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特開2023-44724熱成形用二軸配向ポリエチレン薄膜、その製造法、使用法、熱成形法及び製品
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  • 特開-熱成形用二軸配向ポリエチレン薄膜、その製造法、使用法、熱成形法及び製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044724
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】熱成形用二軸配向ポリエチレン薄膜、その製造法、使用法、熱成形法及び製品
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20230324BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20230324BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230324BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230324BHJP
   B29C 48/305 20190101ALN20230324BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20230324BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230324BHJP
【FI】
B29C55/12
B29C48/88
B29C48/08
C08J5/18 CES
B29C48/305
B29K23:00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022147505
(22)【出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】10 2021 124 259.2
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ペチャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ドゥージク
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・バース
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA16
4F071AA17
4F071AA19
4F071AA84
4F071AA88X
4F071AF08Y
4F071AF09Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF61Y
4F071AH04
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC11
4F071BC12
4F207AA03
4F207AA04
4F207AA05
4F207AA07
4F207AG01
4F207AH54
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KL84
4F207KW41
4F210AA03
4F210AA04
4F210AA05
4F210AA07
4F210AG01
4F210AH54
4F210AR01
4F210AR12
4F210AR15
4F210AR20
4F210QA08
4F210QC07
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG17
4F210QP18
4F210QW05
4F210QW12
4F210QW21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】再利用に適合する熱成形可能な極力同一種類の薄膜を提供することにある。また、高均衡重量効率の包装材を提供することにある。また、熱成形後に均衡する機械的特性の成形品を作成する均一深絞り可能な薄膜を製造することにある。
【解決手段】本発明は、薄膜の全質量に対し、ポリエチレン少なくとも75重量%且つポリオレフィン少なくとも95重量%を同時に含有する熱成形用二軸配向薄膜に関連する。応力-歪図でのポリエチレンの破断伸びは、少なくとも7であり、応力-歪図は、動的示差熱量測定を用いて、加熱速度毎分10℃で決定するポリエチレンの融点より10℃低い温度で測定される。本発明は、薄膜製造法と熱成形使用法にも関連する。本発明は、薄膜から成形品を製造する方法及び成形品自体に関連する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の全質量に対して、ポリエチレン少なくとも75重量%且つポリオレフィン少なくとも95重量%を同時に含有する熱成形用二軸配向薄膜において、
ポリエチレンの融点より10℃低い温度で測定されるポリエチレンの応力-歪図の破断伸びは、少なくとも7であり、
ポリエチレンの融点は、動的示差熱量測定法により加熱速度毎分10℃で決定されることを特徴とする熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項2】
請求項1の方法で測定されるポリエチレンの応力-歪図に示される最高応力の降伏応力は、上降伏点を示す請求項1に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項3】
ポリエチレンの応力-歪図は、下降伏点を示し、
下降伏点での歪値より高い歪値での全応力値は、降伏応力と下降伏点での応力との平均値より低い請求項2に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項4】
歪硬化は、ポリエチレンの応力-歪図に出現しない請求項3に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項5】
ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選択される請求項1~4の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項6】
薄膜の弾性率は、少なくとも800MPaである請求項1~5の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項7】
薄膜の縦方向最大収縮率は、5%であり、横方向最大収縮率は、5%である請求項1~6の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項8】
薄膜は、範囲25μm~2000μmの厚さを有する請求項1~7の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項9】
薄膜の厚さ分布2シグマ値は、15%以下である請求項1~8の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項10】
縦方向延伸比と横方向延伸比との比率範囲は、1.2~5.5である請求項1~9の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜の製造法において、
少なくとも1種の重合体溶融物から、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層を備える薄膜を押出す押出工程と、
押出した薄膜を冷却して、冷却薄膜を形成する工程と、
縦方向延伸比と横方向延伸比との比率範囲を1.2~9として、縦方向と横方向とに冷却薄膜を延伸する工程とを含むことを特徴とする薄膜製造法。
【請求項12】
延伸した薄膜を縦方向と横方向に弛緩する熱処理を行う熱処理工程を含む請求項11に記載の薄膜製造法。
【請求項13】
薄膜に使用するポリエチレンは、密度範囲0.89g/cm3~0.98g/cm3を有する請求項11又は12に記載の薄膜製造法。
【請求項14】
薄膜に使用するポリエチレンは、温度190℃、2.16kgでの流動度指数0.3~8g/10分である請求項11~13の何れか1項に記載の薄膜製造法。
【請求項15】
弛緩の程度範囲は、2%~12%である請求項12~14の何れか1項に記載の薄膜製造法。
【請求項16】
請求項1~10の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜の熱成形使用法。
【請求項17】
請求項1~10の何れか1項に記載の薄膜を熱成形により変形することを特徴とする成形品製造法。
【請求項18】
請求項11~15の何れか1項に記載の薄膜製造法により得られる薄膜を熱成形により変形する工程を含む請求項17に記載の成型品製造法。
【請求項19】
変形度範囲2~6で薄膜を成形する請求項17~18の何れか1項に記載の成型品製造法。
【請求項20】
熱成形により全体的又は部分的に二軸配向薄膜から成形される成形品において、成形品の全質量に対して、ポリエチレン少なくとも75重量%且つポリオレフィン少なくとも95重量%を同時に含むことを特徴とする成形品。
【請求項21】
請求項1~10の何れか1項に記載の熱成形用二軸配向薄膜で構成される請求項20に記載の成形品。
【請求項22】
熱成形で成形される成形品の成形される薄膜の最大厚さと最小厚さとの比率は、2以下である請求項20又は21の何れか1項に記載の成形品。
【請求項23】
米国材料試験協会(ASTM)E 96の規定により、温度30℃、相対空気湿度90%で測定される透水率は、8g/m2/日以下である請求項20~22の何れか1項に記載の成形品。
【請求項24】
国際標準化機構(ISO)15105-2の規定により、温度23℃、相対空気湿度0%で測定される酸素透過率は、4000cm3/m2/日以下である請求項20~23の何れか1項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冒頭
本発明は、薄膜の全質量(重量)に対し、少なくとも75重量%ポリエチレン且つ少なくとも95重量%ポリオレフィンを同時に含有する熱成形用二軸配向薄膜に関連する。本発明は、薄膜の製造法と使用法にも関連する。また、本発明は、薄膜からの成形品の製造法と成形品自体に関連する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向樹脂で構成される薄膜と薄膜特性は、当業者には公知である。薄膜の製造時に、溶融顆粒樹脂を押出して、流延薄膜が製造される。次に、流延薄膜に一軸延伸又は二軸延伸を行って、流延薄膜の高分子を配向させる。縦(機械又は搬送)方向延伸と横方向(縦方向に対し横方向又は直角方向)延伸との逐次延伸工程又は縦横同時延伸工程で、薄膜の延伸が行われる。例えば、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)薄膜、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BOPET)薄膜、二軸配向ポリアミド(BOPA)薄膜及び二軸配向ポリスチレン(BOPS)薄膜等の二軸配向樹脂薄膜が、産業分野で使用されている。二軸配向により分子構造を形態学的に変化させて、全厚を減少しつつ種々の下記薄膜特性を得ることができる:
・薄膜物性の変更(例えば、剛性と引裂強さの向上)
・外観上の薄膜特徴(例えば、透明度と光沢性の向上)
・遮断特性(例えば、酸素又は空気と水とに対する通過遮断特性の改善)
・包装材重量の節減/材料効率の良好な包装材
・高エネルギ効率生産。
【0003】
時間別(逐次)延伸工程又は単一(同時)延伸工程を通じて、縦横両方向の延伸が行われる。逐次延伸では、時間別に縦方向延伸と横方向延伸とが個別に行われる。通常、縦方向延伸が行われ、次に横方向延伸が行われる。
【0004】
薄膜膨張法(インフレーション法)(例えば、2軸延伸法)及びLISIM(登録商標)リニアモータ二軸薄膜延伸法、MESIM(登録商標)同時二軸薄膜延伸法等の二軸配向薄膜製造法は、同時二軸延伸法として公知である。縦延伸と横延伸を同時に行う同時二軸延伸法は、縦延伸と横延伸を順次、行う逐次二軸延伸法とは区別される。
【0005】
熱成形法は、重合体の一次変換工程である。熱成形法では、ゴム弾性域に薄膜を加熱した後、例えば、機械的に又は空気圧(例えば、真空引き)により薄膜を変形させて、薄膜表面を三次元物体に変形する。エネルギ効率と製造効率、好適な熱成形工程及び機械処理工程、多層膜薄形成工程、多孔形成事前印刷薄膜を成形できる大きな利点が、加熱加工技術にある。
【0006】
重合体変換工程では、通常、非晶質及び半結晶の重合体(ポリ塩化ビニル、流延ポリプロピレン、流延ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、二軸配向ポリスチレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等)が単量体から変換される。ポリエチレン製の複数層を含む複数の多層薄膜の形成にも応用され、例えば、ポリスチレン-エチレン-ビニルアルコール共重合体-ポリエチレン又はポリプロピレン-ポリスチレン-エチレン-ビニルアルコール共重合体-ポリエチレンの三層構造を備える共押出し多層薄膜の膨張形成法(インフレーション)がある。例えば、優れた断熱特性又は良好な遮断特性を製品に安価に導入するポリエチレン層の組合せ形成法もある。
【0007】
例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の問題は、分子配向により破断に至る伸び率が低下して発生する。これは、熱成形工程間に問題になる。従って、熱成形工程に適合する二軸延伸薄膜は、少ない。これには、二軸配向ポリスチレン及び特定条件下の二軸配向ポリプロピレンが含まれる。配向重合体の熱成形可能性の利点は、加熱時に樹脂薄膜が延伸されて、樹脂薄膜の弛緩傾向を防止する点である。薄膜に弛緩が発生すると、熱成形で形成される製品が不規則に変形する難点がある。薄膜の弛緩原因は、原料の線熱膨張にあり、例えば、ポリプロピレン流延薄膜等の薄膜種原料で問題になる現象が判明している。弛緩現象は、二軸配向ポリスチレンでは観察されない。
【0008】
他の重合体製の流延薄膜と比較して、弾性率値が非常に低く、収縮率が非常に高い(低形状安定性)流延薄膜用ポリエチレン原料もある。従って、熱成形工程に適用するポリエチレン流延薄膜は、特殊な分野に限定される。例えば、滑石を用いる熱成形により硬化される大型の泥除け材が、これに含まれる。ポリエチレンの熱成形品市場占有率は、非常に小さく、包装材市場全体の市場占有率が50%を上回るポリエチレンとは対照的である。
【0009】
収縮挙動が不均一で且つ寸法安定性が小さいポリエチレンの熱成形の問題点として、複雑な形状では、薄膜の縁領域が不規則に薄膜化して、寸法安定性が低下する難点がある。極薄薄膜を熱成形すると、薄膜の縁領域を補強する縁部には、不十分な量の材料しか残らない難点がある。熱成形工程で負荷を加えるとき、撓みが発生して、塑性変形が発生し又は材料の破損に至る可能性がある別の問題もある。ポリエチレンの有利な特性は、特に原料の価格、利用可能性、衝撃強度、多種の酸及びアルカリに対する耐薬品性等である。熱成形に実用上使用できる十分な品質の配向ポリエチレン薄膜は、これまで製造できなかった。
【0010】
略全熱成形製品の主短所は、確立された再利用循環系に熱成形製品を取込めない点にある。特に、ポリスチレン又はポリプロピレンの共重合体を有する二軸配向薄膜を使用する現行の製品(例えば、深絞用応用品)は、再利用循環系に取り込まれていない。処理費用を要する樹脂ゴミは、世界中の消費者と議員から益々批判的に見られ、大きな社会問題となっている。
【0011】
熱成形された種々の重合体品の例は、包装材(食品、医薬品)のみならず、工業分野での応用品(ボンネット、機械及び工場建設用の被覆材、商用車生産品、継手類)、消費財分野では、冷却機器を製造する応用品である。熱成形されて、高透明性で且つ高剛性の製品を製造する二軸配向ポリスチレンは、被包装製品を明確に目視できる包装に使用される。
【0012】
特許文献1は、夫々高密度ポリエチレンを含有する2内層を含む少なくとも5層を備える多層熱可塑性薄膜を開示する。多層熱可塑性樹脂薄膜の全厚さの少なくとも35%を占める2内層の実施の形態も開示する。実施例1は、高密度ポリエチレン層膜厚が薄膜厚の約2/3を占める薄膜を示す。実施例1の多層熱可塑性薄膜は、片面気泡薄膜膨張法により製造される。多層熱可塑性薄膜は、熱成形による覆い製造用に採用される。
【0013】
特許文献2は、3気泡式薄膜膨張法で製造されて、ポリオレフィン(低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む)を30%より多く含有しない多層二軸配向薄膜の製造法を開示する。
【0014】
特許文献3は、高密度ポリエチレンを含有でき、二軸配向可能且つ印刷可能な極薄薄膜と、接着剤層と、深絞り薄膜と(熱成形に使用可能)を有する三層膜薄膜を開示する。開示される深絞り薄膜も、ポリエチレンを含有するが、二軸配向可能な深絞り薄膜は開示されない。
【0015】
特許文献4は、15重量%以下のポリエチレンを含む二軸配向薄膜を開示する。特許文献5は、例えば、ポリエチレン等の発泡重合体を含有する熱成形用二軸配向ポリプロピレン薄膜を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第3152128B1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/020030A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005041134A1号明細書
【特許文献4】欧州特許第1395415B1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1876010A1号明細書
【特許文献6】独国特許公報第19705796C2号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102019119293A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、再利用に適合する熱成形可能な極力同一種類の薄膜を提供することにある。得られる薄膜は、従来の熱成形用薄膜よりも安価でしかも極力安価に製造できることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、酸素、空気及び水に対して極力好適な透過遮断性を有する薄膜を提供する。薄膜は、極力高弾性率を有することが好ましい。薄膜から製造される製品は、極力高形状安定性を有することが好ましい。本発明の別の課題は、熱成形後に均衡する機械的特性を有し且つ均一深絞り可能な薄膜の製造法を提供することにある。本発明の別の課題は、熱成形法に適合する形態のポリエチレン薄膜を提供することにある。更に、本発明の課題は、高均衡重量効率の包装材を提供することにある。また、高エネルギ効率の包装材の製造法を提供することにある。
【0019】
その上、本発明の課題は、熱成形後に均衡する機械的特性の成形品を作成する均一深絞り可能な薄膜を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
二軸配向ポリエチレン薄膜
本発明は、熱成形用二軸配向薄膜の全薄膜質量(重量)に対し、少なくとも75重量%ポリエチレンと、少なくとも95重量%ポリオレフィンとを同時に含有することを特徴とする薄膜に関する。本発明の薄膜を良好に熱成形工程で処理できる。
【0021】
効果
本発明の薄膜を二軸配向させて、剛性、引裂強さ及び弾性率を増加させて、薄膜の物理的特性を向上する。二軸配向を行う延伸工程を通じて、延伸比に応じて薄膜の弾性率を2倍以上に増大する。延伸処理により、薄膜の密度は、低下する。本発明の薄膜から製造される成形品は、同一組成の無配向ポリエチレン-流延薄膜から製造される成形品(無配向ポリエチレン流延薄膜の成形品を製造する限り)よりも、同一の厚さで高強度と高引裂強さを有するので、少量の材料で、十分に高い剛性の成形品を製造できる。物理的特性変化は、熱成形にも有利である。
【0022】
本発明の薄膜製造法で製造する薄膜から製造される成形品は、高穿孔抵抗性を有する。縦方向延伸と横方向延伸の二軸延伸工程は、薄膜全体に均質な特性を付与して、より均質な特性の成形品を薄膜から製造できる。特に、一軸延伸した薄膜と比較しても、この利点がある。厚さ分布も、無配向薄膜又は一軸配向薄膜より顕著に良好である。同様の作用・効果により、薄膜の加工性も向上する。
【0023】
延伸工程により透明度と光沢が増加し、濁度が低下して、薄膜の外観特徴も改善されるので、本発明の薄膜は、内容物を明確に視認する包装材等に特に適合する。酸素と空気に対する薄膜の透過遮断性は、延伸工程により改善する。また、物理的特性に優れる本発明の薄膜を熱成形用二軸配向薄膜に使用すると、製品の重量を節減できる可能性がある。例えば、延伸後に包装材用薄膜面積が増大するため、同一量の薄膜材料を使用すると、良好な重量効率(軽量)の包装材を実現し、更に、本発明では、延伸工程により、省エネルギ、即ち高エネルギ効率で良好な特性の薄膜を生産できる。熱成形用二軸配向薄膜に適合する同一組成のポリプロピレン製又はポリスチレン製の二軸配向薄膜と比較して、例えば、安価な原料、高利用可能性、耐衝撃性、酸と塩基への良好な耐薬品性等、本発明の薄膜は、ポリエチレンの使用に起因する全利点が得られる。
【0024】
本発明の薄膜の他の利点は、熱成形工程での薄膜の加熱延伸により、薄膜が弛緩する傾向がない点である。
【0025】
別途説明がない限り、本明細書に記載する全重量%比率を、全質量(重量)に対する薄膜の値として示す。熱成形工程時に、薄膜は、変形され、引延し時と同様に、薄膜に一種の不規則な延伸が発生する。薄膜製造時の延伸には、本発明では同一の意味を持つ動詞「延伸する」又は「配向する」の何れかの命名法を薄膜引延し時の延伸に使用する。熱成形時の成形又は延伸には、動詞「変形する」(特に「成形され」等の形態も)を使用して、薄膜引延し時の延伸と明確に区別する。
【0026】
本発明の薄膜製造法で採用する薄膜にはポリエチレン比率が高いため、ポリエチレンの再利用循環に薄膜成形品を供給できる。これは、高ポリエチレン比率の実質的な利点であり、薄膜と薄膜成形品の生産時に発生する薄膜廃棄物を、良好な価格効率で再利用できる。高価な廃棄物処理工程も不要になる長所もある。また、本発明の薄膜から製造する成形品は、再利用不能な樹脂製品への制限を受けないため、消費者及び商取引に歓迎される。
【0027】
組成
完全にポリエチレンのみで構成する100重量%ポリエチレンを含有する本発明の薄膜を構成できる。尤も、薄膜は、少なくとも75重量%のポリエチレンを含有する必要がある。本発明の薄膜製造法では、ポリエチレンを95重量%未満含有するポリエチレン薄膜を採用する場合、少なくとも十分な量の他のポリオレフィンを含有して、ポリオレフィン(ポリエチレンを含む)の全質量(重量)分率の合計を少なくとも95重量%に設定しなければならない。ポリエチレンは、ポリオレフィンの一種である点を本明細書で明確に強調すべきである。本発明の薄膜は、少なくとも85重量%のポリエチレン含有量が好ましく、少なくとも90重量%のポリエチレン含有量が特に好ましい。少なくとも95重量%のポリエチレン含有量が本発明の薄膜に最適である。本発明の全薄膜は、ポリエチレンの略全ての循環再利用規則に適合する。
【0028】
用語「ポリエチレン」には、単独重合体も、共重合体(単量体として、エチレン以外に、共重合用単量体として他のオレフィンを6重量以下、好適には5重量%以下含有する)も該当する。3重量%以下、最適には、0.1~3重量%範囲量で他のオレフィンを含有する共重合体が良い。前記量表示は、夫々共重合体の全質量(重量)に対する値である。オレフィンの炭素数は、C3~C20が好ましい。また、オレフィンは、α-オレフィンが好ましい。特には、炭素数C3~C20のα-オレフィンが好ましい。プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群から選択されるα-オレフィンが好ましく、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択されるα-オレフィンが特に好ましい。利用可能な共重合用単量体は、例えば、環状オレフィンが挙げられる。また、共重合用単量体は、官能基を含有するオレフィンでもよい。オレフィンは、ジエン、芳香族オレフィン、カルボン酸基を含有するオレフィン、エステル基を含有するオレフィン及びシアン化物を含有するオレフィンからなる群から選択される。例えば、ブタジエンをジエンとして挙げられる。適切な芳香族オレフィンの一例は、スチレンである。カルボン酸基を含有するオレフィン及びエステル基を含有するオレフィンの例としては、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル並びにマレイン酸を挙げることができ、後者が好ましい。しかし、酸素原子以外のヘテロ原子を含有する単量体は、不適当である。
【0029】
本発明の薄膜製造法に使用する薄膜のポリエチレン含有量を記載する意味では、本明細書に記載するポリエチレン共重合体は、ポリエチレン含有量に完全に包含される。従って、本発明では、例えば、ポリエチレン共重合体を75重量%含有し且つエチレン単量体を含有するが、更なる重合体を含有しないポリエチレン薄膜は、ポリエチレンを75重量%含有するポリエチレン薄膜に該当する。
【0030】
また、複数の異なるポリエチレン単独重合体を含有する混合物又は複数の異なるポリエチレン共重合体からなる混合物も使用できる。また、1種以上のポリエチレン単独重合体と1種以上のポリエチレン共重合体との混合物を使用できる。
【0031】
高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリエチレンを含有する本発明の薄膜が好ましい。高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリエチレンを含有する本発明の薄膜は、特に好ましい。高密度ポリエチレンを含有する本発明の薄膜が、特に好ましく、ポリエチレンのみを含有する本発明の薄膜がより好ましい。
【0032】
本発明の薄膜は、ポリエチレンに加えてそれ以外に含有するポリオレフィンは、任意のポリオレフィンでよい。α-オレフィンを単量体として含有するポリオレフィンが好ましいが、単量体としてα-オレフィンのみを含有するポリオレフィンが好ましい。ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリヘキセン及びポリオクテンからなる群から選択されるポリオレフィンが好ましい。また、ポリオレフィンは、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルからなる群から選択されるポリオレフィンでよい。本発明の薄膜製造法の薄膜中にポリエチレンに加えるべきポリオレフィンは、1種又は複数種のポリエチレンとの混合物(複数種の共存)で配合し又は例えば他の複数層内に別途採用できる。これらは、例えば、ポリエチレン薄膜の個別層として混合物を使用できる。
【0033】
また、チーグラー・ナッタ触媒重合反応で製造されるポリエチレンも好ましい。懸濁重合反応で製造されるポリエチレンも好ましい。チーグラー・ナッタ触媒重合反応で製造される懸濁液のポリエチレン、特にこの方法により製造される高密度ポリエチレンが最適である。
【0034】
本発明の二軸配向薄膜は、熱成形工程への対応に適合する。分子配向(延伸又は引延しとも言う)して薄膜の物理的特性を改善して、熱成形工程への適性を改善できる。薄膜の延伸と熱成形とは類似の工程である。延伸時に多少の変形可能な温度に薄膜を加熱し、縦方向及び/又は直角な幅方向に薄膜が延伸される。薄膜素材の可塑特性により、薄膜の形状(縦、幅及び高さ)が変化する。薄膜の変形は、実質的に薄膜全体に規則的である。熱成形時に、変形可能な温度に薄膜を加熱し、その後一表面に対し垂直方向、即ち厚さ方向に押圧力を作用して、薄膜を変形する。薄膜の変形時にも、薄膜材料は延伸されるが、薄膜表面の平面内で不規則には延伸されない。薄膜の特定の部位は、強く変形(延伸)し、他の部分は僅かに変形するか又は全く変形しない。しかし、図3に示す応力-歪図から各ポリエチレンの破断伸びとして読み出す材料特性から、ポリエチレンの伸び(配向)範囲は、制限される。本発明の薄膜は、大きい破断伸び特性を持つことにより、熱成形時に大幅に延伸される薄膜箇所での亀裂の発生を防止すべきである。そこで、分子配向と熱成形とを行うポリエチレンの融点より僅かに低い温度での破断伸び量が重要である。本発明の薄膜に加える破断引張力に対する縦方向と横方向との延伸比で図3に示す応力-歪図において、ポリエチレンの破断伸び(縦方向対横方向延伸比)の少なくとも7を特徴とし、ポリエチレンの融点より10℃低い温度で応力-歪図を測定し、加熱速度毎分10℃で動的示差熱量を測定して融点が決定される。図3において、特に好ましい破断伸びは、少なくとも8、極めて特に好ましい破断伸びは、少なくとも9である。元試料長さの倍数で破断伸びを示す実験結果を図3に3種の異なるポリエチレンの応力-歪図を表示する。延伸比7に満たない約3.7で亀裂が発生するC型のポリエチレン薄膜は、本発明の特徴を満たさないことは図3から理解できよう。延伸比が約10.7のA型ポリエチレン薄膜と、延伸比約9で亀裂が発生するB型ポリエチレン薄膜は、何れもポリエチレン薄膜の破断伸び9以上を有する。
【0035】
本発明者らの研究の結果、応力-歪図の可塑性域で大きい歪を発生しても、特に本発明に適合するのは応力変化が極力小さいポリエチレンであることが判明した。熱成形時に外力を薄膜に作用するとき、応力変化が大きいと、異なる壁厚、特に非常に薄い壁厚が形成される可能性があり、また、応力変化が過度に大きいと、亀裂が発生する可能性もある。従って、応力-歪図で略線形可塑性域特性を示すポリエチレンを使用することが好ましい。略線形可塑特性は、特に強靭なポリエチレンに見られる(図3のA型とB型ポリエチレン)。A型とB型ポリエチレンは、塑性変形が始まる降伏点に到達した後に、応力が多少低下する。その後、A型とB型の曲線は、通常少なくとも部分的に略直線的な経過を示す。従って、本発明の薄膜は、前記測定法によりポリエチレンの応力-歪図に最大応力の上降伏点を示すことを特徴とすることが好ましい。降伏応力は、図3に示す降伏点での応力である。C型は、降伏点を示さないが、A型とB型は、降伏点を示す。B型は、降伏応力を上回るより高い複数の歪での応力を示す。B型とは異なり、応力-歪図に降伏応力を超える別の応力を示さないA型は、本発明の薄膜に特に適合する。
【0036】
ポリエチレンの応力-歪図での応力が、降伏応力(降伏点での歪)よりも大きい値でも、応力が更に増加せず又は僅かに増加する場合が特に有利である。降伏点後の何れかの延伸比で応力が増加すると、図3のA型ポリエチレンとB型ポリエチレンが示すように、曲線は、反転点となる下降伏点を示す。下降伏点を示す型の応力増加を応力歪硬化と称する。この場合、ポリエチレン応力-歪図に表示される下降伏点での歪よりも高い歪値に対する全応力値が、降伏応力と下降伏点に対する応力平均値よりも低いことが本発明の薄膜に好ましい。
【0037】
ポリエチレンの応力-歪図に歪硬化が表示されない本発明の薄膜がより好ましい。この種の薄膜は、応力-歪図に上降伏点を示すが、下降伏点を示さないから、降伏歪より高い歪では、応力増加は生じない。
【0038】
物理的特性
弾性率800MPaを有する本発明の薄膜が好ましい。少なくとも1000MPa弾性率がより好ましく、特に好ましくは弾性率少なくとも1100MPaである。殆どの熱成形工程への適用には、高弾性率が有利である。高弾性率の薄膜は、製造した成形品に、高強度と剛性以外に、所望の形状に成形品を形成し且つ維持するのに重要な高形状安定性を付与する。
【0039】
最大5%、好適には最大3%、特に好適には最大2%の縦方向熱収縮率を有する本発明の薄膜が、好ましい。また、最大5%、より好適には最大3%、最適には最大2%の横方向熱収縮率を有する本発明の薄膜が好ましい。更に、最大5%、特に好適には最大3%、最適には最大2%の縦方向熱収縮率も横方向熱収縮率を有する本発明の薄膜が好ましい。収縮結束装置(BMS TT 0.9)により、温度100℃で、熱収縮率を5分間測定した。
【0040】
本発明の薄膜の厚さ範囲は、25μm~2000μmであり、特に好適な厚さ範囲は、100μm~2000μmで、より好適な厚さ範囲100μm~1000μm、最適厚さ範囲は、150μm~500μmである。ドイツ工業規格53370に従って、各薄膜厚を測定した。より薄い複数の二軸配向薄膜を薄層化して、より大きい薄膜厚も得られる。前記厚さの薄膜から、略全工業用途に使用される厚さの成形品を熱成形工程により形成できる。本発明の薄膜の薄膜厚分布の2シグマ値は、15%以下が好ましく、より好ましくは、10%以下であり、更に好ましくは、7%以下で、最適には5%以下である。
【0041】
本発明の薄膜幅は、好ましくは範囲10cm~50cmで、特に好ましくは範囲20cm~30cmである。
【0042】
本発明の好適な実施対象は、熱成形用二軸配向薄膜であり、この薄膜は、薄膜全質量(重量)に対して、ポリエチレン少なくとも75重量%と、ポリオレフィン少なくとも95重量%とを同時に含有し、ポリエチレンは、応力-歪図で、破断伸び少なくとも8を有し、ポリエチレンは、応力-歪図に上降伏点を有し、降伏応力は、応力-歪図での最高応力であり、薄膜は、範囲25μm~2000μmの厚さを有し、厚さ分布2シグマ値は、10%以下であり、縦方向収縮率と横方向収縮率は、最大5%であり、縦方向延伸比と横方向延伸比は、範囲1.2~5.5内であり、応力-歪図は、ポリエチレン融点より10℃低い温度で測定され、加熱速度毎分10℃の動的示差熱量測定法により融点を決定する。
【0043】
本発明の別の好適な実施対象は、熱成形用二軸配向薄膜であり、この薄膜は、薄膜全質量(重量)に対して、ポリエチレン少なくとも80重量%と、ポリオレフィン少なくとも95重量%とを同時に含有し、ポリエチレンは、応力-歪図で少なくとも8の破断伸びであり、ポリエチレン応力-歪図は、
(1) 上降伏点と下降伏点とを有し、下降伏点での歪よりも高い歪値での全応力値は、降伏応力と下降伏点での応力との平均値よりも小さく、又は
(2) 上降伏点を有し、歪硬化を表示しない
かの何れかであり、薄膜は、範囲25μm~1000μmの厚さを有し、厚さ分布2シグマ値は、7%以下、縦方向収縮率と横方向収縮率は、最大3%であり且つ縦方向延伸比と横方向延伸比は、範囲1.2~5.0内であり、応力-歪図は、ポリエチレン融点より10℃低い温度で測定され、加熱速度毎分10℃の動的示差熱量測定を用いて融点が決定される。
【0044】
本発明の他の好適な実施対象は、熱成形用二軸配向薄膜であり、この薄膜は、薄膜全質量(重量)に対して、ポリエチレン少なくとも80重量%とポリオレフィン少なくとも95重量%とを同時に含有し、応力-歪図でのポリエチレンの破断伸びは、少なくとも9である。但し、ポリエチレンの応力-歪図は、下記の何れかである。
(1) 上降伏点と下降伏点とを有し、下降伏点での歪よりも高い歪値での全応力値が、降伏応力と下降伏点における応力の平均値よりも小さい、又は、
(2) 上降伏点を有し、歪硬化を表示せず、薄膜は範囲150μm~500μmの厚さを有する。
厚さ分布2シグマ値は、5%以下であり、縦方向収縮率と横方向収縮率は、最大2%であり、縦方向延伸比と横方向延伸比は、範囲1.2~3内であり、応力-歪図は、ポリエチレン融点より10℃低い温度で測定され、融点は、加熱速度毎分10℃で、動的示差熱量測定を用いて決定される。
【0045】
1層以上の層を備える本発明の薄膜は、複数の単層膜薄膜又は複数の多層膜薄膜を構成する。薄膜は、9層以下が好ましい。好適な薄膜例を以下説明する。
【0046】
(i) 同一型、同一種類、類似種類の薄膜
本発明の薄膜を構成する重合体は、ドイツ欧州国際標準化機構(DIN EN ISO)11469に規定される樹脂及び樹脂製品と同一型、同一種又は類似種が好ましい。好適な重合体は、純粋な高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びそれらの混合物からなる群から選択される。高密度ポリエチレンのみ又は直鎖状低密度ポリエチレンのみを含む本発明の薄膜が特に好ましい。同一型又は同一種の重合体のみを含有する本発明の薄膜は、良好に再利用に資する。
【0047】
(ii) 金属化保護膜と金属化薄膜
本発明の薄膜を金属化して、本発明の薄膜の透過遮断性及び/又は外観特性及び/又は追加特性を改善することができる。本明細書では、金属化は、薄膜の両外層の少なくとも一方の外側面に塗布される金属層又は金属酸化物層と理解される。外側のポリエチレン層上に、高表面エネルギ層を塗布して、金属層又は金属酸化物層(金属化層という)の付着性を改善することが好ましい。例えば、ポリアミド層、ポリウレタン層、エチレン-ビニルアルコール共重合体層、表面処理が施された三元重合体層、ポリエチレンテレフタレート層及びコロナ処理、プラズマ処理又は火炎処理等の表面処理を施した二軸配向ポリプロピレン層からなる群から金属化層を選択することができる。他の適切な層は、当業者に公知である。高表面エネルギ層上に、金属層又は金属酸化物層が塗布される。薄膜の例示的外層構造は、高密度ポリエチレン外層、高密度ポリエチレン基材層及び高表面エネルギを有する付加的外層を備え、後者は、ポリウレタンを含有することが好ましい。薄膜の他の実施の形態では、高密度ポリエチレン製基材層と高表面エネルギ外層との間に接着促進剤を含有する中間層が挿入される。マレイン酸を単量体として含有する重合体、塩素化ポリオレフィン、アシル化ポリオレフィン、シラン接着促進剤及び有機金属接着促進剤からなる群から接着促進剤を選択できる。接着促進剤は、マレイン酸を単量体として含有する重合体、例えばエチレン-マレイン酸共重合体が好ましい。
【0048】
(iii) 添加剤配合薄膜
本発明の薄膜には、複数の助剤を配合できる。α核剤等の核剤、薄膜接着防止剤、接着促進剤、分散剤、安定化剤、潤滑剤、帯電防止剤、固体可塑剤、活性化剤、促進剤、経年劣化防止剤、焼焦防止剤、結合剤、耐熱剤、開始剤、重合触媒、乳化剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、火炎保護剤、離型剤、修正剤、澄まし剤及び曇り止め剤からなる群から助剤を選択できる。分散剤は、高配合比率の充填剤(例えば、薄膜接着防止剤)の薄膜を延伸可能にして、円滑な表面が形成される。助剤を配合するとき、本発明の薄膜では、薄膜全質量(重量)に対し、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満の助剤を配合することが好ましいが、少なくとも0.1重量%、好ましくは1重量%助剤を配合することができる。ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスからなる群から薄膜に配合する増量剤を選択することが好ましい。ポリプロピレンワックスが好ましい。例えば、Licocene(登録商標)(クラリアント(Clariant)社、ドイツ、フランクフルト/マイン在)型市販ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスが適合する。
【0049】
薄膜の例示的実施の形態は、高密度ポリエチレンを含有する両外層と高密度ポリエチレンを含有する内側基材層とを備える三層膜構造薄膜である。重合体として高密度ポリエチレンのみを含有する三層が好ましい。前記薄膜に含まれる重合体は、薄膜を容易に再利用できる同一型又は同一種である。三層の1層以上に、複数の助剤を配合できる。
【0050】
(iv) 着色薄膜
複数の着色剤を配合する本発明の複数の薄膜を、特定の用途又は要件に個別に適合することができる。例えば、白色薄膜は、印刷用下地を節約できる利点がある。また、異なる印刷領域を薄膜に形成して、薄膜を印刷する際に色を節約できる。また、対応する印刷された薄膜に比べ、着色薄膜を通常良好に再利用できる。樹脂用着色剤(カラーマスターバッチ)を含有するポリエチレン製の単一層膜薄膜を例示的な構造として挙げられる。また、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレン(好ましくは高密度ポリエチレン)を含有し且つ両外層の一方又は双方が樹脂用着色剤を含有する三層膜薄膜を挙げられる。好適な色は、白である。
【0051】
(v) 不透明薄膜
本発明の薄膜の少なくとも一層には、多孔が設けられ又は形成される。柔軟性のある繊維を含む本発明の薄膜は、製袋充填機(熱接着性の巻取包装材料から製袋する工程で内容物を充填し、口を封じ、切断する形式の包装機)への利用に理想的に適合する。また、本発明の薄膜は、高光沢性、低透水率を有し、軽量であり、直接印刷でき、少量のポリエチレンで製造できる利点がある。造孔粒子(造孔剤、発泡剤)を添加して、多孔薄膜を生成できる。発泡剤、造孔粒子として、例えば、炭酸カルシウム、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド-6及びこれらの材料の混合物からなる群から選択される材料を配合できる。前記材料で造孔粒子を構成することが好ましい。炭酸カルシウム粒子を含有する多孔層が好ましい。本発明の薄膜には、薄膜全質量(重量)の5重量%まで造孔粒子を配合できる。
【0052】
高密度ポリエチレンを含有する多孔性基材層を持つ5層構造が本発明の適切な実施の形態である。直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物及び着色剤を含有する被覆層が基材層の両表面の夫々に設けられる。基材層の外側表面には、直鎖状低密度ポリエチレンと着色剤とを含有し得る外層が夫々設けられる。高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物を含有する被覆層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する外層と、高密度ポリエチレンを含有する基材層との間の接着促進剤として機能する。全層に白色の着色剤を使用することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン製外層を有する薄膜は、更に変更を加えずに密閉性が得られる。
【0053】
(vi) 低密度薄膜
本実施の形態でも、本発明の薄膜は、少なくとも一層が多孔性で形成される。本発明の薄膜は、製袋充填機への利用に理想的に適合する。同一寸法で無孔の薄膜と比較して、多孔性薄膜は、軽量である。多孔性構造は、材料の節約と、費用の節減に直結する。多孔性薄膜の例示的構造は、多孔性高密度ポリエチレン基材層で構成され、薄膜の所望の密度に応じて、基材層の全質量(重量)に対して5重量%~25重量%の造孔粒子(造孔剤)を含有し、本実施の形態では、薄膜全質量(重量)に含めて造孔粒子を算定しない。前記列挙材料から造孔材料を選択できる。基材層の両面の各々に、高密度ポリエチレンを一層塗布して得られる薄膜は、透水率が低く、直接印刷できる。
【0054】
(vii) エチル-ビニルアルコール共重合体及び/又はポリアミドを含有する防護層を備える薄膜
本実施の形態の薄膜は、エチル-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される重合体を含有する1層以上の防護層を含む。ポリアミドは、ポリウレタンでもよい。本例の薄膜の利点は、水と酸素の拡散に対する良好な防護作用が得られる点にある。貫入抵抗(耐破壊性)も改善する。
【0055】
本例の薄膜の一例として挙げられる高密度ポリエチレン製の基材層を備える7層膜薄膜は、接着促進剤を含む初層を基材層の片面に塗布し、エチル‐ビニルアルコール‐共重合体、ポリアミド又はそれらの混合物を含む防護層となる第二層が初層上に塗布される。接着促進剤を含有する第三層が第二層上に新たに塗布されて最終的に直鎖状低密度ポリエチレンを含有する薄膜の外層が更に、第三層上に塗布される。高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含む混合物層を含む初層が基材層の他面に塗布され、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する薄膜の外層が初層上に再び塗布される。
【0056】
(viii) 共押出製造可能溶封可能な薄膜
本例の薄膜は、薄膜全質量(重量)に対して、少なくとも70重量%、好適には少なくとも80重量%、最適には少なくとも85重量%の基材層を有する。基材層は、高密度ポリエチレンを含有し、高密度ポリエチレンを好適には少なくとも80重量%、特に好適には少なくとも90重量%、より好適には少なくとも95重量%含有し、最適には、基材層は、高密度ポリエチレンで構成される。高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとを含有する混合物層が、基材層の少なくとも片面上に塗布される。混合物層上に塗布される薄膜の外層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む。従って、薄膜は、少なくとも3層膜を含む。薄膜は、外層により確実に溶封(ヒートシール)可能になる。前記混合物を含有する混合物層は、基材層と外層との間の接着促進剤となる。また、混合物を含む混合物層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含む外層とを、基材層の両面に塗布して、薄膜を5層膜で構成してもよい。
【0057】
前記薄膜は、追加の処理を行わずに密封表面を形成して、製袋充填機で機械加工を行える利点がある。高密度ポリエチレン層のみを有する薄膜に比べ、薄膜を溶封可能にする多層薄膜成形工程を実施する必要がない。また、単一の共押出工程により簡単に薄膜を製造できる。
【0058】
(ix) ポリエチレン以外のポリオレフィンを含有する外層を備える薄膜
特定の比率でポリオレフィンを含有する薄膜は、同一種薄膜として多くの再利用系で認識される。また、ポリエチレンとは異なるポリオレフィンは、熱安定性が増加し又は薄膜に異なる特性を付与できる利点がある。本発明の薄膜は、例えば、次の構造を備える。ポリエチレンと少なくとも2種の異なるオレフィン共重合体との混合物を含有する層が、ポリエチレン製基材層の片面に塗布される。ポリエチレンポリオレフィン共重合体混合物を備える層上に、少なくとも2種の異なるオレフィン共重合体を含む薄膜の外層が塗布される。前記混合物を含む層中で使用したのと同一の共重合体を、共重合体として、使用することが好ましい。所望の特性を薄膜に付与する任意の各重合体が共重合体として対象である。これに三元共重合体を使用してもよい。共重合体は、エチレン、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有することが好ましい。共重合体は、前記群から選択される単量体のみを含有することが好ましい。尤も、共重合体は、5重量%以下の他の単量体を含有してもよい。アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン及びマレイン酸からなる群から他の単量体を選択することが好ましい。
【0059】
基材層の他面は、薄膜の外側面であり又は同一層構造を両面に塗布してもよいが、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物を含有する混合物層を基材層の他面に塗布し、混合物層の上に再び直鎖状低密度ポリエチレンからなる外層を塗布することが好ましい。この薄膜は、更に溶封可能であり包装用途に理想的である。
【0060】
(x) 高密度ポリエチレン-直鎖状低密度ポリエチレン混合物
高密度ポリエチレンも直鎖状低密度ポリエチレンも特に本発明の薄膜への採用に好ましい。薄膜構成層に共に採用する高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンの各量を変更して、種々の特性を薄膜に設定できる。高密度ポリエチレンの配合比が高いと、弾性率と収縮率等の機械特性を改善できる。直鎖状低密度ポリエチレンの配合比が高いと、外観、貫入抵抗及び耐亀裂性等の意匠特性と機械的特性が改善される。また、ポリエチレン混合物の使用により、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの相互接着性を改善して、高密度ポリエチレン層と直鎖状低密度ポリエチレン層とを単一の薄膜に使用すると、両ポリエチレン層間の接着性を向上できる。
【0061】
ポリエチレン混合物層を有する薄膜は、高密度ポリエチレンを含有する基材層を備える。高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとを含有する混合物を含むポリエチレン層が基材層の少なくとも片面に塗布される。直鎖状低密度ポリエチレンを含有する外層が薄膜のポリエチレン層に塗布されるので、この薄膜は、少なくとも3層膜を備える。直鎖状低密度ポリエチレン外層を、溶封可能に実施できる。混合物を含有す混合物層は、基材層と外層との間を接着する促進剤として機能する。混合物層と直鎖状低密度ポリエチレンを含有する外層とを基材層の両面に塗布してもよい。その後、薄膜は、好適な5層膜薄膜を構成する。この例は、特に好ましい。
【0062】
(xi) 被覆処理薄膜
被覆処理薄膜は、少なくとも一方の外層をある材料で被覆処理した薄膜である。その意味では、被覆処理は、薄膜の押出生成される被覆処理ではないと理解すべきである。被覆処理は、溶融物を押出して冷却した後の薄膜の製造工程時に塗布し又は別個の方法で完成した薄膜に塗布してもよい。例えば、表被覆処理又は工程内被覆処理により被覆を塗布できる。通常、少量の材料を薄く塗布して、被覆処理を完了できる。従って、被覆処理される薄膜は、通常再利用に適する。被覆処理は、薄膜に種々の特性付与に役立ち、例えば、水と酸素の透過遮断性を著しく改善する。これにより、良好な遮断性を有する再利用可能な薄膜を製造する可能性が生ずる。被覆処理材料は、通常ポリオレフィンではなく、例えば、ポリウレタンである。
【0063】
薄膜の適切な構造例として、高密度ポリエチレンを含む基材層と、基材層の少なくとも片面に塗布される接着促進剤(例えば、三井社製Admer)層と、接着促進剤層上に塗布される被覆処理層とを備える薄膜を挙げることができる。高密度ポリエチレンを含有する別層で基材層の両表面を覆うことが好ましい。その後、基材層の別層の少なくとも一方の表面に、接着促進剤と被覆処理とを塗布して好適な5層膜薄膜が形成される。尤も、基材層上に塗布される両高密度ポリエチレン層の表面にも接着促進剤と被覆処理とを塗布することもできる。
【0064】
(xii) 多層薄膜成形
押出成形では得られない又は得られ難い種々の好適な特性が薄膜にある。この目的で、本発明の薄膜を多層薄膜に更に成形加工して、好適な特性を有する本発明の薄膜に形成できる。接着剤多層薄膜成形法、押出多層薄膜成形法、熱ロール多層薄膜成形法及びこれら以外の当業者に周知の他の方法で得られる積層体を製造できる。積層体は、基層として本発明の薄膜を少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも95重量%を構成し、対応して他の材料を含有する付加層を25重量%未満、好ましくは5重量%未を満構成する。例えば、多層薄膜成形される薄膜を密封する低密度ポリエチレン膨張薄膜を他の多層薄膜成形層として使用できる。また、積層体は、ポリオレフィン以外の材料、特にポリエチレン以外の他の材料を5重量%配合してもよい。特に、良好に深絞り可能な薄膜を形成する配合材料を使用できる。配合材料は、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体からなる群より選択される重合体でよい。例えば、本発明の薄膜の透過遮断性又は表面特性の修正に前記重合体を採用できる。尤も、本発明の積層体は、熱成形を促す二軸配向重合体を少なくとも75重量%含む必要がある。
【0065】
所望の薄膜は、例えば、二軸配向高密度ポリエチレン製の基材層と、基材層上に多層薄膜成形する(無配向)直鎖状低密度ポリエチレン膨張薄膜とを有する。熱成形後に、薄膜は、機密封止構造を形成する。
【0066】
(xiii) 本発明の種々の薄膜積層体
本発明の薄膜、特に(i)~(vii)に列挙する本発明の薄膜は、互いに多層薄膜を成形して、押出工程では薄膜に付与できない種々の複数の組合せ特性を帯有する。
【0067】
例えば、二軸配向高密度ポリエチレン製の基材層と、基材層上に多層成形される二軸配向直鎖状低密度ポリエチレン薄膜とを備える多層薄膜でよい。この多層薄膜を用いて熱成形後の機密封止構造を形成できる。
【0068】
本明細書で使用する用語「高密度ポリエチレン薄膜」、「直鎖状低密度ポリエチレン薄膜」、「高密度ポリエチレン層」及び「直鎖状低密度ポリエチレン層」等は、何れも重合体を含有する層、重合体製薄膜又は重合体製層を意味する。なお、前記全(i)~(xiii)では、特定の重合体(例えば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂等)を含有する層は、別途明記しない限り、当該重合体製の場合も含む。これらは、別途記明記しない限り、本発明の全薄膜に関する好適な実施の形態である。
【0069】
二軸延伸ポリエチレンの製法
本発明の他の実施対象は、下記工程を含む本発明の薄膜製造法である:
・少なくとも1種の重合体溶融物から、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層を備える薄膜を押出す工程と、
・押出される薄膜を冷却して薄膜を形成する工程と、
・縦方向延伸比範囲1.2~9と横方向延伸比範囲1.2~9で冷却した薄膜を縦方向と横方向とに延伸する工程。
【0070】
本発明の薄膜製造法を以下詳しく説明する。
【0071】
(1) 組成と用量
本発明の薄膜の製造に使用する原料は、それら自体を準備し又は薄膜の製造時に、押出機又は混合機内の原料に複数の添加剤を混合して製造できる。原料として好適な顆粒樹脂が採用される。各層毎に独自の原料を準備して複数の層を有する薄膜を製造できる。所望の厚さの各層に対応して、原料は、個別に投与される。
【0072】
薄膜製造法に使用するポリエチレン組成は、本発明の薄膜に関する前記比率に該当する。本発明の薄膜製造法に使用するポリエチレン密度範囲は、0.89g/cm3~0.98g/cm3、特に好適には0.91g/cm3~0.97g/cm3が好ましい。
【0073】
本発明の薄膜製造法に採用するポリエチレンの溶融流動度指数(MFI)(温度190℃、2.16kg)の好適な範囲は、0.3~8g/10分、より好適には0.7~5g/10分、最適には0.7~3g/10分である。
【0074】
本発明の薄膜製造法による流延薄膜厚さは、好適には300μm~5000μm、特に好適には500μm~3000μmである。
【0075】
(2) 押出し
単数若しくは複数の原料又は必要な添加剤は、押出機に供給される。これらを押出機内で混合し溶解させる。1層のみの薄膜を押出す押出機は、1台のみ必要である。複数層の薄膜を製造するとき、通常独自の押出機を使用して、各層を押出す。同一組成の複数層を形成するとき、同一の顆粒樹脂から複数層を製造し、その後、複数層の2層以上の材料を、同一の押出機から押出すことができる。単一の押出機から同一組成を有する複数の全層を押出してもよい。任意様式の各押出機を採用してもよい。単軸押出機、縦続(カスケード)押出機及び二軸押出機からなる群から単一又は複数の押出機を選択することが好ましい。例えば、バスク混錬機又は遊星歯車ロール押出機等の他の混合機と精製機を使用できる。押出機の動作温度範囲は、好適には180℃~280℃、特に好適には200℃~260℃、最適には230℃~250℃である。
【0076】
(3) ノズルと冷却ロール
幅広開口ノズルから押出される溶融物は、冷却ロール上に載置される。複数層の薄膜は、多層膜用ノズルから押出すことが好ましい。また、冷却ロールへの薄膜を確実に配置するピン留め装置を使用して、冷却ロール上に薄膜を載置することが好ましい。冷却ロール方向の押圧力を薄膜に加える方向に噴出される空気流を発生するエアナイフが好適なピン留め装置である。ピン留め装置により、冷却ロールに対し薄膜が均一に接触して、円滑で平坦な流延薄膜を形成できる。
【0077】
冷却ロールの温度範囲は、20℃~100℃が好ましい。高比率の高密度ポリエチレンを含む薄層を冷却ロールに供給する場合は、前記温度範囲より高い温度に冷却ロールを保持すべきである。冷却ロールに供給される薄層が60重量%を超える高密度ポリエチレンを含むとき、冷却ロールの温度範囲は、60℃~100℃が好ましく、特に範囲70℃~100℃が好ましく、範囲75℃~90℃がより好ましい。高密度ポリエチレンを含む薄層(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン)より容易に冷却ロールに巻回できる薄層に対し、より低い温度に冷却ロールを保持してもよい。直鎖状低密度ポリエチレン比率が高い唯一の薄膜層又は冷却ロールに巻回する薄膜層に対し、前記温度範囲より低い温度に薄膜を保持することが好ましい。60重量%を超えて直鎖状低密度ポリエチレンを含有する薄層に対し、冷却ロールの範囲温度は、20℃~50℃が好ましく、特に25℃~45℃が好ましく、30℃~40℃が特に好ましい。
【0078】
更に冷却槽に薄膜を通過させて、より効果的に薄膜を冷却することもできる。冷却ロール領域内に冷却槽を設置することが好ましい。好ましい冷却槽は、水浴である。追加して水浴で冷却する場合、冷却ロールの下半分以上を水浴に浸漬して、水浴内で冷却ロールを回転可能に軸支することができる。相応の冷却ロールは、例えば、特許文献6から公知である。内側からも冷却ロールを冷却することもできる。
【0079】
(4) 延伸工程
冷却された流延薄膜は、次に、縦方向と横方向とに延伸される。本発明の薄膜製造法の縦方向と横方向との延伸比範囲は、好ましくは1.2~5.5である。薄膜製造法で得られる薄膜は、単純な形状を有する成形品(二軸配向ポリスチレンを使用して成形できる)を、本発明の薄膜から製造でき、熱成形中の薄膜に亀裂や極度に不均一な厚さ分布を発生しない。本発明の薄膜製造法での延伸比範囲は、好ましくは1.2~5.0、特に好ましくは1.2~3、最適には1.2~2である。これらの延伸比範囲は、夫々縦方向と横方向とに該当する。前記延伸比で製造される薄膜から、熱成形工程により複雑な形状の成形品を製造できるが、従来では、例えば、二軸配向ポリスチレンから成形品を入手できなかった。
【0080】
本発明の薄膜製造法で延伸した薄膜の熱成形時に生じることがある問題(角部、縁部等での均一性厚さ)は、例えば、二軸配向ポリスチレン又は二軸配向ポリプロピレンからなる他の二軸配向薄膜の熱成形工程でも観察できる。本発明の薄膜製造法での延伸比が低い程、熱成形工程間に問題が発生し易い箇所をより良好に成形できる。従って、本発明の薄膜製造法での目的は、高剛性、厚さ均一性及び低収縮率で、極力低い延伸比を達成することにある。
【0081】
逐次でも同時でも縦方向延伸と横方向延伸の二軸配向又は延伸を行える。逐次延伸と同時延伸の二軸配向又は延伸法は、当業者には公知である。特許文献7の公開公報段落[0045]~[0055]に延伸法が開示される。特許文献7に記載される方法を、本発明にも好適に利用することができる。
【0082】
(5) 逐次延伸
a) 縦方向延伸
次に説明する工程で、逐次延伸を好適に行うことができる。製造した流延薄膜を縦延伸装置に供給し、十分に加熱した後に、薄膜は、縦方向に延伸される。縦(機械)方向延伸の延伸比は、前記の通り、1.2~9を採用する。回転速度の異なる複数のロール対間で薄膜は、通常延伸される。縦延伸機での薄膜温度範囲は、好ましくは30℃~140℃、特に好ましくは80℃~120℃である。縦方向延伸時の薄膜速度は、600m/分である。
【0083】
b) 横方向延伸
縦方向延伸後に、横方向延伸を行うことが好ましい。横方向延伸を行う薄膜は、横延伸装置に供給される。薄膜の横方向延伸比は、前記1.2~9である。
【0084】
横方向延伸工程では、まず薄膜が予熱される。横延伸時温度範囲は、好ましくは50℃~180℃、特に好ましくは100℃~150℃である。縦方向延伸済みの薄膜を横延伸装置に供給した後、一対のレールに沿って側方に案内する複数の保持クリップで薄膜が把持される。薄膜の対向側に設けられる複数の保持クリップを、対向方向に移動させて、薄膜は、横方向に延伸される。
【0085】
(6) 同時延伸
本発明の薄膜を同時延伸工程で延伸することもできる。パンタグラフ方法、スピンドル方法、リニアモータ二軸延伸法又は同時二軸延伸法からなる群から選択される方法で、同時延伸を実施できる。同時延伸時の薄膜温度範囲は、好ましくは50℃~180℃、特に好ましくは80℃~150℃である。その薄膜速度は、600m/分以下が好ましい。
【0086】
(7) 熱処理
延伸後に熱処理(安定化又はアニールともいう)を薄膜に施すことが好ましい。熱処理には、特定の時間、薄膜を高温に保持する。延伸直後にこれを行うことが、好ましい。逐次延伸では、最終延伸直後に熱処理を行うことが好ましい。熱処理の間、延伸により発生し薄膜内の内部応力が緩和され除去されて、薄膜全面に渡り特性が均一化される。
【0087】
(8) 弛緩
熱処理間に薄膜の弛緩工程を実施して、延伸装置により薄膜に加えられた応力を低減することにより、薄膜の内部応力が低下して、薄膜は、再び収縮する。縦方向、横方向又は双方向の弛緩を行えるが、双方向弛緩の実施が好ましい。
【0088】
本発明の薄膜製造法での弛緩の程度(収縮率)は、範囲2%~12%、好ましくは5%~10%がより有利である。双方向弛緩にこの範囲の適用が好ましい。弛緩により、薄膜収縮量が低下し、薄膜から製造する成形品の収縮量も低下する。
【0089】
このように、本発明の薄膜製造法の延伸工程後に、縦方向と横方向とに薄膜を弛緩させる熱処理工程を実施することが特に好ましい。
【0090】
薄膜の延伸後、弛緩と共に熱処理(アニール)を薄膜に施して、薄膜の収縮率を低下させることができる。
【0091】
(9) 工程内被覆処理
本発明の薄膜製造法では、延伸工程中に薄膜の被覆処理が可能である。工程内被覆処理技術(ILC)により被覆処理を行うことが好ましい。その場合、縦方向延伸と横方向延伸との逐次延伸間に、薄膜の少なくとも片面の外層上に被覆処理を塗布することが好ましい。例えば、薄膜表面上に水性ポリウレタン懸濁液を塗布(特に刷り込み)して、被覆が形成される。その後、横方向延伸前の加熱時に、懸濁液溶媒を蒸発して、被覆処理を形成する。
【0092】
(10) 付加処理
本発明の薄膜製造法で製造される二軸配向薄膜を、下記付加工程により、更に処理できる。その後、薄膜の縁部を切断して、円滑な両側縁を薄膜に形成することが好ましい。薄膜の側面厚さを測定できる。必要なら又は望ましい場合に、薄膜に表面処理を施すこともできる。最後に、巻取機に薄膜を巻き取る。巻回した薄膜を切断してもよい。特に、金属化、多層薄膜成形、封止、被覆処理(防護、保護部)、印刷、切込み加工、表面処理、レーザー加工、ラッカー塗り等が、他の可能な処理工程である。
【0093】
使用法
本発明の別の実施対象は、本発明の薄膜を熱成形に使用する使用法にある。
【0094】
熱成形方法
本発明の別の実施対象は、本発明の薄膜を熱成形により変形する成形品製造法にある。
【0095】
本発明の薄膜を製造する本発明の薄膜製造法を実施して得られる薄膜を熱成形により変形して、成形品製造法を実施することが好ましい。
【0096】
成形品を製造する本発明の成形品製造法は、本発明に適合する変形度範囲2~6で薄膜を成形する特徴が好ましい。
【0097】
深絞り加工用標準工具(例えば、ポジ型/ネガ型、イリグ(ILLIG)・マシネンバウ・ゲーエムベハー社製熱成機及び打抜工具又は打抜機として熱硬化性シンタクチックフォームHYTAC-WFT(中空ガラス球とフッ素樹脂(テフロン(登録商標))とを含むエポキシ樹脂、成形空気低減、直接冷却ダウンホルダー及び側面成形空気弁付き))を使用して、種々の成形品を成形できる。成形困難な成形品として、金型縁、小半径等を熱成形に通常特別に設計する必要がある。例えば、焼戻し工具等を使用できる。
【0098】
本発明の薄膜熱成形法では、まずゴム弾性領域に薄膜を加熱し、その後三次元成形品に変形することが好ましい。薄膜のゴム弾性領域温度は、使用する薄膜、特に、薄膜材料に強く依存する。本発明の薄膜熱成形法では、温度範囲70℃~150℃、好適には100℃~140℃、最適には120℃~130℃に本発明の薄膜を加熱することが好ましい。
【0099】
機械圧力又は空気圧を利用して、薄膜を変形することが好ましい。薄膜の対向面に対し異なる気体圧力を付加して、空気圧変形が行われる。空気圧変形法は、当業者に公知である。熱成形工程を1工程で完了できる。真空熱成形法、雄型熱成形法、自由熱成形法、高圧熱成形法及びダイアフラム熱成形法からなる群から選択される方法により熱成形工程を行うことが好ましい。別法として多工程熱成形法を用いてもよい。これは、特定の金型で特定の壁厚を達成するのに有意義である。2工程熱成形法では、加圧成形法が好ましい。本発明の薄膜は、熱成形機に適する半製品を用いる熱成形法により、異なる応用例に加工できる。
【0100】
ポリエチレン製成形品
本発明の別の実施対象は、成形品全質量(重量)に対し、ポリエチレン少なくとも75重量%と、ポリオレフィン少なくとも95重量%とを同時に含む二軸配向薄膜から完全に又は部分的に熱成形法で成形される成形品である
【0101】
熱成形法で得られる成形品は、例えば、盆、コーヒー見出し、薬剤袋、冷蔵庫内張、低温包装材、樹脂杯、特にヨーグルト杯、包装材(例えば、果物、野菜、肉又は他の食品用)からなる群から選択される製品に応用できる。本発明の成形品は、本発明の薄膜で形成される成形品が好ましい。本発明の薄膜は、全実施の形態で成形品の製造に特に適する。
【0102】
また、本発明の成形品及び熱成形で成形する成形品の成形される薄膜の最大厚さと最小厚さとの比率は、2以下である成形品が好ましい。
【0103】
同様に、温度30℃及び相対空気湿度90%で、透水率(米国材料試験協会規定E 96)8g/m2/日以下、好適には、5g/m2/日以下の本発明の成形品が好ましい。更に、本発明の成形品は、23℃及び0%の相対空気湿度で、4000cm3/m2/日以下、特に好ましくは2700cm3/m2/日以下の酸素透過率(ISO15105-2)を特徴とする。本発明の薄膜は、高比率で含有するポリエチレン又はポリエチレンで構成される。ポリエチレン薄膜は、水と酸素に対して既に好適な透過遮断性を有する。薄膜を延伸すると、薄膜の透過遮断性は、改善される。本発明の薄膜は、厚さ分布2シグマ値が非常に小さいため、本発明の薄膜から製造される成形品の欠陥と薄壁部は、極めて少ない。これは、成形品の遮断性改善を意味する。本明細書に記載する通り、良好な遮断性を有する層を本発明の薄膜に塗布して、薄膜の遮断特性を更に、改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】本発明の薄膜から製造した本発明の2種の成形品を示す写真
図2】本発明の薄膜から製造した本発明の別の成形品を示す写真
図3】破断引張力に対する縦方向と横方向との延伸比で示す3種ポリエチレン薄膜の応力-歪図
【発明を実施するための形態】
【0105】
略語一覧
ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-共重合体; BO:二軸配向; BOPE:二軸配向ポリエチレン; BOPP:二軸配向ポリプロピレン; BOPS:二軸配向ポリスチレン; CPP:流延ポリプロピレン(流延PP); Cast PET:流延ポリエチレンテレフタレート; EVOH:エチル-ビニルアルコール-共重合体; HDPE:高密度ポリエチレン; LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン; MDPE:中密度ポリエチレン; MD:縦方向、機械方向; PA:ポリアミド; PE:ポリエチレン; PET:ポリエチレンテレフタレート; PP:ポリプロピレン; PS:ポリスチレン; PU:ポリウレタン; PVC:ポリ塩化ビニル; TD:横方向、機械方向の横断方向
【実施例0106】
測定方法
薄膜厚さ:DIN EN ISO 53370
層厚さ:DIN EN ISO 3146
引張強さ:ASTM D 882
破断伸び:ASTM D 882
弾性率:ASTM D 882
摩擦係数:DIN EN ISO 8295、場合に応じて。
熱収縮率:BMS TT 0.9(100℃/5分)及びBMS TT 0.2;(120℃/5分)
摩擦係数:DIN EN ISO 8295
濁度:ASTM 1003
光沢度:ASTM 2457
コロナ処理:ASTM 2457
穿孔抵抗:DIN EN 14477(1.0mm丸頂点ペン)
酸素透過率:ISO 15105-2、23℃、相対空気湿度0%時
透水率:ASTM E 96、30℃、相対空気湿度90%時
【実施例0107】
本発明の薄膜製造法
三層膜薄膜を製造した。製造した高密度ポリエチレンは、密度0.953g/cm3及びMFI(190℃、16kg)0.9g/10分で、チーグラー・ナッタ触媒(ライオンデル・バゼル(Lyondell Basell)社の「ホスタレン(Hostalen)GD 9555」)を用いる懸濁重合により高密度ポリエチレンを製造し、3台の押出機に投入した。中間層(基材層)用の主押出機として、真空で200μmのフィルターを備える二軸押出機を使用し、全領域温度200℃~260℃で運転した。両外層用共押出機として、夫々無真空式で200μmろ過器のない単軸押出機を使用し、全領域温度230℃~250℃で運転し、三層膜押出ノズルを使用した。三層膜押出ノズルを通じて押出した溶融物を冷却ロール上に配置した。通常の高圧エアナイフの支援を得て、冷却ロールに対し薄膜を押付けた。冷却ロール温度は、70℃~100℃で、冷却ロール表面速度は、2m/分であった。水浴を使用せず、その後、薄膜を巻き取った。
【0108】
厚さ1850μm、幅35cmの流延薄膜を生成した。流延薄膜の中間膜層厚は、流延薄膜厚の80%、外側2層の層厚は、流延薄膜厚の各10%であった。得られた流延薄膜の縦方向弾性率は、609MPaであった。
【0109】
続いて、実験装置で薄膜を延伸した。薄膜の中央から切出した90×90mm正方形断片を緊張状態で試験装置に取り付けた。縦方向延伸と横方向延伸との同時延伸を行った。延伸時薄膜温度は、全試験125℃で、予熱時間は300秒であった。製造した本発明の薄膜の延伸度及び弛緩程度は、下表1の通りである。縦方向と横方向とで同一速度且つ同一延伸度で薄膜を延伸した。延伸を2秒続けた。温度125℃と熱処理時間5秒間の条件で製造した一部の薄膜(表1)に熱処理を施した。最後に、薄膜を弛緩させた。弛緩程度は、表1に記載の通りである。弛緩速度は、毎秒12%であった。本発明の薄膜片を7個作製した。
【0110】
【表1】
* 延伸速度 毎秒50%~100%
** 延伸速度 毎秒100%を上回る
【0111】
表1から理解されるように、延伸により弾性率は、約2倍になる。
【実施例0112】
成形品製造法
実施例1の薄膜1から、熱成形により成形品を製造した。製造の際に、温度125℃に薄膜を加熱し、熱成形装置内で成形品を成形した。温度125℃での真空熱成形により、熱成形を行った。打抜速度は200mm/秒であって、打抜材料は、中空ガラス球とフッ素樹脂(テフロン(登録商標))とを含むエポキシ樹脂(HYTAC-WFT)である。
【0113】
図1は、製造した2個の成形品の写真である。図1から理解できるように、2個の成形品は、規則正しく整然と成形されている。丸い金型の上部の頂点直径は、150mmで、高さは、20mmである。成形品の中央薄膜厚は100μmである。長方形金型の薄膜厚範囲は、190μm~210μmである。このように、均一に延伸され形成される成形品は、包装材の使用に耐える十分な強度を有する。長方形成形品の格子形状も、殆ど不規則性のない非常に均一に延伸された状態を感得できる。また、非常に均一な成形品の壁厚から、形状安定性と防護作用とを理解できる。透水率は、6g/m2/日未満、酸素透過率は3500cm3/m2/日未満である。
【0114】
図2は、薄膜の元面に対して垂直な側壁を有する成形品を示す。角形形状では、側壁の箇所での変形(延伸)が通常非常に大きいが、それでも、形状を良好に形成できた。側壁の薄膜厚は、120μm、成形品中央の底面(又は蓋)の薄膜厚は、210μmである。成形品の底面より、側壁の方が明らかにより透明である。
【実施例0115】
本発明の薄膜製造法
流延薄膜材料、層膜構造及び層厚は、実施例1に示す特性と同一である。二重真空式400μmろ過器を備えるBT-55-32D型主押出機で、温度258℃の溶融物を押出して、中間基材層を作成した。200μmろ過器を備える一重真空式共押出機BT-43-30Dを使用して、温度263℃の溶融物から、EDI三層膜押出ノズルを使用して、両外層の各々を押出した。水浴を使用せず、高圧エアナイフの支援により、温度80℃に保持される冷却ロールに薄膜を供給した。
【0116】
温度範囲136℃~144℃の3予熱領域を備える延伸炉を通じて、生成した薄膜を同時二軸延伸した。次に、温度範囲116℃~130℃の2延伸領域に薄膜を通過させた。その後、温度105℃~110℃の別の2加熱領域を通過させて、薄膜の熱処理を行った。最後に、温度80℃の冷却領域に薄膜を通過させた。
【0117】
得られた薄膜は、厚さ51.99μm、薄膜厚2シグマ値8.32%であった。熱成形時に不良品となる不均一な幅厚の薄膜の2シグマ値は、本発明の薄膜に重要である。熱成形時に、高機械的応力が薄膜の極薄部分に発生すると、熱成形製品に亀裂や機械的脆弱部が生じて、特性が劣化する欠陥が発生する。
【0118】
表2は、製造した合計3個の薄膜の実験結果を示す。
【0119】
【表2】
【0120】
注意事項:厚さ、引張強さ、破断伸び、弾性率、濁度及び熱収縮率は、製造直後に測定した。他の全測定を1日後に行った。略語:r:上へ;ru:下へ
図1
図2
図3
【外国語明細書】