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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044596
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】撥水繊維用処理剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/295 20060101AFI20230323BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20230323BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
D06M13/295
D06M13/224
D06M15/53
D06M13/17
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197423
(22)【出願日】2021-12-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2021151634
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 幸男
(72)【発明者】
【氏名】小南 裕志
(72)【発明者】
【氏名】多田 充宏
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC06
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA40
4L033CA48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温高湿での耐久制電性に優れる撥水繊維用油剤を提供すること。
【解決手段】特定の化学式で示される化合物(A)、特定の化学式で示される化合物(B)、特定の化学式で示される化合物(C)、特定の化合物(D)及び無機燐酸塩(IN)から選ばれる少なくとも1種を含む撥水繊維用処理剤であって、前記化合物(A)及び前記化合物(B)を必須に含み、撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価が0.5~680(KOHmg/g)であり、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記化合物(C)、前記化合物(D)及び前記無機燐酸塩(IN)のそれぞれに帰属されるP核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値(A)の比率〔A/(A+B+C+D+IN)〕が20~100%である、撥水繊維用処理剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物(A)、下記一般式(2)で示される化合物(B)、下記一般式(3)で示される化合物(C)、下記化合物(D)及び無機燐酸塩(IN)から選ばれる少なくとも1種を含む撥水繊維用処理剤であって、前記化合物(A)及び前記化合物(B)を必須に含み、
前記撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価が0.5~680(KOHmg/g)であり、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記化合物(C)、前記化合物(D)及び前記無機燐酸塩(IN)のそれぞれに帰属されるP核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値(A)の比率〔A/(A+B+C+D+IN)〕が20~100%である、撥水繊維用処理剤。
【化1】
(式中、Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。)
【化2】
(式中、R及びRは炭素数3~5の炭化水素基である。R及びRは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。分子内に(AO)が2つある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。)
【化3】
(式中、Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。Qは、M又はR(OA)である。Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。Yは1又は2である。分子内にM又は(AO)が2つ以上ある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。)
化合物(D):トリペンチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリプロピルホスフェート及びトリ(ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)ホスフェートから選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
前記撥水繊維用処理剤の不揮発分の吸湿率が10~75%である、請求項1に記載の撥水繊維用処理剤。
【請求項3】
ノニオン界面活性剤(E)をさらに含む、請求項1又は2に記載の撥水繊維用処理剤。
【請求項4】
前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値と前記化合物(B)に帰属されるP核NMR積分値との比率(A/B)が1~50である、請求項1~3のいずれかに記載の撥水繊維用処理剤。
【請求項5】
原料撥水繊維に対して、請求項1~4のいずれかに記載の撥水繊維用処理剤が付与されてなる、撥水性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水繊維用処理剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや合成ナプキンを代表とする生理用品等の吸収性物品は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む繊維(ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維等)を主材とする各種不織布に親水性を付与したトップシートと、撥水性を付与したバックシートと、トップシートとバックシートの間に綿状パルプや高分子吸収体等からなる材料とを配置した3層から形成される構造になっていることが多い。バックシートは、尿や血液の漏れを防ぐために強い撥水性が求められる。またバックシート不織布を製造する工程において、静電気が発生すると不織布の地合が悪くなる事から静電気防止性(制電性)が求められるが、撥水化処理された繊維は静電気が発生しやすく撥水性と制電性の両立が求められる。
【0003】
そこで、繊維表面にアルキル基の炭素数が14~18で、且つカリウム塩の割合が50~90重量%、ナトリウム塩の割合が10~50重量%であるアルキルホスフェート塩を用いることで撥水性と制電性を両立させる提案(特許文献1)がなされているが、撥水性と制電性の両立の程度がまだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-325937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、高温高湿での耐久制電性と撥水性とに優れる撥水繊維用油剤を提供することである。又、該処理剤が付着した繊維および不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の燐酸化合物を特定量含有し、その酸価が一定の値を示す撥水繊維用処理剤であれば、解決できることを突き止めた。
すなわち、本発明の撥水繊維用処理剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A)、下記一般式(2)で示される化合物(B)、下記一般式(3)で示される化合物(C)、下記化合物(D)及び無機燐酸塩(IN)から選ばれる少なくとも1種を含む撥水繊維用処理剤であって、前記化合物(A)及び前記化合物(B)を必須に含み、前記撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価が0.5~680(KOHmg/g)であり、前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記化合物(C)、前記化合物(D)及び前記無機燐酸塩(IN)のそれぞれに帰属されるP核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値(A)の比率〔A/(A+B+C+D+IN)〕が20~100%である。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R及びRは炭素数3~5の炭化水素基である。R及びRは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。分子内に(AO)が2つある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。Qは、M又はR(OA)である。Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。Yは1又は2である。分子内にM又は(AO)が2つ以上ある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。)
化合物(D):トリペンチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリプロピルホスフェート及びトリ(ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)ホスフェートから選ばれる少なくとも1種
【0013】
前記撥水繊維用処理剤の不揮発分の吸湿率が10~75%であると好ましい。
ノニオン界面活性剤(E)をさらに含むと好ましい。
前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値と前記化合物(B)に帰属されるP核NMR積分値との比率(A/B)が1~50である、と好ましい。
【0014】
本発明の撥水性繊維は、原料撥水繊維に対して、上記撥水繊維用処理剤が付与されてなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撥水繊維用処理剤は、高温高湿での耐久制電性と撥水性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の撥水繊維用処理剤は、上記化合物(A)、上記化合物(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)及び無機燐酸塩(IN)から選ばれる少なくとも1種を含む。以下に詳細に説明する。
【0017】
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、本願発明の撥水繊維用処理剤に必須に含まれる成分であり、撥水性及び制電性に寄与する成分である。
化合物(A)は、上記一般式(1)で示される。
式中、Rは炭素数3~5の炭化水素基である。Rは直鎖でも分岐鎖でもよい。炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。Rは炭素数4の炭化水素基が最も好ましい。
【0018】
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン単位の繰り返し数であるmは0~15の整数であり、0~10が好ましく、0~3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が、高温高湿での耐久制電性と撥水性の観点から、特に好ましい。(AO)mは、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0019】
は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。
アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等が挙げられ、撥水性及び制電性の観点から、カリウム又はナトリウムが好ましい。
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が挙げられる。
は、Mと同様である。
【0020】
化合物(A)の具体例としては、特に限定されないが、モノブチルホスフェートモノカリウム塩、モノブチルホスフェートジカリウム塩、モノブチルホスフェートモノナトリウム塩、モノブチルホスフェートジナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加モノブチルホスフェートモノカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加モノブチルホスフェートモノカリウム塩等が挙げられる。中でも、モノブチルホスフェートモノカリウム塩、モノブチルホスフェートジカリウム塩、モノブチルホスフェートモノナトリウム塩、モノブチルホスフェートジナトリウム塩が好ましい。
【0021】
化合物(A)は、31P-NMRの方法で検出することができる。
測定試料不揮発分約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水(DO)あるいは重クロロホルム(CDCl)を加え溶解させて、31P-NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,162MHzおよび日本電子株式会社製JNM-ECZ400R,162MHz)で測定した。
化合物(A)に由来する燐元素のピークは、+4~-1ppmにて検出される。化合物(A)、後述する化合物(B)及び後述する無機燐酸に由来する燐元素のピークは、いずれも+4~-1ppmにて検出されるが、低磁場側から、無機燐酸、化合物(A)、化合物(B)の順に帰属が決定される。
なお、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0022】
〔化合物(B)〕
化合物(B)は、本願発明の撥水繊維用処理剤に必須に含まれる成分であり、化合物(A)と併用することにより、撥水性及び制電性の効果を高める性能を有する。化合物(B)は、撥水性を有する。
化合物(B)は、上記一般式(2)で示される。
式中、R及びRは炭素数3~5の炭化水素基である。R及びRは直鎖でも分岐鎖でもよい。炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。R及びRは炭素数4の炭化水素基が最も好ましい。
【0023】
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン単位の繰り返し数であるmは0~15の整数であり、0~10が好ましく、0~3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が、撥水性及び制電性の観点から、特に好ましい。(AO)mは、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基が好ましい。分子内に(AO)が2つある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。
【0024】
は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。
アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等が挙げられ、撥水性及び制電性の観点から、カリウム又はナトリウムが好ましい。
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が挙げられる。
【0025】
化合物(B)の具体例としては、特に限定されないが、ジブチルホスフェートカリウム塩、ジブチルホスフェートナトリウム塩、ジブチルホスフェートトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0026】
化合物(B)は、化合物(A)と同様に、31P-NMRの方法で検出することができる。
化合物(B)に由来する燐元素のピークは、+4~-1ppmにて検出される。化合物(A)、化合物(B)及び無機燐酸に由来する燐元素のピークは、いずれも+4~-1ppmにて検出されるが、低磁場側から、無機燐酸、化合物(A)、化合物(B)の順に帰属が決定される。
【0027】
[化合物(C)]
化合物(C)は、本願発明の撥水繊維用処理剤に任意に含まれる成分である。
本願発明の撥水繊維用処理剤は化合物(C)を含むと、制電性が向上するため好ましい。
【0028】
化合物(C)は、上記一般式(3)で示される。
式中、R及びRは炭素数3~5の炭化水素基である。R及びRは直鎖状であっても分岐を有していてもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数であり、0~10が好ましく、0~3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が、撥水性の観点から、特に好ましい。
及びMは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、有機アミン塩又は4級アンモニウム塩である。Qは、M又はRO(AO)である。Yは1又は2である。分子内にM、(AO)が2つある場合には、お互いに同じでも異なっていてもよい。
【0029】
化合物(C)の具体例としては、特に限定されないが、ピロブチルホスフェートカリウム塩、ピロブチルホスフェートナトリウム塩、ピロブチルホスフェートトリエタノールアミン塩等が挙げられる。中でも、ピロブチルホスフェートナトリウム塩が好ましい。
【0030】
化合物(C)は、次のようにして検出することができる。
31P-NMR法〕
測定試料不揮発分約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水(DO)あるいは重クロロホルム(CDCl)を加え溶解させて、31P-NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,162MHzおよび日本電子株式会社製JNM-ECZ400R,162MHz)で測定した。
化合物(C)に由来する燐元素のピークは、-5~-15ppmにて検出される。
【0031】
〔化合物(D)〕
化合物(D)は、本願発明の撥水繊維用処理剤に任意に含まれる成分である。
化合物(D)は、トリペンチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリプロピルホスフェート及びトリ(ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)ホスフェートから選ばれる少なくとも1種である。
トリ(ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)ホスフェートは、炭素数3~5のアルキル基を有して且つ、オキシアルキレン基の炭素数は2~4であり、オキシアルキレン単位の繰り返し数は0~15の整数である。
本願発明の撥水繊維用処理剤は、トリホスフェート化合物(D)を含むと、撥水性が向上するため好ましい。
トリホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリ(モノエチレングリコールモノブチルエーテル)ホスフェート、等が挙げられる。中でも、トリブチルホスフェートが好ましい。
【0032】
〔無機燐酸塩(IN)〕
無機燐酸塩(IN)は、本願発明の撥水繊維用処理剤に任意に含まれる成分である。無機燐酸塩(IN)は、リン酸、リン酸二水素金属塩、リン酸水素二金属塩及びリン酸三金属塩から選ばれる少なくとも一つである。具体的に、リン酸二水素一金属塩としてはリン酸二水素一カリウム塩、リン酸二水素一ナトリウム塩等が挙げられ、リン酸水素二金属塩としてはリン酸水素二カリウム塩、リン酸水素二ナトリウム塩等が挙げられ、リン酸三金属塩としてはリン酸三カリウム塩、リン酸三ナトリウム塩等が挙げられる。
本願発明の撥水繊維用処理剤は、無機燐酸塩(IN)を含むと、撥水性が向上するため好ましい。
【0033】
〔ノニオン界面活性剤(E)〕
本発明の撥水繊維用処理剤は、ノニオン界面活性剤(E)を含むと前記化合物(A)~(D)の乳化を補助し、制電性を向上できるため、好ましい。
ノニオン界面活性剤(E)としては、多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、分子中に水酸基が1つ以上有するエステル化合物(E1)、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル(E2)、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル(E3)、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(E4)及びPEGエステル(E5)等が挙げられる。
【0034】
エステル化合物(E1)は、多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、分子中に水酸基が1つ以上有する化合物である。後述するエステル化合物(F1-2)とは水酸基が1つ以上有する点で別の化合物である。
【0035】
多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、分子中に水酸基が1つ以上有するエステル化合物(E1)としては、特に限定されるものではないが、ソルビタンモノエステル(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート)、ソルビタンジエステル(ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジラウレート)、ソルビタントリエステル(ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリラウレート)、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート)、グリセリンジエステル(グリセリンジステアレート、グリセリンジオレエート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジラウレート)等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル(E2)は、ヒマシ油に対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル(E2)としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル(ポリオキシエチレン(1~25モル)ヒマシ油エーテル)が挙げられる。
【0037】
ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル(E3)は、硬化ヒマシ油に対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル(E3)としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル(ポリオキシエチレン(1~25モル)硬化ヒマシ油エーテル)が挙げられる。
【0038】
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(E4)とは、脂肪族一価アルコール及び/又は脂肪族多価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1~100モルが好ましく、2~70モルがより好ましく、3~50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(E4)としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(ポリオキシエチレン(1~20モル)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(1~20モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(1~20モル)パルミチルエーテル、ポリオキシエチレン(1~20モル)ラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレン(1~20モル)ステアリルエステル、ポリオキシエチレン(1~20モル)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(1~20モル)パルミチルエステル、ポリオキシエチレン(1~20モル)ラウリルエステル)が挙げられる。
【0040】
PEGエステル(E5)について、PEGとは、ポリエチレングリコールを意味し、PEGの水酸基と1価の脂肪酸とがエステル化した構造を有するポリエチレングリコールのエステル(以下、PEGエステル)を意味する。
1価の脂肪酸の炭素数については、特に限定されるものではないが、好ましくは4~24、より好ましくは10~22、さらに好ましくは12~20である。脂肪酸は、飽和と不飽和とを問わない。
PEGの重量平均分子量については、特に限定されるものではないが、200~600が好ましい。
【0041】
〔化合物(F)〕
化合物(F)は、前記ノニオン界面活性剤(E)及び前記化合物(A)~(D)と併用されることにより、撥水繊維に対して、付与前よりも撥水性を付与する効果がある。
化合物(F)は、(ポリ)オキシアルキレン基及びヒドロキシル基を含まないエステル化合物(F1)及び炭素数が6~22のアルコール(F2)及び炭素数7~70の炭化水素化合物(F3)から選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
((ポリ)オキシアルキレン基及びヒドロキシル基を含まないエステル化合物(F1))
エステル化合物(F1)は、(ポリ)オキシアルキレン基及びヒドロキシル基のいずれも含まない化合物である。
(ポリ)オキシアルキレン基及びヒドロキシル基を含まないエステル化合物(F1)としては、炭素数6~22の炭化水素基を有する1価アルコールと炭素数6~22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物(F1-1)、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物(F1-2)等が挙げられる。
エステル化合物(F1-2)は、多価アルコールの水酸基の全てが脂肪酸とエステル結合された構造を有し、いわゆる完全封鎖エステルである。
【0043】
炭素数6~22の炭化水素基を有する1価アルコールと炭素数6~22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物(F1-1)としては、ステアリルステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、オレイルステアレート、ラウリルステアレート、オレイルオレエート、オレイルステアレート等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物(F1-2)としては、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラカプリレート、ペンタエリスリトールテトララウレート、ヤシ油、ひまわり油、パーム油、菜種油、魚油、牛脂等が挙げられる。
【0045】
(炭素数が6~22のアルコール(F2))
炭素数が6~22のアルコール(F2)としては、へキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、へキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール等の直鎖アルカノール;2-エチルへキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-ブチルオクタノール、1-メチルヘプタデカノール、2-ヘキシルオクタノール、1-ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、へキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2-エチルへキセノール、イソトリデセノール、1-メチルヘプタデセノール、1-ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノールおよびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上を併用してもよい。
【0046】
(炭素数7~70の炭化水素化合物(F3))
炭素数7~70の炭化水素化合物としては、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素やデカリン等のナフテン系炭化水素、またベンゼンやナフタリン等の芳香族炭化水素、石油から分離精製されたスピンドル油、ケロシン油、流動パラフィンが挙げられる。これら炭化水素化合物は単体又は2種類以上の混合物として使用することが出来る。
【0047】
〔その他成分〕
本発明の撥水繊維用処理剤は、その他成分として、脂肪酸、脂肪酸金属塩、化合物(A)~化合物(D)以外のアルカンスルフォネート塩、ジアルキルスルフォサクシネート塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンサルフェート塩、アルキルエーテルサルフェート塩、などのアニオン界面活性剤等を含むことができる。また、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、アルキレンジオール、ポリオキシアルキレンエーテルを含むことができる。また、必要があれば適切な防腐剤、防錆剤、消泡剤を添加してもよい。
【0048】
〔撥水繊維用処理剤〕
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価は、0.5~680である。酸価が0.5未満では、繊維が黄変する。酸価が680を超えると、制電性が不足する。
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価の下限値は、撥水性及び制電性の観点から、2.0が好ましく、4.0がより好ましく、8.0がさらに好ましい。
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価の上限値は、撥水性及び制電性の観点から、300が好ましく、250がより好ましく、200がさらに好ましい。
【0049】
〔A/(A+B+C+D+IN)〕
〔A/(A+B+C+D+IN)〕は、上記一般式(1)で示される化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値、上記一般式(2)で示される化合物(B)に帰属されるP核NMR積分値、上記一般式(3)で示される化合物(C)に帰属されるP核NMR積分値、上記化合物(D)及び上記無機燐酸塩(IN)に帰属されるP核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)(以下、P核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)という。)に対する下記一般式(1)で示される化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値(A)の比率を示す。
〔A/(A+B+C+D+IN)〕は、20~100%であり、22~98%が好ましく、25~95%がより好ましく、30~92%がさらに好ましい。20%未満では、撥水性及び耐久制電性が不足する。
【0050】
〔B/(A+B+C+D+IN)〕は、P核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する上記化合物(B)に帰属されるP核NMR積分値(B)の比率を示す。〔B/(A+B+C+D+IN)〕は、1~65%が好ましく、3~50%がより好ましく、5~40%がさらに好ましい。
【0051】
〔C/(A+B+C+D+IN)〕は、P核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する上記化合物(C)に帰属されるP核NMR積分値(C)の比率を示す。〔C/(A+B+C+D+IN)〕の下限値は、本願効果を奏する観点から、0%が好ましく、4%がより好ましく、8%がさらに好ましい。〔C/(A+B+C+D+IN)〕の上限値は、本願効果を奏する観点から、40%が好ましく、30%がより好ましく、20%がさらに好ましい。
【0052】
〔D/(A+B+C+D+IN)〕は、P核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する上記化合物(D)に帰属されるP核NMR積分値(D)の比率を示す。〔D/(A+B+C+D+IN)〕は、本願効果を奏する観点から、0~10%が好ましく、1~5%がより好ましく、2~4%がさらに好ましい。
【0053】
〔IN/(A+B+C+D+IN)〕は、P核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する上記無機燐酸塩(IN)に帰属されるP核NMR積分値(D)の比率を示す。0~20%が好ましく、0.5~18%がより好ましく、1~16%がさらに好ましい。
【0054】
化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値と化合物(B)に帰属されるP核NMR積分値との比率(A/B)は、本願効果を奏する観点から、1~50が好ましく、2~40がより好ましく、4~20がさらに好ましい。
【0055】
〔吸湿率〕
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分の吸湿率は、高温下での耐久制電性の観点から、5~75%が好ましく、10~75%がより好ましく、15~70%がさらに好ましく、20~60%が特に好ましい。
吸湿率は、実施例に記載された条件、方法で実施した値をいう。
【0056】
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する、上記化合物(A)、上記化合物(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)及び上記無機燐酸塩(IN)の合計の重量割合の下限値は、低油剤付着量でも撥水性及び制電性に優れる観点から、50重量%、60重量%、70重量、80重量%の順で好ましい。
本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する、上記化合物(A)、上記化合物(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)及び上記無機燐酸塩(IN)の合計の重量割合の上限値は、低油剤付着量でも撥水性及び制電性に優れる観点から、100重量%、98重量%、95重量%、90重量%がこの順で好ましい。
なお、ここでいう低油剤付着量は、繊維に対する処理剤の不揮発分の重量が0.03~0.10%が好ましく、0.03~0.09重量%がより好ましく、0.06~0.08重量%がさらに好ましい。一般的に、短繊維処理剤の短繊維に対する油剤付着量は、0.11~0.3%程度である(以下、一般的な油剤付着量という。)。
【0057】
(化合物(E)又は化合物(F)を含有する場合)
本発明の撥水繊維用処理剤が、上記化合物(E)又は化合物(F)を含有する場合、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、上記化合物(A)、上記化合物(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)及び上記無機燐酸塩(IN)の合計の重量割合の下限値は、8重量%、10重量%、15重量%、20重量の順で好ましい。本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する、上記化合物(A)、上記化合物(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)及び上記無機燐酸塩(IN)の合計の重量割合の上限値は、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、100重量%、98重量%、95重量%、90重量%がこの順で好ましい。
【0058】
本発明の撥水繊維用処理剤が、上記化合物(E)を含有する場合、本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する化合物(E)の重量割合の下限値は、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、5重量%、10重量%、20重量%の順で好ましい。
本発明の撥水繊維用処理剤が、上記化合物(E)を含有する場合、本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する化合物(E)の重量割合の上限値は、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、50重量%、40重量%、30重量%の順で好ましい。
【0059】
本発明の撥水繊維用処理剤が、上記化合物(F)を含有する場合、本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する化合物(F)の重量割合の下限値は、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、10重量%、20重量%、30重量%の順で好ましい。
本発明の撥水繊維用処理剤が、上記化合物(F)を含有する場合、本発明の撥水繊維用処理剤の不揮発分に対する化合物(F)の重量割合の上限値は、一般的な油剤付着量で撥水性及び制電性に優れる観点から、85重量%、75重量%、65重量%の順で好ましい。
【0060】
本発明の撥水繊維用処理剤は、ポリオルガノシロキサンは、含有していてもよいが、撥水性及び制電性の観点から、その含有量は、20重量%未満、10重量%以下、5重量%以下の順で好ましい。
【0061】
〔撥水性繊維〕
本発明の撥水性繊維は、不織布製造用合成繊維(繊維本体)とこれに付着した上記撥水繊維用処理剤とから構成される撥水性繊維であり、一般的には所定の長さに切断した短繊維である。撥水繊維用処理剤の撥水繊維用とは、不織布製造用合成繊維(繊維本体)に処理剤を付与することで結果的に、繊維に撥水機能を付与することを意味する。
撥水繊維用処理剤の不揮発分の付着率は、撥水性及び制電性が優れる観点から、前記撥水性繊維に対して0.03~2重量%が好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。
【0062】
不織布製造用合成繊維(繊維本体)としては、たとえば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、塩ビ繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等であり、複合繊維の組み合わせとしては、ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂の場合、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。さらにポリアミド系樹脂/ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂等からなる繊維も例示することができる。これら不織布製造用合成繊維(繊維本体)のなかでも、柔らかな肌触りが好まれる理由から、不織布製造用ポリオレフィン系繊維(ポリオレフィン繊維やポリオレフィン繊維を含む複合繊維)、不織布製造用ポリエステル系繊維(ポリエステル繊維やポリエステル繊維を含む複合繊維)等の疎水性合成繊維に本発明の撥水繊維用処理剤は好適であり、さらには不織布製造用ポリオレフィン系繊維に本発明の撥水繊維用処理剤は好適である。
【0063】
繊維の断面構造は鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型、多層型、放射型あるいは海島型が例示できるが、繊維製造工程での生産性や、不織布加工の容易さから、偏心を含む鞘芯型または並列型が好ましい。また、断面形状は円形または異形形状とすることができる。異形形状の場合、例えば扁平型、三角形~八角形等の多角型、T字型、中空型、多葉型等の任意の形状とすることができる。
【0064】
本発明の撥水繊維用処理剤は、そのまま希釈等せずに繊維本体に付着させてもよく、水等で不揮発分全体の重量割合が0.5~5重量%となる濃度に希釈してエマルジョンとして繊維本体に付着させてもよい。撥水繊維用処理剤を繊維本体へ付着させる工程は、繊維本体の紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれであってもよい。本発明の撥水繊維用処理剤を繊維本体に付着させる手段については、特に限定はなく、ローラー給油、ノズルスプレー給油、ディップ給油等の手段を使用してもよい。繊維の製造工程やその特性に合わせ、より均一に効率よく目的の付着量が得られる方法を採用すればよい。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0065】
〔不織布の製造方法〕
不織布の製造方法として、特に限定なく、公知の方法を採用できる。原料繊維としては短繊維や長繊維を用いることができる。原料繊維が短繊維のウェブ形成方式としては、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また原料繊維が長繊維のウェブ形成方式としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
本発明の不織布の製造方法は、本発明の撥水性繊維(例えば短繊維)をカード機等に通し繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱処理する工程を含むものが好ましい。すなわち、本発明の撥水繊維用処理剤は、不織布の製造において繊維ウェブを熱処理する工程を有する場合に、特に好適に使用されるものである。
繊維ウェブを熱処理して接合させる方法としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等の熱融着法が挙げられる。繊維ウェブを熱処理して接合させる一例としては、芯に高融点の樹脂を使用し鞘に低融点の樹脂を使用する鞘芯型の複合繊維の場合、低融点の樹脂の融点付近で熱処理することで、繊維交点の熱接着を容易に行なうことができる。
不織布の製造方法としては、撥水繊維用処理剤が付与された短繊維をカード機等に通しウェブとしたものを上述のように熱処理して接合させ一体化する方法、エアレイド法でパルプ等を積層する際に本発明の撥水性繊維(短繊維)と混綿して、上述のように熱処理して接合させる方法等も挙げられる。その他、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により得られた繊維成形体に対して、本発明の撥水繊維用処理剤を付着させたものを加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理して、または加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理したものに本発明の撥水繊維用処理剤を付着させて、不織布を製造する方法も挙げられる。
【0066】
スパンボンド法の一例としては、複合繊維樹脂を紡糸し、次に、紡出された複合長繊維フィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とする。その後、紡糸されたフィラメントを捕集ベルト上に捕集し、接合処理を行ってスパンボンド不織布を得る。接合手段としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等がある。
得られたスパンボンド不織布に本発明の撥水繊維用処理剤を付与する方法としては、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロールコーティング法、スプレーコーティング法等で行うことができるが、不織布への塗布量を片面ずつ調節できるものであれば特に限定されるものではない。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【実施例0067】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示される「パーセント(%)」及び「部」は、特に限定しない限り、「重量%」及び「重量部」を示す。なお、実施例及び比較例において、撥水繊維用処理剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0068】
(実施例1~50及び比較例1~24)
表1~10に示す各成分及び水を混合して、撥水繊維用処理剤全体に占める不揮発分の重量割合が25重量%の実施例1~50、比較例1~24の撥水繊維用処理剤をそれぞれ調製した。得られた撥水繊維用処理剤をそれぞれ約60℃の温水で不揮発分の重量割合が0.9重量%の濃度になるよう希釈して希釈液を得た。
次に、繊維本体300gに対しそれぞれの撥水繊維用処理剤の希釈液150gをディップ給油法で付着させ、撥水性繊維に付着する撥水繊維用処理剤の不揮発分の付着量を0.45重量%にした。繊維本体は、撥水繊維用処理剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリプロピレン(芯)-ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が38mmのものであった。それぞれの撥水繊維用処理剤の希釈液を付着させた繊維を、80℃の温風乾燥機の中に2時間入れた後、室温で8時間以上放置して乾燥させて、撥水性繊維を得た。
【0069】
得られた撥水性繊維をそれぞれ開繊工程およびカード試験機を用いたカード工程に通し、目付25g/mのウェブを作製した。その際、それぞれの撥水性繊維について、下記に示す評価方法でカード工程における物性(制電性)を評価した。得られたウェブを用いて変色防止性を評価した。得られたウェブをエアースルー型熱風循環乾燥機中140℃で熱処理してウェブを固定し、不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で物性(撥水性)をそれぞれ評価した。その結果を表1~8に示す。
【0070】
[吸湿率]
撥水繊維用処理剤をシャーレ上で4日間風乾した。蓋付秤量瓶を105℃で30分間、蓋を開けた状態で乾燥させた。秤量瓶の蓋を閉め30分間、デシケーター内で放冷後、重量を精秤した(X)。風乾した試料を約1gずつ秤量瓶に入れ、60℃で8時間、真空度を760mmHgで真空乾燥後、サンプル入りの秤量瓶の重量を精秤した(Y)。精秤後、秤量瓶の蓋を開け、室温20℃、湿度65%で3日間吸湿させた。吸湿後、サンプル入り秤量瓶の重量を精秤した(Z)。吸湿率は下記式に従い算出した。
吸湿率=((Z)-(Y))/((Y)-(X))×100
[撥水性]
不織布(25g/m)を15cm角に切断し、JIS L1092の6.1 耐水度A法(低水圧法)による(a)静水圧法に準拠して耐水圧を測定し以下の基準で評価した。なお、◎が最も良い評価である。〇~◎が実用に供し得る。
◎ … 30mm以上
〇 … 20mm以上~30mm未満
× … 20mm未満
【0071】
[カード工程評価]
(制電性)
カード試験機を用いて20℃×45%RH(RHは、相対湿度を意味する。)の条件で試料撥水性繊維40gをシリンダー回転数970rpm(設定可能な最高回転数)でミニチュアカード機に通す。発生した静電気の電圧を測定し、以下の基準で評価する。なお、◎が最も良い評価であり、〇~◎が実用に供し得る。
◎ … 0.1kV未満、
〇 … 0.1kV~1.0kV、
× … 1.0kVより大
【0072】
[経時変化綿カード工程評価]
(経時綿制電性)
本明細書でいう「耐久制電性」の評価方法である。
50℃×65%RH×2週間の条件下で経時変化させた試料撥水性繊維40gをカード試験機を用いて20℃×45%RHの条件でシリンダー回転数970rpm(設定可能な最高回転数)でミニチュアカード機に通す。
発生した静電気の電圧を測定し、以下の基準で評価する。なお、◎が最も良い評価であり、〇~◎が実用に供し得る。
◎ … 0.1kV未満、
〇 … 0.1kV~1.0kV、
× … 1.0kVより大
【0073】
[不織布撥水性評価]
得られた撥水性繊維をそれぞれ開繊工程およびカード試験機を用いたカード工程に通し、目付25g/mのウェブを作製した。その際、それぞれの撥水性繊維について、下記に示す評価方法でカード工程における物性(制電性)を評価した。得られたウェブを用いて変色防止性を評価した。得られたウェブをエアースルー型熱風循環乾燥機中140℃で熱処理してウェブを固定し、不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で物性(撥水性)をそれぞれ評価した。その結果を表1~8に示す。
【0074】
(P-1~2、8~10、13~16、24の製造方法)
500mL四つ口フラスコにn-ブタノールあるいはモノエチレングリコールモノブチルエーテルを250g及び水を10g加えて撹拌しながら、10酸化4リンを総量200gになるように徐々に加えて反応させた。得られた未中和物の酸価を測定した。
その後、未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液に未中和物をを滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。P核NMR積分値を測定し、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、及び無機燐酸塩(IN)の帰属を行った。
なお、後述する(A-1)~(C-4)、(a-1)~(c-2)のM、Mに係る「H又はNa」は、水酸化ナトリウム水溶液の添加により、未中和物と中和物との混合物であることを意味する。
【0075】
(酸価の測定方法)
なお、本発明でいう酸価(x KOHmg/g)は次の方法で測定した。
各サンプルを絶乾させ、0.01%フェノールフタレインを溶かしたキシレン/エタノール=1/1溶液50mLに各サンプル1gを溶解させた。当該溶液に0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を滴下し、微紅色に呈色するまでの液量(y mL)を測定し、下記計算式より算出した。
x=y×5.61
【0076】
(P-3~5、11~12、25の製造方法)
500mL四つ口フラスコにn-ブタノールあるいはモノエチレングリコールモノブチルエーテル250gを加えて撹拌しながら、10酸化4リンを総量200gになるように徐々に加えて反応させ、未中和物を得た。未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液に未中和物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
【0077】
(P-6~7、17~23、26の製造方法)
モノブチルホスフェート、モノエチレングリコールモノブチルエーテルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ(モノエチレングリコールモノブチルエーテル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(モノエチレングリコールモノブチルエーテル)ホスフェート及び無機燐酸(これは、各成分を試薬購入後配合して、配合物の酸価を測定した。測定酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液に配合物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
【0078】
(p-1及びp-2の製造方法)
500mL四つ口フラスコにn-ヘキサノールを250g及び水を10g加えて撹拌しながら、10酸化4リンを総量150gになるように徐々に加えて反応させた。得られた未中和物の酸価を測定した。未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化カリウム水溶液に未中和物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
(p-3及びp-4の製造方法)
500mL四つ口フラスコにn-ヘキサノールを250gを加えて撹拌しながら、10酸化4リンを総量150gになるように徐々に加えて反応させた。得られた未中和物の酸価を測定した。未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化カリウム水溶液に未中和物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
(p-5の製造方法)
500mL四つ口フラスコにステアリルアルコールを250g及び水を5g加えて、液温を60℃で撹拌しながら、10酸化4リンを総量50gになるように徐々に加えて反応させた。得られた未中和物の酸価を測定した。未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化カリウム水溶液に未中和物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
(p-6及びp-7の製造方法)
500mL四つ口フラスコにステアリルアルコールを250gを加えて60℃で撹拌しながら、10酸化4リンを総量50gになるように徐々に加えて反応させた。得られた未中和物の酸価を測定した。未中和物の酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化カリウム水溶液に未中和物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
(p-8~p-12の製造方法)
モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ポリ-ブチルホスフェート及び無機燐酸を試薬購入後配合して、配合物の酸価を測定した。測定酸価及び目標酸価から算出した必要な量の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液に配合物を滴下し、得られた反応物の酸価を測定した。
なお、P-1~P-26、p-1~12は、表9~表10に示す。
【0079】
なお、表1~10中に示す成分は次の通りである。なお、表3~8に示すP-1~P-7及びp1~p-6は、表9及び10に示すモル比率で含有する。
A-1 一般式(1)化合物、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はNa、M:H又はNa
A-2 一般式(1)化合物、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK
A-3 一般式(1)化合物、R=n-ブチル基、m=1、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、M:H又はNa、M:H又はNa
A-4 一般式(1)化合物、R=n-ブチル基、m=1、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、M:H又はK、M:H又はK
a-1 一般式(1)中、R=n-ヘキシル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK
a-2 一般式(1)中、R=ステアリル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK
B-1 一般式(2)化合物、R=n-ブチル基、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はNa
B-2 一般式(2)化合物、R=n-ブチル基、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はK
B-3 一般式(2)化合物、R=n-ブチル基、R=n-ブチル基、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、m=1、M:H又はNa
B-4 一般式(2)化合物、R=n-ブチル基、R=n-ブチル基、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、m=1、M:H又はK
b-1 一般式(2)中、R=n-ヘキシル基、R=n-ヘキシル基、m=0、M:H又はK
b-2 一般式(2)中、R=ステアリル基、R=ステアリル基、m=0、M:H又はK
C-1 一般式(3)化合物、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はNa、M:H又はNa、Y=1、Q=M
C-2 一般式(3)化合物、R=n-ブチル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK、Y=1、Q=M
C-3 一般式(3)化合物、R=n-ブチル基、m=1、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、M:H又はNa、M:H又はNa、Y=1、Q=M
C-4 一般式(3)化合物、R=n-ブチル基、m=1、AO=炭素数2のオキシアルキレン基、M:H又はK、M:H又はK、Y=1、Q=M
c-1 一般式(3)中、R=n-ヘキシル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK、Y=1、Q=M
c-2 一般式(3)中、R=ステアリル基、m=0、M:H又はK、M:H又はK、Y=1、Q=M
D-1 トリブチルホスフェート
D-2 トリ(モノエチレングリコールモノブチルエーテル)ホスフェート
d-1 トリヘキシルホスフェート
d-2 トリステアリルホスフェート
E-1 ソルビタンモノステアレート
E-2 グリセリンモノステアレート
E-3 ポリオキシエチレン(10モル)硬化ヒマシ油エーテル
E-4 ポリオキシエチレン(7モル)ステアリルエーテル
E-5 ポリオキシエチレン(20モル)オレイルエーテル
F1-1-1 ステアリルステアレート
F1-1-2 2-エチルヘキシルステアレート
F1-1-3 セチルパルミテート
F1-2-1 ペンタエリスリトールテトラカプリレート
F2-1 ステアリルアルコール
F2-2 セチルアルコール
F3-1 パラフィンワックス
F3-2 オクタン
G-1 オレイン酸カリウム塩
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
【表10】
【0090】
表1~5から分かる通り、実施例1~50の撥水繊維用処理剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A)、下記一般式(2)で示される化合物(B)、下記一般式(3)で示される化合物(C)、下記化合物(D)及び無機燐酸塩(IN)から選ばれる少なくとも1種を含む撥水繊維用処理剤であって、前記化合物(A)及び前記化合物(B)を必須に含み、前記撥水繊維用処理剤の不揮発分の酸価が0.5~680(KOHmg/g)であり、前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記化合物(C)、前記化合物(D)及び前記無機燐酸塩(IN)のそれぞれに帰属されるP核NMR積分値の合計(A+B+C+D+IN)に対する前記化合物(A)に帰属されるP核NMR積分値(A)の比率〔A/(A+B+C+D+IN)〕が20~100%であるため、本願課題を解決できている。
また、P-1~P-16の各処理剤について、撥水繊維用処理剤の不揮発分の付着量を0.03重量%にした以外は実施例1~10と同様にして評価した結果、いずれも、撥水性◎、制電性◎、耐久制電性○という結果が得られた。
一方、表6~8から分かる通り、化合物(A)及び化合物(B)のうち少なくともいずれか一方を含まない場合(比較例1~7、12~24)、〔A/(A+B+C+D+IN)〕が20~100%でない場合(比較例8、10、11、25)、酸価が0.5~680(KOHmg/g)の範囲にない場合(比較例9~11)、本願の課題である撥水性又は耐久制電性のいずれかを解決できていない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の撥水繊維用処理剤を用いて処理した撥水繊維及び不織布は、紙おむつやナプキンを代表とする生理用品等の吸収性物品のバックシートに用いられる。その他、食品用途、医療用途、及び工業用途での撥水シートを必要とする場面で使用することもできる。