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特開2023-44731顕微鏡システムおよびサンプルをイメージングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044731
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】顕微鏡システムおよびサンプルをイメージングする方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20230324BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20230324BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230324BHJP
   G02B 21/32 20060101ALN20230324BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/26
G01N1/28 F
G01N1/28 J
G02B21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148249
(22)【出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】21197641
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ジマー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クリスト
(72)【発明者】
【氏名】ナリマン アンサリ
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052DA06
2G052GA32
2G052HC22
2G052HC23
2G052HC28
2G052HC39
2H052AA03
2H052AA09
2H052AC05
2H052AC07
2H052AD16
2H052AD23
2H052AD24
2H052AD25
2H052AD27
2H052AE04
2H052AE13
2H052AF14
2H052AF19
2H052AF25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固定されずに乗せられたサンプルの、化学的刺激に対する反応をリアルタイムで観察できるようにする顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】顕微鏡システム(100)は、サンプルキャリア(106)が上に配置されるように構成された上面(108)を備えた顕微鏡ステージ(110)を有する。サンプルキャリア(106)は、少なくとも1つのサンプルを収容するように構成されている。顕微鏡システム(100)はさらに、サンプルをイメージングするように構成されたイメージングシステム(112)と、連続しかつ時間的に間隔が開けられた、液体の複数の噴射をサンプルキャリア(106)に注入することにより、サンプルキャリア(106)に所定量の液体を注入するように構成された注入装置(116)と、を有し、それぞれの噴射は、液体の所定の部分量を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡システム(100,600,700,800,900)であって、前記顕微鏡システム(100,600,700,800,900)は、
サンプルキャリア(106,602,1000)が上に配置されるように構成された上面(108)を備えた顕微鏡ステージ(110)であって、前記サンプルキャリア(106,602,1000)が少なくとも1つのサンプル(502)を収容するように構成されている顕微鏡ステージ(110)と、
前記サンプル(502)をイメージングするように構成されたイメージングシステム(112)と、
連続しかつ時間的に間隔が開けられた、液体の複数の噴射(1002)を前記サンプルキャリア(106,602,1000)に注入することにより、前記サンプルキャリア(106,602,1000)に所定量の液体を注入するように構成された注入装置(116)であって、それぞれの噴射(1002)が前記液体の所定の部分量を有する注入装置(116)と、
を備える顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項2】
前記顕微鏡システム(100,600,700,800,900)は、少なくとも1つの制御パラメータ、特に、部分量の量、噴射(1002)の回数、および、直に連続する2つの噴射(1002)間の間隔のうちの少なくとも1つをあらかじめ決定し、少なくとも1つの前記制御パラメータに基づいて、前記噴射(1002)の前記注入を制御するように構成された制御ユニットを有する、
請求項1記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項3】
前記制御ユニットは、記憶素子を有し、前記記憶素子は、少なくとも1つのサンプルキャリア(106,602,1000)情報と、少なくとも1つの前記制御パラメータと、を相関させるルックアップテーブルを有し、前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記サンプルキャリア(106,602,1000)情報の値のユーザ入力に基づき、かつ、前記ルックアップテーブルに基づいて、少なくとも1つの前記制御パラメータをあらかじめ決定するように構成されている、
請求項2記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項4】
前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記制御パラメータをあらかじめ決定し、これにより、前記噴射(1002)の前記注入中に、前記イメージングシステム(112)の視野(1104)内または前記視野(1104)外に前記サンプル(502)が移動させられないように構成されている、
請求項2または3いずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項5】
前記イメージングシステム(112)は、前記液体の前記注入中に前記サンプル(502)の少なくとも1つの画像を取り込むように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項6】
液体のそれぞれの部分量は、10μL未満の前記液体を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項7】
直に連続する2つの噴射(1002)の間の前記間隔は、少なくとも0.5秒かつ最大で1.5秒である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項8】
前記注入装置(116)は、角度が付けられた先端部(120)を備えた少なくとも1つの針(118)を有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項9】
前記針(118)の前記先端部(120)は、少なくとも30°かつ90°未満曲げられている、
請求項8記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項10】
前記針(118)の前記先端部(120)と前記顕微鏡ステージ(110)の前記上面(108)とは、少なくとも10°かつ最大で85°の角度を挟んでいる、
請求項8または9いずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項11】
前記針(118)の前記先端部(120)と前記顕微鏡ステージ(110)の前記上面(108)とは、少なくとも10°かつ最大で50°の角度を挟んでいる、
請求項10記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項12】
前記液体の流量は、少なくとも5μL/sかつ最大で250μL/sである、
請求項1から11までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項13】
前記液体の前記流量は、少なくとも10μL/sかつ最大で100μL/sである、
請求項12記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項14】
前記注入装置(116)は、前記液体の温度を制御するように構成された温度制御ユニットを有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項15】
前記顕微鏡システム(100,600,700,800,900)は、サンプルチャンバ(104)を画定するボックス型顕微鏡ハウジング(102)を有し、前記ハウジングは、前記サンプルチャンバ(104)へのアクセスを提供するためのドアを有し、前記顕微鏡ステージ(110)は、前記サンプルチャンバ(104)の下に配置されており、前記サンプルキャリア(106,602,1000)は、前記サンプルチャンバ(104)内に収容されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100,600,700,800,900)。
【請求項16】
顕微鏡システム(100,600,700,800,900)によってサンプル(502)をイメージングする方法であって、前記方法は、
前記サンプル(502)をサンプルキャリア(106,602,1000)内に配置するステップと、
前記顕微鏡システム(100,600,700,800,900)の顕微鏡ステージ(110)の上に前記サンプルキャリア(106,602,1000)を配置するステップと、
連続しかつ時間的に間隔が開けられた、液体の複数の噴射(1002)を前記サンプルキャリア(106,602,1000)に注入することにより、前記サンプルキャリア(106,602,1000)に所定量の液体を注入するステップであって、それぞれの噴射(1002)が、前記液体の所定の部分量を有するステップと、
前記液体の前記注入中に、前記顕微鏡システム(100,600,700,800,900)のイメージングシステム(112)によって前記サンプル(502)の少なくとも1つの画像を取り込むステップと、
を有する方法。
【請求項17】
前記方法は、
少なくとも1つの制御パラメータ、特に、部分量の量、噴射(1002)の回数、および、直に連続する2つの噴射(1002)間の間隔のうちの少なくとも1つをあらかじめ決定するステップと、
少なくとも1つの前記制御パラメータに基づいて、前記噴射(1002)の前記注入を行うステップと、
を有する、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの前記制御パラメータは、少なくとも1つのサンプルキャリア(106,602,1000)情報の値のユーザ入力に基づいて、かつ、少なくとも1つの前記サンプルキャリア(106,602,1000)情報と、少なくとも1つの前記制御パラメータと、を相関させるルックアップテーブルに基づいてあらかじめ決定される、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの前記制御パラメータは、前記噴射(1002)の前記注入中に、前記サンプル(502)が前記イメージングシステム(112)の視野(1104)内または前記視野(1104)外に移動させられないようにあらかじめ決定される、
請求項17または18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
液体のそれぞれの部分量は、10μL未満の前記液体を有する、
請求項16から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
直に連続する2つの噴射(1002)の間の前記間隔は、少なくとも0.5秒かつ最大で1.5秒である、
請求項16から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
角度が付けられた先端部(120)を有する少なくとも1つの針(118)によって前記注入を行う、
請求項16から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記針(118)の前記先端部(120)は、少なくとも30°かつ90°未満曲げられている、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記噴射(1002)は、前記顕微鏡ステージ(110)の上面(108)に対して少なくとも10°かつ最大で85°の角度で前記サンプルキャリア(106,602,1000)に注入される、
請求項16から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記噴射(1002)は、前記顕微鏡ステージ(110)の前記上面(108)に対して少なくとも10°かつ最大で50°の角度で前記サンプルキャリア(106,602,1000)に注入される、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記液体の流量は、少なくとも5μL/sかつ最大250μL/sである、
請求項16から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記液体の前記流量は、少なくとも10μL/sかつ最大100μL/sである、
請求項26記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムに関する。本発明はさらに、顕微鏡システムを用いてサンプルをイメージングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフサイエンスにおける実験には、生物学的プロセスを研究しかつ理解するために、試薬と称されるさまざまな化学物質によって操作もしくは処理されたサンプルの、または操作もしくは処理されているサンプルの顕微鏡検査が必要とされることが多い。これらの実験には一般に、化学的刺激に対するサンプルの反応を検査するために、サンプルまたはそのサンプル容器に試薬を注入することが必要とされる。注入を行うための装置には2つの大きなカテゴリが存在する。いわゆるマイクロインジェクタは、細胞壁を通して細胞内に少量の、一般にわずかに数ナノリットルの液体を送り込むために使用される極めて細い針を有する。この注入は、顕微鏡による観察下で行われる。これにより、サンプルの反応をリアルタイムで検査することができるが、人間との相互作用が必要である。マイクロプレートディスペンサは、液体および試薬をさまざまなマイクロプレートに自動的かつ正確に送り込むことができる専用の装置である。しかしながら、準備されるマイクロプレートの顕微鏡観察は、別の装置において行われるため、注入から時間的に間隔が開いてしまう。マイクロプレートディスペンサと、マイクロタイタープレートのウェルに配置される固定サンプルの蛍光、明視野、色明視野および位相コントラストイメージング用のデジタル顕微鏡と、を組み合わせた顕微鏡用の注入モジュールも存在する。
【0003】
あらゆる公知の装置の1つの欠点は、高速なボリュメトリックイメージングには適していないことである。特に、公知の装置は、サンプルキャリアの底部に容易に機械的に固定することはできない、影響を受け易い3次元サンプル、例えばオルガノイド、または生物、例えばゼブラフィッシュもしくはショウジョウバエを扱う作業には適していない。これらの固定されていないサンプルは、注入中に乱流によって容易に移動してしまう。したがって、生体サンプルを検査する場合、公知の装置は、付着する2次元細胞培養または機械的に固定されたサンプルに限定される。というのは、このようなサンプルは、注入による乱流および流れの影響を受けにくいからである。
【0004】
サンプルの位置が注入中に変化してしまうという事実に対処するためには基本的に2つの方法がある。すなわち、その1つは、観察ボリュームに対するサンプルの位置をリアルタイムに補正することであり、別の1つは、位置を後で補正することである。化学的刺激に対するサンプルの反応が直ちに、すなわち、注入後の1秒未満で測定されるべきである場合、補正は、リアルタイムで行われなければならない。リアルタイム補正には、サンプルボリュームの低解像度画像を高速で取得して、サンプルの位置におけるあらゆる変化を測定する高速伝送照明チャネルが必要である。サンプルの位置の変化が解析され、次いで、コマンドが顕微鏡のステージに送信されて、これにより、サンプルが視野の中心に留まるように位置の補正が行われる。択一的には、例えば、試薬がプレートのいくつかのウェルに加えられた後、数分または数時間にわたって、サンプルの進展が観察されるべきである場合、透過光モードでウェルの画像を取得して、ウェルにおけるサンプルの新たな位置を特定するために、注入後にプレートのそれぞれのウェルを再びスキャンすることができる。しかしながら、1つのウェル当たり2つ以上のサンプルについて、乱流は、サンプルの混合を生じさせることがあり、後続の割り当てを困難にしてしまうかまたは不可能にしてしまうことさえもあり得る。
【0005】
どちらの択一形態も、それぞれの欠点を有する。第1の方法には、ハードウェアの適合化、高速画像評価およびステージコントローラへのフィードバックが必要である。このソリューションは、技術的に実現可能であるとしても、非常にコストが高く、多くの開発努力が必要である。第2の方法は、特定の実験の実現可能性、例えば、注入中および注入直後の応答の測定のような点で著しい制限になり得る。さらに、サンプルの移動は、多くの場合に同様にサンプルを回転させてしまう。サンプルの同じ表面が、移動後もなお検出光学系に向いている可能性は低い。このケースでは、ソフトウェアベースの追跡は、極めて困難であり、通常は全く不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、固定されずに乗せられたサンプルの、化学的刺激に対する反応をリアルタイムで観察できるようにする顕微鏡システムを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、独立請求項に記載の記載事項によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項および次の説明によって定められる。
【0008】
提案される顕微鏡システムは、サンプルキャリアが上に配置されるように構成された上面を備えた顕微鏡ステージを有する。サンプルキャリアは、少なくとも1つのサンプルを収容するように構成されている。提案される顕微鏡システムはさらに、サンプルをイメージングするように構成されたイメージングシステムと、連続しかつ時間的に間隔が開けられた、液体の複数の噴射をサンプルキャリアに注入することにより、サンプルキャリアに所定量の液体を注入するように構成された注入装置と、を有し、それぞれの噴射は、液体の所定の部分量を有する。
【0009】
サンプルは一般に、包埋剤、例えば水、無機塩緩衝剤、水性でありかつマトリックスを含まない増殖培地または他の細胞培養培地に収容される。サンプルを刺激するために包埋剤には溶液が加えられる。包埋剤に液体を加えることにより、包埋剤に乱流が生じる。この乱流は、サンプルがサンプルキャリアに固定されていない場合にはサンプルを移動させるか、または固定されたサンプルのケースではせん断応力を生じさせることがある。乱流の量は、複数の要因によって決定されるが、主な要因の1つは、注入される液体の量である。より多くの液体が注入されるほど、より多くの乱流が生じる。それぞれの噴射がわずかに少量しか液体を有しない、順次の噴射において液体を注入することによって、それぞれの噴射によって生じる乱流が減少する。さらに、噴射は時間的に間隔が開けられて注入されるため、それぞれの噴射によって生じる乱流を消散することができる。これにより、乱流の総量も減少する。乱流が減少すると、サンプルの移動および/またはサンプルが受けるせん断応力も減少する。したがって、提案される顕微鏡により、サンプル、特に固定されていない試料の、試薬に対する反応をリアルタイムで観察することが可能になる。さらに、サンプルは、注入後に実質的に静止しているため、観察ボリュームに対するサンプルのリアルタイム再位置決めを必要とすることなく、注入プロセスの間および直後に、ボリュメトリックイメージング技術を使用して、サンプルの3次元画像を生成することができる。
【0010】
サンプルキャリアは、マイクロプレート、ペトリ皿、顕微鏡スライド、チャンバスライド、または別の任意の適切なサンプルキャリア幾何学形状であってよい。特に、針は、19~22のゲージを有する。ポイントスタイルは特に、b型またはAS型であってよい。
【0011】
好ましい実施形態では、顕微鏡システムは、少なくとも1つの制御パラメータ、特に、部分量の大きさ、噴射の回数、および直に連続する2つの噴射間の間隔のうちの少なくとも1つをあらかじめ決定し、かつ少なくとも1つの制御パラメータに基づいて、噴射の注入を制御するように構成された制御ユニットを有する。この実施形態では、少なくとも1つの制御パラメータは、例えばユーザ入力によって制御可能である。択一的または付加的には、少なくとも1つの制御パラメータは、少なくとも1つの制御パラメータと、サンプルキャリアおよび/または対象となる実験に関連する複数の別のパラメータと、を相関させる関数関係またはルックアップテーブルによって決定可能である。これにより、噴射の注入は、個々のサンプルキャリアおよび対象となる実験の条件に合わせてカスタマイズ可能である。これにより、多数のサンプルキャリアをさまざまな実験に使用することができ、顕微鏡システムはより汎用になる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、制御ユニットは、記憶素子を有する。記憶素子は、少なくとも1つのサンプルキャリア情報と、少なくとも1つの制御パラメータと、を相関させるルックアップテーブルを有する。制御ユニットは、少なくとも1つのサンプルキャリア情報の値のユーザ入力に基づき、かつルックアップテーブルに基づいて、少なくとも1つの制御パラメータをあらかじめ決定するように構成されている。特に、サンプルキャリア情報は、サンプルキャリアタイプ、サンプルキャリアサイズ、サンプルキャリア容積、マルチウェルタイプ、ウェルの個数、およびウェル容積のうちの少なくとも1つを有する。ルックアップテーブルは、メーカーにより前もって決定されていてよい。付加的または択一的には、ユーザが、ルックアップテーブルを変更し、自身のニーズに合わせてルックアップテーブルをカスタマイズできるようにすることも可能である。この実施形態では、少なくとも1つの制御パラメータは、少なくとも1つのサンプルキャリア情報を介して間接的に設定される。一般に、少なくとも1つのサンプルキャリア情報は、ユーザがより容易に利用可能である。これにより、顕微鏡システムの使いやすさが大幅に向上する。
【0013】
好ましくは、制御ユニットは、少なくとも1つの制御パラメータをあらかじめ決定し、これにより、噴射の注入中に、イメージングシステムの視野内または視野外にサンプルが移動させられないように構成されている。注入中にサンプルが視野外に移動されるか否かは、少なくとも1つの制御パラメータの値に依存する。サンプルを移動させないサンプルキャリア情報の異なる値についての少なくとも1つの制御パラメータの値は、実験により決定して、ルックアップテーブルに保存可能である。択一的または付加的には、関数的な依存関係が、前もって決定されて、記憶素子に記憶されていてよい。
【0014】
別の好ましい実施形態では、イメージングシステムは、液体の注入中にサンプルの少なくとも1つの画像を取り込むように構成されている。これにより、化学的刺激に対するサンプルの反応を遅延なしに検査することができる。これは、特定のタイプの実験、特に神経組織の研究で必要とされることがある。したがって、この実施形態は非常に用途が広い。
【0015】
別の好ましい実施形態では、それぞれの液体の部分量は、10μL未満、特に5μL未満の液体を有する。10μL未満の部分量で液体を噴射することにより、ほとんどのサンプルキャリアにおいて乱流は、ほとんどまたは全く生じない。
【0016】
別の好ましい実施形態では、直に連続する2つの噴射の間の間隔は、少なくとも0.5秒かつ最大で1.5秒である。乱流は時間と共に消散する。約0.5秒の下限は、ほとんどのサンプルキャリアにおいて乱流が消散するのに十分な時間である。1.5秒の上限はなお十分に短く、サンプルの反応の観察をリアルタイムで行うことができる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、注入装置は、角度が付けられた先端部を備えた少なくとも1つの針を有する。好ましくは、針の先端部は、少なくとも30°かつ最大で90°曲げられている。角度が付けられた先端部を備える針は、顕微鏡システムのサンプルチャンバのような小さな取付けスペースにおいて、より良好に取り付けることができる。さらに、角度が付けられた先端部により、噴射を注入することによって生じる乱流も低減される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、針の先端部と顕微鏡ステージの上面とは、少なくとも10°かつ最大で85°の角度を挟んでいる。特に、針の先端部と顕微鏡ステージの上面とは、少なくとも10°かつ最大で50°の角度を挟んでいる。所定の角度で、すなわち、真上からではなく液体を注入することによって、サンプルキャリアに注入される液体は、より大きな断面積領域に当たり、包埋剤の内でより長い距離を移動することができる。2つの様相により、注入される液体によって生じる乱流は、より迅速に、特に浅い深さで消散可能である。これにより、注入される液体によって生じるサンプルの乱れが最小化される。しかしながら、浅すぎる角度で液体を注入すると、噴射を分散させてしまい、このことは、液体の損失、ひいては不正確な注入体積を生じさせてしまうことがある。
【0019】
別の好ましい実施形態では、液体の流量は、少なくとも5μL/sかつ最大で250μL/sである。特に、液体の流量は、少なくとも10μL/sかつ最大で100μL/sである。流量は、注入の終了時にクリーンな液滴分割を保証するために十分に高くなければならない。換言すると、注入される液体は、先端部から完全に切り離される/離れる必要があり、噴射された液体が先端部に付着したままにならないことを保証する必要がある。しかしながら、流量が高いほど、注入される液体によってサンプルに及ぼされる力は大きくなる。上記の範囲は、サンプルを大きく移動させない十分に低い流量を有しながらも、クリーンな液滴分割/切り離し/離れを可能にするよい妥協点を表している。
【0020】
別の好ましい実施形態では、注入装置は、液体の温度を制御するように構成された温度制御ユニットを有する。サンプルキャリアに液体を注入することにより、サンプルの化学環境が変化するだけでなく、温度も変化する。いくつかの実験、特にサンプルの入念なインキュベーションを必要とする実験では、温度の急激な変化は、望ましくない副作用を引き起こすことがある。温度制御は、温度リザーバまでポンプと注入先端部との間にチューブを熱結合することによって、例えば、温度制御される金属ブロックの周りで/これを通してチューブをはわせることによって達成可能である。この実施形態では、これらの副作用が回避され、これにより、注入に対して観察されるサンプルの反応が、化学的刺激だけの反応であるようにされる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、顕微鏡システムは、サンプルチャンバを画定するボックス型顕微鏡ハウジングを有する。ハウジングは、サンプルチャンバへのアクセスを提供するためのドアを有する。顕微鏡ステージは、サンプルチャンバの底部に配置されている。サンプルキャリアは、サンプルチャンバ内に収容されている。ボックス型顕微鏡は、全ての顕微鏡部品が内部に配置されるハウジングを有する。ハウジングは一般に、顕微鏡内にアクセスするための1つまた複数の開口部を有する。ハウジングが、密閉されておりまたは封止さえも行われているという性質に起因して、ボックス型顕微鏡は、例えば、雰囲気制御ユニットにより、サンプルの環境を正確に制御するのに特に適している。
【0022】
本発明はさらに、顕微鏡システムによってサンプルをイメージングする方法に関する。この方法は、次のステップを有する。すなわち、サンプルをサンプルキャリア内に配置するステップと、顕微鏡システムの顕微鏡ステージの上にサンプルキャリアを配置するステップと、連続しかつ時間的に間隔が開けられた、液体の複数の噴射をサンプルキャリアに注入することにより、サンプルキャリアに所定量の液体を注入するステップであって、それぞれの噴射が、液体の所定の部分量を有するステップと、液体の注入中に、顕微鏡システムのイメージングシステムによってサンプルの少なくとも1つの画像を取り込むステップと、を有する。
【0023】
この方法は、上述のサンプルキャリアおよびイメージングシステムと同じ利点を有しており、またサンプルキャリアおよびイメージングシステムに向けられた従属請求項の特徴を使用して補足することができる。
【0024】
好ましい実施形態では、この方法は、次の付加的なステップを有する。すなわち、少なくとも1つの制御パラメータ、特に、部分量の大きさ、噴射の回数、および直に連続する2つの噴射間の間隔のうちの少なくとも1つをあらかじめ決定するステップと、少なくとも1つの制御パラメータに基づいて、噴射の注入を行うステップと、を有する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのサンプルキャリア情報の値のユーザ入力に基づいて、かつ少なくとも1つのサンプルキャリア情報と、少なくとも1つの制御パラメータと、を相関させるルックアップテーブルに基づいて、少なくとも1つの制御パラメータをあらかじめ決定する。
【0026】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの制御パラメータをあらかじめ決定して、噴射の注入中に、サンプルがイメージングシステムの視野外に移動させられないようにする。
【0027】
別の好ましい実施形態では、液体のそれぞれの部分量は、10μL未満の液体を有する。
【0028】
別の好ましい実施形態では、直に連続する2つの噴射の間の間隔は、少なくとも0.5秒かつ最大で1.5秒である。
【0029】
別の好ましい実施形態では、角度が付けられた先端部を有する少なくとも1つの針によって注入を行う。
【0030】
別の好ましい実施形態では、針の先端部は、少なくとも30°かつ最大で90°曲げられている。
【0031】
別の好ましい実施形態では、顕微鏡ステージの上面に対して少なくとも10°かつ最大で85°の角度でサンプルキャリアに噴射を注入する。特に、顕微鏡ステージの上面に対して少なくとも10°かつ最大で50°の角度でサンプルキャリアに噴射を注入する。
【0032】
別の好ましい実施形態では、液体の流量は、少なくとも5μL/sかつ最大250μL/sである。特に、液体の流量は、少なくとも10μL/sかつ最大100μL/sである。
【0033】
以下では、図面を参照して特定の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】1つの実施形態による顕微鏡システムの概略図である。
図2図1による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略平面図である。
図3図1および図2による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略正面図である。
図4図1図3による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略側面図である。
図5図1図4による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略詳細図である。
図6】別の実施形態による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略詳細図である。
図7】さらに別の実施形態による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略平面図である。
図8】さらに別の実施形態による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略平面図である。
図9】さらに別の実施形態による顕微鏡システムのサンプルチャンバの概略平面図である。
図10】サンプルキャリアおよび針の先端部の概略図である。
図11】サンプルキャリアの2つの概略平面図である。
図12】先端部から排出される液体の流速を時間について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、1つの実施形態による顕微鏡システム100の概略図である。
【0036】
顕微鏡システム100は例示的に、顕微鏡ハウジング102を有するボックス型顕微鏡として形成されている。顕微鏡ハウジング102は、1つまたは複数のサンプル502(図5を参照されたい)が配置されているサンプルキャリア106を収容するように構成されているサンプルチャンバ104を形成している。顕微鏡ハウジング102内にサンプルキャリア106を密閉することにより、例えば、サンプルチャンバ104の温度、湿度およびガス組成を制御するためのインキュベーション制御ユニットを介して、サンプル502の環境に対する正確な制御が可能となる。密閉されたサンプル502は環境に対してもシールドされており、これにより、サンプル502も環境も偶発的な汚染から保護される。さらに、サンプルチャンバ104は、実験によって要求される場合には、容易にインキュベーションチャンバおよび/または無菌環境にすることが可能である。
【0037】
サンプルキャリア106は、サンプルチャンバ104の下方に配置される顕微鏡ステージ110の上面108の上に位置付けられている。顕微鏡ステージ110は、直交する2つの方向に沿って移動可能であり、すなわち、顕微鏡ステージ110は、いわゆるX-Yテーブルである。したがって、顕微鏡ステージ110を移動することによって、例えば、サンプルキャリア106の個々のキャビティまたはウェルを選択すること、または観察のために単一のサンプル502の特定の関心領域を選択することができる。
【0038】
図1による顕微鏡システム100は、例示的に、透過光顕微鏡システムとして形成されている。サンプルをイメージングするためのイメージングシステム112は、例示的に、顕微鏡ステージ110の下方でコンポーネント空間に配置され、サンプル502を照明するための照明システム114は、顕微鏡ステージ110の上方でサンプルチャンバ104内に配置されている。イメージングシステム112の光軸と照明システム114の光軸とは、位置合わせされている。これにより、照明システム114によって放出された照明光は、イメージングシステム112に入る前にサンプル502を通過する。択一的な実施形態では、イメージングシステム112および照明システム114の位置を逆にすることができる。別の択一的な実施形態では、イメージングシステム112および照明システム114の両方が、顕微鏡ステージ110の同じ側に配置される。電源またはさまざまなフィルタのような付加的なコンポーネントが、サンプルチャンバの下方のコンポーネント空間に配置されてよい。
【0039】
顕微鏡システム100はさらに、液体、例えば試薬をサンプルキャリア106に注入するように構成された注入装置116を有する。注入装置116は、サンプルチャンバ104内に配置された針118を有し、この針118は、サンプルキャリア106に液体を注入するための曲がった先端部120を有する。注入装置116はさらに、液体を貯蔵するために、サンプルチャンバ104外に配置された液体リザーバ122を有する。液体リザーバ122は例示的に、単一の容器から成る。しかしながら、液体リザーバ122は、2つ以上の容器、例えば、それぞれが異なる液体を貯蔵する標準サイズの使い捨てプラスチックチューブを有していてよい。液体リザーバ122は、第1の流体管路124によって、例示的にシリンジポンプ126として形成されたポンプ126に接続されている。択一的にはポンプ126は、ペリスタルティックポンプまたは任意の別の適切なポンプとして形成されてよい。ポンプ126は、バレルおよびプランジャを備えたシリンジ128と、モータ駆動のプランジャ駆動装置と、三方弁130と、を有する。モータ駆動のプランジャ駆動装置は、シリンジ128のプランジャを移動させるように構成されており、これにより、バレルに流体が引き込まれるかまたはバレルから流体が排出される。第1の動作モードでは、三方弁130は、シリンジ128が、液体リザーバ122からバレルに液体を引き込むことができるように設定される。第2の動作モードでは、三方弁130は、シリンジ128が、第2の流体管路132を介して針118に、そのバレルに格納された液体を送出することができるように設定される。第2の流体管路132が短くなるほど、サンプルキャリア106に注入可能な液体の最小量が小さくなる。注入可能な液体の最小量に影響を及ぼす別の要因は、流体管路の軟度である。100cm未満の長さに対し、約1μL~3μLの最小量が達成可能である。
【0040】
図2は、図1による顕微鏡システム100のサンプルチャンバ104の概略平面図である。
【0041】
サンプルキャリア106は、顕微鏡ステージ110の上の中央に配置されており、例示的には、24個のウェル200を有するマルチウェルプレートとして形成されている。ウェル200は4行6列で配置されている。それぞれのウェル200を一意に識別するために、行にはラベルA~Dが付されており、列にはラベル1~6が付されている。ウェル200には、個々のサンプル502が収容される包埋剤504(図5を参照されたい)が充填されている。液体の形態の試薬をサンプルキャリア106に加えることにより、サンプル502からの反応が観察される。
【0042】
針118は、サンプルキャリア106の上に配置されている。それぞれのウェル200に液体を注入するために、サンプルキャリア106または針118のいずれかを移動することにより、サンプルキャリア106のそれぞれのウェル200の上方に先端部120を位置決めすることができる。図2から見て取ることができるように、角度が付けられた先端部120は、片側、すなわち図2の上部に向かってわずかにねじ曲げられている。これによって保証されるのは、針118が、照明光のビーム経路に位置せず、サンプル502に影を落とさないことである。
【0043】
図3は、図1および図2による顕微鏡システム100のサンプルチャンバ104の概略正面図である。
【0044】
針118は、顕微鏡ステージ110の上面108に対して平行な第2の流体管路132に接続されている基部300と、角度が付けられた先端部120と、を有する。図3に見て取ることができるように、角度が付けられた先端部120と顕微鏡ステージ110の上面108とは、約40°の角度を挟んでいる。このことは、噴射も、約40°の入射角で包埋剤504の表面に当たることも意味する。
【0045】
図4は、図1図3による顕微鏡システム100のサンプルチャンバ104の概略側面図である。図4の図は、図3の右側から見たサンプルチャンバ104を示している。
【0046】
針118は、その基部300の長手方向軸線の周りに回転可能に配置されている。図4に見て取ることができるように、角度付けられた先端部120は、まっすぐ下を向いているのではなく、図4では右に約30°だけ回転させられている。針118が回転できるようにすることより、包埋剤504の表面に当たる噴射の入射角を細かく制御することができる。一般に針118は、45°,30°または0°の入射角にそれぞれ対応して、45°,60°または90°だけ曲げられた先端部120を有する。別の入射角が必要な場合、先端部120を手動で曲げなければならない。これは不正確であると同時に時間を要する。針118を回転させるための手段を設けることにより、入射角を正確にかつ自動的に制御することができる。さらに、先端部120は、イメージングシステム112および照明システム114のビーム経路のいずれにも配置されていない。したがって先端部120は、サンプル502に影を落とさない。
【0047】
図5は、図1図4による顕微鏡システム100のサンプルチャンバ104の概略詳細図である。
【0048】
サンプルキャリア106の1つのウェル200は、イメージングシステム112の検出対物レンズ500の上方に配置されている。サンプル502は、そのウェル200の包埋剤504に収容されており、ウェル200の光学的に透明な底部窓506を通して観察可能である。角度が付けられた先端部120は、目下観察されているウェル200の真上に配置されている。しかしながら、先端部120は、ウェル200に到達しておらず、これにより、サンプルキャリア106は自由に移動可能である。
【0049】
図6は、別の実施形態による顕微鏡システム600のサンプルチャンバ104の概略詳細図である。
【0050】
この実施形態では、サンプルキャリア602は例示的に、ペトリ皿として形成されており、このペトリ皿は、ペトリ皿の底部に配置された透明窓部分604を有する。大きな生体標本、例えばゼブラフィッシュ、線虫またはショウジョウバエの標本は、サンプル502として栄養溶液に収容される。角度付けられた先端部120は、噴射が、サンプル502のわずかに側方で栄養溶液606の表面に当たるようにサンプル502の上方に配置されている。先端部120は、サンプルキャリア602に到達していないため、サンプルキャリア602は自由に移動可能である。
【0051】
図7は、さらに別の実施形態による顕微鏡システム700のサンプルチャンバ104の概略平面図である。
【0052】
図7による顕微鏡システム700は、第2の針702を有するという点で、図1図5による顕微鏡システム100と区別される。第2の針702は、第1の針118に隣に配置されており、これらの基部300,704は平行になっている。両方の針118,702の先端部120,706は、1つのウェル200の上に配置されており、これにより、両方の針118,702は、特定のウェル200に液体を注入するために使用可能である。2つの針118,702は、流体管路132,708によって液体リザーバ122にそれぞれ接続されており、したがって、サンプルキャリア106,602に異なる2つの液体を注入するために使用可能である。
【0053】
図8は、さらに別の実施形態による顕微鏡システム800のサンプルチャンバ104の概略平面図である。
【0054】
図8による顕微鏡システム800は、第2の針702が第1の針118とは反対側に配置されている点で、図7による顕微鏡システム700と区別される。2つの針118,702は、それらの基部300,704が共通の軸線上に位置するように配置されている。先端部120,706は、2つの針118,702の間にかつウェル200の上方に間隙802が形成されるように配置されている。この間隙802により、ウェル200に配置されたサンプル502の観察および照明が可能になる。
【0055】
図9は、1つの実施形態による顕微鏡システム900のサンプルチャンバ104の概略平面図である。
【0056】
図9による顕微鏡システム900は、第1の針118および第2の針702が、互いに向かって角度が付けられる点で、図7による顕微鏡システム700と区別される。2つの針118,702の基部300と704とは、約25°の角度を挟んでいる。付加的には、先端部120,706は、互いに向かって曲げられている。
【0057】
図10は、サンプルキャリア1000および針118の先端部120の概略図である。
【0058】
先端部120からサンプルキャリア1000に向かって排出される液体は、噴射1002を形成する。図10に見て取ることができるように、噴射1002は、拡散によって先端部120からの距離と共に拡がり、これは、液体の損失、ひいては不正確な噴射体積を生じることがある。したがって、先端部120と包埋剤504の表面1004との間の距離を可能な限り短く維持することが有利になり得る。図10に同様に見て取ることができるように、噴射1002は、重力によりわずかに下方へ曲がっている。
【0059】
図11には、サンプル504の2つの概略平面図が示されている。
【0060】
2つの図には、噴射1002の注入によって生じる乱流によるサンプル502の移動が示されている。サンプル502の初期位置1100a,1100bは、実線の黒い円として示されている。サンプル502の最終位置1102a,1102bは、実線の黒の輪郭を有する白い円によって示されている。顕微鏡システム100,600,700,800,900の視野1104は、破線の黒い輪郭を有する大きな円として示されている。第1の図には、噴射1002の注入によって生じる半円形運動が示されている。サンプル502は、第1の矢印P1によって示されているように、半円に沿って最初の位置1100aから最終位置1102aに移動されている。第2の図には、噴射1002の注入によって生じる直線運動が示されている。サンプル502は、第2の矢印P2によって示されているように、直線に沿って最初の位置1100bから最終位置1102bに移動されている。初期位置と最終位置との間の距離は、サンプル502の直径よりも小さく、かつ顕微鏡システム100の視野1104よりも格段に小さい。
【0061】
図12は、先端部120から排出される液体の流速を時間について示すグラフである。
【0062】
横軸は、秒で時間tを示し、縦軸は、1秒当たりのμLで流量fを示す。図12に見て取ることができるように、液体の注入は、異なるフローパラメータを有する5つの別個の部分1200,1202,1204,1206,1208に分割されている。ほとんどのシリンジポンプによって可能になるのは、これらの5つの部分についてユーザがパラメータを設定できるようすることである。スタートフローと称される第1の部分1200は、10μL/sの初期流速に対応する。スロープアップと称される第2の部分1202は、95μL/sの流速に達するまでの流速の増大に対応する。第2の部分1202の間、流速は、1秒当たり8μL/sだけ増大する。トップフローと称される第3の部分1204は、95μL/sの流速に対応する。スロープダウンと称される第4の部分1206の間に、流速は、最終的な流速150μL/sに達するまで、1秒当たり40μL/sだけ変化させられる。エンドフローと称される第5の部分1208は、150μL/sの最終流速に対応する。
【0063】
スタートフロー、スロープアップおよびエンドフロー中の流速の正確な値は、極めて小さな影響しか及ぼさないが、トップフローおよびスロープダウン中の流速の値は、注入中にサンプル502が移動されるか否か、またクリーンな液滴分割が達成され得るか否かに影響を及ぼす。トップフロー中の流速は、サンプル502が移動されるか否かについて最も大きな影響を及ぼし、かつ200μL/sよりも高くすべきではない。スロープダウン中の流速の変化は、1秒当たり8μL/s程度に緩慢であってよい。どのようなものであれ緩慢な変化は、約350μL/sのエンドフロー中のより高い流速と組み合わされば、クリーンな液滴分割を生じさせるだけである。
【0064】
全ての図において同じ要素、類似の要素または同じ作用の要素には同じ参照符号が付されている。本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0065】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0066】
100 顕微鏡システム
102 顕微鏡ハウジング
104 サンプルチャンバ
106 サンプルキャリア
108 上面
110 顕微鏡ステージ
112 イメージングシステム
114 照明システム
116 注入装置
118 針
120 先端部
122 液体リザーバ
124 流体管路
126 ポンプ
128 シリンジ
130 弁
132 流体管路
200 ウェル
300 基部
500 対物レンズ
502 サンプル
504 包埋剤
506 窓
600 顕微鏡システム
602 サンプルキャリア
604 窓
606 栄養溶液
700 顕微鏡システム
702 針
704 基部
706 先端部
708 流体管路
800 顕微鏡システム
802 間隙
900 顕微鏡システム
1000 サンプルキャリア
1002 噴射
1004 表面
1100a,1100b 初期位置
1102a,1102b 最終位置
1104 視野
1200,1202,1204,1206,1208 部分
P1, P2 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】