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特開2023-44637感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を有するドライフィルム及び感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044637
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を有するドライフィルム及び感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230323BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230323BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20230323BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20230323BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/004 512
C08F2/46
C08F299/02
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131015
(22)【出願日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2021152577
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 諒哉
(72)【発明者】
【氏名】石坂 将暢
【テーマコード(参考)】
2H225
4J011
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC37
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AM08P
2H225AM64P
2H225AN36P
2H225AN56P
2H225AN61P
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2H225AN82P
2H225AP03P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA31P
2H225BA38P
2H225CA13
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2H225CC13
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5E314GG26
(57)【要約】
【課題】優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、
前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物が、25℃、1013hPaにて液体である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、250以上600以下である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、350以上600以下である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を5.0質量部以上150質量部以下含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を15質量部以上80質量部以下含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)エポキシ化合物が、さらに、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物以外の(B2)他のエポキシ化合物を含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて得られるラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を含み、前記(B2)他のエポキシ化合物が、前記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成しているエポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含む請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B2)他のエポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
プリント配線板のソルダーレジスト用である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を有するドライフィルム。
【請求項12】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、絶縁被覆材料に適した感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物をフィルムに塗布した塗膜を有するドライフィルム及び感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物が被覆されたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リジット基板やフレキシブル基板を用いたプリント配線板の基板上には、導体(例えば、銅箔)の回路パターンが形成され、該回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除く回路部分は、保護膜としての絶縁材料であるソルダーレジスト膜で被覆される。
【0003】
また、近年、電子機器の高機能化と小型化に伴い、電子機器に搭載されるプリント配線板の設置空間が、ますます狭小化されている。そこで、電子機器内部の狭小化した空間にプリント配線板を搭載するために、屈曲性(柔軟性)を有するフレキシブル基板を用いたプリント配線板(フレキシブルプリント配線板)が使用されることがある。
【0004】
フレキシブルプリント配線板の保護膜には、絶縁信頼性と屈曲性(柔軟性)が要求される。そこで、屈曲性(柔軟性)も備えた絶縁被膜を得る組成物として、例えば、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン、及び(F)ポリウレタン粒子を含有する組成物が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方で、近年、プリント配線板の保護膜には、微細な回路パターン間における絶縁信頼性だけではなく、EMI(電磁干渉)シールドをプリント配線板に貼り付ける等の際に要求されるZ軸方向(保護膜の厚さ方向)の絶縁信頼性や耐熱性のさらなる向上が要求されている。また、フレキシブルプリント配線板の保護膜には、さらなる屈曲性(柔軟性)の向上も要求されている。
【0006】
しかし、ソルダーレジスト膜等の絶縁保護膜においては、絶縁信頼性および耐熱性は、屈曲性(柔軟性)とは背反する特性となる。従って、特許文献1等、従来の感光性樹脂組成物では、優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を得る点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-293882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を有するドライフィルム、および前記感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、
前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物が、25℃、1013hPaにて液体である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、250以上600以下である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、350以上600以下である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を5.0質量部以上150質量部以下含有する[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を15質量部以上80質量部以下含有する[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(B)エポキシ化合物が、さらに、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物以外の(B2)他のエポキシ化合物を含有する[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて得られるラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を含み、前記(B2)他のエポキシ化合物が、前記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成しているエポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を含む[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(B2)他のエポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]プリント配線板のソルダーレジスト用である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[11][1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物を有するドライフィルム。
[12][1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有することにより、優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を得ることができる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物が、25℃、1013hPaにて液体であることにより、感光性樹脂組成物中におけるフルオレン骨格含有型エポキシ化合物の分散性が向上し、絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、250以上600以下であることにより、Z軸方向の絶縁信頼性、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量が、350以上600以下であることにより、Z軸方向の絶縁信頼性と屈曲性(柔軟性)がさらに向上する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を5.0質量部以上150質量部以下含有することにより、Z軸方向の絶縁信頼性、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に得ることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、前記(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を15質量部以上80質量部以下含有することにより、屈曲性(柔軟性)がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に詳細を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有する。本発明の感光性樹脂組成物では、優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0017】
(A)感光性樹脂
感光性樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂の化学構造は、特に限定されず、例えば、遊離のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を1個以上と、を有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシアクリレートやエポキシメタクリレート(以下、アクリレートやメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、得られた該樹脂に生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0018】
多官能エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であれば、化学構造は、特に限定されない。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、エポキシ当量の上限値は、2000が好ましく、1500がより好ましく、1000がさらに好ましく、500が特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100が好ましく、200が特に好ましい。多官能エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらのエポキシ樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したエポキシ樹脂を使用してもよい。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、チグリン酸、アンゲリカ酸等を挙げることができる。これらのうち、入手や取り扱いが容易である点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入されて、エポキシ樹脂に感光性が付与される。
【0020】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な希釈剤(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0021】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応によって、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に水酸基が生成し、生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が反応することで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に、さらに遊離のカルボキシル基が導入される。感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に遊離のカルボキシル基が導入されることで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂にアルカリ現像性が付与される。多塩基酸は、2官能以上のカルボン酸であれば、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれの多塩基酸も使用することができる。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、フタル酸誘導体(例えば、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等)、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物は、特に限定されず、例えば、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物との反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な希釈剤(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0023】
上記した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させた樹脂では、側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されていることで、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも感光特性がさらに向上する。
【0024】
カルボキシル基含有感光性樹脂が、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた化学構造を有することで、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖にさらにラジカル重合性不飽和基が結合しているため、光重合反応性、すなわち、光硬化性がより向上し、より優れた感光特性を発揮する。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、感光性樹脂組成物に対してアルカリ現像処理を実施しない場合には、カルボキシル基を有さない感光性樹脂を使用してもよい。カルボキシル基を有さない感光性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレートからなるモノマーの重合体、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製過程で得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(i)ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタン樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂である。また、ウレタ
ン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(ii)1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得て、生成した水酸基に1分子中に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物を付加反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、(iii)上記エポキシ(メタ)アクリレートに生成した水酸基に、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとポリオールを付加反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
感光性樹脂が遊離のカルボキシル基を有する場合、感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、酸価の下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、感光性樹脂の酸価の上限値は、例えば、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の耐湿性と絶縁信頼性の低下を確実に防止する点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0029】
感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、質量平均分子量(Mw)の下限値は、光硬化物の強靭性及び露光処理前の指触乾燥性を向上させる点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)の上限値は、アルカリ現像性の低下を確実に防止する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により測定した分子量を意味する。
【0030】
感光性樹脂は、上記した例示のように、上記各出発物質を用いて上記反応にて合成してもよく、上市されている感光性樹脂を使用してもよい。上市されている感光性樹脂としては、例えば、「リポキシSP-4621」(昭和電工株式会社)、「KAYARAD ZAR-2000」、「KAYARAD ZFR-1122」、「KAYARAD FLX-2089」、「KAYARAD ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(ダイセル株式会社)等のカルボキシル基含有感光性樹脂を挙げることができる。これらの感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(B)エポキシ化合物
本発明では、(B)成分のエポキシ化合物として、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有することにより、優れた絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0032】
(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物
フルオレン骨格含有型エポキシ化合物としては、フルオレン骨格含有型エポキシ樹脂(フルオレン型エポキシ樹脂)を挙げることができる。
【0033】
フルオレン骨格含有型エポキシ化合物の、25℃、1013hPa(標準気圧)における状態は、液体でも固体でもよいが、感光性樹脂組成物中におけるフルオレン骨格含有型エポキシ化合物の分散性が向上し、絶縁信頼性(特に、Z軸方向の絶縁信頼性)、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に形成することができる点から、液体が好ましい。
【0034】
フルオレン骨格含有型エポキシ化合物のエポキシ当量は、特に限定されず、適宜選択可能であるが、Z軸方向の絶縁信頼性、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に得ることができる点から、250以上600以下の範囲が好ましく、Z軸方向の絶縁信頼性と屈曲性(柔軟性)がさらに向上する点から、350以上600以下の範囲がより好ましく、400以上550以下の範囲が特に好ましい。
【0035】
フルオレン骨格含有型エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、(A)感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ。)に対して、Z軸方向の絶縁信頼性、耐熱性、屈曲性(柔軟性)に優れた硬化塗膜を確実に得ることができる点から、5.0質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、屈曲性(柔軟性)がさらに向上する点から、15質量部がさらに好ましく、20質量部が特に好ましい。一方で、フルオレン骨格含有型エポキシ化合物の配合量の上限値は、(A)感光性樹脂100質量部に対して、感光性樹脂組成物の感光性の低下を確実に防ぎ、優れた感光性を得る点から、150質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、感光性樹脂組成物中のエポキシ基の増加による感光性樹脂のカルボキシル基との反応を防止して優れた現像性を得る点から、80質量部がさらに好ましく、70質量部が特に好ましい。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物では、(B)エポキシ化合物として、(B1)成分であるフルオレン骨格含有型エポキシ化合物以外のエポキシ化合物((B2)他のエポキシ化合物)を、フルオレン骨格含有型エポキシ化合物と併用してもよい。
【0037】
(B2)他のエポキシ化合物
他のエポキシ化合物は、光硬化物の架橋密度を上げて十分な強度の光硬化物を形成することに寄与する。他のエポキシ化合物としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらの他のエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらの他のエポキシ化合物のうち、絶縁信頼性をさらに向上させることに寄与する点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。また、これらの他のエポキシ化合物のうち、感光性樹脂として多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を使用する場合には、絶縁信頼性をさらに向上させることに寄与する点から、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成しているエポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂が好ましい。
【0039】
他のエポキシ化合物の配合量は、特に限定されず、例えば、十分な強度の硬化塗膜を得る点から、感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上60質量部以下が特に好ましい。
【0040】
また、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物と(B2)他のエポキシ化合物を含めた(B)エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、硬化物の架橋密度を向上させることで耐熱性を付与する点から、20質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、40質量部が特に好ましい。一方で、(B)エポキシ化合物の配合量の上限値は、感光性樹脂組成物中のエポキシ基の増加による感光性樹脂のカルボキシル基との反応を防止して優れた現像性を得る点から、200質量部が好ましく、150質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましく、80質量部が特に好ましい。
【0041】
(C)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にすることで機械的強度を光硬化物に付与し、耐酸性、耐アルカリ性に優れた光硬化物を得るために配合する。
【0042】
反応性希釈剤としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能の(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能の(メタ)アクリレートモノマー;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。また、(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、他のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、反応性希釈剤としては、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されず、例えば、感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下が特に好ましい。
【0044】
(D)難燃剤
難燃剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に難燃性を付与するための成分である。感光性樹脂組成物に難燃剤が配合されることで、プリント配線板等に搭載される電子部品等の発熱量が増大しても絶縁保護膜の燃焼を防止して、安全性を向上させることができる。難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらのリン系の難燃剤のうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。
【0045】
難燃剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、光硬化物に優れた難燃性を確実に付与する点から、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、20質量部が特に好ましい。一方で、難燃剤の配合量の上限値は、感光性樹脂組成物の塗工性と光硬化物の柔軟性を確実に得る点から、100質量部が好ましく、50質量部が特に好ましい。
【0046】
(E)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(Z) -(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。また、α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤でもよく、他の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されず、例えば、感光性樹脂100質量部に対して、2.0質量部以上20質量部以下が好ましく、3.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(E)成分の他に、必要に応じて、他の成分、例えば、フィラー、硬化促進剤、添加剤、着色剤、非反応性希釈剤等を、適宜、配合してもよい。
【0049】
フィラーは、感光性樹脂組成物の光硬化物の物理的強度を上げるためのものである。フィラーとしては、有機フィラーと無機フィラーが挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、ウレタン系ビーズ、ポリメタクリル酸メチル系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、アクリル系ビーズ、アクリルコポリマー系ビーズ、ポリアクリル酸エステル系ビーズ、ナイロン系ビーズ、シリコーン系ビーズ等が挙げられる。また、無機フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ、シリカ等を挙げることができる。これらのフィラーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのフィラーのうち、光硬化物の柔軟性の向上にも寄与する点から、有機フィラーが好ましく、ウレタン系ビーズが特に好ましい。
【0050】
硬化促進剤としては、例えば、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、メルカプトベンズオキサゾール、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0051】
添加剤としては、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等の消泡剤、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤などが挙げられる。着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、黒色着色剤、赤色着色剤、橙色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。上記着色剤としては、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤、緑色着色剤であるフタロシアニングリーンやリオノールグリーン、青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系着色剤、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系着色剤、アントラキノン系着色剤等の有機系着色剤を挙げることができる。
【0052】
非反応性希釈剤は、必要に応じて、感光性樹脂組成物の乾燥性、塗工性を調節するために配合する成分である。非反応性希釈剤には、例えば、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、石油ナフサ等を挙げることができる。これらの非反応性希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、一般的に使用される混練手段または混合手段にて製造することができる。具体的には、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(例えば、10℃~30℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混合、混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して、本発明の感光性樹脂組成物を製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合を行ってもよい。
【0054】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、まず、導体箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗工したドライフィルムを用いて、絶縁保護膜であるソルダーレジストを形成する方法について説明する。
【0055】
ドライフィルムは、支持フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルム)と、該支持フィルムに塗工されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を保護するカバーフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)と、を有する積層構造となっている。支持フィルム上に、ローラコート法、バーコータ法等の公知の方法で本発明の感光性樹脂組成物を層状に塗工して塗膜を形成後、該塗膜を乾燥処理することで、支持フィルム上にソルダーレジスト層を形成する。その後、必要に応じて、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤(例えば、有機溶剤)を揮散させるために70~120℃程度の温度で1~20分間程度加熱する予備乾燥を行い、感光性樹脂組成物から非反応性希釈剤を揮発させてソルダーレジスト膜の表面をタックフリーの状態にする。その後、形成したソルダーレジスト層上にカバーフィルムを積層することで、本発明の感光性樹脂組成物の塗膜を有するドライフィルムを製できる。
【0056】
上記ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながらソルダーレジスト層をプリント配線板に貼り合わせることで、プリント配線板上にソルダーレジスト膜を形成する。形成したソルダーレジスト膜上に、支持フィルムを介して回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300~400nmの範囲)を照射してソルダーレジスト膜を光硬化させる。その後、支持フィルムを剥がして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することによりソルダーレジスト膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が挙げられる。希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。現像後、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に、目的とするパターンを有するソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0057】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例として、フレキシブルプリント配線板等のプリント配線板に感光性樹脂組成物を塗工して、プリント配線板の絶縁保護膜であるソルダーレジストを形成する方法について説明する。上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、スプレー塗工、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法等、公知の塗工方法にて、所望の厚さで塗布して塗膜を形成する。次に、必要に応じて、非反応性希釈剤を揮散させるために、70~120℃程度の温度で1~20分間程度加熱する予備乾燥を行って、タックフリーの塗膜を形成する。次に、塗膜上に回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300~400nmの範囲)を照射させて塗膜を光硬化させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が挙げられる。希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に、目的とするパターンを有するソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【実施例0058】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1~8、比較例1~3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温(25℃)にて混合分散させて、実施例1~8、比較例1~3にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0060】
なお、下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)感光性樹脂
・KAYARAD ZCR-1569H:固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社
KAYARAD ZCR-1569Hは、エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、エポキシアクリレートの生成した水酸基に多塩基酸を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシアクリレート樹脂である。
【0061】
(B)エポキシ化合物
(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物
・OGSOL EG-280:フルオレン型エポキシ樹脂、25℃、1013hPaにて液体、エポキシ当量460、大阪ガスケミカル株式会社
・OGSOL EG-200:フルオレン型エポキシ樹脂、25℃、1013hPaにて液体、エポキシ当量290、大阪ガスケミカル株式会社
【0062】
(B2)他のエポキシ化合物
・EPICLON 860:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、DIC株式会社
・NC-3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社
・EPICLON HP-7200H:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC株式会社
【0063】
(C)反応性希釈剤
・EBECRYL8405:ウレタンアクリレート、株式会社ダイセル
(D)難燃剤
・エクソリットOP-935:有機リン酸塩、クラリアントジャパン株式会社
(E)光重合開始剤
・NCI-831:オキシムエステル系光重合開始剤、株式会社ADEKA
・Irgacure369:2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤)、BASF社
【0064】
フィラー
・RHC-732:ウレタンビーズ:大日精化株式会社
硬化促進剤
・メラミン:日産化学工業株式会社
・DICY-7:三菱化学株式会社
添加剤
・AC-303:消泡剤、共栄社化学株式会社
着色剤
・デンカブラック:電気化学工業株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0065】
試験サンプル作製工程
調製した感光性樹脂組成物を用いて以下のように試験サンプルを作製した。
支持フィルム:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(膜厚25μm、ユニチカ株式会社)
感光性樹脂組成物の支持フィルムへの塗工方法:バーコータ法
支持フィルムに塗工した感光性樹脂組成物の予備乾燥:110℃、5分
評価基板:二層銅張積層板(ポリイミド(厚さ25μm)、銅(厚さ12.5μm))
評価基板の表面処理:5質量%硫酸処理
評価基板と感光性樹脂組成物を塗布した支持フィルムとのラミネート条件:50℃、加圧0.5MPa、真空30秒/加圧30秒
露光:感光性樹脂組成物上150mJ/cm(投影露光装置(光源:高圧水銀灯、ウシオ電機株式会社))
支持フィルムを剥がした後、アルカリ現像:1質量%Na2CO3水溶液、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
熱硬化処理(ポストキュア):150℃、60分
熱硬化処理後のDry膜厚:20μm
【0066】
評価・測定項目は以下の通りである。
(1)屈曲性(柔軟性)
上記試験サンプル作製工程において得られた試験サンプルを、荷重300gにて、硬化塗膜が外側になる状態ではぜ折り試験により折り曲げを行った後、フラットに戻すサイクルを繰り返し、その際の硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生したかどうかを以下の4段階で評価した。
◎:5回のサイクルでクラックなし
○:4回~2回のサイクルまでクラックなし
△:1回までクラックなし
×:1回でクラック発生
【0067】
(2)はんだ耐熱性
上記試験サンプル作製工程にて作成した試験サンプルの硬化塗膜を、JIS C-6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に10秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを1~3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の4段階で評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められない
○:2サイクル繰り返し後の塗膜に変化は認められないが、3サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められる
△:1サイクル後の塗膜に変化は認められないが、2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められる
×:1サイクル後の塗膜に剥離等の変化が認められる
【0068】
(3)絶縁信頼性(硬化塗膜の厚さ方向(Z軸方向)の絶縁信頼性)
上記試験サンプル作製工程にて作成した試験サンプルについて、硬化塗膜上に銀を蒸着させた硬化塗膜の上面を陽極に、上記評価基板の銅を陰極に、それぞれ、接続した。次いで、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽の中で、50V印加を行い、イオンマイグレーションテスター(IMV社、「MIG-8600B/128」)を用いて抵抗値の連続測定を行った。50V印加時を測定開始時間とし、抵抗値が1.0E+6(1.0×10)Ω未満に低下するまでの時間を計測し、これを絶縁破壊時間とした。絶縁破壊時間から、厚さ方向(Z軸方向)の絶縁信頼性を以下の4段階で評価した。
◎:絶縁破壊時間1500時間以上、
○:絶縁破壊時間1000時間以上1500時間未満
△:絶縁破壊時間500時間以上1000時間未満
×:絶縁破壊時間500時間未満
【0069】
実施例1~8、比較例1~3の評価結果を下記表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
上記表1に示すように、(A)感光性樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)反応性希釈剤と、(D)難燃剤と、(E)光重合開始剤と、を含有し、前記(B)エポキシ化合物が、(B1)フルオレン骨格含有型エポキシ化合物を含有する感光性樹脂組成物である実施例1~8では、屈曲性、はんだ耐熱性および絶縁信頼性のいずれにも優れた硬化塗膜を得ることができた。
【0072】
特に、エポキシ当量460である液体のフルオレン型エポキシ樹脂を配合した実施例6は、エポキシ当量290である液体のフルオレン型エポキシ樹脂を配合した実施例7と比較して、屈曲性と絶縁信頼性がさらに向上した。また、感光性樹脂100質量部に対してフルオレン骨格含有型エポキシ化合物を20質量部~60質量部配合した実施例2~4、6は、感光性樹脂100質量部に対してフルオレン骨格含有型エポキシ化合物を10質量部配合した実施例1と比較して、屈曲性がさらに向上した。また、実施例2と実施例5から、他のエポキシ化合物として、感光性樹脂である多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成しているエポキシ樹脂と同じ種類のエポキシ樹脂を配合すると、絶縁信頼性がさらに向上した。また、実施例5と実施例8から、他のエポキシ化合物として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を配合すると、絶縁信頼性がさらに向上した。
【0073】
一方で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を配合したがフルオレン骨格含有型エポキシ化合物を配合しなかった比較例1では、絶縁信頼性が得られなかった。また、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を配合したがフルオレン骨格含有型エポキシ化合物を配合しなかった比較例2では、屈曲性が得られなかった。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を配合したがフルオレン骨格含有型エポキシ化合物を配合しなかった比較例3では、屈曲性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の感光性樹脂組成物は、優れた絶縁信頼性と耐熱性を有しつつ、屈曲性(柔軟性)にも優れた硬化塗膜を得ることができるので、電子機器内部の狭小化した空間に搭載されるプリント配線板の分野で、特に利用価値が高い。