特開 2023-44560 防振吊り具および天井防振構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023044560

(43)【公開日】2023-03-30

(54)【発明の名称】防振吊り具および天井防振構造

(51)【国際特許分類】

   E04B 9/18 20060101AFI20230323BHJP

【ＦＩ】

E04B9/18 G

E04B9/18 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021152651

(22)【出願日】2021-09-17

(71)【出願人】

【識別番号】596066530

【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100149320

【弁理士】

【氏名又は名称】井川 浩文

(74)【代理人】

【識別番号】240000235

【弁護士】

【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】土井 昌司

(72)【発明者】

【氏名】松井 邦彰

(57)【要約】

【課題】 衝撃音等の伝達を抑制すべき状況において防振効果を発揮し得る防振吊り具を提供し、また、当該防振吊り具を用いる天井防振構造を提供する。
【解決手段】 防振吊り具１は、梁材に着脱可能な本体部１０と、本体部の一部に挿通される吊りボルト３と、吊りボルトに作用する振動を吸収する弾性体２とを備える。弾性体は、全体に吊りボルトを貫挿するための貫通部と、上面側において吊りボルトの螺入を許容する雌ネジ部４とを備え、本体部は、弾性体を装着するための底部１１と、底部の適宜箇所に吊りボルトを挿通する挿通部１２とを備える。吊りボルトは、本体部の底部に設けられている挿通部および本体部の底部上面側に装着された弾性体の貫通部に挿通されたうえで弾性体の雌ネジ部に螺入されることにより支持され、弾性体に対し、予備圧縮のための押圧調整部材５が設けられ、押圧調整部材によって弾性体を適宜な状態で圧縮変形させる。
【選択図】 図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

天井もしくは下地材またはこれらの双方を支持するためのフレーム類に対し、防振性能を発揮させつつ吊下するための防振吊り具であって、
梁材に着脱可能な本体部と、
前記本体部の一部に挿通される吊りボルトと、
前記本体部に装着され、前記吊りボルトを支持しつつ、該吊りボルトに作用する振動を吸収する弾性体とを備え、
前記弾性体は、全体に吊りボルトを貫挿するための貫通部と、上面側において該吊りボルトの螺入を許容する雌ネジ部とを備え、
前記本体部は、前記弾性体を装着するための底部と、該底部の適宜箇所に前記吊りボルトを挿通する挿通部とを備え、
前記吊りボルトは、前記本体部の底部に設けられている挿通部および前記本体部の底部上面側に装着された弾性体の貫通部に挿通されたうえで該弾性体の雌ネジ部に螺入されることにより支持されるものであり、
前記弾性体に対し、予備圧縮のための押圧調整部材が設けられ、該押圧調整部材によって該弾性体を適宜な状態で圧縮変形させるものであることを特徴とする防振吊り具。

【請求項2】

前記押圧調整部材は、前記弾性体の下部側において前記吊りボルトに螺合され、前記本体部の底部下面または弾性体の下部に当接可能なナットによって形成されるものであり、該ナットを前記雌ネジ部に向かって螺進させることにより、該雌ネジ部を前記本体部の底部に向かって移動させるものである請求項１に記載の防振吊り具。

【請求項3】

前記押圧調整部材は、前記弾性体の上部側に配置する押圧体と、該押圧体の上部に頭部を配置しつつ前記本体部の底部に到達する先端が該底部において螺着可能なネジ部とを備えるものにより形成され、該ネジ部を螺進させることにより該押圧体を介して前記弾性体の上面側を該本体部の底部に向かって移動させるものである請求項１に記載の防振吊り具。

【請求項4】

前記押圧調整部材は、前記弾性体の上部側に配置する押圧体と、前記本体部の底部の下方に頭部を配置しつつ前記押圧体に到達する先端が該押圧体において螺着可能なネジ部とを備えるものにより形成され、該ネジ部を螺進させることにより該押圧体を介して前記弾性体の上面側を該本体部の底部に向かって移動させるものである請求項１に記載の防振吊り具。

【請求項5】

前記押圧体は、前記吊りボルトが挿通できる挿通部を有し、前記雌ネジ部は、前記押圧体に設けられるものであり、該押圧体と前記本体部の底部との間に装着されるネジ部は、頭部側が配置される該押圧体または該底部に対して遊挿されるものである請求項３または４に記載の防振吊り具。

【請求項6】

前記本体部は、前記梁材の係入を許容する係入部と、該係入部に係入される梁体を挟持するためのネジ部を備える請求項１～５のいずれかに記載の防振吊り具。

【請求項7】

前記弾性体は、少なくとも下面部と上面部とを略平行としつつ中間に連結部を有する断面略Ｓ字状に一体化させた板バネであり、該板部を構成する下面部、上面部および連結部のそれぞれに前記吊りボルトを挿通するための貫通孔が設けられている請求項１～６のいずれかに記載の防振吊り具。

【請求項8】

前記弾性体の上面側に設けられる雌ネジ部は、前記板バネの貫通孔または前記押圧体の挿通部に装着するポップナットによって構成されるものである請求項７に記載の防振吊り具。

【請求項9】

請求項１～８のいずれかに記載の防振吊り具を用いる天井防振構造であって、
前記本体部が前記梁材に係止され、
前記吊りボルトが前記本体部に設置された弾性体の上面側に設けられる雌ネジ部に螺合され、
前記弾性体が、前記押圧調整部材によって予備圧縮され、
前記フレーム類が前記吊りボルトの下部において支持され、
天井もしくは下地材またはこれらの双方が前記フレーム類によって支持されている
ことを特徴とする天井防振構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、防振吊り具および天井防振構造に関するものである。

【背景技術】

【0002】

防振吊り具は、梁材に係止する部材と、天井もしくは下地材またはこれらの双方を支持するフレーム類に装着される部材との間に、適宜な弾性変形を可能とする弾性体を備えた構造であり、当該弾性体として、ゴムを使用するもの（特許文献１参照）と、板バネ等のバネ体を使用するもの（特許文献２参照）があった。これらの防振吊り具は、専ら階上からの衝撃音等による振動が天井に伝わるのを抑制することを目的とし、振動の伝達は、弾性体によって吸収させるように構成されたものであった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】実開平５－５７１４５号公報

【特許文献2】特開２０００－８７４９７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上述のような防振吊り具は、弾性体としてゴムを使用するかバネ体を使用するかの差異を除けば、基本的には同様の効果を発揮するものであり、その効果上の特性も大きく異なることはないものといえる。しかしながら、上述のように、弾性体は、梁材に係止する部材と、天井等を支持する部材との間に設けられることから、防振吊り具によって支持される状態の天井等は、弾性体を介して支持されており、既に弾性力が作用した状態となっていた。

【0005】

このように、弾性体を介して吊下される天井等は、非弾性材料によって吊下される場合に比較して、揺れやすく、階上から伝達される振動以外の振動（例えば、自室内の生活騒音等）によって、容易に振動することがあった。また、防振吊り具は、天井等の重量により弾性体が変形することとなるため、支持すべき天井等を設置する際は、予め当該天井等の重量による弾性体の変形量を考慮しなければならなかった。

【0006】

本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通常時においては非弾性部材として安定した支持状態としつつ、衝撃音等の伝達を抑制すべき状況において防振効果を発揮し得る防振吊り具を提供し、また、当該防振吊り具を用いる天井防振構造を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

そこで、防振吊り具に係る本発明は、天井もしくは下地材またはこれらの双方を支持するためのフレーム類に対し、防振性能を発揮させつつ吊下するための防振吊り具であって、梁材に着脱可能な本体部と、前記本体部の一部に挿通される吊りボルトと、前記本体部に装着され、前記吊りボルトを支持しつつ、該吊りボルトに作用する振動を吸収する弾性体とを備え、前記弾性体は、全体に吊りボルトを貫挿するための貫通部と、上面側において該吊りボルトの螺入を許容する雌ネジ部とを備え、前記本体部は、前記弾性体を装着するための底部と、該底部の適宜箇所に前記吊りボルトを挿通する挿通部とを備え、前記吊りボルトは、前記本体部の底部に設けられている挿通部および前記本体部の底部上面側に装着された弾性体の貫通部に挿通されたうえで該弾性体の雌ネジ部に螺入されることにより支持されるものであり、前記弾性体に対し、予備圧縮のための押圧調整部材が設けられ、該押圧調整部材によって該弾性体を適宜な状態で圧縮変形させるものであることを特徴とする。

【0008】

上記構成の防振吊り具によれば、天井もしくは下地材またはこれらの双方を支持するフレーム類の装着を受けてこれらを吊下する吊りボルトは、弾性体の上面部における雌ネジ部によって支持され、弾性体の圧縮変形による防振効果を得ることができるものとなっている。このとき、押圧調整部材によって弾性体に対して適宜に圧縮変形させることにより、当該弾性体を予備圧縮させることができる。この予備圧縮によって、吊りボルトに作用する天井等（天井や下地材およびフレーム類）の重量が作用した状態においても弾性体は圧縮変形せず、非弾性部材による支持状態と同様の安定性を得ることができる。

【0009】

ここで、押圧調整部材とは、弾性体の弾性変形を可能としつつ、本体部に装着された状態における弾性体についてのみ予備圧縮を可能とするものであり、弾性体の上面側に対しその上限位置を規制するものであり、規制された上限位置よりも下方への移動（弾性体の圧縮）を可能とするものである。

【0010】

そこで、前記押圧調整部材としては、前記弾性体の下部側において前記吊りボルトに螺合され、前記本体部の底部下面または弾性体の下部に当接可能なナットによって形成されるものであり、該ナットを前記雌ネジ部に向かって螺進させることにより、該雌ネジ部を前記本体部の底部に向かって移動させるものとすることができる。

【0011】

上記構成によれば、振動によって吊りボルトに下向きの荷重が作用するときは、当該吊りボルトは、そこに螺合されているナットとともに下降することとなるから、振動を受けるときの弾性体の機能を発揮させることができる。また、振動が作用しない状態においては、弾性体の上面側が、本体部の底部または弾性体の下部との間で所定の間隙が維持されるため予備圧縮の状態が維持させることとなる。

【0012】

また、前記押圧調整部材としては、前記弾性体の上部側に配置する押圧体と、該押圧体の上部に頭部を配置しつつ前記本体部の底部に到達する先端が該底部において螺着可能なネジ部とを備えるものにより形成され、該ネジ部を螺進させることにより該押圧体を介して前記弾性体の上面側を該本体部の底部に向かって移動させるものとして構成することができる。

【0013】

上記構成によれば、弾性体の上部側に配置される押圧体と、本体部の底部との間隔を、ネジ部によって縮小させることができ、この縮小の程度によって弾性体に対する予備圧縮を可能にする。このとき、弾性体の上面側に設けられる雌ネジ部および吊りボルトは、押圧体を避けた状態とすることにより、押圧体を所定の位置に留めることができ、弾性体の上部が押圧体に到達しない範囲では自由な弾性変形が可能となる。これにより、ネジ部の螺着状態の調整により、予備圧縮の程度を調整することが可能となる。なお、押圧体としては板状の天板部として設けることができ、雌ネジ部および吊りボルトとの接触を避けるためには、これらが挿通できる程度の大径の貫通孔を設ける方法があり得る。

【0014】

さらに、上記と同様の機能を発揮させる前記押圧調整部材としては、前記弾性体の上部側に配置する押圧体と、前記本体部の底部の下方に頭部を配置しつつ前記押圧体に到達する先端が該押圧体において螺着可能なネジ部とを備えるものにより形成され、該ネジ部を螺進させることにより該押圧体を介して前記弾性体の上面側を該本体部の底部に向かって移動させるものとして構成することができる。

【0015】

このような構成は、押圧部の位置を確定させるためのネジ部が、本体部の底部側から押圧体側に向けて配置されるものであり、ネジ部の螺着の状態により押圧体の位置を調整できることは上記と同様である。このように、ネジ部の頭部を本体部の底部側に設けるか、押圧体の上部に設けるかの相違は、押圧体による予備圧縮の状態の調整を本体部の上方から行うか、下方から行うかによって使い分けることができるものである。

【0016】

そして、押圧体を用いる上記構成においては、前記押圧体が、前記吊りボルトが挿通できる挿通部を有するものとし、前記雌ネジ部が、前記押圧体に設けられるものとし、さらに、該押圧体と前記本体部の底部との間に装着されるネジ部が、頭部側が配置される該押圧体または該底部に対して遊挿されるものとして構成してもよい。

【0017】

上記のような構成の場合には、押圧体は弾性体の上面部に一体化した状態となり、振動等により吊りボルトに下向きの荷重が作用するとき、当該弾性体に対する圧縮力は押圧体を介して伝達されることとなる。このとき、予備圧縮の状態から防振のための圧縮変形へ移行する際に、ネジ部が弾性変形の妨げとならないように、頭部が配置される側の部材において遊挿されるものとしているのである。このように遊挿された状態により、防振時変形においては、ネジ部の頭部が各部材（本体部の底部または押圧体）に当接した状態から離れた状態となることで、自由な変形を可能にしているのである。

【0018】

上記各構成の防振吊り具にあっては、前記本体部が、前記梁材の係入を許容する係入部と、該係入部に係入される梁体を挟持するためのネジ部を備える構成とすることができる。このような構成は、各種の梁材（寸法の異なる部材）に対応しても係止を可能にするものである。

【0019】

また、上記各構成の防振吊り具にあっては、前記弾性体が、少なくとも下面部と上面部とを略平行としつつ中間に連結部を有する断面略Ｓ字状に一体化させた板バネであり、該板部を構成する下面部、上面部および連結部のそれぞれに前記吊りボルトを挿通するための貫通孔が設けられているものとすることができる。

【0020】

上記構成によれば、ゴムによることなく板バネによって弾性体を構成することができるうえ、上下の両面部を略平行に設けることにより、板バネの上面部は弾性変形時においても平面状態を維持することができるため、予備圧縮の状態においても上面部が変形によって傾斜することを抑制させるものとなる。特に押圧体を設ける場合には、押圧体と上面部との当接面を面接触により安定化させ得るものとなる。

【0021】

なお、上記各構成の防振吊り具にあっては、前記弾性体の上面側に設けられる雌ネジ部としては、前記板バネの貫通孔または前記押圧体の挿通部に装着するポップナットによって構成されるものとすることができる。これは、弾性体を板バネによって構成する場合、または押圧体を天板部によって設けるような場合のように、薄肉部材においても雌ネジ部を形成させることができるものであり、かつ吊りボルトに作用する荷重を十分に弾性体に伝達させることができるものとなる。

【0022】

他方、天井防振構造に係る本発明は、前述した各構成の防振吊り具のいずれかを用いる天井防振構造であって、前記本体部が前記梁材に係止され、前記吊りボルトが前記本体部に設置された弾性体の上面側に設けられる雌ネジ部に螺合され、前記弾性体が、前記押圧調整部材によって予備圧縮され、前記フレーム類が前記吊りボルトの下部において支持され、天井もしくは下地材またはこれらの双方が前記フレーム類によって支持されていることを特徴とする。

【0023】

上記構成の天井防振構造によれば、本体部が梁材に係止された状態で固定され、この固定された本体部か吊下される吊りボルトによってフレーム類および天井等が支持されるものとなり、このとき、本体部に設けられる弾性体には、吊りボルトによって圧縮荷重が作用し、この圧縮荷重に応じて弾性変形することにより防振効果をえることができる。このとき、当該フレーム類や天井等の重量に相当する荷重は、弾性体に対する予備圧縮により予め付与されていることから、当該フレーム類や天井等を支持した状態において弾性体は変形しないものとなっており、これを超える荷重、すなわち振動等による外部の荷重が作用するときに圧縮変形することで防振効果を得るものとなる。

【発明の効果】

【0024】

本発明の防振吊り具によれば、弾性体に対する予備圧縮を与えることにより、単にフレーム類や天井等を支持している状態（通常時）においては、弾性体は弾性変形し得る状態ではないことから、非弾性部材として安定した支持状態となる。そして、衝撃音等の伝達を抑制すべき状況においては、上記の予備圧縮の状態を超えて弾性体が変形し得るものとなるから、防振効果を発揮し得るものとなる。

【0025】

他方、本発明の天井防振構造によれば、通常時においては安定した天井等の支持状態であり、衝撃音等の伝達を抑制すべき場合には、弾性体の弾性変形により防振させることができる。なお、天井構造の設計等により通常時における吊りボルトに作用する荷重の程度が異なることも予想されるが、押圧調整部材による調整機能により、適宜予備圧縮の状態を調整し得るものとなる。

【図面の簡単な説明】

【0026】

【図1】天井防振構造の概略を示す説明図である。

【図2】防振吊り具に係る第１の実施形態を示す分解斜視図である。

【図3】（ａ）は防振吊り具に係る第１の実施形態を示す斜視図であり、（ｂ）はＩＩＩＢ－ＩＩＢ線による断面図である。

【図4】防振吊り具に係る第１の実施形態を示す説明図である。

【図5】防振吊り具に係る第１の実施形態の作動態様を示す説明図である。

【図6】（ａ）は防振吊り具に係る第２の実施形態を示す斜視図であり、（ｂ）はＶＩＢ－ＶＩＢ線による断面図である。

【図7】防振吊り具に係る第２の実施形態を示す説明図である。

【図8】防振吊り具に係る第２の実施形態の作動態様を示す説明図である。

【図9】防振吊り具に係る第１の実施形態の変形例を示す説明図である。

【図10】防振吊り具に係る第２の実施形態の変形例を示す説明図である。

【図11】防振吊り具に係る第２の実施形態の他の変形例を示す説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0027】

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態については、まず、天井防振構造の概略を説明したうえで、防振吊り具に係る実施形態を説明する。

【0028】

＜天井防振構造＞
図１は、天井防振構造の概略を示す図である。この図のように、防振吊り具１は、梁材Ａに係止されるものであり、図はＨ型鋼のフランジ部に係止される場合を例示している。この防振吊り具１には、弾性体２を具有するものであり、防振吊り具１の本体部１０に挿通される吊りボルト３の上端近傍が、弾性体２の上部に連結され、当該吊りボルト３を支持するものであるとともに、吊りボルト３に作用する荷重は、弾性体２の上方から当該弾性体２を圧縮する状態で作用し、この弾性体２の圧縮変形（弾性変形）を利用して防振させるものである。

【0029】

なお、吊りボルト３の下端近傍においては、ハンガＢが装着され、ハンガＢは、野縁受け（フレーム類）Ｃを支持し、さらにこの野縁受けＣに装着されるクリップＤを介して野縁（フレーム類）Ｅを支持する構成となっている。そして、この野縁Ｅを利用して面材（天井もしくは下地材またはこれら双方（以下、天井等と称することがある））Ｆが設けられるものである。

【0030】

天井等Ｆは、各種の伝達経路により衝撃音等による振動が伝達されることから、そのような振動が伝達される際に、弾性体２が弾性変形することにより振動を吸収させるものとなっている。衝撃音は天井空間（天井懐）を伝播することが知られているため、梁材Ａを強固に設けた場合であっても天井の振動は生じ得るものであり、また、地震などによっても吊下された天井は振動し得るものである。そのため、フレーム類Ｃ，Ｅや天井等Ｆの重量を支持しつつ振動を吸収させるために防振吊り具１が梁材Ａと吊りボルト３との間に介在されているのである。

【0031】

なお、図は、天井防振構造の一部を示すものであり、梁材Ａは長尺なものであり、かつ平行に複数配置されるものである。また、野縁受けＣおよび野縁Ｅについても同様に複数設置されるものである。従って、防振吊り具１を使用して野縁受けＣを支持する箇所も複数箇所となり、そのいずれにおいても防振吊り具１が使用されるものである。さらに、図示の天井防振構造は、防振吊り具１を使用する天井構造の一例であり、ハンガＢや野縁受けＣを使用せずに、吊りボルト３の下部近傍において野縁Ｅを直接支持させる場合もある。また、野縁Ｅには、下地材または天井のいずれか一方を装着する場合のほか、下地材を装着したうえで化粧板を天井材として積層する場合もある。

【0032】

このように、各種のフレーム類Ｃ，Ｅおよび天井等Ｆを支持した状態において、天井等Ｆに発生した振動を弾性体２によって吸収させるのであるが、ここで使用される防振吊り具１は、後述のように、弾性体２を予備圧縮させたものとしている。予備圧縮とは、予め圧縮荷重が作用する方向へ圧縮変形させるものであるが、予備圧縮のための荷重に相当する範囲内の荷重が弾性体に作用する場合、その荷重による弾性変形を抑止するものである。すなわち、通常のフレーム類Ｃ，Ｅおよび天井等Ｆの重量が作用したとしても弾性体２は変形せず、吊りボルト３の下降も生じさせないものとなる。これにより、吊りボルト３の装着状態は、フレーム類Ｃ，Ｅおよび天井等Ｆの装着前と装着後で変化しないこととなるため、その後の位置調整が不要となるものである。同時に、弾性体２を介して吊下される吊りボルト３は、弾性体２の復元力による上昇方向の付勢を受けることがないこととなり、設置状態において非弾性部材によって設置されているものと同視できるものとなることから、弾性変形による不安定な設定作業から解放され得るものとなる。

【0033】

そこで、このような予備圧縮を可能とするための防振吊り具１に係る実施形態について下記に詳述する。

【0034】

＜防振吊り具の第１の実施形態＞
防振吊り具１に係る第１の実施形態は、図２に示すように、概略、本体部１０と、この本体部１０に装着される弾性体２と、本体部１０に挿通されて弾性体２に連結される吊りボルト３とを備える構成である。

【0035】

本体部１０は、弾性体２を装着するための底部１１が設けられ、この底部１１に挿通部１２を設けることによって吊りボルト３の挿通を可能としている。また、本体部１０には、前述の梁材Ａの一部（例えばＨ型鋼のフランジ部など）の係入を許容し、この梁材を挟持することにより係止を可能としている。そのために、本体部１０には一部を切り欠いて形成された係入部１３が設けられ、底部１１に装着できるネジ部１４が設けられている。このネジ部１４は、底部１１に螺刻された雌ネジ１５に螺合させ、先端を上昇させることにより、梁材の一部に当接できるようになっているのである。梁材との挟持は、係入部１３の内側端面とネジ部１４の先端との間に梁材の一部を配置することによって行われるものとなる。

【0036】

上記本体部１０の底部１１に装着される弾性体２としては、本実施形態においては略Ｓ字状に折曲してなる板バネによるバネ体が使用されている。バネ体による弾性体２は、具体的には、略平行に配置される下面部２１および上面部２２と、これらの中間に位置する連結部２３の３枚の平面領域によって構成され、その平面領域の中間には湾曲させた湾曲領域２４，２５が設けられたものである。このような略Ｓ字状のバネ体によって弾性体２を形成することにより、バネ体（弾性体）２が全体として圧縮変形した際に、上面部２２が下面部２１との平行状態を維持させ得ることとなり、上面部２２の昇降によって圧縮変形状態を調整させることも可能となる。

【0037】

なお、このようなバネ体（弾性体）２の下面部２１には、貫通孔２６，２７が設けられ、本体部１０の底部１１に設けられる貫通孔１６，１７を用いて、リベット等２８，２９によって固着させることができるものとしている。バネ体（弾性体）２が、弾性変形を繰り返す際に移動させないためである。

【0038】

また、下面部２１，上面部２２および連結部２３には、同軸上に設けられた貫通孔４１，４２，４３を有しており、吊りボルト３を鉛直方向に挿通できる貫挿部として機能させている。そして、上面部２２の貫通孔４１に設置されるポップナット４によって雌ネジ部を構成している。これにより、雌ネジ部（ポップナット）４に吊りボルト３を螺合することにより、当該吊りボルト３が、バネ体（弾性体）２の上面部において支持されるものとしている。吊りボルト３を雌ネジ部４との螺合によって支持させているのは、吊りボルト３の高さ調整か可能にするためであり、吊りボルト３を回転させることにより上下方向の位置を調整することによって、前述のハンガＢの高さを調節し、結果的に野縁Ｅや天井等Ｆを所定の高さに設置させることができる。

【0039】

このような構成により、図３（ａ）に示すように、吊りボルト３は、本体部１０の底部１１を挿通し、また、この底部に設置されたバネ体（弾性体）２を挿通した状態で、上部近傍を雌ネジ部（ポップナット）４に螺着されて全体的な一体性が維持されるものとなる。なお、梁材に係止するためのネジ部１４は、本体部１０の底部１１よりも上方に先端を突出させることができるものとなっている。

【0040】

ところで、本実施形態の押圧調整部材は、吊りボルト３の雄ネジを利用するものである。すなわち、吊りボルト３の雄ネジ部分にフランジナット５を装着し、このフランジナット５を上向きに螺進させることにより、このフランジナット５をバネ体（弾性体）２の下部、または本体部１０の底部１１の下部に当接させることができるものとなっている。底部１１の下部に当接させる場合には、底部１１に設けられる挿通部１２は、フランジナット５の外径よりも小径とする貫通孔によって構成されるものとなり、バネ体（弾性体）２の下部に当接させる場合は、当該挿通部１２は、フランジナット５の外径よりも大径の貫通孔によって構成し、バネ体２の下面部２１の貫通孔をフランジナット５の外径よりも小径とすればよい。

【0041】

図３（ｂ）は、フランジナット５を本体部１０の底部１１の下部に当接させる形態を例示している。なお、この図は図３（ａ）におけるＩＩＢ－ＩＩＢ線による断面図である。この図に示されるように、本体部１０の底部１１に設けられる挿通部１２は小径の貫通孔によって形成され、フランジナット５は、本体部１０よりも下方に螺合された状態で設けられるものである。フランジナット５が本体部１０に到着していない状態においては、バネ体（弾性体）２は、圧縮されていない状態となっている。

【0042】

上記のような状態から、フランジナット５の上向きに螺進させることにより、図４（ａ）に示すように、本体部１０の底部１１の下部に当接させることができる。そして、さらに螺進させることにより、図４（ｂ）に示すように、本体部１０の底部１１を基準として、吊りボルト３を下降させることができる。この吊りボルト３の下降によって、当該吊りボルト３の上端近傍に螺合されている雌ネジ部（ポップナット）４を引き下げることとなり、バネ体（弾性体）２を上面部から強制的に押圧することができるのである。このときのフランジナット５の螺進の状態により、吊りボルト３および雌ネジ部（ポップナット）４の下降の程度を調整することができ、結果的に押圧によるバネ体（弾性体）２に対する圧縮の程度を調整することが可能となる。このような構成から、当該押圧による変形が予備圧縮であり、また、圧縮方向へ押圧する機構を押圧調整部材である。

【0043】

＜作動の態様＞
本実施形態は、上記のような構成としていることから、上述のように予備圧縮を調整することによって、図５（ａ）に示すように、フレーム類や天井等による防振吊り具１の１個の当たりに作用する荷重（通常荷重）Ｗが、吊りボルト３に作用する状態において、その通常重量Ｗは、吊りボルト３からバネ体（弾性体）２の雌ネジ部（ポップナット）４に作用しても、当該バネ体（弾性体）２を圧縮させる程度に達しないようにすることができる。この状態において、天井等の重量Ｗが作用してもバネ体（弾性体）２が圧縮変形されていないことから、当然に、バネ体（弾性体）２は振動（伸縮変形）することがなく、非弾性部材のみで構成された状態とすることができる。

【0044】

そして、図５（ｂ）に示すように、通常荷重Ｗに加えて天井等の振動に基づく下向き荷重（追加荷重）αが作用する場合、吊りボルト３には付加された総荷重（Ｗ＋α）が作用することとなり、予備圧縮による圧縮荷重を超えることとなり、吊りボルト３は下降し、バネ体（弾性体）２は圧縮変形することとなる。

【0045】

このとき、吊りボルト３に装着されているフランジナット５は、吊りボルト３に装着した位置を変更することなく、同時に下降するため、当初当接させていた本体部１０の底部１１の下部から離間することとなる。追加の荷重αは、天井等の振動によるものであるから、バネ体（弾性体）２の復元力によって、吊りボルト３は、下降した後に上昇することとなるが、このときの上昇の上限は、フランジナット５が本体部の底部１１に当接する位置までとなり、天井等の振動が継続する間は、上記の状態が繰り返されることとなる。そして、天井等の振動が終了した際には、再び、図５（ａ）に示したように、バネ体（弾性体）２は予備圧縮された状態で安定することとなる。

【0046】

このように、天井等の振動に伴う追加荷重αが作用しない範囲においてバネ体（弾性体）２が伸縮変形しないことから、防振吊り具１の全体が非弾性部材のみで構成されている状態となるから、この防振吊り具１の設置作業およびフレーム類および天井等の設置作業において、バネ体（弾性体）２の伸縮による位置の変化を考慮する必要がないものとなり、作業効率を向上させることができる。

【0047】

＜防振吊り具の第２の実施形態＞
図６は、防振吊り具に係る第２の実施形態を示すものである。なお、図６（ａ）は全体の斜視図であり、図６（ｂ）は、ＶＩＢ－ＶＩＢ線による断面図である。本実施形態は、これらの図に示されているように、バネ体（弾性部材）２の上部側に押圧体６が設けられ、この押圧体６を下方に押圧させることにより、バネ体（弾性体）２を予備圧縮させるものである。

【0048】

押圧体６は、バネ体（弾性体）２の天板部のようにバネ体（弾性体）２の上面部２２の上部側に積層されて設置されるものである。また、この押圧体６のうち、バネ体（弾性体）２の両側に張り出した部分に貫通孔６１，６２が設けられており、この貫通孔６１，６２を遊挿するようにネジ部６３，６４が設けられている。この貫通孔６１，６２と対向する本体部１０の底面部１１には、雌ネジ１８，１９が刻設され、上記ネジ部６３，６４の螺合を許容するように構成されている。

【0049】

このネジ部６３，６４の頭部６３ａ，６４ａは、押圧体６の上部側に配置され、先端６３ｂ，６４ｂを本体部１０の底部１１に設けた雌ネジ１８，１９に螺合させることにより、押圧体６は、当該底部１１に一体化するものである。そして、このネジ部６３，６４を螺進させることにより、頭部６３ａ，６４ａが押圧体６を下向きに移動させることとなり、この押圧体６の下降によりバネ体（弾性体）２の上部を下降させ、バネ体（弾性体）２の全体を圧縮させるように押圧可能となっている。

【0050】

なお、本実施形態では、押圧体６のほぼ中央にバーリング加工したバーリングタップ６５によって雌ネジ部４を設けており、この雌ネジ部６５に吊りボルト３を螺合させることにより、当該吊りボルト３をバネ体（弾性体）２の上面側において支持させる構成としている。

【0051】

本実施形態によれば、図７（ａ）に示すように、吊りボルト３の上端近傍を押圧体６の雌ネジ部４（バーニングタップ６５）に螺合させることにより、当該押圧体６をバネ体（弾性体）２の上面側に配置させることができ、この状態でネジ部６３，６４の先端６３ｂ，６４ｂを本体部１０の底面部１１に設けられる雌ネジ１８，１９に螺合させることができる。ネジ部６３，６４の軸部は、その先端６３ｂ，６４ｂを雌ネジ１８，１９に螺合させた状態において、頭部６３ａ，６４ａが押圧体６を介してバネ体（弾性体）２を圧縮変形しない程度の長さに調整されている（図７（ａ）参照）。

【0052】

この状態から、ネジ部６３，６４を螺進させて、押圧体６を介してバネ体（弾性体）２を押圧変形させるのである。図７（ｂ）に示すように、両側に配置して二つのネジ部６３，６４を同程度に螺進させることにより、押圧体６は下向きに平行移動させることができ、バネ体（弾性体）２の上面部２２を全体的に（面接触の状態で）下方へ押圧し、当該バネ体（弾性体）２を圧縮させることができる。これと同時に、雌ネジ部４（バーニングタップ６５）に螺合されている吊りボルト３を加工させることとなる。この状態でバネ体（弾性体）２は予備圧縮された状態となるのである。

【0053】

＜作動の態様＞
図８（ａ）に示すように、バネ体（弾性体）２が予備圧縮された状態においては、第１の実施形態と同様に、フレーム類および天井等の重量Ｗが吊りボルト３に作用してもバネ体（弾性体）２は圧縮されることはなく、非弾性部材のみで構成されているような状態となるものである。

【0054】

そして、図８（ｂ）に示すように、天井等の振動により追加荷重αが作用するとき、吊りボルト３が引き下げられ、押圧体６を介してバネ体（弾性体）２を圧縮変形させることとなる。このとき、押圧体６を下向きに誘導させていたネジ部６３，６４は、本体部１０の底部１１によって立設された状態で維持されることとなる。他方、押圧体６の貫通孔６１，６２は、ネジ部６３，６４を遊挿した状態であるから、ネジ部６３，６４の状態に関係なく押圧体６を自在に下降させることができるものである。なお、押圧体６の貫通孔６１，６２がネジ部６３，６４に沿って下降する状態から、当該ネジ部６３，６４を下降方向の案内部として利用することができる。

【0055】

なお、本実施形態は上記のような構成であるから、押圧体６によるバネ体（弾性体）２の予備圧縮は、ネジ部６３，６４の螺進状態によって調整可能であるから、この押圧体６とネジ部６３，６４によって押圧調整部材を構成させているものである。

【0056】

＜変形例１＞
次に、上記の実施形態の変形を例示する。図９は、第１の実施形態の変形例である。この図に示されているように、フランジナット５がバネ体（弾性体）２の下面部２１の下部に当接させた構成である。このように、フランジナット５をバネ体（弾性体）２の下面部２１の下部に当接させるためには、フランジナット５が本体部１０の底部１１を挿通できるように構成する必要がある。そのため、この変形例では、本体部１０の底部１１に設けられる挿通部１２は、フランジナット５のフランジ径よりも大径の貫通孔によって形成されるものとしている。

【0057】

上記のような構成の変形例においては、図９（ａ）に示されているように、フランジナット５は、本体部１０の底部１１よりも下方から操作可能となり、バネ体（弾性体）２の下面部２１に当接させるまで当該フランジナット５を螺進させることができ、その後の螺進の状態に応じて下面部２１を基準として吊りボルト３を引き下げることができ、雌ネジ部（ポップナット）４を介して上面部２２を下降させることによって、予備圧縮することができるものである。

【0058】

そして、図９（ｂ）に示しているように、天井等の重量Ｗに加えて振動による負荷が吊りボルト３に作用するときは、吊りボルト３とともにフランジナット５は、挿通部１２を挿通して外方（底部１１の下方）に移動しつつ全体としてバネ体（弾性体）２の上面部２２を下降させ、これに対し、バネ体（弾性体）２の下面部２１は底部１１に当接した状態で一定であるから、バネ体（弾性体）２は、当該上面部２２が下降した範囲で弾性変形し得るものとなる。

【0059】

＜変形例２＞
さらに、第２の実施形態の変形例について説明する。図１０は、その変形例を示すものである。この図に示されているように、変形例２は、押圧体６の装着において、本体部１０の底部１１の側にネジ部６３，６４の頭部６３ａ，６４ａを配置したものである。必然的に貫通孔６１，６２は本体部１０の底部１１に設けられ、押圧体６の側には、雌ネジ１８，１９が刻設されるものとしている。

【0060】

このような構成の場合には、図１０（ａ）に示されているように、底部１１の下方からネジ部６３，６４を操作するものとなり、ネジ部６３，６４の先端６３ｂ，６４ｂを押圧体６に螺合させるのである。そして、双方のネジ部６３，６４を同程度に螺進させることにより、押圧体６を底部１１に引き寄せることができ、押圧体６の移動によってバネ体（弾性体）２を圧縮させることができ、これによって予備圧縮を可能としている。

【0061】

そして、図１０（ｂ）に示しているように、天井等の重量Ｗに加えて振動による負荷が吊りボルト３に作用するときは、吊りボルト３を介して押圧体６が下降し、バネ体（弾性体）２を圧縮させることになるが、このとき、押圧体６に螺着されるネジ部６３，６４は、本体部１０の底部１１に設けられている貫通孔６１，６２の内部を移動することとなる。このときネジ部６３，６４の頭部６３ａ，６４ａは、底部１１の下方に突出した状態となり、バネ体（弾性体）２の復元力により再び上昇する際には、頭部６３ａ，６４ａを底部１１の表面に当接させた状態で停止させることとなる。

【0062】

＜その他の変形例＞
本発明の実施形態およびその変形例は上記のとおりであるが、本発明が、これらの実施形態および変形例に制限される趣旨ではない。すなわち、実施形態および変形例として例示した各要素をさらに変形し、または他の要素を追加するものであってもよい。

【0063】

例えば、図１１（ａ）に示すように、第２の実施形態の変形例（変形例２）をさらに変形した構成もあり得る。この図に示される変形例は、押圧体６は単にバネ体（弾性体）２を上方から押圧するためのものであり、雌ネジ部（ポップナット）４がバネ体（弾性体）２の上面部２２に設けられた構成としたものである。ここで、吊りボルト３の上端部分やバネ体（弾性体）２に設ける雌ネジ部（ポップナット）４が押圧体６と干渉しないために、押圧体６には大きめの貫通孔６６を設けるものとしている。

【0064】

さらに、図１１（ｂ）に示すように、押圧体６が、バネ体（弾性体）２の両側に分割された二つの係止片６０ａ，６０ｂによって構成するものであってもよい。この両係止片６０ａ，６０ｂは、いずれも断面略Ｌ字状に形成された板状部材であり、一方を押圧片部６７ａ，６７ｂとして、バネ体（弾性体）２の上部に当接し、他方を摺接片部６８ａ，６８ｂとして、本体部１０の側壁に摺接させつつ設置するのである。また、押圧片部６７ａ，６７ｂにはネジ部６３，６４が螺合できるような雌ネジが刻設されている。このような構成の係止片６０ａ，７０ｂを使用する場合には、押圧片部６７ａ，６７ｂの雌ネジにネジ部６３，６４を螺合させ、摺接片部６８ａ，６８ｂを本体部１０の側壁に摺接させることにより位置決めされることとなり、また、摺接片部６８ａ，６８ｂが本体部１０の側壁に摺接することによりネジ部６３，６４の螺進時における係止片６０ａ，６０ｂの供回りも回避できるから、本体部１０の底部１１よりも下方においてネジ部６３，６４を操作することで、押圧片部６７ａ，６７ｂを昇降させることが可能となる。このときの押圧片部６７ａ，６７ｂの下降により、バネ体（弾性体）２に対する予備圧縮を可能とするものである。

【0065】

以上のように、防振吊り具に係る実施形態および変形例によれば、バネ体（弾性体）２に対する予備圧縮を与えることにより、フレーム類および天井等を支持している状態（通常時）においては、バネ体（弾性体）２は変形しない状態とすることができ、非弾性部材によって支持するような状態を形成させることができる。このような状態を形成するための操作としては、専らフランジナット５またはネジ部６３，６４などの押圧調整部材によるものであるため、支持すべき天井等の重量に応じて適宜な予備圧縮を付与することができる。そして、衝撃音等の伝達による不可重量αが作用する状態において、バネ体（弾性体）２は圧縮が可能であるから、防振効果を発揮し得るものとなる。

【0066】

また、上記防振吊り具１を使用する天井防振構造によれば、通常時における天井等の支持状態は安定的であり、衝撃音等の伝達を抑制すべき場合には、通常時を超える範囲においてバネ体（弾性体）２が弾性変形することにより、防振に寄与させることができる。

【符号の説明】

【0067】

１ 防振吊り具
２ バネ体（弾性体）
３ 吊りボルト
４ 雌ネジ部（ポップナット）
５ フランジナット（押圧調整部材）
６ 押圧体
１０ 防振吊り具の本体部
１１ 本体部の底部
１２ 挿通部
１３ 係入部
１４ ネジ部（梁材係止用）
１５ 雌ネジ（梁材係止用）
１６，１７ 貫通孔
１８，１９ 雌ネジ（押圧体用のネジ部螺合用）
２１ バネ体の下面部
２２ バネ体の上面部
２３ バネ体の連結部
２４，２５ 湾曲領域
２６，２７ 貫通孔（リベット用）
２８，２９ リベット
４１，４２，４３ バネ体の貫通孔（弾性体の貫挿部）
６０ａ，６０ｂ 係止片部
６１，６２ 貫通孔（押圧体用のネジ部挿通用）
６３，６４ ネジ部（押圧体用）
６５ バーニングタップ（雌ネジ部）
６６ 貫通孔
６７ａ，６７ｂ 押圧片部
６８ａ，６８ｂ 摺接片部
Ｗ 通常荷重（フレーム類および天井等の重量）
α 追加荷重（振動による荷重）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】