(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044895
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/151 20180101AFI20230327BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20230327BHJP
F21S 41/255 20180101ALI20230327BHJP
F21S 41/36 20180101ALI20230327BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20230327BHJP
F21S 41/47 20180101ALI20230327BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20230327BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230327BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20230327BHJP
F21W 102/165 20180101ALN20230327BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20230327BHJP
【FI】
F21S41/151
F21S41/147
F21S41/255
F21S41/36
F21S41/43
F21S41/47
F21S41/663
F21Y115:10
F21W102:155
F21W102:165
F21W102:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153004
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】小又 真紀子
(57)【要約】
【課題】複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム照射時の前方視認性を十分に確保可能とする。
【解決手段】複数の第1発光素子30が左右方向に並んだ状態でかつその発光面30aを投影レンズ50へ向けた状態で配置された構成とする。また、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間に、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために複数の第1発光素子30からの出射光の一部を遮光するシェード60が配置された構成とする。その上で、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間に、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード70が配置された構成とする。これによりロービーム用配光パターンの下部領域が明るくなりすぎてしまうのを未然に防止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と投影レンズとを備え、上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記複数の発光素子は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を上記投影レンズへ向けた状態で配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記複数の発光素子から上記投影レンズの上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェードが配置されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記第2シェードは、上記複数の発光素子のうち左右方向の両端部に位置する発光素子よりも左右方向の中央部に位置する発光素子からの直射光に対する遮光量が大きくなる位置に配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記第2シェードは、上記複数の発光素子からの直射光を下向きに反射させて上記投影レンズへ入射させるように形成された反射面を備えている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えており、
上記第2シェードは、上記リフレクタと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記リフレクタは、上記シェードと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、投影レンズを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具の構成として、複数の発光素子が左右方向に並んだ状態でかつ発光面を投影レンズへ向けた状態で配置されるとともに、複数の発光素子と投影レンズとの間にロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具のように、左右方向に並んだ状態で配置された複数の発光素子がその発光面を投影レンズへ向けた状態で配置された構成となっている場合には、複数の発光素子から出射して投影レンズに入射した直射光によって形成されるロービーム用配光パターンは、その下部領域がかなり明るいものとなる。
【0006】
このため、ロービーム用配光パターンが灯具前方路面に形成されたとき、近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまい、したがってロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができなくなってしまう。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、所定の第2シェードが追加配置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
複数の発光素子と投影レンズとを備え、上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記複数の発光素子は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を上記投影レンズへ向けた状態で配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記複数の発光素子から上記投影レンズの上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェードが配置されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「複数の発光素子」は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を上記投影レンズへ向けた状態で配置されていれば、その具体的な配置や配置個数は特に限定されるものではない。
【0011】
上記「シェード」は、複数の発光素子からの出射光の一部を遮光することによりロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成し得るように構成されたものであれば、その具体的な配置や形状等は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「第2シェード」は、複数の発光素子から投影レンズの上部領域へ向かう直射光の一部を遮光するように構成されたものであれば、その具体的な配置や形状等は特に限定されるものではない。
【0013】
上記「投影レンズの上部領域」とは、投影レンズの光軸よりも上方側に位置する領域を意味するものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る車両用灯具は、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成する構成となっており、その際、複数の発光素子は左右方向に並んだ状態でかつ発光面を投影レンズへ向けた状態で配置されており、また、複数の発光素子と投影レンズとの間には、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されているが、複数の発光素子と投影レンズとの間には、複数の発光素子から投影レンズの上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェードが配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、ロービーム用配光パターンの下部領域が必要以上に明るくなってしまうのは、投影レンズの上部領域に入射した複数の発光素子からの直射光によるものである。そこで、複数の発光素子から投影レンズの上部領域へ向かう直射光の一部を第2シェードによって遮光することにより、ロービーム用配光パターンの下部領域が明るくなりすぎてしまうのを未然に防止することができる。
【0016】
したがって、ロービーム用配光パターンが灯具前方路面に形成されたとき、近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまうのを未然に防止することができ、これによりロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができる。
【0017】
このように本願発明によれば、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができる。
【0018】
上記構成において、さらに、第2シェードの構成として、複数の発光素子のうち左右方向の両端部に位置する発光素子よりも左右方向の中央部に位置する発光素子からの直射光に対する遮光量が大きくなる位置に配置されたものとすれば、ロービーム用配光パターンが灯具前方路面に形成されたとき、近距離領域における正面部分の明るさを重点的に抑制することができる。
【0019】
したがって、灯具前方路面の近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまうのを未然に防止した上で、近距離領域の左右両側部分の明るさを一定量確保して側方視認性が損なわれてしまわないようにすることができる。
【0020】
上記構成において、さらに、第2シェードの構成として、複数の発光素子からの直射光を下向きに反射させて投影レンズへ入射させるように形成された反射面を備えたものとすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、第2シェードの反射面で下向きに反射した複数の発光素子からの直射光は、灯具前方路面の遠距離領域を照射する光となる。したがって、第2シェードが配置されたことによってロービーム用配光パターン全体の明るさが損なわれてしまわないようにした上で、ロービーム用配光パターンを遠方視認性に優れたものとすることができる。
【0022】
上記構成において、さらに、複数の発光素子からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えた構成とすれば、ロービーム用配光パターンの明るさを増大させることができ、かつ、その配光分布の自由度を高めることができる。その際、第2シェードがリフレクタと一体的に形成された構成とすれば、配光制御の精度を高めることができ、かつ、車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0023】
このようにした場合において、リフレクタがシェードと一体的に形成された構成とすれば、配光制御の精度をさらに高めることができ、かつ、車両用灯具の部品点数の一層の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す側断面図
【
図4】(a)は上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを示す図、(b)は比較例を示す(a)と同様の図
【
図5】(a)は上記ロービーム用配光パターンの照度分布を示す図、(b)は上記比較例を示す(a)と同様の図
【
図6】(a)は上記車両用灯具からの照射光によって形成されるハイビーム用配光パターンを示す図、(b)は上記ハイビーム用配光パターンをその一部が欠落した状態で示す図
【
図7】上記実施形態の第1変形例を示す、
図3と同様の図
【
図8】上記実施形態の第2変形例を示す、
図3と同様の図
【
図9】上記第2変形例の作用を示す、
図4と同様の図
【
図10】上記第2変形例の作用を示す、
図5と同様の図
【
図11】上記実施形態の第3変形例を示す、
図3と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図である。また、
図2は、
図1のII方向矢視図である。
【0027】
これらの図において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0028】
車両用灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12と透光カバー14とで形成される灯室内に、灯具ユニット20が収容された構成となっている。
【0029】
【0030】
図3にも示すように、灯具ユニット20は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであって、光源としての複数の第1および第2発光素子30、40と、第1および第2リフレクタ32、42と、投影レンズ50とを備えており、その照射光によってロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを選択的に形成し得るように構成されている。
【0031】
具体的には、複数の第1発光素子30はロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯するように構成されており、複数の第2発光素子40はハイビーム照射時に追加点灯するように構成されている。
【0032】
そして、灯具ユニット20は、複数の第1発光素子30からの直射光および複数の第1発光素子30から出射して第1リフレクタ32で反射した光を、投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するようになっており、また、複数の第2発光素子40からの直射光および複数の第2発光素子40から出射して第2リフレクタ42で反射した光を、投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射することによりハイビーム用の付加配光パターンを形成するようになっている。
【0033】
なお、
図3においては、第1発光素子30からの出射光の光路を実線で示しており、第2発光素子40からの出射光の光路を破線で示している。
【0034】
次に、灯具ユニット20の具体的な構成について説明する。
【0035】
図3に示すように、投影レンズ50は、前面が凸曲面状に形成された平凸非球面レンズで構成されており、灯具前後方向に延びる光軸Axを有している。この投影レンズ50は、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方(すなわち車両前方)の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。
【0036】
投影レンズ50は、その外周部においてレンズホルダ52に支持されており、このレンズホルダ52はヒートシンク54に支持されている。
【0037】
図2に示すように、複数の第1発光素子30は、光軸Axよりも上方側において左右方向に並んだ状態で配置されており、複数の第2発光素子40は、光軸Axよりも下方側において左右方向に並んだ状態で配置されている。
【0038】
複数の第1発光素子30は、いずれも矩形状(具体的には正方形)の発光面30aを有する11個の白色発光ダイオードで構成されており、互いに僅かな間隔をおいて配置されている。その際、光軸Axの真上に配置された第1発光素子30およびその右側(灯具正面視では左側)に配置された5個の第1発光素子30は、左側に配置された残り5個の第1発光素子30に対して下方側に変位した状態で配置されている。
【0039】
一方、複数の第2発光素子40は、いずれも矩形状(具体的には発光面30aと同一サイズの正方形)の発光面40aを有する13個の白色発光ダイオードで構成されており、互いに僅かな間隔をおいて横一列で配置されている。
【0040】
複数の第1発光素子30は一斉に点灯するように構成されているが、複数の第2発光素子40は一斉に点灯するとともに個別にも点灯し得るように構成されている。すなわち、複数の第2発光素子40の各々は、図示しない電子制御ユニットによって自車の走行状況に応じてその点消灯制御が行われるようになっている。その際、自車の走行状況は、例えば、自車の舵角データ、ナビゲーションデータ、前方走行路の画像データ等の検出値に基づいて把握することが可能である。
【0041】
複数の第1および第2発光素子30、40は共通の基板56に搭載されており、この基板56はヒートシンク54に支持されている。
【0042】
図3に示すように、基板56は、光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した状態で配置されている。その際、基板56の鉛直面に対する後傾角度は10~20°(例えば15°程度)の値に設定されている。これにより複数の第1および第2発光素子30、40は、その発光面30a、40aを灯具正面方向に対して10~20°(例えば15°程度)上向きの方向へ向けた状態(すなわち投影レンズ50へ向けた状態)で配置されている。
【0043】
第1および第2リフレクタ32、42は、基板56よりも灯具前方側に配置されている。これら第1および第2リフレクタ32、42は一体的に形成されており、その左右両端部においてヒートシンク54に支持されている。
【0044】
第1リフレクタ32は、複数の第1発光素子30を囲むように形成された反射面32aを有しており、この反射面32aにおいて複数の第1発光素子30からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されている。その際、この反射面32aは、横長の凹曲面状の反射面形状を有しており、その上端縁は灯具正面視において略横長楕円形の外形形状を有している。
【0045】
一方、第2リフレクタ42は、複数の第2発光素子40を囲むように形成された反射面42aを有しており、この反射面42aにおいて複数の第2発光素子40からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されている。その際、この反射面42aは、複数の第2発光素子40の各々に対して、その上下両側に1対の小反射面42sが配置された構成となっている。そして、これら上下1対の小反射面42sは、各第2発光素子40からの出射光を略平行光として投影レンズ50へ向けて反射させるようになっている。
【0046】
第1リフレクタ32の反射面32aには、複数の第1発光素子30をその外周縁近傍において囲む開口部32bが形成されている。この開口部32bは、複数の第1発光素子30の配列に沿って左右段違いで略横長矩形状に延びるように形成されている。
【0047】
一方、第2リフレクタ42の反射面42aには、複数の第2発光素子40をその外周縁近傍において囲む横長の開口部42bが形成されている。この開口部42bは、複数の第2発光素子40の配列に沿って横長矩形状に延びるように形成されている。
【0048】
複数の第1発光素子30と複数の第2発光素子40との間には、複数の第1発光素子30からの直射光および第1リフレクタ32で反射した複数の第1発光素子30からの出射光の一部を遮光してロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するためのシェード60が配置されている。
【0049】
シェード60は、第1および第2リフレクタ32、42と一体的に形成されている。すなわち、シェード60は、第1および第2リフレクタ32、42の接続部分が楔形の鉛直断面形状で灯具前方へ向けて延びることによって形成されており、その上面が第1リフレクタ32の反射面32aの一部を構成するとともにその下面が第2リフレクタ42の反射面42aの一部を構成している。
【0050】
シェード60の前端縁60aは、投影レンズ50の後側焦点Fの位置において光軸Axと直交する鉛直面に沿って、左右段違いで左右方向に延びるように形成されている。具体的には、この前端縁60aは、光軸Axよりも左側の部分(灯具正面視では右側の部分)が光軸Axに対してやや上方側の位置において水平方向に延びており、光軸Axよりも右側の部分が光軸Axに対して僅かに下方側の位置において水平方向に延びるとともにその左端部が斜め左上方向に延びた状態で光軸Axよりも左側の部分と接続されている。
【0051】
図3に示すように、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域(すなわち光軸Axよりも上方側に位置する領域)へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード70が配置されている。この第2シェード70は、板状部材で構成されており、基板56と略平行に配置された状態で、その上端部において第1リフレクタ32に支持されている。
【0052】
図2に示すように、第2シェード70は、灯具正面視において11個の第1発光素子30のうち左右方向の中央部に位置する5個の第1発光素子30と部分的に重複する位置関係で配置されている。
【0053】
具体的には、光軸Axの真上に位置する第1発光素子30およびその右側に隣接する第1発光素子30は、その上端部が第2シェード70に隠れており、さらにその右側に隣接する第1発光素子30は、その左上端部が第2シェード70に隠れている。また、光軸Axの真上に位置する第1発光素子30の左側に隣接する第1発光素子30は、その上半部が第2シェード70に隠れており、その左側に隣接する第1発光素子30は、その右上四半部が第2シェード70に隠れている。
【0054】
第2シェード70の下端面は、複数の第1発光素子30からの直射光が入射しない角度で灯具前方へ向けて斜め上方に延びるように形成されている。
【0055】
図1、2に示すように、第1リフレクタ32には、第2シェード70を配置するための切欠き部32cが形成されるとともに第2シェード70の上端部を支持するための支持部32dが形成されている。
【0056】
図4(a)は、車両用灯具10の灯具ユニット20から灯具前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0057】
図4(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0058】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0059】
上述したように、ロービーム用配光パターンPLは複数の第1発光素子30からの直射光およびその第1リフレクタ32からの反射光によって形成され、その際、左右段違いのカットオフラインCL1、CL2はシェード60の前端縁60aの反転投影像として形成されるようになっている。
【0060】
一方、
図4(b)は、本実施形態の比較例を示す図であって、仮に灯具ユニット20が第2シェード70を備えていないとした場合に形成されるロービーム用配光パターンPL´を示す図である。
【0061】
図4(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPL´もロービーム用配光パターンPLと同様の配光パターンとして形成されるが、その照度分布がロービーム用配光パターンPLの場合と部分的に異なっている。
【0062】
すなわち、ロービーム用配光パターンPL´は、その下部領域が必要以上に明るい過剰明部Pa´として形成されている。このため、ロービーム用配光パターンPL´が灯具前方路面に形成されたとき、その過剰明部Pa´が位置する近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域(すなわち過剰明部Pa´とカットオフラインCL1、CL2との間の領域)が見えにくくなってしまい、したがってロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができなくなってしまう。
【0063】
これに対し、
図4(a)に示すロービーム用配光パターンPLにおいては、その下部領域に過剰明部Pa´が形成されていない。これは、本実施形態に係る灯具ユニット20においては、複数の発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部が第2シェード70によって遮光され、これによりロービーム用配光パターンの下部領域を形成するための照射光が減少することによるものである。
【0064】
その際、第2シェード70は11個の第1発光素子30のうち左右方向の中央部に位置する5個の第1発光素子30からの直射光の一部を遮光する位置に配置されているので、灯具前方路面の近距離領域における正面部分の明るさが重点的に抑制され、近距離領域の左右両側部分の明るさは一定量確保されている。
【0065】
図5(a)は、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLのV-V線に沿った照度分布IDvを示す図であり、
図5(b)は上記比較例を示す同様の図である。
【0066】
図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLの照度分布IDvは、H-H線に対応する0°付近からその下方側にかけて照度Evが急激に上昇している。これはロービーム用配光パターンPLの照度EvがカットオフラインCL1、CL2の下方近傍領域において最も高くなることと対応している。そして、この照度分布IDvは、1°D付近で最高照度になった後、下向き角度が大きくなるにつれて急激に低下し、10°D付近で略ゼロになるまで滑らかに低下している。
【0067】
一方、
図5(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPL´の照度分布IDv´も、0°付近からその下方にかけて照度Evが急激に上昇し、1°D付近で最高照度になった後、下向き角度が大きくなるにつれて急激に低下し、10°D付近で略ゼロになるまで低下するが、低下途中の4~6°D付近に膨らみが生じている(図中の破線領域A参照)。
【0068】
図5(a)では、ロービーム用配光パターンPL´の照度分布IDv´を2点鎖線で示している。図中、破線領域Aで示すように、ロービーム用配光パターンPLはロービーム用配光パターンPL´に対して4~6°D付近の照度Evが低い滑らかな照度分布となっている。
【0069】
そして、このような照度分布IDvを有するロービーム用配光パターンPLが灯具前方路面に形成されることにより、近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまうのが未然に防止され、これによりロービーム照射時の前方視認性が十分に確保されるようになっている。
【0070】
図6(a)は、車両用灯具10の灯具ユニット20から灯具前方へ向けて照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンPHを透視的に示す図である。
【0071】
図6(a)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLに対して付加配光パターンPAが付加された合成配光パターンとして形成されている。
【0072】
付加配光パターンPAは、13個の第2発光素子40からの直射光および13個の第2発光素子40から出射して第2リフレクタ42で反射した光(具体的には第2リフレクタ42の反射面42aを構成する13対の小反射面42sで反射した光)によって形成される配光パターンである。
【0073】
すなわち、付加配光パターンPAは、13個の第2発光素子40の各々の点灯によって形成される13個の小配光パターンPAaの合成配光パターンとして形成されている。
【0074】
13個の小配光パターンPAaは、いずれも略矩形状の配光パターンとして形成され、かつ、互いに隣接する小配光パターンPAa同士が僅かに重複した状態で横一列で形成されている。その際、各小配光パターンPAaは、各第2発光素子40からの直射光およびリフレクタ42の各対の小反射面42sからの反射光の一部がシェード60によって遮光されることによって、やや縦長の略矩形状の配光パターンとして形成され、その下端縁はカットオフラインCL1、CL2に沿って延びるように形成されている。
【0075】
図6(b)は、ハイビーム用配光パターンPHの一部を欠落させた中間的配光パターンPMを透視的に示す図である。
【0076】
図6(b)においては、左から6番目の第2発光素子40の消灯によって、付加配光パターンPAを構成する13個の小配光パターンPAaのうち右から6番目の小配光パターンPAaが欠落した状態にある中間的配光パターンPMを示している。
【0077】
このような中間的配光パターンPMを形成することにより、灯具ユニット20からの照射光が対向車2に当たらないようにし、これにより対向車2のドライバーにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射するようになっている。
【0078】
そして、対向車2の位置が変化するのに伴って、消灯の対象となる第2発光素子40を順次切り換えることにより中間的配光パターンPMの形状を変化させ、これにより対向車2のドライバーにグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射する状態を維持するようになっている。
【0079】
なお、対向車2の存在は、図示しない車載カメラ等によって検出するようになっている。そして、前方走行路に前走車が存在したり、その路肩部分に歩行者が存在するような場合にも、これを検出して一部の小配光パターンPAaを欠落させることによりグレアを与えてしまわないようになっている。
【0080】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0081】
本実施形態に係る車両用灯具10の灯具ユニット20は、複数の第1発光素子30(発光素子)からの出射光を投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンPLを形成する構成となっており、その際、複数の第1発光素子30は左右方向に並んだ状態でかつ発光面30aを投影レンズ50へ向けた状態で配置されており、また、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2を形成するために複数の第1発光素子30からの出射光の一部を遮光するシェード60が配置されているが、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード70が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0082】
すなわち、ロービーム用配光パターンPLの下部領域が必要以上に明るくなってしまうのは、投影レンズ50の上部領域に入射した複数の第1発光素子30からの直射光によるものである。そこで、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を第2シェード70によって遮光することにより、ロービーム用配光パターンPLの下部領域が明るくなりすぎてしまうのを未然に防止することができる。
【0083】
そしてこれにより、ロービーム用配光パターンPLが灯具前方路面に形成されたとき、近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまうのを未然に防止することができ、これによりロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができる。
【0084】
このように本実施形態によれば、複数の第1発光素子30からの出射光を投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具10において、ロービーム照射時の前方視認性を十分に確保することができる。
【0085】
その際、本実施形態においては、第2シェード70が、複数の第1発光素子30のうち左右方向の両端部に位置する第1発光素子30よりも左右方向の中央部に位置する第1発光素子30からの直射光に対する遮光量が大きくなる位置に配置されているので、ロービーム用配光パターンPLが灯具前方路面に形成されたとき、近距離領域における正面部分の明るさを重点的に抑制することができる。
【0086】
したがって、灯具前方路面の近距離領域が明るくなりすぎて遠距離領域が見えにくくなってしまうのを未然に防止した上で、近距離領域の左右両側部分の明るさを一定量確保して側方視認性が損なわれてしまわないようにすることができる。
【0087】
また本実施形態においては、複数の第1発光素子30からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させる第1リフレクタ32(リフレクタ)を備えているので、ロービーム用配光パターンPLの明るさを増大させることができ、かつ、その配光分布の自由度を高めることができる。
【0088】
さらに本実施形態においては、第1リフレクタ32がシェード60と一体的に形成されているので、配光制御の精度を高めることができ、かつ、車両用灯具10の部品点数の削減を図ることができる。
【0089】
その際、本実施形態に係る車両用灯具10の灯具ユニット20は、ロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHとを選択的に形成し得る構成となっているが、ハイビーム照射時に追加点灯する複数の第2発光素子40からの出射光を反射させる第2リフレクタ42は第1リフレクタ32と一体的に形成されているので、車両用灯具10の部品点数の一層の削減を図ることができる。
【0090】
上記実施形態においては、第2シェード70が11個の第1発光素子30のうち左右方向の中央部に位置する5個の第1発光素子30からの直射光の一部を遮光する位置に配置されているものとして説明したが、遮光対象となる第1発光素子30の数やその遮光量を適宜変更することも可能であり、これにより灯具前方路面の近距離領域の明るさの調整をすることが可能である。
【0091】
上記実施形態においては、投影レンズ50が平凸非球面レンズで構成されているものとして説明したが、両凸レンズや凸メニスカスレンズ等で構成されたものとすることも可能であり、また、円形以外の外形形状を有する構成とすることも可能である。
【0092】
上記実施形態においては、灯具ユニット20として11個の第1発光素子30と13個の第2発光素子40とを備えているものとして説明したが、これ以外の個数の第1および第2発光素子30、40を備えた構成とすることも可能である。
【0093】
上記実施形態においては、複数の第1発光素子30が左右段違いで配置されているものとして説明したが、これらが横一列で配置された構成とすることも可能である。
【0094】
上記実施形態においては、複数の第1および第2発光素子30、40の各々の発光面30a、40aが正方形の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の外形形状(例えば縦長矩形状や横長矩形状の外形形状等)を有する構成とすることも可能である。
【0095】
上記実施形態においては、複数の第1および第2発光素子30、40からの出射光を有効利用するために第1および第2リフレクタ32、42が配置されているものとして説明したが、第1および第2リフレクタ32、42のいずれか一方または両方が配置されていない構成とすることも可能である。
【0096】
上記実施形態においては、車両用灯具10の灯具ユニット20が、ロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHとを選択的に形成し得る構成となっているものとして説明したが、ロービーム用配光パターンPLのみを形成する構成とすることも可能である。
【0097】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0098】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0099】
図7は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット120を示す、
図3と同様の図である。
【0100】
図7に示すように、灯具ユニット120の基本的な構成は上記実施形態の灯具ユニット20と同様であるが、第2シェード170の構成が上記実施形態の場合と異なっており、これに伴い第1リフレクタ132の構成も上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0101】
すなわち本変形例においても、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード170が配置されているが、この第2シェード170が第1リフレクタ132と一体的に形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0102】
第2シェード170は、上記実施形態の第2シェード70と略同様の配置および形状で形成されている。
【0103】
なお本変形例においても、第1リフレクタ132は、上記実施形態の第1リフレクタ32と同様の反射面132aおよび開口部132bを備えている。
【0104】
また本変形例においても、シェード60および第2リフレクタ42の構成については上記実施形態の場合と同様である。
【0105】
本変形例の構成を採用することにより、配光制御の精度を高めることができ、かつ、車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0106】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0107】
図8は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット220を示す、
図3と同様の図である。
【0108】
図8に示すように、灯具ユニット220の基本的な構成は上記実施形態の灯具ユニット20と同様であるが、第2シェード270の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0109】
すなわち本変形例においても、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード270が配置されているが、この第2シェード270は第1リフレクタ232と一体的に形成されておりかつ反射面270aを備えている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0110】
第2シェード270の反射面270aは、光軸Axの上方において水平面に沿って延びるように形成されており、これにより複数の第1発光素子30からの直射光を下向きに反射させて投影レンズ50へ入射させるようになっている。その際、この反射面270aで反射した複数の第1発光素子30からの直射光の一部は、第1リフレクタ232の反射面232aで反射した後に投影レンズ50へ入射するようになっている。
【0111】
なお本変形例においても、第1リフレクタ232は、上記実施形態の第1リフレクタ32と同様の反射面232aおよび開口部232bを備えている。
【0112】
また本変形例においても、シェード60および第2リフレクタ42の構成については上記実施形態の場合と同様である。
【0113】
図9(a)は、本変形例の灯具ユニット220から灯具前方へ向けて照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL-2を透視的に示す図である。
【0114】
図9(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2は、
図4(a)に示すロービーム用配光パターンPLに対して遠方照射用配光パターンPa-2が追加された配光パターンとして形成されている。
【0115】
一方、
図9(b)は、本変形例の比較例を示す図であって、仮に灯具ユニット220が第2シェード270を備えていないとした場合に形成されるロービーム用配光パターンPL´を示す図であって、
図4(b)と同様の図である。
【0116】
図9(a)に示すロービーム用配光パターンPL-2の遠方照射用配光パターンPa-2は、
図9(b)に示すロービーム用配光パターンPL´においてその下部領域に形成されていた過剰明部Pa´と略同一形状の配光パターンが、カットオフラインCL1、CL2近傍の上部領域に変位した状態で形成されたものとなっている。
【0117】
図9(a)に示す遠方照射用配光パターンPa-2は、複数の発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部が、第2シェード270によって遮光された上で、その反射面270aで下向きに反射して投影レンズ50を介して灯具前方へ照射されることによって形成された配光パターンである。
【0118】
図10(a)は、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL-2のV-V線に沿った照度分布IDv-2を示す図であり、
図5(b)はその比較例を示す同様の図である。
【0119】
図10(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2の照度分布IDv-2は、
図10(b)に示すロービーム用配光パターンPL´の照度分布IDv´に対して、4~6°D付近の膨らみがなく(図中の破線領域A参照)、かつ、1°D付近で最高照度になった後、下向き角度が大きくなるにつれて照度Evが急激に低下する際の低下度合が緩和されたものとなっている(図中の破線領域B参照)。
【0120】
そして、このような照度分布IDv-2を有するロービーム用配光パターンPL-2が灯具前方路面に形成されることにより、
図9(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2全体の明るさが損なわれることなく遠方視認性が一層向上することとなる。
【0121】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0122】
すなわち、上述したとおり、第2シェード270の反射面270aで下向きに反射した複数の第1発光素子30からの直射光は、灯具前方路面の遠距離領域を照射する光となるので、第2シェード270が配置されたことによってロービーム用配光パターンPL-2全体の明るさが損なわれてしまわないようにした上で、ロービーム用配光パターンPL-2を遠方視認性に優れたものとすることができる。
【0123】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0124】
図11は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット320を示す、
図3と同様の図である。
【0125】
図11に示すように、灯具ユニット320の基本的な構成は上記実施形態の灯具ユニット20と同様であるが、複数の第1発光素子30の配置が上記実施形態の場合と異なっており、これに伴い、第1リフレクタ332の構成および配置が上記実施形態の場合と異なっている。また本変形例においては、複数の第1発光素子30を支持する基板356が複数の第2発光素子40を支持する基板358と別体で構成されている点も上記実施形態の場合と異なっている。さらに本変形例においては、2つの基板356、358を支持するヒートシンク354の形状も上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0126】
具体的には、複数の第1発光素子30は、光軸Axよりも上方側においてその発光面30aを灯具正面方向に対して斜め下向きにした状態で配置されている。
【0127】
また、基板358は、上記実施形態の基板56と同様、光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した状態で配置されているが、基板356は、光軸Axと直交する鉛直面に対して前傾した状態で配置されている。
【0128】
さらに、第1リフレクタ332は、その反射面332aが灯具前方斜め下方を向いた状態で配置されており、これにより複数の第1発光素子30からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されている。
【0129】
本変形例においても、複数の第1発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光する第2シェード370が配置されている。この第2シェード370は、上記実施形態の第2シェード70と同様、板状部材で構成されており、基板356と略平行に配置された状態で、その上端部において第1リフレクタ332に支持されている。
【0130】
なお本変形例においても、第1リフレクタ332は上記実施形態の第1リフレクタ32と同様の開口部332bを備えている。
【0131】
また本変形例においても、シェード60および第2リフレクタ42の構成については上記実施形態の場合と同様である。
【0132】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0133】
すなわち、本変形例に係る灯具ユニット320において、複数の第1発光素子30からその発光面30aの面直方向へ出射する直射光は、投影レンズ50において上下方向の略中央領域へ向かう光となるので、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の割合は上記実施形態の場合よりも少ないものとなる。
【0134】
したがって、灯具ユニット320の構成として、仮に第2シェード370が配置されていないとした場合においても、上記実施形態の比較例のロービーム用配光パターンPL´(
図4(b)参照)程の明るい過剰明部Pa´が下部領域に形成されてしまうことはないが、ロービーム用配光パターンPL´の下部領域が明るくなってしまう現象は依然として残ってしまう。
【0135】
これに対し、本変形例に係る灯具ユニット320は第2シェード370が配置された構成となっているので、複数の第1発光素子30から投影レンズ50の上部領域へ向かう直射光の一部を遮光することができ、これによりロービーム用配光パターンの下部領域が明るくなってしまわないようにすることができる。
【0136】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0137】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0138】
2 対向車
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120、220、320 灯具ユニット
30 第1発光素子(発光素子)
30a、40a 発光面
32a、42a、132a、232a、270a、332a 反射面
32、132、232、332 第1リフレクタ(リフレクタ)
32b、42b、132b、232b、332b 開口部
32c 切欠き部
32d 支持部
40 第2発光素子
42 第2リフレクタ
42s 小反射面
50 投影レンズ
52 レンズホルダ
54、354 ヒートシンク
56、356、358 基板
60 シェード
60a 前端縁
70、170、270、370 第2シェード
Ax 光軸
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
Ev 照度
F 後側焦点
IDv、IDv-2 照度分布
PA 付加配光パターン
PAa 小配光パターン
Pa-2 遠方照射用配光パターン
PH ハイビーム用配光パターン
PL、PL-2 ロービーム用配光パターン
PM 中間的配光パターン