(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044926
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び転落防止対策工法
(51)【国際特許分類】
E01F 1/00 20060101AFI20230327BHJP
E01C 1/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E01F1/00
E01C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153048
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100221855
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 康造
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳顕
(72)【発明者】
【氏名】所司原 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥剛
【テーマコード(参考)】
2D051
2D101
【Fターム(参考)】
2D051AB03
2D051AF11
2D051BA01
2D051BA06
2D101CA16
2D101CB07
2D101DA04
2D101EA02
2D101EA11
2D101FA11
2D101FA21
2D101FA33
2D101FB12
(57)【要約】
【課題】高速道路で事故等が発生し運転者等が防護柵外側に一時避難するための、避難兼用点検通路の転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供する。
【解決手段】避難兼用点検通路は、架台と踏板で構成され点検通路としての必要幅員を確保し、転落防止柵は、防護柵の機能を阻害しないように防護柵からの離隔を確保して避難兼用点検通路の法尻側端部に配置され、避難兼用点検通路の下部には、道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で配置し、架台を法尻杭及び法肩杭の各杭頭部により支持し、踏板は道路縦断方向に所定の間隔で配置された架台間に支持されて避難兼用点検通路を構成し、避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備えた、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び転落防止対策工法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車して防護柵外側に一時避難するための、通常は点検に使用する避難兼用点検通路であって、
前記避難兼用点検通路は架台と踏板で構成され、点検通路としての必要幅員を確保し、転落防止柵は、前記防護柵の機能を阻害しないように前記防護柵からの離隔を確保して、前記避難兼用点検通路の法尻側端部に配置され、
前記避難兼用点検通路の下部には、道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で配置して、前記避難兼用点検通路を支持し、
前記避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備えたことを特徴とする、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。
【請求項2】
前記架台は、T形金具で構成して逆T形状で使用し、道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、前記逆T形状で配置して支持固定され、
前記踏板は、道路縦断方向に所定の間隔で配置された前記逆T形状の架台間に支持固定されたことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。
【請求項3】
法面傾斜に従い前記法肩杭は、前記法尻杭より短尺な杭を使用し、前記法尻杭及び前記法肩杭は螺旋杭であることを特徴とする、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。
【請求項4】
前記避難兼用点検通路の下方に設けた前記管路スペースは、3面囲いのケーブルラックで構成して前記踏板に組み込まれ、前記ケーブルラックに配管を配置したことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。
【請求項5】
盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車して防護柵外側に一時避難するための、通常は点検に使用する避難兼用点検通路であって、
盛土法面の道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で打設し、
架台を、前記道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、道路縦断方向に前記所定間隔で架設し、
管路スペースを下方に備えた踏板を、前記所定間隔で架設された前記架台間に架設して、避難兼用点検通路を形成し、
転落防止柵を、前記防護柵の機能を阻害しないように、前記防護柵からの離隔を取りながら点検通路としての必要幅を確保して前記避難兼用点検通路の法尻側端部に設けたことを特徴とする、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。
【請求項6】
前記架台は、T形金具で構成して逆T形状で使用し、道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、前記逆T形状で架設して支持固定し、
道路縦断方向に所定の間隔で配置された前記逆T形状の架台間に、前記踏板を支持固定させたことを特徴とする、請求項5に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。
【請求項7】
法面傾斜に従い前記法肩杭は、前記法尻杭より短尺な杭を使用し、前記法尻杭及び法肩杭は螺旋杭であることを特徴とする、請求項5乃至請求項6のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。
【請求項8】
前記避難兼用点検通路の下方に設けた前記管路スペースは、3面囲いのケーブルラックで構成し前記踏板に組み込まれ、前記ケーブルラックに配管を配置したことを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車する場合、防護柵(ガードレール)外側に避難する。防護柵外側の避難先に用地幅がなく、さらに擁壁やコンクリートブロック積みの直壁に近い構造で地表面からの高さが高い場合、運転者等の転落を防ぐ転落防止柵が必要となる。本発明は高速道路の防護柵外側に設ける避難した運転者等の転落を防止する、転落防止対策構造及び転落防止対策工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車を必要とした場合には、高速道路と反対側の防護柵外側に避難することになっている。盛土構造の高速道路の場合、防護柵外側の箇所は点検のための通路(以下、点検通路という)となっており、転落を防止する転落防止柵が知られているが、かならずしも転落防止柵は設けられていない。また、高盛土構造の場合には、防護柵外側は点検通路から直ぐに直壁に近い擁壁やコンクリートブロック積みとなり、地表面からの高さが高く、危険な箇所となっていることがある。一方、幅の狭い通路に転落防止柵が設けられると、清掃や設備交換などの保守点検作業をする際に、転落防止柵の存在が障害となり、作業が困難であったり、十分な作業スペースを確保できなかったりするという問題がある。また、降雪が多い場合には転落防止柵の設置により雪がたまりやすく、また除雪しにくくなるため、点検通路としての機能がそこなわれやすいという問題がある。
【0003】
転落防止柵の構造は、「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「第5編 第1章 1-4歩行者自転車用柵」の「種別P」を準用して設計される。非特許文献1を参照。上記防護柵の設置基準・同解説では、転落防止柵の支柱は法肩側方に余裕を取り、所定の埋込み深さのコンクリート基礎又は支柱の延長である杭で支持することとなっている。
【0004】
特許文献1の可倒式柵1は、斜面Sのコンクリート支持体Aの上端部に設置されたものであり、さらに上記で記載した転落防止柵の設置により清掃や設備交換などの保守点検作業の障害となることを防止するため、可倒式の柵としたものである。転落防止柵には、運転者等の通路幅を確保し、さらに防護柵の機能を阻害しない所定の離隔距離も必要であり、これらの条件を満足した場合、転落防止柵は盛土法面上に一部張り出した構造となる場合もある。特許文献2は本発明出願人によるものであるが、
図1の車道脇ガードレール33の直下の埋設基礎部6から、張出歩道21を車道29の反対側に設置し、張出歩道21の先端部に転落防止柵を設置している。また、特許文献3には、一方側に歩道の役目を備えた歩道用コンクリート版3を地盤上に設置し、該歩道用コンクリート版の一方側端部に転落防止柵に相当するガードパイプ12を立設している
【0005】
転落防止柵の支柱の延長である杭で支持するものとしては、特許文献4には、歩道の安全柵としてのガードパイプ柵支柱5を、軸体1の軸体下端部に螺旋板2を備えた土中建込柱にて支持したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-178758号公報
【特許文献2】特開2018-21300号公報
【特許文献3】特開2014-43755号公報
【特許文献4】特開2000-273833号公報
【非特許文献】
【0007】
防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 社団法人日本道路協会 第5編 第1章 1-4歩行者自転車用柵 頁5-1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車を必要とした場合には、高速道路と反対側の防護柵外側に避難することになっている。しかしながら、防護柵外側の箇所は点検通路となっているが、かならずしも転落防止柵は設けられておらず、高盛土構造の場合には、防護柵外側の点検通路から直ぐに直壁に近い擁壁やコンクリートブロック積みとなり、地表面からの高さが高く、避難した運転者等の転落を防止する転落防止柵が必要となる。一方、幅の狭い通路に転落防止柵が設けられると、清掃や設備交換などの保守点検作業をする際に、転落防止柵の存在が障害となり、作業が困難であったり、十分な作業スペースを確保できなかったりするという問題があり、さらに降雪が多い場合には転落防止柵の設置により雪がたまりやすく、また除雪しにくくなるため、点検通路としての機能がそこなわれやすいという問題がある。
【0009】
特許文献1では、法面S上の通路Pの転落する危険のある側に柵1を設置し、保守点検作業をする際、柵1が障害となることを避けるため、必要に応じて通路P外側へ倒れる可倒式となっている。そして、可倒式柵1は斜面Sのコンクリート支持体Aの上端部に設置されたものであるが、斜面Sに設置されたコンクリート支持体Aは可倒式柵1を支持するため大規模な基礎構造とする必要がある。特許文献2では、車道脇ガードレール33の直下の埋設基礎部6から、張出歩道21を車道29の反対側に設置し、張出歩道21の先端部に転落防止柵34を設置しているが、張出歩道21を支持する埋設基礎部を大規模な基礎構造とする必要がある。特許文献3では、歩道用コンクリート版3を地盤上に設置し、該歩道用コンクリート版の一方側端部に転落防止柵に相当するガードパイプ12を立設する構造であるが、歩道用コンクリート版3を設置する地盤が必要であり、限られた支持地盤しかない盛土の法肩に、歩道用コンクリート版3を設置する地盤を確保しなければならない問題点がある。特許文献4では、歩道の安全柵としてのガードパイプ柵支柱5を、軸体1の軸体下端部に螺旋板2を備えた土中建込柱にて支持した構造が記載されているが、法肩に点検通路を設けて転落防止柵を設置する構成についての記載はない。
【0010】
このような先行技術の問題点等に鑑みて、本発明は、高速道路盛土部での防護柵外側における点検通路を兼ね備えた待避運転者等の転落防止対策として、
(a)「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の「種別P」を満足し、かつ防護柵の機能を阻害しないように防護柵からの離隔を1.1m以上確保した、転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供すること、
(b)転落防止柵と防護柵間に設置する点検通路は待避運転者等の移動も考慮し、通路幅0.6m以上を確保し、かつ雪がたまりにくく除雪しやすい通路を備えた、転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供すること、
(c)点検通路部周辺に埋設配置された通信管路を移設収納可能とした、転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供すること、
(d)構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置しやすい構造・工法とした、転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供すること、
(e)転落防止柵の設置工事による法面防災強度の維持を図り、法面掘削の最小化を図った転落防止対策構造及び転落防止対策工法を提供すること、
を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明(請求項1)は、「盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車して防護柵外側に一時避難するための、通常は点検に使用する避難兼用点検通路であって、前記避難兼用点検通路は架台と踏板で構成され、点検通路としての必要幅員を確保し、転落防止柵は、前記防護柵の機能を阻害しないように前記防護柵からの離隔を確保して、前記避難兼用点検通路の法尻側端部に配置され、前記避難兼用点検通路の下部には、道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で配置して、前記避難兼用点検通路を支持し、前記避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備えたことを特徴とする、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。」を特徴としている。
【0012】
転落防護柵を架台と踏板で形成された避難兼用点検通路の法尻側端部に配置することにより、防護柵の機能を阻害しないように防護柵からの離隔を確保し、かつ避難兼用点検通路は点検通路としての必要幅員を確保し、さらに、避難兼用点検通路の法尻側端部及び法面法肩に法尻杭と法肩杭をそれぞれ配置することで、「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の設置基準を満足した、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。また、避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備えた、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。さらに、避難兼用点検通路を架台と踏板で形成し、避難兼用点検通路の支持を法面に打設した法尻杭及び法肩杭で支持固定することで、構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での法面の掘削・埋戻しのない構造とし、その結果、法面防災強度の維持及び法面改変の最小化が図られた、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。
【0013】
本発明(請求項2)は、「前記架台は、T形金具で構成して逆T形状で使用し、道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、前記逆T形状で配置して支持固定され、前記踏板は、道路縦断方向に所定の間隔で配置された前記逆T形状の架台間に支持固定されたことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。」を特徴としている。
【0014】
本発明に係る「金具」とは、公知の金属からなる部材であり、要求性能に合せて公知の金属から、一例としてステンレス、防食処理された鋼材又は通常の鋼材を使用することができる。架台をT形金具で構成することにより軽量化が図られ、該T形金具を逆T形状で使用し、道路横断方向の法尻杭及び法肩杭の各杭頭間に、逆T形状で配置して支持固定され、道路縦断方向に所定の間隔で配置された逆T形状の架台間に、踏板が固定されることにより、構造の連続・剛性化と軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置容易な構造とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。
【0015】
本発明(請求項3)は、「法面傾斜に従い前記法肩杭は、前記法尻杭より短尺な杭を使用し、前記法尻杭及び前記法肩杭は螺旋杭であることを特徴とする、請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。」を特徴としている。
【0016】
本発明に係る「螺旋杭」とは、杭先端に螺旋状の刃を設け、該杭を回転しながら地盤に打設する、公知の杭である。法面傾斜に従い法肩側に配置された法肩杭は、法尻に配置された法尻杭より短尺な杭を使用し、杭の長さを法面高さにより最小化を図り、さらに法尻杭及び法肩杭を螺旋杭とすることで、支持力の強化と構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置容易な構造とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。
【0017】
本発明(請求項4)は、「前記避難兼用点検通路の下方に設けた前記管路スペースは、3面囲いのケーブルラックで構成して前記踏板に組み込まれ、前記ケーブルラックに配管を配置したことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造。」を特徴としている。
【0018】
避難兼用点検通路の下方に設けた管路スペースを、3面囲いのケーブルラックで構成し、該ケーブルラックを踏板の下方に設けて管路を配置することで、構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置容易な構造とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。
【0019】
本発明(請求項5)は、「盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車して防護柵外側に一時避難するための、通常は点検に使用する避難兼用点検通路であって、盛土法面の道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で打設し、架台を、前記道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、道路縦断方向に前記所定間隔で架設し、管路スペースを下方に備えた踏板を、前記所定間隔で架設された前記架台間に架設して、避難兼用点検通路を形成し、転落防止柵を、前記防護柵の機能を阻害しないように、前記防護柵からの離隔を取りながら点検通路としての必要幅を確保して前記避難兼用点検通路の法尻側端部に設けたことを特徴とする、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。」を特徴としている。
【0020】
転落防護柵を、防護柵の機能を阻害しないように、該防護柵からの離隔を取りながら点検通路としての必要幅を確保して避難兼用点検通路の法尻側端部に設け、さらに、盛土法面の道路横断方向の法尻杭及び法肩杭を、道路縦断方向に所定間隔で打設することで、「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の設置基準を満足した、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法となっている。また、避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備えた、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法である。さらに、踏板を所定間隔で架設された架台間に架設して、避難兼用点検通路を形成し、さらに、避難兼用点検通路を法面に打設した法尻杭及び法肩杭で支持することで、高速道路盛土部の狭小な箇所での法面の掘削・埋戻しの必要のない施工容易な工法とし、その結果、法面防災強度の維持及び法面改変の最小化が図られた、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法である。
【0021】
本発明(請求項6)は、「前記架台は、T形金具で構成して逆T形状で使用し、道路横断方向の前記法尻杭及び前記法肩杭の各杭頭間に、前記逆T形状で架設して支持固定し、道路縦断方向に所定の間隔で配置された前記逆T形状の架台間に、前記踏板を支持固定させたことを特徴とする、請求項5に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。」を特徴としている。
【0022】
本発明に係る「金具」とは、公知の金属からなる部材であり、要求性能に合せて公知の金属から、一例としてステンレス、防食処理された鋼材又は通常の鋼材を使用することができる。架台をT形金具で構成することにより軽量化が図られ、該T形金具を逆T形状で使用し、道路横断方向の法尻杭及び法肩杭の各杭頭間に、逆T形状で架設して支持固定され、道路縦断方向に所定の間隔で架設された逆T形状の架台間に、踏板が支持固定されることにより、高速道路盛土部の狭小な箇所での軽量で施工容易な工法とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法である。
【0023】
本発明(請求項7)は、「法面傾斜に従い前記法肩杭は、前記法尻杭より短尺な杭を使用し、前記法尻杭及び法肩杭は螺旋杭であることを特徴とする、請求項5乃至請求項6のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。」を特徴としている。
【0024】
本発明に係る「螺旋杭」とは、杭先端に螺旋状の刃を設け、該杭を回転しながら地盤に打設する、公知の杭である。法面傾斜に従い、法肩側に打設される法肩杭は、法尻に打設される法尻杭より短尺な杭を使用し、杭の長さを法面高さに対応した最小化による軽量化を図り、さらに法尻杭及び法肩杭を螺旋杭とすることで、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置容易な工法とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法である。
【0025】
本発明(請求項8)は、「前記避難兼用点検通路の下方に設けた前記管路スペースは、3面囲いのケーブルラックで構成し前記踏板に組み込まれ、前記ケーブルラックに配管を配置したことを特徴とする、請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の防護柵外における運転手等の転落防止対策工法。」を特徴としている。
【0026】
避難兼用点検通路から下方には設けた管路スペースを、3面囲いのケーブルラックで構成し、該ケーブルラックを踏板の下方に設けて管路を配置することで、構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置容易な工法とした、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法である。
【発明の効果】
【0027】
転落防護柵を、架台と踏板で形成された避難兼用点検通路の法尻側端部に配置することにより、防護柵の機能を阻害しないように防護柵からの離隔を取りながら点検通路としての必要幅を確保し、さらに、避難兼用点検通路の法尻側端部及び法面法肩に法尻杭と法肩杭をそれぞれ配置することで、「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の設置基準満足した、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び工法である。また、避難兼用点検通路の下方には管路スペースを備え、さらに、避難兼用点検通路を架台と踏板による連続・剛性化構造とし、避難兼用点検通路を法面に打設した法尻杭及び法肩杭で支持することで支持力の強化と構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での法面の掘削・埋戻しの必要のない工法とし、その結果、法面防災強度の維持及び法面改変の最小化が図られた、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】転落防止柵がない防護柵外側の点検通路の側面図
【
図2】防護柵外側に避難兼用点検通路を設け転落防止柵を設置した側面図
【
図3】防護柵外側に避難兼用点検通路を設け転落防止柵を設置した正面図
【
図4】避難兼用点検通路下方に設けた管路スペースの側面図
【
図5】防護柵外側に避難兼用点検通路を設ける施工手順図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、盛土構造の高速道路の走行方向に直角な道路横断方向において、防護柵に対して走行車線と反対側を「外側」という。道路横断方向の法面において、法面の法先部を「法尻」、法面の法上端部を「法肩」といい、道路横断方向での位置の表記に使用する。高速道路の走行方向を道路縦断方向といい、位置の表記に使用する。また、避難兼用点検通路の「下部」「下方」とは、避難兼用点検通路の通路面反対側の裏側を「下」といい、位置の表記に使用する。
【0030】
図1は、転落防止柵がない防護柵外側の点検通路の側面図である。盛土構造の高速道路で事故や故障が発生し、運転者等が降車を必要とした場合には、高速道路と反対側の防護柵(ガードレール)外側に避難することになっている。盛土構造の高速道路の場合、防護柵外側の箇所は点検のための点検通路となっており、転落を防止する転落防止柵が知られているが、かならずしも転落防止柵は設けられていない。一方、幅の狭い通路に転落防止柵が設けられると、清掃や設備交換などの保守点検作業をする際に、転落防止柵の存在が障害となり、作業が困難であったり、十分な作業スペースを確保できなかったりするという問題がある。また、降雪が多い場合には転落防止柵の設置により雪がたまりやすく、また除雪しにくくなるため、点検通路としての機能がそこなわれやすいという問題がある。
【0031】
このような先行技術の問題点等に鑑みて、本発明は、高速道路盛土部での防護柵外側における待避運転者等の転落防止対策として
(a)「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の「種別P」を満足し、かつ防護柵の機能を阻害しないように防護柵からの離隔を1.1m以上確保し、
(b)転落防止柵と防護柵間に設置する点検通路は待避運転者等の移動も考慮し、通路幅0.6m以上を確保し、かつ雪がたまりにくく除雪しやすい通路とし、
(c)点検通路部周辺に埋設配置された通信管路を移設収納可能とし、
(d)構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置しやすい構造・工法とし、
(e)転落防止柵の設置工事による法面防災強度の維持を図り、法面掘削の最小化を図った、転落防止対策構造及び転落防止対策工法に関するものである。
【0032】
このため、本発明の防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び転落防止対策工法では、転落防止柵8を架台91と踏板92で形成された避難兼用点検通路9の法尻側端部に配置することにより、防護柵5の機能を阻害しないように防護柵5からの離隔を確保し、さらに、避難兼用点検通路9の法尻側端部及び法面法肩に杭93をそれぞれ配置することで、「防護柵の設置基準・同解説(平成28年12月) 日本道路協会」の「歩行者自転車用柵」の設置基準満足し、また避難兼用点検通路9の下方には管路スペース100を備え、避難兼用点検通路9を架台91と踏板92で形成し、さらに避難兼用点検通路9を法面に打設した杭93で支持固定することで、構造の軽量化を図り、高速道路盛土部の狭小な箇所での設置しやすい構造及び工法とし、その結果、法面防災強度の維持及び法面掘削の最小化が図られた、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造及び工法となっている。
【0033】
本発明の実施形態として、初めに防護柵外における運転手等の転落防止対策構造において、軽量で設置取付けを容易にした各部材の構成について説明する。避難兼用点検通路9の主要材は、転落防止柵8、架台91、踏板92、杭93(93A、93B)、管路スペース100、ケーブルラック101、及び管路102から構成されている。
図2は、上記各部材により、防護柵外側に避難兼用点検通路9を設け転落防止柵8を設置した側面図を示す。以下に、転落防止対策構造の各主要材の詳細及び組み立て構造を記載する。
【0034】
転落防止柵8は、防護柵5の機能を阻害しないように該防護柵5からL=1100mmの離隔を確保した避難兼用点検通路9の法尻側端部に配置され、一例として手すり高さH=1100mmのビーム形式である。架台91と踏板92で構成された避難兼用点検通路9の点検通路幅は、待避運転者等の移動も考慮し、通路幅0.6m以上を確保してある。また、避難兼用点検通路9には、雪がたまりにくく除雪しやすいアルミ縞板製踏板92を採用している。
【0035】
避難兼用点検通路9の下部には、道路横断方向の法尻側に法尻杭93Aを配置し、法肩側に法肩杭93Bを配置し、道路縦断方向に一例としてLp=2016mm間隔で配置し、該避難兼用点検通路9を支持固定する。そして、杭93は螺旋杭とすることで、支持力の強化を図った。また、法面傾斜に従い法肩側に配置された法肩杭93Bは、法尻に配置された法尻杭93Aより短尺な杭を使用し、杭93の長さを法面高さにより最小化し軽量化を図った。法尻杭93Aは、一例として杭長L=2500mm、杭外径φ=114mmの鋼管螺旋杭であり、法肩杭93Bは、一例として杭長L=1500mm、杭外径φ=114mmの鋼管螺旋杭である。法尻杭93A及び法肩杭93Bは、杭先端部に螺旋状のスクリュー部を、杭頭部にはボルト接合が可能なフランジ部を、備えた螺旋杭である。
図2及び
図3を参照。
【0036】
避難兼用点検通路9を構成する架台91は、一例としてT形鋼(100×100×6×8mm)を採用することにより、軽量化が図られている。該架台91は逆T形状で使用し、法尻杭93A及び法肩杭93Bの各杭頭部のフランジ部に架設して、ボルトにて該杭頭部のフランジ部と連結して支持固定とし、道路縦断方向に所定間隔Lp=2016mm間隔で配置する。杭93と架台91を連結して支持固定する際、必要に応じて、道路横断方向、縦断方向及び高さ方向の調整のため、公知の治具(図示せず)を介在させる。
図2及び
図3を参照。
なお上記各数値は一例であり、条件により適宜選択して使用する。
【0037】
避難兼用点検通路9を構成する踏板92は、一例としてアルミ縞板製中空箱蓋形状(長さ2000×幅500×高さ100mm)を採用することにより、軽量化が図られている。該踏板92は、道路縦断方向に所定間隔のLp=2016mm間隔で配置された逆T形状の架台91間に、道路横断方向に2本配置して通路幅0.6m以上を確保し、ボルトにて架台91と連結固定させる。架台91は、法尻杭93A及び法肩杭93Bの各杭頭部により道路横断方向に支持固定され、踏板92は、道路縦断方向に所定の間隔で配置された架台91間に支持固定されることにより、道路横断方向及び道路縦断方向の構造の連続・剛性化が図られる。
図2及び
図3を参照。
【0038】
避難兼用点検通路9から下方に設けた管路スペース100は、法尻側に設置される踏板92の下方に、3面囲いのケーブルラック101を設置することで構成し、踏板92を架台91に架設する前に該ケーブルラック101が組み込まれている。そして、踏板92を架台91に架設後に、該ケーブルラック101に管路102が配置される。
図4を参照。
【0039】
上記に記載した転落防止対策構造は、盛土構造の高速道路1で事故や故障が発生し、運転者等が降車して防護柵5外側に一時避難するための、通常は点検に使用する避難兼用点検通路9であって、防護柵5の機能を阻害しないように該防護柵5からの離隔を確保した箇所に転落防止柵8を備え、該転落防止柵8は架台91と踏板92で構成された該避難兼用点検通路9の法尻側端部に配置され、避難兼用点検通路9の下部には、道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bを、道路縦断方向に所定間隔で配置して、前記避難兼用点検通路9を支持固定し、避難兼用点検通路9の下方には管路スペース100を備えている、防護柵外における運転手等の転落防止対策構造である。
【0040】
次に、本発明の実施形態として、防護柵外における運転手等の転落防止対策工法において、軽量で設置取付けを容易にした各施工手順について説明する。
【0041】
避難兼用点検通路9を設ける施工手順は、
(1)盛土法面12に杭93の打設位置93Sを明示する(墨だし)。
図5(a)
(2)盛土法面12に法尻杭93A及び法肩杭93Bを打設する。
図5(b)
(3)法肩杭93A及び法肩杭93Bの各杭頭間に架台91を架設する。
図5(c)
(4)架台91間に踏板92を架設する。
図5(d)
(5)管路スペース100へ管路102を配置する。
図5(e)
(6)転落防止柵8を避難兼用点検通路9に設置する。
図5(e)
手順であり、
図5に、防護柵外側に避難兼用点検通路9を設ける施工手順図を示す。以下に、各作業の詳細手順を記載する。
【0042】
<杭打設位置の明示>
杭93の打設に先行して盛土法面12に、杭93の打設位置93Sを明示する。
図5(a)を参照。
【0043】
<杭の打設>
杭93の打設位置93Sに従い、道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bを、道路縦断方向に一例として所定間隔Lp=2016mm間隔で打設する。杭93の諸元は上記転落防止対策構造の主要材の詳細で記載したとおりである。初めに道路横断方向の法尻杭93Aを打設し、その後法肩杭93Bを打設する。打設は、
図5(b)に例示するように、高速道路1の本線路肩3上に一例として杭打設機200である小型バックホウを配置して、該本線路肩3上から法尻杭93A及び法肩杭93Bを回転打設する。該小型バックホウのアーム先端には、杭93を回転打設する装置が装着され、杭93の杭頭部のフランジ部を挟持して回転打設する。そして、道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bの打設が完了後、杭打設機200を道路縦断方向に杭の打設間隔だけ本線路肩3に沿って移動し、道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bの打設を行い、同様の作業を道路縦断方向に所定区間実施する。高速道路盛土部の狭小な箇所で、本線路肩3から基礎工としての杭93の施工が可能で、法面の掘削・埋戻しの必要のない施工容易な工法であり、その結果、法面防災強度の維持及び法面改変の最小化が図られる。
【0044】
<架台の架設>
架台91は、一例としてT形鋼(100×100×6×8mm)で構成することにより、軽量化が図られている。該架台91は、逆T形状で使用して道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bの各杭頭部のフランジ部に架設し、必要に応じて、道路横断方向、縦断方向及び高さ方向の調整のため、公知の治具(図示せず)を介在させ、ボルトにて各杭頭部のフランジ部と連結して容易に支持固定することができる。そして、道路縦断方向に所定間隔Lp=2016mm間隔で、同様に架台91を架設していく。
図5(c)を参照。
なお上記各数値は一例であり、条件により適宜選択して使用する。
【0045】
<踏板の架設>
道路縦断方向に所定間隔Lp=2016mmで架設された逆T形状の架台91間に、踏板92(一例としてアルミ縞板製中空箱蓋形状:長さ2000×幅500×高さ100mm)を、道路横断方向に2本架設して通路幅0.6m以上が確保される。逆T形状の架台91間に架設された踏板92の両端部は、道路縦断方向にボルトにて容易に架台91に支持固定させる。道路横断方向の法尻側に配置する踏板92には、事前に
図4に示すケーブルラック101が組み込まれている。
図4及び
図5(d)を参照。
なお、踏板92の法尻側端部に転落防止柵8を事前に取り付けておくことも可能である
【0046】
<管路スペースへの管路の配管>
踏板92を架台91に架設後に、該ケーブルラック101に管路102を配管する。
図4及び
図5(e)を参照。
なお、既存ケーブル7は、事前に移設を完了しておく。
【0047】
<転落防止柵の設置>
転落防止柵8を、防護柵5の機能を阻害しないように、該防護柵5からの離隔L=1100mmを確保して、避難兼用点検通路9の法尻側端部に設置する。
図5(e)を参照。
なお、上記記載の通り法尻側踏板92に事前に取り付けておくことも可能である。
【0048】
上記に記載した防護柵外における運転手等の転落防止対策工法は、盛土法面の道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bを、道路縦断方向に所定間隔で打設し、架台91を、道路横断方向の法尻杭93A及び法肩杭93Bの各杭頭間に、道路縦断方向に所定間隔で架設し、管路スペース100を下方に備えた踏板92を、所定間隔で架設された架台91間に架設して、避難兼用点検通路9を形成し、転落防護柵8を、防護柵5の機能を阻害しないように、防護柵5からの離隔を確保して避難兼用点検通路9の法尻側端部に設けるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 高速道路
11 盛土
12 盛土法面
2 走行車線
3 本線路肩
4 点検通路
5 防護柵(ガードレール)
6 保護路肩
7 既存ケーブル
8 転落防止柵
9 避難兼用点検通路
91 架台
92 踏板
93 杭
93S 杭打設位置
93A 法尻杭
93B 法肩杭
100 管路スペース
101 ケーブルラック
102 管路
200 杭打設械