(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044873
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/73 20110101AFI20230327BHJP
【FI】
H01R12/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152970
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】橋口 徹
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB01
5E223AB76
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB31
5E223CB38
5E223CB44
5E223CD01
5E223CD12
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
(57)【要約】
【課題】基板に適切に固定することができ、且つ、より小型化されたコネクタを提供する。
【解決手段】本発明のコネクタは、第1方向において基板上に配置されて基板に固定されるコネクタであって、基板と対向する底面と、第1方向に沿って形成された貫通孔とを備えたハウジングと、貫通孔内に保持され、第1方向における基板側の端部が、底面において貫通孔を通じて露出するコンタクトと、コンタクトとは別体をなし、貫通孔内にてコンタクトに近接する位置に配置され、且つ、コンタクトに対して第1方向に移動可能な可動端子と、を有する。第1方向における可動端子の一端部は、基板に固定され、且つ可動端子の移動によって底面から突出するように構成され、一端部の突出量が、第1方向における可動端子の位置に応じて変化する。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において基板上に配置されて前記基板に固定されるコネクタであって、
前記基板と対向する底面と、前記第1方向に沿って形成された貫通孔とを備えたハウジングと、
前記貫通孔内に保持され、前記第1方向における前記基板側の端部が、前記底面において前記貫通孔を通じて露出するコンタクトと、
前記コンタクトとは別体をなし、前記貫通孔内にて前記コンタクトに近接する位置に配置され、且つ、前記コンタクトに対して前記第1方向に移動可能な可動端子と、を有し、
前記第1方向における前記可動端子の一端部は、前記基板に固定され、且つ前記可動端子の移動によって前記底面から突出するように構成され、
前記一端部の突出量が、前記第1方向における前記可動端子の位置に応じて変化する、コネクタ。
【請求項2】
複数の前記コンタクトと、前記コンタクトと同数の前記可動端子とを有し、
前記ハウジングには、前記貫通孔が前記コンタクト毎に設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コンタクトは、前記第1方向における前記基板側の端部をなす接合部を有し、
前記可動端子の一端部が前記基板に半田によって固定され、
前記可動端子の一端部と前記接合部との隙間内に前記半田の一部が入り込んで、前記可動端子の一端部と前記接合部とが接合される、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コンタクトは、前記可動端子の移動を規制する移動規制部を有し、
前記移動規制部は、前記第1方向において前記突出量が減少する向きに前記可動端子が移動する際に、前記可動端子に当たって接することで前記可動端子の移動を規制する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記貫通孔の内壁面に設けられ、前記可動端子の移動を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記第1方向において前記突出量が増加する向きに前記可動端子が移動する際に、前記可動端子に当たって接することで前記可動端子の移動を規制する、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記可動端子は、前記第1方向に延出した接触部と、前記第1方向における前記接触部の端部と連続した連続部とを有し、
前記接触部のうち、前記基板側の端部が、前記基板に固定され、且つ前記可動端子の移動によって前記底面から突出し、
前記可動端子は、前記第1方向において前記連続部が前記移動規制部と前記規制部との間に位置した状態で前記貫通孔内に配置されている、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コネクタのうち、前記基板に固定する際に前記可動端子とは異なる位置にて前記基板に接する接触部材が、前記第1方向における前記基板側の端部に、前記基板に接する接触面を有し、
前記可動端子が前記第1方向において前記基板から最も離れた場合、前記可動端子の前記基板側の端面は、前記接触面から見て前記底面と同じ側に位置し、
前記可動端子が前記第1方向において前記基板に最も近づいた場合、前記可動端子の前記基板側の端面は、前記接触面から見て前記底面とは反対側に位置する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1方向と交差する第2方向において、前記貫通孔の内壁面のうち、前記可動端子と対向する面と前記可動端子の間、及び、前記可動端子と前記コンタクトとの間には隙間が設けられている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタは、前記第1方向において相手側コネクタと嵌合可能であり、
前記コンタクトは、前記1方向と交差する第2方向に並ぶ一対の挟み込み部を有し、
前記コネクタが前記相手側コネクタと嵌合した状態において、前記一対の挟み込み部が、前記相手側コネクタが有する相手側コンタクトを挟み込む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに係り、特に、基板に固定されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相手側コネクタと嵌合可能なコネクタは、例えば、基板に半田等によって固定(実装)される。また、コネクタは、通常、コンタクトと、コンタクトを保持するハウジングとを有する(例えば、
図24参照)。
【0003】
コンタクトは、コネクタが相手側コネクタと嵌合した際に、相手側コネクタが有するコンタクト(相手側コンタクト)と接触する。ハウジングは、例えば貫通孔を備え、貫通孔内にコンタクトを収容してコンタクトを保持する。この構造において、コンタクトの基板側の端部を、貫通孔を通じて基板に対して露出させて、露出した端部を基板の表面に接合することで、コネクタが基板に固定される。
【0004】
また、従来のコネクタの中には、特許文献1に示すように、コンタクトが貫通孔内で貫通孔の形成方向(以下、第1方向ともいう)に沿って移動可能に構成されたものがある。特許文献1のコネクタ(以下、コネクタ1)では、
図24に示すように、ハウジング2に形成された貫通孔3(チャンネル)の内部にコンタクト5が収容されており、コンタクト5の基板側の端面が、基板との結合面4をなす。
【0005】
コネクタ1では、コンタクト5が第1方向に沿って貫通孔3内を移動することができ、コンタクト5の移動によって結合面4の位置が変化する。このように結合面4の位置が可変であることで、例えば基板に反り又は湾曲(以下、反り等という)が生じた場合、反り等に追従させて結合面4の位置を調整することができる。この結果、コネクタ1を基板の表面に適切に固定(実装)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、コンタクト5が第1方向に移動すると、コンタクト5における相手側コンタクトとの接触位置(接点)が変化することになる。例えば、コンタクト5が基板側に移動した場合には、接点も基板側に移動することになり、コネクタ嵌合状態において相手側コネクタから遠ざかる。このような状況を踏まえると、上記のコネクタ1では、コンタクト同士が接触している範囲の長さ(有効接触長)をより長く確保する必要がある。
【0008】
有効接触長を長く確保するには、第1方向におけるコンタクト5の長さ(コンタクトの全長)をより大きく設計し、それに併せて、相手側コンタクトの全長もより大きく設計する必要がある。この結果、コネクタ、及び、コネクタ及び相手側コネクタを組み合わせたコネクタ組立体が大型化し、大型化するほど、これらの機器を製品中に搭載することが困難となる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、具体的には、基板に適切に固定することができ、且つ、より小型化されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のコネクタは、第1方向において基板上に配置されて基板に固定されるコネクタであって、基板と対向する底面と、第1方向に沿って形成された貫通孔とを備えたハウジングと、貫通孔内に保持され、第1方向における基板側の端部が、底面において貫通孔を通じて露出するコンタクトと、コンタクトとは別体をなし、貫通孔内にてコンタクトに近接する位置に配置され、且つ、コンタクトに対して第1方向に移動可能な可動端子と、を有し、第1方向における可動端子の一端部は、基板に固定され、且つ可動端子の移動によってハウジングの底面から突出するように構成され、一端部の突出量が、第1方向における可動端子の位置に応じて変化することを特徴とする。
【0011】
上記のように構成された本発明のコネクタは、コンタクトとは別体をなす可動端子が貫通孔内を第1方向に移動することができる。可動端子の一端部は、可動端子の移動によってハウジングの底面から突出し、その突出量は、可動端子の位置に応じて変化する。この構成であれば、基板に反り等が生じた場合であっても、可動端子を移動させることにより、反り等に追従させてコネクタを基板に適切に固定することができる。また、本発明のコネクタでは、コンタクト自体が移動しないので、コンタクトの移動に伴って接点の位置が変動することはない。したがって、接点の位置変動を考慮してコンタクトをより長く設計する必要がなく、その分、コネクタをより小型化することができる。
【0012】
また、複数のコンタクトと、コンタクトと同数の可動端子とを有し、ハウジングには、貫通孔がコンタクト毎に設けられてもよい。
上記の構成によれば、基板に反り等が生じた場合にも、複数の可動端子の各々についてハウジングの底面からの突出量を調整することで、各可動端子を基板の各部に良好に接触させることができる。これにより、複数のコンタクトを有するコネクタであっても、基板に適切に固定することができる。
【0013】
また、コンタクトは、第1方向における基板側の端部をなす接合部を有してもよい。この場合、可動端子の一端部が基板に半田によって固定され、可動端子の一端部と接合部との隙間内に半田の一部が入り込んで、可動端子の一端部と接合部とが接合されるとよい。
上記の構成によれば、コネクタを基板に固定する際に、可動端子を基板に固定するための半田の一部が可動端子と接合部との間に入り込む。これにより、可動端子とコンタクトとを基板に対して固定し、且つ、これらを互いに導通させることができる。
【0014】
また、コンタクトは、可動端子の移動を規制する移動規制部を有してもよい。この場合、移動規制部は、第1方向において突出量が減少する向きに可動端子が移動する際に、可動端子に当たって接することで可動端子の移動を規制するとよい。
上記の構成によれば、可動端子の移動量を規制し、詳しくは、可動端子のハウジング底面からの突出量が所定値(下限)を下回らないように規制することができる。
【0015】
また、貫通孔の内壁面に設けられ、第1方向において可動端子と当接して可動端子の移動を規制する規制部を有してもよい。この場合、規制部は、第1方向において突出量が増加する向きに可動端子が移動する際に、可動端子に当たって接することで可動端子の移動を規制するとよい。
上記の構成によれば、可動端子の移動量を規制し、詳しくは、可動端子のハウジング底面からの突出量が所定値(上限)を超えないように規制することができる。
【0016】
また、可動端子は、第1方向に延出した接触部と、第1方向における接触部の端部と連続した連続部とを有してもよい。この場合、接触部のうち、基板側の端部が、基板に固定され、且つ可動端子の移動によって底面から突出するとよい。また、可動端子は、第1方向において連続部が移動規制部と規制部との間に位置した状態で貫通孔内に配置されているとよい。
上記の構成によれば、第1方向において連続部が移動規制部と規制部との間に配置することで、可動端子の移動量を所定範囲内で規制することができ、且つ、可動端子が貫通孔から抜け出るのを防ぐことができる。
【0017】
また、コネクタのうち、基板に固定する際に可動端子とは異なる位置にて基板に接する接触部材が、第1方向における基板側の端部に、基板に接する接触面を有してもよい。そして、可動端子が第1方向において基板から最も離れた場合、可動端子の基板側の端面は、第1方向において、接触面から見てハウジングの底面と同じ側に位置してもよい。また、可動端子が第1方向において基板に最も近づいた場合、可動端子の基板側の端面は、第1方向において、接触面から見てハウジングの底面とは反対側に位置してもよい。
上記の構成によれば、可動端子の可動範囲、換言すると、ハウジングの底面からの突出量の範囲を、接触部材の基板との接触面を基準にして設定することができる。これにより、例えば、反り等によって基板の一部が接触面よりもハウジングの底面に近付いた場合にも、その部分に可動端子を良好に接触させることができる。この結果、コネクタを適切に基板に固定することができる。
【0018】
また、第1方向と交差する第2方向において、貫通孔の内壁面のうち、可動端子と対向する面と可動端子の間、及び、可動端子とコンタクトとの間には隙間が設けられてもよい。
上記の構成によれば、可動端子とその周辺部品との間に隙間(遊び)が設けられているため、可動端子が貫通孔内をスムーズに移動することができる。また、上記の隙間を設けた場合であっても、第2方向においてコネクタが大型化するのを抑えることができる。
【0019】
また、コネクタは、第1方向において相手側コネクタと嵌合可能であり、コンタクトは、第1方向と交差する第2方向に並ぶ一対の挟み込み部を有してもよい。この場合、コネクタが相手側コネクタと嵌合した状態において、一対の挟み込み部が、相手側コネクタが有する相手側コンタクトを挟み込むとよい。
上記の構成によれば、第2方向においてコネクタの大型化を抑える効果がより効果的に発揮される。つまり、コンタクトを移動させずに可動端子を移動させる構成であれば、一対の挟み込み部の間の間隔をより広げる必要がなく、その分、第2方向におけるコネクタのサイズを小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板に反り等の変形が生じた場合にも基板に適切に固定することができ、且つ、より小型化されたコネクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの斜視図であり、コネクタを上側から見たときの図である。
【
図2】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの斜視図であり、コネクタを下側から見たときの図である。
【
図3】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの平面図である。
【
図4】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの底面図である。
【
図5】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの正面図である。
【
図6】本発明の一つの実施形態に係るコネクタの側面図である。
【
図7】本発明の一つの実施形態に係るコンタクトと可動端子、及びハウジングの一部分を示す斜視図である。
【
図10】相手側コネクタに設けられたコンタクトと可動端子、及びハウジングの一部分を示す斜視図である。
【
図11】相手側コネクタに嵌合した状態のコネクタを示す側面図である。
【
図13】本発明の一つの実施形態に係るコンタクトの正面図である。
【
図14】本発明の一つの実施形態に係るコンタクトの平面図である。
【
図15】本発明の一つの実施形態に係るコンタクトの側面図である。
【
図16】本発明の一つの実施形態に係る可動端子の正面図である。
【
図17】本発明の一つの実施形態に係る可動端子の平面図である。
【
図18】本発明の一つの実施形態に係る可動端子の側面図である。
【
図19】
図3のI-I断面を示す図であり、可動端子の突出量が最大である状態を示す図である。
【
図20】
図3のI-I断面を示す図であり、可動端子の突出量が最小である状態を示す図である。
【
図22】
図9のK-K断面を示す図であり、可動端子の突出量が最大である状態を示す図である。
【
図23】
図9のK-K断面を示す図であり、可動端子の突出量が最小である状態を示す図である。
【
図24】コンタクトが移動可能に構成された従来のコネクタの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のコネクタの一つの実施形態について、添付の図面に示した構成例を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態から変更又は改良され得る。
また、本発明のコネクタを構成する各部品の材質、形状及び設計寸法等は、本発明の用途及び本発明の実施時点での技術水準等に応じて設定することができる。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0023】
また、以下では、互いに直交する3つの方向をX,Y,Z方向とし、X方向がコネクタの横幅方向であり、Y方向がコネクタの前後方向であり、Z方向がコネクタの上下方向であることとする。ここで、Z方向は、本発明の第1方向に相当し、X及びY方向は、本発明の第2方向に相当する。また、Z方向は、コネクタと相手側コネクタとの嵌合方向に相当する。
【0024】
なお、以下においてコネクタ各部の形状及び位置等を説明する際には、特に断る場合を除き、+Z側をコネクタの上側とし、-Z側をコネクタの下側としてコネクタを見た場合の形状及び位置等を説明することとする。また、上側、すなわち+Z側は、Z方向においてコネクタから見て相手側コネクタが位置する側である。
【0025】
また、本明細書において、「平面視」とは、Z方向において上側から見ることを意味し、「側面視」とは、X方向において一方側から見ることを意味し、「正面視」とは、Y方向において前側から見ることを意味する。
【0026】
また、本明細書において、「垂直」、「直交」及び「平行」は、コネクタの分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
【0027】
また、説明上の便宜のため、以下では、コネクタが相手側コネクタと嵌合することを「コネクタ嵌合」と呼ぶこととし、コネクタが相手側コネクタと嵌合している状態を「コネクタ嵌合状態」と呼ぶこととする。
【0028】
<<コネクタ及び相手側コネクタの基本構成について>>
本発明の一つの実施形態に係るコネクタ(以下、コネクタ10)及び相手側コネクタ60の基本構成について、
図1~12を参照しながら説明する。
図1~7は、コネクタ10の構成例を示す図である。
図8~10は、相手側コネクタ60の構成例を示す図である。
図11及び12は、相手側コネクタ60に嵌合した状態のコネクタ10を示す図であり、
図12は、
図11のJ-J断面を示す図である。J-J断面は、コンタクト20及び相手側コンタクト70を通過する断面(XZ面)である。
【0029】
コネクタ10及び相手側コネクタ60は、Z方向において、互いに嵌合可能なリセプタクルコネクタ及びプラグコネクタである。それぞれのコネクタは、基板、詳しくは基板のパッド(導電パターン)に接した状態で基板に固定(実装)される。基板は、反り等が発生していない通常状態ではZ方向に対して垂直に配置される。
以下の実施形態では、本発明品であるコネクタ10がリセプタクルコネクタであり、相手側コネクタ60がプラグコネクタであることとする。ただし、これに限定されず、本発明のコネクタがプラグコネクタであり、相手側コネクタがリセプタクルコネクタでもよい。
【0030】
コネクタ10及び相手側コネクタ60は、
図1及び8等に示すように、多芯型のコネクタであり、複数のコンタクトを有する。コネクタ10のコンタクト20と、相手側コネクタ60のコンタクト(相手側コンタクト70)とは、導電性を有する材質、例えば金属からなり、それぞれのコンタクトの個数は、互いに同数である。
【0031】
コネクタ嵌合状態では、各コンタクト20が、対応する相手側コンタクト70と接続する。各コンタクトの種類は特に限定されないが、例えば、コンタクト20は、
図7に示すようにソケット型のコンタクトであり、相手側コンタクト70は、
図10に示すようにピン型のコンタクトでもよい。この場合、コネクタ嵌合状態では、コンタクト20の一部分が相手側コンタクト70と嵌合して接触し、詳しくは、コンタクト20の+Z側端部に設けられた一対の挟み込み部24が、相手側コンタクト70の先端部を挟み込む(
図12参照)。
【0032】
コネクタ10において、複数のコンタクト20は、
図1及び3に示すようにハウジング30によって保持される。ハウジング30は、絶縁性樹脂の成型品(インシュレータ)であり、略直方体形状をなす。ハウジング30には、Z方向に沿って形成された貫通孔32が、コンタクト20と同じ個数、設けられており、各貫通孔32内にはコンタクト20が一個ずつ圧入される。
【0033】
ハウジング30は、金属製のフレーム40に組み付けられる。フレーム40は、上端及び下端が開口端となった矩形枠であり、ハウジング30は、フレーム40の内側に圧入されることでフレーム40によって囲まれる。
【0034】
同様に、相手側コネクタ60において、複数の相手側コンタクト70は、
図8に示すように、樹脂性樹脂の成型品(インシュレータ)である相手側ハウジング80によって保持される。相手側ハウジング80には、Z方向に沿って形成された貫通孔82が、相手側コンタクト70と同じ個数、設けられており、各貫通孔82内には相手側コンタクト70が一個ずつ圧入される。
【0035】
相手側ハウジング80は、略直方体形状をなし、矩形枠である金属製の相手側フレーム90に組み付けられる。相手側フレーム90は、上端及び下端が開口端となった矩形枠であり、相手側ハウジング80は、相手側フレーム90の内側に圧入されることで相手側フレーム90によって囲まれる。
【0036】
また、相手側フレーム90の高さ(Z方向の長さ)が相手側ハウジング80の高さより大きい。そのため、相手側ハウジング80が圧入された状態の相手側フレーム90の内側には、相手側ハウジング80と-Z側で隣り合う位置に空間が設けられている。この空間は、コネクタ嵌合時にコネクタ10の収納スペースとなり、コネクタ嵌合状態ではコネクタ10の略全体が上記スペース内に収まる(
図11参照)。
【0037】
コネクタ10及び相手側コネクタ60は、Z方向において基板の表面上に配置されて基板に固定され、詳しくはSMT(Surface Mounted Technology)用の半田によって基板の表面に実装される。コネクタ10は、
図1に示すように、その下端(-Z側の端)にて基板Sに固定され、相手側コネクタ60は、その上端(+Z側の端)にて基板に固定される。コネクタ10及び相手側コネクタ60の各々は、基板に反り等が発生した場合にも、反り等に追従して基板に適切に固定(実装)することが可能である。
【0038】
<<コネクタの詳細構成について>>
次に、コネクタ10の詳細構成について、既出の
図1~7、及び
図13~21を参照しながら説明する。
図19及び20は、
図3のI-I断面であり、コンタクト20及び可動端子50を通過する断面(YZ面)である。
図21は、
図19中、可動端子50周辺の拡大図である。
【0039】
コネクタ10は、
図1~7に示すように、コンタクト20と、ハウジング30と、フレーム40とを備え、可動端子50をさらに備える。フレーム40は、矩形型の枠であり、
図1~4に示すようにX方向において対向する一対の長辺部分42と、X方向において一対の長辺部分42の間に配置された一対の短辺部分44とを有する。
【0040】
また、フレーム40は、コネクタ10が基板Sに固定される際に可動端子50とは異なる位置にて基板Sに接する接触部材に相当する。詳しくは、フレーム40の下面(-Z側の面)が、半田によって基板Sに固定(実装)される。より具体的に説明すると、一対の長辺部分42の各々の下端部、つまり、Z方向における基板側の端部には、
図2及び4に示すように接触面46が設けられている。接触面46は、
図2に示すように、フレーム40の下面のうち、接触面46以外の領域よりも幾分下がった位置にある平面領域であり、
図4中、ハッチング付きの領域である。フレーム40は、接触面46が基板Sの表面に接した状態でコネクタ10の基板Sに固定され、詳しくは、フレーム40の下面と基板Sの表面とが半田によって接合される。
【0041】
なお、
図2及び4に示す構成では、+X側の長辺部分42の下面におけるY方向中央部分に一つの接触面46が設けられ、-X側の長辺部分42の下面におけるY方向の両端部分のそれぞれに接触面46が設けられている。これにより、コネクタ10をバランスよく基板Sに搭載することができる。ただし、接触面46の数及び配置位置については、特に限定されず、あるいはフレーム40の下面全体が接触面であってもよい。
【0042】
ハウジング30は、絶縁性樹脂の成型品であり、
図1~4に示すように、Z方向において基板Sと対向する底面34と、Z方向に沿って形成された複数の貫通孔32とをする。貫通孔32は、コンタクト20と対応して設けられており、換言すると、ハウジング30には、貫通孔32がコンタクト20毎に設けられている。底面34は、平坦面であり、
図2及び4に示すように、底面34には各貫通孔32の下端(開口)が設けられている。また、ハウジング30がフレーム40内に圧入された状態では、底面34が、フレーム40の接触面46よりも幾分+Z側に位置する(
図2参照)。
【0043】
複数の貫通孔32の各々は、方形の開口を有し、X方向及びY方向において規則的に略等ピッチで設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、複数の貫通孔32は、ハウジング30において不規則な位置に設けられてもよい。また、貫通孔32の開口形状は、方形に限定されず、正方形又は長方形以外の四角形、五角形以上の多角形、円又は楕円でもよい。
【0044】
各貫通孔32には、一つのコンタクト20が圧入されている。これにより、貫通孔32と同じ個数のコンタクト20がハウジング30に保持され、詳しくは、ハウジング30と一体化している。各貫通孔32内に保持されたコンタクト20において、Z方向における基板S側の端部、すなわち下端部(詳しくは接合部22)は、
図4に示すように、ハウジング30の底面34において貫通孔32を通じて露出する。つまり、各コンタクト20は、その下端が貫通孔32の下端開口から基板Sの表面に臨んだ状態で各貫通孔32内に配置される。
【0045】
なお、各貫通孔32内に保持されたコンタクト20の下端位置は、例えば、Z方向においてハウジング30の底面34と同じ位置でもよい(
図19及び20参照)。
【0046】
コンタクト20は、
図7、
図13~15に示すように、ベース部21と、接合部22と、一対のアーム部23と、一対の挟み込み部24とを有する。コンタクト20は、一部品からなり、コンタクト20の各部は、例えば一つの金属片を切り曲げ加工することで構成されている。
【0047】
ベース部21は、正面視で矩形形状をなす板片型の部分であり、Z方向に延出してコンタクト20の支柱を構成する。接合部22は、コンタクト20の-Z側端部、すなわちZ方向における基板S側の端部をなし、ベース部21の下端から下方に延出し、正面視で舌型の形状をなす断片部分である。接合部22の横幅(X方向の長さ)は、下端に向かうにつれて短くなっており、その最大値は、貫通孔32の横幅(X方向の長さ)よりも僅かに長い。これにより、コンタクト20を貫通孔32内に嵌め込む際には、接合部22のX方向両端部が貫通孔32の内壁に食い込む。この結果、コンタクト20が貫通孔32に圧入される。
【0048】
コンタクト20が貫通孔32内に保持された状態では、接合部22の下端面がハウジング30の底面34において貫通孔32を通じて露出し、詳しくは、Z方向において底面34と略同一面上に位置する。これにより、コネクタ10を基板Sに固定(実装)する際には、接合部22の下端面が基板Sの表面に臨む。以上のように、コンタクト20の接合部22、厳密には、その下端面は、露出部分に相当し、ハウジング30の底面34において露出する。
【0049】
一対のアーム部23は、
図13及び14に示すように、ベース部21のX方向両端から腕状にX方向に延出した板片状の部分であり、X方向においてベース部21を挟む位置に設けられている。
【0050】
一対の挟み込み部24は、一対のアーム部23の先端部と連続しており、
図15に示すようにアーム部23の先端部から上側(+Z側)に延出した部分である。一対の挟み込み部24は、X方向において並んでおり、X方向におけるコンタクト20の中心線を境にして対称な形状をなしている。具体的に説明すると、一対の挟み込み部24の各々は、
図7及び13に示すようにS字状に湾曲している。より詳しく説明すると、各挟み込み部24の先端部分は、上方に向かうにつれて挟み込み部24の間隔が広がるように延出している。他方、各挟み込み部24の根元部分は、下方に向かうにつれて挟み込み部24の間隔が短くなるように延出している。
【0051】
また、一対の挟み込み部24の各々は、弾性を有し、挟み込み部24の間隔が広がるように弾性変形可能である。コネクタ嵌合状態では、
図12に示すように、一対の挟み込み部24が相手側コンタクト70の先端部を挟み込む。換言すると、コネクタ嵌合の過程において、相手側コンタクト70の先端部が一対の挟み込み部24の間に入り込み、各挟み込み部24は、X方向において外側に押し退けられるように弾性変形する。これにより、一対の挟み込み部24が相手側コンタクト70の先端部を挟み込んで相手側コンタクト70と接触する。この結果、コンタクト20は、対応する相手側コンタクト70と接触して物理的に且つ電気的に接続される。
【0052】
なお、一対の挟み込み部24の各々において相手側コンタクト70と接する位置は、コンタクト20における相手側コンタクト70との接点(以下、単位接点という)に相当する。また、各コンタクト20がハウジング30と一体化しているため、Z方向における各コンタクト20の接点の位置、より詳しくはハウジング30に対する接点の位置は、ほぼ固定された位置である。
【0053】
可動端子50は、
図19及び20に示すように、コンタクト20とともに貫通孔32内に配置され、貫通孔32内でZ方向に移動可能な状態でハウジング30に対して組み付けられる。コネクタ10に設けられる可動端子50の個数は、複数のコンタクト20と同数であり、一つの貫通孔32には一つの可動端子50が配置される。可動端子50は、コンタクト20とは別体をなし、貫通孔32内にてコンタクト20に対してZ方向に移動することができる。
【0054】
また、可動端子50がコンタクト20とともに貫通孔32内に配置された状態では、
図21に示すように、X方向及びY方向における可動端子50とその周辺部品との間に、遊び(隙間)が設けられている。具体的には、貫通孔32の内壁面のうち、可動端子50と対向する面と可動端子50との間には適度な隙間が設けられており、同様に、可動端子50とコンタクト20との間にも適度な隙間が設けられている。このように適度な隙間(遊び)が可動端子50の周りに設けられることで、可動端子50は、貫通孔32内にてコンタクト20に対してスムーズに移動可能である。
【0055】
可動端子50は、導電性を有する材質、例えば、
図18に示すように側方視でL字状に屈曲した金属片によって構成され、
図16~18に示すように、接触部51と、連続部52と、凸部53とを有する。
【0056】
接触部51は、Z方向において下方(-Z側)に延出した板状部分である。可動端子50がコンタクト20とともに貫通孔32内に配置された状態では、接触部51がZ方向においてコンタクト20の接合部22に近接する位置に配置される。換言すると、可動端子50は、貫通孔32内にてコンタクト20に近接する位置に配置される。ここで、コンタクト20に近接する位置とは、コンタクト20と接する位置であってもよく、あるいは、僅かな隙間を隔ててコンタクト20と隣り合う位置であってもよい。また、上記隙間の大きさは、接触部51に付着された半田の一部が当該隙間内に吸い上げられる程度の大きさが望ましく、例えば、0.2mm以下であるとよい。
なお、以下では、貫通孔32内にて可動端子50が僅かな隙間を隔ててコンタクト20と隣り合う位置に配置されることとする。
【0057】
接触部51の下端部(Z方向における基板側の端部)は、ハウジング30の底面34において貫通孔32を通じて露出する。そして、コネクタ10が基板Sに固定(実装)される際には、接触部51の下端部が基板Sの表面に半田付けされる。また、基板Sに固定される前の接触部51の下端部は、可動端子50のZ方向移動により、貫通孔32の下端開口を通じて底面34から突出するように構成されている(
図2、5及び6参照)。
【0058】
さらに、接触部51の先端部がZ方向において底面34から突出する量、すなわち突出量は、
図19及び20に示すように、Z方向における可動端子50の位置に応じて変化する。換言すると、可動端子50は、貫通孔32内において、突出量が最大となる位置(以下、最大突出位置と言う)と、突出量が最小となる位置(以下、最小突出位置と言う)との間を移動することができる。
なお、
図19に示された可動端子50の位置が最大突出位置に相当し、
図20に示された可動端子50の位置が最小突出位置に相当する。ここで、最大突出位置とは、可動端子50がZ方向において最も基板Sに近付いた位置であり、最小突出位置とは、可動端子50がZ方向において最も基板Sから離れた位置である。
【0059】
連続部52は、接触部51の上端部(基板S側とは反対側の端部)と連続しており、接触部51に対して垂直に設けられてX方向に沿って延びた板状部分である。連続部52の横幅(X方向における長さ)は、
図16及び17に示すように、接触部51の横幅よりも広く、連続部52の上端面54及び下端面55は、
図18に示すように平坦面である。連続部52の上端面54及び下端面55は、Z方向において互いに反対側に位置する第1端面及び第2端面に相当する。
【0060】
可動端子50がコンタクト20とともに貫通孔32内に配置された状態では、
図19及び20に示すように、連続部52がコンタクト20の一対のアーム部23の各々の下面よりも下側(すなわち、基板S側)に配置される。可動端子50は、Z方向において上方、すなわち基板Sとは反対側に移動する場合には、連続部52の上端面54が各アーム部23の下面に当たって接する位置まで移動でき、その位置よりも更なる上方への移動が規制される。つまり、一対のアーム部23の各々の下面は、コンタクト20が備える移動規制部に相当する。一対のアーム部23の各々の下面は、Z方向において接触部51の先端部の突出量が減少する向き(つまり、+Z側)に可動端子50が移動する際に、可動端子50に当たって当接することで可動端子50の移動を規制する。
【0061】
Z方向において一対のアーム部23の各々の下面に連続部52の上端面54が当たって当該下面に接する位置に可動端子50が至ると、接触部51の先端部の突出量が最小となる。つまり、可動端子50が一対のアーム部23の各々の下面に当たって接する位置(換言すると、移動規制部との接触位置)は、最小突出位置に相当する(
図20参照)。
なお、移動規制部として機能する一対のアーム部23の各々の下面は、連続部52の上端面54に当たって接触し、つまり可動端子50と面接触する。これにより、各アーム部23は、可動端子50と良好に接触することができ、可動端子50の更なる上方移動を適切に規制することができる。また、一対のアーム部の各々の下面を移動規制部として用いているが、可動端子50に当たって接触することで可動端子50の上方移動を規制できればよく、その場合には、上記の構成以外の移動規制部を用いてもよい。
【0062】
また、可動端子50がコンタクト20とともに貫通孔32内に配置された状態では、
図19及び20に示すように、連続部52が、貫通孔32の内壁面に設けられた規制部36よりも上側(すなわち、基板Sとは反対側)に配置される。規制部36は、各貫通孔32の内壁面を構成する四面のうち、Y方向において可動端子50と隣り合う面の下側領域からY方向に突出した凸部、すなわち段差部分である。規制部36は、Z方向において接触部51の先端部の突出量が増加する向き(つまり、-Z側)に可動端子50が移動する際に、可動端子50に当たって当接する。換言すると、可動端子50は、Z方向において下方、すなわち基板S側に移動する場合には、連続部52の下端面55が規制部36に当たって接する位置まで移動することができ、その位置よりも更なる下方への移動が規制される。
【0063】
Z方向において規制部36に連続部52の下端面55が当たって当該規制部36に接する位置に可動端子50が至ると、接触部51の先端部の突出量が最大となる。つまり、可動端子50が規制部36に当たって接する位置(つまり、規制部36との接触位置)は、最大突出位置に相当する(
図19参照)。
なお、規制部36は、平坦面である上面を有し、上面にて連続部52の下端面55に当たって接触し、つまり可動端子50と面接触する。これにより、規制部36は、可動端子50と良好に接触し、可動端子50の更なる下方移動を適切に規制することができる。また、上記の規制部36は、貫通孔32の内壁面から突出した凸部によって構成されるものであるが、可動端子50に当たって接触することで可動端子50の下方移動を規制できればよく、その場合には、上記の構成以外の規制部を用いてもよい。
【0064】
以上のように、各可動端子50は、連続部52がZ方向においてコンタクト20の一対のアーム部23と規制部36との間に位置した状態で貫通孔32内に配置されている。これにより、各可動端子50は、接触部51の下端部が基板Sに固定されるまでの間、Z方向において最小突出位置と最大突出位置との間を自在に移動できる。また、可動端子50が貫通孔32から抜け出るのを防ぐことができる。つまり、各アーム部23の下面と規制部36とは、可動端子50の抜け止めとしても機能する。
【0065】
ここで、可動端子50が最小突出位置にある場合、接触部51の下端面(基板S側の端面)は、
図20に示すように、Z方向においてフレーム40の接触面46よりも幾分上方に位置する。換言すると、突出量が最小となる場合の可動端子50の下端面は、接触面46から見てハウジング30の底面34と同じ側に位置し、例えば底面34とほぼ同一面上に位置する。ただし、これに限定されるものではなく、可動端子50が最小突出位置にある場合において、接触部51の下端面(基板S側の端面)は、ハウジング30の底面34よりも上方(+Z側)に位置してもよい。つまり、ハウジング30の底面34を基準として突出量を規定した場合に、突出量の最小値がマイナス(-)の値になってもよい。
【0066】
反対に、可動端子50が最大突出位置にある場合、接触部51の下端面(基板S側の端面)は、
図19に示すように、Z方向においてフレーム40の接触面46よりも幾分下方に位置する。換言すると、突出量が最大となる場合の可動端子50の下端面は、接触面46から見てハウジング30の底面34とは反対側に位置し、詳しくは底面34から最も離れた位置にある。
【0067】
凸部53は、連続部52の上端面54のうち、Y方向の端部、より詳しくはY方向において接触部51とは反対側の端部から+Z側に突出した部分である。可動端子50がコンタクト20とともに貫通孔32内に配置された状態では、凸部53が、X方向において、コンタクト20が有する一対のアーム部23の間に位置する(
図12参照)。なお、凸部53は、可動端子50の成形過程において形成される部分であり、必ずしも凸部53が可動端子50に設けられなくてもよい。
【0068】
<<基板に対するコネクタの固定>>
次に、上記のように構成されたコネクタ10を基板Sに固定(実装)する手順について説明する。先ず、Z方向が鉛直方向に沿うようにコネクタ10を把持し、その状態でコネクタ10を基板S上に配置する。この際、ハウジング30の底面34が鉛直方向において下側を向いている。また、複数の可動端子50の各々は、
図19に示すように自重により最大突出位置まで下降している。
【0069】
コネクタ10を基板Sの表面上に載せると、フレーム40の下面に設けられた接触面46が基板Sの表面、詳しくは不図示のパッド(導電パターン)と接触する。その後、コネクタ10のうち、可動端子50を除く部分(以下、コネクタ本体と言う)が自重によって基板S側に下降する。コネクタ本体の下降に伴い、それまで最大突出位置にあった各可動端子50が、コンタクト20を含むコネクタ本体に対して上方に移動する。つまり、各可動端子50における接触部51の突出量が減少する。このとき、コネクタ本体を下方に押さえる必要がなく、各可動端子50をコンタクト20に対して容易に移動させることができる。
【0070】
ここで、基板Sに反り等が発生せず、基板Sの表面が鉛直方向に対して垂直でフラットである場合には、各可動端子50の接触部51の突出量が可動端子50の間で揃う。詳しくは、各可動端子50の接触部51の下面位置がZ方向において接触面46とほぼ同じ位置になる。
【0071】
一方、基板Sに反り等が発生し、基板Sの各部と可動端子50との接触位置がZ方向(鉛直方向)において変位する場合、基板Sの各部の変位に追従して各可動端子50が移動し、可動端子50毎に突出量が調整される。これにより、基板Sに反り等が発生した場合であっても、各可動端子50の接触部51の下面を基板Sに接触させることができる。
【0072】
その後、各可動端子50の接触部51が基板Sに半田によって固定される。この際、接触部51に付着された半田の一部が、接触部51と隣り合うコンタクト20の接合部22と接触部51との僅かな隙間内に入り込む。この隙間内に入り込んだ半田によって、接合部22が接触部51に接合される。これにより、コンタクト20が、可動端子50を介して基板Sと電気的に接続されて導通状態となる。
【0073】
以上の手順により基板Sに固定(実装)されたコネクタ10では、可動端子50の位置、換言すると、突出量が可動端子50毎に調整される。一方で、複数のコンタクト20の各々は、ハウジング30と一体化しており、コネクタ10が基板Sに固定された状態では、Z方向における各コンタクト20の位置が固定されている。つまり、各コンタクト20における接点は、Z方向において所定位置にあり、これにより、各コンタクト20において一定の有効接触長を確保することができる。ここで、有効接触長とは、Z方向においてコンタクト20が相手側コンタクト70と接触可能な部分の長さを意味する。
【0074】
以上の構成によれば、基板Sの反り等に追従してコネクタ10を基板Sに固定することができ、且つ、コネクタ10を小型化することができる。
より詳しく説明すると、特許文献1に示すように基板Sの反り等に応じてコンタクト5が移動する構成では、コンタクト5の移動によって接点の位置が変動する。この構成において有効接触長を確保するためには、接点の位置変動を考慮し、Z方向におけるコンタクト5及び相手側コンタクトの長さ(全長)をより大きく必要がある。この結果、コネクタ及び相手側コネクタがZ方向に大型化することになる。
【0075】
また、コンタクト5を移動させる場合には、X方向及びY方向において、コンタクト5とその周辺部品との間に遊び(隙間)を設ける必要がある。その場合、遊び(隙間)の範囲でコンタクト5がX方向及びY方向にも変位する可能性があり、ガタが生じてしまう。そのため、コンタクト5を最終的に基板に固定する際には、その固定位置がX方向及びY方向に変動し得る。この点を踏まえると、固定位置の変動分(ガタツキ量)を見込んでコンタクト5各部を設計する必要がある。具体的には、固定位置が変動しても相手側コンタクトと接触できるように、コンタクト5における一対の挟み込み部の間隔を広げる、あるいは各挟み込み部のバネ定数を下げて弾性変形し易くする設計が必要となる。この結果、コンタクト5を移動させる構成のコネクタは、X方向及びY方向においても大型化する可能性がある。
【0076】
これに対して、本発明のコネクタ10では、コンタクト20自体がハウジング30に対して移動させず、その代わりに可動端子50がコンタクト20に対して移動する。つまり、コンタクト20がZ方向に移動しないため、有効接触長を確保するためにコンタクト20及び相手側コンタクト70の全長をより長く設計する必要がない。この結果、コネクタ10及び相手側コネクタ60のZ方向における大型化を抑えつつ、基板Sの反り等に追従させてコネクタ10を基板Sに適切に固定(実装)することができる。
【0077】
また、コンタクト20が移動しないため、X方向及びY方向においてコンタクト20と周辺部品との間に遊び(隙間)を設ける必要がない。これにより、コンタクト周辺に遊びを設けた場合の不具合、すなわちX方向及びY方向におけるコネクタの大型化を回避することができる。
【0078】
<<相手側コネクタの構成について>>
上述したコネクタ10の構成は、相手側コネクタ60にも適用可能である。つまり、本発明により、基板に適切に固定でき、且つ、より小型化された相手側コネクタ60を実現することができる。この場合における相手側コネクタ60の構成について、既出の
図10、及び
図22及び23を参照しながら説明する。
図22及び23は、
図9のK-K断面であり、相手側コンタクト70及び相手側可動端子100を通過する断面(YZ面)である。
【0079】
図9、22及び23に示す相手側コネクタ60では、相手側コンタクト70と別体をなす可動端子(相手側可動端子100)が設けられている。相手側可動端子100は、
図22及び23に示すように、相手側ハウジング80の貫通孔82内にて相手側コンタクト70に近接する位置に配置されており、貫通孔82内で相手側コンタクト70に対してZ方向に移動可能である。
【0080】
Z方向における相手側可動端子100の一端部(+Z側の端部)は、相手側可動端子100の移動によって相手側ハウジング80の底面84から突出するように構成されている。相手側可動端子100の+Z側端部の突出量は、
図22及び23に示すように、Z方向における相手側可動端子100の位置に応じて変化する。そして、相手側コネクタ60を基板に固定する際には、相手側可動端子100の+Z側端部が基板に半田付けされる。
【0081】
以上のように構成された相手側コネクタ60では、前述したコネクタ10において奏される効果と同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、
図9に示すように、相手側コンタクト70に移動規制部72を設けててもよい。そして、
図23に示すように、相手側可動端子100を移動規制部72に当てて接触させ、その位置からの相手側可動端子100の更なる移動(-Z側の移動)を規制してもよい。また、
図22に示すように、貫通孔82の内壁面からX方向又はY方向に突出した規制部86を相手側ハウジング80に設けてもよい。そして、相手側可動端子100を規制部86に当てて接触させて、その位置からの相手側可動端子100の更なる移動(+Z側の移動)を規制してもよい。また、移動規制部72及び規制部86を設けることにより、相手側可動端子100が貫通孔82から抜け出るのを防ぐことができる。
【0083】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明のコネクタについて、具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0084】
上記の実施形態では、コンタクト20が、ハウジング30に設けられた貫通孔32に圧入されることで貫通孔32内に保持されることとした。ただし、これに限定されず、例えば、コンタクトを金型(不図示)の内部に配置した状態でハウジングを構成する樹脂を金型内に注入するインサート成形によって、コンタクトと一体化されたハウジングを形成してもよい。この場合、ハウジングにおける貫通孔の縁部分にコンタクトの一部が埋め込まれることによりコンタクトが貫通孔内に保持されることになる。
【0085】
また、上記の実施形態では、可動端子50が連続部52を備え、貫通孔32内にて、連続部52がZ方向においてコンタクト20の一対のアーム部23と規制部36との間に配置されることとした。これにより、可動端子50が貫通孔32内から抜け出るのを防ぐことができる。ただし、可動端子50が貫通孔32内から抜け出るのを防ぐ構成は、上記の構成に限定されず、例えばランス構造であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、コンタクト20が複数設けられ、可動端子50、及びハウジング30に設けられる貫通孔32がコンタクト20と同数設けられることとした。ただし、これに限定されるものではなく、コンタクト20、可動端子50及び貫通孔32がそれぞれ一つのみ設けられる構成でもよい。
【0087】
また、上記の実施形態では、フレーム40が、接触部材として、基板Sに固定する際に可動端子50とは異なる位置にて基板Sに接することとした。そして、フレーム40のZ方向における基板側の端部には、基板Sに接する接触面46が設けられていることとした(
図2及び4参照)。ただし、これに限定されず、例えば、フレーム40を備えない構成のコネクタ10において、ハウジング30が、接触部材として、可動端子50とは異なる位置にて基板Sに接してもよい。つまり、ハウジング2に接触面46に相当する面が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 貫通孔
4 結合面
5 コンタクト
10 コネクタ
20 コンタクト
21 ベース部
22 接合部
23 アーム部
24 挟み込み部
30 ハウジング
32 貫通孔
34 底面
36 規制部
40 フレーム
42 長辺部分
44 短辺部分
46 接触面
50 可動端子
51 接触部
52 連続部
53 凸部
54 上端面(第1端面)
55 下端面(第2端面)
60 相手側コネクタ
70 相手側コンタクト
72 移動規制部
80 相手側ハウジング
82 貫通孔
84 底面
86 規制部
90 相手側フレーム
100 相手側可動端子
S 基板