(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044876
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230327BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230327BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20230327BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01L21/304 651L
H01L21/304 648A
H01L21/304 651G
H01L21/304 648L
H01L21/304 648G
H01L21/68 N
B08B3/02 C
B08B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152975
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 晴香
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
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5F157DC90
(57)【要約】
【課題】高い品質をもって基板の処理を行うことが可能な基板処理装置を提供することである。
【解決手段】前室部100aと後室部100bとの境界部分に配置され、基板Wの搬送方向D上流側斜め下方に向けて気体を噴出する第1気体噴出ノズル21と、前室部100aと後室部100bとを仕切る仕切り部材10と、を有し、仕切り部材10は、第1気体噴出ノズル21より上方の連通部SPを開放する開放位置と連通部SPを閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能な可動仕切り板10cを含み、前室部100aには、上排気口14a、14bが形成されるとともに、後室部100bには、気体を導入する気体導入口18が形成された、構成となる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口が設けられた前室部と排出口が設けられた後室部とを有する乾燥室と、
液体により処理された基板を前記導入口から前記乾燥室に導入し、導入された前記基板を前記排出口に向けて搬送して当該排出口から排出させる搬送機構と、を有し、
前記乾燥室において搬送される前記基板の表面から液分を除去して当該基板を乾燥させる基板処理装置であって、
前記前室部と前記後室部との境界部分に、搬送される前記基板の上面に対向して配置され、前記基板の搬送方向上流側斜め下方に向けて気体を噴出する第1気体噴出ノズルと、
前記前室部と前記後室部との境界部分において当該前室部と当該後室部とを仕切る仕切り部材と、を有し、
前記仕切り部材は、前記前室部と前記後室部との境界部分において前記第1気体噴出ノズルより上方の連通部を開放する開放位置と前記連通部を閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能な可動仕切り板を含み、
前記前室部には、当該前室部内のミスト状液体を気体とともに排出させる排気口が形成されるとともに、前記後室部には、気体を導入する気体導入口が形成された、基板処理装置。
【請求項2】
前記排出口を開放する開放位置と前記排出口を閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能に設けられた出口開閉板、を有する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記排気口は、前記前室部内のミスト状液体を気体とともに前記基板より上方に排出させるよう前記前室部に形成されたものであって、
前記前室部において前記導入口から導入される前記基板の上面に液体を追加的に供給する追加液供給部と、
前記導入口から前記第1気体噴射ノズルの基板搬方向上流側の所定位置までの範囲に前記追加液供給部を上方から覆うように設けられ、前記排気口が形成されたカバー体と、
前記カバー体の前記排気口から前記前室部の外部に延びる排気管と、
を有する、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記前室部と前記後室部との境界部分に搬送される前記基板の下面に対して配置され、前記基板の搬送方向上流側斜め上方に向けて気体を噴出する第2気体噴出ノズルを備え、
前記前室部には、当該前室部内のミスト状液体を気体とともに前記基板より下方に排出させる下排気口が形成される、請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、それぞれ独立して搬送速度の制御が可能であって、前記前室部に設けられた前機構部と、前記後室部に設けられた後機構部とを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記搬送機構は、ローラコンベアを含み、
前記後機構部のローラ径は、前記前機構部のローラ径より小さく、かつ前記後機構部のローラの配列密度は、前記前機構部のローラの配列密度より高い、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の基板処理装置を用い、液体により処理された後に前記導入口から前記乾燥室に順次導入される基板の表面を乾燥させる基板処理方法であって、
前記仕切り部材の前記可動仕切り板が開放位置にある状態で、前記第1気体噴出ノズルから噴出される気体中を前記搬送機構により搬送される基板を通過させる第1ステップと、
前記基板の後端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置を通過した後に、前記可動仕切り板を閉鎖位置にさせる第2ステップと、
前記基板に続く次基板の先端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置より上流側の基準位置に達する前に、前記基板を前記排出口から排出させる第3ステップと、
前記第1基板が前記排出口から排出された後に、前記可動仕切り板を開放位置にさせる第4ステップと、を有する基板処理方法。
【請求項8】
請求項3に記載の基板処理装置を用い、液体により処理された後に前記導入口から前記乾燥室に順次導入される基板の表面を乾燥させる基板処理方法であって、
前記仕切り部材の前記可動仕切り板が開放位置にある状態で、前記第1気体噴出ノズルから噴出される気体中を前記搬送機構により搬送される基板を通過させる第1ステップと、
前記基板の後端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置を通過した後に、前記可動仕切り板を閉鎖状態にさせる第2ステップと、
前記基板に続く次基板の先端が前記カバー体より下流側に移動する前に、前記基板を前記排出口から排出させる第3ステップと、
前記基板が前記排出口から排出された後に、前記可動仕切り板を開放位置にさせる第4ステップと、を有する基板処理方法。
【請求項9】
請求項5または6に記載の基板処理装置を用い、液体により処理された後に前記導入口から前記乾燥室に順次導入される基板の表面を乾燥させる基板処理方法であって、
前記仕切り部材の前記可動仕切り板が開放位置にある状態で、前記第1気体噴出ノズルから噴出される気体中を前記搬送機構により搬送される前記基板を通過させる第1ステップと、
前記基板の後端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置を通過した後に、前記後機構部の搬送速度を前記前機構部の搬送速度より大きくし、前記可動仕切り板を閉鎖位置にさせる第2ステップと、
前前記基板に続く次基板の先端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置より上流側の基準位置に達する前に、前記基板を前記排出口から排出させる第3ステップと、
前記基板が前記排出口から排出された後に、前記可動仕切り板を開放位置にさせる第4ステップと、を有する基板処理方法。
【請求項10】
前記基板処理装置は、前記排出口を開放する開放位置と前記排出口を閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能に設けられた出口開閉板、を有しており、
前記第1ステップは、前記出口開閉板が閉鎖位置にある状態で行われ、
前記第2ステップは、前記基板の後端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置を通過した後に、前記出口開閉板を開放位置にさせるステップを含み、
前記第3ステップは、前記出口開閉板が開放位置になった後で行われ、
前記第4ステップは、前記第1基板が前記排出口から排出された後に、前記出口開閉板を閉鎖位置にさせるステップを含む、請求項7乃至9のいずれかに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及びこの基板処理装置を用いた基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や半導体装置等の製造工程では、液晶パネル用ガラスやフォトマスク用ガラス等の基板の表面に処理液(例えば、リンス液)を供給してその基板表面を処理(例えば、リンス処理)することがある。このような場合、更に、その液体(処理液)により処理された基板の表面に残留した液体を除去して当該基板の表面を乾燥させる基板処理装置が用いられる。この種の基板処理装置では、チャンバ(乾燥室)内を通る搬送路に対向するように、その搬送方向を横切る方向に延びるスリットを有するエアナイフ(気体噴出ノズル)が設けられている。そして、チャンバ内において、前記エアナイフから高速に噴出される気体(例えば、ドライエア)中を搬送路に沿って移動する基板を通過させることによってその基板表面から液体を除去し、当該基板表面を乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した基板処理装置では、チャンバ内において、基板の表面にエアナイフから高速に噴出されるドライエアが吹き付けられるようになるので、基板表面に残留する液分が高速のドライエアによってミスト状になってチャンバ内に拡散し得る。そのようなミスト状になって拡散する液分がチャンバ内に生じる気体の流れによっては基板の表面に再付着するおそれがある。
【0005】
ミスト状の液分が基板の表面に再付着すると、シミが生じるなど処理不良が発生し、基板表面の状態が損なわれてしまう。また、基板表面の状態が損なわれてしまうと、後工程での処理に悪影響を及ぼすおそれがある。例えば、後工程において基板に対する成膜が行われる場合、基板上のミスト状の液分の再付着があった部分で成膜が十分に行われずにその形成された膜が剥がれ易くなったり、膜が不均一になったりすることで処理不良(成膜不良)が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、高い品質をもって基板の処理を行うことが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供するものである。
【0007】
(削除)
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板処理装置は、導入口が設けられた前室部と排出口が設けられた後室部とを有する乾燥室と、液体により処理された基板を前記導入口から前記乾燥室に導し、導入された前記基板を前記排出口に向けて搬送して当該排出口から排出させる搬送機構と、を有し、前記乾燥室において搬送される前記基板の表面から液分を除去して当該基板を乾燥させる基板処理装置であって、前記前室部と前記後室部との境界部分に、搬送される前記基板の上面に対向して配置され、前記基板の搬送方向上流側斜め下方に向けて気体を噴出する第1気体噴出ノズルと、前記前室部と前記後室部との境界部分において当該前室部と当該後室部とを仕切る仕切り部材と、を有し、前記仕切り部材は、前記前室部と前記後室部との境界部分において前記第1気体噴出ノズルより上方の連通部を開放する開放位置と前記連通部を閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能な可動仕切り板を含み、前記前室部には、当該前室部内のミスト状液体を気体とともに排出させる排気口が形成されるとともに、前記後室部には、気体を導入する気体導入口が形成された、構成となる。
【0009】
また、本発明に係る基板処理方法は、前記基板処理装置を用い、液体により処理された後に前記導入口から前記乾燥室に順次導入される基板の表面を乾燥させる基板処理方法であって、前記仕切り部材の前記可動仕切り板が開放位置にある状態で、前記第1気体噴出ノズルから噴出される気体中を前記搬送機構により搬送される基板を通過させる第1ステップと、前記基板の後端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置を通過した後に、前記可動仕切り板を閉鎖位置にさせる第2ステップと、前記基板に続く次基板の先端が前記第1気体噴出ノズルに対向する位置より上流側の基準位置に達する前に、前記基板を前記排出口から排出させる第3ステップと、前記第1基板が前記排出口から排出された後に、前記可動仕切り板を開放位置にさせる第4ステップと、を有する構成となる。
【0010】
上述したような構成によれば、第1気体噴出ノズルから気体が噴出される状態の乾燥室内を基板が搬送される際に、前室部と後室部とを仕切る仕切り部材の可動仕切り板を開放位置と閉鎖位置との間で切り換え動作させることにより、前室部及び後室部における気体の流れを制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1気体噴出ノズルから気体が噴出される状態の乾燥室内を基板が搬送される際に、前室部及び後室部における気体の流れ制御することができるので、高い品質をもって基板の処理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、基板処理装置の構造の一例及びその内部の状態の一例を示す側面図である。
【
図1B】
図1Bは、基板処理装置の構造の一例及びその内部の状態の一例を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、基板処理装置の構造の他の一例及びその内部の状態の一例を示す側面図である。
【
図2B】
図2Bは、基板処理装置の構造の他の一例及びその内部の状態の一例を示す平面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構造及び内部の状態(その1)を示す側面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構造及び内部の状態(その1)を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施の形態に係る基板処理装置における動作手順(その1)を示すフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施の形態に係る基板処理装置における動作手順(その2)を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構造及び内部の状態(その2)を示す側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構造及び内部の状態(その3)を示す側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構造及び内部の状態(その4)を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
基板処理装置の構造の一例と、この基板処理装置による基板処理において起き得る課題を
図1A及び
図1Bを用いて説明する。なお、
図1Aは、基板処理装置の構造の一例及びその内部の状態の一例を示す側面図であり、
図1Bは、基板処理装置の構造の一例及びその内部の状態の一例を示す平面図である。
【0014】
図1A及び
図1Bにおいて、この基板処理装置は、基板Wの表面をリンス液(純水)によってリンス処理するリンス室200から続く乾燥室100を有している。乾燥室100は、前室部100aとその前室部100aに続いて配置される後室部100bとを有している。前室部100aの後室部100bと対向する側に導入口11が設けられ、後室部100bの前室部100aに対向する側に排出口12が設けられている。リンス室200から続くローラコンベア20(搬送機構)が乾燥室100(前室部100a、後室部100b)内に配置されている。ローラコンベア20は、基板Wの搬送方向Dに直交する方向に延びる複数のシャフトがその搬送方向Dに所定間隔で配列され、それら複数のシャフトのそれぞれに複数のローラが装着された構造となっている(
図1B参照)。ローラコンベア20は、リンス室200にて処理された基板W(液体により処理された基板W)を導入口11から乾燥室100の前室部100aに導入し、その前室部100aに導入された基板Wを更に後室部100bの排出口12に向けて搬送してその排出口12から排出させる。
【0015】
前室部100aと後室部100bとの境界部分には、それぞれ基板Wの搬送方向Dを斜めに横切るように延びる上側エアナイフ21(第1気体噴出ノズル)及び下側エアナイフ22(第2気体噴出ノズル)が設けられている(
図1B参照)。上側エアナイフ21はローラコンベア20によって搬送される基板Wの上面に、下側エアナイフ22はローラコンベア20によって搬送される基板Wの下面にそれぞれ対向するように配置されている。上側エアナイフ21は、その長手方向に延びるスリットから基板Wの搬送方向D上流側斜め下方に向けてドライエア(気体)を高速にて噴出する。下側エアナイフ21は、その長手方向に延びるスリットから基板Wの搬送方向D上流側斜め上方に向けてドライエア(気体)を高速にて噴出する。
【0016】
また、乾燥室100の前室部100aと後室部100bとの境界部分には、それら前室部100aと後室部100bとを仕切る仕切り部材10が設けられている。この仕切り部材10は、上側エアナイフ21と乾燥室100の天面との間の空間を塞ぐ上側仕切り板10aと、下側エアナイフ21と乾燥室100の底面との間の空間を塞ぐ下側仕切り板10bとを有している。
【0017】
前室部100aには、ローラコンベア20によって導入口11から導入される基板Wの上面に対向するように追加シャワーユニット13(追加液供給部)が設けられている。導入口11から上側エアナイフ21の基板Wの搬送方向D上流側の所定位置までの範囲に追加シャワーユニット13を上方から覆うようにカバー体14が設けられている。カバー体14の、基板Wの搬送方向Dに直交する方向における長さは、少なくとも搬送される基板Wより長く設けられる。そのカバー体14には、基板Wの搬送方向Dを横切る方向に所定間隔をもって並ぶように2つの上排気口14a、14bが形成されている(
図1B参照)。そして、その上排気口14a、14bのそれぞれに続いて排気管15a、15bが設けられている。排気管15a、15bには吸気機構(図示略)が接続され、その吸気機構の吸気作用によって上排気口14a、14bを通して、前室部100aにおける主にローラコンベア20の上方のカバー体14で覆われた領域の排気が行われる。
【0018】
なお、前室部100aにおいて、ローラコンベア20を挟んで追加シャワーユニット13の逆側に遮閉板16が設けられている。また、前室部100aの底面には下排気口17が形成されている。この下排気口17も吸気機構(図示略)に接続され、吸気機構の吸気作用によって下排気口17を通して前室部100bにおける主にローラコンベア20の下方の領域の排気が行われる。
【0019】
後室部100bの天面には気体導入口18が形成されている。気体導入口18はULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタを含む給気機構に接続されており、その給気機構の給気作用によって気体導入口18から後室部100b内に清浄なエアがダウンフローDFとなって導入される。
【0020】
このような基板処理装置では、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22からドライエアが基板Wの搬送方向Dの上流側に向けて斜めに噴出する。前室部100aにおいて追加シャワーユニット13から純水がスプレイされるとともに上排気口14a、14b及び排気管15a、15bを通して排気が行われる。そして、後室部100bにおいて気体導入口18から清浄なエアがダウンフローDFとなって導入される。このような状況において、リンス室200からリンス処理を終えて表面にリンス液が付着した基板Wが、ローラコンベア20によって、所定の間隔をもって順次導入口11から前室部100a(乾燥室100)に導入され、後室部100bの排出口12に向けて搬送される。
【0021】
乾燥処理を受ける基板W上で液がまだらに存在する状態になると、乾燥処理を終えたあとにシミ(ウォーターマーク)が生じる原因となる。そこで、ローラコンベア20によって搬送される基板Wは、その上面に対して、追加シャワーユニット13から追加的にリンス室200で基板Wに供給されるリンス液と同じ液(純水)がスプレイされる。これによって基板Wは、上側エアナイフ21による乾燥処理を受ける直前まで純水の液膜が上面に形成された状態で、上側エアナイフ21と下側エアナイフ22との間を移動する。その際、基板Wの上面の水分(液分)が上側エアナイフ21から高速に噴出するドライエアによって除去されて当該上面が乾燥され、基板Wの下面の水分(液分)が下側エアナイフ22から高速に噴出するドライエアによって除去されて当該下面が乾燥される。なお、基板Wの上面には、上側エアナイフ21から高速に噴出されたエアの流れによって、エアの噴出を受ける位置から、基板Wの搬送方向D上流側に向かって所定距離(所定範囲)、水分が除去されて乾燥した状態となっている。
【0022】
気体導入口18からダウンフローDFとなって導入される清浄なエアによって正圧状態になる後室部100bでは、そのダウンフローDFのエアは、仕切り部材10(上側仕切り板10a、下側仕切り板10b)によって仕切られた前室部100aに進入し難く、主に、排出口12から外部に流れ出す。このように気体導入口18からのダウンフローDFのエアの影響を受けにくい前室部100aでは、上側エアナイフ21から高速に噴出するドライエアによって基板Wの表面に付着した処理液がミスト化し、基板Wに再付着することがある。これは、
図1Aに示す基板処理装置において、カバー体14を設けて、上排気口14a、14bから排気しているものの、ミスト化した水分の一部が上排気口14a、14bから排気されずに搬送中の基板Wの上面に戻る流れFxが生じ得るためである。このようなミスト状の水分の基板Wの搬送方向D下流側に戻る流れFxにより、水分が除去された基板Wの上面にそのミスト状の水分が再付着することがある。基板Wにミスト状の水分が再付着すると、後室部100b側に搬送された基板Wの上面にシミが生じる等処理不良が発生し、基板の品質が低下するおそれがある。
【0023】
なお、下側エアナイフ22から高速に噴出するドライエアは、搬送される基板Wの下面に沿って流れて、吸気機構によりエアの引き込みの行われる下排気口17から排気される。また、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22のそれぞれから高速に噴出して基板Wの上面、下面に沿って流れるドライエアの一部は導入口11からリンス室200側に流出する。
【0024】
上述したように、
図1A及び
図1Bに示す構造の基板処理装置では、上側エアナイフ21から高速に噴出するドライエアによって、基板表面から吹き上げられてミスト化した水分の一部が、搬送中の基板Wの上面に再付着することがあるが、
図2A及び
図2Bに示す構造の基板処理装置によれば、このミスト化した水分の再付着を抑えることが可能である。
図2Aは、基板処理装置の構造の他の一例及びその内部の状態の一例を示す側面図であり、
図2Bは、基板処理装置の構造の他の一例及びその内部の状態の一例を示す平面図である。なお、
図2A及び
図2Bにおいて、
図1A及び
図1Bに示す部分と同じ部分には同じ参照番号が付されている。しかし、この基板処理装置による基板処理においては、上述した
図1A及び
図1Bに示す構造の基板処理装置とは別の課題が生じるので、この点を説明する。
【0025】
この基板処理装置は、前室部100aと後室部100bとを仕切る仕切り部材10の上側仕切り板10aを短くして、上側仕切り板10aの下縁と上側エアナイフ21との間に、前室部100aと後室部100bとを連通させる連通部SPが形成されることを特徴としている。また、この基板処理装置は、追加シャワーユニット13を覆うカバー体14の下流側端部が、前述した基板処理装置(
図1A、
図1B参照)のものと比べて、上側エアナイフ21側(基板Wの搬送方向D下流側)に寄ったことも特徴としている。カバー体14の下流側端部の位置は、例えば、上側エアナイフ21から噴出する高速のドライエアによって基板Wの上面の水分が吹き飛ばされて、基板Wの上面において水分が除去できる範囲内の上方に設定することができる。より好ましくは、基板Wの上面において水分を吹き飛ばすことができる範囲内における搬送方向Dの上流端の上方にカバー体14の下流側端部の位置を設定することができる。なお、
図2A及び
図2Bに示す基板処理装置の構造は、上記特徴を除いて、前述した例のもの(
図1及び
図1B参照)と同じである。
【0026】
このような基板処理装置では、前述した例(
図1A、
図1B参照)と同様に、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22からドライエアが基板Wの搬送方向Dの上流側に向けて斜めに噴出する。そして、前室部100aでは、追加シャワーユニット13から純水がスプレイされるとともに上排気口14a、14b、及び排気管15a、15bを通して排気が行われ、後室部100bでは、気体導入口18から清浄なエアがダウンフローDFとなって導入される。このような状況において、リンス室200からリンス処理を終えて表面に水分が付着した基板Wが、ローラコンベア20によって、所定の間隔をもって順次導入口11から前室部100a(乾燥室100)に導入され、排出口12に向けて搬送される。そして、上側エアナイフ21と下側エアナイフ22との間を通過する基板Wの上面及び下面に付着している水分が上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22から高速に吐出するドライエアによって除去されて当該上面及び当該下面が乾燥される。
【0027】
この場合、前室部100aと後室部100bとの境界部分に連通部SPを形成することにより、その連通部SPを通して後室部100bから前室部100aに導入されるエアの流れが生じることになる。このため、前室部100aにおいて、上側エアナイフ21から基板Wの搬送方向D上流に向けて斜めに噴出するドライエアによって基板Wの上面から吹き上げられてミスト化した水分の一部が基板Wの搬送方向D下流側に戻ることが抑制され得る。また、カバー体14の下流側端部の位置を前述した例(
図1A、
図1B参照)に比べて、上側エアナイフ21に近づけたことにより、基板Wの搬送方向D下流側に戻ろうとするそのミスト化された水分をカバー体14内にとどめて上排気口14a、14b及び排気管15a、15bを通して排気し得る。これらのことが相まって、搬送される基板Wの上面にミスト化された水分が再付着することを防止することができ、前室部100aから後室部100bに搬送される基板Wの上面にシミが生じるなどの処理不良を防止し、処理不良による基板の品質低下を防止することができる。
【0028】
しかし、乾燥室100において、ダウンフローDFによる流れや、各排気口からの排気作用により、乾燥室100全体は乾燥室100の外の雰囲気圧力と比較して負圧となる。このため、排出口12から乾燥室100の後室部100bに外気が流入して、その外気が連通部SPを通して前室部100aに流入する気流Foが生じることがある。このような気流Foが生じる場合、外気のダストレベルの影響を受け、基板Wの品質が低下するおそれがある。
【0029】
そこで、本発明の実施の形態に係る基板処理装置は、乾燥室100内での上側エアナイフ21から処理液が付着した基板W表面に向けてドライエアを高速に噴出させることにともなって基板Wの表面の状態が損なわれること、具体的には、基板Wから吹き上げられてミスト化した水分の一部が搬送中の基板Wの上面に付着して基板Wにシミが生じるなどの処理不良が発生し、基板Wの品質が低下することを防止する。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0031】
本発明の実施の一形態に係る基板処理装置は、
図3A及び
図3Bに示すように構成される。
図3Aは、本発明の実施の一形態に係る基板処理装置の構造及びその内部の状態を示す側面図であり、
図3Bは、本発明の実施の一形態に係る基板処理装置の構造及びその内部の状態を示す平面図である。なお、
図3A及び
図3Bにおいて、
図1A及び
図1B並びに
図2A及び
図2Bに示す部分と同じ部分には同じ参照番号が付されている。
【0032】
図3A及び
図3Bに示す基板処理装置において、
図2A及び
図2Bに示すものと同様に、仕切り部材10における上側仕切り板10aの下縁と上側エアナイフ21との間に、前室部100aと後室部100bとを連通させる連通部SPが形成されている。カバー体14の下流側端部の位置が、例えば、上側エアナイフ21から噴出する高速のドライエアによって基板Wの上面の水分を吹き飛ばすことができる範囲内の上方に設定されている。
【0033】
【0034】
前室部100aと後室部100bとを仕切る仕切り部材10は、上側仕切り板10a及び下側仕切り板10bに加えて、連通部SPを開放する開放位置と連通部SPを閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能な可動仕切り板10cを含む。また、後室部100bには、排出口12を開放する開放位置と排出口12を閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能な出口開閉板19が設けられている。
【0035】
搬送機構としてのローラコンベア20は、リンス室200から続いて前室部100aに配置された前ローラコンベア部20a(前機構部)と、後室部100bに設けられた後ローラコンベア部20b(後機構部)とを有する構造となっている。後ローラコンベア部20bに含まれる各ローラの径は、前ローラコンベア部20aに含まれる各ローラの径より小さく、かつ、後ローラコンベア部20bのローラ及びシャフトの配列密度は、前ローラコンベア部20aにおけるそれらの配列密度よりも高い。そして、前ローラコンベア部20aと、後ローラコンベア部20bとは、後述するように、それぞれ独立して搬送速度の制御が可能である。
【0036】
上側エアナイフ21の所定部位には、その上側エアナイフ21の下方を通過する基板Wを検出する基板センサ31が設けられている。また、前室部100aにおいて、導入口11より基板Wの搬送方向D下流側の所定位置に、基板Wを検出して導入口11から基板Wが導入されたことを検出する基板センサ32が設けられている。さらに、後室部100bにおいて、排出口12より基板Wの搬送方向D上流側の所定位置に、基板Wを検出して基板Wが排出口12から排出されることを検出する基板センサ33が設けられている。基板センサ31、32、33のそれぞれは、基板Wが対向するか否かに応じて状態変化する検出信号を出力する。
【0037】
ローラコンベア20(前ローラコンベア部20a、後ローラコンベア部20b)、可動仕切り板10c及び出口開閉板19の駆動・制御系は、例えば、
図4に示すように構成される。
【0038】
図4において、この制御・駆動系は、基板センサ31、32、33それぞれからの検出信号を入力する制御装置30とともに、前ローラコンベア部20aの駆動装置35(例えば、モータ群)、後ローラコンベア部20bの駆動装置36(例えば、モータ群)、可動仕切り板10cの駆動装置37(例えば、ソレノイド、モータ等)、及び出口開閉板19の駆動装置38(例えば、ソレノイド、モータ等)を含む。制御装置30は、基板センサ31、32、33からの検出信号の状態に基づいて、即ち、乾燥室100(前室部100a、後室部100b)内を搬送される基板Wの位置に基づいて、各駆動装置35、36、37、38を制御する。それにより、基板Wの位置に基づいて、前ローラコンベア部20a、後ローラコンベア部20b、可動仕切り板10c、及び出口開閉板19それぞれの動きが制御される。
【0039】
本発明の実施の形態に係る基板処理装置(
図3A、
図3B、
図4参照)は、上述した点を除き、前室部100aと後室部100bとを連通させる連通部SPが形成される点、及びカバー体14の下流側端部の位置が、例えば、上側エアナイフ21から噴出する高速のドライエアによって基板Wの上面において水分を吹き飛ばすことができる範囲内の上方に設定されている点を含めて
図2A及び
図2Bに示す基板処理装置と同じ構成となる。
【0040】
制御装置30は、
図5A及び
図5Bに示す手順に従って前ローラコンベア部20a、後ローラコンベア部20b、可動仕切り板10c、及び出口開閉板19それぞれの動きを制御する。
【0041】
図5Aにおいて、制御装置30は、
図3A及び
図3Bに示すように、可動仕切り板10cを開放位置にセットするとともに、出口開閉板19を閉鎖位置にセットする(S11:初期セット)。この状態で、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22からドライエアの噴出が開始される。そして、制御装置30は、ローラコンベア20(前ローラコンベア部20a、後ローラコンベア部20b)を第1の速度(初期値)にて始動させる(S12)。その後、制御装置30は、基板センサ31からの検出信号の状態に基づいてローラコンベア20によって搬送される基板Wの後端縁が上側エアナイフ21の下方を通過したか否かを繰り返し判定する状態になる(S13)。
【0042】
このような状態で、リンス室200からリンス処理を終えて表面に水分が付着した基板Wが順次導入口11を通して乾燥室100(前室部100a)に導入され、その基板Wがローラコンベア20によって排出口12に向けて搬送される。そして、ローラコンベア20(前ローラコンベア部20a)によって搬送される基板Wが上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22から高速に吐出するドライエア中を通過していく(第1ステップ)。
【0043】
基板Wが上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22から高速に噴出するドライエア中を通過していく過程で、基板Wの上面の水分が上側エアナイフ21からのドライエアによって除去されてその上面が乾燥されるとともに、基板Wの下面の水分が下側エアナイフ22からのドライエアによって除去されてその下面が乾燥される。このとき、
図3Aに示すように、気体導入口18からダウンフローDFとなって後室部100bに導入される清浄なエアが、出口開閉板19によって閉鎖される排出口12から流出することなく、後室部100bから開放された連通部SPを通して前室部100aに流入する。後室部100bから連通部SPを通した前室部100aへのエアの流れによって、乾燥室100全体が負圧傾向になったとしても、出口開閉板19によって排出口12が閉鎖されているので、排出口12からダストレベルが保証されていない外気が後室部100bに流入する気流は生じない。
【0044】
そして、前室部100aでは、後室部100bから開放された連通部SPを通して流入するエアの流れによって、上側エアナイフ21から噴出するドライエアによって基板Wの上面から吹き上げられてミスト化した水分の一部が基板Wの搬送方向D下流側に戻ることが抑制される。また、カバー体14の下流側端部が上側エアナイフ21から噴出する高速のドライエアによって基板Wの上面の水分を吹き飛ばすことができる範囲内の上方に設定されているので、基板Wの搬送方向D下流側に戻ろうとするそのミスト化された水分の多くをカバー体14内にとどめて上排気口14a、14b及び排気管15a、15bを通して排気することができる。これらのことが相俟って、搬送される基板Wの上面にミスト化された水分が再付着することを確実に防止することができる。
【0045】
なお、下側エアナイフ22から高速に噴出するドライエアは、前述した例(
図1A及び
図1B並びに
図2A及び
図2B参照)と同様に、搬送される基板Wの下面に沿って流れて、吸気機構により気体の引き込みの行われる下排気口17から排気される。また、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22のそれぞれから高速に噴出して基板Wの上面、下面に沿って流れるドライエアの一部は導入口11からリンス室200側に流出する。
【0046】
図5Aに戻って、制御装置30は、基板センサ31からの検出信号の状態に基づいて、ローラコンベア20によって搬送される基板Wの後端縁が上側エアナイフ21(下側エアナイフ22)に対向する位置を通過したと判定すると(S13でYES)、
図6に示すように可動仕切り板10cを開放位置から閉鎖位置に移動させるとともに、出口開閉板19を閉鎖位置から開放位置に移動させる(S14:第2ステップ)。そして、前ローラコンベア部20aを第1の速度に維持するとともに、後ローラコンベア部20bの搬送速度を前記定速より大きい第2の速度に増大させる(S15)。これにより、
図6に示すように、次の基板Wが導入口11から第1の速度にて前室部100aに導入されて前ローラコンベア部20aによって搬送される一方、上側エアナイフ21(下側エアナイフ22)を通過して乾燥処理が終了した基板Wは、後ローラコンベア部20bにより前記第1の速度より大きい第2の速度にて後室部100b内を排出口12に向けて搬送される。
【0047】
このとき、
図6とともに
図7に示すように、気体導入口18からダウンフローDFとなって導入される清浄なエアによって正圧状態になる後室部100bでは、そのダウンフローDFのエアが、開放される排出口12から外部に流出する。この後室部100bから排出口12を通したエアの流れによって、乾燥処理の終了した基板Wが排出口12から排出される際に、ダストレベルが保証されない外気が開放される排出口12から後室部100b内に流入することが防止される。
【0048】
また、前室部100aでは、
図7に示すように、リンス室200で処理されて表面に水分の付着した次の基板Wが導入口11から導入され、その導入された基板Wが前ローラコンベア20aによって上側エアナイフ21(下側エアナイフ22)に向けて搬送される。その過程で、基板Wの上面が追加シャワーユニット13からスプレイされる純水によって、上側エアナイフ21による乾燥処理を受ける直前まで純水の液膜が上面に形成された状態が維持される。このように追加シャワーユニット13の下方を移動する基板Wの先端縁は、カバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)に達していないので、上側エアナイフ21から高速に噴出されるドライエアによってその基板Wの上面に残った水分がミスト状に吹き上げられることもなく、僅かにそのようなミスト状の水分が発生したとしても、カバー体14の上排気口14a、14b及び排気管15a、15bを通して排気することができる。そのため、カバー体14の下方を搬送される基板Wの表面にミスト状の水分が再付着することはない(
図7参照)。なお、基板Wがカバー体14の下方の位置にあるときは、その上面に液膜が形成されているため、雰囲気中のミスト状の水分が基板Wに付着したとしても処理不良になることはない。
【0049】
制御装置30は、上述したように、後ローラコンベア部20bの搬送速度を前記第1の速度より大きい第2の速度に増大させた(S15)後、
図5Bに示す手順に移行して、基板センサ32及び基板センサ33それぞれからの検出信号の状態に基づいて、リンス室200から導入される次の基板Wの前端縁がカバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)を通過する前に、乾燥処理が終了した基板Wが排出口12から排出されたか否かを判定する(S16)。なお、基板センサ32からの検出信号の状態に基づいて、基板Wの先端縁が基板センサ32の下方を通過してから所定時間経過したときに、基板Wの先端縁がカバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)を通過したと判定することができる。また、基板センサ33からの検出信号の状態に基づいて基板Wの後端縁が基板センサ33の下方を通過してから所定時間経過したときに、基板Wが排出口12から排出されたと判定することができる。
【0050】
そして、制御装置30は、
図8に示す状況のように、リンス室200から導入される次の基板Wの前端縁がカバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)を通過する前に、乾燥処理が終了した基板Wが排出口12から排出されたと判定すると(S16でYES:第3ステップ)、後ローラコンベア部20bの搬送速度を第1の速度(初期値)に戻す(S17)。そして、排出された基板Wが乾燥処理すべき最終の基板ではない場合(S18でNO)、制御装置30は、可動仕切り板10cを開放位置に切り換えるとともに、出口開閉板19を閉鎖位置に切り換える(S19:第4ステップ)。これにより、可動仕切り板10c及び出口開閉板19のそれぞれは初期状態(連通部SPが開放、排出口12が閉鎖)に戻る(
図3A及び
図3B参照)。
【0051】
以後、リンス室200から所定の間隔をもってリンス処理済みの基板Wが導入口11から導入される状況において、制御装置30は、前述した処理(S13~S19)を繰り返し実行する。そして、排出口12から排出される基板Wが乾燥処理すべき最終の基板であると(S18でYES)、制御装置30は、最終の基板が排出口12から排出された時点で、可動仕切り板10c、出口開閉板19、前ローラコンベア部20a及び後ローラコンベア部20bの動作制御を終了する。
【0052】
なお、後ローラコンベア部20bが不調等の理由により、乾燥処理が終了した基板Wが排出口12から排出される前に、リンス室200から導入される次の基板Wの前端縁がカバー体14の下流端部の下方位置(基準位置)を通過した場合(S16でNO)、
図1A及び
図1Bに示す状況と同じような状況(連通部SPが閉鎖状態、排出口12が開放状態)になる。このような状況では、前述したように、上側エアナイフ21及び下側エアナイフ22のそれぞれから噴出するドライエア中を移動する基板Wにミスト状の水分が再付着する可能性がある。このため、このような状況の場合(S16でNO)、制御装置30は、ミスト状の水分の再付着した可能性のある基板Wのトレース処理、警報処理等のエラー処理(S20)を行う。エラー処理がされた基板Wが排出されると(S21)、後ローラコンベア部20bの搬送速度を第1の速度(初期値)に戻す(S17)。また、このようなエラー処理が繰り返される場合、基板処理装置の動作を停止させることができる。
【0053】
上述した実施の形態に係る基板処理装置によれば、上側エアナイフ21(下側エアナイフ22)からドライエアが噴出される状態の乾燥室100内を基板Wが搬送される際に、可動仕切り板10c及び出口開閉板19によって前室部100aと後室部100bとの境界部分の連通部SPの開閉状態及び排出口12の開閉状態を制御することにより、前室部100a及び後室部100bにおけるエアの流れを制御することができる。これにより、乾燥室100内での処理(上側エアナイフ21から水分の付着する基板Wの表面に向けてドライエアを噴出させる処理)にともなって基板Wの表面の状態が損なわれること、具体的には、基板Wから吹き上げられてミスト化した水分の一部が搬送中の基板Wの上面に再付着して基板Wの上面にシミが生じるなど処理不良が発生すること、及び排出口12から流入する外気のダストレベルによって基板Wの表面の品質が影響されてしまうこと、を防止することができる。
【0054】
特に、前ローラコンベア部20a及び後ローラコンベア部20bのそれぞれの搬送速度を個別に制御できるようにして、基板Wが上側エアナイフ21の下方位置(基板センサ31)を通過するタイミングで、後ローラコンベア部20bの搬送速度を増大させるようにしているので、次の基板Wの先端縁がカバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)通過する前に、乾燥処理を終えた先行する基板Wを開放される排出口12から確実に排出させることができる。このため、排出口12を閉鎖(出口開閉板19を閉鎖状態)するとともに、連通部SPを開放(可動仕切り板10cを開放状態)させて、気体導入口18からダウンフローDFとして導入される清浄なエアを前室部100aに導入させた状態(
図3A参照)で、確実に、次の基板Wを上側エアナイフ21(下側エアナイフ22)から噴出されるドライエア中を移動させることができる。よって、水分の付着する次の基板Wについても、その上面から吹き上げられてミスト化した水分の一部が搬送中の当該基板Wの上面に付着してしまうことを確実に防止することができる。
【0055】
また、搬送速度を増大させる後ローラコンベア部20bの各ローラの径が、前ローラコンベア部20aの各ローラの径より小さく、かつ後ローラコンベア部20bのローラ及びシャフトの配列密度が、前ローラコンベア部20aのローラ及びシャフトの配列密度より高くなっている。これにより、基板Wを支持するローラの数(支持点及び支持面積)が多くなるので、後ローラコンベア部20bによってより高速に基板Wを搬送しても、その基板Wに対する振動を低減させることができ、基板Wの部分的なカケ等の破損を未然に防止することができる。
【0056】
なお、気体(ドライエア)を噴出するノズルは、エアナイフ(上側エアナイフ21、下側エアナイフ22)に限定されず、他の種類のノズル、例えば、微細孔を有する複数のノズルが配列されたノズルユニットであってもよい。
【0057】
また、搬送機構(ローラコンベア20)は、前室部100aに設けられる前機構部(前ローラコンベア部20a)と、後室部100bに設けられる後機構部(後ローラコンベア部20b)とを有する構成に限定されず、
図1A及び
図1B並びに
図2A及び
図2Bに示すように、単一の搬送機構(ローラコンベア20)であってもよい。この場合、搬送機構(ローラコンベア20)は、全体を通して定速に制御することができる。また、前ローラコンベア部20aの各ローラの径と、ローラ及びシャフトの配列密度は、後ローラコンベア20bの各ローラの径と、ローラ及びシャフトの配列密度と同じであってもよい。
【0058】
また、上側エアナイフ21によって乾燥処理を受ける直前まで液膜を形成しておく必要が無い場合、あるいは追加シャワーユニット13による純水のスプレイを行わなくても、リンス室200から基板Wの上面に液膜が形成されたまま上側エアナイフ21の下方まで基板Wが搬送される場合、追加シャワーユニット13は設けなくてもよい。
【0059】
さらに、前室部100aにおいて、カバー体14も設けなくてもよい。カバー体14を設けなくても、上側エアナイフ21から高速に噴出するドライエアによって、基板Wの上面において水分が除去されている範囲内の上方では、連通部SPを介して清浄なエアが流入するため、ミスト状の水分が再付着することを防止することができる。
【0060】
カバー体14を設けない場合にも、上側エアナイフ21から高速に噴出するドライエアによって、基板Wの上面において水分が吹き飛ばすことができる範囲内(より好ましくは、基板Wの上面において水分が吹き飛ばすことができる範囲内における搬送方向Dの上流端)を基準位置として、リンス室200から導入される次の基板Wの前端縁が基準位置を通過する前に、先行する乾燥処理が終了した基板Wが排出口12から排出されるようにすればよい。
【0061】
また、基板センサ32及び33からの検出信号の状態に基づいて、制御装置30は、基板Wが排出口12から排出されるより前に、次の基板Wがカバー体14の下流側端部の下方位置(基準位置)に達すると判定した場合、前ローラコンベア部21aの搬送速度を第1の速度より小さい所定速に減少させるようにしてもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態に係る基板処理装置においては、上側エアナイフ21の所定部位に基板センサ31を設け、基板センサ31の下方を通過する基板Wを検出するとしたが、基板センサ32による検出信号に基づいて、基板Wが基板センサ32の下方を通過してから所定時間経過したときに、上側エアナイフ21の下方を通過したと判定してもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態に係る基板処理装置においては、排出口12から外気が流入することを防ぐために、出口開閉板19を設ける構成としたが、これに限定されない。例えば、外気が流入したとしてもダストレベルに問題が無い場合は、出口開閉板19は設けなくてもよい。また、各排気口の位置や気体導入口18の位置及び気体導入口18から導入されるダウンフローDFの流量によっては、排出口12から外気が流入したとしても、連通部SPを介して前室部100aに外気が流入することはない、あるいは流入量がわずかである場合にも、出口開閉板19は設けなくてもよい。例えば、ダウンフローDFの流量が大きい場合には、排出口12からダウンフローDFが排出される流れの方が大きくなるため、排出口12から外気が流入にすることはなく、外気のダストレベルによって、基板の品質が低下するおそれは少ない。
【0064】
すなわち、乾燥室100内において、基板Wの搬送位置に応じて、少なくとも連通部SPを開閉させることで、乾燥室100内の気流を制御することができるので、基板の処理不良を防止し、基板処理の品質を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10 仕切り部材
10a 上側仕切り板
10b 下側仕切り板
10c 可動仕切り板
11 導入口
12 排出口
13 追加シャワーユニット
14a、14b 上排出口
15a、15b 排気管
16 遮閉板
17 下排気口
18 気体導入口
19 出口開閉板
20 ローラコンベア
20a 前ローラコンベア部
20b 後ローラコンベア部
21 上側エアナイフ
22 下側エアナイフ
30 制御装置
31、32、33 基板センサ
35、36、37、38 駆動装置
100 乾燥室
100a 前室部
100b 後室部
200 リンス室