(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044612
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】ハイブリッド型貯氷構造物
(51)【国際特許分類】
F25D 3/06 20060101AFI20230323BHJP
F25D 16/00 20060101ALI20230323BHJP
F25C 1/02 20060101ALI20230323BHJP
F25C 5/18 20180101ALI20230323BHJP
【FI】
F25D3/06 Z
F25D16/00
F25C1/02
F25C5/18 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048707
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021151630
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390019529
【氏名又は名称】株式会社土谷特殊農機具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】土谷 紀明
【テーマコード(参考)】
3L044
3L045
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA01
3L044CA11
3L044DC01
3L044DD07
3L044FA03
3L044FA10
3L044HA01
3L044JA01
3L044KA04
3L045AA04
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA01
3L045DA05
3L045FA03
3L045LA13
3L045MA02
3L045NA07
3L045NA23
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】自然冷気で得られた氷を次の自然製氷時期まで維持して長期に亘って冷熱源として利用可能な貯氷構造物を提供する。
【解決手段】ハイブリッド型貯氷構造物であって、内部空間を囲む略直方体形状の外郭部材(11)と、前記内部空間に設けられ複数の水槽(14)が設置された貯氷室(13)と、前記貯氷室(13)を冷却するために前記内部空間に設置された冷凍機(18)と、を少なくとも有し、前記貯氷室(13)に自然冷気を導入することによって前記水槽(14)内の水を凍結させて氷とし、凍結した氷が融けたときに前記冷凍機(18)を稼動させて水を再凍結させることを特徴とするハイブリッド型貯氷構造物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド型貯氷構造物であって、
内部空間を囲む略直方体形状の外郭部材(11)と、
前記内部空間に設けられ複数の水槽(14)が設置された貯氷室(13)と、
前記貯氷室(13)を冷却するために前記内部空間に設置された冷凍機(18)と、を少なくとも有し、
前記貯氷室(13)に自然冷気を導入することによって前記水槽(14)内の水を凍結させて氷とし、凍結した氷が融けたときに前記冷凍機(18)を稼動させて水を再凍結させることを特徴とするハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項2】
前記冷凍機(18)が、前記内部空間に設けられ前記貯氷室(13)と空気連通する冷凍機室(17)に設置されており、前記冷凍機室(17)は、前記内部空間の床から天井までの高さのうち上半部に位置することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項3】
前記冷凍機(18)からの冷気が、前記冷凍機室(17)の床を通過して前記貯氷室(13)に送り込まれることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項4】
保冷対象物を貯蔵するために前記貯氷室(13)の隣に隔壁(27)を介して設けられた貯蔵室(23)と、
前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間で互いに空気を移動させるための空気連通手段と、をさらに有することを特徴とするハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項5】
前記空気連通手段が、前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間の隔壁(27)に設けられた開閉可能な窓(21)であることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項6】
前記空気連通手段が、
ファン(31)と、
前記貯氷室(13)に開口する一端と前記貯蔵室(23)に開口する他端とを有しかつ前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間の隔壁(27)を貫通してそれぞれ設けられた送気パイプ(30)及び還気パイプ(40)と、を有し、
前記ファン(31)によって前記貯氷室(13)内の冷気を前記送気パイプ(30)に取り込んで前記貯蔵室(23)に送ると共に、前記貯蔵室(23)内の空気を、前記還気パイプ(40)を通して前記貯氷室(13)に戻すことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項7】
前記送気パイプ(30)を通過する空気を加熱するために前記送気パイプ(30)内に配置された電熱ヒーター(32)を有し、
前記電熱ヒーター(32)を通電及び停止することによって前記貯蔵室(23)の温度を制御することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項8】
前記貯氷室(13)とは反対側にて前記貯蔵室(23)の隣に隔壁(28)を介して設けられた前室(25)をさらに有し、前記前室(25)は、外部との間で人が出入りするための第1の扉(24)と、前記貯蔵室(23)に人が出入りするために前記隔壁(28)に設けられた第2の扉(26)と、を有することを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項9】
前記ハイブリッド型貯氷構造物が、運搬車両を用いて移動させることができる貯氷コンテナであることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【請求項10】
前記ハイブリッド型貯氷構造物が、設置場所に固定された貯氷施設であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のハイブリッド型貯氷構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷を貯蔵して冷熱源として利用する貯氷構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、断熱されたコンテナ内に設置された水槽内の水を、冬期に自然冷気を導入して氷結させて氷を貯蔵し、夏期に当該コンテナを車両で運搬して多様な場所で氷を冷熱源として利用する移動式貯氷コンテナが開示されている。これと同様の構造を有し、設置場所に固定される固定式貯氷施設も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような貯氷コンテナは、冬期の自然冷気を利用して製氷するので、1年に1回しか製氷することができない。自然製氷により得られた氷が次の自然製氷時期まで維持できることが理想である。しかしながら、夏期の猛暑のために次の自然製氷時期まで維持できないことが発生する。このことは、移動式の貯氷コンテナに限らず、固定式の貯氷施設においても同様である。余裕を見て当初の氷の量を確保しようとすると、貯氷コンテナや貯氷施設である貯氷構造物が大規模となり、移動コストや製造コストが大きくなる。
【0005】
以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、自然冷気で得られた氷を次の自然製氷時期まで維持して長期に亘って冷熱源として利用可能な貯氷構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
- 本発明の態様は、ハイブリッド型貯氷構造物であって、
内部空間を囲む略直方体形状の外郭部材(11)と、
前記内部空間に設けられ複数の水槽(14)が設置された貯氷室(13)と、
前記貯氷室(13)を冷却するために前記内部空間に設置された冷凍機(18)と、を少なくとも有し、
前記貯氷室(13)に自然冷気を導入することによって前記水槽(14)内の水を凍結させて氷とし、凍結した氷が融けたときに前記冷凍機(18)を稼動させて水を再凍結させることを特徴とする。
- 上記態様において、前記冷凍機(18)が、前記内部空間に設けられ前記貯氷室(13)と空気連通する冷凍機室(17)に設置されており、前記冷凍機室(17)は、前記内部空間の床から天井までの高さのうち上半部に位置することが好適である。
- 上記態様において、前記冷凍機(18)からの冷気が、前記冷凍機室(17)の床を通過して前記貯氷室(13)に送り込まれることが好適である。
- 上記態様において、保冷対象物を貯蔵するために前記貯氷室(13)の隣に隔壁(27)を介して設けられた貯蔵室(23)と、
前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間で互いに空気を移動させるための空気連通手段と、をさらに有することが好適である。
- 上記態様において、前記空気連通手段が、前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間の隔壁(27)に設けられた開閉可能な窓(21)であることが好適である。
- 上記態様において、前記空気連通手段が、
ファン(31)と、
前記貯氷室(13)に開口する一端と前記貯蔵室(23)に開口する他端とを有しかつ前記貯氷室(13)と前記貯蔵室(23)との間の隔壁(27)を貫通してそれぞれ設けられた送気パイプ(30)及び還気パイプ(40)と、を有し、
前記ファン(31)によって前記貯氷室(13)内の冷気を前記送気パイプ(30)に取り込んで前記貯蔵室(23)に送ると共に、前記貯蔵室(23)内の空気を、前記還気パイプ(40)を通して前記貯氷室(13)に戻すことが好適である。
- 上記態様において、前記送気パイプ(30)を通過する空気を加熱するために前記送気パイプ(30)内に配置された電熱ヒーター(32)を有し、
前記電熱ヒーター(32)を通電及び停止することによって前記貯蔵室(23)の温度を制御することが好適である。
- 上記態様において、前記貯氷室(13)とは反対側にて前記貯蔵室(23)の隣に隔壁(28)を介して設けられた前室(25)をさらに有し、前記前室(25)は、外部との間で人が出入りするための第1の扉(24)と、前記貯蔵室(23)に人が出入りするために前記隔壁(28)に設けられた第2の扉(26)と、を有することが好適である。
- 上記態様において、前記ハイブリッド型貯氷構造物が、運搬車両を用いて移動させることができる貯氷コンテナであることが好適である。
- 上記態様において、前記ハイブリッド型貯氷構造物が、設置場所に固定された貯氷施設であることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自然冷熱による製氷ができない時期に冷凍機を補助的に併用することによって、貯氷構造物内に貯蔵された氷を次の自然製氷時期まで維持することができる。よって、自然冷熱による製氷ができない時期の全体に亘る長期間、貯氷コンテナを冷熱源として利用することができる。同時に、当初に大量に製氷する必要がないため、コンパクトで低コストの貯氷コンテナ又は貯氷施設を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のハイブリッド型貯氷構造物の一実施形態の内部を概略的に示す側断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したハイブリッド型貯氷構造物の内部を概略的に示す平断面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1に示したハイブリッド型貯氷構造物の概略的なI-I断面図、(b)は概略的なII-II断面図、(c)は概略的な前面図、(d)は概略的な後面図である。
【
図4】
図4は、本発明のハイブリッド型貯氷構造物の別の実施形態の内部を概略的に示す部分的な側断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物の内部を概略的に示す部分的な平断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物に設けられた送気パイプ及び還気パイプを概略的に示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物の概略的なIII-III断面図、(b)は概略的なIV-IV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を示した図面を参考しつつ、本発明によるハイブリッド型貯氷構造物について詳細に説明する。ここで「ハイブリッド型」とは、自然冷気を利用した製氷と、電力を利用した製氷とを組み合わせていることを意味する。「貯氷構造物」には、運搬車両を用いて移動させることができる貯氷コンテナ、及び、設置場所に半永久的に固定された貯氷施設が含まれる。貯氷施設は、通常、貯氷コンテナに比べて大規模なものをいう。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態であるハイブリッド型貯氷構造物の内部を概略的に示す側断面図である。
図2は、
図1に示したハイブリッド型貯氷構造物の内部を概略的に示す平断面図である(但し、
図1では閉まっている扉21、22、24を
図2では開いた状態で示す)。
図3(a)は、
図1に示したハイブリッド型貯氷構造物の概略的なI-I断面図、(b)は概略的なII-II断面図、(c)は概略的な前面図、(d)は概略的な後面図である。ここでは、
図1の左側を構造物の前面、右側を構造物の後面として説明する。各図における黒矢印の曲線は、空気の流れを模式的に示している。
【0011】
ハイブリッド型貯氷構造物(以下「貯氷構造物」と略称する)10は、1又は複数の区画を設けられた内部空間と、内部空間を囲む外郭部材11とを有する。貯氷構造物10の少なくとも側面及び天井を形成する外郭部材11は、全体形状が略直方体である。略直方体の最も長い辺の方向が、貯氷構造物10の前後方向であり、それに垂直な方向が左右方向である。図示の例では、外郭部材11における天井と左右側面との境界領域に丸みが形成されているため、前後方向に垂直な断面は、逆U字状の外郭を有する。貯氷構造物10は前後方向に長く延在しており、前後方向の長さは天井の高さに対して2~3倍、又はそれ以上であることが好ましい。貯氷構造物10は、適切な床部材も有する。外郭部材11の内面には断熱部材12が設けられている。明示しないが、床部材も断熱構造を有することが好ましい。
【0012】
貯氷室13は、貯氷構造物10の内部空間の大部分を占めている。貯氷室13には、多数の水槽14が設置されている。図示の例では、上下方向及び前後方向にそれぞれ複数の水槽14を配置できる棚が設けられている。製氷前に各水槽14に水が充填される。貯氷構造物10の前面側には、自然製氷時期(自然冷気による製氷が可能な時期、典型的には冬期)に自然冷気である外気を取り入れるための冷気取り入れダンパー15と、貯氷室13を通過した外気が出て行く排気窓16とが設けられている。
【0013】
さらに内部空間には、電気式の冷凍機18が設置されている。冷凍機18は、好ましくは貯氷室13の一部を区画して設けられた冷凍機室17内に設置されている。冷凍機18は、自然製氷不可時期(自然冷気による製氷ができない時期、典型的には春期~秋期)に、必要に応じて貯氷室13を冷却するために稼動される。冷凍機18の電源は、外部から取得するか、又は、内部空間に設置された蓄電池又は発電機から取得してもよい。あるいは、貯氷構造物10に太陽光発電機を設置して電源として利用してもよい。
【0014】
冷凍機室17の前面側の壁には、冷凍機18の排熱用の換気扇20が設置されている。換気扇20は、冷凍機18と同期して稼動される。図示の例では、換気扇20は、排気窓16の一部に設置されている。排気窓16は自然製氷時期に使用され、換気扇20は自然製氷不可時期に使用されるので、換気扇20と排気窓16は、基本的には同時に使用されることはない。
【0015】
図示の例では、冷凍機室17は、内部空間における前面側の壁と天井に隣接して設けられ、内部空間の床から天井までの高さのうち上半部に位置する。冷凍機室17の前後方向の長さは、貯氷室13の長さの半分以下であることが好ましい。冷凍機室17の床19の下方は貯氷室13の一部であり、水槽14を配置した棚が設置されている。
【0016】
冷凍機室17と貯氷室13とは空気連通している。好ましくは、冷凍機室17の床19が、貯氷室13と空気連通可能な構造を有する。例えば、床19が、格子状又は網目状の部材から形成されている。冷凍機18から送出される冷気が床19を通過して貯氷室13内に送り込まれるように、冷凍機18が設置されている。
【0017】
冷凍機18から貯氷室13に送出された冷気は、貯氷室13内を通過して、再び床19を通って冷凍機18に戻る。これによって貯氷室13が冷却される。図示の冷凍機室17及び冷凍機18の配置は、冷凍機18からの冷気を効率的に貯氷室13に送ることができ、かつ、内部空間において冷凍機18をコンパクトに配置できるので好ましい。
【0018】
貯氷構造物10の内部空間は、貯氷室13と冷凍機室17以外の区画を有することができる。図示の例では、貯氷室13の後面側の隣に隔壁27を介して貯蔵室23が設けられている。
【0019】
貯蔵室23は、青果物や畜産物などの保冷対象物を貯蔵するための空間である。貯氷室13と貯蔵室23との間の隔壁27には、開閉可能な冷気取り出し窓21が設けられている。冷気取り出し窓21は、貯氷室13と貯蔵室23との間で互いに空気を移動させるための空気連通手段の一例である。図示の例では、4つの冷気取り出し窓21が配置されている。自然製氷時期に貯氷室13で製氷を行うときは、冷気取り出し窓21は閉じられる。自然製氷不可時期に冷気取り出し窓21を開くことによって、貯氷室13内の氷を冷熱源とする冷気が貯蔵室23に送り込まれる。図示の例では、貯氷室13と貯蔵室23との間の隔壁27に点検扉22も設けられている。水槽14内の氷の状態を確認するために、点検扉22から貯氷室13に人が出入りできる。
【0020】
さらに、貯蔵室23には、外部との間で保冷対象物を出し入れするための外扉24も設けられている。なお、貯蔵室23を設けることは一例であり、貯蔵室23は、貯氷構造物10の必須要素ではない。貯蔵室23を設ける替わりに、貯氷室13の後面側の壁が外部との境界壁であってもよい。その場合、その境界壁に少なくとも冷気の送出口を設けることができる。別の例では、その境界壁に送出口と戻り口を設けることもできる。冷気の送出口にダクト等を取り付けて冷気を取り出して送ることによって、外部の貯蔵室や装置等において冷蔵や冷房をすることができる。
【0021】
上述した貯氷構造物10の稼動方法の一例を説明する。自然製氷時期(冬期)において、水槽14に水を充填し、冷気取り入れダンパー15及び排気窓16のみを開き、貯蔵室23の外扉24を閉じると共に、内部の冷気取り出し窓21及び点検扉22も閉じておく。氷点下の外気が冷気取り入れダンパー15から入り、貯氷室13内を通過して排気窓16から出て行くことで、水槽14内の水が自然凍結し、氷となる。凍結が完了したならば、冷気取り入れダンパー15及び排気窓16を閉じる。自然製氷時期の終わりの時点では、水槽14内の水が完全に氷となっているようにする。
【0022】
自然製氷不可時期(春期~秋期)に貯氷構造物10を利用するとき、移動可能な貯氷コンテナの場合は、所望する利用場所に貯氷コンテナを運搬し設置してから利用するか、又は、運搬車両に貯氷コンテナを搭載したまま利用することもできる。外扉24を通して貯蔵室23に保冷対象物を収容した後、隔壁27の冷気取り出し窓21を開く。冷気取り出し窓12以外の開閉口及び扉は全て閉じておく。これにより、貯氷室10内の冷気が貯蔵室23に移動して貯蔵室23が冷却される。自然製氷不可時期には、水槽14の氷が徐々に融解し水と氷が共存する状態であるので、貯氷室13は、理論的に常時0℃、湿度100%に維持される。実際、湿度70~95%に維持することが確認できている。
【0023】
自然製氷不可時期の特に夏期においては融解が顕著に進行する。氷の融解の程度は、人が点検扉22から貯氷室13に入って水槽14を直接観察することで確認できる。別の例として、貯蔵室23に温度センサを設置し、貯蔵室23の温度が所定の温度よりも上昇することで氷の融解の程度を検知してもよい。氷の融解が一定以上に進んだことを確認又は検知したときは、冷凍機18を稼動させて氷の再凍結を行う。氷の融解の検知に温度センサ等のセンサを用いる場合は、センサと冷凍機18を連係させて自動運転してもよい。
【0024】
冷凍機18を稼動させるときは、冷気取り出し窓21を閉じ、換気扇20を稼動させる。冷凍機18からの冷気が貯氷室13を通過することで、水の再凍結が行われる。再凍結が完了したならば、冷凍機18及び換気扇20を停止する。その後、再度、冷気取り出し窓21を開いて貯蔵室23の冷却を行う。
【0025】
(2)第2の実施形態
図4は、本発明のハイブリッド型貯氷構造物の第2の実施形態の内部を概略的に示す部分的な側断面図である。
図5は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物の内部を概略的に示す部分的な平断面図である(但し、
図4では閉まっている扉22、24、26を
図5では開いた状態で示す)。
図6は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物に設けられた送気パイプ及び還気パイプを概略的に示す斜視図である。
図7(a)は、
図4に示したハイブリッド型貯氷構造物の概略的なIII-III断面図、(b)は概略的なIV-IV断面図である。各図における黒矢印の曲線は、空気の流れを模式的に示している。
【0026】
第2の実施形態については、主に第1の実施形態とは異なる構成について説明し、共通する構成については説明を簡略化するか省略する。
図4及び
図5は、貯氷構造物の後方部分のみを示しているが、図示を省略した前方部分は第1の実施形態と同じ構成である。
【0027】
第2の実施形態の貯氷構造物10Aにおいても、貯氷室13の後面側の隣に隔壁27を介して貯蔵室23が設けられている。
【0028】
図示の例では、貯蔵室23内に、保冷対象物Fを貯蔵するために複数段からなる棚が設けられている。
図5に示されるように、貯蔵室23の左側面に沿って前後方向に長い棚50aが設置され、右側面に沿って前後方向に短い棚50bが設置されている。図示の例では、各棚の段上に丸いセミハードチーズが一定の間隔で置かれている。貯氷室13と貯蔵室23との間の隔壁27には、点検扉22が設けられている。水槽14内の氷の状態を確認するために、点検扉22から貯氷室13に人が出入りできる。
【0029】
第2の実施形態において、貯氷室13と貯蔵室23との間で空気を移動させるための空気連通手段は、貯氷室13と貯蔵室23との間の隔壁27を貫通してそれぞれ設けられた送気パイプ30及び還気パイプ40を有する。
【0030】
図6に最もよく示されるように、送気パイプ30は、貯氷室13内で上向きに開口する吸入口を有する。吸入口にはファン31が設置されている。ファン31を稼動することによって、貯氷室13内の冷気を送気パイプ30内に取り込むことができる。なお、ファン31の位置は、図示の例に限られず、送気パイプ30の管内の任意の箇所に設けることができる。
【0031】
図示の例では、送気パイプ30は、吸入口から鉛直下方に延びる縦パイプ33と、縦パイプ33の下端で2つに分岐してそれぞれ右方向と左方向に延びる横パイプ34とを有する。横パイプ34は床近傍に位置する。
【0032】
送気パイプ30はさらに、横パイプ34の右端から後方に隔壁27に向かって延び、隔壁27を貫通して貯蔵室23内に入ってさらに床近傍で後方に延びる右パイプ35aを有する。右パイプ35aの途中及び先端から吹出パイプ36a、36aが貯蔵室23の中央に向いてそれぞれ延びている。各吹出パイプ36a、36aの管内には、風量を調整するためのダンパー37a、37aが設けられている。
【0033】
同様に、左パイプ35bが、横パイプ34の左端から後方に隔壁27に向かって延び、隔壁27を貫通して貯蔵室23内に入ってさらに床近傍で後方に延びている。左パイプ35bの途中及び先端から吹出パイプ36b、36bが貯蔵室23の中央に向いてそれぞれ延びている。各吹出パイプ36b、36bの管内には、風量を調整するためのダンパー37b、37bが設けられている。なお、図示の送気パイプ30及び還気パイプ40の具体的構成は一例である。
【0034】
送気パイプ30の縦パイプ33の管内には、電熱ヒーター32が配置されている。電熱ヒーター32を通電又は停止することによって、貯氷室13から取り込まれる冷気の温度を調整することができる。電熱ヒーター32の通電端子32aは縦パイプ33の外面上に出ている。通電端子32aは、図示しない電源及び制御部に接続されている。制御部は、電熱ヒーター32の通電及び停止を制御可能である。なお、電熱ヒーター32の位置は、図示の例に限られず、送気パイプ30の管内の任意の箇所に設けることができる。
【0035】
還気パイプ40は、天井近傍においてそれぞれ隔壁27を貫通して前後方向に延びる右パイプ41aと左パイプ41bとから構成される。還気パイプ40は、吸入口が貯蔵室23に開口し、送出口が貯氷室13に開口している。
【0036】
第2の実施形態では、ファン31によって貯氷室13内の冷気を送気パイプ30に取り込んで貯蔵室23に送ると共に、貯蔵室23内の空気を、還気パイプ40を通して貯氷室13に戻すことができる。
【0037】
第2の実施形態では、貯氷室13の冷気を利用する際に貯蔵室23の温度を調整することができる。野菜等の青果物を新鮮に保つためには温度と湿度が重要である。特に保冷対象物Fによって最適な貯蔵温度が異なる。例えば、以下の通りである。
0℃:イチゴ、カブ、キャベツ、レタス、ネギ、スイートコーン
2~10℃:アスパラガス、メロン、ナガイモ、バレイショ
10~15℃:キュウリ、スイカ、サツマイモ、カボチャ、ショウガ
10~12℃:セミハードチーズ(ゴーダ)
【0038】
貯蔵室23の温度管理方法は、例えば次の通りである。貯蔵室23に温度センサを設置して温度を検知する。検知した温度を基に、貯蔵室23の温度が最適な貯蔵温度となるように電熱ヒーター32の通電時間を制御する。
【0039】
第2の実施形態では、貯蔵室23には外部と繋がる扉が設けられていない。その替わりに、貯氷室13とは反対側にて貯蔵室23の隣に隔壁28を介して設けられた前室25をさらに有する。図示の例では、
図5に示すように、前室25は内部空間の左右方向の幅の半分の幅をもつ小さい空間である。前室25は、外部との間で人が出入りするための外扉24と、貯蔵室23に人が出入りするために隔壁28に設けられた内扉26とを有する。前室25は、貯蔵室23に対する外部の温度や湿度の影響をできるだけ少なくするための緩衝空間の役割を果たす。
【0040】
以上に述べた本発明の各実施形態は、例示的なものであり、これら以外にも多様な変形形態が可能であり、それらについても本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0041】
10 ハイブリッド型貯氷構造物
11 外郭部材
12 断熱部材
13 貯氷室
14 水槽
15 外気取り入れダンパー
16 排気窓
17 冷凍機室
18 冷凍機
19 通気床
20 換気扇
21 冷気取り出し窓
22 点検扉
23 貯蔵室
24 外扉
25 前室
26 内扉
27、28 隔壁
30 送気パイプ
31 ファン
32 電熱ヒーター
33 縦パイプ
34 横パイプ
35a 右パイプ
35b 左パイプ
36a、36b 吹出パイプ
37a、37b ダンパー
40 還気パイプ
41a 右パイプ
41b 左パイプ
F 保冷対象物