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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004492
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230110BHJP
   E04B 1/26 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
E04B1/58 504L
E04B1/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106181
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】510082053
【氏名又は名称】株式会社ストローグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 憲峰
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義邦
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC23
2E125AG13
2E125BB09
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF05
2E125CA05
2E125CA79
(57)【要約】
【課題】
建築物を構成する部材同士を一体化するために用い、様々な荷重を確実に受け止めることができるほか、美観にも優れている連結具を提供すること。
【解決手段】
一方材71と他方材81を一体化する連結具は、一方材71に取り付ける上方体21と、他方材81に取り付ける下方体41と、上方体21と下方体41を一体化する結合ボルト17と、からなり、上方体21には押圧面25などを設け、下方体41には受け面45などを設け、さらに下方体41には、上方体21に対する拘束手段として機能する外壁51を設ける。そして一対の外壁51の間で上方体21を挟み込んだ後、結合ボルト17で一方材71と他方材81を連結する。その結果、押圧面25と受け面45との接触や外壁51などにより、様々な荷重を受け止め可能であり、また外壁51が上方体21を隠すほか、下方体41と他方材81は段差なく並び、美観にも優れている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する一方材(71または72)と他方材(81または82)を一体化するため、双方の境界で使用する連結具であって、
上方体(21乃至23)と、該上方体(21乃至23)に面接触する下方体(41乃至43)と、面接触した該上方体(21乃至23)と該下方体(41乃至43)を一体化する結合ボルト(17)と、からなり、
前記上方体(21乃至23)は、前記一方材(71または72)に埋め込まれた埋設具(61)を介して該一方材(71または72)に取り付けられ、また前記下方体(41乃至43)は、前記他方材(81または82)に埋め込まれた埋設具(62または63)を介して該他方材(81または82)に取り付けられ、
前記上方体(21乃至23)と前記下方体(41乃至43)との接触面は、該上方体(21乃至23)に設けた下向きの押圧面(25、27)と、該下方体(41乃至43)に設けた上向きの受け面(45、47)と、を有しており、
前記押圧面(27)と前記受け面(47)との境界を貫くように前記結合ボルト(17)を差し込むことで、前記上方体(21乃至23)と前記下方体(41乃至43)は面接触した状態で一体化され、
前記上方体(21乃至23)と前記下方体(41乃至43)のいずれか一方または両方には、双方の間でせん断荷重を伝達するための拘束手段を設けてあることを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記上方体(21乃至23)と前記下方体(41乃至43)との接触面は階段状に折れ曲がっており、該接触面のうち該上方体(21乃至23)側は、下向きの前記押圧面(25、27)と、該押圧面(25、27)の外縁から直立する壁面(26)と、が並ぶ構成としてあり、対する該下方体(41乃至43)側は、上向きの前記受け面(45、47)と、該受け面(45、47)の外縁から直立する壁面(46)と、が並ぶ構成としてあることを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記拘束手段は、前記上方体(21または22)または前記下方体(41または42)のいずれか一方の側面に形成される左右一対の外壁(51)であり、左右一対の該外壁(51)の内側には、該上方体(21または22)または該下方体(41または42)のうち、残る一方が挟み込まれることを特徴とする請求項1または2記載の連結具。
【請求項4】
前記拘束手段は、前記上方体(23)の前記押圧面(25)または前記下方体(43)の前記受け面(45)から突出する貫入ピン(32、52)であり、該貫入ピン(32、52)は、対向面に形成されたピン穴(55、35)に嵌まり込むことを特徴とする請求項1または2記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する柱と梁など、建築物の骨格を構成する部材同士を一体化するために用いる連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は集成材の製造技術が向上したため、大断面の部材を無理なく入手できるようになり、木造建築の大規模化も容易に実現可能になった。このような大断面の部材を据え付ける場合、従来の木造建築で普及している技術をそのまま導入することは難しいため、新たに開発された金具類を用いることが多い。これらの金具類は、安全上重要な役割を担うため、複数本のボルトやピンなどを介して部材と強固に一体化されるほか、施工作業を円滑に実施できるよう、様々な配慮がなされている。
【0003】
大断面の部材の据え付けるための金具類の具体例として、後記の特許文献が挙げられ、そのうち特許文献1では、柱と梁などの接合作業を簡易に行うことのできる建築用接合金具が開示されている。この金具は、一方の木材に取り付ける第1接合金具と、他方の木材に取り付ける第2接合金具と、からなり、併せて、両金具を接合する係合手段を備えており、係合手段の具体例については、係止片と係止凹部が開示されている。そして係止片は、第1接合金具の側面に形成されたクサビ状の部位であり、上方に向けて突出しており、対する係止凹部は、第2接合金具の側面に形成されたクサビ状の部位であり、下方に向けて突出しており、係止片と係止凹部が噛み合うことで、双方が緩みなく係合する。さらに、上方からボルトを差し込むことで第1接合金具と第2接合金具が一体化し、柱と梁などを接合することができる。
【0004】
次の特許文献2では、柱と梁の結合金物などが開示されている。この結合金物は、結合する柱と梁の双方に結合金物素材を取り付け、双方の結合金物素材をボルトで一体化することで柱と梁を結合する。そして個々の結合金物素材は、斜辺を有する三枚の金属板を重ね合わせた構成であり、そのうち中央の金属板には、切り欠き部と凸部を形成してあり、一方の側の凸部が相手方の切り欠き部に嵌まり込むことで、結合金物素材同士が嵌合した状態になる。さらに、双方の結合金物素材を貫くようにボルトを差し込むことで、柱と梁が結合される。この発明では、結合金物素材の斜辺により、垂直方向に作用する荷重を斜方向に分散させることができる。
【0005】
また特許文献3では、木材同士の連結作業が容易であり、しかも木材に割れが生じにくい木造建築用連結構造が開示されている。この発明では、基本金物と付属金物で構成される連結金物を用いており、そのうち基本金物は、内部が開放された「コ」の字状であり、その中に棒状の付属金物が挿入される。そして連結される二本の木材のうち、一方には基本金物を取り付け、他方には付属金物を取り付け、基本金物の中に付属金物を挿入した後、双方を貫くロックピンを打ち込むことで、二本の木材が連結される。この連結構造は、基本金物と付属金物の位置関係に若干の狂いがある場合でも、連結作業中にこの狂いが修復されるといった特徴を有し、正確な連結状態を得られるほか、連結作業が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-102604号公報
【特許文献2】特開2002-294880号公報
【特許文献3】特開2006-22566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の各特許文献のように、連結される二部材のそれぞれに金具類を取り付けた後、施工現場でこの部材同士を接近させていき、双方の金具類を所定の状態で組み合わせ、この金具類を突き通すようにボルトやピンなどを差し込み、部材同士を一体化する技術は、以前から様々な方式が提案されている。そしてこのような金具類は、建築物の安全性を確保する上で重要な役割を担うため、様々な荷重を確実に受け止めることが望ましい。また木造建築では、その骨格が視認可能な状態になることがあり、金具類によって木材の自然な雰囲気を損ねないよう、美観にも優れていることが望ましい。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、様々な荷重を確実に受け止めることができるほか、美観にも優れている連結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、隣接する一方材と他方材を一体化するため、双方の境界で使用する連結具であって、上方体と、該上方体に面接触する下方体と、面接触した該上方体と該下方体を一体化する結合ボルトと、からなり、前記上方体は、前記一方材に埋め込まれた埋設具を介して該一方材に取り付けられ、また前記下方体は、前記他方材に埋め込まれた埋設具を介して該他方材に取り付けられ、前記上方体と前記下方体との接触面は、該上方体に設けた下向きの押圧面と、該下方体に設けた上向きの受け面と、を有しており、前記押圧面と前記受け面との境界を貫くように前記結合ボルトを差し込むことで、前記上方体と前記下方体は面接触した状態で一体化され、前記上方体と前記下方体のいずれか一方または両方には、双方の間でせん断荷重を伝達するための拘束手段を設けてあることを特徴とする。
【0010】
本発明による連結具は、柱と梁など、隣接する二部材を一体化するために用い、この二部材については、原則として木材(各種集成材を含む)とするが、条件が揃うならば、そのうちの一方をコンクリート構造物や鋼材などに置き換えることもできる。そして連結具は、上方体および下方体と称する二個で一対となる金属部品で構成され、この二個を二部材の境界で対向するように配置し、さらに上方体と下方体を結合ボルトで一体化する。なお連結される二部材については、上方体が取り付けられる方を一方材と称し、下方体が取り付けられる方を他方材と称するものとする。
【0011】
埋設具は、上方体や下方体を個々の部材に取り付けるため、部材の内部に埋め込む金属部品であり、上方体や下方体から伝達する荷重を部材内で広範囲に分散させる役割を担う。この埋設具は自在に選択可能だが、その具体例としては、ラグスクリューや異形棒鋼やシャフトやパイプなどが挙げられ、ラグスクリューの場合、その側周面から突出する凸条が部材の内部に食い込み、部材と緩みなく一体化される。また異形棒鋼は、部材に形成した穴に埋め込み、双方の隙間に接着剤を充填して部材と一体化させる。そのほか、シャフトやパイプについては、部材に形成した穴に埋め込み、これと交差するようにピン類を打ち込んで部材と一体化させる。なお部材が木材ではなくコンクリート構造物である場合、アンカーボルトや埋め込みナットなどが埋設具として機能する。同様に部材が木材ではなく鋼材である場合、それと一体化したボルトやナットなどが埋設具として機能する。
【0012】
部材に埋設具を埋め込んだ後、その埋め込み箇所を塞ぐように上方体や下方体を接触させ、次に、上方体や下方体の表面から埋設具に向けてボルトなどを差し込むと、上方体や下方体が部材と一体化する。したがって上方体や下方体は、埋設具を介して部材と一体化しており、部材内での荷重の集中を抑制することができる。なお埋設具は、荷重の分散などの観点から、一個の上方体や下方体に対し、複数個とすることが多い。そのほか、上方体や下方体を高精度で部材に取り付ける必要がある場合、埋設具とは別に、双方を貫くようにピン類を差し込むことがある。
【0013】
上方体と下方体は、双方が隙間なく面接触可能な形状にしてあり、双方を正規の状態で接触させると、全体で直方体形状になるが、この状態において、双方の接触面には水平面が一箇所以上存在するものとする。そしてこの水平面を基準として、上方に配置されるものを上方体と称し、下方に配置されるものを下方体と称するものとする。さらにこの水平面については、上方体の方を押圧面と称し、下方体の方を受け面と称するものとする。したがって押圧面は下向きの面であり、受け面は上向きの面である。なおここでの「水平」とは、標準的な使用状態を想定したものであり、実際の使用時は、上下反転させることもあれば、傾けることもある。
【0014】
結合ボルトは、上方体と下方体を正規の状態で接触させた後、双方を一体化する役割を担い、押圧面と受け面との境界を貫くように差し込む。この結合ボルトの差し込み方向は自在だが、通常は上方体の上面から下向きに差し込み、下方体の受け面に設けたメネジに螺合させる。なお結合ボルトは、一方材と他方材との間で垂直荷重の伝達を担うため、複数本を使用することもある。
【0015】
拘束手段は、上方体と下方体との間で生じる移動を規制し、せん断荷重の伝達を担うものであり、上方体と下方体のいずれか一方または両方に設けることになる。なおここでのせん断荷重とは、接触している押圧面と受け面に滑りを生じさせる方向に作用するほか、上方体と下方体を引き離すような引張荷重に対して直交する方向に作用するものを指している。このせん断荷重は、結合ボルトで受け止め可能だが、それだけでは強度や剛性が不足する恐れがあり、これを補うために拘束手段を用いる。そして拘束手段の具合例については、押圧面や受け面に対して直交方向に伸びる壁や棒などであり、上方体と下方体との間で物理的な接触を生じることでせん断荷重が伝達される。
【0016】
このように本発明では、連結具を一対の上方体と下方体で構成するほか、上方体の押圧面が下方体の受け面に載ることで垂直荷重が円滑に伝達されていく。また拘束手段を設けることで、上方体と下方体が正規の状態で接触しただけでせん断荷重が伝達可能になり、強度や剛性が向上する。さらに上方体や下方体の表面は、押圧面や受け面など、単純な平面が大半であり、その製造が容易である。そのほか上方体と下方体が接触して一体化した際、その底面や側面は単純な平面で構成される。そのため、上方体や下方体に隣接する部材が木材である場合でも、その自然な雰囲気を損ねることはない。
【0017】
請求項2記載の発明は、上方体と下方体との境界をより複雑化したものであり、上方体と下方体との接触面は階段状に折れ曲がっており、該接触面のうち該上方体側は、下向きの押圧面と、該押圧面の外縁から直立する壁面と、が並ぶ構成としてあり、対する該下方体側は、上向きの受け面と、該受け面の外縁から直立する壁面と、が並ぶ構成としてあることを特徴とする。
【0018】
この発明では、上方体と下方体との接触面が階段状に折れ曲がっており、前記の押圧面および受け面に加え、押圧面や受け面の外縁から直立する壁面も接触面になる。そのためこの壁面同士の接触により、水平方向の圧縮荷重も伝達されることになる。なおこの壁面は、上方体と下方体のいずれも、部材との接触面の反対側に位置する。したがって部材に上方体や下方体を取り付ける際は、この壁面から埋設具に向けてボルトを差し込むことになるが、このボルトの頭部が壁面から突出しないよう、通常はザグリを設けておく。このように、上方体と下方体との接触面を階段状に配置することで、上方体と下方体との間で伝達する垂直荷重をより広範囲に分散させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、拘束手段の具体例を開示するものであり、拘束手段は、上方体または下方体のいずれか一方の側面に形成される左右一対の外壁であり、左右一対の該外壁の内側には、該上方体または該下方体のうち、残る一方が挟み込まれることを特徴とする。この外壁は、上方体または下方体のいずれか一方の両側面に形成される。そのため押圧面や受け面は、一対の外壁の間に配置されることになり、しかもこの一対の外壁の間に相手方が挟み込まれることで、上方体と下方体との間でせん断荷重の伝達が可能になる。さらに一対の外壁は、その間に挟み込まれた相手方の全体を覆い隠す大きさを有するものとする。これにより、上方体と下方体との境界が覆い隠され、美観が一段と向上する。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明と同様、拘束手段の具体例と開示するものであり、拘束手段は、上方体の押圧面または下方体の受け面から突出する貫入ピンであり、該貫入ピンは、対向面に形成されたピン穴に嵌まり込むことを特徴とする。ここでの貫入ピンは、押圧面や受け面に対して直交する方向に伸びるため、必然的に上方体と下方体との間では、せん断荷重の伝達が可能になる。加えて上方体と下方体との間に作用する引張荷重も伝達できるため、強度や剛性が一段と向上する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明のように、二部材を一体化する連結具を一対の上方体と下方体で構成するほか、上方体の押圧面が下方体の受け面に載ることで垂直荷重を円滑に伝達することができる。また拘束手段を設けることで、上方体と下方体が正規の状態で接触しただけでせん断荷重が伝達可能になり、強度や剛性が向上する。そのほか上方体や下方体の表面は、押圧面や受け面など、単純な平面が大半であり、クサビ形や波形などの複雑な形状は用いていない。そのため製造に際しては、平面の削り出しが中心となり、溶接や曲げなどの加工は必要最小限に留まり、製造に要する費用を抑制することができる。
【0022】
上方体と下方体を一体化する結合ボルトは、その頭部だけが外部に露出する。また結合ボルトによって上方体と下方体が一体化した際は、これらが直方体形状にまとまり、その底面や側面は単純な平面で構成される。そのため、上方体や下方体に隣接する部材が木材である場合でも、その自然な雰囲気を損ねることはなく、美観に優れている。
【0023】
請求項2記載の発明のように、上方体と下方体との接触面を階段状にすることで、上方体と下方体との間で伝達する垂直荷重をより広範囲に分散させることができる。しかも、上方体と下方体との接触面を構成する押圧面と受け面と壁面は、いずれも単純な平面であり、製造時、その形成も容易である。
【0024】
請求項3記載の発明のように、上方体と下方体との間でせん断荷重を伝達する拘束手段として左右一対の外壁を用いることで、上方体と下方体のいずれか一方は、一対の外壁の間に挟み込まれ、その存在が覆い隠されることになる。したがって上方体と下方体が正規の状態で接触した後は、側面からの視線において双方の境界が覆い隠され、美観が一段と向上する。
【0025】
請求項4記載の発明のように、上方体と下方体との間でせん断荷重を伝達する拘束手段として貫入ピンを用いることで、せん断荷重のほか、引張荷重も伝達することができる。そのため連結具としての強度や剛性が一段と向上する。なお貫入ピンは、上方体や下方体とは別途に製造し、上方体や下方体に圧入することが多い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による連結具の形状例と使用状態例を示す斜視図であり、連結具を介して一方材の側面に他方材の端面を据え付けることを想定している。なお図の右上には、上方体の断面を描いてある。
図2図1の後の過程を示す斜視図であり、図の上方には、一方材に上方体を取り付け、さらに他方材に下方体を取り付けた状態を描いてあり、図の下方には、上方体と下方体を接触させた状態を描いてある。なお図の右下には、下方体の断面を描いてある。
図3図1の一方材と他方材を連結した状態のほか、固定ピンと結合ボルトの差し込み箇所の詳細を示す斜視図である。
図4図1とは異なる連結具を用いて二本の梁を丁字状に連結する場合を示す斜視図であり、この連結具の上方体はL字状であり、対する下方体はこれに応じた形状としてある。なお図の右上には、上方体の断面を描いてあり、図の左下には、下方体の断面を描いてある。
図5図4の一方材と他方材を連結した状態のほか、固定ピンと結合ボルトの差し込み箇所の詳細を示す斜視図である。
図6】拘束手段として貫入ピンを用いた場合を示す斜視図であり、連結具を介して一方材の側面に他方材の端面を据え付けることを想定している。なお図の右上には、上方体の断面などを描いてある。
図7図6の後の過程を示す斜視図であり、図の上方には、一方材に上方体を取り付け、さらに他方材に下方体を取り付けた状態を描いてあり、図の下方には、上方体と下方体を接触させた状態を描いてある。
図8図6の一方材と他方材を連結した状態のほか、貫入ピンと結合ボルトの差し込み箇所の詳細を示す斜視図である。
図9】他方材を木材ではなく、コンクリート構造物とした場合を示す斜視図であり、図の上方には、一方材と他方材を連結する前の状態を描いてあり、図の下方には、連結した後の状態を描いてある。
図10図1の連結具を用いて一方材と他方材を連結した上、これにテンションロッドを取り付ける場合を示す斜視図であり、図の上方は取り付け前の状態であり、図の下方は取り付け後の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明による連結具の形状例と使用状態例を示しており、連結具を介して一方材71の側面に他方材81の端面を据え付けることを想定している。ここでの一方材71と他方材81は、いずれも木材(集成材を含む)を所定の横断面に切り出した棒状だが、一方材71は直立する柱であり、他方材81は水平方向に伸びる梁である。そして連結具は、上方体21と下方体41の二個で一対になり、上方体21は一方材71に取り付け、下方体41は他方材81に取り付け、さらに上方体21と下方体41は、結合ボルト17と固定ピン15で一体化する。また一方材71や他方材81には、上方体21や下方体41を取り付けるため、埋設具61、63を埋め込む。
【0028】
この図の上方体21は、正方形断面の金属棒の一側面を階段状に削り落とした形状で、この削り落とした箇所では、押圧面25、27と壁面26が交互に並んでおり、下向きの押圧面25、27は上下三箇所に配置され、その間を直立する壁面26が結んでいる。対する下方体41は、上方体21よりもやや大きい長方形断面の金属棒を用いており、その一側面の内部だけを階段状に削り落としてあり、この削り落とした箇所では、受け面45、47と壁面46が交互に並んでおり、上向きの受け面45、47は上下三箇所に配置され、その間を直立する壁面46が結んでいる。そして下方体41において、削り落とされることなく残存する両側面は、単純な長方形状になっており、この面を外壁51と称するものとする。そのため受け面45、47と壁面46の全ては、左右一対の外壁51の間に挟み込まれるように配置される。
【0029】
上方体21と下方体41は、双方の階段状の各面が隙間なく接触する。したがって上下三箇所の押圧面25、27のうち、上方体21の下面に位置する押圧面25については、下方体41の下部の受け面45に載ることになる。また上方体21の中間部に位置する押圧面27については、下方体41の中間部に位置する受け面47に載るほか、残る上方体21の上部に位置する押圧面25については、下方体41の上面の受け面45に載ることになる。同時に、上方体21と下方体41において、上方に位置する壁面26、46同士と、下方に位置する壁面26、46同士も接触する。当然ながら、これらの各面が隙間なく接触できるよう、設計段階で各部の寸法を調整してあり、押圧面25、27が受け面45、47に載ることで垂直荷重が伝達され、壁面26、46同士が接触することで水平方向の圧縮荷重が伝達される。
【0030】
埋設具61、63は、汎用のラグスクリューを流用したものであり、一方材71と他方材81のいずれも、二個を上下に離れた状態で埋め込んでいる。そのため、一方材71の側面には下穴76を加工してあり、他方材81の端面にも下穴86を加工してある。そして埋設具61、63は円柱状だが、その側周面には螺旋状に伸びる凸条66が突出しており、これが下穴76、86の内周面に食い込むことで、埋設具61、63は一方材71や他方材81と強固に一体化する。さらに埋設具61、63の一端面には、埋め込みの際に工具を掛けるため、六角形の頭部65を設けてあり、その中心にはメネジ67を設けてある。なお一方材71に埋め込む埋設具61と、他方材81に埋め込む埋設具63は、同一形状である。
【0031】
一方材71に上方体21を取り付けるため、接続ボルト68を用いている。接続ボルト68は、壁面26から一方材71の埋設具61のメネジ67に向けて差し込む。そのため上方体21には、壁面26とその反対面を結ぶ接続穴33を設けてある。なお、接続ボルト68の頭部が壁面26から突出すると、上方体21と下方体41が正規の状態で接触できない。そこで接続穴33の入り口側には、内径を拡大したザグリ34を設けてあり、そこに接続ボルト68の頭部を収容する。そして下方体41についても、壁面46とその反対面を結ぶ接続穴53を設けてあり、その内径を拡大したザグリ54も設けてある。
【0032】
この図において、正規の状態で接触した上方体21と下方体41は、一本の結合ボルト17と四本の固定ピン15で強固に一体化される。結合ボルト17は、上方体21の上面の中心から下方体41に向けて差し込み、下方体41を上方体21に引き寄せる。したがって上方体21の中心には、結合ボルト17を差し込むため、垂直方向に伸びる縦穴37を設けてあり、その入り口側には、結合ボルト17の頭部を収容するザグリ38を設けてあるほか、縦穴37の下端部は、上方体21の中間部に位置する押圧面27に到達している。そして結合ボルト17と螺合できるよう、下方体41の中間部に位置する受け面47には、メネジ57を設けてある。
【0033】
固定ピン15は、上方体21の上面の四隅に設けたピン穴35に差し込み、上方体21と下方体41との微細な緩みを解消するほか、一方材71と他方材81との間に作用する引張荷重の伝達を担う。上方体21において、図の左下側にある二本のピン穴35は長く伸びており、上方体21の下面に位置する押圧面25に到達しているが、図の右上側にある二本のピン穴35は短く、上方体21の上部に位置する押圧面25に到達している。また下方体41についても、上方体21に応じて四隅にピン穴55を設けてある。ピン穴35、55の内径は、微細な緩みを解消できるよう、固定ピン15の外径との余裕を抑制してある。なお固定ピン15の上端部には、オネジ16を設けてある。このオネジ16にナットを螺合させることで、固定ピン15を差し込む際の作業性を改善できるほか、何らかの事情で固定ピン15を引き抜く際は、このオネジ16を利用する。
【0034】
下方体41の左右の外壁51の間には、上方体21が挟み込まれるが、この外壁51は、上方体21の全体を覆い隠すことができる大きさを確保してあり、その結果、外部からは上方体21を視認できなくなる。したがって、押圧面25、27と受け面45、47と壁面26、46で構成される階段状の境界も外壁51で覆い隠されるほか、他方材81の側面と下方体41の外壁51が段差なく並ぶため、美観に優れている。また上方体21は、左右の外壁51の間に挟み込まれるが、外壁51の内面では上方体21と下方体41が接触するため、ここでせん断荷重の伝達が実現する。なおここでのせん断荷重とは、他方材81の両側面を結ぶ方向に作用する荷重を指している。このように外壁51は、上方体21の移動を規制する拘束手段として機能する。
【0035】
図1の右上には、接続穴33や縦穴37やピン穴35などの配置を示すため、上方体21の断面を描いてある。縦穴37とザグリ34は内部で交差しているが、ザグリ34に収容される接続ボルト68は、縦穴37よりも奥に配置される。そのため、接続ボルト68と結合ボルト17が接触することはない。そして施工時は、一方材71に上方体21を取り付け、他方材81に下方体41を取り付け、その後、左右の外壁51の間に上方体21を挟み込み、さらに双方を隙間なく面接触させ、最後に結合ボルト17と固定ピン15で上方体21と下方体41を一体化する。
【0036】
図2は、図1の後の過程を示しており、図の上方には、一方材71に上方体21を取り付け、さらに他方材81に下方体41を取り付けた状態を描いてあり、図の下方には、上方体21と下方体41を接触させた状態を描いてある。上方体21を一方材71の側面に接触させ、上方体21の壁面26から埋設具61に向けて接続ボルト68を差し込むと、一方材71に上方体21が取り付けられる。また、下方体41を他方材81の端面に接触させ、下方体41の壁面46から埋設具63に向けて接続ボルト68を差し込むと、他方材81に下方体41が取り付けられる。なお下方体41は、他方材81の横断面に応じた形状としてあるため、下方体41の外壁51は、他方材81の側面と段差なく並んでおり、しかも外壁51と他方材81は、高さを揃えてあり、下方体41と他方材81の双方の上下面は、段差なく並んでいる。
【0037】
他方材81を一方材71に向けて接近させていき、上方体21と下方体41を正規の状態で接触させると、図の下方のように、上方体21と下方体41の各側面が段差なく並び、上方体21と下方体41は一個の直方体形状になり、その後、結合ボルト17と固定ピン15を差し込むと、一方材71と他方材81が連結される。その際、上方体21と下方体41の双方の上面は、段差なく並ぶ訳ではなく、上方体21がやや落ち込んでおり段差を生じているが、この段差は、固定ピン15の上端部を収容するために設けてある。そのほか図の右下には、下方体41の断面を描いてある。このようにピン穴55は、個々の受け面45の両端付近に配置してあり、またメネジ57は、下方体41において、中間部に位置する受け面47の中央に配置してある。
【0038】
図3は、図1の一方材71と他方材81を連結した状態のほか、固定ピン15と結合ボルト17の差し込み箇所の詳細を示している。図2の状態の後、結合ボルト17と固定ピン15の差し込みを終えると、上方体21と下方体41が隙間なく一体化し、一方材71と他方材81が連結される。この状態において、固定ピン15の上端部のオネジ16は、上方体21に埋まることなく突出しており、後に何らかの理由で固定ピン15を引き抜く際は、これを利用する。なお上方体21の上面は、周囲よりもやや落ち込んでおり、そこに固定ピン15の上端部が収容されている。その結果、固定ピン15は、下方体41や他方材81よりも高く突出することがなく、後に床板などを円滑に敷設することができる。
【0039】
下方体41の外壁51は、他方材81の側面と段差なく並んでおり、下方体41は、他方材81と一体化したような外観になる。しかも下方体41は、一方材71の側面と隙間なく接触する。そのため下方体41と他方材81の双方の色彩を統一するならば、下方体41の存在が認識できなくなり、一方材71と他方材81が直に接触したような状態になり、美観に優れている。また色彩が異なる場合でも、それが外観上のアクセントとして機能するため、やはり美観に優れている。
【0040】
図3の下方左側のように、上方体21と下方体41が正規の状態で接触すると、上方体21の各押圧面25、27は、下方体41の各受け面45、47と接触するほか、壁面26、46同士も上下二箇所で接触しており、上方体21と下方体41との隙間が消滅する。併せて、双方のピン穴35、55は同心で上下を貫いており、そこに固定ピン15を差し込むと、上方体21と下方体41が緩みなく一体化する。また図の下方右側のように、縦穴37とメネジ57も同心に揃っており、そこに結合ボルト17を差し込み、さらに締め付けを行うことで、下方体41が上方体21に引き寄せられる。
【0041】
図4は、図1とは異なる連結具を用いて二本の梁72、81を丁字状に連結する場合を示しており、この連結具の上方体22はL字状であり、対する下方体42はこれに応じた形状としてある。なお図の右上には、上方体22の断面を描いてあり、図の左下には、下方体42の断面を描いてある。この上方体22の押圧面25、27は上下の二箇所であり、これらは壁面26を挟んで階段状に配置されている。また、結合ボルト17を差し込むための縦穴37は、上方体22の上面中心に一箇所だけ設けてあり、その入り口にはザグリ38を設けてあるほか、縦穴37の下端部は押圧面27に到達している。
【0042】
固定ピン15を差し込むためのピン穴35は、上方体22の上面の四隅に設けてあり、そのうち図の左下側にある二本は長く伸びており、上方体22の下面に位置する押圧面25に到達しているが、図の右上側にある二本は短く、上方体22の上部に位置する押圧面27に到達している。そして壁面26には、接続ボルト68を差し込むための接続穴33を二箇所に設けてあるが、その入り口にはザグリ34を設けてあり、接続ボルト68の頭部が壁面26から突出することはない。
【0043】
下方体42は、長方形断面の金属棒を用いており、上方体22を収容できるよう、その一部を削り落として空間を確保してあり、この削り落とした空間の内面が受け面45、47や壁面46になるほか、削り落とされることのない両側面が外壁51になる。そのうち受け面45、47は、上下二箇所の上向きの水平面であり、これらは壁面46を挟んで階段状に配置してある。さらに下方体42の上部の受け面47には、結合ボルト17と螺合するメネジ57を一箇所に設けてあるほか、固定ピン15を差し込むためのピン穴55を二箇所に設けてある。また下方体42の下部の受け面に45は、固定ピン15を差し込むためのピン穴55を二箇所に設けてある。そして壁面46には、接続ボルト68を差し込むためのザグリ54を二箇所に設けてあり、その先には、反対面に到達する接続穴53を設けてあり、このザグリ54により、接続ボルト68の頭部が壁面46から突出することを防ぐ。
【0044】
一方材72に上方体22を取り付けるため、一方材72の側面には二個の埋設具61を埋め込んであり、上方体22のザグリ34からこの埋設具61に向けて接続ボルト68を差し込むことで、上方体22が一方材72の側面に密着する。また他方材81に下方体42を取り付けるため、他方材81の端面には二個の埋設具63を埋め込んであり、下方体42のザグリ54からこの埋設具63に向けて接続ボルト68を差し込むことで、下方体42が他方材81の端面に密着する。そして上方体22と下方体42を隙間なく面接触させた後、結合ボルト17と固定ピン15を差し込むことになる。
【0045】
図5は、図4の一方材72と他方材81を連結した状態のほか、固定ピン15と結合ボルト17の差し込み箇所の詳細を示している。図4の状態の後、一方材72に上方体22を取り付け、他方材81に下方体42を取り付け、次に一方材72と他方材81を接近させていき、下方体42の左右の外壁51の間に上方体22を挟み込み、上方体22と下方体42を隙間なく面接触させ、最後に結合ボルト17と固定ピン15を差し込むと、この図のように、他方材81の端面が一方材72の側面に連結される。この状態において、上方体22や下方体42や固定ピン15などの金属部品を覆い隠すため、一方材72と他方材81の双方の上面の境界を埋めるように塞ぎ板85を取り付けると、一方材72と他方材81との間の段差が解消されるほか、一方材72と他方材81のそれぞれの上面は、塞ぎ板85を介して一体化された平面を形成する。なお固定ピン15は、後の引き抜きなどを考慮し、その全体を上方体22に差し込むことはない。
【0046】
下方体42の外壁51は、他方材81の側面と段差なく並んでおり、下方体42は、他方材81と一体化したような外観になる。しかも下方体42は、一方材72の側面と隙間なく接触する。そのため下方体42と他方材81の双方の色彩を統一するならば、下方体42の存在が認識できなくなり、一方材72と他方材81が直に接触したような状態になり、美観に優れている。また色彩が異なる場合でも、それが外観上のアクセントとして機能するため、やはり美観に優れている。
【0047】
図5の下方左側のように、上方体22と下方体42が正規の状態で接触すると、上方体22の各押圧面25、27は、下方体42の各受け面45、47と接触するほか、壁面26、46同士も接触しており、上方体22と下方体42との隙間が消滅する。併せて、双方のピン穴35、55は同心で上下を貫いており、そこに固定ピン15を差し込むと、上方体22と下方体42は緩みなく一体化する。また図の下方右側のように、縦穴37とメネジ57も同心に揃っており、そこに結合ボルト17を差し込み、さらに締め付けを行うことで、下方体42が上方体22に引き寄せられる。なおメネジ57は、ザグリ54によって上下二箇所に分断されている。
【0048】
図6は、拘束手段として貫入ピン32、52を用いた場合を示しており、連結具を介して一方材71の側面に他方材81の端面を据え付けることを想定している。ここでの一方材71は直立する柱であり、他方材81は水平方向に伸びる梁である。また連結具は、上方体23と下方体43の二個で一対となり、上方体23を一方材71に取り付け、下方体43を他方材81に取り付けた後、上方体23と下方体43を結合ボルト17で一体化する。なお一方材71や他方材81には、上方体23や下方体43を取り付けるため、埋設具61、63を埋め込む。そのほか他方材81の端部には、上方体23と下方体43を収容するための端溝84を加工してあり、他方材81の端面は、一方材71の側面に接触する。ただし図では、内部構造を示すため、他方材81の端部の一部を切り欠いた状態で描いてある。
【0049】
この図の上方体23は、押圧面25、27と壁面26が交互に並んでおり、下向きの押圧面25、27は上下三箇所に配置され、その間を直立する壁面26が結んでいる。対する下方体43は、受け面45、47と壁面46が交互に並んでおり、上向きの受け面45、47は上下三箇所に配置され、その間を直立する壁面46が結んでいる。そして上方体23と下方体43は、双方の階段状の各面が隙間なく接触する。したがって上下三箇所の押圧面25、27のうち、上方体23の下面に位置する押圧面25については、下方体43の下部の受け面45に載ることになる。また上方体23の中間部に位置する押圧面27については、下方体43の中間部に位置する受け面47に載るほか、残る上方体23の上部に位置する押圧面25については、下方体43の上面の受け面45に載ることになる。同時に、上方体23と下方体43において、上方に位置する壁面26、46同士と、下方に位置する壁面26、46同士も接触する。その結果、垂直荷重のほか、水平方向の圧縮荷重が伝達できるようになる。
【0050】
埋設具61、63は、図1と同じものを用いており、一方材71の側面に上方体23を接触させた後、接続ボルト68を埋設具61に螺合させると、一方材71に上方体23が取り付けられる。また他方材81の端溝84に下方体43を配置した後、接続ボルト68を埋設具63に螺合させると、他方材81に下方体43が取り付けられる。このように接続ボルト68を差し込むため、上方体23と下方体43のそれぞれの壁面26、46にはザグリ34、54を設けてあり、その先の接続穴33、53が反対面に到達している。そのほか結合ボルト17を差し込むため、上方体23にはザグリ38と縦穴37を設けてあり、縦穴37の下端部は、上方体23の中間部に位置する押圧面27に到達している。そして下方体43については、縦穴37と同心になる位置にメネジ57を設けてあり、これに結合ボルト17が螺合することで、下方体43が上方体23に引き寄せられ、双方が一体化する。
【0051】
上方体23の各押圧面25、27のうち、上部に位置する押圧面25には、二本の貫入ピン32が突出しており、この押圧面25と接触する下方体43の受け面45には、貫入ピン32が差し込まれるピン穴55を設けてある。また下方体43の各受け面45、47のうち、下部に位置する受け面45には、二本の貫入ピン52が突出しており、この受け面45と接触する上方体23の押圧面25には、貫入ピン52が差し込まれるピン穴35を設けてある。したがって上方体23と下方体43を正規の状態で接触させた際、双方の貫入ピン32、52は、対面する相手方のピン穴55、35に差し込まれ、これにより、上方体23と下方体43との間では、引張荷重やせん断荷重など、水平方向に作用するあらゆる荷重を伝達できるようになる。
【0052】
図7は、図6の後の過程を示しており、図の上方には、一方材71に上方体23を取り付け、さらに他方材81に下方体43を取り付けた状態を描いてあり、図の下方には、上方体23と下方体43を接触させた状態を描いてある。上方体23を一方材71の側面に接触させた後、接続ボルト68を埋設具61に螺合させると、一方材71に上方体23が取り付けられる。また他方材81の端溝84に下方体43を収容した後、接続ボルト68を埋設具63に螺合させると、他方材81に下方体43が取り付けられる。なおその際、下方体43は、その上部を除いて他方材81で覆い隠される。
【0053】
一方材71に上方体23を取り付け、さらに他方材81に下方体43を取り付けた後、他方材81を一方材71に向けて接近させていき、上方体23と下方体43を正規の状態で接触させると、図の下方のような状態になる。その際、双方の貫入ピン32、52は、対向面のピン穴55、35に差し込まれるため、上方体23と下方体43との自由な移動が規制され、その後に結合ボルト17を差し込むと、一方材71と他方材81が連結される。ここでは貫入ピン32、52により、上方体23と下方体43を正規の状態で接触させるだけで双方の自由な移動が規制されるため、一方材71と他方材81との位置調整が不要になる。なお上方体23と下方体43が接触した後は、貫入ピン32、52が完全に覆い隠される。したがって、この図とは異なり端溝84を加工しない場合においても、上方体23や下方体43の側面だけが外部に露出するため、貫入ピン32、52が美観に影響を与えることはない。
【0054】
図8は、図6の一方材71と他方材81を連結した状態のほか、貫入ピン32、52と結合ボルト17の差し込み箇所の詳細を示している。図7の状態の後、結合ボルト17の差し込みを終えると、上方体23と下方体43が隙間なく一体化し、一方材71と他方材81が連結される。この際、上方体23と下方体43は、他方材81の端溝84に収容されており、他方材81の端面が一方材71の側面に接触している。
【0055】
図8の下方左側のように、上方体23と下方体43が正規の状態で接触すると、上方体23の各押圧面25、27は、下方体43の各受け面45、47と接触するほか、壁面26、46同士も上下二箇所で接触しており、上方体23と下方体43との隙間が消滅する。併せて、双方の貫入ピン32、52は、相手方のピン穴55、35に差し込まれており、上方体23と下方体43は緩みなく一体化する。また図の下方右側のように、結合ボルト17を差し込むための縦穴37とメネジ57も同心に揃っており、そこに結合ボルト17を差し込み、これを締め付けることで、下方体43が上方体23に引き寄せられる。なお貫入ピン32、52の配置については自在に決めることができ、例えばこの図の上方の貫入ピン32は、上方体23から突出しているが、これとは逆に下方体43から突出させ、上方体23に差し込むこともできる。
【0056】
図9は、他方材82を木材ではなく、コンクリート構造物とした場合を示しており、このコンクリート構造物の垂直面からは、埋設具62として機能するアンカーボルトが突出している。なおここでの上方体21と下方体41は、図1と同じものを用いており、下方体41の両側面には外壁51を設けてあり、左右の外壁51の間に上方体21が挟み込まれる。また、ここでの他方材82の埋設具62はアンカーボルトであり、その大半は他方材82の内部に埋め込まれているが、一端部だけがその垂直面から突出しており、これを利用して下方体41を取り付けることになる。したがって下方体41のザグリ54には、埋設具62と螺合する接続ナット69を差し入れることになる。そのほか一方材72は、水平方向に伸びる梁であり、ここでは木材を用いており、その一端側を他方材82で支持することになる。そして一方材72の端面には、接続ボルト68と埋設具61を介して上方体21を取り付ける。
【0057】
一方材72に上方体21を取り付け、他方材82に下方体41を取り付けた後、一方材72を他方材82に向けて接近させていき、上方体21と下方体41を正規の状態で接触させ、最後に結合ボルト17と固定ピン15を差し込むと、図の下方のように、一方材72の一端側が他方材82で支持された状態になる。ここで下方体41の外壁51は、一方材72の側面と段差なく並んでおり、美観に優れている。このように本発明では、他方材82をコンクリート構造物や鋼材に置き換えることも可能であり、一方材72についても同様の置き換えが可能である。
【0058】
図10は、図1の連結具を用いて一方材71と他方材81を連結した上、これにテンションロッド97を取り付ける場合を示しており、図の上方は取り付け前の状態であり、図の下方は取り付け後の状態である。上方体21や下方体41は金属製であり、しかもその表面の一部は、覆い隠されることなく外部に露出する。そのためこれらには、溶接などで様々な金属部品を取り付け可能であり、ここでは下方体41の上面と下面のそれぞれにクレビス95を取り付け、これを介してテンションロッド97の一端側を保持している。なおクレビス95とテンションロッド97は、支点ピン96を介して接続されており、テンションロッド97の引き出し方向を調整することができる。またこの図では、クレビス95を取り付ける手段として溶接を想定しているが、ボルト類を用いることもできる。
【0059】
そのほか図の右下では、連結具の側面にテンションロッド97を取り付ける場合を描いてあり、ここでは二組の連結具を用い、一方材71の側面に二本の他方材81を連結しており、しかもこの二本の他方材81は、高さを揃えた上、互いに直交するように配置してある。そしてここでのクレビス95は、二組の連結具の側面同士を結ぶように配置してあり、しかも双方と溶接で一体化してあるため、耐力が向上している。このように本発明では、下方体41などの表面の一部を露出させることを想定しており、これを利用してガゼットプレートなど、様々な部品を簡単且つ強固に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0060】
15 固定ピン
16 オネジ
17 結合ボルト
21 上方体(押圧面が三箇所で壁面が二箇所)
22 上方体(押圧面が二箇所で壁面が一箇所)
23 上方体(押圧面が三箇所で壁面が二箇所・貫入ピンのあるもの)
25 押圧面(縦穴が露出していないもの)
26 壁面
27 押圧面(縦穴が露出しているもの)
32 貫入ピン(拘束手段)
33 接続穴
34 ザグリ(接続穴と連通するもの)
35 ピン穴
37 縦穴
38 ザグリ(縦穴と連通するもの)
41 下方体(受け面が三箇所で壁面が二箇所・外壁のあるもの)
42 下方体(受け面が二箇所で壁面が一箇所)
43 下方体(受け面が三箇所で壁面が二箇所・貫入ピンのあるもの)
45 受け面(メネジが露出していないもの)
46 壁面
47 受け面(メネジが露出しているもの)
51 外壁(拘束手段)
52 貫入ピン(拘束手段)
53 接続穴
54 ザグリ(接続穴と連通するもの)
55 ピン穴
57 メネジ
61 埋設具(ラグスクリュー・一方材側)
62 埋設具(コンクリート構造物から突出するアンカーボルト)
63 埋設具(ラグスクリュー・他方材側)
65 頭部
66 凸条
67 メネジ
68 接続ボルト
69 接続ナット
71 一方材(柱)
72 一方材(梁)
76 下穴
81 他方材(梁)
82 他方材(コンクリート構造物)
84 端溝
85 塞ぎ板
86 下穴
95 クレビス
96 支点ピン
97 テンションロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10