(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044782
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01L21/92 604A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152822
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井 清一
(72)【発明者】
【氏名】生田 敬子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 大輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体素子を実装基板にフリップチップ実装する際に、実装基板側に与える応力を緩和する半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体素子1に設けられた複数の電極端子の表面を覆うレジスト3を形成する工程と、電極端子直上のレジストに、インプリント型5に設けられた突起部5aを差し込むことにより、レジストに開口部3aを形成する工程と、レジストにエネルギーを与えて、レジストを硬化させる工程と、開口部を現像液と反応させて、開口部を径方向に拡げる工程と、開口部にバンプとなる金属を充填する工程とを含む。レジストを開口する工程は、レジストの表面とインプリント型の内面5cとの間に隙間を設けた状態で行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に設けられた複数の電極端子の表面を覆うレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記複数の電極端子直上のレジストに、インプリント型に設けられた複数の突起部を差し込むことにより、前記レジストに開口部を形成するレジスト開口工程と、
前記レジストにエネルギーを与えて、前記レジストを硬化させるレジスト硬化工程と、
前記開口部を現像液と反応させて、前記開口部を径方向に拡げる現像工程と、
前記開口部にバンプとなる金属を充填する金属充填工程と、
前記レジストを前記複数の電極端子の表面から剥離する剥離工程と、
を含み、
前記レジスト開口工程は、前記レジストの表面と前記インプリント型の内面との間に隙間を設けた状態で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レジスト開口工程において、前記開口部の開口周縁に沿って、前記レジストの盛り上がり部)が形成される、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記現像工程において、前記開口部は、該開口部の開口幅が、前記電極端子に向かって拡がる逆テーパ状に形成される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属充填工程において、前記金属は、前記盛り上がり部まで充填される、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記レジスト形成工程の前に、前記複数の電極端子の表面を覆うシード層を形成する工程をさらに含み、
前記レジスト形成工程は、前記シード層の上に前記レジストが形成される、請求項1~4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記レジスト開口工程は、ステップアンドリピート方式で行われる、請求項1~5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記レジスト硬化工程は、前記インプリント型を介して、前記レジストにエネルギーが与えられる、請求項1~6の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記エネルギーは、前記インプリント型への紫外線光の照射により前記レジストに与えられ、前記インプリント型の光透過率が前記レジストの光透過率よりも低い、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
複数の電極端子を有する半導体素子と、
前記複数の電極端子にそれぞれ形成されたバンプと
を備え、
前記バンプは、前記電極端子側から、幅が細くなるテーパ部と、該テーパ部側から、幅が広くなる逆テーパ部とを有し、前記テーパ部と前記逆テーパ部との間が、くぼみ部になっている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高密度化と電極端子の多ピン化との両立を進めるために、半導体素子の電極端子間の狭ピッチ化及び電極端子の面積縮小化が図られている。電極端子間が狭ピッチ化され、電極端子の面積が縮小化された半導体素子を、実装基板へ実装技術する1つとして、フリップチップ実装が知られている。
【0003】
フリップチップ実装においては、突起電極が、システムLSI、メモリ、CPUなどの半導体素子の電極端子上に形成され、実装基板の接続端子に対して圧接・加熱される。これにより、電極端子が接続端子にバンプ接続され、半導体素子が実装基板にフリップチップ実装される。
【0004】
電極端子上に形成される突起電極には、はんだバンプが多く採用されている。はんだバンプを電極端子上に突起状に形成する工法として、はんだを、例えば、スクリーン印刷、ディスペンス、又は電解メッキで電極端子上に形成した後、リフロー炉ではんだ融点以上に加熱する工法が知られている。
【0005】
しかしながら、電極端子間の狭ピッチ化に伴い、フリップチップ実装時の圧接・加熱工程において、溶融し変形したはんだバンプが、その表面張力により他のはんだバンプと繋がり、ブリッジ不良が発生し易くなる。それ故、電極端子間の狭ピッチ化への要求が厳しい程、突起電極に、はんだバンプを採用することが困難になる。
【0006】
そこで、電極端子上に形成される突起電極に、はんだバンプに代えて、例えば、金や銅などからなる先細りの微細金属バンプを採用する工法が知られている。この工法においては、フリップチップ実装時の圧接・加熱工程において、突起電極の先端を塑性変形させ、固相拡散により突起電極を接続端子に接合する。この工法によれば、フリップチップ実装時の圧接・加熱工程において、先細りの微細金属バンプを溶融させないので、ブリッジ不良の発生を防ぐことができる。それ故、電極端子間の狭ピッチ化への対応も容易になる。
【0007】
微細金属バンプを形成する工法として、特許文献1には、シート状のインプリント型を用いて、複数の電極端子上に形成したレジストに開口部を設け、この開口部に金属を充填することにより、傾斜面を備えた円錐状のバンプを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された工法では、電極端子の表面に、傾斜面を備えた円錐状のバンプが形成できるが、バンプが形成された半導体素子を基板にフリップチップ実装する際、フリップチップ実装時の圧力が、バンプを介して実装基板に印加されるため、実装基板に形成されたデバイス等に応力が加わり、その結果、デバイスの信頼性等が損なわれるという課題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、複数の電極端子を備えた半導体素子を実装基板にフリップチップ実装する際に、実装基板側に与える応力を緩和することができる半導体装置の製造方法、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体素子に設けられた複数の電極端子の表面を覆うレジストを形成するレジスト形成工程と、複数の電極端子直上のレジストに、インプリント型を差し込むことにより、前記レジストに開口部を形成するレジスト開口工程と、レジストにエネルギーを与えて、レジストを硬化させるレジスト硬化工程と、開口部を現像液と反応させて、開口部を径方向に拡げる現像工程と、開口部にバンプとなる金属を充填する金属充填工程と、レジストを複数の電極端子の表面から剥離する剥離工程と、を含み、レジスト開口工程は、レジストの表面とインプリント型の内部の平面との間に隙間を設けた状態で行われる。
【0012】
本発明に係る半導体装置は、複数の電極端子を有する半導体素子と、複数の電極端子にそれぞれ形成されたバンプとを備え、バンプは、電極端子側から、幅が細くなるテーパ部と、該テーパ部側から、幅が広くなる逆テーパ部とを有し、テーパ部と逆テーパ部との間がくぼみ部になっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の電極端子を備えた半導体素子を実装基板にフリップチップ実装する際に、実装基板側に与える応力を緩和することができる半導体装置の製造方法、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)~(j)は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法を模式的に示した断面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、レジストの架橋度の制御を説明した図である。
【
図4】(a)~(c)は、ステップアンドリピート方式によるレジスト開口工程を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0016】
図1(a)~(i)は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法を模式的に示した断面図である。
【0017】
図1(a)に示されるレジスト形成工程について述べる。半導体素子1には、複数個の電極端子2が形成されている。半導体素子1は、例えば、円形のシリコンウエハに形成されている。シリコンウエハの外径は、例えば、直径300mmである。
【0018】
レジスト形成工程において、電極端子2が形成された面全体を覆うようにシード層7を形成する。シード層7は、薄い導電層であり、半導体素子全面に形成され、金属充填プロセスにおいて電極として使われる層である。金属充填プロセスが電気めっき形成プロセスである場合、シード層7は、電気めっきを形成するための下地層としても使われる。シード層7の材質は、例えば、Ni、W、Cr、Cu、Co、Tiなどであってもよい。シード層7の厚みは、例えば、0.02~2μmであってもよい。
【0019】
シード層7が形成された後、シード層7の上にレジスト3が形成される。レジスト3は、例えば、感光型、熱硬化型、光熱併用型のレジストであってもよい。レジスト3は、例えば、スピンコート、バーコーター、スプレー、ジェットディスペンス等を用い、膜が均一になるように形成される。
【0020】
次に、
図1(b)及び(c)に示されるレジスト開口工程について述べる。まず、
図1(b)に示されるように、インプリント型5に設けられた認識マーク5bと半導体素子1に設けられた認識マーク4とが位置合わせされる。ここで、インプリント型5は、電極端子2に対向するように、複数の突起部5aが所定の間隔で設けられている転写用の型である。突起部5aの形状は、例えば、円、四角形、八角形であってもよい。
【0021】
インプリント型5は、例えば、石英、ガラス、及びシリコーン樹脂の1つから形成されてもよく、また、複数を積層して形成されてもよい。例えば、インプリント型5の表面に柔軟なシリコーン樹脂を用いると、半導体素子1の反り・うねりを吸収することができ、好適である。
【0022】
インプリント型5は、例えば、原版を作製した後、インプリント型5の材料を流動させ硬化させることにより形成してもよい。ここで、作製される原版は、レジスト3に形成される開口部3a(
図1(e)を参照)の間隔と等しい間隔で、開口部3aの開口径と同等の寸法の、複数の凹部を有する。原版は、例えば、シリコン、石英、又はガラスを、エッチングないしは放電加工することにより形成されてもよい。インプリント型5の外形寸法は、半導体素子1の外形寸法よりも大きい。また、インプリント型5の形状は、例えば、矩形である。
【0023】
次に、
図1(c)に示されるように、電極端子2直上のレジスト3へ、インプリント型5の加圧により突起部5aを差し込んでいく。このとき、突起部5aの先端は、電極端子2に接触していても、あるいは、電極端子2から少し離れていてもよい。また、レジスト3の表面と、インプリント型5の内面5cとの間には隙間が設けられている。これにより、レジスト3とインプリント型5の接触面積が減るため、インプリント型5を引き上げる際に発生するシード層7とレジスト3の剥離を防止する事ができる。
【0024】
また、突起部5aにより押されたレジスト3は、インプリント型5とレジスト3の隙間に逃げ、開口部3の開口周縁に沿って、盛り上がり部3bが形成される。これにより、レジスト3が横方向へ流れることを抑制される。これにより、隣接する半導体素子上のレジスト3の形状を崩すことなく、ステップアンドリピート方式により、インプリント(レジスト開口工程)を行うことができる。その結果、一括方式に比べて、パターニング精度およびアライメント精度を向上させることが可能となる。勿論、レジスト開口工程を、一括方式で行っても構わない。
【0025】
次に、
図1(d)に示されるレジスト硬化工程において、インプリント型5の突起部5aをレジスト3に差し込んだまま、インプリント型5を介して、レジスト3が反応するエネルギー12が与えられる。例えば、インプリント型5を介して、レジスト3に光(例えば紫外線光)12が照射され、その後、加熱される。ここで、インプリント型5は、レジスト3が反応する波長の光に対して光透過性を有すると、インプリント型5を介して照射された光にレジスト3を反応させることができ、好適である。インプリント型5は、例えば、石英、ガラス、透明なシリコーン樹脂といった、光透過性を備えた材質から形成される。
【0026】
次に、
図1(e)に示されるように、インプリント型5を引き上げる。すると、レジスト3に微細な開口部3aが形成されている。ここで、インプリント型5の材料とレジスト3の材料とは、例えば、溶解度パラメータが2.0以上離れていると、レジスト硬化後の離型性が向上するので、好適である。例えば、溶解度パラメータが7.3~7.6であるシリコーン樹脂をインプリント型5に用いた場合、溶解度パラメータが9.5~12.5であるアクリル樹脂、又は、溶解度パラメータが10.9~11.2であるエポキシ樹脂などをレジスト3の材料に用いてもよい。さらに、インプリント型5の表面に、光透過性の金属や樹脂で離型膜が形成されていると、さらに離型性が向上するので、好適である。離型膜としては、例えば、ニッケル、酸化インジウムスズ、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが用いられる。
【0027】
なお、本実施形態では、インプリント型5の突起部5aをレジスト3に差し込んだまま、インプリント型5を介して、レジスト3にエネルギー12を与えたが、レジスト3にエネルギー12を与える前に、インプリント型5を引き上げ、開口部3aが形成された状態(
図1(e)を参照)のレジスト3に、直接、エネルギー12を与えてもよい。
【0028】
次に、
図1(f)に示される現像工程において、半導体素子1が現像液槽6内の現像液に浸漬される。現像液槽6の現像液が開口部3aに入り込むことにより、レジスト3の開口部3aの内壁の溶解が進み、開口部3aが径方向に拡大する。ここで、現像液槽6の現像液は、レジスト3を溶解する作用を有する。現像液槽6の現像液は、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液であってもよい。
【0029】
インプリント型5によって形成された開口部3aは、
図1(e)に示すように、垂直に開口しており、かつ、半導体素子1全体に亘って同一形状になるように設けられる。現像液は、半導体素子1面内で均一の速度で開口部3aに入り込むことができる。その後、レジスト3の架橋度に応じて、レジスト3の溶解が進展する。レジスト3の架橋度が低い部分は、レジスト3の架橋度が高い部分よりも溶解が速いので、レジスト3の架橋度を制御することにより、開口部3aの形状を制御できる。レジスト3の架橋度の制御については、後述する。
【0030】
次に、
図1(g)に示されるように、開口部3aに入り込んだ現像液、残渣が、洗浄液により除去される。洗浄液は、例えば、純水、アルコール、エタノール、アセトンである。
【0031】
次に、
図1(h)に示される金属充填工程(めっき工程)において、半導体素子1のシード層7と電極10とが、電源9に接続され、電解めっき浴槽11に浸され、通電処理が行われる。その結果、開口部3aがバンプとなる金属で充填される。めっき液は、例えば、Cu、Co、Auなどから成るボトムアップタイプのフィルドめっき液であってもよい。これらのめっき液を用いると、Cu、Co、Auなどの触媒効果により、開口部3aの内壁への濡れ性が増し、微小な開口部3aであってもめっき液の注入が容易になるので、ボトムアップでめっきを形成するのに好適である。
【0032】
次に、
図1(i)に示されるレジスト剥離工程において、レジスト3がレジスト剥離液に浸漬され、半導体素子1から剥離される。
【0033】
最後に、
図1(j)に示されるシード層除去工程において、ウエットエッチング又はアッシング処理によりシード層7が除去されると、傾斜面を有するテーパ状のバンプ(突起電極)8が形成される。ここで、シード層7には、バンプ8よりもエッチング速度が速い材料を用いると、シード層除去工程においてバンプ8のエッチング量を減らすことができ、レジスト剥離工程後のバンプ形状を維持できるので、好適である。バンプ8の下のシード層7は、導電膜として残存させる。
【0034】
本実施形態において、金属充填工程(めっき工程)における導通処理時間を制御することによって、バンプ8の形状を制御することができる。具体的には、
図1(h)に示すように、金属を盛り上がり部(3b)まで充填することによって、
図2に示すような形状のバンプ8を形成することができる。
【0035】
図2に示したバンプ8は、電極端子2側から、幅が細くなるテーパ部8aと、テーパ部8a側から、幅が広くなる逆テーパ部8bとを有し、テーパ部8aと逆テーパ部との間が、くぼみ部8cになっている。これにより、半導体素子1を実装基板にフリップチップ実装する際に、バンプ8を介して実装基板側に加わる圧力を、くぼみ部8cで吸収することができる。その結果、実装基板に形成されたデバイス等に加わる応力を緩和することができ、デバイスの信頼性等が損なわれることを抑制することができる。
【0036】
<レジストの架橋度の制御>
図3(a)は、
図1(d)に示した工程の拡大図である。
【0037】
図3(a)に示されるように、インプリント型5を介して光量Qの紫外線光12が照射された時の、レジスト3の位置A及び位置Bにおける受光量を、それぞれQ
A及びQ
Bで表す。
【0038】
図3(b)に示されるように、レジスト3の位置A及び位置Bは、それぞれ受光量Q
A、Q
Bの紫外線光12を一定時間受光する。インプリント型5からの距離が長くなるにつれて受光量は低下するため、Q
Aは、Q
Bより大きくなる。この時、レジスト3の位置A及び位置Bにおける温度と、インプリント型5の温度T
1と、半導体素子1の温度T
2とは等しく、かつ、一定である。レジスト3が反応する波長域において、インプリント型5の光透過率がレジスト3の光透過率よりも低いと、紫外線光12の照射における突起部5aによるレジスト3の開口部周辺の架橋度を制御する上で好適である。
【0039】
次に、
図3(a)に示すインプリント型5の温度T
1を、半導体素子1の温度T
2以上に上昇させ、一定時間保持する。温度上昇したインプリント型5からは、熱輻射により熱がレジスト3に伝わり、緩やかな速度でレジスト3の位置Aから位置Bに熱が伝わる。
【0040】
一方、半導体素子1が搭載された搭載用ステージ(不図示)が、熱を逃がすヒートシンクとして作用する場合、半導体素子1に近いレジスト3の位置Bは、熱伝導率の高い半導体素子1を介して、常に冷却されつづける。その結果、インプリント型5の昇温時におけるレジスト3の位置Aにおける温度TAは、レジスト3の位置Bにおける温度TBよりも高くなる。
【0041】
紫外線光12の照射及びインプリント型5の昇温によって、レジスト3の厚み方向における受光量及び熱量が、一定の勾配をもって分布する。その結果、レジスト3の架橋度も、一定の勾配をもって分布する。
図3(a)には、架橋反応が進んだ成分20が模式的に示されている。
図3(a)に示されるように、レジスト3の位置Aにおける架橋度が、レジスト3の位置Bにおける架橋度よりも高くなる。
【0042】
その後、
図3(b)に示されるように、インプリント型5が、半導体素子1の温度T
2まで冷却される。冷却後、レジスト3の位置A及び位置Bにおける温度と、インプリント型5の温度T
1と、半導体素子1の温度T
2とは等しくなる。
【0043】
インプリント型5がレジスト3から剥離された後に、レジスト3が現像液に浸漬される。すると、レジスト3の位置Bの架橋度の低い部分が、位置Aの架橋度の高い部分よりも速く現像液に溶解する。その結果、現像後のレジスト3には、開口幅が、前記電極端子(2)に向かって拡がる逆テーパ状の開口部が形成される。
【0044】
ここで、インプリント型5の透過率は、50%以上80%以下にすると、形成される開口部を逆テーパ形状にする上で好適である。例えば、インプリント型5は、例えば、染料成分を含有する樹脂から形成されると、透過率を下げる上で好適である。さらに、インプリント型5の表面に、蒸着、スパッタリング、スプレイコーティングなどにより金属膜が形成されていると、インプリント型5の透過率を下げる上で好適である。透過率を80%以下に下げることにより、光照射時に突起部5aを介して漏れる散乱や電極端子2からの反射光による開口部周辺の架橋度の促進を防ぐことができ、かつ厚み方向に架橋度の分布を形成できる。一方、インプリント型5の透過率を50%未満にすると、光反応時間が長くなるため、レジスト3の位置Aと位置Bにおける架橋度の差が小さくなり、レジスト3の開口部のテーパ角度を90°に近づけることができる。
【0045】
なお、
図3に例示した工程は、インプリント型5を介して、レジスト3に紫外線光12を照射したが、インプリント型5を介さずに、直接、レジスト3に紫外線光12を照射した場合でも、同様に、レジスト3の厚み方向における受光量を、一定の勾配をもって分布させることができる。また、インプリント型5を昇温して、インプリント型5からの熱輻射により、レジスト3の厚み方向における温度を、一定の勾配をもって分布させたが、直接、レジスト3に熱エネルギー(例えば、ランプ加熱等)を照射することにより、レジスト3の厚み方向における温度を、一定の勾配をもって分布させることができる。その結果、レジスト3の架橋度を、一定の勾配をもって分布させることができる。
【0046】
また、レジスト3に紫外線光12を照射した後、レジスト3の厚み方向に一定の温度勾配をもたすために、レジスト3を加熱する工程を行わなくてもよい。この場合、紫外線光12の照射量を調整することにより、レジスト3の厚み方向における受光量に、一定の勾配をもたせることができ、その結果、レジスト3の架橋度を、一定の勾配をもって分布させることができる。
【0047】
<実施例>
複数の電極端子2が形成された半導体素子1の表面に、レジスト3を形成した。レジスト3は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた。電極端子2直上のレジスト3に、インプリント型5に設けられた複数の突起部5aを差し込み、レジスト3に開口部を形成した。インプリント型5は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い、インプリント型5の内面には、1μm厚のフッ素系離型膜を形成した。ここで、PDMSの波長365nmにおける透過率は80%である。
【0048】
次に、レジスト3に、波長365nmの紫外線を照射した後、半導体素子1の温度T2を70℃とし、インプリント型5の温度T1を120℃まで上昇させた。その後、インプリント型5をレジスト3から剥離すると、開口径3μmの開口部3aがレジスト3に形成された。
【0049】
次に、レジスト3を現像処理した後、めっき法を用いて、開口部3aに、銅を充填した。その後、レジスト3を電極端子2の表面から剥離した。これにより、底部の幅が6μmのテーパ部8aと、頭頂部の幅が4μmの逆テーパ部8bと、テーパ部8aと逆テーパ部8bとの間のくぼみの最小幅が1μmのくぼみ部8cを有する形状のバンプ8が形成された。
<ステップアンドリピート方式によるレジスト開口工程>
図4(a)~(c)を参照しながら、レジスト開口工程を、ステップアンドリピート方式で行う方法を説明する。
【0050】
図4(a)に示すように。搭載用ステージ13は、レジスト3が形成された半導体ウエハ14を搭載する。半導体ウエハ14とインプリント型5でアライメントをとり、インプリントヘッド15によって、インプリント型5を半導体ウエハ14上の指定の位置まで移動させ、レジスト3へインプリント型5を押し込むことで、レジスト3に開口部を形成する。
【0051】
その後、
図4(b)に示すように、インプリントヘッド15を上昇させ、レジスト3からインプリント型5を離型する。インプリント型5を小型化したことで、型のパターン精度は向上し、かつ、離型時の抵抗も下がるためレジスト剥離も防止可能となる。
【0052】
さらに、
図4(c)に示すように、アライメントから離型までの動作を、隣接パターンへ繰り返し動作するステップアンドリピート方式により、全面にレジスト3の開口部を形成する。この時使用するインプリント型5は、生産性と形状安定性から、一辺が20~50mm程度が好適であるが、その限りではない。本方式により、高精度の安定したレジスト3の開口部形成が可能となり、大型の300mmサイズの半導体ウエハ14においても高歩留まりの生産が実現できる。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体素子
2 電極端子
3 レジスト
3a 開口部
3b 盛り上がり部
4 認識マーク
5 インプリント型
5a 突起部
5b 認識マーク
6 現像液槽
7 シード層
8 バンプ
8a テーパ部
8b 逆テーパ部
8c くぼみ部
9 電源
10 電極
11 電解めっき浴槽
12 紫外線光(エネルギー)
13 搭載用ステージ
14 半導体ウエハ
15 インプリントヘッド