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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044706
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】マルチコプタ
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20060101AFI20230324BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230324BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230324BHJP
   B64D 27/04 20060101ALI20230324BHJP
   B64D 31/06 20060101ALI20230324BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20230324BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20230324BHJP
   B60K 6/46 20071001ALN20230324BHJP
   B60W 10/06 20060101ALN20230324BHJP
   B60W 20/00 20160101ALN20230324BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C39/02
B64C27/08
B64D27/04
B64D31/06
F02D29/00 A
G05D1/10
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/00 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152737
(22)【出願日】2021-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H301
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB08
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD22
3D202DD24
3D202DD45
3G093AA16
3G093BA04
3G093DA04
3G093DA06
3G093EA01
3G093EA05
3G093EA09
3G093EA12
3G093FA04
5H301AA06
5H301CC04
5H301CC07
5H301DD06
5H301GG09
5H301QQ04
(57)【要約】
【課題】空冷式のエンジンに熱害が生じる前にエンジンの温度上昇を抑制すること。
【解決手段】マルチコプタ1は、複数のロータ25と、各ロータ25を回転駆動するモータ24、モータ24へ供給する電力を充放電可能に構成されるバッテリ31、電力を発電するジェネレータ42、ジェネレータ42を駆動する空冷式のエンジン41、マルチコプタの飛行1を制御するためにモータ24への通電、エンジン41の運転及びバッテリ31の充放電を制御するメインコントローラ33及びエンジン41の出力を調節するスロットル装置57手段を備える。メインコントローラ33は、エンジン41を高負荷で運転させている状態で、エンジン41の温度が許容温度より高くなる場合に、エンジン41の出力を低減させるようにスロットル装置57を制御する出力低減制御を実行する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータと、
前記各ロータを回転駆動するためのモータと、
前記モータへ供給する電力を充放電可能に構成されるバッテリと
を備え、前記各ロータを前記モータで回転させることにより飛行するマルチコプタにおいて、
電力を発電するための発電機と、
前記発電機を駆動するための空冷式のエンジンと、
前記マルチコプタの飛行を制御するために前記モータへの通電、前記エンジンの運転及び前記バッテリの充放電を制御する制御手段と、
前記エンジンの出力を調節するための出力調節手段と
を備え、前記制御手段は、前記エンジンを高負荷で運転させている状態において、前記エンジンの温度が所定の許容温度より高くなる場合に、前記エンジンの出力を低減させるように前記出力調節手段を制御する出力低減制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチコプタにおいて、
前記各ロータ、前記モータ、前記エンジン及び前記発電機を搭載する機体と、
前記機体と大気との対気速度を検出するための対気速度検出手段と、
外気の温度を検出するための外気温度検出手段と
を更に備え、
前記制御手段は、検出される前記対気速度が遅くなるほど及び検出される前記外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、前記エンジンの温度が前記許容温度より高くなる場合と判断して前記出力低減制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチコプタにおいて、
前記制御手段は、前記出力低減制御を実行しているときに、前記モータの出力を増加させる要求が生じた場合、前記バッテリに残る蓄電量を前記モータへの通電に補填する通電補填制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のマルチコプタにおいて、
前記出力調節手段は、前記エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、前記エンジンに供給される前記燃料と前記エンジンに吸入される吸気との混合気に点火するための点火手段とを含み、
前記制御手段は、前記出力低減制御を実行するために、前記燃料供給手段から前記エンジンへの前記燃料の供給をカットする燃料カット制御、又は、前記点火手段による前記混合気の点火をカットする点火カット制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項5】
請求項4に記載のマルチコプタにおいて、
前記制御手段は、検出される前記対気速度が遅くなるほど及び検出される前記外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、前記燃料カット制御の実行頻度を増加させる
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のマルチコプタにおいて、
前記制御手段は、前記出力低減制御を実行しているときに、前記モータの出力を増加させる要求が生じた場合、前記バッテリに残る蓄電量を前記モータへの通電に補填する通電補填制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のマルチコプタにおいて、
前記制御手段は、前記エンジンを高負荷で運転させている状態において、その運転時間が所定の許容時間を超えたと判断したとき、前記エンジンの温度が所定の許容温度より高くなったとして出力低減制御を実行する
ことを特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、複数のロータと、各ロータを回転駆動するモータと、モータへ電力を供給するバッテリとを備え、各ロータをモータで回転させることにより飛行するマルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されるマルチコプタが知られている。このマルチコプタは、複数のロータ、複数のモータ及びバッテリの他に、電力を発電する発電機と、発電機を駆動するエンジンと、マルチコプタを制御する制御部とを備える。そして、制御部は、マルチコプタを飛行させるために、発電機で発電された電力を各モータへ供給したり、その電力をバッテリに充電したりするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-138594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたマルチコプタでは、その航続距離や滞空時間を延ばすために軽量化が求められ、発電用のエンジンについては軽量化が求められている。そのため、エンジンの冷却については、付属設備の不要な空冷式を採用することが望ましい。ところが、マルチコプタが、例えば、飛行速度が低い条件でエンジンが高負荷運転を継続した場合、空冷式のエンジンでは、冷却が不十分となり、その温度が上昇し、高温による耐熱性悪化(材料強度低下等)などの熱害が生じるおそれがある。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、空冷式のエンジンに熱害が生じる前に、エンジンの温度上昇を抑制することを可能としたマルチコプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、複数のロータと、各ロータを回転駆動するためのモータと、モータへ供給する電力を充放電可能に構成されるバッテリとを備え、各ロータをモータで回転させることにより飛行するマルチコプタにおいて、電力を発電するための発電機と、発電機を駆動するための空冷式のエンジンと、マルチコプタの飛行を制御するためにモータへの通電、エンジンの運転及びバッテリの充放電を制御する制御手段と、エンジンの出力を調節するための出力調節手段とを備え、制御手段は、エンジンを高負荷で運転させている状態において、エンジンの温度が所定の許容温度より高くなる場合に、エンジンの出力を低減させるように出力調節手段を制御する出力低減制御を実行することを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、例えば、マルチコプタの飛行速度が低い条件で、エンジンの高負荷運転を継続した場合、空冷式のエンジンでは、冷却が不十分となり、その温度が上昇し、高温による熱害が生じるおそれがある。しかし、制御手段は、エンジンを高負荷で運転させている状態において、エンジンの温度が所定の許容温度より高くなる場合に、エンジンの出力を低減させるように出力調節手段を制御する出力低減制御を実行する。従って、空冷式のエンジンに熱害が生じる前にエンジンの出力が低減される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、各ロータ、モータ、エンジン及び発電機を搭載する機体と、機体と大気との対気速度を検出するための対気速度検出手段と、外気の温度を検出するための外気温度検出手段とを更に備え、制御手段は、検出される対気速度が遅くなるほど及び検出される外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、エンジンの温度が許容温度より高くなる場合と判断して出力低減制御を実行することを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、マルチコプタの飛行時に、対気速度が遅くなるほど、又は、外気の温度が高くなるほど、エンジンの空冷条件は悪くなる。しかし、制御手段は、検出される対気速度が遅くなるほど及び検出される外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、エンジンの温度が許容温度より高くなる場合と判断して出力低減制御を実行する。従って、マルチコプタの飛行条件によりエンジンの温度が所定の許容温度より高くなる場合も、エンジンの出力を低減させることで、空冷式のエンジンに熱害が生じる前にエンジンの出力が低減される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、制御手段は、出力低減制御を実行しているときに、モータの出力を増加させる要求が生じた場合、バッテリに残る蓄電量をモータへの通電に補填する通電補填制御を実行することを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、制御手段は、出力低減制御を実行しているときに、モータの出力を増加させる要求が生じた場合、例えば、マルチコプタを上昇させる要求が生じた場合、バッテリに残る蓄電量をモータへの通電に補填するための通電補填制御を実行する。従って、出力低減制御を実行することで、エンジンの出力が減少し、発電機の発電量が不足しても、通電補填制御によってバッテリに残る蓄電量がモータへの通電に補填され、発電機の発電量の不足が補われる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術において、出力調節手段は、エンジンに燃料を供給するための燃料供給手段と、エンジンに供給される燃料とエンジンに吸入される吸気との混合気に点火するための点火手段とを含み、制御手段は、出力低減制御を実行するために、燃料供給手段からエンジンへの燃料の供給をカットする燃料カット制御、又は、点火手段による混合気の点火をカットする点火カット制御を実行することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術の作用に加え、制御手段は、出力低減制御を実行するために、燃料供給手段からエンジンへの燃料の供給をカットする燃料カット制御、又は、点火手段による混合気の点火をカットする点火カット制御を実行する。従って、燃料カット制御が実行されることで、燃料の燃焼回数が削減されてエンジンの出力が低減される。また、点火カット制御が実行されることで、エンジンに供給された燃料が燃焼することなく気化し、その気化潜熱によりエンジンが冷却される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項4に記載の技術において、制御手段は、検出される対気速度が遅くなるほど及び検出される外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、燃料カット制御の実行頻度を増加させることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、マルチコプタの飛行中には、対気速度が遅くなるほど、又は、外気の温度が高くなるほど、エンジンの空冷条件は悪くなる。しかし、制御手段は、検出される対気速度が遅くなるほど及び検出される外気の温度が高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、燃料カット制御の実行頻度を増加させる。従って、マルチコプタの飛行条件(対気速度、外気の温度)によってエンジンの空冷条件が厳しくなるほど燃料の燃焼回数が多く削減され、エンジンの出力がより多く低減される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項4又は5に記載の技術において、制御手段は、出力低減制御を実行しているときに、モータの出力を増加させる要求が生じた場合、バッテリに残る蓄電量をモータへの通電に補填する通電補填制御を実行することを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、請求項4又は5に記載の技術の作用に加え、制御手段は、出力低減制御を実行しているときに、モータの出力を増加させる要求が生じた場合、例えば、マルチコプタを上昇飛行させる場合、バッテリに残る蓄電量をモータへの通電に補填するための通電補填制御を実行する。従って、出力低減制御を実行することで、エンジンの出力が減少し、発電機の発電量が不足しても、通電補填制御によって、バッテリに残る蓄電量がモータへの通電に補填され、発電機の発電量の不足が補われる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項1乃至6のいずれかに記載の技術において、制御手段は、エンジンを高負荷で運転させている状態において、その運転時間が所定の許容時間を超えたと判断したとき、エンジンの温度が所定の許容温度より高くなったとして出力低減制御を実行することを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至7のいずれかに記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンを高負荷で運転させている状態において、その運転時間が所定の許容時間を超えたと判断したとき、エンジンの温度が所定の許容温度より高くなったとして、エンジンの出力を低減させるように出力低減制御を実行する。従って、エンジンを高負荷で運転させた時間を計測することで、エンジンの温度を直接検出することなく出力低減制御を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の技術によれば、空冷式のエンジンに熱害が生じる前に、エンジンの温度上昇を抑制することができる。
【0021】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術と効果に加え、マルチコプタの飛行条件によりエンジンの温度が所定の許容温度より高くなる場合も、空冷式のエンジンに熱害が生じる前に、エンジンの温度上昇を抑制することができる。
【0022】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、モータの出力を要求通りに増加させることができ、マルチコプタを要求通りに安定して飛行をさせることができる。
【0023】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0024】
請求項5に記載の技術によれば、請求項4に記載の技術の効果に加え、マルチコプタの飛行中における対気速度及び外気の温度によりエンジンの空冷条件が厳しくなっても、エンジンの温度上昇を抑制することができる。
【0025】
請求項6に記載の技術によれば、請求項4又は5に記載の技術の効果に加え、モータの出力を要求通りに増加させることができ、マルチコプタを要求通りに安定して飛行をさせることができる。
【0026】
請求項7に記載の技術によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載の技術の効果に加え、出力低減制御を実行するための構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係り、マルチコプタの外観を示す斜視図。
図2】第1実施形態に係り、マルチコプタの構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態に係り、発電用エンジンシステムとその関連機器の一部を示す概略構成図。
図4】第1実施形態に係り、第1のエンジン出力制御の内容を示すフローチャート。
図5】第1実施形態に係り、許容温度超え時間に応じた閉じ補正値を求めるために参照される補正値マップ。
図6】第1実施形態に係り、許容温度超え時間とジェネレータの発電量との関係を示すグラフ。
図7】第1実施形態に係り、許容温度超え時間と吸気量との関係を示すグラフ。
図8】第1実施形態に係り、第1のエンジン出力制御に関する各種パラメータの変化を示すタイムチャート。
図9】第2実施形態に係り、第2のエンジン出力制御の内容を示すフローチャート。
図10】第2実施形態に係り、外気温度に応じた外気温度補正係数を求めるために参照される外気温度補正係数マップ。
図11】第2実施形態に係り、対気速度に応じた対気速度補正係数を求めるために参照される対気速度補正係数マップ。
図12】第3実施形態に係り、マルチコプタ飛行制御の内容を示すフローチャート。
図13】第3実施形態に係り、マルチコプタ飛行制御の内容を示すフローチャート。
図14】第3実施形態に係り、目標スロットル開度に応じたジェネレータの発電量を求めるために参照される発電量マップ。
図15】第3実施形態に係り、第1又は第2のエンジン出力制御とマルチコプタ飛行制御に関する各種パラメータの変化を示すタイムチャート。
図16】第4実施形態に係り、第3のエンジン出力制御の内容を示すフローチャート。
図17】第4実施形態に係り、第3のエンジン出力制御に関する各種パラメータの変化を示すタイムチャート。
図18】第5実施形態に係り、第4のエンジン出力制御の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、マルチコプタを具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0029】
<第1実施形態>
【0030】
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
[マルチコプタの構成等について]
図1に、この実施形態のマルチコプタ1の外観を斜視図により示す。図2に、マルチコプタ1の構成をブロック図により示す。以下に、マルチコプタ1の構成等について、図1図2を参照して詳細に説明する。
【0032】
マルチコプタは、ヘリコプターの一種であり、3つ以上のロータを搭載した回転翼機のことである。この実施形態のマルチコプタ1は、機体11と、エンジン発電ユニット12とを備える。機体11は、先端が二股に分かれた複数(この実施形態では4本)のアーム21と、複数のアーム21を放射状に片持ち支持するアームベース22と、アームベース22を支持する機体ベース23と、各アーム21の先端に設けられた複数(この実施形態では8個)のモータ24と、各モータ24により回転駆動される複数(この実施形態では8個)のロータ25とを含む。このマルチコプタ1は、複数のロータ25を対応する各モータ24により同時に回転させることで飛行するようになっている。
【0033】
アームベース22は、機体ベース23の上に設けられる。アームベース22の中には、バッテリ31、燃料タンク32、メインコントローラ33、フライトコントローラ34、パワーコントロールユニット35、エレクトリックスピードコントローラ36などが設けられる。また、アームベース22には、外部を撮像または録画する撮像部37が設けられる。撮像部37は、カメラ及び録画メモリ等を含む。
【0034】
機体ベース23の下側には、エンジン発電ユニット12が懸架される。エンジン発電ユニット12は、後述する発電用エンジンシステム15(エンジン41を含む)と、エンジン41により駆動されて発電する発電機(ジェネレータ)42とを含む。
【0035】
各モータ24は、エレクトリックスピードコントローラ36(インバータ(不図示)を含む)とパワーコントロールユニット35を介してジェネレータ42に電気的に接続される。この接続により、ジェネレータ42で発電された電力が、パワーコントロールユニット35とエレクトリックスピードコントローラ36を介してモータ24に供給されるようになっている。
【0036】
バッテリ31は、電力を充放電可能な二次電池により構成される。バッテリ31は、パワーコントロールユニット35を介してジェネレータ42に電気的に接続され、ジェネレータ42で発電された電力を充電するようになっている。バッテリ31は、パワーコントロールユニット35とエレクトリックスピードコントローラ36を介して各モータ24に電気的に接続され、バッテリ31から放電する電力を各モータ24に供給するようになっている。バッテリ31には、バッテリ31の電流、電圧及び温度をそれぞれ検出する各種センサ(図示略)が設けられ、これらセンサがその検出結果に関する電気信号をメインコントローラ33へ送るようになっている。
【0037】
燃料タンク32には、燃料(例えば、ガソリン)が貯留される。この燃料は、エンジン41を駆動するために使用される。燃料タンク32に設けられたレベルセンサ(図示略)は、燃料残量に関する電気信号をメインコントローラ33へ送るようになっている。
【0038】
メインコントローラ33は、小型のコンピュータとして構成され、マルチコプタ1に関する全ての動作を制御するようになっている。メインコントローラ33は、風向取得部45、回転制御部46、風力取得部47、機械制御部48及びエンジン制御部50を備える。ここで、例えば、エンジン制御部50は、ジェネレータ42での発電を制御するためにエンジン41の動作を制御するようになっている。エンジン制御部50等を含むメインコントローラ33は、マルチコプタ1の飛行を制御するために各モータ24への通電、エンジン41の運転及びバッテリ31の充放電を制御するこの開示技術における制御手段の一例に相当する。
【0039】
フライトコントローラ34は、マルチコプタ1の飛行を制御する装置である。このフライトコントローラ34は、マルチコプタ1の飛行に関する推力をメインコントローラ33とエレクトリックスピードコントローラ36へ指令する電気信号を送る一方で、メインコントローラ33からバッテリ31の充電状態に関する電気信号を受け取るようになっている。フライトコントローラ34は、後述するリモコン30から操縦者の操作指令に関する電気信号を受け取り、後述する各種センサ28から検出結果に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0040】
パワーコントロールユニット35は、各モータ24へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット35は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給及び受給を行ったり、エレクトリックスピードコントローラ36へ電力を供給したりするようになっている。パワーコントロールユニット35は、メインコントローラ33から充放電の切替指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0041】
エレクトリックスピードコントローラ36は、各モータ24の回転数を制御する装置である。このエレクトリックスピードコントローラ36は、パワーコントロールユニット35を介して供給される電力を駆動電力として各モータ24に供給するようになっている。エレクトリックスピードコントローラ36は、フライトコントローラ34から推力指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0042】
エンジン発電ユニット12は、エンジン41を含む発電用エンジンシステム15の一部及びジェネレータ42などを備える。エンジン41は、ジェネレータ42の駆動源であって、この実施形態では、レシプロタイプの小型ガソリンエンジンより構成される。すなわち、エンジン41は、各モータ24又はバッテリ31へ供給される電力をジェネレータ42で発電するために、ジェネレータ42を駆動するようになっている。また、後述する発電用エンジンシステム15を構成する各種部品57,60,62は、メインコントローラ33のエンジン制御部50から、発電を目的としたエンジン制御指令に関する電気信号を受け取るようになっている。
【0043】
この実施形態で、マルチコプタ1は、各種センサ28とリモコン30を備える。各種センサ28は、マルチコプタ1の高度、姿勢、緯度や経度、加速度及び障害物などをそれぞれ検出するためのセンサを含む。リモコン30は、マルチコプタ1の操縦者が持つ操作器であり、操縦者により操作されるジョイスティックからの操作に関する電気信号をマルチコプタ1へ送信したり、マルチコプタ1からの動作に関する電気信号を受信したりする送受信機などの機器を含む。
【0044】
この本実施形態のマルチコプタ1では、各モータ24とバッテリ31とエンジン41によりシリーズ式のハイブリッドシステムが構成される。すなわち、このマルチコプタ1では、エンジン41がジェネレータ42による発電のみに使用され、各モータ24が各ロータ25を回転駆動するために使用され、バッテリ31がジェネレータ42で発電された電力を充放電するために使用される。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の動力によりジェネレータ42を動作させて発電し、発電した電力で各モータ24を動作させて各ロータ25を回転させることで飛行するようになっている。また、このマルチコプタ1は、エンジン41の動力によってジェネレータ42で発電された電力のうち、各モータ24へ供給されて余った余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてバッテリ31から各モータ24へ供給するようになっている。
【0045】
上記のように構成したマルチコプタ1は、各モータ24に電力を供給し、複数のロータ25をそれぞれ回転させることで各種飛行を実現するようになっている。すなわち、マルチコプタ1は、各ロータ25の回転数を制御することで、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力とバランスさせてホバリング飛行を実現する。マルチコプタ1は、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力よりも大きくすることで、上昇飛行を実現し、各ロータ25により発生する揚力をマルチコプタ1に作用する重力よりも小さくすることで、下降飛行を実現する。また、マルチコプタ1は、各ロータ25の回転数を制御し、各ロータ25により発生する揚力に不均衡を生じさせることで前進・後進・左右移動飛行を実現する。更に、マルチコプタ1は、相対回転する各ロータ25の回転数に差を設けることで、旋回(回転)飛行を実現する。
【0046】
ここで、メインコントローラ33は、パワーコントロールユニット35へ充放電の切替指令に関する電気信号を送ることで、ジェネレータ42で発電された電力の各モータ24への供給とバッテリ31への充電を制御すると共に、バッテリ31に充電された電力の各モータ24への放電を制御するようになっている。
【0047】
[発電用エンジンシステムについて]
次に、発電用エンジンシステム15について説明する。図3に、この実施形態の発電用エンジンシステム15とその関連機器の一部を概略構成図により示す。以下に、発電用エンジンシステム15の構成について、図3を参照して詳細に説明する。
【0048】
この発電用エンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)15は、単気筒で構成されるエンジン41を備える。この実施形態では、マルチコプタ1の軽量化のために、空冷式のエンジン41が採用される。エンジン41は、4サイクルのレシプロエンジンであり、燃焼室を含む1つの気筒52及びクランクシャフト53の他、周知の構成要素を含む。エンジン41には、気筒52に吸気を導入するためにエンジン41へ吸気が流れる吸気通路54と、気筒52から排気を導出するための排気通路55とが設けられる。吸気通路54の入口には、エアクリーナ56が設けられる。吸気通路54の途中には、サージタンク54aが設けられ、そのサージタンク54aの上流側にはスロットル装置57が設けられる。スロットル装置57は、吸気通路54を流れる吸気量を調節するために開閉動作する。スロットル装置57は、ポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体(図示略)と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ58とを含む。この実施形態のエンジンシステム15には、弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが設けられていない。スロットル装置57は、弁体で流路を開閉することにより、吸気通路54を流れる吸気量を調節するようになっている。スロットル装置57は、この開示技術における出力調節手段の一例に相当する。一方、排気通路55には、排気を浄化するための触媒59が設けられる。
【0049】
吸気通路54には、同通路54に燃料を噴射するための1つのインジェクタ60が設けられる。インジェクタ60は、前述した燃料タンク32から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。燃料タンク32及びインジェクタ60は、この開示技術において、エンジン41に燃料を供給するための燃料供給手段の一例を構成する。また、燃料供給手段は、この開示技術の出力調節手段の一例に相当する。この実施形態のエンジン41は、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作する。吸気通路54では、エンジンサイクルの吸気行程で導入された吸気と、インジェクタ60から吸気通路54に噴射された燃料とにより可燃性の混合気が形成される。
【0050】
エンジン41には、気筒52に対応して1つの点火プラグ61とイグニションコイル62が設けられる。点火プラグ61は、イグニションコイル62から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。両部品61,62は、この開示技術において、エンジン41の気筒52に供給される燃料と吸気との混合気に点火するための点火手段の一例を構成する。また、点火手段は、この開示技術の出力調節手段の一例に相当する。気筒52において、混合気は、エンジンサイクルの圧縮行程で点火プラグ61のスパーク動作により爆発・燃焼し、その爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒52から排気通路55へ排出される。排気は、触媒59を流れて浄化され、外部へ排出される。これら一連のエンジンサイクルを720℃Aのクランク角をもって周期的に繰り返すことで、エンジン41のクランクシャフト53が回転し、エンジン41に出力が得られる。
【0051】
エンジン41に対応して設けられる各種センサ等71,72,73,74は、エンジン41の運転状態を検出するための手段を構成する。エンジン41に設けられたエンジン温センサ71は、エンジン41のシリンダブロック41aの温度をエンジン温度THEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン41に設けられた回転数センサ72は、クランクシャフト53の回転数をエンジン回転数NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットル装置57より下流のサージタンク54aに設けられた吸気圧センサ73は、サージタンク54a(吸気通路54)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ56に設けられた外気温センサ74は、吸気通路54へ吸入される外気の温度(外気温度)THAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。外気温センサ74は、この開示技術における外気温度検出手段の一例に相当する。機体11に設けられた対気速度センサ75は、機体11と大気との対気速度FSPDを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。対気速度センサ75は、この開示技術における対気速度検出手段の一例に相当する。
【0052】
このエンジンシステム15は、エンジン41の運転を制御するための前述したエンジン制御部50を含む。エンジン制御部50には、各種センサ等71~75がそれぞれ接続される。また、エンジン制御部50には、スロットル装置57のステップモータ58、各インジェクタ60及びイグニションコイル62がそれぞれ接続される。周知のようにエンジン制御部50は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を含む。
【0053】
この実施形態で、エンジン制御部50は、エンジン41を運転するために、各種センサ等71~75からの電気信号に基いてスロットル装置57(ステップモータ58)、各インジェクタ60及びイグニションコイル62をそれぞれ制御するようになっている。
【0054】
この実施形態では、マルチコプタ1の軽量化のために空冷式のエンジン41が採用される。そのため、マルチコプタ1が、例えば、飛行速度が低い条件で高負荷運転を継続した場合、空冷式のエンジン41では、冷却が不十分となり、その温度が上昇し、高温による耐熱性悪化(材料強度低下等)による熱害が生じるおそれがある。そこで、この実施形態では、メインコントローラ33(エンジン制御部50を含む)は、この種の熱害に対処するために、次のような第1のエンジン出力制御を実行するようになっている。
【0055】
[第1のエンジン出力制御について]
次に、メインコントローラ33(エンジン制御部50を含む)が実行する第1のエンジン出力制御について説明する。図4に、第1のエンジン出力制御の内容をフローチャートにより示す。
【0056】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、メインコントローラ33は、各種センサ71~75等の検出値に基づき、エンジン温度THE、外気温度THA、対気速度FSPD、電池残量SOC%及び運転モードを取り込む。ここで、運転モードは、エンジン41の運転に関するモードを意味し、「ハイモード運転」と「ロウモード運転」を含む。ハイモード運転は、マルチコプタ1の飛行とバッテリ31への充電に必要な発電量又はマルチコプタ1を急上昇させるために必要な発電量を得るためにエンジン41を高負荷で運転させるモードである。メインコントローラ33は、エンジン41を高負荷で運転させるために、例えば、スロットル装置57を全開に制御するようになっている。ロウモード運転は、マルチコプタ1の飛行のみに必要な発電量得るためにエンジン41を中低負荷で運転させるモードである。メインコントローラ33は、エンジン41を中低負荷で運転させるために、例えば、スロットル装置57を中低開度に制御するようになっている。
【0057】
次に、ステップ110で、メインコントローラ33は、現在の運転モードがハイモード運転か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ120へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ180へ移行する。
【0058】
ステップ180では、メインコントローラ33は、マルチコプタ1の飛行モードに応じた目標スロットル開度THRstepを求める。メインコントローラ33は、例えば、マルチコプタ1が低速飛行モード又はアイドル飛行モードであるかに応じて目標スロットル開度THRstepを求める。その後、メインコントローラ33は、処理をステップ170へ移行ずる。
【0059】
一方、ステップ120では、メインコントローラ33は、ハイモード運転をした時間(ハイモード運転時間)CHFを取り込む。メインコントローラ33は、エンジン41がハイモード運転へ移行したとき、このハイモード運転時間CHFのカウントを開始するようになっている。
【0060】
次に、ステップ130で、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFが所定の許容時間A1を超えたか否かを判断する。ここで、許容時間A1は、エンジン41がハイモード運転へ移行して温度が上昇し、その温度が許容可能な上限温度に達するまでの予測時間を意味する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ140へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を190へ移行する。
【0061】
ステップ190では、メインコントローラ33は、目標スロットル開度THRstepを、全開に相当する「236」に設定した後、処理をステップ170へ移行する。「236」は、ステップモータ58を制御するための指令値でありステップ数で示す。
【0062】
一方、ステップ140では、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFから許容時間A1を減算することにより、エンジン41が許容温度を超えたと考えられる時間(許容温度超え時間)CETを算出する。
【0063】
次に、ステップ150では、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETに応じてスロットル装置57の開度(スロットル開度)を補正するための閉じ補正値THRCLを求める。メインコントローラ33は、例えば、図5に示すような閉じ補正値マップを参照することにより、許容温度超え時間CETに応じた閉じ補正値THRCL(ステップモータ58のステップ数で示す)を求めることができる。図5のマップでは、許容温度超え時間CETが「0」から増えるに連れて閉じ補正値THRCLが曲線的に増え、一定値となるように設定される。
【0064】
次に、ステップ160では、メインコントローラ33は、「236」から閉じ補正値THRCLを減算することにより、目標スロットル開度THRstepを算出する。この目標スロットル開度THRstepは、エンジン41の温度が許容温度を超えた分だけエンジン41の温度を低減させるためにエンジン41の出力を低減させる開度である。
【0065】
そして、ステップ160、ステップ180又はステップ190から移行してステップ170では、メインコントローラ33は、スロットル装置57を目標スロットル開度THRstepに制御した後、処理をステップ100へ戻す。
【0066】
ここで、メインコントローラ33が、スロットル装置57を、閉じ補正値THRCLにより補正した目標スロットル開度THRstepに制御することにより、ジェネレータ42の発電量は、図6に太線で示すように、許容温度超え時間CETに応じて変化する。すなわち、図6に太線で示すように、ジェネレータ42の発電量は、許容温度超え時間CETが増えるに連れてハイ発電量Whiから直線的に減少し、一定値となる。また、図6において、破線で示すロウ発電量Wlowは、マルチコプタ1の飛行に必要な発電量の最大値を示す。図6は、許容温度超え時間CETとジェネレータ42の発電量との関係を示すグラフである。
【0067】
また、メインコントローラ33が、スロットル装置57を、閉じ補正値THRCLにより補正した目標スロットル開度THRstepに制御することにより、エンジン41の吸気量は、図7に太線で示すように、許容温度超え時間CETが増えるに連れて最大値から直線的に減少、一定値となる。図7は、許容温度超え時間CETと吸気量との関係を示すグラフである。
【0068】
上記した第1のエンジン出力制御によれば、メインコントローラ33は、エンジン41を高負荷で運転(ハイモード運転)させている状態において、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなった場合に、エンジン41の出力を低減させるようにスロットル装置57(出力調節手段)を制御する出力低減制御を実行するようになっている。具体的には、メインコントローラ33は、エンジン41を高負荷で運転(ハイモード運転)させている状態において、そのハイモード運転時間CHFが所定の許容時間A1を超えたと判断したとき、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなったとして出力低減制御を実行するようになっている。この実施形態では、出力低減制御として、メインコントローラ33は、スロットル装置57のスロットル開度を、全開から必要量だけ減少させるようになっている。
【0069】
[マルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、マルチコプタ1の飛行速度が低い条件で、エンジン41のハイモード運転(高負荷運転)を継続した場合、空冷式のエンジン41では、冷却が不十分となり、その温度が上昇し、高温による熱害が生じるおそれがある。しかし、メインコントローラ33(制御手段)は、エンジン41をハイモード運転させている状態において、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなる場合に、エンジン41の出力を低減させるように出力低減制御を実行する。ここでは、メインコントローラ33は、エンジン41をハイモード運転させている状態において、そのハイモード運転時間CHFが所定の許容時間A1を超えたと判断したとき、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなったとして出力低減制御を実行する。従って、空冷式のエンジン41に熱害が生じる前にエンジン41の出力が低減される。このため、空冷式のエンジン41に熱害が生じる前に、エンジン41の温度上昇を抑制することができる。また、エンジン41をハイモード運転させた時間を計測することで、エンジン41の温度を直接検出することなく出力低減制御を実行することが可能となる。このため、出力低減制御を実行するための構成を簡略化することができる。
【0070】
図8に、第1のエンジン出力制御に関する各種パラメータの変化をタイムチャートにより示す。図8において、(a)はエンジン41の運転モードの変化を示し、(b)はスロットル開度の変化を示し、(c)はエンジン出力(≒発電量)の変化を示し、(d)はバッテリ充放電の変化を示し、(e)はハイモード運転時間CHFの変化を示し、(f)はエンジン温度THE(≒油温)の変化を示す。
【0071】
図8において、時刻t0から(a)の運転モードがハイモード運転(高負荷運転)となるときに、時刻t1で、(f)のハイモード運転時間CHFが許容時間A1を超えると、すなわち、エンジン温度THEが許容温度TALを超えると、(b)のスロットル開度が全開から減少し始め、(c)のエンジン出力が「max出力」から減少し始め、(d)のバッテリ充放電が「max充電」から減少し始める。ここで、時刻t0以降は、(a)に示すように、運転モードはハイモード運転となるが、時刻t0~時刻t1の間は、エンジン出力が「max出力」となり、ジェネレータ42で発電された電力がマルチコプタ1の飛行のためと、バッテリ31への充電のために使われる第1のハイモード運転H1となり、時刻t1以降は、エンジン出力が「max出力」から低減し、ジェネレータ42で発電された電力がマルチコプタ1の飛行のために使われ、バッテリ31への充電が抑制される第2のハイモード運転H2となる。この結果、(f)のエンジン温度THEは、2点鎖線で示すようには増加することがなく、実線で示すように許容温度TALに維持され、エンジン41の温度上昇を抑制できることがわかる。なお、時刻t2以降は、出力抑制安定モードで運転することにより、(b)のスロットル開度、(c)のエンジン出力及び(d)のバッテリ充放電は一定値となる。
【0072】
更に、この実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、発電用エンジンシステム15のエンジン41によりジェネレータ42が駆動されて発電し、その発電した電力がマルチコプタ1を飛行させるために各モータ24へ供給される。また、その発電した電力がバッテリ31へ充電されて充電量が補充される。従って、エンジン41が停止してジェネレータ42を駆動できなくなっても、バッテリ31に充電された電力を各モータ24へ供給することで、マルチコプタ1の飛行が可能となる。このため、ジェネレータ42で発電した電力をバッテリ31に充電補充できる分だけマルチコプタ1の航続距離及び滞空時間を延ばすことができる。また、出力低減制御によりエンジン41での燃料消費量を抑制できることから、その分だけマルチコプタ1の航続距離及び滞空時間を延ばすことができる。
【0073】
<第2実施形態>
【0074】
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0075】
この実施形態では、第2のエンジン出力制御の点で第1実施形態の第1のエンジン出力制御と構成が異なる。
【0076】
[第2のエンジン出力制御について]
次に、メインコントローラ33(エンジン制御部50を含む)が実行する第2のエンジン出力制御について説明する。図9に、第2のエンジン出力制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ130の代わりにステップ135が設けられ、ステップ140の代わりにステップ145が設けられ、ステップ120とステップ135との間にステップ200からステップ220が設けられる点で図4のフローチャートと構成が異なる。
【0077】
処理がこのルーチンへ移行すると、メインコントローラ33は、ステップ100~ステップ120の処理を実行した後、ステップ200で、外気温度THAに応じた外気温度補正係数Kthaを求める。メインコントローラ33は、例えば、図10に示すような外気温度補正係数マップを参照することにより、外気温度THAに応じた外気温度補正係数Kthaを求めることができる。図10のマップでは、外気温度THAが高くなるほど、外気温度補正係数Kthaが最大値KTmax(>1.0)から最小値KTmin(<1.0)の間で小さくなると共に、外気温度THAが所定温度T1(例えば、25℃)となるとき、外気温度補正係数Kthaが「1.0」となるように設定される。従って、外気温度THAが所定温度T1より高くなるほど、外気温度補正係数Kthaが「1.0」より小さくなる。
【0078】
次に、ステップ210で、メインコントローラ33は、対気速度FSPDに応じた対気速度補正係数Kfspdを求める。メインコントローラ33は、例えば、図11に示すような対気速度補正係数マップを参照することにより、対気速度FSPDに応じた対気速度補正係数Kfspdを求めることができる。図11のマップでは、対気速度FSPDが速くなるほど、対気速度補正係数Kfspdが最小値KFmin(<1.0)から最大値KFmax(>1.0)の間で大きくなると共に、対気速度FSPDが所定速度F1となるときに対気速度補正係数Kfspdが「1.0」となるように設定される。従って、対気速度FSPDが所定速度F1より遅くなるほど、対気速度補正係数Kfspdが「1.0」より小さくなる。
【0079】
次に、ステップ220で、メインコントローラ33は、許容時間A1に、外気温度補正係数Kthaと対気速度補正係数Kfspdを乗算することにより、出力抑制判定時間KAを算出する。従って、外気温度THAが高くなるほど外気温度補正係数Kthaが「1.0」より小さくなることから、出力抑制判定時間KAは許容時間A1より短くなる。また、対気速度FSPDが遅くなるほど対気速度補正係数Kfspdが「1.0」より小さくなることから、出力抑制判定時間KAは許容時間A1より短くなる。出力抑制判定時間KAは、許容時間A1を外気温度THAと対気速度FSPDで補正した補正後の時間である。
【0080】
次に、ステップ135で、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFが出力抑制判定時間KAを超えたか否かを判断する。ここで、出力抑制判定時間KAは、エンジン41の温度が上昇することで出力を抑制すべきか否かを判定する時間であって、エンジン41の温度の高さに相関する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ145へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を190へ移行する。従って、出力抑制判定時間KAが許容時間A1より短くなるほど、ハイモード運転時間CHFが出力抑制判定時間KAより長くなることから、メインコントローラ33は、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなったと判断してエンジン41の出力を低減させるための出力低減制御を実行することになる。
【0081】
ステップ145では、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFから出力抑制判定時間KAを減算することにより、許容温度超え時間CETを算出する。その後、メインコントローラ33は、ステップ150以降の処理を実行する。
【0082】
上記した第2のエンジン出力制御によれば、メインコントローラ33は、第1のエンジン出力制御と異なり、検出される対気速度FSPDが遅くなるほど及び検出される外気温度THAが高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、エンジン41の温度が許容温度より高くる場合と判断して出力低減制御を実行するようになっている。
【0083】
[マルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、マルチコプタ1の飛行時に、対気速度が遅くなるほど、又は、外気の温度が高くなるほど、エンジン41の空冷条件は悪くなる。しかし、メインコントローラ33は(制御手段)は、検出される対気速度FSPDが遅くなるほど及び検出される外気温度THAが高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、エンジン41の温度が許容温度TALより高くなる場合と判断して出力低減制御を実行する。従って、マルチコプタ1の飛行条件によりエンジン41の温度が所定の許容温度TALより高くなる場合も、エンジン41の出力を低減させることで、空冷式のエンジン41に熱害が生じる前にエンジン41の出力が低減される。このため、マルチコプタ1の飛行条件によりエンジン41の温度が所定の許容温度TALより高くなる場合も、空冷式のエンジン41に熱害が生じる前に、エンジン41の温度上昇を抑制することができる。
【0084】
<第3実施形態>
【0085】
次に、第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0086】
この実施形態では、マルチコプタ1の飛行とそれに関連した各モータ24への電力供給に関するマルチコプタ飛行制御について説明する。このマルチコプタ飛行制御は、前記各実施形態で説明した第1のエンジン出力制御又は第2のエンジン出力制御の実行を前提として実行される。
【0087】
[マルチコプタ飛行制御について]
次に、メインコントローラ33が実行するマルチコプタ飛行制御について説明する。図12及び図13に、マルチコプタ飛行制御の内容をフローチャートにより示す。
【0088】
処理がこのルーチンへ移行すると、メインコントローラ33(エンジン制御部50を含む)は、ステップ300で、マルチコプタ1に上昇要求が有るか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ390へ移行する。
【0089】
ステップ390では、メインコントローラ33は、上昇要求が無いことから、マルチコプタ1の飛行とバッテリ31の充電の両方を実施する要求が有るか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ320へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ440へ移行する。
【0090】
一方、ステップ310では、メインコントローラ33は、上昇要求が有ることから、上昇フラグXRISを「1」に設定する。
【0091】
次に、ステップ310又はステップ390から移行してステップ320では、メインコントローラ33は、エンジン41のハイモード運転を実行する。例えば、メインコントローラ33は、目標スロットル開度THRstepを全開に設定し、スロットル装置57をその目標スロットル開度THRstepに制御することによりハイモード運転を実行する。
【0092】
次に、ステップ330で、メインコントローラ33は、目標スロットル開度THRstepに基づき、ジェネレータ42の発電量WEを求める。メインコントローラ33は、例えば、図14に示すような発電量マップを参照することにより、目標スロットル開度THRstepに応じた発電量WEを求めることができる。このマップでは、目標スロットル開度THRstepが大きくなるほど発電量WEが曲線的に増加するように設定される。
【0093】
次に、ステップ340で、メインコントローラ33は、上昇フラグXRISが「1」か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は、上昇要求が有ることから処理をステップ350へ移行する。メインコントローラ33は、この判断結果が否定となる場合は、上昇要求が無いことから処理をステップ400へ移行する。
【0094】
ステップ400では、メインコントローラ33は、発電量WEから所定の低発電量WElowを減算することにより、充電可能発電量WEBinを算出する。
【0095】
次に、ステップ410で、メインコントローラ33は、マルチコプタ1を低発電量WElowで飛行すると共にバッテリ31に充電可能発電量WEBinを充電し、処理をステップ300へ戻す。
【0096】
一方、ステップ350では、メインコントローラ33は、発電量WEが所定の高発電量WEhi以上か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は、エンジン41の出力抑制が無いことから処理をステップ360へ移行する。メインコントローラ33は、この判断結果が否定となる場合は、エンジン41の出力抑制中であることから処理をステップ420へ移行する。
【0097】
ステップ420では、メインコントローラ33は、高発電量WEhiから発電量WEを減算することにより、バッテリ31のアシスト放電量WEBoutを算出する。
【0098】
次に、ステップ430で、メインコントローラ33は、バッテリ31への充電を停止し、バッテリ上昇アシスト制御を実行する。ここで、バッテリ上昇アシスト制御は、発電量WEとアシスト放電量WEBoutとの両方を各モータ24に供給することでマルチコプタ1の上昇飛行を実行することである。その後、メインコントローラ33は、処理をステップ370へ移行する。
【0099】
一方、ステップ360では、メインコントローラ33は、バッテリ31への充電を停止し、ジェネレータ42で発電される発電量WEの全てである高発電量WEhiでマルチコプタ1の上昇飛行を実行する。すなわち、メインコントローラ33は、ジェネレータ42で発電される発電量WEの全てを各モータ24へ供給することによりマルチコプタ1を上昇飛行させる。
【0100】
次に、ステップ360又はステップ430から移行してステップ370では、メインコントローラ33は、マルチコプタ1の上昇飛行が完了したか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ380へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ戻す。
【0101】
ステップ380では、メインコントローラ33は、マルチコプタの上昇要求を解除し、上昇フラグXRISを「0」に設定した後、処理をステップ300へ戻す。
【0102】
一方、ステップ390から移行してステップ440では、メインコントローラ33は、マルチコプタ1の飛行の要求が有るか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ450へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ470へ移行する。
【0103】
ステップ450では、メインコントローラ33は、エンジン41のロウモード運転を実行する。例えば、メインコントローラ33は、目標スロットル開度THRstepを中低開度に設定し、スロットル装置57をその目標スロットル開度THRstepに制御することによりロウモード運転を実行する。
【0104】
次に、ステップ460で、メインコントローラ33は、マルチコプタ1を低発電量WElowで飛行させ、処理をステップ300へ戻す。
【0105】
一方、ステップ470では、メインコントローラ33は、エンジン41のアイドル要求が有るか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ480へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ490へ移行する。
【0106】
ステップ480では、メインコントローラ33は、エンジン41をアイドル運転させた後、処理をステップ300へ戻す。メインコントローラ33は、スロットル装置57を所定のアイドル開度に制御することで、エンジン41をアイドル運転させることができる。
【0107】
一方、ステップ490では、メインコントローラ33は、エンジン41を停止させた後、処理をステップ300へ戻す。
【0108】
上記したマルチコプタ飛行制御によれば、メインコントローラ33(制御手段)は、出力低減制御を実行しているときに、各モータ24の出力を増加させる要求が生じた場合、例えば、マルチコプタ1を上昇飛行させる必要が生じた場合、バッテリ31に残る蓄電量であるアシスト放電量WEBoutを各モータ24への通電に補填する通電補填制御を実行するようになっている。
【0109】
[マルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、第1実施形態又は第2実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を有する。すなわち、メインコントローラ33(制御手段)は、出力低減制御を実行しているときに、各モータ24の出力を増加させる要求が生じた場合、例えば、マルチコプタ1を上昇させる要求が生じた場合、バッテリ31に残る蓄電量を各モータ24への通電に補填するための通電補填制御を実行する。従って、出力低減制御を実行することで、エンジン41の出力が減少し、ジェネレータ42の発電量が不足しても、通電補填制御によってバッテリ31に残る蓄電量が各モータ24への通電に補填され、ジェネレータ42の発電量の不足が補われる。このため、各モータ24の出力を要求通りに増加させることができ、マルチコプタ1を要求通りに安定して飛行をさせることができる。
【0110】
図15に、第1又は第2のエンジン出力制御とマルチコプタ飛行制御に関する各種パラメータの変化をタイムチャートにより示す。図15において、(a)はマルチコプタ1に対する急上昇要求の有無を示し、(b)はエンジン41の運転モードの変化を示し、(c)はスロットル開度の変化を示し、(d)はエンジン出力(≒発電量)の変化を示し、(e)はバッテリ充放電の変化を示し、(f)はハイモード運転時間CHFの変化を示し、(g)はエンジン温度THE(≒油温)の変化を示す。
【0111】
図15において、時刻t0から(b)の運転モードがハイモード運転(高負荷運転)となるときに、時刻t3で、(f)のハイモード運転時間CHFが許容時間A1を超えると、すなわち、(g)のエンジン温度THEが許容温度TALを超えると、(c)のスロットル開度が全開から減少し始め、(d)のエンジン出力が「max出力」から減少し始め、(e)のバッテリ充放電が「max充電」から減少し始める。ここで、時刻t0以降は、(b)に示すように、運転モードはハイモード運転となるが、時刻t0~時刻t3の間は、エンジン出力が「max出力」となり、ジェネレータ42で発電された電力がマルチコプタ1の飛行のためと、バッテリ31への充電のために使われる第1のハイモード運転H1となり、時刻t3以降は、エンジン出力が「max出力」から低減し、ジェネレータ42で発電された電力がマルチコプタ1の飛行のために使われ、バッテリ31への充電が抑制される第2のハイモード運転H2となる。この結果、(g)のエンジン温度THEは、2点鎖線で示すようには増加することがなく、実線で示すように許容温度TALに維持され、エンジン41の温度上昇を抑制できることがわかる。ここで、ハイモード運転(第1のハイモード運転H1)中の時刻t1~t2の間に、(a)の急上昇要求が入ると、(e)のバッテリ充放電は、充電も放電も「0」となる。また、ハイモード運転(第2のハイモード運転H2)中の時刻t4~t5の間に、(a)の急上昇要求が入ると、(e)のバッテリ充放電は、充電が「0」となり、ハッチングで示す所定量が放電されて各モータ24へ供給されることになる。なお、時刻t6以降は、出力抑制安定モードで運転することにより、(c)のスロットル開度、(d)のエンジン出力及び(e)のバッテリ充放電は一定値となる。
【0112】
<第4実施形態>
【0113】
次に、第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0114】
この実施形態では、第3のエンジン出力制御の点で前記各実施形態の第1又は第2のエンジン出力制御と構成が異なる。
【0115】
[第3のエンジン出力制御について]
次に、メインコントローラ33が実行する第3のエンジン出力制御について説明する。図16に、第3のエンジン出力制御の内容をフローチャートにより示す。
【0116】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ500で、メインコントローラ33は、各種センサ71~75等の検出値に基づき、エンジン温度THE、外気温度THA、対気速度FSPD、電池残量SOC%及び運転モードを取り込む。
【0117】
次に、ステップ510で、メインコントローラ33は、現在の運転モードがハイモード運転か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ520へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ590へ移行する。
【0118】
ステップ590では、メインコントローラ33は、マルチコプタ1の飛行モードに応じた目標スロットル開度THRstepを求める。メインコントローラ33は、例えば、マルチコプタ1が低速飛行モード又はアイドル飛行モードであるかに応じて目標スロットル開度THRstepを求める。その後、メインコントローラ33は、処理をステップ500へ戻す。
【0119】
一方、ステップ520では、メインコントローラ33は、目標スロットル開度THRstepを、全開に相当する「236」に設定する。
【0120】
次に、ステップ530では、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFを取り込む。
【0121】
次に、ステップ540で、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFが所定の許容時間A1を超えたか否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ550へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を600へ移行する。
【0122】
ステップ600では、メインコントローラ33は、エンジン41につき燃料カットをしない燃料カット無し制御を実行し、処理をステップ500へ戻す。ここで、燃料カットは、インジェクタ60からエンジン41への燃料の噴射(供給)をカットすることを意味する。
【0123】
一方、ステップ550では、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFから許容時間A1を減算することにより、許容温度超え時間CETを算出する。
【0124】
次に、ステップ560で、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETが所定の許容時間A1と第1の所定値b1との加算結果以上か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ570へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を610へ移行する。
【0125】
ステップ610では、メインコントローラ33は、エンジン41が20回転する毎に1回の燃料カット制御を実行することで、エンジン41の出力を5%低減し、処理をステップ500へ戻す。
【0126】
一方、ステップ570では、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETが所定の許容時間A1と第2の所定値c1(>b1)との加算結果以上か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ580へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を620へ移行する。
【0127】
ステップ620では、メインコントローラ33は、エンジン41が10回転する毎に1回の燃料カット制御を実行することで、エンジン41の出力を10%低減し、処理をステップ500へ戻す。
【0128】
一方、ステップ580では、メインコントローラ33は、エンジン41が7回転する毎に1回の燃料カット制御を実行することで、エンジン41の出力を15%低減し、処理をステップ500へ戻す。
【0129】
上記した第3のエンジン出力制御によれば、メインコントローラ33(制御手段)は、出力低減制御を実行するために、前記各実施形態とは異なり、インジェクタ60からエンジン41への燃料の噴射(供給)をカットする燃料カット制御を実行するようになっている。ここで、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFから許容時間A1を減算することで得られる許容温度超え時間CETが長くなるほど、燃料カット制御の実行頻度を増加させるようになっている。
【0130】
[マルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、前記各実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、メインコントローラ33(制御手段)は、出力低減制御を実行するために、インジェクタ60(燃料供給手段)からエンジン41への燃料の噴射をカットする燃料カット制御を実行する。従って、燃料の燃焼回数が削減されてエンジン41の出力が低減される。このため、空冷式のエンジン41に熱害が生じる前に、エンジン41の温度上昇を抑制することができる。
【0131】
また、この実施形態の構成によれば、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETが長くなるほど、燃料カット制御の実行頻度を増加させる。従って、マルチコプタ1の飛行条件によってエンジン41の空冷条件が厳しくなるほど燃料の燃焼回数が多く削減され、エンジン41の出力がより多く低減される。このため、マルチコプタ1の飛行条件によりエンジン41の空冷条件が厳しくなっても、エンジン41の温度上昇を抑制することができる。
【0132】
図17に、第3のエンジン出力制御に関する各種パラメータの変化をタイムチャートにより示す。図17において、(a)はエンジン41のクランク角の変化(720℃Aを1エンジンサイクルとする)と、それに付随した噴射IJ及び噴射カットIJCのタイミングを示す。図17において、(b)はスロットル開度の変化とハイモード運転時間CHFの変化を示し、(c)はエンジン温度THE(≒油温)の変化を示し、(d)は燃料カットの有無を示し、(e)はバッテリ充放電の変化を示し、(f)はエンジン出力(≒発電量)の変化を示す。
【0133】
図17において、時刻t0に(b)のスロットル開度が全開(運転モードがハイモード運転(高負荷運転))となるときに、時刻t1で、(b)のハイモード運転時間CHFが許容時間A1を超えると、(d)の燃料カットがエンジン41の20回転毎に1回行われる。これにより、(e)のバッテリ充放電がフル充電から「5%」減少し、(f)のエンジン出力が最大出力に対し「5%」減少する。その後、時刻t2で、(b)のハイモード運転時間CHFが許容時間A1+所定値b1を超えると、(d)の燃料カットがエンジン41の10回転毎に1回行われる。これにより、(e)のバッテリ充放電がフル充電から「10%」減少し、(f)のエンジン出力が最大出力に対し「10%」減少する。その後、時刻t3で、(b)のハイモード運転時間CHFが許容時間A1+所定値c1を超えると、(d)の燃料カットがエンジン41の7回転毎に1回行われる。これにより、(e)のバッテリ充放電がフル充電から「15%」減少し、(f)のエンジン出力が最大出力に対し「15%」減少する。このように、ハイモード運転時間CHFの経過に伴い、燃料カット制御の実行頻度を増加させることで、バッテリ31への充電が減少するものの、エンジン41の出力が低減することから、(c)のエンジン温度THEは、2点鎖線で示すようには増加することがなく、実線で示すように少しの増減を伴いながら許容温度TAL未満で維持され、エンジン41の温度上昇を抑制できることがわかる。
【0134】
<第5実施形態>
【0135】
次に、第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0136】
この実施形態では、第4のエンジン出力制御の点で第4実施形態の第3のエンジン出力制御と構成が異なる。
【0137】
[第4のエンジン出力制御について]
次に、メインコントローラ33(エンジン制御部50を含む)が実行する第4のエンジン出力制御について説明する。図18に、第4のエンジン出力制御の内容をフローチャートにより示す。このフローチャートでは、ステップ540の代わりにステップ545が設けられ、ステップ550の代わりにステップ555が設けられ、ステップ560の代わりにステップ565が設けられ、ステップ570の代わりにステップ575が設けられる。また、ステップ530とステップ545との間にステップ700からステップ720が設けられる点で図16のフローチャートと構成が異なる。
【0138】
処理がこのルーチンへ移行すると、メインコントローラ33は、ステップ500~ステップ530の処理を実行した後、ステップ700で、外気温度THAに応じた外気温度補正係数Kthaを求める。メインコントローラ33は、例えば、図10に示すような外気温度補正係数マップを参照することにより、外気温度THAに応じた外気温度補正係数Kthaを求めることができる。
【0139】
次に、ステップ710で、メインコントローラ33は、対気速度FSPDに応じた対気速度補正係数Kfspdを求める。メインコントローラ33は、例えば、図11に示すような対気速度補正係数マップを参照することにより、対気速度FSPDに応じた対気速度補正係数Kfspdを求めることができる。
【0140】
次に、ステップ720で、メインコントローラ33は、許容時間A1に、外気温度補正係数Kthaと対気速度補正係数Kfspdを乗算することにより、出力抑制判定時間KAを算出する。従って、外気温度THAが高くなるほど外気温度補正係数Kthaが「1.0」より小さくなることから、出力抑制判定時間KAが許容時間A1より短くなる。対気速度FSPDが遅くなるほど対気速度補正係数Kfspdが「1.0」より小さくなることから、出力抑制判定時間KAが許容時間A1より短くなる。
【0141】
次に、ステップ545で、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFが出力抑制判定時間KAを超えたか否かを判断する。ここで、出力抑制判定時間KAは、エンジン41の温度が上昇することで出力を抑制すべきか否かを判定する時間を意味する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ555へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理を600へ移行する。従って、出力抑制判定時間KAが許容時間A1より短くなるほど、ハイモード運転時間CHFが出力抑制判定時間KAより長いことから、メインコントローラ33は、エンジン41の出力を低減させるための出力低減制御を実行することになる。
【0142】
ステップ555では、メインコントローラ33は、ハイモード運転時間CHFから出力抑制判定時間KAを減算することにより、許容温度超え時間CETを算出する。
【0143】
次に、ステップ565で、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETが出力抑制判定時間KAと第1の所定値b1との加算結果以上か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は、対気速度FSPDが遅くなったり、外気温度THAが高くなったりしたものとして処理をステップ575へ移行する。また、メインコントローラ33は、この判断結果が否定となる場合は処理を610へ移行する。
【0144】
ステップ575では、メインコントローラ33は、許容温度超え時間CETが出力抑制判定時間KAと第2の所定値c1(>b1)との加算結果以上か否かを判断する。メインコントローラ33は、この判断結果が肯定となる場合は、対気速度FSPDが遅くなったり、外気温度THAが高くなったりしたものとして処理をステップ580へ移行する。また、メインコントローラ33は、この判断結果が否定となる場合は処理を620へ移行する。
【0145】
上記した第4のエンジン出力制御によれば、メインコントローラ33は、第3のエンジン出力制御と異なり、検出される対気速度FSPDが遅くなるほど及び検出される外気温度THAが高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、燃料カット制御の実行頻度を増加させる、すなわち、エンジン41の20回転毎に1回、エンジン41の10回転毎に1回、エンジン41の7回転毎に1回と増加させるようになっている。
【0146】
[マルチコプタの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態のマルチコプタ1の構成によれば、第4実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、マルチコプタ1の飛行中には、対気速度FSPDが遅くなるほど、又は、外気温度THAが高くなるほど、エンジン41の空冷条件は悪くなる。しかし、メインコントローラ33は、検出される対気速度FSPDが遅くなるほど及び検出される外気温度THAが高くなるほど、のうち少なくとも一方が成立する場合に、燃料カット制御の実行頻度を増加させる。従って、マルチコプタ1の飛行条件、すなわち対気速度FSPD及び外気温度THAによってエンジン41の空冷条件が厳しくなるほど燃料の燃焼回数が多く削減され、エンジン41の出力が低減される。このため、マルチコプタ1の飛行中における対気速度FSPD及び外気温度THAによりエンジン41の空冷条件が厳しくなっても、エンジン41の温度上昇を抑制することができる。
【0147】
[別の実施形態について]
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0148】
(1)前記第4及び第5の実施形態では、出力低減制御を実行するために、インジェクタ60からエンジン41への燃料の噴射(供給)をカットする燃料カット制御を実行するように構成したが、出力低減制御を実行するために、点火プラグ61による混合気の点火をカットする点火カット制御を実行するように構成することもできる。このように点火カット制御を実行した場合、点火カット時にエンジンに供給された燃料の気化潜熱によりエンジン41を冷却することができる。
【0149】
(2)前記第3実施形態では、第1のエンジン出力制御又は第2のエンジン出力制御の実行を前提としてマルチコプタ飛行制御を実行する場合について説明した。これに対し、第3のエンジン出力制御又は第4のエンジン出力制御の実行を前提として第3実施形態で説明したマルチコプタ飛行制御を実行することもできる。この場合も、マルチコプタ飛行制御に関し、第3実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0150】
(3)前記各実施形態では、エンジン41を高負荷で運転させている状態において、その運転時間が所定の許容時間を超えたと判断したとき、エンジン41の温度が所定の許容温度より高くなったとして出力低減制御を実行するように構成した。これに対し、エンジン温センサ71で検出されるエンジン温度THEが所定の許容温度より高くなったときに出力低減制御を実行するように構成することもできる。
【0151】
(4)前記第3実施形態では、メインコントローラ33が、出力低減制御を実行しているときに、各モータ24の出力を増加させる要求が生じた場合、バッテリ31に残る蓄電量であるアシスト放電量WEBoutを各モータ24への通電に補填する通電補填制御を実行するように構成した。これに対し、バッテリの充電量を検出するための充電量検出手段を更に設け、メインコントローラが、通電補填制御を、バッテリに残る蓄電量が所定量以上となる状態で実行するように構成することもできる。この場合、バッテリに残る蓄電量が所定量未満となる状態でバッテリの電力がモータへ供給されることがない。このため、バッテリ寿命が短くなることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
この開示技術は、発電機とバッテリを備え、エンジンを発電機の駆動源として使用したマルチコプタに適用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 マルチコプタ
11 機体
15 発電用エンジンシステム
24 モータ
25 ロータ
31 バッテリ
32 燃料タンク(燃料供給手段)
33 メインコントローラ(制御手段)
41 エンジン
42 ジェネレータ(発電機)
50 エンジン制御部(制御手段)
57 スロットル装置(出力調節手段)
60 インジェクタ(燃料供給手段)
61 点火プラグ(点火手段)
62 イグニションコイル(点火手段)
74 外気温センサ(外気温度検出手段)
75 対気速度センサ(対気速度検出手段)
THA 外気温度
FSPD 対気速度
CHF ハイモード運転時間
A1 許容時間
TAL 許容温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18