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特開2023-44904ハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖
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  • 特開-ハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044904
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/104 20160101AFI20230327BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230327BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20230327BHJP
【FI】
A23L7/104
A23L5/00 J
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153018
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】598024721
【氏名又は名称】ミツレフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】三宅 利巨
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
4B035
【Fターム(参考)】
4B018MD51
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF12
4B023LC09
4B023LG09
4B023LK17
4B023LP01
4B023LP07
4B023LP11
4B023LP20
4B035LC01
4B035LC06
4B035LG34
4B035LG51
4B035LP01
4B035LP02
4B035LP41
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】栄養価に優れるとともにおよび味覚に優れたハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖を提供する。
【解決手段】ヨクイニンを加熱してα化する第1工程と、前記第1工程の前記ヨクイニンを焙煎する第2工程と、前記第2工程の前記ヨクイニンを加水加熱する第3工程と、前記第3工程の前記ヨクイニンを酵素糖化する第4工程とを備え、栄養価に優れるとともにおよび味覚に優れたハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨクイニンを加水加熱してα化する第1工程と、
前記第1工程の前記ヨクイニンを焙煎する第2工程と、
前記第2工程の前記ヨクイニンを加水加熱する第3工程と、
前記第3工程の前記ヨクイニンを酵素糖化する第4工程とを備えたハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項2】
前記第4工程の酵素糖化は、
αアミラーゼまたはグルコアミラーゼまたは麹菌を用いる糖化にて行う請求項1に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程の焙煎は、
200℃から220℃の熱風にて乾燥させながら熱風焙煎にて行う請求項1または請求項2に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程の熱風焙煎は、
10分から25分行う請求項3に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程の熱風焙煎は、
15分から20分行う請求項4に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程の加水加熱は、
100℃から110℃の蒸し工程にて行う請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程のα化は、
100℃から110℃の蒸し工程にて行い、
前記第2工程の加熱時間は、前記第3工程の加熱時間よりも短い請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程にて糖化された前記ヨクイニンを濃縮する第5工程を備えた請求項1から請求項7のいずれか1項にて記載されたハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項9】
前記第5工程は、1.45g/cm3±0.03g/cm3となるように濃縮する請求項8に記載のハトムギエキス糖の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のハトムギエキス糖の製造方法にて製造される、ハトムギエキス糖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の飲食品のハトムギエキスは、ハトムギの殻を剥ぎ、粗粉砕したものに重量比で2~10倍の水を加え、プロテアーゼ活性をもつ酵素とαアミラーゼ活性を持つ酵素とを加えて処理したものを粉末化されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-48723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の飲食品は、粉末状のハトムギエキスであり、栄養価は優れているものの、食味が優れているとは言いがたいという問題点があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、栄養価に優れるとともに味覚に優れたハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示されるハトムギエキス糖の製造方法は、
ヨクイニンを加水加熱してα化する第1工程と、
前記第1工程の前記ヨクイニンを焙煎する第2工程と、
前記第2工程の前記ヨクイニンを加水加熱する第3工程と、
前記第3工程の前記ヨクイニンを酵素糖化する第4工程とを備えたものである。
また、本願に開示されるハトムギエキス糖は、前記ハトムギエキス糖の製造方法にて製造されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示されるハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖によれば、
栄養価に優れるとともに味覚に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1によるハトムギエキス糖の実施例および比較例の官能評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本願出願人は、栄養価の優れている、ハトムギエキスを、食味が優れている食品とするために、ハトムギエキス糖とすることを考えた。尚、ハトムギエキスとは、ハトムギを脱穀したヨクイニンといわれる部分を指すものである。古くから糖化の製造には、麹(コウジ菌)または麦芽などが利用されてきたマルトース糖化である。ここでの糖化とは、一般的な、デンプンを酵素で加水分解してブドウ糖を精製することを指す。
【0010】
麦芽を用いて糖化して製造した場合、アレルゲン対象原料である小麦の麦芽が使用されており、アレルギーが発症する可能性がある。よって、本願においては、麦芽を用いない糖化方法を用いることとした。
麦芽糖化にて行う場合であれば、その糖化能力および糖化性能から、製造された糖液は、味、香、色とも優れたものを容易に得ることができる。しかしながら、従来、酵素糖化にて行う場合、麦芽糖化と同様の方法を行ったとしても、麦芽糖化の糖液と遜色のない糖液を製造することは困難であったが、本願出願人は麦芽糖化の糖液と遜色のない当該糖化方法を見いだした。
【0011】
以下、麦芽糖化以外の方法にて行った本願のハトムギエキス糖の製造方法について説明する。まず、本願のハトムギエキス糖の製造方法とは、少なくとも以下の工程を含むものである。
第1工程:ヨクイニンを加水加熱してα化する。
第2工程:第1工程のヨクイニンを焙煎する。
第3工程:第2工程のヨクイニンを加水加熱する。
第4工程:第3工程のヨクイニンを糖化する。
【0012】
具体的には、まず、原料のヨクイニンを洗浄し乾燥させる。次に、ヨクイニンを加水加熱してα化する(第1工程)ために、例えば、ヨクイニンを100℃から110℃の温度で蒸し上げる。尚、当該第1工程は、ヨクイニンをα化できればよく、蒸す以外にも、炊くことによりヨクイニンをα化してもよい。また、後述の第2工程の焙煎を均一に行うため、および、焙煎を行い易くするために、ヨクイニンの粒状感が残った状態にてα化することが望まれる。
【0013】
次に、第1工程のヨクイニンを焙煎する(第2工程)ために、例えば、ヨクイニンを200℃から220℃の温度で乾燥させながら焙煎するために熱風焙煎にて10分から25分行う。この際、ヨクイニンは、ポン化(パフ化、または膨張化とも言う)する。尚、ポン化とは、一般的なお米にて製造されるポン菓子、または、トウモロコシにて製造されるポップコーンのような状態となることを指すものである。
【0014】
次に、第2工程のヨクイニンを加水加熱する(第3工程)ために、例えば、ヨクイニンを100℃から110℃の温度で蒸し上げる。尚、後述の第4工程の糖化を行い易くするために、当該第3工程は、ヨクイニンが粥状化する程度まで加水加熱することが望まれる。よって、先の第2工程の加熱時間は、第3工程の加熱時間よりも短い。
次に、第3工程のヨクイニンを酵素糖化する(第4工程)ために、ヨクイニンに麹菌またはαアミラーゼまたはグルコアミラーゼを混ぜて攪拌して、60℃から65℃の温度にて8時間から20時間かけて糖化する。よって、この時点で、ヨクイニンは糖化されており、ハトムギエキス糖が製造される。
【0015】
しかしながら、この状態では水分量が多いため、第4工程の糖化されたヨクイニン(ハトムギエキス糖)を加熱して濃縮する(第5工程)を行う。例えば、1.45g/cm3±0.03g/cm3となるように加熱して濃縮する。
【0016】
本願発明者は、α化したヨクイニンを焙煎することにより、ヨクイニンをポン化させることができる。さらに、焙煎することによる、香ばしさおよび適当な色を得ることができることを見いだした。
【0017】
更に具体的なハトムギエキス糖の製造方法について検証した。尚、以下の各実施例は1例であり、上記各工程に含まれる範囲であれば有効であると考える。
【0018】
実施例1
1:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で蒸し、ヨクイニンをα化する。
2:ヨクイニンを200℃から220℃で10分から15分の熱風焙煎を行う。
3:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で114分蒸す。
4:ヨクイニンに麹菌を混ぜて攪拌する。
5:60℃から65℃に保温し、20時間かけて糖化する。
6:加熱濃縮する。
【0019】
実施例2
1:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で蒸し、ヨクイニンをα化する。
2:ヨクイニンを200℃から220℃で15分から20分の熱風焙煎を行う。
3:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で114分蒸す。
4:ヨクイニンに麹菌を混ぜて攪拌する。
5:60℃から65℃に保温し、20時間かけて糖化する。
6:加熱濃縮する。
【0020】
実施例3
1:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で蒸し、ヨクイニンをα化する。
2:ヨクイニンを200℃から220℃で20分から25分の熱風焙煎を行う。
3:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で114分蒸す。
4:ヨクイニンに麹菌を混ぜて攪拌する。
5:60℃から65℃に保温し、20時間かけて糖化する。
6:加熱濃縮する。
【0021】
比較例1:
1:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で114分蒸す。
2:ヨクイニンに麹菌を混ぜて攪拌する。
3:60℃から65℃に保温し、20時間かけて糖化する。
4:加熱濃縮する。
【0022】
比較例2
1:ヨクイニンを200℃から220℃で焙煎する。
2:ヨクイニンを浸水させ100℃から110℃で114分蒸す。
3:ヨクイニンに麹菌を混ぜて攪拌する。
4:60℃から65℃に保温し、20時間かけて糖化する。
5:加熱濃縮する。
【0023】
上記各実施例および各比較例において、1:の工程の前には、原料としてのヨクイニンを洗浄して、乾燥させる工程がいずれも存在するが、当該記載では省略している。又、加熱濃縮の工程は、いずれも、1.45g/cm3±0.03g/cm3程度となるように調整している。また、実施例1、実施例2、実施例3の違いは、熱風焙煎の工程の時間が異なるものである。すなわち、実施例1、実施例2、実施例3の違いは、焙煎の度合いが異なるものである。また、比較例1は、一般的な糖化を行うための工程のみであり、麦芽糖化の場合には比較例1と同様の工程にて製造可能である。また、比較例2は、本願とは異なり、ヨクイニンをα化せずに、焙煎するものである。比較例2のようにα化せずにヨクイニンを焙煎した場合には、本願と異なり、ヨクイニンはポン化されない。
【0024】
上記各実施例および各比較例の官能評価の結果を図1に示す。官能評価は、味、甘み、におい、色、塗り易さの各項目にて評価を行った。尚、塗り易さは、パンに各実施例および各比較例を塗布した場合の評価を示す。また、当該官能評価は、男女各3名にて行った結果である。
実施例1は、甘みが強く、美味しい。やや茶色で、粘り気がある。香りが優れている。
実施例2は、甘みが強く、とても美味しい。茶色で、粘り気がある。香ばしく良い香りで優れている。
実施例3は、甘みが強く、こくが出た感じだが、苦みがある。ごげ茶色で、粘り気がある。香りが強い。
【0025】
これに対し、
比較例1は、甘みが弱く、味が感じられない。無色で、粘り気がない。香りは感じられない。
比較例2は、甘みが弱く、味が感じられない。茶色で、粘り気がない。香りは弱い。
【0026】
これらの官能評価により、一般的な糖化の方法である比較例1では、満足な食味を得ることができない。また、比較例2のように、ヨクイニンを焙煎した場合であっても、α化されていないヨクイニンを焙煎するだけでは、ヨクイニンがポン化できない。よって、本願と比較して、比較例2では、糖化の効率が低下していると考えられる。これに対し、実施例1、実施例2、実施例3は比較例1、比較例2と比較して明らかに、食味に優れているといえる。また、実施例1、実施例2、実施例3のなかでは、実施例2が食味に優れているといえる。
【0027】
上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法およびハトムギエキス糖によれば、
ヨクイニンを加水加熱してα化する第1工程と、
前記第1工程の前記ヨクイニンを焙煎する第2工程と、
前記第2工程の前記ヨクイニンを加水加熱する第3工程と、
前記第3工程の前記ヨクイニンを酵素糖化する第4工程とを備えたので、
アレルギーの心配がなく、栄養価に優れるとともに味覚に優れたものである。
【0028】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第4工程の酵素糖化は、
αアミラーゼまたはグルコアミラーゼまたは麹菌を用いる糖化にて行うので、
ヨクイニンの糖化を簡便にできる。
【0029】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第2工程の焙煎は、
200℃から220℃の熱風にて乾燥させながら熱風焙煎にて行うので、
ヨクイニンを簡便にポン化できるため、さらに味覚に優れたものを得ることができる。
【0030】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第2工程の熱風焙煎は、
10分から25分行うので、
ヨクイニンをさらに簡便にポン化できるため、さらに味覚に優れたものを得ることができる。
【0031】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第2工程の熱風焙煎は、
15分から20分行うので、
ヨクイニンをさらに簡便さらに確実にポン化できるため、さらに味覚に優れたものを得ることができる。
【0032】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、前記第3工程の加水加熱は、
100℃から110℃の蒸し工程にて行うので、
ヨクイニンの糖化を簡便に行うことができる。
【0033】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第2工程のα化は、
100℃から110℃の蒸し工程にて行い、
前記第2工程の加熱時間は、前記第3工程の加熱時間よりも短いので、
ヨクイニンのポン化を確実に行うことができる。
【0034】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第4工程にて糖化された前記ヨクイニンを濃縮する第5工程を備えたので、
使用が容易となる。
【0035】
また、上記のように製造された実施の形態1のハトムギエキス糖の製造方法によれば、
前記第5工程は、1.45g/cm3±0.03g/cm3となるように濃縮するので、使用が更に容易となる。
【0036】
本開示は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
図1