(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004488
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】前2輪型車両及び車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/08 20060101AFI20230110BHJP
B62K 5/10 20130101ALI20230110BHJP
B62K 13/08 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/10
B62K13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106170
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】牧村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 将
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AC01
3D011AD01
(57)【要約】
【課題】コンパクトなスペースに容易に駐車できる車両を提供する。
【解決手段】前2輪型車両は、第1前輪と、第2前輪と、前輪距離変更機構と、を備える。前記第1前輪は、車幅方向で第1側に位置する。前記第2前輪は、前記第1側と車幅方向中心を挟んで反対側である第2側に位置する。前記前輪距離変更機構は、前記第1前輪と前記第2前輪の車幅方向距離を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向で第1側に位置する第1前輪と、
前記第1側と車幅方向中心を挟んで反対側である第2側に位置する第2前輪と、
前記第1前輪と前記第2前輪の車幅方向距離を変更する前輪距離変更機構と、
を備えることを特徴とする前2輪型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の前2輪型車両であって、
車幅方向中央から前記第1側及び前記第2側へ延びるアーム部材を備え、
前記前輪距離変更機構は、前記アーム部材の車幅方向寸法を変更することを特徴とする前2輪型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の前2輪型車両であって、
前記前輪距離変更機構は、前記アーム部材に配置されたヒンジ機構を含むことを特徴とする前2輪型車両。
【請求項4】
請求項2に記載の前2輪型車両であって、
前記前輪距離変更機構は、前記アーム部材を伸縮させる伸縮機構を含むことを特徴とする前2輪型車両。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の前2輪型車両であって、
前記第1側に位置する第1旋回軸を中心として前記第1前輪を旋回させ、前記第2側に位置する第2旋回軸を中心として前記第2前輪を旋回させるために操作されるハンドルと、
前記ハンドルの操作に連動して前記第1前輪及び前記第2前輪を旋回させる連動機構と、
を備え、
前記連動機構は、前記ハンドルの操作に対する前記第1前輪及び前記第2前輪の連動を解除可能であることを特徴とする前2輪型車両。
【請求項6】
車幅方向で第1側に位置する第1輪と、
前記第1側と車幅方向中心を挟んで反対側である第2側に位置する第2輪と、
前記第1輪と前記第2輪の車幅方向距離を変更する距離変更機構と、
を備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、前2輪型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種の車両を開示する。特許文献1の車両は、車体に左右内側を揺動可能に支持され左右外側に左右一対の前輪をそれぞれ転舵可能に支持する上下のアーム部材と、ステアリングリンク機構にそれぞれ左右のタイロッドを介して連結される左右のナックル部材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両においては、左右の車輪が車幅方向である程度の間隔をあけて配置されている。従って、小さいスペースに車両を駐車することが難しく、利便性を低下させていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、コンパクトなスペースに容易に駐車できる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の前2輪型車両が提供される。即ち、前2輪型車両は、第1前輪と、第2前輪と、前輪距離変更機構と、を備える。前記第1前輪は、車幅方向で第1側に位置する。前記第2前輪は、前記第1側と車幅方向中心を挟んで反対側である第2側に位置する。前記前輪距離変更機構は、前記第1前輪と前記第2前輪の車幅方向距離を変更する。
【0008】
これにより、例えば駐車時に、第1前輪と第2前輪の距離を縮めた状態とすることができる。従って、幅が細いコンパクトなスペースに駐車することができる。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の車両が提供される。即ち、車両は、第1輪と、第2輪と、距離変更機構と、を備える。前記第1輪は、車幅方向で第1側に位置する。前記第2輪は、前記第1側と車幅方向中心を挟んで反対側である第2側に位置する。前記距離変更機構は、前記第1輪と前記第2輪の車幅方向距離を変更する。
【0010】
これにより、例えば駐車時に、第1輪と第2輪の距離を縮めた状態とすることができる。従って、幅が細いコンパクトなスペースに駐車することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンパクトなスペースに容易に駐車できる車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る3輪型車両の全体的な構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る3輪型車両1の概要について説明する。
図1は、第1実施形態の3輪型車両1を示す斜視図である。
図2は、3輪型車両1の通常状態を示す斜視図である。
図3は、3輪型車両1の折曲げ状態を示す斜視図である。
【0014】
以下の説明では、3輪型車両1に乗車した運転者から見た方向で、3輪型車両1の左右方向を定義する。従って、3輪型車両1が
図1に示すように直立している状態では、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。
【0015】
本実施形態に係る前2輪型車両は、3輪型車両(鞍乗型車両)1である。3輪型車両1は、前側(車長方向における一方側)に2つの前輪2,3を備え、後側(車長方向における他方側)に1つの後輪4を備える。
【0016】
3輪型車両1は、車体10を備える。車体10は、左前輪(第1前輪、第1輪)2、右前輪(第2前輪、第2輪)3及び後輪4を支持している。
【0017】
車体10は、3輪型車両1の骨格となるフレーム11を備える。フレーム11は、ベース部分11aと、シート支持部分11bと、ハンドル支持部分11cと、を備える。
【0018】
ベース部分11aは、前輪2,3と後輪4との間を車長方向に延びて、前後輪を支持する。シート支持部分11bは、ベース部分11aから上方に延びて、シート15を支持する。ハンドル支持部分11cは、ベース部分11aから上方に延びて、ハンドル12を支持する。
【0019】
本実施形態では、3輪型車両1は、リーン型車両の一種である。リーン型車両とは、車体10の路面に対する姿勢を変更可能であり、操舵による旋回走行に伴って車体10が路面に対して傾斜状態となる車両を意味する。
【0020】
図1では、3輪型車両1は、操舵のためのハンドル12が中立位置に操作され、かつ、車体10が路面に対して直立となっている状態(言い換えれば、通常の直進走行の状態)となっている。以下では、特に説明がない限り、この状態を前提として説明する。
【0021】
左前輪2と右前輪3とは、車幅方向に間隔をあけて隣り合うように並べられている。本実施形態では、それぞれの前輪2,3は、従動輪として機能する。左前輪2及び右前輪3は、車体10の路面に対する姿勢が変更可能となるように、フレーム11の前部に支持されている。各前輪2,3は、操舵輪として機能し、ハンドル12の回動操作に応じて向きが変化する。
【0022】
ハンドル支持部分11cに、平行リンク機構14が取り付けられている。平行リンク機構14は、上アーム5(アーム部材)と、下アーム(アーム部材)6と、左支持部材7と、右支持部材8と、を備える。上アーム5、下アーム6、左支持部材7及び右支持部材8は、適宜の軸受によって平行4辺形状に結合されている。
【0023】
本実施形態の3輪型車両1において、ハンドル支持部分11c及び後述のハンドル軸17は、後傾状に配置されている。これに対応して、平行リンク機構14において構成される平行4辺形も後傾状に配置される。ただし、平行リンク機構14は鉛直状又は前傾状に配置されても良い。
【0024】
上アーム5及び下アーム6は、互いに平行に配置され、ハンドル支持部分11cに回転可能に支持される。上アーム5及び下アーム6の左端同士が左支持部材7によって互いに結合され、右端同士が右支持部材8によって互いに結合される。
【0025】
この平行リンク構造によって、正面視において、ベース部分11aの姿勢変化に応じて、各前輪2,3の姿勢が連動して変化する。
【0026】
左支持部材7は、左前輪2を回転可能に支持する。左支持部材7は、上アーム5及び下アーム6に対して、上下方向に延びる左旋回軸(第1旋回軸)7cを中心にして左右旋回可能である。
【0027】
右支持部材8は、右前輪3を回転可能に支持する。右支持部材8は、上アーム5及び下アーム6に対して、上下方向に延びる右旋回軸(第2旋回軸)8cを中心にして左右旋回可能である。
【0028】
ハンドル12には、ハンドル軸17が固定されている。ハンドル軸17は、ハンドル12から下方に延びて、筒状のハンドル支持部分11cに差し込まれる。ハンドル軸17はハンドル支持部分11cから下方へ突出しており、この部分に伝動アーム18が固定されている。伝動アーム18は、ハンドル12と一体的に左右に旋回する。
【0029】
伝動アーム18と左支持部材7及び右支持部材8を連結するために、操舵ロッド19が設けられている。これにより、ハンドル12の操作に連動して左前輪2及び右前輪3を旋回させることができる。伝動アーム18及び操舵ロッド19は、ハンドル12の操作に連動して左前輪2及び右前輪3を旋回させる連動機構26を構成している。
【0030】
操舵ロッド19は、伝動アーム18、左支持部材7及び右支持部材8に対して、ネジ等の適宜の方法によって着脱可能に構成されている。従って、運転者は必要に応じて操舵ロッド19を取り外すことで、伝動アーム18、左支持部材7、及び右支持部材8の機械的連結を解除することができる。
【0031】
後輪4は、車幅方向で車体10の中央位置に配置されている。後輪4は、フレーム11の後部に回転可能に支持されている。本実施形態では、後輪4は走行駆動力を路面に伝達する駆動輪として機能する。
【0032】
3輪型車両1は、シート15と、左右のペダル(操作子)16と、原動機として機能する電動モータ21と、バッテリー22と、図略のコントローラ(制御部)と、を備える。
【0033】
シート15は、フレーム11の車長方向中間部分のうち上側に設けられている。運転者は、シート15に跨るように座り、左右のペダル16に足を載せることができる。
【0034】
左右のペダル16は、シート15の下方に設けられている。シート15に跨った運転者が足でペダル16を踏む力を後輪4に伝達して、後輪4を人力で回転駆動することができる。従って、3輪型車両1は、運転者の人力で走行駆動する、いわゆる自転車としての機構を備える。
【0035】
電動モータ21は、本実施形態では、後輪4の車軸部分に設けられている。電動モータ21は、運転者の人力が与えられていない状態で、駆動輪に動力を伝達させることができる。また、電動モータ21は、運転者の人力が与えられた状態に加えて、駆動輪に動力を伝達させることもできる。即ち、本実施形態では、3輪型車両1は、運転者の人力を必要とせず走行可能な電動車として機能するとともに、運転者による走行駆動を電動支援する電動アシスト自転車としても機能する。
【0036】
バッテリー22は、フレーム11の前後途中部のうち下側に設けられている。バッテリー22は、電動モータ21及び各種の補器類等に電力を供給することができる。
【0037】
3輪型車両1は、運転者が手で操作可能なアクセルレバー(操作子)13を備える。アクセルレバー13は、例えば、ハンドル12の近傍に配置される。3輪型車両1が電動車モードで走行する場合、運転者がアクセルレバー13を操作することで、電動モータ21が制御される。一方、3輪型車両1が自転車モードで走行する場合、運転者がペダル16を踏む踏力に基づいて電動モータ21が制御される。
【0038】
上アーム5及び下アーム6のそれぞれには、左右1対のヒンジ機構9が設けられている。ヒンジ機構9は、上アーム5又は下アーム6の長手方向中途部に配置されている。ヒンジ機構9は、上アーム5又は下アーム6のうち長手方向中間部に位置する部分と、長手方向端部に位置する部分とを、ヒンジを介して連結している。
【0039】
3輪型車両1が走行するとき、平行リンク機構14は
図1及び
図2に示すように、上アーム5及び下アーム6を直線状に延ばした状態となっている。例えば駐車する場合、収納する場合等においては、上アーム5及び下アーム6の左右外側部分がヒンジ機構9を中心として概ね90°前方に回転することにより、
図3に示すように上アーム5及び下アーム6を折り曲げることができる。これにより、上アーム5及び下アーム6の車幅方向の寸法が小さくなった状態を実現することができる。
【0040】
図2に示す通常状態での、左前輪2と右前輪3の間の車幅方向距離L1と比較すると、
図3に示す折曲げ状態での、左前輪2と右前輪3の間の車幅方向距離L2は小さくなっている(L2<L1)。上記の車幅方向距離L1,L2は、トレッド幅と言い換えることもできる。
【0041】
このように、ヒンジ機構9は、左前輪2と右前輪3の間の車幅方向距離を変更する前輪距離変更機構25を構成している。前輪距離変更機構25は、距離変更機構と言い換えることもできる。平行リンク機構14の上アーム5及び下アーム6を
図3の折曲げ状態とすることで、幅の狭いスペースにも3輪型車両1を容易に駐車させることができる。従って、本実施形態の3輪型車両1は、通常(2輪)の自転車用の駐輪場に容易に駐車することができ、利便性に優れている。
【0042】
本実施形態において、左前輪2及び右前輪3は従動輪として機能する。左前輪2及び右前輪3は、後輪4とは前後方向で反対側に設けられている。従って、左前輪2と右前輪3の間の車幅方向距離を変更する場合に、動力伝達の切離し/接続のための構成が不要である。
【0043】
4つのヒンジ機構9のそれぞれには、
図2に示す通常状態及び
図3に示す折曲げ状態の何れかでロックするロック機構が設けられている。ロックの方法は任意であるが、本実施形態では、ロックピンを用いてロックを行う構成となっている。
【0044】
ヒンジ機構9のヒンジ軸(言い換えれば、上アーム5及び下アーム6が折れ曲がる軸)は、概ね上下方向に向けられている。このヒンジ軸は、平行リンク機構14における平行4辺形の面と平行となっている。
【0045】
前述の操舵ロッド19は、車体10に対して着脱可能に構成されている。
図2の通常状態から
図3の折曲げ状態に変形させる場合、運転者は、適宜の方法で操舵ロッド19を車体10から取り外す。これにより、左前輪2及び右前輪3の旋回がフリーとなるので、
図3のように、折曲げ状態としても、左前輪2及び右前輪3の車軸が車幅方向に沿うように向けることができる。この結果、折曲げ状態での車幅方向の小型化を容易に実現できる。取り外された操舵ロッド19を駐車時において一時的に保管可能な場所が、3輪型車両1に設けられることが好ましい。駐車が終わり、3輪型車両1を
図2の通常状態に戻す過程で、操舵ロッド19は伝動アーム18、左支持部材7及び右支持部材8に再び取り付けられる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1は、左前輪2と、右前輪3と、前輪距離変更機構25と、を備える。左前輪2は、車幅方向で左側に位置する。右前輪3は、左側と車幅方向中心を挟んで反対側である右側に位置する。前輪距離変更機構25は、左前輪2と右前輪3の車幅方向距離を変更する。
【0047】
これにより、例えば駐車時に、左前輪2と右前輪3の距離を縮めた状態とすることができる。従って、幅が細いコンパクトなスペースに駐車することができる。
【0048】
本実施形態の3輪型車両1は、車幅方向中央から左側及び右側へ延びる上アーム5及び下アーム6を備える。前輪距離変更機構25は、上アーム5及び下アーム6の車幅方向寸法を変更する。
【0049】
これにより、上アーム5及び下アーム6の寸法を縮小することで、左前輪2と右前輪3の距離を効果的に縮めることができる。
【0050】
本実施形態の3輪型車両1において、前輪距離変更機構25は、上アーム5及び下アーム6に配置されたヒンジ機構9を含む。
【0051】
これにより、簡単な構成で、上アーム5及び下アーム6の車幅方向寸法を変更することができる。
【0052】
本実施形態の3輪型車両1は、ハンドル12と、連動機構26と、を備える。ハンドル12は、左側に位置する左旋回軸7cを中心として左前輪2を旋回させ、右側に位置する右旋回軸8cを中心として右前輪3を旋回させるために操作される。連動機構26は、ハンドル12の操作に連動して左前輪2及び右前輪3を旋回させる。連動機構26は、
図3のように操舵ロッド19を取り外すことで、ハンドル12の操作に対する左前輪2及び右前輪3の連動を解除可能である。
【0053】
これにより、連動機構26による機械的拘束が取り除かれた状態で、左前輪2と右前輪3の車幅方向距離を変更することができる。従って、作業を円滑に行うことができる。
【0054】
次に、第2実施形態を説明する。
図4は、第2実施形態の3輪型車両1xの斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0055】
図4に示す3輪型車両1xにおいて、前輪距離変更機構25xは、ヒンジ機構9に代えて伸縮機構9xを備える。伸縮機構9xは、上アーム5又は下アーム6を伸縮させることができる。伸縮機構9xの構成は任意であるが、本実施形態では、大径のパイプに小径の棒がスライド移動可能に差し込まれたスライド機構により構成されている。
【0056】
伸縮機構9xを伸縮させることにより、上アーム5及び下アーム6を伸ばした通常状態と、縮めた退避状態と、を切り替えることができる。この結果、左前輪2と右前輪3の間の車幅方向距離を変更することができる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1xにおいて、前輪距離変更機構25xは、上アーム5及び下アーム6を伸縮させる伸縮機構9xを含む。
【0058】
これにより、簡単な構成で、上アーム5及び下アーム6の車幅方向寸法を変更することができる。また、第1実施形態のように上アーム5及び下アーム6を折り曲げる構成と比較して、周囲の部材との干渉が生じにくい。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0060】
第1実施形態において、ヒンジ機構9を介して上アーム5及び下アーム6が折れ曲がる向きは、前方ではなく後方であっても良い。上述のように上アーム5及び下アーム6が前方に折れ曲がる場合、前後輪の間に3輪型車両1の重心を位置させ易いので、3輪型車両1の安定性を高めることができる。上アーム5及び下アーム6が後方に折れ曲がる場合、3輪型車両1の前後方向の寸法が増大しにくくなるため、小さなスペースであっても容易に駐車することができる。
【0061】
第1実施形態において、ヒンジ機構9によって上アーム5及び下アーム6が折れ曲がる角度は、90°より大きくても小さくても良い。
【0062】
第1実施形態の折曲げ状態(
図3)における左前輪2及び右前輪3の車軸の向きは、車幅方向に平行とすることに代えて、任意の向きとすることもできる。
【0063】
ヒンジ機構9及び伸縮機構9xに代えて、上アーム5及び下アーム6に連結構造を設けても良い。連結構造において、上アーム5及び下アーム6の左右外側部分は、中央部分に対して着脱可能に構成される。この構成は、例えば、第2実施形態の伸縮機構9xにおいて筒から棒を全部引き抜くことが可能に変更することで、実現することができる。部材同士を着脱可能に連結するための構成は、例えばネジ、ピン等が考えられるが、これに限定されない。上アーム5及び下アーム6の左右外側の部分(左前輪2及び右前輪3を含む)を切り離し、車両の任意の場所に取り付けることで、左前輪2及び右前輪3の車幅方向距離が小さくなった状態を実現することができる。
【0064】
3輪型車両1,1xにおいて、平面視で左前輪2と右前輪3の間に位置するように、荷カゴが配置されても良い。荷カゴは左前輪2及び右前輪3よりも上方に配置すると、左前輪2と右前輪3の車幅方向距離を縮めた場合でも荷カゴとの干渉を防止できるため、好ましい。
【0065】
第1実施形態においては、ヒンジ機構9に対して、ロックピンによる手作業でのロックが行われる。これに代えて、例えばソレノイドで駆動されるロック機構を備え、ロック/ロック解除を電気的に切り替えても良い。この場合、ソレノイドを制御するコントローラは、車両が停止状態であることを何らかの手段で検知し、これをロック解除の条件とすることが好ましい。車両の停止状態は、例えば、前輪2,3又は後輪4の回転を検出するセンサの出力により判定することができる。また、ロック機構のロック解除は、例えば、サイドスタンド、パーキングブレーキ、又はリーンロックブレーキの使用に連動して行われても良い。第2実施形態の伸縮機構9xにおいても同様である。
【0066】
上述の実施形態における前輪距離変更機構25,25xは、ハンドル12とともにアーム部材がハンドル支持部分11cを中心として回転し、このアーム部材の左右端に前輪が支持される構成に適用することもできる。この場合、ヒンジ機構又は伸縮機構を当該アーム部材に設ければよい。ハンドル12とともに回転するアーム部材は、上下2つに代えて1つだけ配置することもできる。
【0067】
操舵ロッド19の長手方向途中部を、分離/接続が可能に構成しても良い。操舵ロッド19を3輪型車両1,1xから取り外すことに代えて、操舵ロッド19の途中部を切り離すことで、ハンドル12の操作に対する左前輪2及び右前輪3の連動を解除することもできる。
【0068】
リーン型に代えて、平行リンク機構14を省略した非リーン型の車両に、前輪距離変更機構25を適用することもできる。
【0069】
左右輪の距離を変更する機構は、後輪が2つある車両の後輪に適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 3輪型車両(前2輪型車両、車両)
2 左前輪(第1前輪、第1輪)
3 右前輪(第2前輪、第2輪)
5 上アーム(アーム部材)
6 下アーム(アーム部材)
9 ヒンジ機構
9x 伸縮機構
12 ハンドル
25,25x 前輪距離変更機構
26 連動機構
L1 車幅方向距離
L2 車幅方向距離