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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044766
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】物品登記システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/32 20060101AFI20230327BHJP
   G06F 21/64 20130101ALI20230327BHJP
   G09C 1/00 20060101ALI20230327BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20230327BHJP
【FI】
H04L9/00 675Z
G06F21/64
G09C1/00 640E
G06Q50/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152799
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】512031806
【氏名又は名称】ドリームフォレスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅信
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC28
(57)【要約】
【課題】物品の真正性に係る情報と、物品の移転に係る情報を電子的に登記し、物品の真正性を担保する物品登記システムを提供する。
【解決手段】作品の作者が所有する作者端末は、作品の真正性を示す複数種類のエビデンスに基づいて、エビデンストークンを作成する。そして、このエビデンストークンを含むブロックチェーンエビデンスを、ブロックチェーンネットワークのブロックチェーンに登録する。エビデンストークンを作成する基となるエビデンスは、エビデンストークンを再現するスクリプトと共にデータサーバにアップロードされている。ブロックチェーンエビデンスに記録されている、エビデンスのURIを用いてエビデンスとスクリプトをダウンロードすることにより、エビデンストークンの再現及び検証が可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のブロックチェーン制御端末が相互にP2P接続されるブロックチェーンネットワークと、
作品の作者が所有する作者端末と、
前記作品を譲受する所有者が所有する所有者端末と、
前記作品の複数種類の特徴をデータ化したエビデンスがアップロードされているデータサーバと、
前記作品の真贋を判定する真贋判定AIと
を有する物品登記システムであって、
前記作者端末は、
ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを保持する第一のウォレットと、
前記第一のウォレットに記録される前記ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを管理する第一のウォレット管理部と、
前記データサーバ及び前記ブロックチェーンネットワークとデータの送受信を行う第一の入出力制御部と
を具備し、
前記所有者端末は、
ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを保持する第二のウォレットと、
前記第二のウォレットに記録される前記ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを管理する第二のウォレット管理部と、
前記作者端末または他の所有者の所有者端末、及び前記ブロックチェーンネットワークとデータの送受信を行う第二の入出力制御部と
を具備する、
物品登記システム。
【請求項2】
前記第一の入出力制御部は、前記データサーバに前記エビデンスをアップロードして、前記ブロックチェーンネットワークに前記作品のノンファンジブルトークンであるNFT-Pの作成を依頼するものである、
請求項1に記載の物品登記システム。
【請求項3】
前記真贋判定AIは、前記データサーバから前記エビデンスをダウンロードして、前記作品の真贋判定のための学習を行うものであり、
前記NFT-Pは、前記真贋判定AIのURIが記述されていると共に、前記作者端末または他の所有者端末の前記ウォレットから前記所有者端末の前記ウォレットへ移転するものである、
請求項1または2に記載の物品登記システム。
【請求項4】
前記ブロックチェーンネットワークが保持する分散台帳であるブロックチェーンには、前記真贋判定AIの認証情報が記述されているノンファンジブルトークンであるNFT-AIが登録されている、
請求項3に記載の物品登記システム。
【請求項5】
前記作者端末は更に、
前記エビデンスが格納される不揮発性ストレージと、
前記エビデンスから所定の演算処理によって作成されるトークンであるエビデンストークンを作成すると共に、エビデンストークンを作成するための演算手順を記述したスクリプトを作成するエビデンス演算処理部と
を具備し、
前記第一の入出力制御部は、前記データサーバに前記エビデンスと前記スクリプトをアップロードするものであり、
前記ブロックチェーンには、前記エビデンストークンを含むブロックチェーンエビデンスが登録されている、
請求項4に記載の物品登記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品登記システムに関する。
より詳細には、物品の真正性に係る情報と、物品の移転に係る情報を電子的に登記し、物品の真正性を担保する物品登記システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会のデジタル化に伴い、全ての有体物がインターネットに繋がり、付加価値向上のサービスと連携するようになってきた。
これ以降、家電やIT機器等の、電子回路を内蔵する有体物全般を、電子機器と呼ぶ。電子機器は、CPUやメモリ等よりなる演算装置と、演算装置と外部との情報の送受信を行うBluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の通信装置を具備する。また電子機器は、当該電子機器の内部に他の機器との一意性を担保する為のID等を格納することが可能である。このような電子機器は、Secure MemoryやTPM等のIDを格納する部品と、真性を証明すべき有体物本体(製品)が一体不可分であることが多い。したがって、IDの真正性を証明することが当該有体物そのものの真正性を証明することとなる。
【0003】
一方、例えば高級ワイン、高級ブランド品(服、装飾品、等)、伝統工芸品、絵画、記念品等々の、電子回路を内蔵しない有体物については、識別手段としてQRコード(登録商標)等の印刷物を貼付することでIDの代用とすることが多い。しかし、こうした印刷物は容易にコピーすることができるため、印刷物を貼付しただけでは当該有体物の真贋の区別はできない。そこで、真正性を証明したい対象となる有体物に、NFC(Near Field Communication)等の電子タグを貼付することが考えられる。NFCを採用することでコピーによる偽造自体は防げるが、真正の電子タグそのものを剥がして贋物に再貼付することで本物と偽ることができてしまうため、根本的な問題解決とならない。
【0004】
そもそも、有体物(この場合、ハードウェア)は本来なら制作者または製作者でしか真正性の証明ができないのに、それをラベル(タグ)を貼って、あたかもラベル(タグ)に価値(真正性の証明)があるような仕組みでは、本質的な課題解決にはならない。故に、ラベル(タグ)を移転することにより贋物を本物と偽る行為はなくならない。
【0005】
特許文献1には、ブロックチェーンを用いて、コンテンツデータの権利を流通するコンテンツ契約システム、コンテンツ契約方法、権利者端末、譲受人端末、制御端末、コンテンツ蓄積サーバ、権利者プログラム、譲受人プログラム、制御プログラム及びコンテンツ蓄積プログラムに関する技術が開示されている。
特許文献2には、ブロックチェーンのためのリソースの公平性のためのシステム、方法及び非一時的コンピュータ可読媒体に関する技術が開示されている。
特許文献3には、スマートコントラクトによって、借入または貸付の管理を行うための技術的手段を提供する、借入と貸付とを管理する方法、借入を管理する方法、貸付を管理する方法、及びスマートコントラクトに関する技術が開示されている。
非特許文献1には、イーサリアム(Ethereum(登録商標))に関する技術が開示されている。
非特許文献2には、Non-Fungible Token(ノンファンジブルトークン、以下「NFT」)に関する技術が開示されている。
非特許文献3には、著名画家の偽版画が流通している事案に対し、文化庁がブロックチェーンによる作品管理の検討を始めた旨の報道記事が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-68388号公報
【特許文献2】特開2019-160316号公報
【特許文献3】特許6804073号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「[Japanese] White Paper」、インターネット< https://github.com/ethereum/wiki/wiki/%5BJapanese%5D-White-Paper >
【非特許文献2】「EIP-721: Non-Fungible Token Standard」、インターネット<https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-721 >
【非特許文献3】「偽版画「鑑定」なく横行 歯止めにブロックチェーン検討」、2021年8月25日、日本経済新聞、インターネット< https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE116VI0R10C21A5000000/ >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、物品の登記をブロックチェーンで行う動きが現れつつある。しかしながら、ブロックチェーンには登録されたトークンの真正性を担保することはできても、ブロックチェーン自体に物品の真正性を担保する仕組みは存在しない。
【0009】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、物品の真正性に係る情報と、物品の移転に係る情報を電子的に登記し、物品の真正性を担保する物品登記システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の物品登記システムは、複数台のブロックチェーン制御端末が相互にP2P接続されるブロックチェーンネットワークと、作品の作者が所有する作者端末と、作品を譲受する所有者が所有する所有者端末と、作品の複数種類の特徴をデータ化したエビデンスがアップロードされているデータサーバと、作品の真贋を判定する真贋判定AIとを有する。
作者端末は、ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを保持する第一のウォレットと、第一のウォレットに記録されるファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを管理する第一のウォレット管理部と、データサーバ及びブロックチェーンネットワークとデータの送受信を行う第一の入出力制御部とを具備する。
所有者端末は、ファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを保持する第二のウォレットと、第二のウォレットに記録されるファンジブルトークン及び/またはノンファンジブルトークンを管理する第二のウォレット管理部と、作者端末または他の所有者の所有者端末、及びブロックチェーンネットワークとデータの送受信を行う第二の入出力制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、物品の真正性に係る情報と、物品の移転に係る情報を電子的に登記し、物品の真正性を担保する物品登記システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る物品登記システムの全体像を示す概略図である。
図2】物品登記システムのネットワーク構成を示す概略図である。
図3】作者端末及び所有者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】認証認可サーバ、データサーバ、ブロックチェーンのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】作業者端末及び所有者端末のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図6】認証認可サーバ及びデータサーバのソフトウェア機能を示すブロック図である。
図7】真贋判定AIのソフトウェア機能を示すブロック図である。
図8】ブロックチェーンのソフトウェア機能を示すブロック図である。
図9】種々のデータの構造を示す表である。
図10】作者が作品を完成してから真贋判定AIに対して学習処理を行うまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
図11】真贋判定AIの認証から、NFT-AIを作成し、最初のNFT-Pを作成する処理の流れを示すシーケンス図である。
図12】前の所有者である作者から次の所有者である第一所有者へ作品を売却した際の、ブロックチェーンにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図13】作品所有者が真贋判定AIを使用する際の認証認可処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[用語]
以下に、本実施形態において用いる言葉を列挙してそれらの意味を説明する。
認証:人や物等の対象を特定することを指す。より詳細には、後述するKYCやeKYC等を使用して、対象の真正性を確認する行為を指す。
認可:人や物等の対象に対し、ある資源に対する何らかの権限や権利を与えることを指す。後述するアクセストークンに与えられる権限がこれに該当する。
トークン(token):何らかの規則によって生成された、乱数またはランダムな文字列を指す。
アクセストークン(access token):ある資源(多くの場合、サーバ等の情報資源)に対して所定の権限を受けて当該資源を利用するための鍵となる、乱数またはランダムな文字列を指す。アクセストークンを取得したクライアントアプリは、資源に対するアクセスを認可される。多くの場合、資源に対するアクセスの認可が認められたアクセストークンは、資源の利用時間や資源の利用範囲が制限された状態で、認可サーバから利用者へ供与される。利用時間が制限されたアクセストークンは、当該利用時間が徒過するとアクセストークンとしての権限が失われ、資源の利用ができなくなる。
【0014】
OAuth 2.0:クライアントアプリがある資源に対するアクセスを資源サーバに認可して貰うためのアクセストークンを、認可サーバから取得するためのプロトコル(手続)である。例えば、異なるwebサービス間の連携には、OAuth 2.0に準拠したアクセストークンが推奨されている。
ブロックチェーン(block chain):「分散台帳」とも呼ばれる。P2P接続で複数台接続されるホスト装置がコピーし合う、暗号化技術を応用してレコードの削除と書換を禁じて、追記録のみが許可される電子データファイルである。多くの場合、JSON(JavaScript Object Notation)(「JavaScript」は登録商標)形式やJSONに準じた形式のデータで記述される。
【0015】
ファンジブルトークン(fungible token):fungibleとは「相互に交換可能な」という意味である。転じて、相互に交換可能な価値を有するトークンを指す。例えば暗号通貨等がこれに該当する。但し、不正取引等によって当該 fungible token の価値が大きく毀損されると、それはもはやfungible でなくなる。
【0016】
ノンファンジブルトークン(non fungible token、以下「NFT」): fungible token の否定なので、「相互に代替できないトークン」である。当初は電子資産に用いられたが、実体を有する物理的資産にも用いられるケースが現れ始めた。
NFTはERC721またはERC1155で規格化されている。ERCとは”Ethereum Request for Comments”(「Ethereum」は登録商標)を指し、イーサリアム(登録商標)における標準を定めた文書である。
【0017】
KYC:Know Your Customerの略。銀行、証券口座等の種々のサービスを受ける際に求められる本人確認を指す。具体的には、免許証、保険証、マイナンバーカード等の本人確認書類が該当する。
eKYC:electronic Know Your Customerの略。銀行、証券口座等の種々のサービスを受ける際に求められる本人確認をオンライン上で行う技術、手続等を指す。具体的には、免許証、保険証、マイナンバーカード等の本人確認書類と、本人だけが実施可能な手続を組み合わせた本人確認手続等が該当する。
但し、本実施形態に限って、eKYCと記されている場合は、eKYC手続に用いられる本人確認に用いるデータ列を指すものとする。
【0018】
[本発明の実施形態の概要]
以下、前述したNFCタグについて、説明を続ける。
まず、一般の電子機器とは異なり、本発明の実施形態では、IDを格納するNFCタグを貼り付ける部位と、物品そのものの付加価値を決める部位が異なるケースもある。
例えば、高級ワインの場合、付加価値をもっているのは液体のワインであって、NFCタグを貼付するボトルではない。
つまり、本発明の実施形態では、単一の要素による認証では不十分な場合がある。そこで、多要素の組合せによる認証方式を本発明の実施形態の基本と考えることにした。
上述の高級ワインの例で説明すると、ボトル本体と未開封の証明の二つがあって初めて用をなすと考えられる。
【0019】
稀少価値をもつ物品には固有の特徴があると想定される。例えば、絵画だと作者が特殊な方法で隠れたサインを施すとか、高級な着物の場合には織物のパターンが一つしかないとか、大リーグの著名選手にサインをしてもらったホームランボールとその著名選手と一緒に撮った写真とかが考えられる。つまり、作者の意図により複数の唯一性を示すサインまたは印が遺されている。そのサインまたは印は、画像(2D/3D/X線)、音、音声などの成分分析により判別可能である。昨今のAIによる機械学習により、正確に判定できるレベルにまでAIの性能は向上していると言ってよい。
【0020】
これ以降、以上に説明したような、物品に固有の真正性を示す証拠を、エビデンスと呼ぶ。本発明の実施形態に係る物品登記システムは、物品から複数のエビデンスを取得して、複数のエビデンスから演算して得られるトークン(以下、「エビデンストークン」という)をブロックチェーンに登録する。
また、作者のeKYC、所有者のeKYCを物品のエビデンストークンと共にNFTとしてブロックチェーンに登録する。
更に、物品から得られる複数のエビデンスをAIに学習させることにより、AIが物品の真贋判定を行い、真正性を鑑定する。AIが人に代わって、鑑定人の役割を行うことで、自然人の作者が逝去したり、法人の作者が解散したりしても、当該AIが存在する限り、物品の真正性を担保することができる。
【0021】
[物品登記システム101]
図1は本発明の実施形態に係る物品登記システム101の全体像を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の物品登記システム101に関わる「人」は三者存在する。この「人」は、自然人の他、法人等の団体も含む概念である。
先ず、作品102または製品を作成する作者103が存在する。作者103は、作品102または製品を作成する自然人または団体である。
【0022】
作品102または製品とは、所定の価値を有する物品である。物品は、有体物、無体物を問わない。これ以降、本実施形態では作品102と称し、一例として本実施形態に係る作品102は絵画であるものとする。
作者103は、作品102に、作品102の真正性を証明するエビデンスの一つとなるNFCタグ112が貼付される。NFCタグ112には、NFCタグ112を一意に識別するNFCタグIDが格納されている。
【0023】
第一所有者104が作品102を気に入ったとする。すると、作品102は有償にて作者103から第一所有者104へ売却される。更に、第二所有者105が作品102を気に入ったとする。すると、作品102は有償にて第一所有者104から第二所有者105へ売却される。このように、作品102は有償にて作者103から様々な所有者へ所有権が移転する。第一所有者104及び第二所有者105も、作者103と同様、自然人または団体である。
このような作品102の所有権の移転は、分散台帳とも言われるブロックチェーンネットワーク106に記録される。
【0024】
作者103、第一所有者104、第二所有者105は、それぞれ自ら操作する作者端末107a、第一所有者端末107b、第二所有者端末107cを所有する。本実施形態では、一例としてこれら端末はスマートフォンであるものとする。また、これ以降、作者端末107a、第一所有者端末107b、第二所有者端末107cを区別しないときは端末107と称する。また、第一所有者端末107b、第二所有者端末107cを区別しないときは所有者端末と称する。所有者端末は、作品102を譲受する所有者が所有する端末である。
端末107は上位装置とインターネット201(図2参照)で接続される。
上位装置には、ブロックチェーンネットワーク106、真贋判定AI108、認証認可サーバ109、データサーバ110が存在する。
【0025】
ブロックチェーンネットワーク106は、複数台のブロックチェーン制御端末202(図2B参照)がインターネット201上で相互にP2P接続されてなるネットワークである。ブロックチェーンネットワーク106は前述のとおり、作品102の所有権の移転と現在の所有者を記録する。
真贋判定AI108は、公知のDNN(Deep Neural Network)の機能を有し、作品102の真贋を判定する機能を有する。
【0026】
ブロックチェーンネットワーク106には、作品102から得られるエビデンス111に、所定の演算処理を施すことで得られるエビデンストークンが記録される。更に、エビデンストークンに加えて、作者103のeKYCが含まれるNFTが記録される。これ以降、このNFTをNFT-P113と呼ぶ。NFT-P113は作品102の所有者を証明する情報であり、作品102の売却(移転)に伴って、所有者端末のウォレット502(図5参照)に移転される。このため、NFT-P113は最初に作者103によって作成される。そして、NFT-P113は作者103によって一度作成された後は二度と書換、追記、修正等の変更を行うことはできない。
【0027】
図1に示すように、作者103が作品102を作成した後、ブロックチェーンネットワーク106は作者103の依頼によってNFT-P113を生成し、作者端末107aのウォレット502に収納される(S121)。
また、作者103が作品102を第一所有者104に売却すると、NFT-P113は作者端末107aのウォレット502から第一所有者端末107bのウォレット502へ移転する(S122)。
更に、第一所有者104が作品102を第二所有者105に売却すると、NFT-P113は第一所有者端末107bのウォレット502から第二所有者端末107cのウォレット502へ移転する(S123)。
ウォレット502の詳細は後述する。
【0028】
エビデンス111とは、作品102の複数種類の特徴をデータ化したものである。詳細は後述する。
作品102のエビデンス111としては、エビデンストークンとしてブロックチェーンネットワーク106に登録する分と、真贋判定AI108の学習に供する分が用意される。
図1に示すように、認証認可サーバ109が設けられおり、この認証認可サーバ109は、真贋判定AI108がエビデンス111を学習する際に実施する真贋判定AI108の認証と、真贋判定の際に実施する所有者の認証、及び真贋判定AI108に対する認可を行う。
【0029】
更に、認証認可サーバ109はデータサーバ110に接続されている。データサーバ110は、大容量の不揮発性ストレージを有しており、作者103によって作品102のエビデンス111がアップロードされる。そして、真贋判定AI108は、エビデンス111を学習する際に、データサーバ110からエビデンス111をダウンロードする。
【0030】
真贋判定AI108は、作者103の要請に応じて、作品102の真贋を判定する。そのために、真贋判定AI108は、自身が作者103によって真贋判定を依頼された真贋判定代行者であることを証明する必要がある。そこで、認証認可サーバ109によって真贋判定AI108の認証が行われ、更にその認証に係る情報はブロックチェーンネットワーク106にNFTとして登録される。このNFTには、作者103のeKYC、真贋判定AI108の認証情報が格納される。これ以降、このNFTをNFT-AIと呼ぶ。NFT-AIは作者103が意図的に変更を行わない限り、基本的に不変である。
【0031】
図2Aは、物品登記システム101のネットワーク構成を示す概略図である。
作者端末107a、第一所有者端末107b、第二所有者端末107c、ブロックチェーンネットワーク106、真贋判定AI108、認証認可サーバ109、データサーバ110は、全てインターネット201に接続されている。
そして、全ての情報の授受は、インターネット201を通じて行われる。
【0032】
図2Bはブロックチェーンネットワーク106のネットワーク構成を示す概略図である。
ブロックチェーン制御端末202a、202b、202cは、全てインターネット201に接続されている。そしてブロックチェーン制御端末202a、202b、202cは、相互にP2P接続にて情報を共有する。図2Bでは、3台のブロックチェーン制御端末が表示されているが、ブロックチェーンネットワーク106を構成するブロックチェーン制御端末の台数は制限されない。
なお、ブロックチェーン制御端末202a、202b、202cを区別しない場合は、ブロックチェーン制御端末202と呼ぶ。
【0033】
[端末107:ハードウェア構成]
図3は、作業者端末107a及び所有者端末107b、107cのハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のスマートフォンである端末107は、バス309に、CPU301、ROM302、RAM303、液晶ディスプレイ等の表示部304、静電式タッチパネル等の操作部305、不揮発性ストレージ306、無線LANインターフェース(以下、「無線LANI/F」と略)307、広域無線通信部308が接続されている。表示部304と操作部305は周知のタッチパネルディスプレイ310を構成する。
【0034】
更にバス309には、NFCタグ112を読み取るためのNFCタグリーダ311、端末所有者の認証に用いる指紋スキャナ312、端末所有者の認証の他、作品102の真贋判定にも利用され得るカメラ313が接続されている。
なお、取引の対象になる物品が高価な物品の場合、スマートフォンに装備される通常のカメラ313よりも、ハイパースペクトルカメラ等の高性能なカメラが好ましい。そのような高性能なカメラから取得する大容量のデータは、周知のパソコン等を用いて、データサーバ110へアップロードされることとなる。
【0035】
[サーバ401:ハードウェア構成]
図4は、認証認可サーバ109、データサーバ110、ブロックチェーン制御端末202のハードウェア構成を示すブロック図である。これらは一般的なサーバである。
周知のサーバ401は、バス409に、CPU402、ROM403、RAM404、不揮発性ストレージ405、NIC(Network Interface Card)406が接続されている。
サーバ401は周知のパソコン等でも代用可能であり、その場合は表示部407と操作部408が付随する。
【0036】
[端末107:ソフトウェア機能]
図5は、作業者端末107a及び所有者端末107b、107cのソフトウェア機能を示すブロック図である。
図5に示すように、端末107は、入出力制御部505を備え、この入出力制御部505に、タッチパネルディスプレイ310、NFCタグリーダ311、指紋スキャナ312、カメラ313、不揮発性ストレージ306、認証処理部501、ウォレット502、ウォレット管理部503、及びエビデンス演算処理部504が接続されている。
入出力制御部505は、インターネット201に接続され、上位装置との情報の送受信を行う。
認証処理部501は、上位装置との認証処理を実行するが、処理の詳細は後述する。
【0037】
ウォレット管理部503は、ブロックチェーンネットワーク106や他の端末107と、トークンの授受を行う。ブロックチェーンネットワーク106や他の端末107から受け取ったトークンは、ウォレット502に収納される。ウォレット502から他の端末107へ送付したトークンは、送付が完了した時点でウォレット管理部503によって抹消される。
ウォレット502に収納されるトークンは、暗号通貨等のファンジブルトークン及び/またはNFTである。
【0038】
ウォレット502には、他の端末のウォレットと一意に識別可能なウォレットアドレス502aが付与されている。
エビデンス演算処理部504は、不揮発性ストレージ306に記憶されているエビデンス111に基づいて、エビデンストークンの演算処理を行う。エビデンストークンの演算処理の詳細については後述する。なお、エビデンス演算処理部504は作者端末107aでのみ機能し、第一所有者端末107bや第二所有者端末107c等の所有者端末では機能しない。
【0039】
[認証認可サーバ109及びデータサーバ110:ソフトウェア機能]
図6は、認証認可サーバ109及びデータサーバ110のソフトウェア機能を示すブロック図である。
入出力制御部601は、インターネット201に接続され、端末107や他のホスト装置との情報の送受信を行う。
認証処理部602は、不揮発性ストレージ405に格納されている図示しない認証認可テーブルを読み出して、必要な認証認可処理を実行する。
所定の認可されたクライアントからアップロードされたデータは不揮発性ストレージ405に保存される。
【0040】
[真贋判定AI108:ソフトウェア機能]
図7は、真贋判定AI108のソフトウェア機能を示すブロック図である。
入出力制御部701は、インターネット201に接続され、端末107や他のホスト装置との情報の送受信を行う。
認証処理部702は、入出力制御部701を通じて認証認可サーバ109と通信して、必要な認証処理を実行する。
NN演算処理部703は、DNN(Deep Neural Network)の学習処理及び推定処理を実行する。
不揮発性ストレージ405には、NN演算処理部703が真贋判定処理に使用する図示しない近似関数パラメータが格納されている。
エビデンス演算処理部704は、所定の処理手順に従って、入力されたエビデンス111の演算処理を行い、真贋判定結果を出力する。
【0041】
[ブロックチェーン制御端末202:ソフトウェア機能]
図8は、ブロックチェーン制御端末202のソフトウェア機能を示すブロック図である。
ブロックチェーン801には、ブロックチェーン本体データ802と、ステートデータ803が存在する。
ブロックチェーン本体データ802は、例えばJSONで記述された分散台帳である。本実施形態においては、イーサリアム(登録商標)を例として想定するが、必ずしもイーサリアム(登録商標)には限定されない。
ステートデータ803には、ブロックチェーン本体データ802における最新の記録内容が列挙されている。
【0042】
トランザクション処理部804は、ブロックチェーンネットワーク106のトランザクションを実行し、ブロックチェーン本体データ802に新規ブロックを追記する。ブロックチェーンにおけるトランザクション(transaction)とは、取引の記録を指す。ブロックチェーンでは、データベースのテーブルにおけるレコードに相当するものをブロックと呼ぶ。
トークン発行処理部805は、トランザクション処理部804によって起動され、トークンを発行する。
【0043】
[データ構造]
図9は、種々のデータの構造を示すテーブルを示す。
NFT-P113は、ブロックチェーンネットワーク106によって生成される。
NFT-P113には、トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYC、真贋判定AI108のURI(Uniform Resource Identifier)が格納される。
トークン識別子は、ブロックチェーンネットワーク106によって生成された、ブロックチェーン本体データ802の中におけるブロックを一意に識別するトークンである。
作品識別子は、作品102を示すトークンであり、NFCタグ112のIDが該当する。
作者103のeKYCは、作者103の真正性を示す情報(トークン)である。
真贋判定AI108のURIは、真贋判定AI108を利用する際に使用するURIである。
NFT-P113の正当性はブロックチェーンネットワーク106によって保証されている。
【0044】
NFT-AI901は、ブロックチェーンネットワーク106によって生成される。
NFT-AI901には、トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYC、真贋判定AI108の認証情報が格納される。
トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYCは、NFT-P113と同じである。
真贋判定AI108の認証情報は、真贋判定AI108の真正性を示す情報(トークン)である。
NFT-AI901は、作者103と作品102の組み合わせによって一意である。
このため、真贋判定AI108は多数のNFT-AI901を保持することとなる。
NFT-AI901の正当性はブロックチェーンネットワーク106によって保証されている。
【0045】
エビデンス111は、後述するブロックチェーンエビデンス902の基となる情報である。
エビデンス111には、例えば、作者103のサイン画像、作者103の隠しサイン画像、作品102の4K-3D画像、作品102のX線画像、作品102に使用した絵の具の成分表等が挙げられる。すなわち、エビデンス111は、作品102から得られる複数種類の特徴をデータ化したものである。なお、図9に列挙したこれらのエビデンスデータは、一例として作品102が絵画であることを想定したものであり、対象となる物品の種類によって、取得するエビデンスデータの種類は変化し得る。
【0046】
ブロックチェーンエビデンス902は、ブロックチェーンネットワーク106に登録されるエビデンスであり、作者103の作者端末107aによって作成され、ブロックチェーンネットワーク106にトランザクションとして記録される。
ブロックチェーンエビデンス902には、トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYC、エビデンストークン、エビデンスURIが格納される。
トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYCは、NFT-P113及びNFT-AI901と同じである。
エビデンスURIは、エビデンス111がアップロードされたデータサーバ110の、エビデンス111をダウンロードするためのURIである。
【0047】
エビデンストークンは、前述の通り、作品102から複数のエビデンス111を取得して、複数のエビデンス111からエビデンス演算処理部504の演算処理によって得られるトークンである。
【0048】
以下、エビデンス演算処理部504による演算処理の一例を説明する。
例えば、先のエビデンス111の例で挙げられる、作者103のサイン画像、作者103の隠しサイン画像、作品102の4K-3D画像、作品102のX線画像、作品102に使用した絵の具の成分表に対して、図5に示すエビデンス演算処理部504は、それぞれ周知のハッシュ関数によるハッシュ値を取得する。どれほど巨大なデータファイルであっても、ハッシュ関数を通すことにより、予め定められたデータ長のトークンが得られる。こうして、作者103のサイン画像から第一のハッシュ値、作者103の隠しサイン画像から第二のハッシュ値、作品102の4K-3D画像から第三のハッシュ値、作品102のX線画像から第四のハッシュ値、作品102に使用した絵の具の成分表から第五のハッシュ値が得られたとする。
【0049】
次に、エビデンス演算処理部504は、第一のハッシュ値、第二のハッシュ値、第三のハッシュ値、第四のハッシュ値及び第五のハッシュ値に対して、暗号演算において多用される、ビットシフト、排他的論理和、剰余等の演算を施す。
例えば、第一のハッシュ値に対しては+2ビットのビットシフトを施し、第二のハッシュ値に対してはある素数に対する剰余を施す等の演算が施される。この演算処理は、あるハッシュ値に対して複数個組み合わせてもよい。こうして、それぞれのハッシュ値から所定のデータ長のトークンが得られる。
最後に、エビデンス演算処理部504はそれら複数個のトークンを一つのデータとして組み合わせて、所定の演算処理を施すことで、エビデンストークンを作成する。そして、エビデンストークンを作成する演算手順を、スクリプトとして保持する。
【0050】
なお、エビデンス演算処理部504による、エビデンス111からハッシュ値を取得するタイミングは、必ずしも最初の段階でなくてもよい。例えば、巨大なデータファイルに対してビットシフト演算を施してからハッシュ値を取得してもよい。つまり、エビデンス演算処理部504は内部にハッシュ関数を有するが、エビデンス演算処理部504の演算処理手順における、ハッシュ関数によってハッシュ値を取得するタイミングは任意である。
【0051】
エビデンストークンの基となるエビデンス111は、スクリプトと共にデータサーバ110にアップロードされる。したがって、エビデンスURIに基づいてスクリプトを含むエビデンス111をダウンロードして、スクリプトに従ってエビデンスの演算処理を行うことで、エビデンストークンを再現することが可能になる。
【0052】
作品トランザクション903は、作品102の現在の所有者の端末によって作成され、ブロックチェーンネットワーク106にトランザクションとして記録される。
作品トランザクション903には、トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYC、現所有者のウォレットアドレスが格納される。
トークン識別子、作品識別子、作者103のeKYCは、NFT-P113、NFT-AI901及びブロックチェーンエビデンス902と同じである。
現所有者のウォレットアドレスは、作品102の現在の所有者が所有する所有者端末の、ウォレットアドレス502aである。
【0053】
[処理の流れ]
図10は、作者103が作品102を完成してから真贋判定AI108に対して学習処理を行い、その後、ブロックチェーンエビデンス902をブロックチェーンネットワーク106に登記するまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
作者103が作品102を完成すると(S1001)、作者103は作品102のエビデンス111を作成する処理を実施する(S1002)。この時、エビデンス111には、真贋判定AI108の学習処理を補助するための補助データが含まれている。
【0054】
エビデンス111が完成したら、作者103は作者端末107aを操作して(S1003)、エビデンス111を作業者端末107aにアップロードする(S1004)。そして、データサーバ110にエビデンス111を登録する(S1005)。この時、エビデンストークンの作成手順を記載したスクリプトも、エビデンス111に同梱する。
データサーバ110は、エビデンスデータを不揮発性ストレージ405に登録すると、作者端末107aに報告する。
作者端末107aは、エビデンス111のアップロードが完了した旨を表示部304に表示する(S1006)。
【0055】
作者103は、作者端末107aの表示を確認すると、エビデンス学習指示操作を行う(S1007)。
すると、作者端末107aは、真贋判定AI108へエビデンス学習指示を行う(S1008)。
真贋判定AI108は、作者端末107aから指示されたURIを通じて、データサーバ110からエビデンス111をダウンロードする(S1009)。
データサーバ110は、真贋判定AI108へエビデンス111をアップロードする(S1010)。この時、ステップS1004にてエビデンス111に同梱されていた、エビデンストークンの作成手順を記載したスクリプトも、エビデンス111と同時にアップロードされる。このスクリプトにより、真贋判定AI108はエビデンス演算処理部704を実行可能になる。
【0056】
真贋判定AI108は、データサーバ110からエビデンス111をダウンロードしたら、エビデンス111の学習処理を行う(S1011)。
ステップS1011の学習処理が終わったら、真贋判定AI108はデータサーバ110に補助データの削除を指示する(S1012)。
データサーバ110は、真贋判定AI108からの指示を受けて、補助データの削除を実行する(S1013)。
【0057】
真贋判定AI108は、データサーバ110から補助データの削除完了の報告を受けたら、作者端末107aへ学習処理が完了した旨を報告する(S1014)。
作者端末107aは、真贋判定AI108から学習処理が完了した旨の報告を受けると、表示部304に学習完了を表示する(S1015)。
【0058】
作者103は、真贋判定AI108から学習処理が完了した旨の報告を受けて、ブロックチェーンエビデンス902をブロックチェーン801に登記する操作を行う(S1016)。なお、図10では、ブロックチェーンエビデンスを「BCE」と略している。
作者端末107aは、操作を受けてブロックチェーンネットワーク106にブロックチェーンエビデンス902の登記を申請する(S1017)。
【0059】
ブロックチェーンネットワーク106は、作者端末107aの申請を受けて、ブロックチェーンネットワーク106にブロックチェーンエビデンス902を登録する(S1018)。作者端末107aは、ブロックチェーンネットワーク106の報告を受けて、ブロックチェーンエビデンス902の登記が完了した旨を表示部304に表示する(S1019)。
【0060】
図11は、真贋判定AI108の認証から、NFT-AI901を作成し、最初のNFT-P113を作成する処理の流れを示すシーケンス図である。図11は、図10の続きになる。
作者103は、作者端末107aの表示部304に表示されたブロックチェーンネットワーク106によるブロックチェーンエビデンス902の登記完了報告を確認すると、作者端末107aを通じてAI認証指示の操作をする(S1101)。
【0061】
作者端末107aは、認証認可サーバ109へAI認証を指示する(S1102)。
認証認可サーバ109は、真贋判定AI108の認証を開始する(S1103)。
真贋判定AI108は、認証認可サーバ109から認証処理を受けて、所定の認証情報を認証認可サーバ109に送信する(S1104)。
認証認可サーバ109は、認証情報の真正性を確認したら、その旨を真贋判定AI108に報告する(S1105)。
真贋判定AI108は、認証認可サーバ109の報告を受けて、ブロックチェーンネットワーク106にNFT-AI901の新規作成を申請する(S1106)。
【0062】
ブロックチェーンネットワーク106は、真贋判定AI108の要求を受けて、NFT-AI901を作成し、ブロックチェーン801(図8参照)に登録する(S1107)。
真贋判定AI108は、ブロックチェーンネットワーク106の報告を受けて、NFT-AI901を保存し、作者端末107aに自身の認証及びNFT-AI901作成が完了した旨を報告する(S1108)。
【0063】
作者端末107aは、真贋判定AI108の報告を受けて、真贋判定AI108の認証等が完了した旨を表示部304に表示する(S1109)。
作者103は、作者端末107aの表示を確認すると、ブロックチェーンネットワーク106へNFT-P113の申請を操作する(S1110)。
作者端末107aはブロックチェーンネットワーク106へNFT-P113を申請する(S1111)。
ブロックチェーンネットワーク106は、作者端末107aの依頼を受けて、NFT-P113を作成し、ブロックチェーン801に登録する(S1112)。
作者端末107aは、ブロックチェーンネットワーク106の報告を受けて、NFT-P113の作成が完了した旨を表示部304に表示する(S1113)。
【0064】
図12は、作品102の前の所有者である作者103から次の所有者である第一所有者104へ作品102を売却した際の、作者端末107aと第一所有者端末107bにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
作者103と第一所有者104は、作品102の売却契約を完遂する(S1201)。
作者103は第一所有者104へNFT-P113を譲渡する準備の操作を作者端末107aへ行う(S1202)。
【0065】
作者端末107aは、作者103の操作を受けて、第一所有者104の真正性を確認すべく、第一所有者104の認証を認証認可サーバ109へ申請する(S1203)。
認証認可サーバ109は、第一所有者端末107bへ第一所有者104の認証を開始することを伝える送信を行う(S1204)。
第一所有者端末107bは、認証認可サーバ109から送信された認証手続の画面を表示する(S1205)。
【0066】
第一所有者104は、認証認可サーバ109の要求に対し、認証操作を行う(S1206)。この時、第一所有者端末107bに備わっているカメラ313や指紋スキャナ312等が用いられる場合がある。第一所有者端末107bは、第一所有者104によって入力された認証情報を認証認可サーバ109へ送信する(S1207)。
認証認可サーバ109は、第一所有者104の認証を完了すると(S1208)、認証の完了を第一所有者端末107bと作者端末107aへ報告する。
第一所有者端末107bは、認証認可サーバ109から認証手続の完了報告を受けると、その旨を表示部304に表示する(S1209)。
作者端末107aも、認証認可サーバ109から認証手続の完了報告を受けると、その旨を表示部304に表示する(S1210)。
【0067】
作者103は、作者端末107aの表示部304を確認すると、第一所有者104へNFT-P113を譲渡する操作を作者端末107aへ行う(S1211)。
作者端末107aは、作者103の操作を受けて、第一所有者端末107bへNFT-P113を送信する。この作者端末107aから第一所有者端末107bへのNFT-P113の送信したことをもって、作者103から第一所有者への作品102の譲渡が完了する(S1212)。
【0068】
第一所有者端末107bは、作者端末107aからNFT-P113を受領(受信)すると、内部のウォレットに登録すると共に、受領報告を作者端末107aへ送信する(S1213)。そして、第一所有者端末107bは、表示部304にNFT-P113を受領した旨を表示する(S1214)。
作者端末107aは、第一所有者端末107bからNFT-P113受領報告を受けると、ウォレット内部のNFT-P113を抹消して(S1215)、表示部304にNFT-P113を抹消した旨、表示する(S1216)。
【0069】
NFT-P113の譲渡に際し、作品の譲受人である第一所有者104が悪意ある第三者による成りすましである可能性を排除するため、本発明の実施形態に係る物品登記システム101は、認証認可サーバ109を通じた認証処理を、NFT-P113の譲渡の前提としている。
【0070】
作者103は、NFT-P113の移転手続が正常に完遂したことを受けて、作品102を第一所有者104へ送付する(S1217)。第一所有者104は作品102を受領する(S1218)。
第一所有者104は、作者103から作品102を受領したことを受けて、ステップS1213で受領したNFT-P113に基づき、NFT-P113の現所有者が第一所有者104であることをブロックチェーン801に登記する操作を行う(S1219)。第一所有者端末107bは、操作を受けてブロックチェーンネットワーク106にNFT-P113の移転登記を申請する(S1220)。
【0071】
ブロックチェーンネットワーク106は、第一所有者端末107bの申請を受けて、ブロックチェーン801にNFT-P113の所有者が第一所有者104になった旨のトランザクションである、作品トランザクション903を登録する(S1221)。
第一所有者端末107bは、ブロックチェーンネットワーク106の報告を受けて、NFT-P113の移転登記が完了した旨を表示部304に表示する(S1222)。
【0072】
NFT-P113の移転に関するブロックチェーンネットワーク106への登記は、NFT-P113の所有者の自発的行為であると共に、任意のタイミングで実行される。また、ブロックチェーンネットワーク106に対するNFT-P113の移転登記は、必ずしも実施が必要とは限らない。例えば、作品102の所有者が直ぐに他人に作品102を転売する場合は、当該所有者がブロックチェーンネットワーク106にNFT-P113の移転登記をせずとも、作品102の転売相手がNFT-P113の移転登記をすればよい。
【0073】
以上、図10図11及び図12の説明より、本発明の実施形態に係る物品登記システム101において、ブロックチェーン801には、以下の4種類のブロックが記録される。
一つ目のブロックは、図10のステップS1018で登録されるブロックチェーンエビデンス902である。
二つ目のブロックは、図11のステップS1107で登録されるNFT-AI901である。
三つ目のブロックは、図11のステップS1112で登録されるNFT-P113である。
四つ目のブロックは、図12のステップS1221で登録されるNFT-P113の作品トランザクション903である。
これら4種類のブロックに記載される情報の正当性は、ブロックチェーンネットワーク106によって保証されている。
【0074】
以上4種類のブロックのうち、NFT-AI901は作品102の移転に直接的には関係しない。
そして、ブロックチェーンエビデンス902とNFT-P113は、ブロックチェーン801に一度登録された以降は不変である。
唯一、作品トランザクション903のみ、作品102の移転に伴って、現所有者のウォレットアドレス502aが記載された新規ブロックがブロックチェーン801に追記される。
【0075】
図13は、作品所有者が真贋判定AI108を使用する際の認証認可処理の流れを示すシーケンス図である。図13における作品所有者は第二所有者105である。
第二所有者105がOAuth 2.0認証操作を行うと(S1301)、第二所有者端末107cは認証認可サーバ109へクライアント認証を要求する(S1302)。
認証認可サーバ109は、この要求を受けて、クライアントである第二所有者105の認証を行う(S1303)。
所定の認証が正常に完了したら、認証認可サーバ109は第二所有者端末107cへ認可を報告する。
第二所有者端末107cは、認証認可サーバ109からの報告を受けて、認可画面を表示する(S1304)。これを受けて、第二所有者105は認可操作を行う(S1305)。
第二所有者端末107cは、認証認可サーバ109へクライアントの認可、すなわち真贋判定AI108に対する限定的なリソースの使用許可を要求する(S1306)。この時、真贋判定AI108に対するアクセス要求は、NFT-P113に記述されている真贋判定AI108のURIを認証認可サーバ109に送信することで行われる。
【0076】
一方、認証認可サーバ109は、真贋判定AI108へ認証を要求する(S1307)。
真贋判定AI108は、認証認可サーバ109の要求を受けて、認証認可サーバ109の認証要求に応答する(S1308)。この時、真贋判定AI108はNFT-AI901に記憶されているものと同じ、真贋判定AI108の認証情報を認証認可サーバ109へ送信する。
認証認可サーバ109は、真贋判定AI108の応答を受けて、真贋判定AI108を認証する(S1309)。
【0077】
認証認可サーバ109は、ステップS1306の第二所有者端末107cから来た認可要求と、ステップS1309の真贋判定AI108の認証結果を受けて、第二所有者端末107cに認可コードを発行する(S1310)。
第二所有者端末107cは認証認可サーバ109から認可コードを受信すると、認証認可サーバ109へアクセストークンを要求する(S1311)。このアクセストークンが、真贋判定AI108に対する限定的なリソースの使用許可のためのトークンになる。
認証認可サーバ109は第二所有者端末107cの要求に従い、アクセストークンを発行する(S1312)。
【0078】
第二所有者端末107cは、アクセストークンを受信すると、認可が成功した旨を表示部304に表示する(S1313)。
第二所有者105は、第二所有者端末107cの表示部304に表示された内容を確認すると、第二所有者端末107cに真贋判定AI108の機能(API:Application Program Interface)を呼び出す操作を行う(S1314)。
第二所有者端末107cは、NFT-P113に記述されている真贋判定AI108のURIに基づき、真贋判定AI108のAPIを呼び出す処理を行う(S1315)。
真贋判定AI108は、要求に応じて、APIの応答を行う(S1316)。
第二所有者端末107cは、APIの応答に応じた処理を行う(S1317)。
【0079】
ステップS1317以降は、ブロックチェーンネットワーク106に登録済みのブロックチェーンエビデンス902を真贋判定AI108が検証する処理と、新たな所有者が自ら作品102を撮影する等、エビデンス111を用意して、真贋判定AI108が検証する処理に別れる。
ブロックチェーンエビデンス902を真贋判定AI108が検証する際には、図10のステップS1010においてエビデンス111と同時に取得したスクリプトを、エビデンス演算処理部704が実行する。
【0080】
真贋判定AI108は機械である。仮に、生身の作者103が死去したとしても、真贋判定AI108は所定の条件下において存在し続けることが可能である。したがって、作者103の没後も、高名な鑑定専門家等の手を借りることなく、真贋判定AI108によって作品102の真贋を判定することが可能になる。
【0081】
本実施形態では、物品登記システム101を開示した。
作品102の作者103が所有する作者端末107aは、作品102の真正性を示す複数種類のエビデンス111に基づいて、エビデンストークンを作成する。そして、このエビデンストークンを含むブロックチェーンエビデンス902を、ブロックチェーンネットワーク106のブロックチェーン801に登録する。
エビデンストークンを作成する基となるエビデンス111は、エビデンストークンを再現するスクリプトと共にデータサーバ110にアップロードされている。ブロックチェーンエビデンス902に記録されている、エビデンス111のURIを用いてエビデンス111とスクリプトをダウンロードすることにより、エビデンストークンの再現及び検証が可能になる。
【0082】
作者103に代わって作品102の真贋判定を代行する真贋判定AI108の認証情報は、作者103によって、ブロックチェーン801にNFT-AI901として追記録される。
【0083】
作品102の所有者は、ブロックチェーンネットワーク106によって作成されたNFT-P113を、所有者自身の所有者端末に設けられているウォレット502に格納する。NFT-P113には、真贋判定AI108のURIが記述されているので、作品102の所有者は作品102の真贋判定を真贋判定AI108に依頼することができる。
作品102の所有者を示す、所有者端末のウォレット502に付されているウォレットアドレス502aは、所有者によって、ブロックチェーン801に作品トランザクション903として追記録される。
【0084】
ブロックチェーンエビデンス902、NFT-AI901、NFT-P113、作品トランザクション903の正当性は、ブロックチェーンネットワーク106によって保証されている。よって、物品登記システム101は、物品の取引の正当性を担保できる。
【0085】
更に、真贋判定AI108は作者103に代わって作品102の真贋判定を代行するので、作者103の没後も、高名な鑑定専門家等の手を借りることなく、真贋判定AI108によって作品102の真贋を判定することが可能になる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0087】
101…物品登記システム、102…作品、103…作者、104…第一所有者、105…第二所有者、106…ブロックチェーンネットワーク、107…端末、107a…作者端末、107b…第一所有者端末、107c…第二所有者端末、108…真贋判定AI、109…認証認可サーバ、110…データサーバ、111…エビデンス、112…NFCタグ、113…NFT-P、201…インターネット、202…ブロックチェーン制御端末、301…CPU、302…ROM、303…RAM、304…表示部、305…操作部、306…不揮発性ストレージ、307…無線LANインターフェース、308…広域無線通信部、309…バス、310…タッチパネルディスプレイ、311…NFCタグリーダ、312…指紋スキャナ、313…カメラ、401…サーバ、402…CPU、403…ROM、404…RAM、405…不揮発性ストレージ、406…NIC、407…表示部、408…操作部、409…バス、501…認証処理部、502…ウォレット、502a…ウォレットアドレス、503…ウォレット管理部、504…エビデンス演算処理部、505…入出力制御部、601…入出力制御部、602…認証処理部、701…入出力制御部、702…認証処理部、703…NN演算処理部、704…エビデンス演算処理部、801…ブロックチェーン、802…ブロックチェーン本体データ、803…ステートデータ、804…トランザクション処理部、805…トークン発行処理部、901…NFT-AI、902…ブロックチェーンエビデンス、903…作品トランザクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13