(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044690
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】異物侵入防止機能を有する逆止弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
F16K51/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152702
(22)【出願日】2021-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107283
【弁理士】
【氏名又は名称】塩出 洋三
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓資
(72)【発明者】
【氏名】大道 康仁
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】逆止弁への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる逆止漏れを防止する。また、定期的なメンテナンスを行わなくても配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンスレスでの運用を可能とする。
【解決手段】逆止弁本体4の出入口取合部の底面に堰(せき)構造物5を設けることで、配管底部にたまったゴミなどの異物が弁体に持ち込まれることを防止する。堰(せき)構造物5については、板状やメッシュ状、網状などが考えられ、弁体への流体流れをできる限り阻害しない形で、配管底部に流れる異物の侵入を防止できれば、どのような構造でもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有する配管内に設置される逆止弁装置において、入口配管と出口配管の間に設置されるとともに流路を有する弁本体と、弁本体に形成され流路側を向く弁座と、この弁座に接離する弁体と、流路に向かう流れを許容し逆方向の流れを禁じる逆止弁とを有し、弁本体の出入口取合部の底面に堰構造物を設けたことを特徴とする異物侵入防止機能を有する逆止弁装置。
【請求項2】
堰構造物が、板状構造物、メッシュ状構造物及び網状構造物のいずれかである請求項1に記載の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置。
【請求項3】
逆止弁装置を蒸気配管で使用する場合、堰構造物で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップから蒸気ドレンとともに排出されるようにした請求項1又は2に記載の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる逆止漏れを防止する逆止弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆止弁で逆止漏れが発生すると、本来流れるべきではない逆止弁一次側へ流体が逆流することで、プロセスや各種機器に不具合が生じることがある。
逆止漏れが発生する要因の中で一番多いのが、弁座面への異物噛み込みであり、配管内で経年により発生した錆や系外より混入した異物が、逆止弁の弁座面に付着し、締め切り性能が不良となることで、逆止漏れが発生することが知られている。
【0003】
逆止弁に異物が侵入することを防止するために、逆止弁一次側にストレーナを設置することがあるが、ストレーナは定期的なメンテナンスが必要であり、メンテナンスを怠るとストレーナが目詰まりを起こすことで配管圧損の増大につながり、計画通りの流量が流れずプロセスに悪影響を及ぼすことがある。
水平配管においては配管底部には、重力によりゴミなどの異物が滞留しやすく、配管底部を伝って逆止弁にゴミが持ち込まれることがある。
【0004】
また、下記の特許文献1には、水路を有する地中構造体のウイープホール内に設置される逆止弁装置において、ウイープホール内に設置されるとともに流路を有する弁ボデイと、弁ボデイに形成され水路側を向く主弁座と、この主弁座に接離する主弁体とを有し、水路に向かう流れを許容し逆方向の流れを禁じる主逆止弁と、主弁体の動作領域よりウイープホールの開口側に配置され、水路に向かう流れを許容しつつ、水路から主弁体の動作領域への異物侵入を規制する保護手段とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水平配管では、配管底部に沿って異物が流れやすく、特に蒸気配管においては、配管底部には蒸気のドレン流れが生じて二層流の形態をなしている。蒸気ドレンは配管内を流れる蒸気流れと比べると、ゴミなどの異物を捕集しやすく、蒸気ドレンの流れを介して逆止弁に異物を持ち込むことが予想される。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、逆止弁の底部のみにメッシュや板状、網状等の堰を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが逆止弁に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、逆止弁への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる逆止漏れを防止する逆止弁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置は、流路を有する配管内に設置される逆止弁装置において、入口配管と出口配管の間に設置されるとともに流路を有する弁本体と、弁本体に形成され流路側を向く弁座と、この弁座に接離する弁体と、流路に向かう流れを許容し逆方向の流れを禁じる逆止弁とを有し、弁本体の出入口取合部の底面に堰(せき)構造物を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の装置において、堰構造物としては、板状構造物、メッシュ状構造物、網状構造物等を用いることができる。要するに、弁体への流体流れをできる限り阻害しない形で、配管底部に流れる異物の侵入を防止できれば、どのような構造でもよい。
【0010】
本発明の装置において、逆止弁装置を蒸気配管で使用する場合、堰構造物で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ(蒸気トラップ)から蒸気ドレンとともに排出されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、逆止弁の底部のみにメッシュや板状等の堰(せき)を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが逆止弁に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、逆止弁への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる逆止漏れを防止する。また、逆止弁底部の一部のみに堰を設置することで、配管流路の大部分には圧損増加となる障害物はなくなるため、定期的なメンテナンスを行わなくてもストレーナの様に配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンス無しでの運用が可能となる。
【0012】
逆止弁装置を蒸気配管で使用する場合、堰構造物(堰構造部)で逆止弁への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ(蒸気トラップ)から蒸気ドレンとともに排出されることで、堰構造物(堰構造部)の分解清掃が不要となり、メンテナンスレスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置の概略構成の一例を示す側面説明図である。
【
図2】
図2は本発明の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置の概略構成の一例を示す正面説明図である。
【
図3】
図3は本発明の異物侵入防止機能を有する逆止弁装置を蒸気配管で使用する場合の概略構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
【0015】
本実施の形態は、逆止弁本体の出入口取合部の底面に堰(せき)構造物を設けることで、配管底部にたまったゴミなどの異物が弁体に持ち込まれることを防止するものである。
堰構造物については、板状やメッシュ状、網状などが考えられ、弁体への流体流れをできる限り阻害しない形で、配管底部に流れる異物の侵入を防止できれば、どのような構造でもよい。
【0016】
図1、
図2は、本発明の逆止弁装置の概略構成の一例を示している。逆止弁装置1において、入口配管2と出口配管3の間には、弁本体4が設置されている。詳細な図示は省略しているが、逆止弁装置1には、弁本体4に形成され流路側を向く弁座と、この弁座に接離する弁体と、流路に向かう流れを許容し逆方向の流れを禁じる逆止弁とが備えられている。
弁本体4の出入口取合部の底面には、堰(せき)構造物5が設けられている。
【0017】
逆止弁の底部のみに堰構造物5を設けることで、配管底部を伝って流れてくる蒸気ドレンが逆止弁に侵入することを防止し、蒸気ドレン中に含まれるゴミなどの異物についても、堰部分で止めることで、逆止弁への異物侵入を防止し、弁座面への異物噛み込みによる逆止漏れを防止する。また、逆止弁底部の一部のみに堰構造物5を設置することで、配管流路の大部分には圧損増加となる障害物はなくなるため、定期的なメンテナンスを行わなくてもストレーナの様に配管圧損の増加は発生せず、長期間メンテナンス無しでの運用が可能となる。
【0018】
図3は、逆止弁装置を蒸気配管で使用する場合に、逆止弁前後にスチームトラップ(蒸気トラップ)を設置して、蒸気ドレンによる自動洗浄効果(メンテナンスレス)を達成できるようにした構成の一例である。
堰構造物5で逆止弁装置1への侵入を阻まれた異物を含んだ蒸気ドレンが、逆止弁前後に設置のスチームトラップ6、7から蒸気ドレンとともに排出されることで、堰構造物5(堰構造部)の分解清掃が不要となる。スチームトラップ6は、具体的には、入口配管2から分岐した蒸気ドレン排出配管8に設けられている。同様に、スチームトラップ7は、具体的には、出口配管3から分岐した蒸気ドレン排出配管9に設けられている。
【符号の説明】
【0019】
1 逆止弁装置
2 入口配管
3 出口配管
4 弁本体
5 堰(せき)構造物
6、7 スチームトラップ
8、9 蒸気ドレン排出配管