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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044539
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】全館空調システム、集合住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20230323BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20230323BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20230323BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F3/044
F24F11/72
F24F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152611
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】稲田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】大西 豊
(72)【発明者】
【氏名】若林 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BB06
3L080AA02
3L080AC01
3L260AB07
3L260BA03
3L260BA27
3L260CA12
3L260CB63
3L260DA01
3L260EA08
3L260FA02
3L260FA07
3L260FB12
3L260FC04
(57)【要約】
【課題】空気の吐出方向を変更するための制御をしなくても、居室の上下温度差を抑制する技術を提供する。
【解決手段】制御部412は、暖房時における制御で、空調機302を動作させて設定温度よりも高い温度の空気である加熱空気を空調機302から居室に吐出させる加熱モードと、空調機302を停止させる非加熱モードと、を備える。制御部412は、温度センサ402により検知した居室の温度が設定温度に未達の状態において、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えて実行する。制御部412は、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機306を動作させる。加熱モード実行時に吐出した空気に対して非加熱モード実行時に吐出した空気を混合させて下降空気が生成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の居室を空調する全館空調システムであって、
空気の空調を行う空調機と、
前記空調機とは独立して制御可能であり、かつ前記空調機で空調された空気を送風する送風機と、
前記複数の居室の側壁面に設置され、かつ前記送風機から送風された空気を吐出する吹出口と、
前記居室の温度を検知する温度センサと、
前記温度センサにより検知した前記居室の温度と、設定温度とをもとに制御を実行する制御部と、を備え、
前記吹出口は、前記居室の天井近傍にて前記居室の床面に対して水平方向に空気を吐出し、
前記制御部は、暖房時における制御で、前記空調機を動作させて前記設定温度よりも高い温度の空気である加熱空気を前記空調機から前記居室に吐出させる加熱モードと、前記空調機を停止させる非加熱モードと、を備え、
前記温度センサにより検知した前記居室の温度が前記設定温度に未達の状態において、前記加熱モードと前記非加熱モードとを交互に切り替えて実行し、
前記加熱モード実行時および前記非加熱モード実行時の双方において前記送風機を動作させることで、前記加熱モード実行時に吐出した空気に対して前記非加熱モード実行時に吐出した空気を混合させて下降空気を生成する、全館空調システム。
【請求項2】
前記空調機は、
空気を加熱する加熱部と、
空気を当該空調機の外部に送風する送風部と、を備え、
前記温度センサにより検知した居室の温度が前記設定温度に未達の状態にて前記加熱モードでの動作時に、前記加熱部をオン状態とし、前記送風部をオン状態とし、
前記温度センサにより検知した居室の温度が前記設定温度に未達の状態にて前記非加熱モードでの動作時に、前記加熱部をオフ状態とし、前記送風部をオフ状態とする、請求項1に記載の全館空調システム。
【請求項3】
前記吹出口は、前記居室に隣接する共有空間の天井裏に配置されたダクトを介して前記送風機と接続され、
前記居室は、
前記吹出口と同一の前記側壁面に設けられた扉と、
前記扉の下方に設けられ、前記共有空間に接続された通気口と、を備え、
前記空調機は、前記共有空間を介して吸気した空気を空調する、請求項1または2に記載の全館空調システム。
【請求項4】
前記共有空間は、廊下および玄関の少なくとも1つを含む請求項3に記載の全館空調システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の全館空調システムを備えた集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調技術に関し、特に複数の居室の空調を制御する全館空調システム、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
天井付近から吹出空気を吹き下ろす方式の空気調和機(以下、「空調機」という)では、暖房運転時、高温の吹出空気が床面に到達するまでに浮上してしまう。そのため、過大な上下温度差が生じ、足元が寒く頭部が暑い不快な環境となる。上下温度差を低減するために、サーモオフとなった際に吹出気流方向を水平方向に所定値変更させて、天井付近に上昇した暖気の上部に比較的低温の気流を送風することによって、天井付近に上昇した暖気の循環がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-104979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全館空調システムでは、住宅に含まれる複数の居室に対してまとめて空調が制御される。このような全館空調システムでは、空調制御された空気を吐出するための吹出口が複数の居室のそれぞれに設けられる。空気の吐出方向を変更する場合、吐出方向を変更するためのモータを各吹出口に設けなくてはならないとともに、それらのモータの動作を制御するための構成も必要になる。構成およびメンテナンスの簡易化のためには、モータはない方が好ましい。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、空気の吐出方向を変更するための制御をしなくても、居室の上下温度差を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の全館空調システムは、複数の居室を空調する全館空調システムであって、空気の空調を行う空調機と、空調機とは独立して制御可能であり、かつ空調機で空調された空気を送風する送風機と、複数の居室の側壁面に設置され、かつ送風機から送風された空気を吐出する吹出口と、居室の温度を検知する温度センサと、温度センサにより検知した居室の温度と、設定温度とをもとに制御を実行する制御部と、を備える。吹出口は、居室の天井近傍にて居室の床面に対して水平方向に空気を吐出し、制御部は、暖房時における制御で、空調機を動作させて設定温度よりも高い温度の空気である加熱空気を空調機から居室に吐出させる加熱モードと、空調機を停止させる非加熱モードと、を備える。温度センサにより検知した居室の温度が設定温度に未達の状態において、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えて実行し、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機を動作させることで、加熱モード実行時に吐出した空気に対して非加熱モード実行時に吐出した空気を混合させて下降空気を生成する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、空気の吐出方向を変更するための制御をしなくても、居室の上下温度差を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例に係る住宅の構成を示す図である。
図2図1の住宅の構成を示す断面図である。
図3図3(a)-(b)は、図1の全館空調ユニットの構成を示す図である。
図4図1のシステムコントローラの構成を示す図である。
図5図5(a)-(b)は、図4のシステムコントローラによる全館空調ユニット300の動作概要を示す図である。
図6図6(a)-(b)は、図4のシステムコントローラによる温度制御の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の概要を説明する。本実施例は、複数の住宅が集合した集合住宅、例えばマンションに設けられ、1つの住宅に対する全館空調を実行する全館空調システムに関する。全館空調システムでは、全館空調ユニットにおいて空調された空気が、各居室に設けられた吹出口から吐出される。本実施例では、空調として暖房を一例として説明する。吹出口は、一般的に居室の天井の近傍に設けられるので、居室の上下温度差が発生する。上下温度差を小さくするために、吐出方向を変更することが望ましいが、モータが各吹出口に設けられることによって、全館空調システムの構成およびメンテナンスが複雑化される。ここで、全館空調システムの構成およびメンテナンスを簡易化しながら、居室の上下温度差を抑制することが求められる。
【0011】
これに対応するために、本実施例に係る全館空調システムにおける全館空調ユニットは、空調機と送風機とを備える。空調機は、加熱した空気(以下、「加熱空気」という)を出力する加熱モードと、加熱した空気の出力を停止する非加熱モードとを実行可能であり、送風機は、空気を送風することによって、空気を吹出口から居室に吐出させる。全館空調ユニットを制御するシステムコントローラは、空調機に対して加熱モードと非加熱モードとを切替ながら動作させるとともに、送風機に送風をさせ続ける。その結果、吹出口からは、加熱空気と、加熱空気ではない空気(以下、「送風空気」という)とが交互に吐出される。加熱空気が吐出されると居室の天井近傍の温度が高くなるが、送風空気が排出されると天井近傍の温度が低下することによって、天井から床面に向かう下降気流が発生する。下降気流により居室内の空気が攪拌されるので、居室の上下温度差が抑制される。
【0012】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、ステップ(工程)およびステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
図1は、住宅500の構成を示す。住宅500は、マンション等の集合住宅における一世帯の住居である。ここでは、一例として、図1の上側を北側とし、下側を南側とし、左側を西側とし、右側を東側とする。住宅500には、居室10と総称される第1居室10aから第5居室10e、玄関12、廊下14、空調室18、トイレ20、浴室22が含まれる。第1居室10a、第4居室10d、第5居室10eは洋室であり、第2居室10bはリビングであり、第3居室10cはキッチンである。また、玄関12と廊下14の少なくとも1つは共有空間16と呼ばれてもよい。
【0014】
住宅500に設置される全館空調システムは、外気導入口100、外気導入ダクト102、熱交換器装置104、排気ダクト106、排気口108、給気ダクト110、搬送ファン120と総称される第1搬送ファン120a、第2搬送ファン120b、搬送ダクト122と総称される第1搬送ダクト122a、第2搬送ダクト122b、分岐チャンバー124と総称される第1分岐チャンバー124a、第2分岐チャンバー124b、分岐搬送ダクト126と総称される第1分岐搬送ダクト126aから第8分岐搬送ダクト126h、吹出口128と総称される第1吹出口128aから第8吹出口128h、排気空間口150、排気空間ダクト152を含む。外気導入ダクト102、排気ダクト106、給気ダクト110、搬送ダクト122、分岐搬送ダクト126、排気空間ダクト152は、空気を運ぶ管、つまり風路である。また、全館空調システムは、全館空調ユニット300、システムコントローラ400、温度センサ402を含む。
【0015】
外気導入口100は、住宅500の南側の壁面に設置される。外気導入口100から住宅500の内部に向かって延びる外気導入ダクト102は、熱交換器装置104に接続される。熱交換器装置104は、例えば、浴室22の天井裏に配置される。熱交換器装置104には、排気ダクト106も接続され、排気ダクト106は住宅500の南側の壁面に向かって延び、南側の壁面に設置された排気口108に接続される。熱交換器装置104には、給気ダクト110も接続される。
【0016】
熱交換器装置104は、熱交換形換気扇とも呼ばれる。熱交換器装置104は、外気導入口100から外気導入ダクト102を通って外気200を取り込む。外気導入口100から吸い込まれた外気200が給気に相当する。また、熱交換器装置104は、換気口114から換気RA(Return Air:還気)202を取り込む。換気RA202は、住宅500の内部から流入された空気である。熱交換器装置104は、これらの間で熱交換を行う。熱交換器装置104は、熱交換の結果、排気ダクト106を通って排気口108から排気204を排出する。また、熱交換器装置104は、熱交換された給気208を給気ダクト110経由で全館空調ユニット300に供給する。
【0017】
全館空調ユニット300は、空調室18に設置される。全館空調ユニット300には、給気ダクト110から給気208が流入されるとともに、住宅500の内部から循環RA206が流入される。循環RA206は、換気RA202と同様に、住宅500の内部から流入された空気である。全館空調ユニット300は、給気と循環RA206とを混合した空気に対して空調を実行する。例えば、全館空調ユニット300では温度、湿度等が制御される。全館空調ユニット300における第1搬送ファン120aには第1搬送ダクト122aが接続され、第2搬送ファン120bには第2搬送ダクト122bが接続される。
【0018】
第1搬送ダクト122aは、第1分岐チャンバー124aまで延びて、第1分岐チャンバー124aにおいて第1分岐搬送ダクト126aから第4分岐搬送ダクト126dに分岐される。第1分岐搬送ダクト126aは、第1居室10aに設置された第1吹出口128aに接続される。第2分岐搬送ダクト126bは、第2居室10bに設置された第2吹出口128bに接続され、第3分岐搬送ダクト126cは、第2居室10bに設置された第3吹出口128cに接続される。第4分岐搬送ダクト126dは、第3居室10cに設置された第4吹出口128dに接続される。
【0019】
第2搬送ダクト122bは、第2分岐チャンバー124bまで延びて、第2分岐チャンバー124bにおいて第5分岐搬送ダクト126eから第8分岐搬送ダクト126hに分岐される。第5分岐搬送ダクト126eは、第4居室10dに設置された第5吹出口128eに接続される。第6分岐搬送ダクト126fは、第5居室10eに設置された第6吹出口128fに接続され、第7分岐搬送ダクト126gは、第5居室10eに設置された第7吹出口128gに接続される。第8分岐搬送ダクト126hは、廊下14に設置された第8吹出口128hに接続される。
【0020】
第1搬送ファン120aは、空調された空気を第1搬送ダクト122a、第1分岐チャンバー124a、第1分岐搬送ダクト126aから第4分岐搬送ダクト126d、第1吹出口128aから第4吹出口128d経由で第1居室10aから第3居室10cに搬送する。第2搬送ファン120bは、空調された空気を第2搬送ダクト122b、第2分岐チャンバー124b、第5分岐搬送ダクト126eから第8分岐搬送ダクト126h、第5吹出口128eから第8吹出口128h経由で第4居室10d、第5居室10e、廊下14に搬送する。
【0021】
図2は、住宅500の構成を示す断面図である。住宅500の南側の壁面には、外気導入口100と排気口108が設置される。外気導入口100と排気口108に接続される外気導入ダクト102、排気ダクト106、熱交換器装置104、給気ダクト110は天井裏40に配置される。空調室18の天井には給気口140が設置され、給気口140には給気ダクト110が接続される。給気口140は、給気ダクト110を介して熱交換器装置104からの給気208を空調室18に吹き出す。
【0022】
空調室18には全館空調ユニット300が設置される。全館空調ユニット300に接続された第1搬送ダクト122aは、空調室18から天井裏40まで延びる。天井裏40において、第1搬送ダクト122a、第1分岐チャンバー124a、第3分岐搬送ダクト126cが順に接続される。第3分岐搬送ダクト126cは第3吹出口128cに接続される。第3吹出口128cは、複数の居室10のうちの第2居室10bの側壁50の面に設置される。第3吹出口128cは、第2居室10bに隣接する廊下14の天井裏40に配置された分岐搬送ダクト126、搬送ダクト122を介して送風機306に接続される。第3吹出口128cは、送風機306から送風された空気を第2居室10bに吐出する。特に、第3吹出口128cは、第2居室10bの天井34の近傍にて、床面36に対して水平方向に空気を吐出する。天井34の近傍とは、床面36よりも天井34に近いという意味であってもよい。また、水平方向は、完全な水平方向に限定されず、完全な水平方向から空気が拡散される範囲での広がりの方向を含んでもよい。他の搬送ダクト122、分岐チャンバー124、分岐搬送ダクト126、吹出口128についても同様に配置される。
【0023】
第2居室10bにおいて、第3吹出口128cと同一の側壁50の面には、扉30が設けられる。また、扉30の下方には通気口52が設けられ、通気口52を介して第2居室10bと廊下14が接続される。第3吹出口128cから空気が吹き出されることによって、第2居室10bにもともと存在した空気は、通気口52を通過して廊下14にも循環する。循環する空気の一部は循環RA206として空調室18に流入される。空調室18内では、循環RA206と給気208とが混合された空気が全館空調ユニット300に取り込まれる。また、循環する空気の別の一部は換気RA202として換気口114から熱交換器装置104に取り込まれる。他の吹出口128から吹き出される空気についても同様である。
【0024】
図3(a)-(b)は、全館空調ユニット300の構成を示す。図3(a)は、全館空調ユニット300の側面方向からの断面図である。全館空調ユニット300は、空調機302、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ304、送風機306を含む。全館空調ユニット300の上段から順に空調機302、HEPAフィルタ304、送風機306が配置される。送風機306は、第1搬送ファン120a、第2搬送ファン120bを含む。
【0025】
空調機302は、エアコンディショナであり、全館空調ユニット300内部の空調を制御する。空調機302は、全館空調ユニット300内部の空気の温度が設定された温度(以下、「空調機設定温度」という)となるように、空調室18に流入した空気、つまり循環RA206と給気208とが混合された空気を加熱する。循環RA206は、共有空間16を介して吸気した空気である。空調機設定温度は、システムコントローラ400により設定される。図3(b)は、空調機302の構成を示す。空調機302は、加熱部310、送風部312を含む。加熱部310は、空気を加熱する。送風部312は、加熱部310において加熱した空気を空調機302の外部であって全館空調ユニット300内部に送風する。図3(a)に戻る。
【0026】
HEPAフィルタ304は、エアフィルタであり、空調機302において空調がなされた空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。送風機306は、空調機302で空調され、かつHEPAフィルタ304において清浄された空気を搬送ダクト122、分岐チャンバー124、分岐搬送ダクト126経由で吹出口128に搬送する。送風機306は、空調機302とは独立して制御可能であり、例えばシステムコントローラ400により設定される。図1に戻る。
【0027】
温度センサ402は、第2居室10bに設置され、住宅500、例えば第2居室10bの温度を検知する。温度センサ402は、無線通信等の通信機能を有し、検知した温度をシステムコントローラ400に送信する。
【0028】
システムコントローラ400は、全館空調システム全体を制御するコントローラである。システムコントローラ400は、空調機302、送風機306、温度センサ402と、無線通信により通信可能に接続される。これらのうちの少なくとも一部が有線通信により通信可能に接続されてもよい。システムコントローラ400は、温度センサ402から温度を受信する。
【0029】
また、システムコントローラ400は、全館空調システムを構築するために必要な情報の入力を受けつけてるためのインターフェースを備える。例えば、システムコントローラ400は、全館空調システムにおいて設定すべき温度(以下、「設定温度」という)を受けつける。システムコントローラ400は、受信した温度と、設定温度とをもとに、全館空調ユニット300に対する制御を実行する。システムコントローラ400における制御の詳細は後述する。システムコントローラ400は、空調機302に対する動作の指示を空調機302に送信し、送風機306に対する動作の指示を送風機306に送信する。
【0030】
システムコントローラ400におけるインターフェース機能は、システムコントローラ400とは別の通信装置であって、かつシステムコントローラ400と通信可能な通信装置に備えられてもよい。通信装置は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末である。
【0031】
トイレ20の天井には排気空間口150が設置されており、排気空間口150には排気空間ダクト152が接続され、排気空間ダクト152は熱交換器装置104に接続される。このような接続により、トイレ20の空気は、排気空間口150、排気ダクト106を通って排気口108から建物外に排出される。
【0032】
図4は、システムコントローラ400の構成を示す。システムコントローラ400は、温度センサ402、操作部410、空調機302、送風機306に接続され、制御部412、記憶部414を含む。操作部410は、前述のインターフェースであり、設定温度を受けつける。操作部410は設定温度をシステムコントローラ400に出力する。温度センサ402は、居室10の温度を検知すると、居室10の温度をシステムコントローラ400に出力する。
【0033】
制御部412は、居室10の温度と、設定温度とをもとに、全館空調ユニット300の空調機302と送風機306とに対する制御、特に暖房制御を実行する。暖房制御では、空調機302の動作モードとして、加熱モードと非加熱モードとが定義される。加熱モードとは、暖房時における制御で、空調機302を動作させて設定温度よりも高い温度の空気(以下、これもまた「加熱空気」という)を空調機302から居室10に吐出させるモードである。一方、非加熱モードとは、暖房時における制御で、空調機302を停止させるモードである。
【0034】
制御部412は、居室10の温度と設定温度とをもとに、居室10の温度が設定温度に未達の状態であるか否かを判定する。居室10の温度が設定温度に未達の状態とは、居室10の温度が設定温度よりも低い状態から暖房を実行しても、居室10の温度が設定温度に収束していない状態である。居室10の温度が設定温度に未達の状態である場合、制御部412は、記憶部414に記憶したテーブルをもとに暖房制御を実行する。
【0035】
図5(a)-(b)は、システムコントローラ400による全館空調ユニット300の動作概要を示す。図5(a)は、記憶部414に記憶されるテーブルの概要を示す。時間T1から時間T2において加熱モードを実行し、時間T2から時間T3において非加熱モードを実行し、時間T3から時間T4において加熱モードを実行することが規定される。これは、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えることが規定されることといえる。ここでは、説明を明瞭にするために、1つの加熱モードの期間と、1つの非加熱モードの期間は等しいとする。また、加熱モード時において、加熱部310のオン状態と、送風部312のオン状態とが規定され、非加熱モード時において、加熱部310のオフ状態と、送風部312のオフ状態とが規定される。これらに加えて、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機306を動作させることも規定される。図5(b)は後述して、図4に戻る。
【0036】
テーブルを参照しながら、制御部412は、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えることと、非加熱モードから加熱モードに切り替えるタイミング(以下、「オンタイミング」という)と、加熱モードから非加熱モードに切り替えるタイミング(以下、オフタイミング」という)を決定する。また、制御部412は、加熱モード時において、加熱部310のオン状態と、送風部312のオン状態とを決定し、非加熱モード時において、加熱部310のオフ状態と、送風部312のオフ状態とを決定する。さらに、制御部412は、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機306の動作を決定する。
【0037】
制御部412は、オンタイミング時に、加熱部310のオン状態と送風部312のオン状態とを空調機302に指示する。また、制御部412は、オフタイミング時に、加熱部310のオフ状態と送風部312のオフ状態とを空調機302に指示する。さらに、制御部412は、加熱モード実行時および非加熱モード実行時に関係なく、送風機306を動作させ続ける。
【0038】
図5(b)は、居室10の温度が設定温度に未達の状態である場合における全館空調ユニット300の動作概要を示す。時間T1において、居室温度602は設定温度600よりも低い。その際、空調機302が加熱モードで動作し、かつ送風機306が送風を実行するので、吹出口128から吐出される空気の吹出温度604は、設定温度600よりも高くなる。前述のごとく、空調機302が加熱モードで動作する場合、加熱部310がオン状態であり、かつ送風部312もオン状態である。このような動作によって、時間の経過とともに、居室温度602が上昇する。
【0039】
時間T2において、空調機302が加熱モードから非加熱モードに切り替えて動作し、かつ送風機306が送風を実行するので、吹出口128から吐出される空気の吹出温度604は、設定温度600よりも低くなる。前述のごとく、空調機302が非加熱モードで動作する場合、加熱部310がオフ状態であり、かつ送風部312もオフ状態である。このような動作によって、時間が経過しても、居室温度602が上昇しない。
【0040】
時間T3において、空調機302が非加熱モードから加熱モードに切り替えて動作し、かつ送風機306が送風を実行するので、吹出口128から吐出される空気の吹出温度604は、設定温度600よりも高くなる。このような動作によって、時間の経過とともに、居室温度602が設定温度600に近づくように上昇する。
【0041】
一方、居室10の温度が設定温度に未達の状態でない場合、制御部412は、公知の技術により全館空調ユニット300に対する暖房制御を実行する。
【0042】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0043】
図6(a)-(b)は、システムコントローラ400による温度制御の概要を示す。図6(a)は、全館空調ユニット300が加熱モードで動作している場合を示す。第3吹出口128cから第2居室10bに吐出される加熱空気610は、例えば40℃である。第2居室10bにおける空気を天井空気612、居室空気614、床面空気616に分類した場合、天井空気612は26℃であり、居室空気614は22℃であり、床面空気616は17℃である。天井空気612は天井34に最も近い部分の空気であり、床面空気616は床面36に最も近い部分の空気である。居室空気614は天井空気612と床面空気616との間の部分の空気である。
【0044】
図6(b)は、全館空調ユニット300が非加熱モードで動作している場合を示す。第3吹出口128cから第2居室10bに吐出される送風空気620は、例えば26℃である。そのため、天井空気612において、加熱モード実行時に吐出した加熱空気610に対して非加熱モード実行時に吐出した送風空気620が混合されることによって、第2居室10bの天井34から床面36に向かう下降空気630が生成される。下降空気630によって、天井空気612と居室空気614と床面空気616との間において熱の対流が生じる。その結果、天井空気612が23℃になり、居室空気614が23℃になり、床面空気616が21℃になり、上下温度差が図6(a)の場合よりも小さくなる。
【0045】
本実施例によれば、居室10の温度が設定温度600に未達の状態において、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えて実行し、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機306を動作させるので、居室10に下降空気630を生成できる。また、居室10に下降空気630が生成されるので、空気の吐出方向を変更するための制御をしなくても、居室10の上下温度差を抑制できる。また、加熱モードでの動作時に、加熱部310をオン状態とし、送風部312をオン状態とし、非加熱モードでの動作時に、加熱部310をオフ状態とし、送風部312をオフ状態とするので、加熱モードと非加熱モードとにおいて居室10に吐出される空気の温度を変えることができる。また、吹出口128が天井裏40に配置されたダクトを介して送風機306と接続され、空調機302は、廊下14を介して吸気した空気を空調するので、住宅500内において空気を循環させることができる。また、共有空間16は、廊下14および玄関12の少なくとも1つを含むので、構成の自由度を向上できる。
【0046】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の全館空調システムは、複数の居室(10)を空調する全館空調システムであって、空気の空調を行う空調機(302)と、空調機(302)とは独立して制御可能であり、かつ空調機(302)で空調された空気を送風する送風機(306)と、複数の居室(10)の側壁(50)面に設置され、かつ送風機(306)から送風された空気を吐出する吹出口(128)と、居室(10)の温度を検知する温度センサ(402)と、温度センサ(402)により検知した居室(10)の温度と、設定温度(600)とをもとに制御を実行する制御部(412)と、を備える。吹出口(128)は、居室(10)の天井(34)近傍にて居室(10)の床面(36)に対して水平方向に空気を吐出し、制御部(412)は、暖房時における制御で、空調機(302)を動作させて設定温度(600)よりも高い温度の空気である加熱空気を空調機(302)から居室(10)に吐出させる加熱モードと、空調機(302)を停止させる非加熱モードと、を備える。温度センサ(402)により検知した居室(10)の温度が設定温度(600)に未達の状態において、加熱モードと非加熱モードとを交互に切り替えて実行し、加熱モード実行時および非加熱モード実行時の双方において送風機(306)を動作させることで、加熱モード実行時に吐出した空気に対して非加熱モード実行時に吐出した空気を混合させて下降空気を生成する。
【0047】
空調機(302)は、空気を加熱する加熱部(310)と、空気を当該空調機(302)の外部に送風する送風部(312)と、を備えてもよい。温度センサ(402)により検知した居室(10)の温度が設定温度(600)に未達の状態にて加熱モードでの動作時に、加熱部(310)をオン状態とし、送風部(312)をオン状態とし、温度センサ(402)により検知した居室(10)の温度が設定温度(600)に未達の状態にて非加熱モードでの動作時に、加熱部(310)をオフ状態とし、送風部(312)をオフ状態とする。
【0048】
吹出口(128)は、居室(10)に隣接する共有空間(16)の天井裏(40)に配置されたダクトを介して送風機(306)と接続され、居室(10)は、吹出口(128)と同一の側壁(50)面に設けられた扉(30)と、扉(30)の下方に設けられ、共有空間(16)に接続された通気口(52)と、を備えてもよい。空調機(302)は、共有空間(16)を介して吸気した空気を空調する。
【0049】
共有空間(16)は、廊下(14)および玄関(12)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0050】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0051】
10 居室、 12 玄関、 14 廊下、 16 共有空間、 18 空調室、 20 トイレ、 22 浴室、 30 扉、 32 ガラリ、 34 天井、 36 床面、 40 天井裏、 50 側壁、 52 通気口、 100 外気導入口、 102 外気導入ダクト、 104 熱交換器装置、 106 排気ダクト、 108 排気口、 110 給気ダクト、 114 換気口、 120 搬送ファン、 122 搬送ダクト、 124 分岐チャンバー、 126 分岐搬送ダクト、 128 吹出口、 140 給気口、 150 排気空間口、 152 排気空間ダクト、 200 外気、 202 換気RA、 204 排気、 206 循環RA、 208 給気、 300 全館空調ユニット、 302 空調機、 304 HEPAフィルタ、 306 送風機、 310 加熱部、 312 送風部、 400 システムコントローラ、 402 温度センサ、 410 操作部、 412 制御部、 414 記憶部、 500 住宅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6