(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004455
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】光学系、眼底撮像装置および眼底撮像システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A61B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106114
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山根 宏大
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA11
4C316AB16
4C316FB05
4C316FB21
4C316FY01
4C316FY02
4C316FY03
4C316FY10
(57)【要約】
【課題】眼底観察におけるアーティファクトの発生を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】眼底撮像装置(10)は、光源(111)および照明光学系(112)を有する照明装置(11)と、撮像素子(121)および撮像光学系(122)を有する撮像装置(12)を有する。照明光学系(112)は、光源(111)からの光を眼底に照射する。撮像光学系(122)は、眼底の像を撮像素子(121)に結像する。照明光学系(112)の光軸は撮像光学系(122)の光軸と一致しないか、または照明光学系(1112)は特定の光軸を有さない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を、被検者の眼球の眼底に照射する照明光学系と、
前記眼底の像を撮像素子に結像する撮像光学系と、を有し、
前記照明光学系の光軸は前記撮像光学系の光軸と一致しないか、または前記照明光学系は特定の光軸を有さない、光学系。
【請求項2】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記眼球のtrans-pars-plana領域を介して前記眼底に照射する、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記眼球の虹彩-チン小帯領域を介して前記眼底に照射する、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記被検者の瞼を介して前記眼球の周辺組織に照射する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記被検者の頭蓋骨を介して前記眼球の周辺組織に照射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記被検者の頭蓋骨の複数箇所を介して前記眼球の周辺組織に照射する、請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記被検者の篩骨を介して前記眼球の周辺組織に照射する、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記照明光学系は、前記光源からの光を、前記被検者の顔における目の周囲の弧状または環状の領域を介して前記眼底に照射する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記光源からの光の波長は、600~1600nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
光源および請求項1~9のいずれか一項に記載の照明光学系を有する照明装置と、
撮像素子および請求項1~9のいずれか一項に記載の撮像光学系を有する撮像装置と、
を有する、眼底撮像装置。
【請求項11】
前記照明装置は、前記被検者に接触して配置される、請求項10に記載の眼底撮像装置。
【請求項12】
前記撮像装置は、前記被検者から離れて配置されている、請求項10または11に記載の眼底撮像装置。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の眼底撮像装置を有する、眼底撮像システム。
【請求項14】
前記撮像素子が検出した光の信号を加算して画像を合成する処理をさらに含む、請求項13に記載の眼底撮像システム。
【請求項15】
前記撮像素子が検出した光の信号から前記被検者の内部構造を画像化する処理をさらに含む、請求項13または14に記載の眼底撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、眼底撮像装置および眼底撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本人の失明の主な原因には、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性および緑内障の三つが知られている。これらの疾病の早期発見には、眼底検査が有効である。眼底検査において用いられる眼底カメラには、眼に入射する光の光軸と眼底で反射した反射光の光軸とが一致した同軸落射照明の光学系が用いられる。
【0003】
このような光学系については、照射光を分離することで照射光と反射光との光路の重なりを防ぐ方法(例えば、特許文献1、2参照)、不要な光を結像してこれを遮蔽する方法(例えば、特許文献3参照)、および、直線偏光素子を用いて不要な光を遮光する方法(例えば、非特許文献1参照)、が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-28677号公報
【特許文献2】特開平5-337087号公報
【特許文献3】特開平9-28675号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】奈良先端科学技術大学院大学、科学技術振興機構、“ぶれない、まぶしくない、自撮りできる小型眼底カメラシステムを開発”、[online]、2018年6月18日、JST共同発表、[2020年1月14日検索]、インターネット(URL:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20180618/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術では、眼に入射する光の光軸と眼底で反射した反射光の光軸とが一致する同軸落射照明の光学系が用いられる。このような従来技術は、眼における眼底以外の場所で反射した不要な光が、眼底像を形成する光に混ざり、ゴーストフレアなどのアーティファクトが生じるという問題を有する。
【0007】
たとえば、特許文献1、2に記載されている方法では、照射光が広角になると照射光と反射光との光路の大部分が重なり、ゴーストフレアの発生を防ぐことができない。特許文献3に記載されている方法では、照射光が広角になると不要な光の像が大きくなるため必要な光も遮られてしまう。非特許文献1に記載されている方法では、広角になると反射による偏光の回転により四葉型のゴーストが残ってしまうことがある。このため、眼底観察の技術分野では、アーティファクトの発生を抑制可能な技術が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、眼底の撮像におけるアーティファクトの発生を抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光学系は、光源からの光を、被検者の眼球の眼底に照射する照明光学系と、前記眼底の像を撮像素子に結像する撮像光学系と、を有し、前記照明光学系の光軸は前記撮像光学系の光軸と一致しないか、または前記照明光学系は特定の光軸を有さない。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る眼底撮像装置は、光源および上記の照明光学系を有する照明装置と、撮像素子および上記の撮像光学系を有する撮像装置と、を有する。
【0011】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る眼底撮像システムは、上記の眼底撮像装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、眼底の撮像におけるアーティファクトの発生を抑制可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る眼底撮像装置の構成および使用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態において光源からの光を照射するのに好適な眼球における好適な箇所を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態において光源からの光を照射するのに好適な被検者の顔における好適な箇所の一例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態において光源からの光を照射するのに好適な被検者の顔における好適な箇所の他の例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る眼底撮像システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る眼底撮像装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の実施形態と従来の形態との相違点を説明するための図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る眼底撮像装置の構成を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の第三の実施形態に係る眼底撮像装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔概要〕
図1は、本発明の実施形態に係る眼底撮像システムの概略構成および使用形態を模式的に示す図である。本発明の一実施形態に係る眼底撮像システムは、眼底撮像装置10を有する。眼底撮像装置10は、照明装置11と撮像装置12とを有する。
【0015】
[照明装置]
照明装置11は、光源111および照明光学系112を有する。光源111は、眼底観察に使用可能な光源であればよく、ストロボのような断続的に発光する光源111であってもよいし、連続して発光する光源であってもよく、連続して発光する光源であることがより好ましい。連続して発光する光源の例には、熱電球、レーザーダイオード(LD)および発光ダイオード(LED)が含まれる。光源111からの光の波長は、光源111からの光の照射による縮瞳反応を抑制する観点から、600nm以上であることが好ましい。また、光源111からの光の波長は、生体内の水への吸収による照射光の減衰を抑制する観点から、1600nm以下であることが好ましい。
【0016】
光源111からの光の波長は、当該光の生体中での減衰を抑制する観点から、いわゆる生体の窓とも言われる650~1000nmであることが好ましく、800~900nmであることがより好ましい。なお、本明細書において、「~」は、その両端の数値を含む「以上以下」の範囲を意味する。
【0017】
照明光学系112は、被検者Hの眼球Eの眼底に照射する光学系である。照明光学系112は、光源111からの光を必要に応じて集光し、屈折させ、反射させる。照明光学系112は、レンズ、プリズム、ビームスプリッタ、偏光子、反射部材、光束制御部材、固体半導体素子および熱光源などの公知の光学素子によって構成することが可能である。固体半導体素子の例には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、レーザ(LASER)およびEL(エレクトロルミネッセント)素子が含まれる。これらの光学素子は、筒またはケーシングなどの適当な部材によって、光源111に対して、あるいは複数の光学素子同士の間で所望の位置関係に支持される。当該光学素子は、その光軸に沿って移動可能に支持されていてもよい。
【0018】
[撮像装置]
撮像装置12は、撮像素子121および撮像光学系122を有する。撮像素子121は、眼底撮像に利用可能な公知の個体撮像素子であってよく、その例には、CCDイメージセンサおよびCMOSイメージセンサが含まれる。これらのイメージセンサは、カラーセンサであってもよいし、モノクロセンサであってもよいが、高画質化の観点からモノクロセンサがより好ましい。
【0019】
撮像光学系122は、眼底の像を撮像素子121に結像する光学系である。撮像光学系122は、眼底からの光を集光して像を形成し、必要に応じて屈折させあるいは反射させ、そして撮像素子121に結像させる。撮像光学系122は、照明光学系112と同様に、公知の光学素子によって構成することが可能であり、当該光学素子は、筒またはケーシングなどの適当な部材によって、光源111に対して、あるいは複数の光学素子同士の間で所望の位置関係に支持される。撮像光学系122の光学素子も、その光軸に沿って移動可能に支持されていてもよい。
【0020】
[光学系の説明]
本発明の実施形態において、光源111からの光を眼底に照射する照明光学系112の光軸は、撮像光学系122の光軸と一致しない。本発明の実施形態において、「照明光学系の光軸は撮像光学系の光軸と一致しない」とは、照明光学系が有する光軸の一部または全部が撮像光学系の光軸と実質的に一致しないことを意味する。たとえば、前述した同軸落射照明では、通常、照明光学系の光軸の一部は、眼球の正面の外側から眼底までの間で撮像光学系の光軸と実質的に一致し、図示すれば重なって表示される。本発明の実施形態では、照明光学系112の光軸は、撮像光学系122の光軸と一致する(重なる)部分を含まない。
【0021】
あるいは、本発明の実施形態において、照明光学系112は、特定の光軸を有さない。「照明光学系が特定の光軸を有さない」とは、照明光学系が非対称ないし非結像系であって光軸が存在しない照明系であることを意味する。このような照明系の例には、眼球の照射に直接供されるLED、および、車のヘッドライトのような光源の光の拡散を伴う光学系、が含まれる。当該照明系も、本発明の実施形態における照明光学系になり得る。
【0022】
本発明の実施形態では、眼底からの光は、通常、瞳孔を介して外に取り出される。このため、撮像光学系122は、眼球Eの正面に位置する。照明光学系112は、通常、撮像光学系122の光軸に対して交差する方向に沿う光軸となる位置に配置される。このような位置から、照明装置11は、光源111からの光を、照明光学系112を介して眼底に照射する。
【0023】
[照射対象としての眼についての説明]
本発明の実施形態において、眼底とは、眼球Eの水晶体よりも内側の部分を意味する。眼底は、眼球Eの当該部分の全体であってもよいし、一部であってもよい。たとえば、眼底とは、網膜であってもよい。ここでは、網膜を眼底として撮像する形態を一例として説明する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態において光源111からの光を照射するのに好適な眼球Eにおける箇所を模式的に示す図である。
図2に示されるように、眼球Eは、前方より、角膜21、虹彩22、水晶体23、チン小帯24、硝子体25、および網膜26を有する。硝子体25および網膜26は、前述した眼底に該当する。
【0025】
また、眼球Eは、trans-pars-plana領域27および虹彩-チン小帯領域28を有する。trans-pars-plana領域27は、網膜26の先端からチン小帯24までに領域である。trans-pars-plana領域27は、硝子体25と眼球Eの表面との間に網膜26が介在しない領域である。虹彩-チン小帯領域28は、虹彩22とチン小帯24とが重なる領域である。虹彩-チン小帯領域28は、虹彩22と硝子体25との間に水晶体23が介在しない領域である。また、図示していないが、眼球Eの周囲には、眼窩脂肪と呼ばれる脂肪組織が存在している。
【0026】
[光の照射についての説明]
照明光学系112は、被検者Hの眼球Eの眼底に直接的に照射する光学系であってもよい。ここで言う「直接的に照射」とは、光源111からの光を、撮像すべき眼底に向けて、かつ光路上にある前眼部組織を透過することによって照射することを意味する。この場合、照明光学系112は、光源111からの光を、水晶体を介さずに眼底に直接的に照射するように構成されることが好ましい。照明光学系112が光を直接的に眼底に照射することにより、眼底での反射光の像が得られる。照明光学系112が眼底を直接的に照射する光学系であることは、アーティファクトの発生を防止する観点から、あるいは眼底をより明るく照らす観点から好ましい。照明光学系112が水晶体を介さずに眼底を直接的に照射する光学系であることは、さらに被検者Hがまぶしさを感じることを防止する観点から好ましい。
【0027】
照明光学系112は、光源111からの光を、眼球Eのtrans-pars-plana領域27を介して眼底に照射する光学系であることが好ましい。trans-pars-plana領域27を介して眼底を照らすことは、照明光学系112からの光が網膜26を介さずに硝子体25あるいは網膜26に到達するため、被検者Hがまぶしさを感じることを防止する観点、および、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。
【0028】
また、照明光学系112は、光源111からの光を、眼球Eの虹彩-チン小帯領域28を介して眼底に照射する光学系であることが好ましい。虹彩-チン小帯領域28を介して眼底を照らすことは、照明光学系112からの光が水晶体23を介さずに硝子体25あるいは網膜26に到達するため、被検者Hがまぶしさを感じることを防止する観点、および、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。
【0029】
照明光学系112は、被検者Hの眼球Eの眼底に間接的に照射する光学系であってもよい。ここで言う「間接的に照射」とは、光源111からの光を、眼球Eの周辺組織に照射し、当該眼窩脂肪での散乱光によって眼底を照らすことを意味する。周辺組織の例には、眼窩脂肪、強膜、筋組織および神経組織が含まれる。以下、周辺組織の一例として眼窩脂肪を例に説明すれば、この場合、照明光学系112は、光源111からの光を、例えば被検者Hの生体組織を介して眼球Eの周囲の眼窩脂肪に照射する光学系であればよい。照明光学系112が眼窩脂肪に光を照射することにより、当該眼窩脂肪での散乱光によって眼球Eが水晶体に対して後方から照らされ、眼底を後方から透過した光の像が得られる。照明光学系112が眼窩脂肪を介して眼底を照らすことは、被検者Hがまぶしさを感じること、および、アーティファクトの発生、をより確実に防止する観点から好ましい。
【0030】
より詳しくは、被検者Hの眼球Eの眼底に間接的に照射する照明光学系112は、光源からの光を、被検者Hの頭蓋骨を介して眼球Eの周囲の脂肪組織に照射する光学系であってもよい。この場合、照明光学系は、
図1の矢印Aで表されるように、被検者Hの前頭部または頭頂部に光源からの光を照射するように配置されてもよいし、
図1の矢印Bで表されるように、被検者Hの側頭部または後頭部に光源からの光を照射するように配置されてもよい。上記の場合では、照明光学系は、光源からの光を、被検者Hの頭蓋骨の複数箇所を介して眼球Eの周囲の脂肪組織に照射する光学系であることが、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。
【0031】
あるいは、被検者Hの眼球Eの眼底に間接的に照射する照明光学系は、光源からの光を、
図1の矢印Cで表されるように被検者Hの篩骨を介して眼球Eの周囲の脂肪組織に照射する光学系であってもよい。光源からの光は、被検者Hの篩骨に向けて照射されることにより、篩骨洞、眼窩脂肪を介して鼻腔側から眼底に照射される。このような照明装置は、被検者Hの鼻腔に挿入可能な光ファイバなどの光学素子を含む光学系、あるいは、小型の光源と、当該光源の光を篩骨に向かわせる光束制御部材などの光学素子を含む光学系とによって構成することが可能である。照明光学系が篩骨を介して眼底を照らすことは、下方または後方から眼底を明るく照らす観点、および、光源の位置の条件などの眼球を照らすための条件を安定させやすい観点、から好ましい。
【0032】
照明光学系112によって被検者Hの眼底を照射する場合、被検者Hの照射される部分の面積がより大きいことは、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。この場合、照明光学系112は、光源111からの光を、被検者Hの目の周囲に点在する特定の領域に照射する光学系であってもよいが、特定の十分な面積を有する領域に照射する光学系であることが、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。
【0033】
図3は、本発明の実施形態において光源111からの光を照射するのに好適な被検者Hの顔における好適な箇所の一例を模式的に示す図である。
図3に示されるように、照明光学系112は、被検者Hの上瞼を含む弧状の領域31を光源111からの光で照らす光学系であってよい。
【0034】
また、
図4は、本発明の実施形態において光源111からの光を照射するのに好適な被検者Hの顔における好適な箇所の他の例を模式的に示す図である。
図4に示されるように、照明光学系112は、被検者Hの上瞼および下瞼を含む環状の領域41を光源111からの光で照らす光学系であってよい。
【0035】
このように、照明光学系112は、光源111からの光を、被検者Hの顔における目の周囲の弧状の領域31または環状の領域41を介して眼底Eに照射する光学系であってもよい。このような光学系は、反射部材あるいは光束制御部材、特定の方向の光を遮る遮光部材などを用いて構成することが可能である。
【0036】
上記のように被検者Hの表面における特定の領域に光源111からの光を照射する場合では、光を照射する領域の面積が大きいことは、眼底をより明るく照らす観点から好ましい。このような観点から、光を照射する領域の面積は、1cm2以上であることが好ましく、2cm2以上であることがより好ましい。なお、当該領域の面積は、頭蓋骨を15cmの球と仮定すると、眼底を十分に明るく照らす観点から、700cm2以下であってよい。
【0037】
以下、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。
【0038】
〔第一の実施形態〕
[眼底撮像システム]
図5は、本発明の第一の実施形態に係る眼底撮像システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図5に示されるように、眼底撮像システム50は、照明装置61、撮像装置62および制御部51を有している。眼底撮像システム50は、記憶部52、入力装置53および出力装置54をさらに備えている。
【0039】
照明装置61および撮像装置62は、それぞれ、前述した照明装置11および撮像装置12と同様の構成を有している。照明装置61および撮像装置62の構成についてはより詳しく後述する。
【0040】
制御部51は、必要に応じて各種装置からの入力信号に応じて、眼底の撮像に関する各種装置の動作を制御する。記憶部52は、制御部51による眼底の撮像の制御のための情報を格納しており、また必要に応じて、眼底の撮像に関する情報を格納する。記憶部52は、例えばHDD、SSD、DVD-RAMなどの不揮発性の記録媒体で構成される。
【0041】
入力装置53は、被検者Hあるいは眼底撮像システムのオペレータが眼底の撮像に関する情報を制御部51に入力するための装置である。入力装置53は、例えば、キーボード、タッチパネル、音声入力装置または受信装置である。
【0042】
出力装置54は、眼底の画像データあるいは眼底の撮像に関する情報を制御部より出力するための装置である。出力装置54は、例えば、ディスプレイ、音声出力装置または送信装置である。
【0043】
[眼底撮像装置]
<装置の構成>
図6は、本発明の第一の実施形態における眼底撮像装置60の構成を模式的に示す図である。
図6に示されるように、眼底撮像装置60は、照明装置61、撮像装置62およびモニタ63を有する。眼底撮像装置60において、照明装置61における出射光の光軸と、撮像装置62における受光の光軸とは独立しており、共通する部分を有さない。このように、眼底撮像装置60は、同軸落射照明の光学系を含まない構造を有している。
【0044】
照明装置61は、発光ダイオード(LED)611およびレンズ612とを有する。LED611およびレンズ612は、例えば筒またはケーシングによって適当な位置関係で一体的に保持されている。LED611は、600~1600nmの波長の光を出力する。LED611は前述した光源に該当する。レンズ612は、LED611からの光を受け、被検者Hの眼球Eの正面に対して斜めの方向から眼球Eの眼底(網膜)に集束させる。レンズ612は前述した照明光学系に該当する。照明装置61は、被検者Hの眼の周囲が接する接眼部を含んでおらず、被検者Hから離れて配置されている。また、照明装置61は、撮像装置62に対して相対的に固定されておらず、被検者Hの眼球Eの周囲において、位置を調整可能である。
【0045】
撮像装置62は、レンズ621とCMOSイメージセンサ622とを有する。レンズ621およびCMOSイメージセンサ622は、例えば接眼用のケーシングまたは筒によって適当な位置関係で一体的に保持されている。レンズ621は、眼球Eの正面から、眼底(網膜)からの光を受け、CMOSイメージセンサ622に集束させる。レンズ621は前述した撮像光学系に該当する。CMOSイメージセンサ622は前述した撮像素子に該当する。
【0046】
モニタ63は、液晶表示装置であり、入力装置53から入力された情報、あるいは撮像された眼底の画像データなどの眼底の撮像に関する情報を表示する。モニタ63は前述した出力装置54に該当する。
【0047】
[眼底の撮像の説明]
本実施形態における眼底撮像システムによる眼底の撮像について、処理の流れの一例を説明する。制御部51は、入力装置53からの眼底撮像開始を指示する情報に応じて、照明装置61および撮像装置62を作動させる。あるいは、制御部51は、撮像装置62からの画像データにおいて被検者Hの眼球Eが特定の位置にあることに応じて照明装置61を作動させる。
【0048】
照明装置61は、制御部51からの作動を指示する信号に応じて、LED611から光を出力させる。また、照明装置61は、必要に応じて、当該信号に応じてLED611とレンズ612との光軸方向における距離を調整し、被検者Hの表面あるいは眼底における光の集束を調整する。レンズ612は、LED611からの光を受け、被検者Hの眼球Eの眼底に直接的に照射する。眼底に照射された光は、眼底において反射する。
【0049】
あるいは、レンズ612は、LED611からの光を受け、被検者Hの眼球Eの周囲の眼窩脂肪に照射する。当該眼窩脂肪での散乱光は、眼底を後方から透過する。
【0050】
撮像装置62は、制御部51からの作動を指示する信号に応じて、被検者Hの眼球Eからの光の集束とCMOSイメージセンサ622での結像とを調整する。その際、撮像装置62は、必要に応じて、当該信号に応じてCMOSイメージセンサ622とレンズ612との光軸方向における距離を調整する。レンズ612は、眼底からの光(反射光または透過光)を受けて眼底の像を形成し、CMOSイメージセンサ622に集束させる。CMOSイメージセンサ622は、レンズ612からの光を検出し、検出した信号を制御部51に送信する。制御部51は、撮像装置62からの信号に応じて、眼底の画像の情報をモニタ63に出力し、眼底の画像をモニタ63に表示させる。
【0051】
本実施形態では、眼球Eの表面での反射光の影響が実質的には及ばない、良好な眼底の画像が形成される。
図7は、本発明の実施形態と従来の形態との相違点を説明するための図である。図中の実線の矢印は、本発明の実施形態における光の光軸を表している。図中の破線の矢印は、従来の形態における光の光軸を表している。
【0052】
本発明の実施形態は、前述したように、同軸落射照明の光学系を含まない。よって、
図7に示されるように、レンズ621の光の光軸LA1が眼球Eの正面以外の方角、例えば眼球Eの正面に対して斜めの方向に延在するように、LED611からの光が眼底に照射される。そして、眼底での反射光は、瞳孔を介して眼球Eの正面に取り出される。すなわち、眼底からの光の光軸LA2は、眼球Eの正面の方向に延在する。このように、本実施形態では、光源からの光を眼底に照射する照明光学系の光軸は、撮像光学系の光軸と一致しない。このため、CMOSイメージセンサ622では、眼球Eの表面での反射光は実質的には検出されず、当該反射光の像を実質的には含まない良好な眼底の画像が形成される。
【0053】
一方で、従来のように同軸落射照明の光学系を含む場合では、光源からの光は、眼球Eの正面から眼底に照射され、眼底での反射光は、眼球Eの正面から取り出される。したがって、従来の光源からの光の光軸LA3および眼底からの光の光軸LA2は、いずれも、眼球Eの正面の方向に延在し、実質的に一致する。さらに、光源からの光の一部は、角膜の表面で反射する。この表面での反射光の光軸LA4も、眼球Eの正面の方向に延在し、光軸LA2、LA3と実質的に一致する。このため、従来では、撮像素子は、眼球Eからの光とともに眼球Eの表面での反射光も検出することから、眼底の画像には、眼球Eの表面の反射光に起因するアーティファクトが含まれる。撮像素子に向かう眼球Eの表面での反射光を遮ると、眼底の画像のうち、アーティファクトと重なる部分の眼底の画像が形成されず、アーティファクトの部分を欠く眼底の画像が形成される。
【0054】
また、従来において、フラッシュあるいは走査型レーザ検眼鏡(SLO)のように断続的に照射する光源を用いる時分割方式の眼底撮像装置では、安全上の基準の範囲内の照明となるように設定される。また、眼底のうち、網膜での光の反射率は決して高くはない。このため、網膜の撮像において多くの光子統計を取得することができず、眼底(網膜)の分光的観測をするには不利である。本実施形態では、十分に多くの光子統計を取得することが容易である。
【0055】
また、本実施形態では、照明光学系からの一定の照射光によって眼底を照らすことが可能であるため、SLOに比べて眼底を均質に照らす観点からより有利である。したがって、本実施形態は、SLOに比べて、より安定した撮像条件で眼底を撮像することができ、より良好な品質の撮像データを取得することができる。
【0056】
以上に説明したように、従来の眼底撮像装置ではアーティファクトの影響で眼底の撮影が困難になる傾向がある。この傾向は、広角になるほど顕著である。このため、眼底の画像に含まれるアーティファクトの像が眼底の画像の像質を低下させ、眼底の画像に基づく診断がより困難になることがある。
【0057】
本発明の実施形態では、アーティファクトの像が眼底の画像に実質的に含まれない。したがって、上述のような問題点が生じず、例えば瞳孔の径が小さい被検者Hに対しても眼底の良質な画像を撮影することが可能である。また、前述の間接的な照射によって、被検者Hにおける瞳以外の面積を有する部分から眼球Eを周囲から照らすバックライト照射を行って眼底の透過像を撮影することも可能であり、それにより簡便に高精度の眼底の画像を取得することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、撮像光学系は、集光と結像とを実現するレンズ612で構成されている。よって、眼底撮像装置における撮像光学系を、眼底からの光を受けて眼底の像を形成する一次結像光学系と、当該像を撮像素子に再結像させる二次結像光学系とを有する構成とする場合に比べて、撮像光学系の構成が簡略化される。その結果、本実施形態では、眼底撮像装置全体がよりコンパクトに構成され得る。
【0059】
〔第二の実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図8は、本発明の第二の実施形態に係る眼底撮像装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の眼底撮像装置は、撮像光学系以外の構成は、前述した第一の実施形態と同じである。
【0060】
図8に示されるように、本実施形態における撮像光学系は、二枚のレンズ821、822で構成されている。これらのレンズ821、822は、被検者Hが接眼可能なケーシングあるいは筒内に支持されている。レンズ821は、眼底からの光を受けて眼底の像を形成する。レンズ822は、レンズ821が形成した眼底の像をCMOSイメージセンサ622に再結像させる。このように、本実施形態では、撮像光学系は、一次結像光学系を構成する光学素子と、二次結像光学系を構成する光学素子との両方を含んでいる。
【0061】
このように、本実施形態では、撮像光学系は、典型的な二次結像系の光学系となっている。本実施形態は、前述した第一の実施形態に比べて、広角の場合でも眼底の良質な画像を形成する観点から有利である。
【0062】
〔第三の実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図9は、本発明の第三の実施形態に係る眼底撮像装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の眼底撮像装置は、照明装置以外の構成は、前述した第二の実施形態と同じである。
【0063】
図9に示されるように、本実施形態における照明装置91は、光源911および反射部材912を有する。光源911は、被検者Hの眼球Eの周囲かつ近傍に複数配置されている。たとえば、光源911は、被検者Hの瞼付近であって、撮像光学系におけるレンズ621の周囲に複数配置されている。光源911は、円環における等間隔の位置に配置されていてもよいが、人体の形に合わせた非対称な形状上に適当な間隔で配置されてもよい。
【0064】
反射部材912は、光源911からの光を眼球Eの周囲(例えば瞼、trans-pars-plana領域など)に向けて反射するための部材であり、例えば光源911からの光を全反射する反射鏡である。反射鏡も、たとえば、光源911よりも眼球Eから離れた位置であって撮像光学系におけるレンズ621の周辺または周囲に配置されている。本実施形態における照明装置91は、光911からの光を、瞳孔の周囲における任意の形状および面積を有する領域に照射する。当該面積は、十分に明瞭な眼底の画像を形成する観点から、1cm2以上であることが好ましく、2cm2以上であることがさらに好ましい。また、当該領域は被検査の眼球Eにおける角膜の周縁部(例えば虹彩-チン小帯領域)を含むことが望ましい。
【0065】
本実施形態は、前述した本発明の実施形態に比べて、被検者Hの眼球Eの周辺および周囲をより均一に照らす観点から有利である。また、本実施形態では、光源911からの光が照射される領域が広いことから、当該光の輝度をより小さくすることができる。したがって、本実施形態では、本発明の前述した実施形態に比べて、光源からの光が瞳孔を介して眼底に至った場合でも被検者Hおよび眼球Eへの負荷をより軽減し、あるいは当該負荷の発生を防止する観点から有利である。
【0066】
なお、本実施形態において、反射部材に代えて、光源911からの光を屈折させて眼球Eの周囲の所望の位置を照らす光学素子を用いて照明光学系を構成してもよい。あるいは、本実施形態において、光源911からの光を屈折させる光学素子と反射部材とを組み合わせて照明光学系を構成してもよい。光源911からの光を屈折させる光学素子の例には、プリズムおよび光束制御部材が含まれる。この構成も前述した本実施形態の効果を奏する。
【0067】
〔その他の実施形態〕
本発明の実施形態の眼底撮像システム、眼底撮像装置および光学系は、本発明の実施形態の効果が得られる範囲において、上述した構成以外の他の構成を含んでいてもよい。
【0068】
たとえば、照明装置は、被検者に接触して配置されてもよい。このような照明装置は、被検者に接触させて光を照射する光源のみから構成されていてもよい。あるいは当該照明装置は、使用時に照明光学系の物体側端面が被検者に接触するように構成されていてもよい。あるいは当該照明装置は、照明光学系を支持する枠体によって、使用時における照明光学系に対する被検者の頭部の位置が決定されるように構成されていてもよい。この構成は、眼底撮像の条件の安定性を高める観点、および、眼底撮像装置の構成の簡素化の観点から有利である。
【0069】
また、撮像装置は、接眼部を含んでおらず、被検者Hから離れて配置されていてもよい。この構成は、被検者Hに対して非接触の眼底の撮像を実現する観点から好ましい。非接触での眼底の撮像が実現されることによって、より簡便な検査が可能になる。
【0070】
また、本発明の実施形態では、照明装置は、一種でもそれ以上でもよく、眼底撮像装置は、直接的な照射と間接的な照射の一方または両方を一度に実施可能に構成されていてもよい。
【0071】
また、本発明の実施形態において、眼底撮像システムは、眼底の撮像のための制御に加えて、撮像素子が検出した光の信号を加算して画像を合成する処理を行う加算処理部をさらに含んでもよい。この構成は、多くの光子統計を取得することが可能であり、したがって、少ない光量で眼底を照らす場合でも鮮明な眼底の画像を形成する観点から有利である。
【0072】
また、本発明の実施形態において、眼底撮像システムは、撮像素子が検出した光の信号から被検者Hの内部構造を画像化する処理を行う内部画像化処理部をさらに含んでもよい。このようなさらなる処理は、拡散光トモグラフィー(DOT)を実現する技術によって実施し得る。拡散光トモグラフィーは、生体内の拡散光を検出して生体組織における光学特性値を画像化する技術である。その結果、生体の特定の領域における構造および新陳代謝の情報を定量的に検出し得る。眼底撮像システムが上記の内部画像化処理部をさらに備える場合では、眼底撮像装置は複数の光源および照明光学系を有する照明装置を有することが好ましい。好適な照明装置の例には、ヘッドバンドのような頭部に装着される器具に複数の光源および照明光学系を配置した構成が含まれる。
【0073】
また、本発明の実施形態において、眼底撮像装置は、視力検査装置などの眼のための他の検査機器に併設されてもよく、その一部の構成を共有してもよい。この構成は、本発明の実施形態の眼底撮像装置をより普及させる観点から有利である。
【0074】
あるいは、本発明の実施形態において、照明装置および撮像装置は、スマートフォンなどの情報処理を実現可能な情報機器に、付属機器として取り付け可能に構成されてもよい。当該情報機器がライトおよびカメラを備える場合には、本発明の実施形態の効果が得られる範囲において、当該情報機器のカメラは、本発明の実施形態における照明装置として利用されてもよい。また、当該情報機器のカメラは、本発明の実施形態の効果が得られる範囲において、本発明の実施形態における撮像装置として利用されてもよい。
【0075】
また、本発明の実施形態において、眼底撮像システムは、取得した眼底の画像に応じて簡易診断情報を出力する処理を行う簡易診断処理部をさらに含んでいてもよい。このような処理は、例えば、取得した眼底の画像の特徴に基づいて眼球Eにおける異常さを判定し、判定結果に応じて医療機関の受診を勧める情報、あるいは可能性のある病名を出力する処理によって実現され得る。異常さの判定および病名の決定は、例えば、特定の異常を有する眼底の画像データに基づく機械学習によって実現し得る。また、眼球Eの異常の判定は、例えば、ユーザの過去の眼底の画像の情報を参照し、眼底が異常な状態に向かっている特徴およびその度合を検出する処理によって実現され得る。
【0076】
本発明の実施形態における眼底撮像システムの制御部の機能は、当該制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該制御部の各制御ブロック(特に制御部に含まれ得る上記の各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0077】
この場合、上記制御部は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0078】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0079】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0080】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0081】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態における光学系は、光源(111)からの光を、被検者(H)の眼球(E)の眼底に照射する照明光学系(112)と、眼底の像を撮像素子(121)に結像する撮像光学系(122)とを有し、照明光学系の光軸は撮像光学系の光軸と一致しないか、または照明光学系は特定の光軸を有さない。また、本発明の実施の形態における眼底撮像装置(10)は、光源および上記照明光学系を有する照明装置(11)と、撮像素子および上記撮像光学系を有する撮像装置(12)とを有する。さらに、本発明の実施の形態における眼底撮像システム(50)は、上記眼底撮像装置を有する。よって、本発明の実施形態は、眼底観察におけるアーティファクトの発生を抑制することができる。
【0083】
照明光学系は、光源からの光を、眼球のtrans-pars-plana領域(27)を介して眼底に照射してもよい。この構成は、被検者がまぶしさを感じることを防止する観点、および、眼底をより明るく照らす観点からより一層効果的である。
【0084】
また、照明光学系は、光源からの光を、眼球の虹彩-チン小帯領域(28)を介して眼底に照射してもよい。この構成は、被検者がまぶしさを感じることを防止する観点、および、眼底をより明るく照らす観点からより一層効果的である。
【0085】
照明光学系は、光源からの光を、被検者の瞼を介して眼球の周辺組織に照射してもよい。この構成は、被検者がまぶしさを感じること、および、アーティファクトの発生、をより確実に防止する観点からより一層効果的である。
【0086】
照明光学系は、光源からの光を、被検者の頭蓋骨を介して眼球の周辺組織に照射してもよい。この構成は、眼底を明るく照らす観点からより効果的である。
【0087】
照明光学系は、光源からの光を、被検者の頭蓋骨の複数箇所を介して眼球の周辺組織に照射してもよい。この構成は、眼底を明るく照らす観点からより一層効果的である。
【0088】
照明光学系は、光源からの光を、被検者の篩骨を介して眼球の周辺組織に照射してもよい。この構成は、眼球の下方または後方から眼底を明るく照らす観点からより一層効果的である。
【0089】
照明光学系は、光源からの光を、被検者の顔における目の周囲の弧状の領域(31)または環状の領域(41)を介して眼底に照射してもよい。この構成は、眼底を明るく照らす観点からより一層効果的である。
【0090】
光源からの光の波長は、600~1600nmであってよい。この構成は、光源からの光の照射による縮瞳反応を抑制する観点、および、生体内の水への吸収による照射光の減衰を抑制する観点からより一層効果的である。
【0091】
照明装置は、被検者に接触して配置されてもよい。この構成は、眼底撮像の条件の安定性を高める観点、および、眼底撮像装置の構成の簡素化の観点からより一層効果的である。
【0092】
撮像装置は、被検者から離れて配置されていてもよい。この構成は、被検者に対して非接触の眼底の撮像を実現する観点からより一層効果的である。
【0093】
本発明の実施形態における眼底撮像システムは、撮像素子が検出した光の信号を加算して画像を合成する処理をさらに含んでもよい。この構成は、多くの光子統計を取得する観点からより一層効果的である。
【0094】
本発明の実施形態における眼底撮像システムは、撮像素子が検出した光の信号から被検者の内部構造を画像化する処理をさらに含んでもよい。この構成は、拡散光トモグラフィーによる測定をさらに実施可能とする観点からより一層効果的である。
【符号の説明】
【0095】
10、60 眼底撮像装置
11、61、91 照明装置
12、62 撮像装置
21 角膜
22 虹彩
23 水晶体
24 チン小帯
25 硝子体
26 網膜
27 trans-pars-plana領域
28 虹彩-チン小帯領域
31 弧状の領域
41 環状の領域
50 眼底撮像システム
51 制御部
52 記憶部
53 入力装置
54 出力装置
63 モニタ
111、911 光源
112 照明光学系
121 撮像素子
122 撮像光学系
611 LED
612、621、821、822 レンズ
622 CMOSイメージセンサ
912 反射部材
E 眼球
H 被検者
LA1~LA5 光軸を表す矢印