(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044721
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】熱交換器のベースプレート
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20230324BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20230324BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20230324BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
F28F9/00 321
F28F21/08 A
B23K1/19 A
B23K1/00 330K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133031
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】10 2021 210 411.8
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェシ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴッテ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065AA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セルフタッピングネジをネジ込むときにベースプレートのはんだ材料上又はベースプレートのアルミニウム材料上のヘッド下の摩擦を確実に回避する。
【解決手段】ネジ5のそれぞれの貫通用の開口部が設けられたフランジ3を有するアルミニウムからなる熱交換器2のベースプレート1に関する。ベースプレート1と例えばオイルフィルタモジュール8との長期間の流体密着接続を達成するために、金属、特に鋼製のワッシャを、ワッシャの開口部がベースプレート1のフランジ3の開口部と整列するように開口部上に固定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ(5)をそれぞれ貫通させるための開口部(4)が設けられたフランジ(3)を有する、アルミニウム製の熱交換器(2)のベースプレート(1)であって、
少なくとも1つの開口部(4)上には、金属製、特に鋼製のワッシャ(6)が、前記ワッシャ(6)の開口部(7)がベースプレート(1)のフランジ(3)の開口部(4)と整合するように、固定されている
ことを特徴とする、ベースプレート(1)。
【請求項2】
前記ワッシャ(6)が、前記ベースプレート(1)にはんだ付けされている
ことを特徴とする、請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
前記ベースプレート(1)が、少なくとも前記開口部(4)の領域においてはんだ層(9)で被覆されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のベースプレート。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のベースプレート(1)と、
前記ベースプレート(1)にはんだ付けされた少なくとも1つの積層板(12)とを有する
ことを特徴とする、熱交換器(2)。
【請求項5】
カバープレート(11)が、少なくとも1つの積層板(12)上にはんだ付けされる
ことを特徴とする、請求項4に記載の熱交換器(2)。
【請求項6】
フランジ(3)を有し、アルミニウム製であって、ネジ(5)のそれぞれの貫通のための開口部(4)が設けられているベースプレート(1)を、少なくとも開口部(4)の領域においてはんだ層(9)で被覆し、
前記開口部(4)の少なくとも1つに、鋼のワッシャ(6)を、前記ワッシャ(6)の開口部(7)が前記ベースプレート(1)のフランジ(3)の開口部(4)に合わさるように置き、
前記ワッシャ(6)を前記ベースプレート(1)にはんだ付けする
熱交換器(2)の製造方法。
【請求項7】
少なくとも1つの積層板(12)が、同時にベースプレート(1)にはんだ付けされる
ことを特徴する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つのカバープレート(11)が、同時に積層板(12)にはんだ付けされる
ことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のフランジを有するアルミニウム製熱交換器のベースプレートに関する。さらに、本発明は、このようなベースプレートを有する熱交換器及び熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、いわゆる積層板型熱交換器として、またさらなる部品、例えばオイルフィルタモジュールに締結されたベースプレートを介して形成されることが多い。通常、流体伝導接続もベースプレートを介して導くので、ベースプレートをさらなる部品に備える熱交換器の恒久的に密着した接続が絶対に必要である。さらなる部品へのネジ込みには、例えばオイルフィルタモジュール、セルフタッピングネジがしばしば使用されるが、これらをアルミニウム製ベースプレート上のはんだめっきと組み合わせると、非常に高い摩擦トルクを有するという欠点があり、その結果、締付トルクの主要部分が予圧力を発生させる代わりに、摩擦を介して失われる可能性がある。摩擦によって失われる予圧力のために、付随する漏れに関連する、緊密ではない、さらなる構成要素への接続は、結果として生じる欠陥として発生する可能性があり、特に、例えば、環境に有害な、オイルなどの物質の場合には、回避されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明は、先行技術から知られている欠点を特に克服する、改良された、又は少なくとも別の実施形態のための、一般的なタイプのベースプレートに関する課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は独立請求項1の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明は、さらなる構成部品、例えばオイルフィルタモジュールに熱交換器をネジ込む際の予圧を低減するセルフタッピングネジの頭下摩擦を防止するという一般的な概念に基づいており、金属、特に鋼製のワッシャ、すなわちベースプレートに、強固に連結されたワッシャを設けたものである。アルミニウム製の熱交換器の発明に係るベースプレートは、ネジのそれぞれの通過用の開口部が設けられたフランジを有する。ベースプレート、加えてこのベースプレートを有する熱交換器を、さらなる部品、例えばオイルフィルタモジュールへネジ込むことは、例えばセルフタッピングネジとして具現化されるこれらのネジによって行われる。ここで本発明によれば、金属、特に鋼製のワッシャが、ワッシャの開口部がベースプレートのフランジの開口部と整列するように、少なくとも1つの開口部上に固定される。「整列」とは、両方の開口部、すなわちワッシャの開口部とベースプレートのフランジの開口部とが、固定用ネジが両方の開口部を通して挿入できるように、互いに相対的に構成されることを意味する。「整列された」とは、両方の開口部が、同心であるか、同じ軸上にあるか、又は正確に前記軸上にある必要があることを意味するものではない。金属製のワッシャ、特に鋼製のワッシャを関連する開口部上にしっかりと接続することにより、セルフタッピングネジをネジ込むときにベースプレートのはんだ材料上又はベースプレートのアルミニウム材料上のヘッド下の摩擦を確実に回避することができ、この方法によってヘッド下の摩擦を減少させると同時に予圧力を増加させることができる。このようなベースプレートの大きな利点は、既に使用されているセルフタッピングネジをさらに使用することが可能であることであり、これにより、今まで使用されていた、対応する組立ロボットによるネジ供給も継続して行えるという主な利点がもたらされる。別個に把持して装着しなければならない、別個のワッシャと比較して、本発明による解決方法は、ワッシャをベースプレートのフランジに固定する動作にもかかわらず、大きな費用面での利点を提供する。
【0006】
実用上、ワッシャはベースプレートにはんだ付けされている。これは、ベースプレートのフランジへのワッシャの耐久性があり且つしっかりと固定することを可能にする一方で、これを、例えば、はんだ付け炉でのはんだ付け作業と同時に行うことを可能にするという大きな利点を提供する。この場合、ベースプレートは、例えば、積層板及び熱交換器のカバープレートにはんだ付けされる。積層板のベースプレートへの緊密な接続は、いずれにせよ、はんだ付け作業又ははんだ付け工程で行われるので、ベースプレートへのワッシャのはんだ付けは、時間的且つエネルギー的に中立な方法で熱交換器を製造するためのはんだ付け工程において一体化することができる。
【0007】
実際には、ベースプレートは、少なくとも開口部の領域において、はんだ層でコーティングされる。このようなはんだ層は、例えば、流体密の方法で積層板のような、さらなるコンポーネントを、例えば、はんだ付け炉における後のはんだ付け工程においてベースプレートに接続することができるようにするために、例えば、機械的に適用される。ここで、はんだ層は、面的に、特にベースプレートの全面積にわたって、又は後ではんだ付けが行われなければならない場所においてのみ局所的に適用することができる。局所的に適用する場合は、はんだ、したがって資源を節約することができるという大きな利点を有する。
【0008】
さらに、本発明は、熱交換器に、前述の段落に記載されたベースプレートと、ベースプレートにはんだ付けされた少なくとも1つの積層板とを装備するという一般的な概念に基づく。これは、積層板のベースプレートへのはんだ付け、又はカバープレートの積層板へのはんだ付け、及び積層板のベースプレートへのはんだ付け、及び少なくとも1つのワッシャのベースプレートへのはんだ付けが、共通のはんだ付け工程において、同時に行われ得るという大きな利点を提供し、その結果、時間の利点及びエネルギー消費に関しても利点が実質化される。この目的のために、はんだ付けフレームを使用することができ、それは同時に、ベースプレート上のワッシャの位置決めも安定する。
【0009】
さらに、本発明は、最初に、フランジを有するアルミニウム製のベースプレートであって、ネジ、特にセルフタッピングネジのそれぞれの貫通のための開口部が設けられているベースプレートが、少なくとも開口部の領域においてはんだ層でコーティングされている、熱交換器を製造するための方法に関する一般的な概念に基づいている。これに続いて、金属、特に鋼製のワッシャが、ワッシャの開口部がベースプレートのフランジの開口部と整列するようにして、開口部のうちの少なくとも1つの上に配置され、その結果、ネジを通すことができる。次いで、少なくとも1つのワッシャをベースプレートにはんだ付けする。この製造工程により、少なくとも1つのワッシャ、優先的には全てのワッシャを関連するベースプレートに極めてしっかりと確実に固定することが可能になる。
【0010】
本発明による方法の有利なさらなる発展において、少なくとも1つの積層板及びカバープレートは、ベースプレートへのワッシャのはんだ付けと同時にベースプレートにはんだ付けされる。これは、ベースプレートへのワッシャのはんだ付け、また、積層板の互い及びベースプレートへのはんだ付け、及びカバープレートの隣接する積層板へのはんだ付けの両方を同時に行うことができるという大きな利点を提供する。すなわち、共通のはんだ付け工程において、その結果、本発明に従った方法で製造された熱交換器は、短いサイクル時間でのみ製造することができず、また、省エネルギーの方法で製造することができない。
【0011】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面による関連する図面の説明から得られる。
【0012】
上述され、以下に説明される特徴は、記載されたそれぞれの組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲を離れることなく、他の組み合わせにおいて、又は単独で使用されることも理解されるべきである。
【0013】
本発明の好ましい例示的な実施形態は図面に示され、以下の説明においてより詳細に説明され、ここで、同じ参照番号は同じ、又は類似の、又は機能的に同じ構成要素に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明によるベースプレートの平面図である。
【
図2】本発明によるそのようなベースプレートを有するオイルフィルタモジュールにネジ止めされる、本発明による熱交換器である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1によれば、本発明による熱交換器2(
図2参照)のベースプレート1は、フランジ3を備えており、このフランジ3には、ネジ5、特にセルフタッピングネジのそれぞれの通過用の開口部4が設けられている。ベースプレート1自体はアルミニウムから形成されている。本発明によれば、特に鋼製の金属製のワッシャ6が、ここで、ワッシャ6の開口部7がフランジ3の関連する開口部4と整列するように、少なくとも1つの開口部4の上に固定される。ここで、「整列」とは、両方の開口部4,7、すなわちワッシャ6の開口部7とベースプレート1のフランジ3の開口部4とが、固定用ネジ5が両方の開口部4,7を通して挿入できるように互いに対して構成されていることを意味する。「整列」とは、両方の開口部4,7が同心状、同軸状、又は正確に軸線上に横たわっていなければならないことを意味するものではない。
【0016】
ベースプレート1又は前記ベースプレート1を含む熱交換器2を、さらなる構成要素、例えばオイルフィルタモジュール8(
図2参照)に接続する場合、このようなワッシャ6は、従来省略されていたので、ネジ5、特に頭部を有するセルフタッピングネジは、ベースプレート1内のフランジ3のアルミニウム又はその上に塗布されたはんだ層9を直接擦っていた。その過程で発生したベースプレート1上のはんだ層9と組み合わさったネジ5の頭下摩擦は、比較的高い摩擦トルクを引き起こし、その結果、ネジ5の予圧に利用できる代わりに、摩擦を介してネジ5の締め付けトルクの大部分が失われた。その結果、ネジ5の予荷重、したがって、ベースプレート1の他の構成要素、例えばオイルフィルタモジュール8への接続が減少し、その結果、特定の領域10において望ましくない漏れが生じる可能性があった。
【0017】
金属製のワッシャ6、特に鋼製のワッシャを用いて、本発明によるベースプレート1に固定することにより、ネジ5の頭下摩擦、特にセルフタッピングネジの摩擦を低減することができ、これにより、より高い予圧力を加えることができる。開口部4の領域で本発明によるベースプレート1に固定されたワッシャ6のさらなる利点は、ネジ送りのように、過去に使用されたネジ5のさらなる使用が可能であるという点にあり、その結果、熱交換器2をネジ止めする際の工程変更が必要とされない。あるいは、特に鋼で作られた金属製の別個のワッシャも明らかに採用され得るが、これは、付随する貯蔵及び物流コスト並びに付加的な組立ステップと共に接続される追加コンポーネントをもたらすであろう。これとは別に、過去に行われたようなネジ供給を維持することは不可能である。
【0018】
金属製のワッシャ6、特に鋼製のものは、ベースプレート1に優先的にはんだ付けされ、その目的のために、ベースプレート1が少なくとも開口部4の領域で前述のはんだ層9で被覆されている。これは、ベースプレート1のフランジ3上のそれぞれの開口部4上にワッシャ6を固定することが、熱交換器2のはんだ付け工程において一緒に行われ得るという大きな利点を提供し、その間に、カバープレート11と同様に積層板12も通常はんだ付けされる。
【0019】
ここで、本発明に係る熱交換器2は、積層板型熱交換器のように形成され、本発明に係るベースプレート1と、少なくとも1枚の積層板12と、カバープレート11とを備える。ここでは、カバープレート11が隣接する積層板12にはんだ付けされた状態で積層板12がベースプレート1にはんだ付けされる。熱交換器2の全体のはんだ付け、すなわちカバープレート11の積層板12へのはんだ付けや、積層板12のベースプレート1へのはんだ付けや、ワッシャ6のベースプレート1へのはんだ付けは、例えば、はんだ付け炉で共通のはんだ付け工程で行うことができる。
【0020】
ここで、本発明による熱交換器2は、例えば以下のように製造される。
【0021】
最初に、フランジ3を有するアルミニウム製のベースプレート1が、ネジ5のそれぞれの貫通のための前述の開口部4が設けられ、少なくとも開口部4の領域において、前述の同様のはんだ層9でコーティングされる。これは、開口部4の領域においてのみ、又は全領域にわたって局所的に行うことができる。これに続いて、金属製、特に鋼製のワッシャ6が、ワッシャ6の開口部7がベースプレート1のフランジ3の開口部4と整列するように、開口部4のうちの少なくとも1つの上に配置される。その後、ワッシャ6は、ベースプレート1にはんだ付けされるが、これは、積層板12及びカバープレート11のはんだ付けと共に、別々に又は一緒に行うことができる。
【0022】
全体として、本発明に係る熱交換器2にワッシャ6を設けることにより、例えばオイルフィルタモジュール8への締結のために設けられたネジ5に著しく高い予圧力を加えることができ、その結果、漏れのリスクを比較的容易に最小限に抑えることができる。前記工程において、ワッシャ6が熱交換器2と共同ではんだ付けされるとき、ワッシャ6のベースプレート1への固定は、わずかな追加の支出で行われ得る。ここで、以前に使用されたネジ5は、本発明によるベースプレート1と共にさらに使用することもでき、その結果、ネジ送りも変更無しで維持することができる。これにより、通常は複雑で高価な工程変更を必要としない。