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特開2023-44732土工機械及び土工機械を運転するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044732
(43)【公開日】2023-03-31
(54)【発明の名称】土工機械及び土工機械を運転するための方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/28 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
E01C19/28
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148347
(22)【出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】10 2021 124 183.9
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508123375
【氏名又は名称】ハム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Hamm AG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・ピーシュケ
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052BB00
(57)【要約】
【課題】油圧トラクションドライブシステムの、より効率的で省エネルギーな動作が得られる土工機械を提供する。
【解決手段】油圧トラクションドライブシステムは、電動機及びトラクション油圧ポンプを有する電気油圧式圧力流体源、トラクション油圧ポンプによって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路、トラクション油圧回路から圧力流体が供給されるトラクション油圧モータ、及び流体をトラクション油圧回路から流体タンクに送り出すための吐出弁装置を含み、トラクション油圧回路内の流体の温度、周囲温度、トラクション油圧回路内の流体の粘度、トラクション油圧回路内の流体の汚染度、油圧トラクションドライブシステムが最後に動作を開始してからの経過時間、及びトラクション油圧回路から最後に流体が吐出されてからの経過時間の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、吐出弁装置を動作させて流体を流体タンクに送り出すように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧トラクションドライブシステム(46)を含む土工機械、特にソイルコンパクタであって、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために、前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されている土工機械。
【請求項2】
前記トラクション油圧回路(54)が、
第1の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第1の接続部(78)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第1の接続部(80、82)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第1の接続部(78)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第1の接続部(80、82)に圧力流体を輸送するための第1の接続ライン(76)と、
第2の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第2の接続部(86)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第2の接続部(88、90)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第2の接続部(86)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第2の接続部(88、90)に圧力流体を輸送するための第2の接続ライン(84)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の土工機械。
【請求項3】
少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第2の接続ライン(84)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていること、又は/及び、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第1の接続ライン(76)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の土工機械。
【請求項4】
前記吐出弁装置(60)が、前記第1の接続ライン(76)に接続された第1の入口接続部(96)と、前記第2の接続ライン(84)に接続された第2の入口接続部(98)と、前記流体タンク(62)に接続された出口接続部(100)と、を有する切替弁(92)を含んでおり、前記切替弁(92)の第1の弁位置では、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在しておらず、前記切替弁(92)の第2の弁位置では、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在していないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の土工機械。
【請求項5】
前記切替弁(92)の前記出口接続部(100)が、遮断弁(102)を介して、前記流体タンク(62)に接続されており、前記遮断弁(102)の開口位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在しており、前記遮断弁(102)の遮断位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在していないことを特徴とする、請求項4に記載の土工機械。
【請求項6】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第1の接続ライン(76)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させ、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第2の接続ライン(84)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項7】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項8】
流体を前記トラクション油圧回路(54)から前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させる際、前記流体タンク(62)に送り出される流体の量又は/及び流体放出速度が、周囲温度又は/及び汚染度又は/及び前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間又は/及び前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間に依存して調整されることを特徴とする、請求項7に記載の土工機械。
【請求項9】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記流体タンク(62)に至るリークライン(108)内又は/及び前記流体タンク(62)に至る流体冷却器(110)の領域における流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項10】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記周囲温度が、所定の吐出周囲境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出周囲温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項11】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度が、所定の境界粘度を下回る場合、又は/及び、所定の粘度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項12】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度が、所定の吐出境界汚染度を超える場合、又は/及び、所定の汚染度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項13】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから所定の時間が経過した場合、又は/及び、前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから所定の時間が経過した場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項14】
ステアリング油圧回路(34)が設けられており、前記ステアリング油圧回路(34)が、流体を前記トラクション油圧回路(54)に供給するように構成されていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項15】
土工機械(10)、好ましくは請求項1から14のいずれか一項に記載の土工機械(10)を運転するための方法であって、前記土工機械(10)は、油圧トラクションドライブシステム(46)を含んでおり、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記吐出弁装置(60)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために動作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばソイルコンパクタ等の土工機械に関するものであり、ソイルコンパクタは、アスファルト、土壌又は砂利等の地面の上乗せ材料を締固めるために用いられ得る。本発明はさらに、当該土工機械を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソイルコンパクタとして構成された当該土工機械の一例は、図1に示されている。このソイルコンパクタとして構成された土工機械10は、車両後部12、及び、略垂直なステアリング軸の周りに旋回可能であるように車両後部12と接続された車両前部14を有するように構成されている。車両後部12には、駆動輪16が設けられており、駆動輪16は、ソイルコンパクタ10を締め固められるべき地面18上で移動させるために、回転するように駆動可能である。車両前部14には、締固めローラとして構成された土工ローラ20が回転可能に取り付けられている。図1に示されたソイルコンパクタの構成では、土工ローラ20自体は一般的に、回転するようには駆動されず、駆動輪16によって駆動されて、地面18上を転動する。例えば、車両後部12にも締固めローラが設けられているソイルコンパクタの場合、ソイルコンパクタを地面18上で移動させるために、1つ又は両方の締固めローラを回転するように駆動してもよいであろう。
【0003】
車両後部12にはさらに、操作台22が設けられており、操作台22内では、ソイルコンパクタを操作するために、操作者が操作者席24に着席することが可能である。操作台22にはさらに、後述する様々な操作機構が設けられており、当該操作機構を通じて、操作台22で操作者席24に着席している操作者は、ソイルコンパクタを操作することができる。
【0004】
一般的に、当該ソイルコンパクタは、車両後部12に、ディーゼルエンジンとして構成された駆動ユニットを有している。当該駆動ユニットは、様々な油圧回路において圧力流体を供給するために、1つ又は複数の油圧ポンプを駆動する。例えば、ソイルコンパクタを地面18上で動かすために、トラクション油圧回路が設けられていてよく、トラクション油圧回路を通じて、駆動輪16に配設された油圧モータに圧力流体が供給され得る。当該ソイルコンパクタが、回転するように駆動される1つ又は複数の締固めローラ又は土工ローラ20を有している場合、これらの締固めローラ又は土工ローラ20にも、回転するように駆動するために油圧モータが配設されていてもよい。さらなる油圧回路が、土工ローラ20内の不釣り合い装置を駆動するために用いられ得る。土工ローラ20の揺動運動又は/及び振動運動を生成するように構成され得る当該不釣り合い装置もまた、不釣り合い質量を回転するように駆動するために、1つ又は複数の油圧モータを含み得る。さらなる油圧回路は、ステアリングシステムに配設されていてよい。当該ステアリング油圧回路内に存在する圧力流体は、油圧ステアリングユニットを通じて、例えばハンドル等のステアリング操作機構のステアリング運動に依存して、油圧流体を、ステアリング機構26として有効な1つ又は2つのステアリングピストン/シリンダユニット28に誘導することができる。当該ステアリングピストン/シリンダユニット28によって、車両前部14と車両後部12とは、ステアリング軸の周りで互いに対して旋回し、これによって、ソイルコンパクタは、地面18上を移動する際に操縦される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、油圧トラクションドライブシステムの、より効率的で省エネルギーな動作が得られるような土工機械と、当該土工機械を運転するための方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、本課題は、油圧トラクションドライブシステムを含む土工機械、特にソイルコンパクタによって解決され、当該油圧トラクションドライブシステムは、
-少なくとも1つの電動機及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプを有する、電気油圧式圧力流体源と、
-少なくとも1つのトラクション油圧ポンプによって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路と、
-トラクション油圧回路から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータと、
-流体をトラクション油圧回路から流体タンクに送り出すための吐出弁装置と、
を含んでおり、
当該油圧トラクションドライブシステムは、以下のパラメータの内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を流体タンクに送り出すために、吐出弁装置を動作させるように構成されている:
-トラクション油圧回路内の流体の温度、
-流体タンクへの流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-トラクション油圧回路内の流体の粘度、
-トラクション油圧回路内の流体の汚染度、
-油圧トラクションドライブシステムが最後に動作を開始してから経過した時間、
-トラクション油圧回路から最後に流体が吐出されてから経過した時間。
【0007】
流体を油圧トラクションドライブシステムのトラクション油圧回路から吐出すことによって、このような吐出を、実際に吐出が必要である場合、又は、吐出によってトラクション油圧回路の能率又は効率が上昇する場合にのみ行うことが可能になる。従って、電気油圧式圧力流体源の少なくとも1つの電動機を通じてトラクション油圧回路に導入されるエネルギーは、効率的に利用され得る。
【0008】
トラクション油圧回路において、少なくとも1つのトラクション油圧モータを様々な回転方向において動作させることを可能にするために、トラクション油圧回路が、第1の回転方向において少なくとも1つのトラクション油圧モータを動作させるために、少なくとも1つのトラクション油圧ポンプの第1の接続部と少なくとも1つのトラクション油圧モータの第1の接続部との間における、少なくとも1つのトラクション油圧ポンプの第1の接続部から、少なくとも1つのトラクション油圧モータの第1の接続部に圧力流体を輸送するための第1の接続ラインと、第2の回転方向において少なくとも1つのトラクション油圧モータを動作させるために、少なくとも1つのトラクション油圧ポンプの第2の接続部と少なくとも1つのトラクション油圧モータの第2の接続部との間における、少なくとも1つのトラクション油圧ポンプの第2の接続部から、少なくとも1つのトラクション油圧モータの第2の接続部に圧力流体を輸送するための第2の接続ラインと、を含むことが提案される。
【0009】
トラクションモードの間に吐出が行われる場合、少なくとも1つのトラクション油圧モータに第1の接続ラインを通じて圧力流体が供給される場合は、油圧トラクションドライブシステムが、流体を第2の接続ラインから吐出すために吐出弁装置を動作させるように構成されている、又は/及び、少なくとも1つのトラクション油圧モータに第2の接続ラインを通じて圧力流体が供給される場合は、油圧トラクションドライブシステムが、流体を第1の接続ラインから吐出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていると特に有利である。これによって、流体の吐出が、少なくとも1つのトラクション油圧モータへの圧力流体の供給を阻害しないことが保証される。
【0010】
吐出弁装置は、第1の接続ラインに接続された第1の入口接続部と、第2の接続ラインに接続された第2の入口接続部と、流体タンクに接続された出口接続部と、を有する切替弁を含むことが可能であり、切替弁の第1の弁位置では、第1の入口接続部と出口接続部との間に接続が存在しており、第2の入口接続部と出口接続部との間には接続が存在しておらず、切替弁の第2の弁位置では、第2の入口接続部と出口接続部との間に接続が存在しており、第1の入口接続部と出口接続部との間には接続が存在していない。従って、いずれの接続ラインからも、流体を流体タンクに送り出すことが可能である。
【0011】
特に切替弁が第1に、流体タンクと接続ラインの内の1つとの接続を提供するために設けられている場合、吐出される流体の量を明確に設定するために、切替弁の出口接続部は、遮断弁を介して、流体タンクに接続されていてよく、遮断弁の開口位置では、出口接続部と流体タンクとの間に接続が存在しており、遮断弁の遮断位置では、出口接続部と流体タンクとの間に接続は存在していない。
【0012】
流体の温度を適切に考慮するために、油圧トラクションドライブシステムが、少なくとも1つのトラクション油圧モータに、第1の接続ラインを通じて圧力流体が供給される場合に、第1の接続ラインにおける流体の温度に依存して、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させ、少なくとも1つのトラクション油圧モータに、第2の接続ラインを通じて圧力流体が供給される場合に、第2の接続ラインにおける流体の温度に依存して、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていることが提案される。
【0013】
油圧トラクションドライブシステムは、トラクション油圧回路内の流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていてよい。従って、流体がまず適切な温度に至らされ、流体が適切な温度になった場合にその後で初めて、流体が吐出され、他の一般的には例えば流体タンクからのより低温の流体によって代替されることが保証されている。
【0014】
この際、流体をトラクション油圧回路から流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させる際、流体タンクに送り出される流体の量又は/及び流体放出速度が、周囲温度又は/及び汚染度又は/及び油圧トラクションドライブシステムが最後に動作を開始してから経過した時間又は/及びトラクション油圧回路から最後に流体が吐出されてから経過した時間に依存して調整されることが規定されていてよい。従って、油圧トラクションドライブシステムの動作状態に影響を与えるパラメータを、より正確に考慮することが可能になる。
【0015】
さらに、油圧トラクションドライブシステムは、流体タンクに至るリークライン内又は/及び流体タンクに至る流体冷却器の領域における流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていてよい。例えばこのような、1つ又は複数のトラクション油圧モータからの流体リークを流体タンクに誘導するリークライン、又は、流体タンクに還流する流体が貫流する流体冷却器が、流体還流のシステム領域を形成している。当該システム領域内に存在する流体の温度もまた、吐出プロセスを開始するための指標として用いられ得る。
【0016】
トラクション油圧回路における流体温度の考慮に対して代替的又は付加的に、油圧トラクションドライブシステムは、周囲温度が、所定の吐出周囲境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出周囲温度領域内にある場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていてよい。低い周囲温度は一般的に、トラクション油圧回路内の流体も低い温度を有すること、又は、より速く冷却されることを意味しており、従って、周囲温度の考慮によっても、効率の低下につながり得る吐出が回避され得る。
【0017】
さらに、油圧トラクションドライブシステムは、トラクション油圧回路内の流体の粘度が、所定の境界粘度を下回る場合、又は/及び、所定の粘度領域内にある場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていてよい。トラクション油圧回路内の流体の粘度は、例えばトラクション油圧回路内の2つの圧力測定点の間における圧力低下を通じて算出可能であり、流体の温度と直接結びつけられたパラメータである。流体の粘度を考慮した上でも、粘度が高すぎる、つまり流体が比較的粘性を有している限りは、流体が吐出されない、又は、例えば少量の流体のみが吐出されるようにすることができる。十分な動作時間の後で粘度が低下した場合に初めて、本発明の当該態様によると、効率的なエネルギー入力にとって最適な値領域内に粘度を維持することを可能にするために、流体が吐出される。
【0018】
さらなる態様によると、油圧トラクションドライブシステムが、トラクション油圧回路内の流体の汚染度が、所定の吐出境界汚染度を超える場合、又は/及び、所定の汚染度領域内にある場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていると規定されていてよい。流体の汚染度は、例えば光検出器によって、透過又は吸収において検出され得る。トラクション油圧回路内を循環する流体内に、あまりに高い割合で汚染物質粒子が含まれていることが認識される場合、当該流体の一部が吐出され、当該流体を浄化するために、例えば流体タンクに向かって流れる際に、粒子フィルタを通過するように誘導され得る。代替的又は付加的に、トラクション油圧回路内に新たに供給される流体は、流体タンクから排出される際にろ過され得る。
【0019】
本発明のさらなる態様によると、油圧トラクションドライブシステムは、油圧トラクションドライブシステムが最後に動作を開始してから所定の時間が経過した場合、又は/及び、トラクション油圧回路から最後に流体が吐出されてから所定の時間が経過した場合に、流体を流体タンクに送り出すために吐出弁装置を動作させるように構成されていてよい。
【0020】
流体をトラクション油圧回路から吐出す際、又は、吐出した後でも、トラクション油圧回路内で十分な流体が利用できるようにするために、ステアリング油圧回路が設けられており、ステアリング油圧回路が、流体をトラクション油圧回路に供給するように構成されていることが提案される。
【0021】
冒頭に記載した課題はさらに、油圧トラクションドライブシステムを有する土工機械、好ましくは本発明に従って構成された土工機械を運転するための方法によって解決され、当該油圧トラクションドライブシステムは、
-少なくとも1つの電動機及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプを有する、電気油圧式圧力流体源と、
-少なくとも1つのトラクション油圧ポンプによって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路と、
-トラクション油圧回路から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータと、
-流体をトラクション油圧回路から流体タンクに送り出すための吐出弁装置と、
を含んでおり、
当該吐出弁装置は、以下のパラメータの内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を流体タンクに送り出すために動作する:
-トラクション油圧回路内の流体の温度、
-流体タンクへの流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-トラクション油圧回路内の流体の粘度、
-トラクション油圧回路内の流体の汚染度、
-油圧トラクションドライブシステムが最後に動作を開始してから経過した時間、
-トラクション油圧回路から最後に流体が吐出されてから経過した時間。
【0022】
以下に、本発明を添付された図面を用いて詳細に記載する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ソイルコンパクタとして構成された土工機械の側面図である。
図2】土工機械の油圧ステアリングシステム及び油圧トラクションドライブシステムの原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、図2に関連して、土工機械の油圧ステアリングシステム及び油圧トラクションドライブシステムの構造及び機能を詳細に説明する前に、以下において図2に関連して記載されるシステムは、図1に示されているように、例えばソイルコンパクタとして構成された土工機械10で用いられ得ることが指摘される。しかしながら、基本的に、以下において図2に関連して記載されるシステムは、別の構造を有する土工機械においても、例えば車両前部と車両後部とに土工ローラを有する土工機械においても用いられ得ることが指摘される。
【0025】
図2は、全体に参照符号30が付された油圧ステアリングシステムを示している。油圧ステアリングシステム30は、複動式ステアリングピストン/シリンダユニット28として構成された、1つ又は複数のステアリング機構26を含んでおり、ステアリング機構26は、油圧ステアリングユニット32を通じて、ステアリング圧力流体回路34に連結されている。油圧ステアリングシステム30は、電動機38及び電動機38によって駆動されるステアリング圧力流体ポンプ40を有する、電気油圧式圧力流体源36を含んでいる。油圧ステアリングシステム30の電動機38は、制御ユニット42の制御下にあり、ステアリング圧力流体ポンプ40を駆動するために、電圧源、例えばバッテリ44からエネルギーを供給される。バッテリ44から電動機38への電圧の印加は、制御ユニット42からの対応する制御コードに従って行われ得る。
【0026】
図2はさらに、全体に参照符号46が付された油圧トラクションドライブシステムを示している。油圧トラクションドライブシステム46は、電動機50及び電動機50によって駆動されるトラクション油圧ポンプ52を有する、油圧圧力流体源48を含んでいる。トラクション油圧ポンプ52は、流体、例えば油圧オイルを、トラクション油圧回路54内で輸送し、これによって、トラクション油圧回路54に組み込まれた2つのトラクション油圧モータ56、58に圧力流体を供給する。例えば、両方のトラクション油圧モータ56、58は、ソイルコンパクタに設けられた2つの土工ローラに配設されていてよく、これによって、これらの土工ローラのいずれもが、ソイルコンパクタを移動させるために駆動され得る。図1に示された土工機械の構造では、両方のトラクション油圧モータ56、58の内の一方が、両方の駆動輪16の内の一方に配設されていてよく、両方のトラクション油圧モータ56、58の内の他方が、他方の駆動輪16に配設されていてよい。
【0027】
油圧トラクションドライブシステム46はさらに、吐出弁装置60を含んでおり、吐出弁装置60を通じて、流体が、油圧トラクションドライブシステム46から流体タンク62に吐出され得る。この流体タンク62から、ステアリング油圧ポンプ40は、流体をステアリング油圧回路34内に輸送し、ステアリング油圧回路34は、図2に示したように、ステアリング油圧ポンプ40によってステアリング油圧回路34に圧力流体として供給された流体、例えば油圧オイルが、油圧トラクションドライブシステム46に導入され得るように、トラクション油圧回路54と接続されている。これによって、例えば、吐出弁装置60を通じて、油圧トラクションドライブシステム46から流体が流体タンク62に吐出される場合に、ステアリング油圧回路34から流体を供給することによって、トラクション油圧回路54に存在する流体の量を概ね一定に保つことが可能になる。トラクション油圧回路54内でも生じる流体のリークは、このような方法で補償され得る。
【0028】
ステアリング油圧回路34はさらに、送り戻し弁64を含んでおり、送り戻し弁64を通じて、ステアリング油圧回路34から流体又は圧力流体が、流体タンク62に送り戻され得る。送り戻し弁64は、例えば圧力制御されていてよく、これによって、ステアリング油圧回路34内又はトラクション油圧回路54内の流体圧力も所定の限界圧力を超える場合に、流体が流体タンク62に送出され得る。
【0029】
土工機械、例えば図1に示された土工機械10を操縦するために、一般的にハンドルとして構成されたステアリング操作機構66が設けられている。操作台22に着席している操作者は、ステアリング操作機構66の操作によって、すなわちハンドルの回転によって、加工されるべき地面18上を移動する土工機械10を操縦することができる。この際、油圧ステアリングユニット32内でのステアリング操作機構66のステアリング運動は、各ステアリングピストン/シリンダユニット28のチャンバの内の一方への圧力流体の対応する供給と、各ステアリングピストン/シリンダユニット28の両方のチャンバの内の他方からの圧力流体の対応する送出と、に変換される。
【0030】
ステアリング操作機構66の操作は、ステアリングセンサ68によって検出される。ステアリングセンサ68は、例えば共に回転するようにステアリング操作機構66と連結されたステアリングシャフトの回転運動を検出し、操縦状態を表す情報を含む信号を制御ユニット42に出力することができる。当該情報は、例えばステアリング操作機構66又はステアリング操作機構66と連結されたステアリングシャフトの現在の回転位置に関する、ステアリング角を表す情報であってよい。
【0031】
操作台22には、操作者が当該土工機械10を操作する際に用いることができるさらなる機構が設けられている。例えばトラクション操作レバー70として構成されたトラクション操作機構72を用いて、操作者は、土工機械10を始動させることができる。これは、例えばトラクション操作レバー70の旋回によって、油圧トラクションドライブシステム46の電気油圧式圧力流体源48の電動機50が、操作者によって設定されたトラクションモードの状態に対応する回転数で動作することを意味している。例えば、操作者は、トラクション操作レバー70を停車位置に動かすことが可能である。トラクション操作レバー70が停車位置にある場合、土工機械10は基本的に停止状態にあり、転動を防止するために、例えばパーキングブレーキが作動し得る。停車位置からトラクション準備位置に旋回することによって、トラクション準備状態になる。トラクション準備状態では、トラクション油圧モータ56、58は依然として非アクティブであり、すなわち、例えば電動機50は、停車状態にあるように、動作しないままであるが、パーキングブレーキは解除される。トラクション準備状態に対応するトラクション準備位置から、トラクション状態に対応するトラクション位置に旋回する際、例えばそれぞれの旋回位置に対応する電圧が電動機50に印加されるので、電動機50は、トラクション油圧ポンプ52を、それぞれのトラクション方向に対応する回転方向において駆動し、両方のトラクション油圧モータ56、58には、圧力流体が供給され、これによって、土工機械10は、地面18上を移動する。
【0032】
操作者席24には、席利用状況センサ74が配設されていてよく、席利用状況センサ74は、操作者席24に操作者が着席しているか否かに関する情報を提供する。当該情報は、トラクション操作機構72の各操作位置又は操作状態に関する情報と同様に、制御ユニット42に導入可能であり、これによって、電気油圧式圧力流体源36の電動機38は、当該情報を考慮して動作する。
【0033】
席利用状況又はトラクション操作機構72の操作状況を表す情報を考慮して、制御ユニット42は、電動機38を、例えばトラクション操作機構72が停車位置に置かれた場合に電動機38が非アクティブになる、又は、非アクティブの状態に維持されるように制御することが可能であり、これは、電動機38には電圧が印加されないことを意味している。代替的又は付加的に、これは、席利用状況センサ74によって提供される情報が、操作者席24に操作者が着席していないことを示している場合に行われ得る。
【0034】
操作者席24に、トラクション操作機構72に作用する操作者が座っている場合に一般的にそうであるように、トラクション操作機構72が、トラクション準備状態に対応するトラクション準備位置にある場合、制御ユニット42によって、電気油圧式圧力流体源36の電動機38は、基本回転数で回転するように動作し得る。結果として、ステアリング油圧回路34内に圧力が生じる。
【0035】
トラクション操作機構72が、トラクション状態に対応するトラクション位置にもたらされる場合、制御ユニット42の制御作用下で、電気油圧式圧力流体源36の電動機38に印加される電圧は、電動機38が基本回転数を超える運転回転数で動作するように設定可能であり、運転回転数は、例えば変動しないように設定されていてよい。操縦情報、つまり例えばステアリング操作機構66の操作に対応して決定されるべきステアリング角又はステアリング角変化率に関する情報を考慮して、制御ユニット42は、電気油圧式圧力流体源36の電動機38の運転回転数を調整することが可能である。
【0036】
トラクション油圧回路54は、第1の接続ライン76を含んでおり、第1の接続ライン76は、トラクション油圧ポンプ52の第1の接続部78と両方のトラクション油圧モータ56、58のそれぞれ第1の接続部80、82との間に接続を形成している。さらに、トラクション油圧回路54は、第2の接続ライン84を含んでおり、第2の接続ライン84は、トラクション油圧ポンプ52の第2の接続部86と両方のトラクション油圧モータ56、58のそれぞれ第2の接続部88、90との間に接続を形成している。
【0037】
トラクション油圧ポンプ52が、電気油圧式圧力流体源48の電動機50によっていずれの回転方向において駆動されるかに依存して、トラクション油圧回路54内に存在する流体が、圧力流体として、第1の接続ライン76又は第2の接続ライン84を通じて、両方のトラクション油圧モータ56、58に輸送される。両方の接続ライン76、84の内のいずれを通じて、トラクション油圧モータ56、58に圧力流体が供給されるかに依存して、トラクション油圧モータ56、58は、2つの可能な回転方向の内の一方向において回転し、これによって、土工機械は、異なる移動方向において、すなわち前方又は後方へ向かって移動することができる。
【0038】
吐出弁装置60は、方向制御弁として構成された切替弁92を含んでおり、切替弁92は、例えば電動機50も制御する制御ユニット94の制御下にある。切替弁92は、第1の接続ライン76に接続された第1の入口接続部96を有し、第2の接続ライン84に接続された第2の入口接続部98を有している。切替弁92はさらに、出口接続部100を含んでおり、出口接続部100は、例えば比例弁として構成され、同様に制御ユニット94の制御下にある遮断弁102を介して、流体タンク62に接続されている。
【0039】
吐出弁装置60において、切替弁92は、基本的に、両方の接続ライン76、84の内の一方と流体タンク62との間の接続を形成するために用いられる。切替弁92は、遮断弁102がいずれの位置にあるかとは無関係に、両方の接続ライン76、84の内のいずれかと流体タンク62との間の接続が基本的に中断されている中立位置にもたらされることも可能である。遮断弁102はやはり、切替弁92によって、両方の接続ライン76、84の内の一方又は配設された第1又は第2の入口接続部96、98が、出口接続部100と接続されている場合に、流体を両方の接続ライン76、84の内の一方からタンク62に吐出させ、特に吐出量又は吐出速度も調整するために、開口位置と遮断位置との切替を通じて、流体タンク62との接続を形成する、又は、遮断するという機能を有している。
【0040】
図示された実施例では、さらに2つの温度センサ104、106が、トラクション油圧回路54に配設されている。温度センサ104は、温度センサ104が、トラクション油圧モータ56、58の第1の接続部80、82のわずかに上流又は近傍の第1の接続ライン76の領域における、トラクション油圧回路54内の流体の温度を検出し、対応する情報を制御ユニット94に誘導するように配置されている。温度センサ106は、温度センサ106が、トラクション油圧モータ56、58の第2の接続部88、90のわずかに上流又は近傍の第2の接続ライン84における、トラクション油圧回路54内の流体の温度を検出するように配置されている。温度センサ106によって提供される温度情報も、制御ユニット94に導入される。
【0041】
温度センサ104、106によって提供された温度情報を考慮して、制御ユニット94は、以下に説明する方法で、吐出弁装置60を、適切な時に適切な量で、流体がトラクション油圧回路54からタンク62に吐出されるように制御する。この際、トラクション油圧回路54内に存在する又は循環する流体の量を略一定に保つために、同時に、油圧ステアリングシステム30の電気油圧式圧力流体源36は、ステアリング油圧回路34を通じて十分な流体が、トラクション油圧回路54内に供給されるように動作し得る。
【0042】
例えば、油圧トラクションドライブシステム46の電気油圧式圧力流体源48の電動機50が、トラクション油圧ポンプ52が圧力流体を、第1の接続ライン76を通じて両方のトラクション油圧モータ56、58に誘導し、これによって、当該トラクション油圧モータを第1の回転方向において、例えば土工機械10を前進させるために回転させるように動作することが考えられる。この状態において、例えば遮断弁102が依然としてその遮断位置に保持されている場合、切替弁92は、第2の入口接続部98と、従って第2の接続ライン84とが、出口接続部100と接続されている弁位置に切替えられ得る。温度センサ104によって提供された信号が、供給されるべきトラクション油圧モータ56、58に関してわずかに上流の領域における流体の、例えば約50℃の所定の吐出流体境界温度より低い温度、又は、所定の吐出流体温度領域内にない温度を示している場合、遮断弁102はその遮断位置に留まり、トラクション油圧回路54からは流体が吐出されない。
【0043】
トラクション油圧モータ56、58のわずかに上流の領域におけるトラクション油圧回路54内の流体の温度が、吐出流体境界温度を超えるか、又は、吐出流体温度領域が到達される場合、遮断弁102は、制御ユニット94によって、流体がトラクション油圧回路54から流体タンク62に吐出されるように制御される。ここでは例えば、各吐出プロセスに関して、ステアリング油圧回路34を通じて十分な流体が供給され得ることを保証するために、遮断弁102の対応する制御によって決定された流体の量が、例えば所定の速度で吐出される、と規定してもよい。
【0044】
トラクション油圧ポンプ52が、両方のトラクション油圧モータ56、58に圧力流体が第2の接続ライン84を通じて供給されるように動作する際、例えばやはり遮断弁102がその遮断位置に保持されている場合、切替弁92は、第1の入口接続部96と出口接続部100との間の接続、及び、第1の接続ライン76と出口接続部100との間の接続が形成されているような弁位置にもたらされ得る。圧力流体の供給の領域のわずかに上流における温度センサ106によって、両方のトラクション油圧モータ56、58に提供される温度信号が、当該領域において、流体の温度が吐出流体境界温度を超えるか、又は、吐出流体温度領域内にあることを示している場合、制御ユニット94は、遮断弁102を、流体が所定の量又は/及び所定の放出速度で、第1の接続ライン76から流体タンク62の方向に吐出されるように制御する。
【0045】
流体が例えば十分に高い温度を有している場合にのみ、流体をトラクション油圧回路54から吐出すことによって、例えば油圧トラクションドライブシステム46又は土工機械10が始動する際に、まず吐出が抑制され、流体は速やかに、例えば約40℃から65℃の範囲の適切な動作温度に至らされることが保証される。吐出の抑制によって、流体の温度が未だ十分に高くはない場合に、十分な温度に到達するまでの時間が可能な限り短く抑えられ、これによって、可能な限り速やかに、流体の粘度が十分に低いゆえに、油圧トラクションドライブシステム46内で高い効率が得られている動作状態に至る。これが保証されている場合に初めて、トラクション油圧回路54内の流体の温度を最適な領域に保持するために、連続する吐出プロセスにおいて繰り返し流体が吐出される。代替的に、このような動作状態において、比較的小さい速度で、流体を連続的に吐出し、流体タンク62から、ステアリング油圧回路34を通じて、流体を供給してもよいであろう。
【0046】
さらに、上述のプロセスにおいて、トラクション油圧回路54からの流体は、それぞれ圧力流体のトラクション油圧モータ56、58への供給には用いられない領域から吐出される。これは、トラクション油圧モータ56、58の圧縮側において、つまり接続ライン76、84の、トラクション油圧モータ56、58への圧力流体の供給に用いられる領域において、流体の吐出によって圧力の低下が生じることを防止する。
【0047】
それぞれ圧力流体が供給されるトラクション油圧モータ56、58に関してわずかに上流の領域における、トラクション油圧回路54内の流体の温度を考慮することによって、さらに、略平均温度に相当する流体温度が考慮される。一般的に、流体は、流体タンク62内で最も低い温度を有するであろうし、圧力流体が供給されるトラクション油圧モータ56、58のわずかに下流の領域において最も高い温度を有するであろう。それにもかかわらず、自明のことながら、トラクション油圧回路54又は油圧トラクションドライブシステム46の他の領域における流体の温度も考慮され得ることが指摘される。
【0048】
図2には、流体が流体タンク62に送り戻される際に通過する流体の還流のシステム領域として、リークライン108と流体冷却器110とが示されている。リークライン108を通じて、例えばトラクション油圧モータ56、58内に生じる流体リークが、流体タンク62に送り戻され得る。様々なシステム領域から流体タンクに送り戻される流体は、1つ又は場合によっては複数の流体冷却器110を通過するように誘導され、流体冷却器110で熱を放出する。このような流体の還流領域においても、つまり例えばリークライン108の領域、又は/及び、流体冷却器110の領域においても、流体の温度は検出可能であり、吐出プロセスを開始するための根拠として用いられ得る。
【0049】
トラクション油圧回路54からの流体の吐出が、油圧トラクションドライブ46の効率が損なわれない、又は、上昇し得る場合に行われるという本発明の原則は、トラクション油圧回路54内での流体の温度の考慮に対して代替的又は付加的に、別のパラメータが考慮される場合にも適用され得る。例えば、同じ方法で、土工機械10の領域における周囲温度が考慮され得る。なぜなら、低い周囲温度は、一般的に、トラクション油圧回路54内の流体が比較的低い温度を有することももたらすからである。つまり、周囲温度と関連して、超過又は到達した場合に、吐出プロセスが始動することになる吐出周囲境界温度又は吐出周囲温度領域が決定され得る。トラクション油圧回路54内の流体の温度と直接関連する流体の粘度もまた、吐出プロセスの許可又は抑制の際のパラメータとして、トラクション油圧回路54内の流体の汚染度と同様に考慮され得る。さらなるパラメータとして、油圧トラクションドライブシステム46の動作開始以降経過した時間が考慮され得る。所定の動作時間に到達した場合、トラクション油圧回路54内の流体が、十分に高い温度に到達しているので、流体の吐出は、トラクション油圧回路の効率の妨げにならないということを前提としてよい。このような吐出プロセスが最後に実施されてから経過した時間も、吐出プロセスの新たな実施に関する基準として用いられ得る。
【0050】
さらに、これらのパラメータの内の1つ又は複数が、基本的に、吐出プロセスを開始する際の基準として用いられ、1つ又は複数の別のパラメータが、流体を吐出す際の量又は速度の決定に用いられることによって、複数の当該パラメータを関連付けることが可能である。例えば、トラクション油圧回路54内の流体の温度は、上述した方法で、吐出プロセスの開始に関する基準として用いられ得る一方で、周囲温度は、吐出されるべき流体の量又は/及び吐出速度に関する基準として、例えば周囲温度の上昇に伴って、流体の吐出量又は/及び吐出速度が増大するように用いられ得る。
【0051】
最後に指摘しておくべきことに、このような土工機械は、自明のことながら様々な態様において変更され得る。例えば、油圧ステアリングシステムにおいて、電気油圧式圧力流体源は、複数のステアリング圧力流体ポンプを含むことが可能であり、当該ステアリング圧力流体ポンプは、電気油圧式圧力流体源の共通の、又は、場合によってはそれぞれ別個の電動機によって動作し得る。油圧トラクションドライブシステムの領域にも、複数のトラクション油圧ポンプが設けられていてよく、当該トラクション油圧ポンプは、共通の、又は、それぞれ別個の電動機によって駆動され得る。すでに言及したように、自明のことながら、例えばソイルコンパクタとして構成された土工機械は、土工ローラ又は駆動輪の使用に関してすら、上述又は図1に示したものとは異なるように構成されていてよい。さらに、すでに挙げたパラメータに加えて、油圧トラクションドライブシステムの動作にとって重要な、トラクション油圧回路からの流体の吐出又は吐出の抑制に関するさらなる影響変数が考慮され得る。
【符号の説明】
【0052】
10 土工機械
12 車両後部
14 車両前部
16 駆動輪
18 地面
20 締固めローラ又は土工ローラ
22 操作台
24 操作者席
26 ステアリング機構
28 ステアリングピストン/シリンダユニット
30 油圧ステアリングシステム
32 油圧ステアリングユニット
34 ステアリング油圧回路
36 電気油圧式圧力流体源
38 電動機
40 ステアリング圧力流体ポンプ、ステアリング油圧ポンプ
42 制御ユニット
44 バッテリ
46 油圧トラクションドライブシステム
48 電気油圧式圧力流体源
50 電動機
52 トラクション油圧ポンプ
54 トラクション油圧回路
56、58 トラクション油圧モータ
60 吐出弁装置
62 流体タンク
64 送り戻し弁
66 ステアリング操作機構
68 ステアリングセンサ
70 トラクション操作レバー
72 トラクション操作機構
74 席利用状況センサ
76 第1の接続ライン
78 トラクション油圧ポンプ52の第1の接続部
80、82 トラクション油圧モータ56、58の第1の接続部
84 第2の接続ライン
86 トラクション油圧ポンプ52の第2の接続部
88、90 トラクション油圧モータ56、58の第2の接続部
92 切替弁
94 制御ユニット
96 第1の入口接続部
98 第2の入口接続部
100 出口接続部
102 遮断弁
104、106 温度センサ
108 リークライン
110 流体冷却器
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧トラクションドライブシステム(46)を含む土工機械であって、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために、前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されている土工機械。
【請求項2】
前記トラクション油圧回路(54)が、
第1の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第1の接続部(78)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第1の接続部(80、82)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第1の接続部(78)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第1の接続部(80、82)に圧力流体を輸送するための第1の接続ライン(76)と、
第2の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第2の接続部(86)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第2の接続部(88、90)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第2の接続部(86)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第2の接続部(88、90)に圧力流体を輸送するための第2の接続ライン(84)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の土工機械。
【請求項3】
少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第2の接続ライン(84)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていること、又は/及び、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第1の接続ライン(76)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の土工機械。
【請求項4】
前記吐出弁装置(60)が、前記第1の接続ライン(76)に接続された第1の入口接続部(96)と、前記第2の接続ライン(84)に接続された第2の入口接続部(98)と、前記流体タンク(62)に接続された出口接続部(100)と、を有する切替弁(92)を含んでおり、前記切替弁(92)の第1の弁位置では、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在しておらず、前記切替弁(92)の第2の弁位置では、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在していないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の土工機械。
【請求項5】
前記切替弁(92)の前記出口接続部(100)が、遮断弁(102)を介して、前記流体タンク(62)に接続されており、前記遮断弁(102)の開口位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在しており、前記遮断弁(102)の遮断位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在していないことを特徴とする、請求項4に記載の土工機械。
【請求項6】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第1の接続ライン(76)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させ、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第2の接続ライン(84)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の土工機械。
【請求項7】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項8】
流体を前記トラクション油圧回路(54)から前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させる際、前記流体タンク(62)に送り出される流体の量又は/及び流体放出速度が、周囲温度又は/及び汚染度又は/及び前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間又は/及び前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間に依存して調整されることを特徴とする、請求項7に記載の土工機械。
【請求項9】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記流体タンク(62)に至るリークライン(108)内又は/及び前記流体タンク(62)に至る流体冷却器(110)の領域における流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項10】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記周囲温度が、所定の吐出周囲境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出周囲温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項11】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度が、所定の境界粘度を下回る場合、又は/及び、所定の粘度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項12】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度が、所定の吐出境界汚染度を超える場合、又は/及び、所定の汚染度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項13】
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから所定の時間が経過した場合、又は/及び、前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから所定の時間が経過した場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項14】
ステアリング油圧回路(34)が設けられており、前記ステアリング油圧回路(34)が、流体を前記トラクション油圧回路(54)に供給するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項15】
土工機械がソイルコンパクタであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械。
【請求項16】
土工機械(10)を運転するための方法であって、前記土工機械(10)は、油圧トラクションドライブシステム(46)を含んでおり、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記吐出弁装置(60)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために動作する方法。
【請求項17】
請求項1から3のいずれか一項に記載の土工機械(10)を運転するように構成されていることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
最後に指摘しておくべきことに、このような土工機械は、自明のことながら様々な態様において変更され得る。例えば、油圧ステアリングシステムにおいて、電気油圧式圧力流体源は、複数のステアリング圧力流体ポンプを含むことが可能であり、当該ステアリング圧力流体ポンプは、電気油圧式圧力流体源の共通の、又は、場合によってはそれぞれ別個の電動機によって動作し得る。油圧トラクションドライブシステムの領域にも、複数のトラクション油圧ポンプが設けられていてよく、当該トラクション油圧ポンプは、共通の、又は、それぞれ別個の電動機によって駆動され得る。すでに言及したように、自明のことながら、例えばソイルコンパクタとして構成された土工機械は、土工ローラ又は駆動輪の使用に関してすら、上述又は図1に示したものとは異なるように構成されていてよい。さらに、すでに挙げたパラメータに加えて、油圧トラクションドライブシステムの動作にとって重要な、トラクション油圧回路からの流体の吐出又は吐出の抑制に関するさらなる影響変数が考慮され得る。
[付記項1]
油圧トラクションドライブシステム(46)を含む土工機械、特にソイルコンパクタであって、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために、前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されている土工機械。
[付記項2]
前記トラクション油圧回路(54)が、
第1の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第1の接続部(78)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第1の接続部(80、82)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第1の接続部(78)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第1の接続部(80、82)に圧力流体を輸送するための第1の接続ライン(76)と、
第2の回転方向において少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)を動作させるために、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の第2の接続部(86)と少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の第2の接続部(88、90)との間における、少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)の前記第2の接続部(86)から、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)の前記第2の接続部(88、90)に圧力流体を輸送するための第2の接続ライン(84)と、
を含むことを特徴とする、付記項1に記載の土工機械。
[付記項3]
少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第2の接続ライン(84)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていること、又は/及び、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合は、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、流体を前記第1の接続ライン(76)から吐出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項2に記載の土工機械。
[付記項4]
前記吐出弁装置(60)が、前記第1の接続ライン(76)に接続された第1の入口接続部(96)と、前記第2の接続ライン(84)に接続された第2の入口接続部(98)と、前記流体タンク(62)に接続された出口接続部(100)と、を有する切替弁(92)を含んでおり、前記切替弁(92)の第1の弁位置では、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在しておらず、前記切替弁(92)の第2の弁位置では、前記第2の入口接続部(98)と前記出口接続部(100)との間に接続が存在しており、前記第1の入口接続部(96)と前記出口接続部(100)との間には接続が存在していないことを特徴とする、付記項2又は3に記載の土工機械。
[付記項5]
前記切替弁(92)の前記出口接続部(100)が、遮断弁(102)を介して、前記流体タンク(62)に接続されており、前記遮断弁(102)の開口位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在しており、前記遮断弁(102)の遮断位置では、前記出口接続部(100)と前記流体タンク(62)との間に接続が存在していないことを特徴とする、付記項4に記載の土工機械。
[付記項6]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第1の接続ライン(76)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第1の接続ライン(76)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させ、少なくとも1つの前記トラクション油圧モータ(56、58)に、前記第2の接続ライン(84)を通じて圧力流体が供給される場合に、前記第2の接続ライン(84)における流体の温度に依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項2から5のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項7]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から6のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項8]
流体を前記トラクション油圧回路(54)から前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させる際、前記流体タンク(62)に送り出される流体の量又は/及び流体放出速度が、周囲温度又は/及び汚染度又は/及び前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間又は/及び前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間に依存して調整されることを特徴とする、付記項7に記載の土工機械。
[付記項9]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記流体タンク(62)に至るリークライン(108)内又は/及び前記流体タンク(62)に至る流体冷却器(110)の領域における流体の温度が、所定の吐出流体境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出流体温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から8のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項10]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記周囲温度が、所定の吐出周囲境界温度を超える場合、又は/及び、所定の吐出周囲温度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から9のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項11]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度が、所定の境界粘度を下回る場合、又は/及び、所定の粘度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から10のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項12]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度が、所定の吐出境界汚染度を超える場合、又は/及び、所定の汚染度領域内にある場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から11のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項13]
前記油圧トラクションドライブシステム(46)が、前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから所定の時間が経過した場合、又は/及び、前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから所定の時間が経過した場合に、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために前記吐出弁装置(60)を動作させるように構成されていることを特徴とする、付記項1から12のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項14]
ステアリング油圧回路(34)が設けられており、前記ステアリング油圧回路(34)が、流体を前記トラクション油圧回路(54)に供給するように構成されていることを特徴とする、付記項1から13のいずれか一項に記載の土工機械。
[付記項15]
土工機械(10)、好ましくは付記項1から14のいずれか一項に記載の土工機械(10)を運転するための方法であって、前記土工機械(10)は、油圧トラクションドライブシステム(46)を含んでおり、前記油圧トラクションドライブシステム(46)は、
-少なくとも1つの電動機(50)及び少なくとも1つのトラクション油圧ポンプ(52)を有する、電気油圧式圧力流体源(48)と、
-少なくとも1つの前記トラクション油圧ポンプ(52)によって圧力流体が供給されるトラクション油圧回路(54)と、
-前記トラクション油圧回路(54)から圧力流体が供給される少なくとも1つのトラクション油圧モータ(56、58)と、
-流体を前記トラクション油圧回路(54)から流体タンク(62)に送り出すための吐出弁装置(60)と、
を含んでおり、
前記吐出弁装置(60)は、以下のパラメータ:
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の温度、
-前記流体タンク(62)への流体の還流における流体の温度、
-周囲温度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の粘度、
-前記トラクション油圧回路(54)内の流体の汚染度、
-前記油圧トラクションドライブシステム(46)が最後に動作を開始してから経過した時間、及び
-前記トラクション油圧回路(54)から最後に流体が吐出されてから経過した時間、
の内の少なくとも1つのパラメータに依存して、流体を前記流体タンク(62)に送り出すために動作する方法。
【外国語明細書】