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特開2023-44759真空インタラプタおよび真空インタラプタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044759
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】真空インタラプタおよび真空インタラプタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01H33/662 H
H01H33/662 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152781
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 英昭
【テーマコード(参考)】
5G026
【Fターム(参考)】
5G026EA03
5G026HA02
5G026HA03
5G026HA05
5G026HB02
(57)【要約】
【課題】真空インタラプタにおいて絶縁耐力や電界緩和効果等の所望の諸特性が得られるようにし、組み付け構成の簡略化や小型化に貢献可能な技術を提供する。
【解決手段】アークシールド4a,4bを、真空インタラプタAの中間タンク部2の内周側に対し、筒状本体10の軸心方向に離反した位置で支持する。各アークシールド4a,4bは、中間タンク部2の内周側に沿って周方向に延在した環状であって、自身のアークシールドを当該中間タンク部の内周側に支持するアークシールド基端部41と、アークシールド基端部41と同軸の筒状であって、当該アークシールド基端部41の内周側から軸心方向に延伸しているアークシールド本体部42と、を有したものとする。アークシールド基端部41には、アークシールド本体部42よりも大径の同軸筒状の補助シールド5を、当該アークシールド本体部42と同一方向に延伸するように支持させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の筒状本体を有し、当該筒状本体の軸心方向の一端側である固定側が固定側フランジにより封止され当該軸心方向の他端側である可動側が可動側フランジにより封止されている真空容器と、
固定側フランジの真空容器内側から前記軸心方向に延出している固定側通電軸と、
固定側通電軸の延出方向側の端部に支持されている固定電極と、
可動側フランジを前記軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在し、当該軸心方向に伸縮自在なベローズを介して当該可動側フランジの真空容器内側に支持されて、当該軸心方向に移動自在な可動側通電軸と、
可動側通電軸の真空容器内側の端部に支持されて固定電極と対向し、当該可動側通電軸の移動に応じて固定電極と接離する可動電極と、
を備え、
前記筒状本体は、
固定電極および可動電極の外周側を囲繞している筒状の中間タンク部と、
中間タンク部の前記軸心方向の固定側において当該中間タンク部と同軸状に連設されている筒状の固定側絶縁部と、
中間タンク部の前記軸心方向の可動側において当該中間タンク部と同軸状に連設されている筒状の可動側絶縁部と、
を有し、
中間タンク部の内周側には、
中間タンク部の内周側から固定絶縁側部の内周側に沿って前記軸心方向の固定側に延伸しているアークシールドと、
中間タンク部の内周側から可動側絶縁部の内周側に沿って前記軸心方向の可動側に延伸しているアークシールドと、
が互いに前記軸心方向に離反した位置で支持されており、
各アークシールドは、
中間タンク部の内周側に沿って周方向に延在した環状であって、自身のアークシールドを当該中間タンク部の内周側に支持するアークシールド基端部と、
アークシールド基端部と同軸の筒状であって、当該アークシールド基端部の内周側から前記軸心方向に延伸しているアークシールド本体部と、
を有し、
各アークシールドのアークシールド基端部それぞれには、アークシールド本体部よりも大径の同軸筒状の補助シールドが、当該アークシールド本体部と同一方向に延伸するように支持されていることを特徴とする真空インタラプタ。
【請求項2】
各アークシールドは、自身のアークシールドに支持されている補助シールドの先端部よりも、アークシールド本体部の先端部が前記軸心方向に突出するように延伸しており、
各アークシールドの線膨張係数は、自身のアークシールドに支持されている補助シールドの線膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の真空インタラプタ。
【請求項3】
各アークシールドは、アークシールド本体部の延伸方向の先端部のうち終端側が、前記筒状本体の径方向の外側に湾曲された形状であることを特徴とする請求項1または2記載の真空インタラプタ。
【請求項4】
各アークシールドに支持されている補助シールドの先端部は、アークシールド本体部の前記終端側に向かって湾曲された形状であることを特徴とする請求項3記載の真空インタラプタ。
【請求項5】
中間タンク部は、
筒状タンク本体部と、当該筒状タンク本体部の固定側および可動側それぞれに同軸状に連設された一対の筒状アダプタと、を有してなり、
前記連設された筒状タンク本体部と筒状アダプタとにおいて互いに対向している各連設面は、前記径方向に向かって階段状に延在した形状であり、
各アークシールドが支持している補助シールドの基端部は、前記径方向の外側に折曲された形状であって、当該補助シールドの基端部とアークシールド基端部との両者が前記軸心方向に積層された姿勢で支持されており、
前記各連設面のうち、前記径方向の内側で当該径方向に延在している各径方向延在面の間に、前記両者が介在して支持されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の真空インタラプタ。
【請求項6】
補助シールドは、チタン、またはチタンを主成分とする合金を用いて成ることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の真空インタラプタ。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の真空インタラプタの製造方法であって、各アークシールドは、自身のアークシールドに補助シールドを支持してから、中間タンク部の内周側に支持することを特徴とする真空インタラプタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の電力設備等に適用されている真空インタラプタ、および当該真空インタラプタの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
電力設備等に適用されている真空遮断器においては、電流遮断部品として真空インタラプタを内蔵したものが知られている。この真空インタラプタは、近年、更なる高電圧電力系統への適応拡大が期待されており、例えば所望の諸特性(絶縁性能等)が得られるように、それぞれ種々の改善が検討されている。
【0003】
図6の符号9は、一般的に知られている真空インタラプタを示すものであり、絶縁性の筒状本体90の軸心方向(以下、単に軸心方向と適宜称する)の一端側である固定側を固定側フランジ91aにより封止し、当該軸心方向の他端側である可動側を可動側フランジ91bにより封止した真空容器91が用いられている。筒状本体90は、それぞれ筒状の中間タンク部9c,固定側絶縁部9a,可動側絶縁部9bを有したものであって、当該固定側絶縁部9aおよび可動側絶縁部9bの間に中間タンク部9cを挟んで同軸状に連設して構成となっている。
【0004】
固定側フランジ91aの真空容器91内側には、当該真空容器91内側から軸心方向に延出するように固定側通電軸92aが設けられ、その固定側通電軸92aの端部には固定電極93aが支持される。可動側フランジ91bには、可動側フランジ91bを軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在するように可動側通電軸92bが設けられる。
【0005】
この可動側通電軸92bは、軸心方向に伸縮自在なベローズ92cを介して可動側フランジ91bの真空容器91内側に支持され、当該軸心方向に移動自在となっている。可動側通電軸92bの端部には可動電極93bが支持され、当該可動側通電軸92bの移動に応じて固定電極93aと接離する。
【0006】
以上示したような真空インタラプタにおいては、絶縁耐力や電界緩和効果等の諸特性の向上を図るために、各種シールドが適用されている。例えば、いわゆる三重点と称される箇所(比誘電率の異なる三種類の材料の境界箇所)の電界緩和を考慮したシールドが適用されており、その一例としては図6に示すようなアークシールド94a,94bや電界緩和シールド95a,95bが挙げられる。
【0007】
例えば特許文献1,2の場合、真空容器の中間タンク部に設けられているアークシールド(特許文献1,2では符号2,3)が、当該真空容器の外周側に突出する外延部を有しており、当該突出した外延部の外周側を囲繞するように外部シールド(特許文献1では符号15,16、特許文献2では符号14)を設けた構成(以下、単に従来構成と適宜称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5641944号公報
【特許文献2】特開2003-272492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
真空インタラプタにおいては、真空容器内で所望の真空状態を維持できるように、当該真空インタラプタの各構成要素を適宜封止(例えば、ロウ付け等による真空封じ切り)しながら組み付けている。しかしながら、従来構成のように外延部を有したアークシールドや外部シールドを適用すると、当該封止箇所が増加してしまい、組み付け構成の複雑化や大型化等を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みてなされたものであって、真空インタラプタにおいて絶縁耐力や電界緩和効果等の所望の諸特性が得られるようにし、組み付け構成の簡略化や小型化に貢献可能な技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る真空インタラプタおよび当該真空インタラプタの製造方法は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、当該真空インタラプタの一態様は、絶縁性の筒状本体を有し、当該筒状本体の軸心方向の一端側である固定側が固定側フランジにより封止され当該軸心方向の他端側である可動側が可動側フランジにより封止されている真空容器と、固定側フランジの真空容器内側から前記軸心方向に延出している固定側通電軸と、固定側通電軸の延出方向側の端部に支持されている固定電極と、可動側フランジを前記軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在し、当該軸心方向に伸縮自在なベローズを介して当該可動側フランジの真空容器内側に支持されて、当該軸心方向に移動自在な可動側通電軸と、可動側通電軸の真空容器内側の端部に支持されて固定電極と対向し、当該可動側通電軸の移動に応じて固定電極と接離する可動電極と、を備えたものである。
【0012】
前記筒状本体は、固定電極および可動電極の外周側を囲繞している筒状の中間タンク部と、中間タンク部の前記軸心方向の固定側において当該中間タンク部と同軸状に連設されている筒状の固定側絶縁部と、中間タンク部の前記軸心方向の可動側において当該中間タンク部と同軸状に連設されている筒状の可動側絶縁部と、を有しているものである。
【0013】
中間タンク部の内周側には、中間タンク部の内周側から固定絶縁側部の内周側に沿って前記軸心方向の固定側に延伸しているアークシールドと、中間タンク部の内周側から可動側絶縁部の内周側に沿って前記軸心方向の可動側に延伸しているアークシールドと、が互いに前記軸心方向に離反した位置で支持されている。
【0014】
そして、各アークシールドは、中間タンク部の内周側に沿って周方向に延在した環状であって、自身のアークシールドを当該中間タンク部の内周側に支持するアークシールド基端部と、アークシールド基端部と同軸の筒状であって、当該アークシールド基端部の内周側から前記軸心方向に延伸しているアークシールド本体部と、を有し、各アークシールドのアークシールド基端部それぞれには、アークシールド本体部よりも大径の同軸筒状の補助シールドが、当該アークシールド本体部と同一方向に延伸するように支持されていることを特徴とするものである。
【0015】
真空インタラプタの一態様において、各アークシールドは、自身のアークシールドに支持されている補助シールドの先端部よりも、アークシールド本体部の先端部が前記軸心方向に突出するように延伸しており、各アークシールドの線膨張係数は、自身のアークシールドに支持されている補助シールドの線膨張係数よりも大きいことを特徴としても良い。
【0016】
また、各アークシールドは、アークシールド本体部の延伸方向の先端部のうち終端側が、前記筒状本体の径方向の外側に湾曲された形状であることを特徴としても良い。
【0017】
また、各アークシールドに支持されている補助シールドの先端部は、アークシールド本体部の前記終端側に向かって湾曲された形状であることを特徴としても良い。
【0018】
また、中間タンク部は、筒状タンク本体部と、当該筒状タンク本体部の固定側および可動側それぞれに同軸状に連設された一対の筒状アダプタと、を有してなり、前記連設された筒状タンク本体部と筒状アダプタとにおいて互いに対向している各連設面は、前記径方向に向かって階段状に延在した形状であり、各アークシールドが支持している補助シールドの基端部は、前記径方向の外側に折曲された形状であって、当該補助シールドの基端部とアークシールド基端部との両者が前記軸心方向に積層された姿勢で支持されており、前記各連設面のうち、前記径方向の内側で当該径方向に延在している各径方向延在面の間に、前記両者が介在して支持されていることを特徴としても良い。
【0019】
また、補助シールドは、チタン、またはチタンを主成分とする合金を用いて成ることを特徴としても良い。
【0020】
前記真空インタラプタの製造方法の一態様の場合、各アークシールドは、自身のアークシールドに補助シールドを支持してから、中間タンク部の内周側に支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上示したように本発明によれば、真空インタラプタにおいて絶縁耐力や電界緩和効果等の所望の諸特性が得られるようにし、組み付け構成の簡略化や小型化に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1による真空インタラプタAの概略構成を説明する概略図(真空容器1の軸心方向(図示左右方向)の縦断面図)。
図2図1のアークシールド4(図2中ではアークシールド4b)および補助シールド5と、その周辺を説明する概略図(要部を拡大した図)。
図3】実施例2による真空インタラプタAの変形例の概略構成を説明する概略図(図2と同様に要部を拡大した図)。
図4】実施例3による真空インタラプタAの変形例の概略構成を説明する概略図(真空容器1の軸心方向(図示左右方向)の縦断面図)。
図5図4のアークシールド4(図4中ではアークシールド4b)および補助シールド5と、その周辺を説明する概略図((A)は図2と同様に要部を拡大した図、(B)は更に拡大した図)。
図6】一般的な真空インタラプタの一例を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態による真空インタラプタは、従来構成のように外延部を有したアークシールドや外部シールドを適用したものとは、全く異なるものである。
【0024】
すなわち、本実施形態の真空インタラプタは、固定側絶縁部および可動側絶縁部の間に中間タンク部を挟んで同軸状に連設した真空容器において、中間タンク部の内周側に、当該中間タンク部の内周側から固定絶縁側部の内周側に沿って軸心方向の固定側に延伸しているアークシールドと、当該中間タンク部の内周側から可動側絶縁部の内周側に沿って軸心方向の可動側に延伸しているアークシールドと、が互いに前記軸心方向に離反した位置で支持された構成である。
【0025】
各アークシールドにおいては、中間タンク部の内周側に沿って周方向に延在した環状であって、自身のアークシールドを当該中間タンク部の内周側に支持するアークシールド基端部と、アークシールド基端部と同軸の筒状であって、当該アークシールド基端部の内周側から前記軸心方向に延伸しているアークシールド本体部と、を有したものとする。そして、各アークシールドのアークシールド基端部それぞれには、アークシールド本体部よりも大径の同軸筒状の補助シールドが、当該アークシールド本体部と同一方向に延伸するように支持されているものとする。
【0026】
このような構成によれば、従来構成のように外延部を有したアークシールドや外部シールドを適用しなくても、真空インタラプタにおいて絶縁耐力や電界緩和効果等の所望の特性を得ることが十分可能となる。また、従来構成と比較すると、真空容器の所望の真空状態を維持するための封止箇所を減少させることができ、真空インタラプタの組み付け構成の簡略化や小型化に貢献可能となる。組み付け構成が簡略化すると、真空インタラプタの各構成要素の位置決め,組み付け等が容易(例えば、各構成要素の芯ズレの抑制も容易)になり、製品精度,信頼性、耐久性等の向上にも貢献可能となる。
【0027】
本実施形態は、前述のようにアークシールドのアークシールド基端部それぞれに補助シールドが支持されている構成の真空インタラプタであれば良く、種々の分野(真空遮断器分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能である。なお、以下の実施例1~3では、例えば互いに同様の内容について同一符号を引用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0028】
≪実施例1≫
図1図2は、実施例1による真空インタラプタAの概略構成を説明するためのものである。この真空インタラプタAにおいては、絶縁性の筒状本体10の軸心方向固定側を固定側フランジ11aにより封止し、当該軸心方向可動側を可動側フランジ11bにより封止した真空容器1が用いられている。
【0029】
この真空容器1において、固定側フランジ11aの真空容器1内側には、柱状の固定側通電軸12aが、当該真空容器1内側から軸心方向可動側に延出するように設けられている。この固定側通電軸12aの軸心方向可動側(延出方向側)の端部には、例えば平板状の固定電極13aが支持されている。
【0030】
可動側フランジ11bにおいては、柱状の可動側通電軸12bが、当該可動側フランジ11bを軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在するように、設けられている。この可動側通電軸12bは、軸心方向に伸縮自在で当該可動側通電軸12bと同軸状に配置された筒状のベローズ14を介して、可動側フランジ11bの真空容器1内側に支持されている。これにより、可動側通電軸12bは、当該軸心方向に移動自在となっている。
【0031】
図1に示す可動側通電軸12bの場合、ベローズ14の外周側を被覆して囲繞するように、筒状のベローズシールド15が設けられている。
【0032】
また、可動側通電軸12bの真空容器1内側の端部には、例えば平板状の可動電極13bが支持されており、当該可動側通電軸12bの軸心方向の移動に応じて、固定電極13aと接離するようになっている。
【0033】
筒状本体10は、固定電極13aおよび可動電極13bの外周側(接点13の外周側)を囲繞している筒状の中間タンク部2と、その中間タンク部2の軸心方向固定側に同軸状に連設されている固定側絶縁部3aと、当該中間タンク部2の軸心方向可動側に同軸状に連設されている可動側絶縁部3bと、を主として備えている。
【0034】
中間タンク部2の内周側における軸心方向固定側には、固定側絶縁部3aの内周側に沿って軸心方向固定側に延伸している固定側アークシールド4aが設けられており、中間タンク部2の軸心方向可動側には、可動側絶縁部3bの内周側に沿って軸心方向可動側に延伸している可動側アークシールド4bが設けられている。
【0035】
固定側アークシールド4a,可動側アークシールド4b(以下、適宜纏めて単にアークシールド4と称する)の両者は、中間タンク部2の内周側において、互いに軸心方向に離反した所望の位置で適宜支持することが可能である。例えば、図1図2に示すアークシールド4a,4bの場合、それぞれ中間タンク部2の内周側に形成された段差部20a,20b(以下、適宜纏めて単に段差部20と称する)に係合するように支持されており、当該アークシールド4a,4bの位置決めや組み付けの容易化に貢献し易くなっている。
【0036】
各アークシールド4は、中間タンク部2の内周側に沿って周方向に延在した環状であって、自身のアークシールド4を当該中間タンク部2の内周側に支持するアークシールド基端部41と、そのアークシールド基端部41と同軸の筒状であって当該アークシールド基端部41の内周側から軸心方向に延伸しているアークシールド本体部42と、を有している。
【0037】
各アークシールド4のアークシールド基端部41それぞれには、アークシールド本体部42よりも大径の同軸筒状の補助シールド5a,5b(以下、適宜纏めて単に補助シールド5と称する)が、当該アークシールド本体部42と同一方向に延伸するように支持(例えば、固定側アークシールド4aに支持される補助シールド5aの場合は固定側に延伸するように支持)されている。図1図2に示す補助シールド5の場合、アークシールド基端部41において、アークシールド本体部42よりも外周側の位置に、支持されている。
【0038】
固定側フランジ11aの真空容器1内側における外周縁側には、当該真空容器1内側から軸心方向可動側に延出した形状の筒状の固定側電界緩和シールド16aが、設けられている。また、可動側フランジ11bの真空容器1内側における外周縁側には、当該真空容器1内側から軸心方向固定側に延出した形状の筒状の可動側電界緩和シールド16bが、設けられている。
【0039】
以上示した真空インタラプタAの各構成要素の形状,材料等や、当該各構成要素の加工方法や組み付け方法等は、当該真空インタラプタAの使用目的等に応じて、種々の態様を適宜適用することが可能である。
【0040】
例えば図1図2に示すように、アークシールド4の延伸方向の先端部43や電界緩和シールド16a,16bの延伸方向の先端部17a,17bを、延伸方向に近づくに連れて縮径した湾曲形状にしたり、補助シールド5の延伸方向の先端部52(図中では先端部52のうち終端53側)を筒状本体10の径方向(以下、単に径方向と適宜称する)の内側に折曲させた折曲形状とすることが挙げられる。このような湾曲形状や折曲形状は、例えば絞り加工やプレス加工等により形成することが挙げられる。
【0041】
真空インタラプタAの各構成要素のうち固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bには絶縁性材料(例えばアルミナセラミックス)を適用し、その他には金属材料(例えばステンレス(SUS304),無酸素銅,チタン)を適用することが挙げられるが、当該各構成要素の組み付け時に膨張(熱膨張)や残留応力が発生し得ることを想定して、適宜選定することが好ましい。
【0042】
例えば、アークシールド4のアークシールド本体部42と補助シールド5との間(以下、単にシールド間と適宜称する)や、当該アークシールド4および補助シールド5と固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bとの間(以下、単にシールド絶縁間と適宜称する)においては、組み付け後に非接触状態を保持できるようにする必要があるため、各々の材料を適宜選定することが好ましい。
【0043】
一般的な一例として、固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bにはアルミナセラミックス(例えば線膨張係数8×10-6/℃のアルミナセラミックス)を適用し、アークシールド4や補助シールド5にはステンレス(SUS304;例えば線膨張係数18.7×10-6/℃のSUS304)または無酸素銅(例えば線膨張係数17.7×10-6/℃の無酸素銅)を適用することが挙げられるが、それぞれを溶接やロウ付け等により組み付けた場合には、当該アークシールド4や補助シールド5は固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bよりも膨張し易い傾向となる。
【0044】
このような膨張し易い傾向を考慮して、単にシールド間の距離やシールド絶縁間の距離を大きくし過ぎると、三重点の電界も大きくなってしまう。この三重点の電界を抑制するには、アークシールド4や補助シールド5の延伸方向の寸法を長尺化することが挙げられるが、この場合、組み付け時の芯ズレが生じ易くなることが考えられる。
【0045】
したがって、前記組み付け後の非接触状態を保持するには、固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bに近接し得る補助シールド5に適用する材料の線膨張係数を、アークシールド4に適用する材料の線膨張係数よりも小さくしたり、固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bに適用する材料に線膨張係数に近似するように、当該各材料を適宜選定することが好ましい。
【0046】
具体的に、固定側絶縁部3a,可動側絶縁部3bに例えば線膨張係数8×10-6/℃のアルミナセラミックスを適用した場合、補助シールド5には例えば線膨張係数8.4×10-6/℃のチタン、または当該チタンを主成分とする合金を適用することが挙げられる。また、アークシールド4は、自身のアークシールド4に支持されている補助シールド5の先端部52よりも、アークシールド本体部42の先端部43が軸心方向に突出するように延伸させることが挙げられる。
【0047】
このように各構成要素の形状や材料を適宜設定することにより、シールド間の距離やシールド絶縁間の距離を抑制し、アークシールド4や補助シールド5の長尺化も抑制して、前記組み付け後の非接触状態を保持することが可能となる。
【0048】
前述のようにシールド間の距離やシールド絶縁間の距離を抑制した場合には、各アークシールド4を中間タンク部2に支持してから補助シールドを組み付けることは困難となる場合がある。このような場合、アークシールド4に補助シールド5を予め支持してから、当該アークシールド4を中間タンク部2に支持することが好ましい。
【0049】
≪実施例2≫
図3は、実施例2による真空インタラプタAの変形例を示すものである。
【0050】
実施例2の真空インタラプタAのアークシールド4は、図3に示すように、アークシールド本体部42の先端部43のうちアークシールド基端部41側である中央部44側が、延伸方向(終端45側)に近づくに連れて縮径した形状となっている。また、アークシールド本体部42の先端部43のうち終端45側が、径方向の外側に拡径して湾曲された形状(以下、単に終端拡径湾曲形状と適宜称する)となっている。具体的に、図3に示す終端拡径湾曲形状は、先端部43のうち終端45側が、径方向の外側に拡径しながら、延伸方向の反対側に反り返って中央部44側に近接するような形状となっている。
【0051】
このような終端拡径湾曲形状を有したアークシールド4によれば、例えば図1図2に示したアークシールド4と比較して、電界緩和効果がより得られ易くなる。
【0052】
補助シールド5の先端部52においては、アークシールド本体部42の終端45側に向かって湾曲された形状となっている。具体的に、図3に示す補助シールド5の先端部52の場合、当該先端部52の終端53が、アークシールド本体部42の終端45に近接するように、湾曲した形状となっている。
【0053】
アークシールド本体部42の終端拡径湾曲形状は、金型等を用いて加工することが挙げられるが、当該加工後に金型を引き抜く必要があるため、例えば図3に示すように、先端部43における中央部44と終端45との間に空隙46が形成されてしまう可能性がある。
【0054】
前記のように空隙46が形成されてしまうと、アークシールド本体部42の終端45からの放電が起こり得るが、図3に示すように補助シールド5の先端部52が当該終端45側に向かって湾曲された形状であれば、当該放電を十分抑制することが可能である。
【0055】
ゆえに、実施例2の真空インタラプタAによれば、実施例1と比較して、アークシールド4の電界緩和効果がより得られ易くなり、アークシールド本体部42の終端45から起こり得る放電を抑制することも可能となる。
【0056】
≪実施例3≫
図4図5は、実施例3による真空インタラプタAの変形例を示すものである。
【0057】
実施例3の真空インタラプタAの中間タンク部2は、図4図5に示すように、筒状のタンク本体部21と、当該タンク本体部21の固定側および可動側それぞれに同軸状に連設された一対の筒状のアダプタ6a,6b(以下、適宜纏めて単にアダプタ6と称する)と、を有したものとなっている。
【0058】
前記のように連設されたタンク本体部21とアダプタ6とにおいて互いに対向している面71,72による連設面7a,7b(以下、適宜纏めて単に連設面7と称する)は、径方向に向かって階段状に延在した形状となっている。また、連設面7のうち、径方向の内側で当該径方向に延在している面81,82(以下、適宜纏めて単に径方向延在面8と称する)においては、軸心方向に互いに離反した形状であり、後述するようにアークシールド基端部41と補助シールド5の基端部51との両者を挟持できるようになっている。
【0059】
アークシールド4が支持している補助シールド5の基端部51は、径方向の外側に折曲された形状となっている。そして、アークシールド基端部41と補助シールド5の基端部51との両者(以下、単に基端部同士と適宜称する)は、軸心方向に積層された姿勢で径方向延在面8に挟持されるように、中間タンク部2の内周側に支持されている。
【0060】
実施例3のような真空インタラプタ3によれば、基端部同士を径方向延在面によって挟持できるため、アークシールド4や補助シールド5を中間タンク部2の内周側に支持する場合の位置決めや組み付けの容易化に貢献できるだけでなく、当該組み付け加工において、ロウ付け等を適宜省略できる可能性がある。一方、前記組み付け加工においてロウ付け等を適用した場合には、アークシールド4や補助シールド5を中間タンク部2の内周側に対してより強固に支持できる可能性がある。
【0061】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0062】
例えば、実施例1~3による真空インタラプタAの構成は、互いに適宜流用することが可能である。具体的には、図1図3に示した真空インタラプタAの中間タンク部2において、図4図5に示すようにタンク本体部21やアダプタ6a,6bを有した構成を適用し、アークシールド4を、連設面7の径方向延在面8で挟持するように、中間タンク部2の内周側に支持しても良い。
【0063】
また、図4図5に示した真空インタラプタAの中間タンク部2において、図1図3に示すように段差部20を有した構成を適用し、基端部同士を、当該段差部20に係合するように中間タンク部2の内周側に支持しても良い。
【符号の説明】
【0064】
A…真空インタラプタ
1…真空容器
10…筒状本体
2…中間タンク部
21…タンク本体部
3a…固定側絶縁部
3b…可動側絶縁部
4a,4b…アークシールド
41…アークシールド基端部
42…アークシールド本体部
5a,5b…補助シールド
6a,6b…アダプタ
7a,7b…連設面
8a,8b…径方向延在面
図1
図2
図3
図4
図5
図6