する。ここで、建築計画が実行可能であるとは、可否判定時点において、当該設計に係る建築物についての複数の区画の期待総販売価格が事業コストを上回る状態を指す。すなわち、建築物の建築計画の実行の可否は、建築物の建築費用についての入札額と所定の固定費に必要な利益を加算した額と、複数の区画についての入札額の合計とを比較して判定される。
【0099】
事業コストは、図7を参照してすでに説明した通りのものであり、土地価格、建築費用、管理費及び利益の和であるから、土地価格及び管理費については設計における収支計算書より知ることができ、建築費用は、建築費用入札装置300における最も評価の高い入札に係る入札額であるから、入札状況が更新される都度変動する可能性がある。利益についても、本実施形態では、事業コストに占める割合で設定しているため、建築費用が変動するとその額は変動する。なお、利益の額は、割合ではなく絶対額として設定しても、設計当初の額に固定し変動しないものとして取り扱ってもよい。
【0100】
期待総販売価格は、可否判定時点における、購入者から申し込みのあった区画の期待される販売価格の総計である。すなわち、区画入札装置400において入札のなされた区画についての最も高い(すなわち、落札される蓋然性の最も高い)入札額の総計が、期待総販売価格である。したがって、期待総販売価格は、土地活用事業を実行した際に、現実に得られる売上を保証するものであるから、これが事業コストを上回った時点で、目標とする利益が得られることになる。
【0101】
判定器509における判定は随時行われるが、設定された入札期間に応じて判断のタイミングを調整してよい。図16は、入札期間として、基本期間と延長期間が設定されている場合の判定器509におけるフローの一例を示す図である。なお、同図に示したフローは一の設計についての判定のフローであるから、可否判定部508に複数の設計が登録されている場合には、設計毎に図16に示した処理がなされることになる。
【0102】
判定器509は、まず、入札期間のうち、基本期間の間はステップS11~S13を実行する。この基本期間中は、原則として、新たな入札を待つため、判定器509は建築計画が実行可能か否かの判定は行わず、保留する。
【0103】
ステップS11において、判定器509は基本期間が経過しているか否かを判定する。基本期間が経過していれば、直ちにステップS14へと進み、延長期間についての処理に移る。そうでない、すなわち、基本期間が経過していなければ、ステップS12へと進み、建築費用入札装置300又は区画入札装置400における入札状況に更新がないかを判定する。入札状況の更新がなければ特にすべきことはなく、ステップS11へ戻り、以降基本期間の経過又は入札状況の更新を待つ。入札状況の更新があれば、ステップS13へと進み、事業コスト及び期待総販売価格を再計算する。
【0104】
この時、可否判定装置500は、ステップS13での再計算の結果を、施主、建築業者及び購入者の求めに応じて通知してよい。すなわち、施主、建築業者及び購入者は、それぞれ、施主端末600、建築業者端末700及び購入者端末800を通じて入札システム10にアクセスし、アクセス時点での期待総販売価格が必要な事業コストに対しどの程度充足しているかを閲覧できてよい。このようにすることで、施主、建築業者及び購入者は、当該建築計画が実行される可能性がどの程度であるかを把握することができる。すなわち、実行可能性が高い建築計画に対しては、より活発な入札がなされることが期待できるほか、実行可能性が低くとどまる建築計画に対しては、施主に対して、利益の設定値や、入札期間を見直す契機となると期待される。なお、購入者に対しては、事業コスト及び期待総販売価格の絶対額ではなく、事業コストに対する期待総販売価格の充足率を示すようにしてもよい。
【0105】
基本期間が経過したならば、ステップS11で経過と判定され、処理はステップS14へと進む。ステップS14~S21は延長期間中の処理であり、この間の処理は、原則として、延長期間を限度として、建築計画が実行可能と判定されるまで入札を待つものである。
【0106】
ステップS14では、基本期間中の入札により、すでに、建築計画が実行可能となっている、すなわち、期待総販売価格が事業コストを上回っているか否かを判定する。上回っているならば、延長期間の満了を待つ必要はなく、直ちにステップS15にて建築計画は実行可と判定し、判定器509の処理を終える。
【0107】
基本期間中の入札によっては、建築計画が実行可能となっていない場合には、ステップS14で否定の判定がなされるため、ステップS16へと処理が進み、判定器509は延長期間が経過しているか否かを判定する。ここで延長期間が経過するとは、建築計画が実行可能となることなく、設定されたすべての入札期間が経過したということを意味しており、建築計画を合理的に実行するだけの入札がなく、施主と、施工者である建築業者、及び購入者の間のマッチングは不首尾に終わったことを示している。したがって、この場合にはステップS17へと進み、建築計画は実行不可と判定し、判定器509の処理を終える。
【0108】
一方、ステップS16にて、延長期間が経過していなければ、ステップS18へと進み、建築費用入札装置300又は区画入札装置400における入札状況に更新がないかを判定する。入札状況の更新がなければ特にすべきことはなく、ステップS16へ戻り、以降延長期間の経過又は入札状況の更新を待つ。入札状況の更新があれば、ステップS19へと進み、事業コスト及び期待総販売価格を再計算する。
【0109】
入札状況の更新による事業コスト及び期待総販売価格の再計算があれば、ステップS20へと進み、かかる更新により、建築計画が実行可能となっている、すなわち、期待総販売価格が事業コストを上回っているか否かを判定する。上回っているならば、直ちにステップS21へと進み、建築計画が実行可と判定し、判定器509の処理を終える。一方で、かかる更新によっても、建築計画が未だ実行可能でない場合には、ステップS16へと戻り、以降同様に延長期間の経過又は入札状況の更新を待つ。
【0110】
図15に戻り、判定器509における判定の結果は、結果送信部510により、必要な対象に対し送信される。具体的には、施主端末600に対し、建築計画の実行の可否の通知をするとともに、入札に参加した建築業者及び購入者の建築業者端末700及び購入者端末800に、建築計画の実行の可否、すなわち、当該設計に係る建築プロジェクトの成否を通知する。
【0111】
また、建築計画の実行可と判定された場合には、入札者に対し、落札の成否を合わせて通知する。落札者に対しては、落札の事実及び、契約(建築業者に対しては、建築業務委託契約、購入者に対しては売買契約)成立の通知及び、必要な手続きの案内を行う。また、必要に応じて、銀行等の金融機関や司法書士や行政書士等、当該土地活用事業を円滑に進めるために、あらかじめ、本入札システム10による土地活用事業に対する協力を取り付けてある協力者に必要な情報を送信するようにしてよい。
【0112】
なお、結果送信部510からは、建築費用入札装置300及び区画入札装置400に対しても、建築計画の実行の可否の通知をする。可否のいずれの通知であっても、建築費用入札装置300及び区画入札装置400において入札を締め切り、上述の延長期間における入札を受け付けていた場合には、建設業者及び購入者に対し、延長期間の終了をアナウンスすることができる。なお、入札期間の終了後も、未入札の区画が残されている場合には、当該区画に関しては、引き続き区画入札装置400における入札を継続してもよい。
【0113】
また、結果送信部510から施主端末600、建築業者端末700及び購入者端末800への通知は必ずしも直接行わず、それぞれ、自動設計装置200、建築費用入札装置300及び区画入札装置400を介して通知するようにしてもよい。特に、入札者に対する通知先を可否判定装置500で管理しておらず、建築費用入札装置300及び区画入札装置400それぞれで管理している場合には、建築費用入札装置300及び区画入札装置400から入札者に対する通知を行うとよい。
【0114】
なお、すでに述べたとおり、図16で示したフローは判定器509におけるフローの一例であり、これ以外のフローを採用してもよい。そのようなフローとしては、例えば、基本期間のみを入札期間として延長期間を設けないフローや、基本期間の経過を待たず、建築計画の実行可と判定される条件が満たされた時点で入札期間を終了するもの(基本期間を設けず、延長期間のみを設けるもの)が考えられ、また、さらにその他のフローであってもよい。
【0115】
さらなる変形例として、入札システム10においては、一の土地活用事業について、自動設計装置200から複数の設計がなされ、それぞれの設計について入札を行うようにしてもよい。かかる変形例においては、それ以外の点、すなわち、図1図15を参照してすでに説明した事項については同様でよいので、これら事項についてはすでにした説明を援用するものとする。
【0116】
この変形例に係る入札システム10では、図1に示したシステム構成を用い、図3に示したフローで処理がなされる点は先に説明したものと何ら変わりはない。そして、図3のステップS2における、自動設計装置200による自動設計の際に、一の土地活用事業に対し、複数の設計を出力し、同図のステップS3において、複数の設計をストレージ100に記憶するものとなっている。すなわち、図4に示す土地情報入力部201により入力された同一の土地情報に対して、複数の設計がなされる。
【0117】
この意図は、複数の互いに異なる設計の中から、最終的に、土地活用事業において採用されるべき一の設計を、入札を通して決定することにある。すなわち、異なる設計のうち、建築の難易度が高く困難を伴うものであれば建築費用の入札がないか、又はあったとしても建築費用があまり下がらず、事業コストはあまり低減できないと予想され、一方で、需要者からの支持の無い設計は、区画に対する入札が少なく、なかなか可否判定装置500において、建築計画の実行可と判定されないであろう。したがって、建築設計とその需要がかみ合い、より高い利益が見込まれる設計が、土地活用の点からはよい設計であると見込まれるが、事前にどのような設計が優れた設計であるかを予測することは現実的には困難である場合も多い。
【0118】
そこで、本変形例に係る入札システム10では、自動設計装置200は複数の異なる設計をする。具体的には、建築物が集合住宅であるならば、その購買対象として、富裕層向けであるか、普及層向けであるか、といった各区画の販売価格帯の差や、シングル向けであるかファミリー向けであるか、といった対象層の差、あるいはモダンであるかクラシックであるかといったデザイン上の差が異なる設計の例として挙げられる。
【0119】
そして、自動設計装置200によりなされた複数の設計に対しては、これまで説明した場合と同様に、図3のステップS4及びステップS5においてそれぞれ、建築費用の入札と区画の入札が並行して行われ、ステップS6にて建築計画の実行の可否が判定される。すなわち、建築費用入札装置300は、用意された複数の設計それぞれについて、建築物の少なくとも建築費用について、建築業者に入札させるとともに、区画入札装置400は、同じく用意された複数の設計それぞれについて、区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、前記購入希望者に入札させる。
【0120】
しかしながら、同一の土地情報に対してなされた複数の設計は、互いに競合する。すなわち、これら複数の設計を同時に実現することはできないため、可否判定装置500においては、これらの複数の設計からは、排他的に一の設計のみについて、実行可と判定しなければならない。
【0121】
図17は、この判定を模式的に説明する図である。ここでは、同一の土地情報に対してなされた複数の設計を「設計群」と称することとし、特定の土地活用プロジェクトに設計群及び設計が属していることを示すために、特定の設計群に対しては番号Nを付して設計群Nのように示し、さらに、特定の設計群Nに属するM番目の設計を設計M-Nのように示す。図17では、設計群1に属する設計1-1、1-2及び1-3の三つの設計がなされた状況を示している。
【0122】
建築費用入札装置300及び区画入札装置400は、設計1-1、1-2及び1-3のそれぞれについて、建築費用及び区画の入札を行う。その結果、設計1-1、1-2及び1-3のそれぞれに対して建築費用の入札状況と区画の入札状況を含む入札状況が紐づけられる。
【0123】
可否判定装置500においては、この複数の設計1-1、1-2及び1-3ごとに建築物の建築計画の実行の可否を判定する。この判定は、図16に示したもの等でよい。しかしながら、可否判定装置500は、いずれの設計も建築計画が実行不可と判定される場合を除き、これら設計1-1、1-2及び1-3の中から一の設計1-Xを選ばなければならない。
【0124】
一の設計1-Xを選ぶ方法は必ずしも限定するものではないが、一の例として、入札期間の経過時点において、建築計画が実行可と判定される条件を満足する設計の中から、最も利益の額が大きい設計についての建築物の建築計画の実行を可と判定し、残余の計画の建築物の建築計画の実行を不可と判定してよい。このようにすることで、土地活用事業における利益を最大化しつつ、同事業を合理的に成立させることができる。この際、入札期間が基本期間と延長期間からなるなど、必ずしも一定でない場合には、同じ設計群に属する設計のうち、いずれか一の設計についての入札期間が終了した時点をもって、同じ設計群に属する設計全ての入札期間が経過したものとみなしてもよいし、全ての設計についての入札期間が終了した時点をもって、同じ設計群に属する設計についての入札期間が経過したものとみなしてもよい。
【0125】
別の例として、同じ設計群に属する複数の設計のいずれか一が、建築計画の事項可能と判定される条件を満足した時点で、当該設計についての建築物の建築計画の実行を可と判定し、他の設計についての建築物の建築計画の実行を不可と判定してもよい。このようにした場合には、早期に建築計画の実行が確定するため、土地活用事業の実行までの期間を合理的に短縮できる。
【0126】
なお、参考例として、区画の入札を建築費用の入札から独立して行う入札システム20を図18~20に示す。図18は、参考例に係る建築物の入札システム20の全体の構成を示す概念図である。参考例に係る入札システム20と、先に説明した実施例に係る入札システム10とは共通している点も多いことから、対応する構成には同符号を付し、その重複する説明については、先の入札システム10についてしてした説明を援用するものとする。
【0127】
入札システム20においては、ネットワークNに、ストレージ100、区画入札装置400、可否判定装置500、施主端末600及び購入者端末800が接続されている。先の実施形態に係る入札システム10において設けられていた自動設計装置及び建築費用入札装置は省かれているが、自動設計装置については、本参考例における入札システム20においても使用してよい。しかしながら、図18に示した例では、自動設計装置を利用しないものとして入札システム20を示している。
【0128】
図19は、参考例に係る入札システム20を利用して実行される処理の全体のフローを示すフロー図である。入札システム20においては、土地情報に基づく建築物の設計は、入札システム20外のステップS2’においてなされる。ここで必要とされる設計自体は、先の入札システム10について図6を用いて説明したものと同じものであるが、本参考例に係る入札システム20は自動設計装置を用いないため、かかる設計は、特定の建築業者に依頼し、あるいは公募するなどし、建築業者に設計を含めた提案をさせてよい。あるいは、設計と施工を分離し、それぞれ、別の設計業者及び建築業者に依頼する形式をとってもよい。
【0129】
いずれにせよ、決定された設計はステップS3にてストレージ100に記憶される。そして、この段階で建築業者はすでに決定しており、建築費も確定しているので、続くステップS5にて、区画の販売のみを入札の形式で行う。
【0130】
図20は、参考例に係る区画入札装置400の機能的構成を示す図である。区画入札装置400は、図19のステップS5にて、土地活用事業における区画の販売についての入札環境を提供するものであり、設計に基づいて、区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させる。
【0131】
参考例に係る区画入札装置400についても、先の実施形態に係るものと同様に、設計受付部401、入札受付部402及び入札管理部403を有しており、入札管理部403にはさらに、入札状況通知部405が設けられている。一方で、再計算受付部は設けられていない。これは、参考例においては、建築費用はすでに確定しており、その変動がないため、販売基準価格の再計算が生じないためである。この区画入札装置400においても、入札管理部403には、複数の異なる設計が登録されることができる。
【0132】
参考例に係る区画入札装置400の動作も、販売基準価格の再計算結果を反映させることがない以外は、先の実施形態に係るものと同様である。したがって、区画入札装置400が購入者端末800に表示させるインタフェースも、先の実施形態に係るものと同様、図12~14に示したものと同じでよく、これら図面及びその説明を援用する。
【0133】
図19のステップS6を実行する可否判定装置500の機能的構成も、先の実施形態に係るものと同様でよく、図15に示したものと同じであるから、これを援用する。参考例に係る可否判定装置500においても、可否判定部508に複数の設計が登録されることができる。そして、入札状況受付部507において受け付けられる入札状況は、区画入札装置400より通知される、区画についてのもののみとなる。
【0134】
また、可否判定部508の判定器509におけるフローも、図16に示した先の実施形態に係るものと同一で差し支えない。同図に示された例は、入札期間として、基本期間と延長期間が設定された場合についてのものであるが、それ以外のフロー、例えば、基本期間のみを入札期間として延長期間を設けないフローや、基本期間の経過を待たず、建築計画の実行可と判定される条件が満たされた時点で入札期間を終了するもの等であってもよい点についても同様である。
【0135】
また、先の実施形態の変形例同様に、一の土地活用事業に対して複数の異なる設計を用意し、それぞれの設計について入札を行うようにしてもよい。この場合、その活用をしようとする同一の土地に対し、建築業者に、複数の設計を提示させ、参考例に係る入札システム20において、その建築物に係る区画についての入札を行うこととなる。入札に供される、互いに競合する複数の設計は、必ずしも同一の建築業者の手によるものでなくともよい。
【0136】
この場合における可否判定装置500における建築計画の可否判定の方法については、図17を参照してした先の実施形態の変形例についての説明と同様であるから、同図及びその説明を援用する。
【0137】
以上の説明から明らかなように、変形例に係る入札システム20は、独立に売買の対象となる複数の区画を有する建築物の設計に基づいて、電気通信回線を通じ、前記区画のそれぞれについて、販売基準価格を提示するとともに、購入希望者に入札させる区画入札装置400を有するものである。
【0138】
また、前記販売基準価格は、前記区画の最低販売価格であり、区画入札装置400は、前記購入希望者に前記区画の購入金額を入札させるものであるか、前記販売基準価格は、前記区画の基準販売価格であり、区画入札装置400は、前記購入希望者に前記基準販売価格に付加されるプレミア金額を入札させるものであってよい。
【0139】
さらに、変形例に係る入札システム20は、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定する可否判定装置500を有し、前記建築物の建築計画の実行の可否は、前記建築物の建築費用と所定の固定費に必要な利益を加算した額と、前記複数の区画についての入札額の合計とを比較して判定されてよい。
【0140】
さらに、変形例に係る入札システム20では、前記設計は複数用意され、区画入札装置400は、複数の前記設計それぞれについて、前記区画のそれぞれについて、前記販売基準価格を提示するとともに、前記購入希望者に入札させ、可否判定装置500は、複数の前記設計ごとに、前記複数の区画についての入札状況及び入札額の両方に基づいて、前記建築物の建築計画の実行の可否を判定するものであってよい。
【0141】
そして、可否判定装置500は、所定の入札期間の経過時点において、実行可と判定される条件を満足する前記設計の中から、最も利益の額が大きい設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定するものであってもよいし、複数の前記設計のいずれか一が実行可と判定される条件を満足した時点で、当該設計についての前記建築物の建築計画の実行を可と判定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 コンピュータ、1a CPU、1b RAM、1c 外部記憶装置、1d GC、1e 入力デバイス、1f I/O、1g データバス、1h モニタ、10,20 入札システム、100 ストレージ、200 自動設計装置、201 土地情報入力部、202 自動設計部、203 収支計算部、204 地図・地形情報DB、205 法令・規制情報DB、206 設計データテンプレートDB、207 不動産情報DB、208 資材マスタ、209 工費マスタ、210 管理費マスタ、211 再計算部、300 建築費用入札装置、301 設計受付部、302 入札受付部、303 入札管理部、304 入札評価部、305 入札状況通知部、400 区画入札装置、401 設計受付部、402 入札受付部、403 入札管理部、405 入札状況通知部、406 再計算受付部、500 可否判定装置、501 設計受付部、507 入札状況受付部、508 可否判定部、509 判定器、510 結果送信部、600 施主端末、700 建築業者端末、800 購入者端末。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20