(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044913
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】携帯可能電子装置、ICカードおよびデータ開示設定用のプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/62 20130101AFI20230327BHJP
G06F 21/31 20130101ALI20230327BHJP
【FI】
G06F21/62 318
G06F21/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153030
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 洸一
(57)【要約】
【課題】 データの開示が簡単に行える携帯可能電子装置、ICカードおよびデータ開示設定用のプログラムを提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、携帯可能電子装置は、記憶部と通信インターフェースとプロセッサとを有する。記憶部は、データを記憶する。通信インターフェースは、端末と通信接続する。プロセッサは、通信インターフェースに接続した第1の端末で入力された認証情報によるユーザ認証に成功した後に第1の端末で開示が指定されたデータを他の端末にユーザ認証なしで開示する開示データとして設定し、通信インターフェースに接続した第1の端末とは異なる第2の端末に開示データを送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する記憶部と、
端末と通信接続する通信インターフェースと、
前記通信インターフェースに接続した第1の端末で入力された認証情報によるユーザ認証に成功した後に前記第1の端末で開示が指定されたデータを他の端末にユーザ認証なしで開示する開示データとして設定し、前記通信インターフェースに接続した前記第1の端末とは異なる第2の端末に前記開示データを送信するプロセッサと、
を有する携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記ユーザ認証が成功した後に前記記憶部に記憶するデータのうち開示可能となる開示可能データの一覧を前記第1の端末へ送信し、前記第1の端末で前記開示可能データの一覧から選択されたデータを前記開示データとして設定する、
請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記開示データを前記第2の端末に開示した場合、前記開示データとしての設定をクリアする、
請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、さらに、前記第1の端末で指定される開示回数を設定し、前記開示データを開示した回数が開示回数に達した場合に、前記開示データとしての設定をクリアする、
請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記ユーザ認証が成功した場合に前記第1の端末へ前記開示データに対して設定可能な開示回数の上限値を送信し、前記第1の端末で指定される前記上限値以下の開示回数を設定する、
請求項4に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
さらに、前記開示データを記憶する開示用メモリを有し、
前記プロセッサは、前記開示データを設定する場合には開示が指定されたデータを前記開示用メモリに格納し、前記開示データとしての設定をクリアする場合には前記開示用メモリから前記開示データを削除する、
前記請求項3乃至5の何れか1項に記載の携帯可能電子装置。
【請求項7】
データを記憶する記憶部と、端末と通信接続する通信インターフェースと、前記通信インターフェースに接続した第1の端末で入力されたからの認証情報によるユーザ認証に成功した後に前記第1の端末で開示が指定されたデータを他の端末にユーザ認証なしで開示する開示データとして設定し、前記通信インターフェースに接続した前記第1の端末とは異なる第2の端末に前記開示データを送信するプロセッサと、を備える制御モジュールと、
前記制御モジュールを格納する本体と、
有するICカード。
【請求項8】
携帯可能電子装置と接続するインターフェースを備える情報処理装置に、
前記インターフェースに接続する携帯可能電子装置に対して他の端末にユーザ認証なしで開示する開示データの設定を要求するコマンドを送信することと、
前記携帯可能電子装置から要求される認証情報を入力させることと、
前記認証情報に基づく前記携帯可能電子装置における認証が成功した場合、前記携帯可能電子装置に開示データとして設定させるデータを選択させることと、
前記選択されたデータを開示データとして設定することを前記携帯可能電子装置へ送信することと、
を実行させるデータ開示設定用のプログラム。
【請求項9】
前記情報処理装置に、
前記携帯可能電子装置から開示可能データの一覧を受信することと、
前記開示可能データの一覧から開示データとして設定させるデータを選択されることと、をさらに実行させる、
請求項8に記載のデータ開示設定用のプログラム。
【請求項10】
前記情報処理装置に、
前記開示データを開示させる開示回数を指定させることと、
前記開示回数を設定することを前記携帯可能電子装置へ送信することと、をさらに実行させる、
請求項8又は9の何れか1項に記載のデータ開示設定用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、携帯可能電子装置、ICカードおよびデータ開示設定用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、証明書としてICカードなどの携帯可能電子装置が用いられることが多くなってきている。このようなICカードでは、個人情報や証明する事項を示す情報などを内部メモリに記憶し、パスワードなどによるユーザ認証が成功した場合に内部メモリに記憶する情報を端末装置に出力するという運用が考えられる。また、ICカードは、1つの証明書だけでなく複数の証明書として利用されることも考えられている。
【0003】
上記のように証明書として利用されるICカードは、従来の証明書では券面に印刷(表示)されていた情報が券面に表示できないことが考えられる。例えば、運転免許証と健康保険証との機能を合わせ持つICカードは、運転免許証の情報と健康保険証の情報とを全て券面に記載することは困難であると考えられる。券面に記載されていない個人情報や証明事項などの内部メモリに記憶した情報を開示するため、ICカードは、端末(例えば、警察の持つ端末や病院の受付端末)に接続した状態でユーザが入力するパスワードなどによるユーザ認証が必要となる。
【0004】
ICカードのデータを参照する端末がICカードの持ち主の物でない場合、ユーザは、他者の端末にパスワードを入力する必要がある。他者の端末にパスワードを入力すると、パスワードが傍受される可能性がある。
また、ICカードのデータ参照を伴う業務では、例えば、ICカードの持ち主がパスワードの入力に手間取ってしまったり、パスワードの入力ミスによる不整合に伴うパスワードの再入力が発生したりすることが有り得る。ユーザによるパスワードの入力に時間が割かれると、ICカードのデータ参照を伴う業務は、作業に時間が掛かることとなり作業効率が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、データの開示が簡単に行える携帯可能電子装置、ICカードおよびデータ開示設定用のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、携帯可能電子装置は、記憶部と通信インターフェースとプロセッサとを有する。記憶部は、データを記憶する。通信インターフェースは、端末と通信接続する。プロセッサは、通信インターフェースに接続した第1の端末で入力された認証情報によるユーザ認証に成功した後に第1の端末で開示が指定されたデータを他の端末にユーザ認証なしで開示する開示データとして設定し、通信インターフェースに接続した第1の端末とは異なる第2の端末に開示データを送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカードを含むデータ開示システムの構成例を概略的に説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカードの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るデータ開示システムにおける端末の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るデータ開示システムによる第1の動作例における開示設定処理を説明するためのシーケンスである。
【
図5】
図5は、実施形態に係るデータ開示システムにおける第1の動作例としてICカードが開示データを端末に開示する開示処理を説明するためのシーケンスである。
【
図6】
図6は、実施形態に係るデータ開示システムによる第2の動作例における開示設定処理を説明するためのシーケンスである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るデータ開示システムにおける第2の動作例としてICカードが開示データを端末に開示する開示処理を説明するためのシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカード2を含むデータ開示システム1について説明する。
図1は、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカード2を含むデータ開示システム1の構成例を概略的に説明するための図である。
実施形態に係るデータ開示システム1は、ICカード2、端末(設定用の端末)3A、および、端末(開示用の端末)3Bなどにより構成される。
【0010】
ICカード2は、ユーザが所持する携帯可能電子装置の一例である。ICカード2は、非接触型のICカードであっても良いし、接触型のICカードであっても良い。また、ICカード2は、スマートフォンあるいはタブレット端末などの携帯型の電子装置であっても良い。
【0011】
ICカード2は、所持者に関する情報を記憶するメモリを備える。例えば、ICカード2は、運転免許証の情報、あるいは、健康保険証の情報などの所持者に関する情報をメモリに記憶する。ICカード2は、メモリに記憶している情報の記憶する情報の一部又は全部をパスワードなどによる認証が成功した場合に端末3に開示する。実施形態に係るICカード2は、端末3Aと接続した状態で実行する開示設定処理によって開示するように設定した情報を端末3Bに接続した場合にパスワードなどによる認証なしで開示する機能を備える。
【0012】
端末3Aおよび端末3Bは、ICカード2を接続する情報処理装置である。端末3A、3Bは、例えば、スマートフォン、タブレットPC、パソコンなどである。端末3A、3Bは、ICカード2と通信するカードリーダライタ(RW)を備える。また、端末3Aは、ICカード2と通信する外部機器としてのカードリーダライタを接続するインターフェースを備えるものであっても良い。
【0013】
端末3Aは、ICカード2に対して情報の開示を設定する設定用の端末である。端末3Aは、ユーザが操作する情報処理装置であることを想定する。端末3Aは、ICカード2を接続した状態でICカード2が記憶する情報から選択される情報を他の端末(開示用の端末)3Bに開示する設定を行う開始設定処理を実行する。
【0014】
端末3Bは、ICカード2において開示することが設定されている情報をパスワードなどの認証手続きなしで開示する開示用の端末である。端末3Bは、ICカード2に記憶されている情報を確認するユーザ以外の第3者が操作する情報処理装置であることを想定する。端末3Bは、ICカード2を接続した状態でICカード2に開示が設定されている情報(開示情報)をパスワード等の認証なしで取得し、所得した開示情報を表示部などに表示する。
【0015】
次に、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカード2における構成について説明する。
図2は、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカード2の構成例を示すブロック図である。
ICカード2は、外部装置から供給される電力により活性化する(動作可能な状態になる)携帯可能電子装置の一例である。ICカード2は、スマートカードとも称される。
図2に示すように、ICカード2は、本体Cを有する。本体Cは、プラスチックなどによりカード状に形成される。ICカード2の本体C内には、制御モジュールMが埋設される。制御モジュールMは、1つ又は複数のICチップに通信インターフェースが接続された状態で一体的に形成される。
【0016】
図2に示す構成例において、制御モジュールMは、プロセッサ21、ROM22、RAM23、NVM(データメモリ)24および通信インターフェース25を有する。
プロセッサ21は、種々の処理を実行する回路を含む。プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ21は、ICカード2全体の制御を司る。プロセッサ21は、ROM22あるいはNVM24に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理機能を実現する。ただし、後述するプロセッサ21が実行する各種の機能のうちの一部又は全部は、ハードウエア回路により実現されるようにしても良い。
【0017】
ROM22は、プログラムメモリとして機能する不揮発性のメモリである。ROM22は、予め制御用のプログラムおよび制御データなどが記憶される。ROM22は、製造段階で制御プログラムや制御データなどが記憶された状態でICカード2内に組み込まれるものである。ROM22に記憶される制御プログラムや制御データは、予め当該ICカード2の仕様に応じて組み込まれる。例えば、ROM22には、外部装置(カードリーダライタ)から受信するコマンドに応じた処理をプロセッサ21が実行するためのプログラムが記憶される。
【0018】
RAM23は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。また、RAM23は、プロセッサ21が処理中のデータなどを一時保管するバッファとしても機能する。例えば、RAM23は、通信インターフェース25を介して外部装置との間で送受信するデータを一時保管する通信バッファとして機能する。
【0019】
NVM24は、データを記憶する記憶部である。NVM24は、データの書き込みおよび書き換えが可能な不揮発性のメモリで構成する。NVM24は、例えば、当該ICカード2の運用用途に応じたプログラムや種々のデータが書き込まれるデータメモリとして機能する。
【0020】
NVM24には、プログラムファイルあるいはデータファイルなどが定義され、それらのファイルに制御プログラムや種々のデータが書き込まれる。例えば、当該ICカード2が複数の証明書として利用される場合、NVM24は、証明書ごとに定義されたデータフォルダに各証明書のデータを格納するようにしても良い。NVM24は、一部又は全部の領域が耐タンパー性を有し、セキュアにデータが格納できる。NVM4のセキュアな記憶領域には、認証情報およびセキュリティ設定に用いる鍵情報などが記憶される。また、本実施形態において、NVM24は、後述する開示データを記憶(格納)するための専用(開示用)の記憶領域24aを有する。
【0021】
通信インターフェース25は、通信制御部とインターフェース部とを有し、通信部を構成する。通信インターフェース25は、端末3が備えるカードリーダライタ(RW)36又は端末3とインターフェースを介して接続されるカードリーダライタと通信接続するためのインターフェースである。通信インターフェース25は、端末3のカードRW36のインターフェースに対応した通信方式による通信機能を実現する。また、通信インターフェース25は、複数の通信方式(例えば、接触通信と非接触通信)をサポートするものとして構成しても良い。
【0022】
ICカード2が非接触型のICカードとして実現される場合、通信インターフェース25は、端末3が備えるカードRW又は端末3とインターフェースを介して接続されるカードRWと非接触(無線)で通信する通信部を構成する。この場合、通信インターフェース25は、電波の送受信を行うアンテナを備え、アンテナから送信する電波を生成するための変調回路およびアンテナが受信した電波から信号を生成するための復調回路などにより構成される。
【0023】
また、当該ICカード2が接触型のICカードとして実現される場合、通信インターフェース25は、端末3が備えるカードRW又は端末3とインターフェースを介して接続されるカードRWと接触して通信する通信部を構成する。この場合、通信インターフェース25は、カードRWに設けられたコンタクト部と物理的かつ電気的に接触するコンタクト部を備え、コンタクト部を介した信号の送受信を制御する通信制御回路などにより構成される。
【0024】
次に、実施形態に係るデータ開示システム1における端末3(3A、3B)の構成について説明する。
図3は、実施形態に係るデータ開示システムにおける端末3(3A、3B)の構成例を示すブロック図である。
端末3は、オペレーティングシステム(OS)上で種々のアプリケーションプログラムが実行される電子装置である。端末3は、ICカード2を所持するカードホルダとしてのユーザが使用する電子装置である。例えば、端末3は、パソコン、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話などのカードRWを備える携帯端末装置又はカードRWを接続するインターフェースを備える携帯端末装置である。また、端末3は、カードRWを備えるパーソナルコンピュータ(PC)又はカードRWを接続するインターフェースを備えるPCであっても良い。
【0025】
図2に示す構成例において、端末3は、プロセッサ31、ROM32、RAM33、データメモリ34、ネットワーク(NW)通信部35、カードリーダライタ(RW)36、表示部37、および、入力部38などを有する。
【0026】
プロセッサ31は、プログラムを実行することにより各種の処理を実行する。プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ31は、システムバスを介して端末3内の各部と接続され、各部との間でデータを送受信する。
【0027】
プロセッサ31は、ROM32およびRAM33と協働して端末3における制御およびデータ処理などの動作を実行する。例えば、プロセッサ31は、ROM32あるいはデータメモリ34に記憶されているアプリケーションプログラムを実行することにより種々の処理機能を実現する。ただし、後述するプロセッサ31が実行する各種の機能のうちの一部又は全部は、ハードウエア回路により実現されるようにしても良い。
【0028】
ROM(Read Only Memory)32は、端末3の基本的な動作を実現するためのプログラムおよび制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。例えば、ROM32は、オペレーティングシステム(OS)などの基本動作を司るプログラムを記憶する。また、ROM32は、端末3が具備する機能を実現するためのアプリケーションプログラムなどを記憶しても良い。ROM32は、書き換え可能な不揮発性のメモリで構成しても良い。
【0029】
RAM(Random Access Memory)33は、データを一時的に記憶する揮発性のメモリである。RAM33は、プロセッサ31がプログラムを実行する場合にワーキングメモリとして機能する。
【0030】
データメモリ34は、各種のデータを記憶する記憶部である。データメモリ34は、データの書き換えが可能な不揮発性のメモリで構成される。例えば、データメモリ34は、フラッシュROM、SSD(Solid State Drive)などの半導体素子メモリ、あるいは、HDD(Hard Disc Drive)などの記憶装置が用いられる。
【0031】
データメモリ34は、プログラム、および、動作設定情報などを記憶する。端末3Aのデータメモリ34は、ICカード2に認証なしで開示する開示データを設定する設定用の端末として動作するためのプログラムを記憶する。端末3Aのデータメモリ34は、後述するようなICカード2に対する情報の開示設定処理を実行するためのプログラム(データ開示設定用のプログラム)を記憶する。
【0032】
また、端末3Bのデータメモリ34は、ICカード2に設定されている開示情報を開示する開示用の端末として動作するためのプログラムを記憶する。すなわち、端末3Bは、後述するICカード2において予め開示することが設定されている情報を開示する処理を実行するためのプログラムを記憶する。
【0033】
NW通信部35は、外部装置と通信するための通信インターフェースである。NW通信部35は、ネットワークを介して外部装置と通信する。NW通信部35は、無線で通信を行うものであって良いし、有線で通信を行うものであっても良い。
【0034】
カードリーダライタ36は、ICカード2と通信する機能を有する。カードリーダライタ36は、ICカード2に対して、電源供給、クロック供給、リセット制御、データの送受信を行う。カードリーダライタ36は、ICカード2を活性化(起動)させた後、プロセッサ31による制御に基づいて種々のコマンドを送信したり送信したコマンドに対する応答を受信したりする。なお、端末3は、外部機器としてのカードリーダライタに接続するためのインターフェースを備える構成としても良い。
【0035】
カードリーダライタ36は、ICカード2が備える通信方式に対応する構成を備える。例えば、ICカード2が非接触型のICカードとして実現される場合、カードリーダライタ36は、非接触型のICカードの通信方式に準拠する通信プロトコルで、非接触(無線)でICカード2と通信する。また、ICカード2が接触型のICカードとして実現される場合、カードリーダライタ36は、ICカード2のコンタクト部(インターフェース)と物理的かつ電気的に接触するコンタクト部を有し、コンタクト部を介してデータの送受信を行う。
【0036】
表示部37は、液晶パネル等の表示デバイスである。入力部38は、端末3に対して操作指示を入力する操作デバイスである。入力部38は、例えば、タッチパネルを含む。表示部37と入力部38とは、タッチパネル付き表示装置(以下、タッチスクリーンと称する)で構成しても良い。また、入力部38は、ボタンスイッチで構成する操作キー、静電容量の変化に基づいて操作者の手指が触れたことを検出するタッチセンサなどを含むものであっても良い。
【0037】
次に、本実施形態に係るデータ開示システム1においてICカード2が開示設定するデータを他者の端末で表示させる第1の動作例について説明する。
第1の動作例は、ユーザが指定するICカード2内のデータを1度だけパスワードなどによる認証処理なしで他者の端末である開示用の端末3Bに表示させる処理を実現するものである。
【0038】
第1の動作例は、端末3Aを用いてユーザが指定するデータ(開示データ)をICカード2が1度だけ認証なしで他者の端末に開示するように開示設定を行う開示設定処理と、端末3BがICカード2が開示設定された開示データを1度だけ他者の端末としての端末3Bに開示する開示処理とを含む。
【0039】
図4は、実施形態に係るデータ開示システム1による第1の動作例における開示設定処理を説明するためのシーケンスである。
ICカード2の所持者(ユーザ)は、ICカード2が記憶している特定のデータをパスワードなどによる認証なしで1度だけ他者の端末に開示させる場合、自身が操作する端末3Aを用いてICカード2に対して他者の端末に開示する開示データを設定する開示設定処理を実行する。
【0040】
まず、ユーザは、自身が所持するICカード2を端末3Aのカードリーダライタ36に提示する。端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に提示されたICカード2と通信接続する(ST11)。プロセッサ31は、ICカード2との接続が確立すると、入力部38に対するユーザの操作に応じて、ICカード2へコマンドを供給することでICカード2に対して種々の処理を実行させる。
【0041】
端末3AとICカード2との接続が確立した状態において、ユーザは、端末3Aの入力部38を用いてICカード2におけるデータを認証なしで1度だけ開示する開示設定を指示する。ユーザが入力部38によりICカード2のデータ開示設定を指示すると、プロセッサ31は、データメモリ34に記憶している開示設定処理用のプログラム(データ開示設定用のプログラム)を実行することにより開示設定処理を実行する。開示設定処理を実行する場合、プロセッサ31は、開示データの設定を要求する開示データ設定コマンドをICカード2へ送信する(ST12)。
【0042】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aのカードリーダライタ36に接続した後、端末3Aからのコマンドの入力待ちとなる。ここで、端末3Aのカードリーダライタ36に接続した後、ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aからお開示データ設定コマンドを受信する。
【0043】
開示データ設定コマンドを受信した場合、ICカード2のプロセッサ21は、ユーザがデータの開示を設定する権限を有する人物であるかを確認するため、認証情報としてのパスワードを端末3Aに要求する(ST13)。
【0044】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からのパスワードの入力要求を受信する。ICカード2からのパスワードの入力要求を受信した場合、端末3Aのプロセッサ31は、ICカード2から要求された認証情報としてのパスワードの入力を受け付ける(ST14)。
【0045】
例えば、プロセッサ31は、表示部37にICカード2に設定済みのパスワードの入力案内を表示し、入力部38におけるユーザからのパスワードの入力を受け付ける。ユーザが指示するパスワードが入力された場合、プロセッサ31は、入力されたパスワードをカードリーダライタ36によりICカード2へ送信する(ST15)。
【0046】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aからのパスワードを受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Aから取得したパスワードとNVM24のセキュアな記憶領域に保存しているパスワードとを照合する。
【0047】
プロセッサ21は、端末3AからおパスワードとNVM24に登録されているパスワードとが一致すると、NVM24に保存しているデータのうち端末に開示(表示)することが可能なデータ(開示可能データ)の一覧を生成する。
【0048】
例えば、プロセッサ21は、運転免許証あるいは健康保険証などの証明書の券面に記載するようなデータを開示可能データとする。既存の運転免許証は、住所、氏名、生年月日、顔画像、免許証番号、運転可能な車種情報などの情報が券面に記載される。このため、ICカード2が運転免許証として利用されるものであれば、ICカード2のプロセッサ21は、住所、氏名、生年月日、顔画像、免許証番号、運転可能な車種情報などの情報を開示可能データとする、また、既存の健康保険証は、住所、氏名、生年月日、保険証番号、保険の種類などの情報が券面に記載される。このため、ICカード2が健康保険証として利用されるものであれば、ICカード2のプロセッサ21は、住所、氏名、生年月日、保険証番号、保険の種類などの情報を開示可能データとする。
【0049】
一方、ICカード2が保持するパスワードなどの認証情報、あるいは、セキュリティ処理などのための鍵情報などは、非公開となるため、開示可能データには含まないという運用が可能である。
【0050】
また、ICカード2が複数の機能(例えば、運転免許証と健康保険証)を有する認証媒体であれば、プロセッサ21は、機能ごとに開示可能データの一覧を複数生成するようしても良いし、ユーザが指定する機能における開示可能データの一覧を生成するようにしても良い。
【0051】
ICカード2が開示設定を可能とする開示可能データの一覧を生成すると、プロセッサ21は、生成した開示可能データの一覧を通信インターフェース25により端末3Aへ送信する(ST16)。
【0052】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からの開示可能データの一覧を受信する。開示可能データの一覧を受信すると、端末3Aのプロセッサ31は、受信した開示可能データの一覧から開示設定するデータの選択を受け付ける(ST17)。例えば、プロセッサ31は、ICカード2から受信した開示可能データの一覧を表示部37に表示し、表示した開示可能データからユーザが入力部38を用いて指定するデータを開示設定する開示データとして選択する。
【0053】
また、プロセッサ31は、開示可能データをジャンル(例えば、年齢確認、顔画像による個人確認など)ごとに指定(選択)できるようにしても良い。例えば、プロセッサ31は、ユーザが入力部38を用いて年齢確認を指定した場合には生年月日と顔画像とを開示データとして選択するようにしても良い。また、プロセッサ31は、ユーザが入力部30を用いて資格(証明書)名を指定した場合には指定された資格に関する情報を開示データとして選択するようにしても良い。具体例として、プロセッサ31は、運転資格が指定された場合には氏名と顔画像と運転可能な車種と有効期限とを開示データとして選択したり、健康保険が指定された場合いは氏名と保険証番号(記号)と保険者番号とを開示データとして選択したりするようにして良い。
【0054】
端末3Aのプロセッサ31は、ユーザが指定する開示する設定を行うデータ(開示データ)を選択した場合、開示設定の対象とする開示データを示す情報をカードリーダライタ36によりICカード2へ送信する(ST18)。
【0055】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aから端末3Bでパスワードなどによる認証なしで開示可能とする開示データを示す情報を受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Aで選択された開示データを示す情報を受信すると、NVM24に記憶されている開示データをNVM24に設ける開示データを格納する開示用(専用)の記憶領域24aにコピーする(ST19)。開示用の記憶領域24aに開示データを保存すると、プロセッサ21は、開示データに対する開示設定が完了したことを示す通知を端末3Aへ送信する(ST20)。
【0056】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からの開示データの設定完了通知を受信する。開示データの設定の完了通知を受信すると、端末3Aのプロセッサ31は、ユーザが指定したデータを他の端末3Bで開示可能とする開示設定が完了したことを報知する(ST17)。例えば、プロセッサ31は、開示データとして設定されたデータを示す情報と共に、当該データが他の端末3Bで認証なしで開示される状態に設定されたことを表示部37に案内表示する。
【0057】
以上のような第1の動作例の開示設定処理によって、ICカード2は、端末3Aで選択されたデータが他の端末3Bで認証なしで開示可能となるように設定される。ユーザは、当該ICカード2を他の端末3Bに提示すれば、パスワードなどによる認証なしで開示データを端末3Bに開示することができる。
【0058】
次に、実施形態に係るデータ開示システム1における第1の動作例としてICカード2が設定済みの開示データを端末3Bに開示する開示処理について説明する。
図5は、実施形態に係るデータ開示システム1における第1の動作例としてICカード2が開示データを端末3Bに開示する開示処理を説明するためのシーケンスである。
ユーザは、上述した開示設定処理によって開示データの開示設定を実施したICカード2を他者の端末3Bに提示する。端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に提示されたICカード2と通信接続する(ST31)。
【0059】
端末3BとICカード2との接続が確立すると、端末3Aのプロセッサ31は、ICカード2の正当性を検証するための検証サーバとの通信やICカード2との相互認証などによって当該ICカード2が偽造や複製によって不正に作成されたものでないことを確認することにより、ICカード2の正当性を検証する(ST32)。
【0060】
端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に接続したICカード2の正当性を確認すると、ICカード2に対して開示データを要求する開示データ取得コマンドをICカード2へ送信する(ST33)。
なお、プロセッサ31は、開示データ取得コマンドの代わりに、認証なしで開示用の記憶領域24aを参照するように指定したデータ取得コマンドをICカード2に供給するようにしても良い。
【0061】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Bからの開示データ取得コマンドを受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Bからの開示データ取得コマンドを受信すると、開示用(専用)の記憶領域24aに格納している開示データをRAM23に書き込む(ST34)。例えば、プロセッサ21は、開示データ取得コマンドに対するレスポンスデータをRAM23に形成し、当該レスポンスデータに開示データをセットする。
【0062】
開示データをRAM23に書き込むと、プロセッサ21は、開示用(専用)の記憶領域24aにあるデータをクリアする(ST35)。開示用の記憶領域24aをクリアした後、プロセッサ21は、RAM23に格納した開示データを含むレスポンスデータを端末3Aへ送信する(ST36)。これにより、ICカード2は、開示用の記憶領域24aがクリアされるため、開示データとしての設定がクリアされる。
【0063】
端末3Bは、カードリーダライタ36によりICカード2からお開示データを含むデータを受信する。端末3Bのプロセッサ31は、ICカード2から開示データを受信すると、受信した開示データを表示部37に表示する(ST37)。これにより、ICカード2に設定された開示データは、パスワードなどによる認証なしで端末3Bによって他者が確認できるように開示することができる。
【0064】
なお、開示用の記憶領域24aに格納した開示データは、読み出されない状態で所定時間継続した場合にクリアするようにしても良い。これにより、ICカード2は、開示用の記憶領域24aに格納することで開示設定してから所定時間が経過した開示データが無効(開示不可)となるようにすることも可能である。
【0065】
以上のような第1の動作例によれば、ユーザは、自身の所持するICカードにパスワードなどの認証処理なしで一度だけ開示する開示データを予め設定しておき、他者の端末でユーザによる認証処理などを実施することなくICカードに設定された開示データを表示させることができる。
【0066】
次に、本実施形態に係るデータ開示システム1において、ICカード2に開示設定したデータを認証なしで他者の端末で表示させる第2の動作例について説明する。
第2の動作例は、ユーザが指定するICカード2内のデータをユーザが指定する回数だけパスワードなどによる認証なしで開示用の端末(他者の端末)3Bに表示させる処理を実現するものである。第2の動作例は、端末3Aを用いてユーザが指定するデータ(開示データ)をユーザが指定する回数だけICカード2が認証なしで開示する設定を行う開示設定処理と、端末3BがICカード2に開示設定された開示データを設定回数まで認証なしで開示する開示処理とを含む。
【0067】
図6は、実施形態に係るデータ開示システム1による第2の動作例における開示設定処理を説明するためのシーケンスである。
ICカード2の所持者(ユーザ)は、ICカード2に記録されている特定の情報を他者の端末3Bに指定する回数分開示する場合、自身が操作する端末3Aを用いてICカード2に対するデータの開示設定処理を実行する。ユーザは、自身のICカード2を端末3Aのカードリーダライタ36に提示する。
【0068】
端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に提示されたICカード2と通信接続する(ST51)。プロセッサ31は、ICカード2との接続が確立すると、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じてICカード2に種々の処理を実行させる。ここで、ユーザは、ICカード2との接続が確立した状態において、入力部38を用いてICカード2のデータを開示する設定を指示する。
【0069】
ユーザがICカード2のデータ開示設定を指示すると、プロセッサ31は、データメモリ34に記憶している開示設定処理用のプログラムを実行することにより開示設定処理を行う。開示設定処理を実行する場合、プロセッサ31は、開示データの設定を要求する開示データ設定コマンドをICカード2へ送信する(ST52)。
【0070】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aのカードリーダライタ36に接続した後、端末3Aからのコマンドの入力待ちとなる。ここでは、端末3Aのカードリーダライタ36に接続した後、ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aからお開示データ設定コマンドを受信する。
【0071】
開示データ設定コマンドを受信した場合、ICカード2のプロセッサ21は、ユーザがデータの開示を設定する権限を有する人物であるかを確認するため、認証情報としてのパスワードを端末3Aに要求する(ST53)。
【0072】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からのパスワードの入力要求を受信する。ICカード2からのパスワードの入力要求を受信した場合、端末3Aのプロセッサ31は、ICカード2から要求された認証情報としてのパスワードの入力を受け付ける(ST54)。ユーザがパスワードを入力した場合、プロセッサ31は、入力されたパスワードをカードリーダライタ36によりICカード2へ送信する(ST55)。
【0073】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aからのパスワードを受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Aから取得したパスワードとNVM24のセキュアな記憶領域に保存しているパスワードとを照合する。
【0074】
プロセッサ21は、端末3AからのパスワードとNVM24に登録されているパスワードとが一致(ユーザ認証が成功)すると、NVM24に保存しているデータのうち他者の端末に開示(表示)する設定とすることが可能なデータ(開示可能データ)の一覧を生成する。
【0075】
第1の動作例として、上述したように、プロセッサ21は、例えば、証明書の券面に記載するようなデータを開示可能データとし、認証情報やセキュリティ設定に係る情報などのデータは開示可能データとしない。
【0076】
また、第2の動作例では、プロセッサ21は、開示可能データに対して開示回数の上限値を特定する。開示回数の上限値は、各データに対して設定されているものであっても良いし、データの種類ごとに設定されているものであっても良い。
【0077】
ICカード2が開示設定を可能とする開示可能データの一覧を生成すると、プロセッサ21は、生成した開示可能データの一覧と開示回数の上限値とを通信インターフェース25により端末3Aへ送信する(ST56)。
【0078】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からの開示可能データの一覧と開示回数の上限値とを受信する。開示可能データの一覧と開示回数の上限値とを受信すると、端末3Aのプロセッサ31は、受信した開示可能データの一覧から開示設定するデータの選択と上限値以下での開示回数の指定とを受け付ける(ST57)。例えば、プロセッサ31は、ICカード2から受信した開示可能データの一覧と開示回数の上限値とを表示部37に表示し、表示した開示可能データからユーザが入力部38を用いて開示設定する開示データと上限値以下の開示回数とを指定する。
【0079】
ここで、プロセッサ31は、ユーザが開示データおよび開示回数をジャンル(例えば、年齢確認、顔画像による個人確認など)ごとに指定(選択)できるようにしても良い。例えば、プロセッサ31は、ユーザが入力部38を用いて年齢確認と開示回数とを指定した場合には開示データとする生年月日と顔画像とに開示回数を指定するようにしても良い。また、プロセッサ31は、ユーザが入力部30を用いて資格(証明書)名と開示回数とを指定した場合には指定された資格に関する情報を開示データとしてそれらの開示データに開示回数を指定するようにしても良い。
【0080】
端末3Aのプロセッサ31は、開示データと開示回数とが指定された場合、開示設定の対象とする開示データと開示回数とを示す情報をカードリーダライタ36によりICカード2へ送信する(ST58)。
【0081】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Aから端末3Bで開示データと開示回数とを示す情報を受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Aで選択された開示データと開示回数とを受信すると、NVM24に記憶されている開示データをNVM24に設ける開示データを格納する開示用(専用)の記憶領域24aにコピーする(ST59)。
【0082】
開示用の記憶領域24aに開示データを保存すると、プロセッサ21は、記憶領域24aに書き込んだ開示データに対する開示回数を設定する(ST60)。例えば、プロセッサ21は、各開示データに対応づけた開示回数を記憶領域24aに記憶する。開示データと開示回数との設定が完了すると、プロセッサ21は、開示設定が完了したことを示す通知を端末3Aへ送信する(ST61)。
【0083】
端末3Aは、カードリーダライタ36によりICカード2からの開示データの設定完了通知を受信する。開示データの設定完了通知を受信すると、端末3Aのプロセッサ31は、ICカード2に対して、ユーザが指定した開示データを指定の開示回数だけ他の端末3Bで開示する開示設定が完了したことを報知する(ST62)。例えば、プロセッサ31は、ユーザが指定した開示データをユーザが指定した開示回数だけパスワードによるユーザ認証なしで他の端末に開示する状態にICカード2を設定したことを表示部37に案内表示する。
【0084】
以上のような第2の動作例の開示設定処理によって、ICカード2は、端末3Aで選択された開示データが他の端末3Bで認証なしで指定回数だけ開示可能となるように設定される。これにより、ユーザは、当該ICカード2を他の端末3Bに提示すれば、指定した開示データをパスワードなどによる認証なしで端末3Bに指定回数だけ開示することができる。
【0085】
次に、本実施形態に係るデータ開示システム1による第2の動作例としてICカード2が設定済みの開示データを端末3Bに開示回数だけ開示する開示処理について説明する。
図7は、本実施形態に係るデータ開示システム1における第2の動作例としてICカード2が開示データを端末3Bに開示する開示処理を説明するためのシーケンスである。
ユーザは、上述した第2の動作例の開示設定処理によって開示データと開示回数とが設定されたICカード2を他者の端末3Bに提示する。端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に提示されたICカード2と通信接続する(ST71)。
【0086】
端末3BとICカード2との接続が確立すると、端末3Aのプロセッサ31は、ICカード2の正当性を検証するための検証サーバとの通信やICカード2との相互認証などによって当該ICカード2が偽造や複製によって不正に作成されたものでないことを確認することによりICカード2の正当性を検証する(ST72)。
【0087】
端末3Aのプロセッサ31は、カードリーダライタ36に接続したICカード2の正当性を確認すると、ICカード2に対して開示データを要求する開示データ取得コマンドをICカード2へ送信する(ST73)。
【0088】
ICカード2は、通信インターフェース25により端末3Bからの開示データ取得コマンドを受信する。ICカード2のプロセッサ21は、端末3Bからの開示データ取得コマンドを受信すると、開示データに対して設定されている開示回数をデクリメント(-1)する(ST74)。なお、開示回数が特定の値に設定されている場合、プロセッサ21は、当該開示データの開示回数を無制限として開示回数のデクリメントを省略するようにしても良い。
【0089】
開示回数をデクリメントすると、プロセッサ21は、開示回数をデクリメントした開示用の記憶領域24aに格納している開示データをRAM23に書き込む(ST75)。例えば、プロセッサ21は、RAM23に開示データ取得コマンドに対するレスポンスデータを形成し、当該レスポンスデータに開示データをセットする。
【0090】
開示データをRAM23に書き込むと、プロセッサ21は、RAM23に書き込んだ開示データの開示回数が0となったか否かを判断する(ST76)。開示データの開示回数が0でない場合(ST76、NO)、プロセッサ21は、RAM23に格納した開示データを含むレスポンスデータを端末3Aへ送信する(ST78)。これにより、ICカード2は、ユーザが指定した開示回数に達していない開示データが開示用の記憶領域24aに保持され、再度の開示が可能となる。
【0091】
開示データの開示回数が0になったと判断した場合(ST76、NO)、プロセッサ21は、開示用の記憶領域24aにある当該開示データを削除(クリア)する(ST77)。開示用の記憶領域24aにおける当該開示データを削除した後、プロセッサ21は、RAM23に格納した開示データを含むレスポンスデータを端末3Aへ送信する(ST78)。これにより、ICカード2は、開示した回数が設定した開示回数に達した開示データが開示用の記憶領域24aから削除される。
【0092】
端末3Bは、カードリーダライタ36によりICカード2からの開示データを含むデータを受信する。端末3Bのプロセッサ31は、ICカード2から開示データを受信すると、受信した開示データを表示部37に表示する(ST79)。これにより、ICカード2に設定された開示データは、実際に開示した回数が設定した開示回数に達するまで、パスワードなどによる認証なしで端末3Bによって表示することができる。
【0093】
以上のような第2の動作例によれば、ユーザは、自身の所持するICカードにパスワードなどの認証処理なしで指定した開示回数だけ開示する開示データを予め設定しておくことができる。ユーザは、開示データおよび開示回数を設定した開示設定済みのICカードを他者の端末に提示するだけで、ユーザによる認証処理などを実施することなくICカードに設定した開示データを他者の端末に表示させることができる。
【0094】
以上のように、実施形態に係る携帯可能電子装置としてのICカードは、ユーザが操作する端末に接続し、ユーザが操作する端末で入力されるパスワードなどの認証情報によるユーザ認証を実行し、ユーザ認証が成功したユーザが指定する開示データをパスワードなどによる認証処理なしで他者の端末に開示するように設定する。また、ユーザが操作する端末は、カードリーダライタを介して接続したICカードに開示データ設定コメントを供給し、パスワードなどの認証情報によるユーザ認証を済ませることで、ICカードにユーザが指定する開示データを設定させる。
【0095】
これにより、データ開示システムによって開示設定済みのICカードを接続した他者の端末では、パスワードなどによる認証処理なしで事前にユーザが設定したICカード内の開示データをすぐに表示できる。この結果として、ユーザが所持するICカードの特定のデータを参照する必要がある業務などを迅速に効率良く実施できる。また、他者の端末に対するパスワードなどの認証情報の入力が不要となるため、他者の端末による認証情報の傍受などの不正を防止することも可能となる。
【0096】
また、ICカードは、ユーザが操作する端末でユーザが指定する開示データとその開示データの開示回数とを設定するようにしても良い。この場合、ICカードは、事前にユーザが指定した開示回数に達するまで開示データを他者の端末でユーザ認証なしで開示するようにできる。
【0097】
上述した実施形態で説明した各機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…データ開示システム、2…ICカード(携帯可能電子装置)、3(3A、3B)…端末、21…プロセッサ、24…NVM、24a…記憶領域(開示用のメモリ)、25…通信インターフェース、31…プロセッサ、34…データメモリ、35…NW通信部、36…カードリーダライタ、37…表示部、38…入力部。