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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044772
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】食品保存庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20230327BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
F25D23/00 301L
F25D23/00 302M
F25D11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152810
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045EA01
3L045LA08
3L045MA00
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA25
3L345CC01
3L345DD67
3L345EE04
3L345EE36
3L345EE53
3L345FF04
3L345FF19
3L345FF35
3L345FF37
3L345FF38
3L345FF50
3L345GG17
3L345HH13
3L345HH32
3L345HH34
3L345HH36
3L345HH42
3L345JJ04
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】本開示は、食品由来のガスによりガスセンサの感知部が飽和することなく確実に食品特性の検知ができる食品保存庫を提供する。
【解決手段】本開示における食品保存庫は、食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知するにおいセンサと、収納物由来のガスを吸着または分解するにおい除去手段と、においセンサの検知信号を受信する制御手段とを有し、制御手段はにおい除去手段による作用を受けたガスおよび作用を受けていないガスを検知して両者の差を指標として収納物の状態を判定するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知するにおいセンサと、収納物由来のガスを吸着または分解するにおい除去手段と、前記においセンサの検知信号を受信する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記におい除去手段による作用を受けたガスおよび作用を受けていないガスを検知して両者の差を指標として前記収納物の状態を判定する食品保存庫。
【請求項2】
前記におい除去手段は、その脱臭作用程度を可変可能に設けられ、前記制御手段はにおい除去の程度が大きい状態と小さい状態のそれぞれにおいて前記においセンサにより検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定するようにした請求項1に記載の食品保存庫。
【請求項3】
前記収納室内のガスを搬送するための風路を有し、前記におい除去手段は、前記風路内に設けられ、前記においセンサは風路内で前記におい除去手段よりも下流で前記収納室よりも上流に設けるようにした請求項1または2に記載の食品保存庫。
【請求項4】
前記におい除去手段は、前記においセンサと同一空間に設けるようにした請求項1または2に記載の食品保存庫。
【請求項5】
前記におい除去手段は、電圧印加により活性酸素や酸化力のある化学種を発生する放電手段であり、前記制御手段は前記放電手段の印加電圧を変えることによりにおい除去の程度を変化させるようにした請求項2~4のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【請求項6】
前記風路は、前記におい除去手段を含む流路と含まない流路と、複数の流路を切替える風路切替え手段とを有し、前記制御手段は前記風路切替え手段によりにおい除去の程度を変化させるようにした請求項2~5のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【請求項7】
前記風路は、風向を切り替え可能な可変送風手段を有し、前記制御手段は前記可変送風手段によりにおい除去の程度を変化させるようにした請求項2~4、6のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【請求項8】
前記風路は、前記におい除去手段の温度を切替える加熱手段を有し、前記制御手段は前記加熱手段により、におい除去の程度を変化させるようにした請求項2~4、6~7のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【請求項9】
前記においセンサは、前記収納物よりも風路の上流および下流に複数設けられた上流においセンサおよび下流においセンサとして、前記上流においセンサと前記下流においセンサの両者の測定値の差を指標として前記収納物の状態を判定するようにした請求項1~8のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品を保存する食品保存庫であって、食品の鮮度、熟度などの特性変化を検知する機能を有する食品保存庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガスセンサによるガス濃度測定の基準値がずれていくこと課題に対応した冷蔵庫を開示する。この冷蔵庫は、貯蔵室内に感知部を有するガスセンサと、貯蔵室外の空気を感知部に供給する気体供給部とを備え、まず気体供給部により貯蔵室外の空気を供給することによって基準値を測定し、次に空気供給を止めた際の値を測定し、両者の差に基づいて鮮度判定するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、食品由来のガスによりガスセンサの感知部が飽和することなく確実に食品特性の検知ができる食品保存庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における食品保存庫は、食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知するにおいセンサと、収納物由来のガスを吸着または分解するにおい除去手段と、においセンサの検知信号を受信する制御手段とを有し、制御手段はにおい除去手段による作用を受けたガスおよび作用を受けていないガスを検知して両者の差を指標として収納物の状態を判定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における食品保存庫は、におい除去手段の作用がある時は、においセンサはにおい除去されたガスを測定し基準値を得る。またその際、測定対象ガス濃度は低いので、センサ感知部表面は不飽和状態を保つことができる。そのため、におい除去手段の作用が無い時には、センサ感知部表面は定量的な応答が可能で、確実に食品特性の検知ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る実施の形態1の冷蔵庫の縦断面を示す断面図
図2】実施の形態1の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図3】実施の形態1の冷蔵庫に設けられた制御部の構成を示すブロック図
図4】実施の形態1の冷蔵庫におけるにおいセンサの作動を示すタイムチャート
図5】実施の形態2の冷蔵庫における冷蔵室を示す横断面図
図6】実施の形態2の冷蔵庫における冷気循環経路の模式図
図7】実施の形態2の冷蔵庫におけるにおいセンサの作動を示すタイムチャート
図8】実施の形態3の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図9】他の実施の形態1の冷蔵庫における風路を示す模式図
図10】他の実施の形態2の冷蔵庫における風路を示す模式図
図11】他の実施の形態3の冷蔵庫における風路を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
特許文献1に開示された冷蔵庫においては、外部空気の導入という簡便で実用的な方法で基準状態(感知部が不飽和の状態)/応答状態(感知部が部分飽和の状態)を切替えることを意図したものである。しかしながら、センサ感知部が食品収納室内に設けられて比較的高濃度の食品由来ガスに長期間さらされるため、感知部が飽和に近い状態で維持される。
【0009】
外部空気の導入量を十分に多くしないと、センサ感知部が基準状態まで戻らず部分飽和状態となって、検知範囲が狭まってしまう。一方、外部空気の導入量を増やすと、食品収納室のガス濃度が低下するため検知感度が低減するという別の課題が発生する。
【0010】
両課題を解決するバランスの取れた空気導入は理論上可能であるものの、家庭用冷蔵庫などでは収納量によって通風抵抗が変わるために、実用上は解決困難である。
【0011】
そこで、本開示は、におい除去手段の作用/非作用を切替えることにより、センサ感知部を不飽和状態に維持して基準状態とし、検知時のみ食品由来ガスと接触して応答状態とすることにより、確実で定量的なにおい検知ができる食品保存庫を提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1の冷蔵庫を説明する。
【0015】
[1-1.構成]
図1において、左側が冷蔵庫10の正面側であり、右側が冷蔵庫10の背面側である。冷蔵庫10は、主に鋼板により形成された外箱1と、ABSなどの樹脂で成形された内箱2と、外箱1と内箱2との間の空間に充填発泡された断熱材21(例えば、硬質発泡ウレタン)とにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0016】
冷蔵庫10の断熱箱体は複数の貯蔵室を備えており、それぞれの貯蔵室の正面側開口には開閉可能な扉が配設されている。それぞれの貯蔵室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。
【0017】
実施の形態1の冷蔵庫10においては、最上部の貯蔵室が冷蔵室3である。冷蔵室3の直下の両側には、製氷室4と冷凍/解凍室5の2つの貯蔵室が並設されている。更に、製氷室4と冷凍/解凍室5の直下には冷凍室6が設けられており、冷凍室6の直下である最下部には野菜室7が設けられている。
【0018】
実施の形態1の冷蔵庫10における各貯蔵室は、上記の構成を有しているが、この構成は一例であり、各貯蔵室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0019】
冷蔵室3は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度、具体的な温度例としては1℃~5℃の温度帯で維持される。野菜室7は、冷蔵室3と同等もしくは若干高い温度帯、例えば2℃~7℃に維持される。
【0020】
冷凍室6は、冷凍保存のために冷凍温度帯、具体的な温度例としては、例えば-22℃~-15℃に設定される。冷凍/解凍室5は、通常は冷凍室6と同じ冷凍温度帯に維持され、ユーザの解凍指令に応じて、収納されている保存物(冷凍品)を解凍するための解凍処理が行われる。冷凍/解凍室5の構成、及び解凍処理に関する詳細については後述する。
【0021】
冷蔵庫10の上部には、機械室8が設けられている。機械室8には、圧縮機9および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容されている。なお、機械室8の配設位置としては冷蔵庫10の上部に特定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫10の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0022】
冷蔵庫10の下側領域にある冷凍室6と野菜室7の背面側には、冷却室11が設けられている。冷却室11には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器12、および冷却器12が生成した冷気を各貯蔵室(3、4、5、6、7)に送風する冷却ファン13が設けられている。冷却器12が生成した冷気は、冷却ファン13により各貯蔵室に繋がる風路18を流れて、各貯蔵室に供給される。
【0023】
それぞれの貯蔵室に繋がる風路18には冷却ダンパー19が設けられており、圧縮機9と冷却ファン13の回転数制御と冷却ダンパー19の開閉制御により、それぞれの貯蔵室が所定の温度帯に維持される。
【0024】
また、風路18内には脱臭フィルター(図示せず)が設けられて、庫内の空気のにおい成分を吸着する。冷却室11の下部には、冷却器12やその周辺に付着する霜や氷を除霜するための除霜ヒータ14が設けられている。除霜ヒータ14の下部には、ドレンパン15、ドレンチューブ16、蒸発皿17が設けられており、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。
【0025】
実施の形態1の冷蔵庫10には操作部(図示せず)が備えられている。ユーザが操作部において冷蔵庫10に対する各種の指令(例えば、各貯蔵室の温度設定、急冷指令、解凍指令、製氷停止指令など)を行うことができる。
【0026】
また、操作部には異常の発生などを報知する表示部20を有している。なお、冷蔵庫10においては、無線通信部を備えて無線LANネットワークに接続して、ユーザの持つ外部端末から各種指令を入力したり、外部端末に表示したりする構成としてもよい。
【0027】
続いて、果物熟成室の構成について説明する。
【0028】
図2は冷蔵庫右側面から見た第一の実施形態の果物熟成室30の断面図である。果物熟成室30は冷蔵室3内に設けられ、前面が回転扉22を為し、果物などの食品は回転扉22から収納できる。果物熟成室30の底面側に風路が設けられ、図中矢印で示す方向(順方向)に脱臭フィルター31、脱臭ファン32、においセンサ33の順で設けられる。
【0029】
脱臭フィルター31は、例えばゼオライトや活性炭などの多孔質吸着材または金属酸化物などの酸化分解触媒からなり、送風方向に穴の連通したハニカム構造をもつ。
【0030】
においセンサ33は、例えば半導体式、電気化学式、感応膜を備えたMEMS式等であり、検知対象ガスは、エステル類、アルデヒド類、アルコール類、二酸化炭素、エチレンなど果物の熟成指標となる香り、ガス成分である。
【0031】
図3に示すように、においセンサ33の検知情報および脱臭ファンのON/OFF情報は制御部に入力されて、制御部はそれらの情報に基づいた出力を冷却手段(圧縮機9、冷却ファン13、冷却ダンパー19)、加熱手段(ヒーター)、表示部20に送信する。
【0032】
[1-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、図4を用いて以下その動作、作用を説明する。においセンサ33は果物熟成室30内の果物の熟成状態を検知、判定する目的で用いられる。
【0033】
果物の熟成保存中、脱臭ファン32は断続的に作動し、果物熟成室30内のガス成分を吸着または分解により脱臭する。脱臭ファン32は検知予定タイミングの5~10分前から順方向に作動し、果物由来ガス濃度の低減した空気をにおいセンサ33に供給する。
【0034】
これにより、においセンサ感知部が当初飽和状態であったとしても、不飽和状態(基準状態)に戻すことができる。5~10分の送風により、低減したセンサ出力値が安定するので基準値として記録する。
【0035】
その後、ファンを逆方向に作動させることにより、果物由来ガスをにおいセンサ33に供給し、所定時間後の値を応答値として記録する。図4の矢印で示す両出力の差(応答値-基準値)が、果物由来ガス濃度に比例する。
【0036】
また、順方向に作動する脱臭ファン32の風速を可変に設けてもよい。風速が大きいほど、果物由来ガスのにおい成分のより多くの部分が脱臭フィルター31に吸着除去されるので、果物由来ガスの濃度の大小に応じて風速を使い分けることが可能である。
【0037】
ユーザにお知らせしたいタイミング(例えば、可食、完熟、劣化など)の指標となるガス濃度を予め実験などで決めておくことによって、果物の熟成状態を判定して表示部20でお知らせすることができる。
【0038】
更には、所定の熟成状態を判定したら、冷却デバイスやヒータを制御して果物熟成室30の温度を下げることにより熟成や劣化を遅らせたり、逆に温度を上げて熟成を早めたりする制御も可能である。熱帯果物の場合、保存温度を下げると低温障害の恐れが生じるが、冷却デバイスとヒータを併用して制御することで冷却速度を小さくしたり、温度変動刺激を加えたりすることによって、生物的低温馴化を実現して低温障害を抑制することも可能である。
【0039】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、においセンサ33と、脱臭フィルター31と、脱臭ファン32とを有し、制御手段は脱臭ファン32を順方向に作動させて測定した基準値および逆方向に作動させて測定した応答値の差を指標として果物の熟成状態を判定する。
【0040】
これにより、脱臭ファン32が順方向に作動の時はにおいセンサ33は低濃度ガスにさらされるので不飽和状態を保つことができる。そのため脱臭ファン32を逆方向に作動させた際には、においセンサ33感知部は定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。
【0041】
本実施形態のように、脱臭ファン32の風速を可変に設けることで脱臭フィルター31の脱臭効果を可変に設けて、制御部はにおい除去の程度が大きい状態と小さい状態のそれぞれにおいて、においセンサ33により検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定してもよい。
【0042】
これにより、脱臭効果が固定の場合に比べて、より幅広い濃度範囲の果物由来ガスに対応することが可能になり、より多様な収納食品に対応できるようになる。
【0043】
本実施の形態1のように、果物熟成室30の気体を搬送するための風路を有し、脱臭フィルター31は風路内に設けられ、においセンサ33は風路内で脱臭フィルター31よりも下流で果物熟成室30よりも上流に設けるようにしてもよい。
【0044】
これにより、においセンサ33は、より確実に不飽和な状態を維持できるため、確実に基準状態を測定可能になる。
【0045】
(実施の形態2)
以下、図5図6を用いて実施の形態2を説明する。
【0046】
[2-1.構成]
図5は冷蔵室3の最上段におけるにおい検知の構成を示す。冷蔵室3背面の冷気吐出口34の周辺に上流においセンサ33aが設けられている。食品収納棚35を挟んで冷気の下流側に、下流においセンサ33bが冷蔵庫10本体あるいは冷蔵室扉の内側などに設置される。
【0047】
図6に本実施形態における冷蔵庫の冷気循環系路を示す。冷蔵室3から下流に向けて、脱臭フィルター31、冷却器12、冷却ファン13、冷却ダンパー19、冷気吐出口34という順で配置される。
【0048】
[2-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
冷蔵室3内で食品由来ガス濃度の高まった冷気は冷気戻り口36から吸入されて脱臭フィルター31を通って脱臭される。冷蔵室3内で冷気吐出口34から吐出される冷気は脱臭された最もガス濃度が低いガスである。
【0050】
冷却ダンパー19の開閉動作と、上流においセンサ33a、下流においセンサ33bの出力値との関係を図7に示す。
【0051】
冷却ダンパー19が閉じている期間は、上流においセンサ33aと下流においセンサ33bの出力はほぼ等しい。しかし、冷却ダンパー19が開いて、冷蔵室3内に脱臭された冷気が吐出されると、上流においセンサ33aの出力値は下流においセンサ33bよりも低くなる。
【0052】
これは上流においセンサ33aが主に脱臭された冷気に曝露されるのに対して、下流においセンサ33bは食品由来ガスを含んだガスと脱臭冷気の混合ガスに曝露されるからである。冷却ダンパー19が閉じる直前の上流においセンサ33aの測定値を基準値、下流においセンサ33bの測定値を応答値として記録し、図7の両矢印で示す両センサ出力の差(応答値-基準値)が、果物由来ガス濃度に比例する。
【0053】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、上流においセンサ33aと、下流においセンサ33bと、脱臭フィルター31とを有し、制御手段は冷却ダンパー19が閉じる直前に上流においセンサ33aで測定した基準値および下流においセンサ33bで測定した応答値との差を指標として果物の熟成状態を判定する。
【0054】
これにより、上流においセンサ33aおよび下流においセンサ33bは冷却ダンパー19が開放中の間、低濃度ガスにさらされて不飽和状態を保つことができる。そのため下流においセンサ33bは果物由来ガスに対して定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。
【0055】
実施の形態1に比べると、冷蔵室3という広い空間のうち二つのにおいセンサによって挟まれた空間の食品に限定して検知することができるので、実施の形態1の果物熟成室を用いる必要なく食品へのアクセス性の良さを維持したままにおい検知可能であるという長所がある。
【0056】
(実施の形態3)
以下、図8を用いて実施の形態3を説明する。
【0057】
[3-1.構成]
図8は、冷蔵室内に設けられた果物熟成室30を示す。室内天面には、密閉カバー37で覆われた空間を有し、その中ににおいセンサ33および脱臭フィルター31が収納される。密閉カバー37の果物収納スペースに面した側に、制御部により開閉される開閉部38が設けられる。
【0058】
[3-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、以下その動作、作用を説明する。保存期間中の大半の期間、開閉部38は閉状態であり、においセンサ33は高濃度の果物由来ガスに接することがない。この状態で基準値を測定する。次に、制御部により開閉部38が開かれた際に、果物由来ガスがにおいセンサ33と接触し、この状態で応答値を検知する。
【0059】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、においセンサ33と、脱臭フィルター31とを有し、制御手段は開閉部38を閉じた状態でにおい測定した基準値および開閉部38を開けた状態で測定した応答値との差を指標として果物の熟成状態を判定する。
【0060】
これにより、においセンサ33は開閉部38が閉鎖中、低濃度ガスにさらされて不飽和状態を保つことができる。
【0061】
そのため開閉部38が開放されるとにおいセンサ33は果物由来ガスに対して定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。実施の形態1に比べると、送風をおこなわないため騒音の発生がないという長所がある。
【0062】
本実施形態のように、脱臭フィルター31をにおいセンサ33と同一空間に設けてもよい。これにより、においセンサ33の感知部は確実に果物由来ガスによる飽和を防止できる。
【0063】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1~3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0064】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0065】
実施の形態2では、脱臭フィルター31の作用程度を可変に設ける手段の一例として、冷気吐出口34の直前に冷却ダンパー19を設ける冷気循環経路について説明した。冷却ダンパー19は脱臭フィルター31の作用程度を切替え可能な位置であれば、上記の位置に限定する必要はない。例えば、図9に示すように脱臭フィルター31を有する風路と有さない風路の直前に設けて、両者のいずれかに切り替えるようにしてもよい。
【0066】
通常は脱臭フィルター31を有する経路に送風することにより、においセンサ33が高濃度の果物由来ガスに曝露することを抑制し、センサ感知部を不飽和に保つことができる。加えて、上記2つの風路の切替えによって、風路aを用いた際はにおいセンサ33は基準状態を測定し、風路bを用いた際は応答状態を測定することができるので、単一のセンサによる(応答値-基準値)の検知が可能になる。
【0067】
実施の形態2に比べると、センサの個体差の影響による検知誤差を生じることなく、より検知の精度を高められる可能性がある。
【0068】
実施の形態1では基準状態/応答状態の切替え手段として脱臭ファン32の利用について、実施の形態3では開閉部38の利用について説明した。切替え手段としては脱臭フィルター31の脱臭特性に変化を与えられれば、上記二種類に限定する必要はない。
【0069】
例えば、図10に示すように脱臭フィルター31と熱的に近い位置に設けたヒータ39の通電や電圧を切替えることにより、脱臭フィルター31のにおい吸着性能を変化させてもよい。
【0070】
活性炭など分子間力を利用した脱臭フィルターの場合は加熱することによって吸着力が低下するため、ヒータ39通電時は応答状態、非通電時は基準状態を測定することができる。ただし、脱臭フィルター31の代わりに分解触媒を用いる場合は、加熱により分解性能が向上するため、通電時に基準状態、非通電時は応答状態を測定することができるなど、脱臭手段として用いる材料によって使い方は適宜変えるべきである。
【0071】
本実施の形態は、間冷式冷蔵庫のように冷却器12の除霜ヒータ14が備わっている場合は、除霜ヒータ14をヒータ39と兼用することができて、構成を簡素化できるというメリットがある。
【0072】
また、基準状態/応答状態の切替え手段として、もう一つの例を図11に示す。放電式脱臭器40は例えばプラズマ放電などによりラジカルを発生させて有機性のにおい成分を酸化分解する脱臭手段である。従って、放電式脱臭器40を所定時間以上稼働させた直後は基準状態を、稼働前は応答状態を測定することができる。
【0073】
放電式脱臭器40は冷蔵庫10本体の運転状態に関わらず稼働/非稼働を切替えることが可能であるので、他の実施形態とは異なって冷蔵庫10本体の運転状況に関わらず自在に検知タイミングを制御できる。
【0074】
そのため、ユーザの要望するタイミングからより短時間で判定結果を報知手段に知らせることが可能であるというメリットがある。
【0075】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の冷蔵庫においては果物熟成室を組み込んだ家庭用冷凍冷蔵庫への応用を念頭に説明したが、それ以外にも、肉類の熟成進捗状況、発酵食品の発酵進捗状況、生鮮および加工食品、ペットフード等の鮮度劣化、油脂の酸化、ハラル食材の品質保持、調理加工後の風味の落ち着き、珈琲豆やワイン、精米などの香りの変化、食物アレルギー成分の検知などの機能を有する家庭用、業務用食品保存庫に対しても有用性を発揮するものと考える。
【符号の説明】
【0077】
1 外箱
2 内箱
3 冷蔵室
4 製氷室
5 冷凍/解凍室
6 冷凍室
7 野菜室
8 機械室
9 圧縮機
10 冷蔵庫
11 冷却室
12 冷却器
13 冷却ファン
14 除霜ヒータ
15 ドレンパン
16 ドレンチューブ
17 蒸発皿
18 風路
19 冷却ダンパー
20 表示部
21 断熱材
22 回転扉
30 果物熟成室
31 脱臭フィルター
32 脱臭ファン
33 においセンサ
33a 上流においセンサ
33b 下流においセンサ
34 冷気吐出口
35 食品収納棚
36 冷気戻り口
37 密閉カバー
38 開閉部
39 ヒータ
40 放電式脱臭器
図1
図2
図3
図4
図5
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図11