(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044987
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20230327BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
B23Q3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153145
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森分 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】宮島 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】木邑 達男
(72)【発明者】
【氏名】青木 省二
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002HH06
3C029AA40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工具マガジンに把持された工具ホルダの姿勢不良をより正確に検出する。
【解決手段】工具交換装置1は、外周部に工具ホルダ30が着脱可能に把持される工具マガジン10と、工具マガジン10よりも外周側に配置されたレーザ測長器20と、を備える。工具ホルダ30は、工具マガジン10に把持されたときに外周側に臨む対面部33に、楕円球状に形成された溝部40が設けられる。溝部40は、工具マガジン10の軸方向と周方向とで、深さ方向への曲率が互いに異なる。レーザ測長器20は、工具マガジン10に把持された工具ホルダ30における溝部40の内面に対してレーザ光を照射することによって、内面の深さ方向変位drを検出する。工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向の少なくとも一方に変位したとき、内面が深さ方向に変位する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に工具ホルダが着脱可能に把持される工具マガジンと、
前記工具マガジンよりも外周側に配置された光測長器と、を備え、
前記工具ホルダは、前記工具マガジンに把持されたときに前記外周側に臨む部分に、楕円球状に形成された溝部が設けられており、
前記溝部は、前記工具マガジンの軸方向と周方向とで、深さ方向への曲率が互いに異なっており、
前記光測長器は、前記工具マガジンに把持された前記工具ホルダにおける前記溝部の内面に対して光を照射することによって、前記内面の深さ方向変位を検出しており、
前記工具ホルダが前記工具マガジンに対して前記軸方向及び前記周方向の少なくとも一方に変位したとき、前記内面が前記深さ方向に変位する、工具交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具交換装置において、
前記溝部は、前記周方向における前記深さ方向への曲率の方が、前記軸方向における前記深さ方向への曲率よりも小さい、工具交換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工具交換装置において、
前記深さ方向変位に基づいて、前記工具ホルダの前記工具マガジンに対する変位方向を判定する制御部を備える、工具交換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の工具交換装置において、
前記制御部は、前記溝部の中心を基準とした場合における、前記深さ方向変位と、前記工具ホルダの前記工具マガジンに対する軸方向変位及び周方向変位と、の関係を表す第1モデルを有し、
前記制御部は、前記第1モデルに基づいて、OKゾーン及び判定ゾーンを設定し、
前記OKゾーンは、前記深さ方向変位がゼロを含む領域であり、
前記判定ゾーンは、前記深さ方向変位が少なくとも前記OKゾーンよりも大きな領域であり、
前記制御部は、前記深さ方向変位が前記OKゾーンに含まれるとき、前記変位方向の判定を行わず、前記深さ方向変位が前記判定ゾーンに含まれるとき、前記変位方向を判定する、工具交換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の工具交換装置において、
前記制御部は、前記第1モデルに基づいて、NGゾーンをさらに設定し、
前記NGゾーンは、前記深さ方向変位が前記判定ゾーンよりも大きな領域であり、
前記制御部は、前記深さ方向変位が前記OKゾーンに含まれるとき、前記工具交換装置の作動を続行し、前記深さ方向変位が前記判定ゾーンに含まれるとき、前記変位方向を判定するとともに前記変位方向に応じた処置を行い、前記深さ方向変位が前記NGゾーンに含まれるとき、前記工具交換装置の作動を停止し、
前記変位方向に応じた処置は、前記工具ホルダの前記工具マガジンに対する姿勢修正を含む、工具交換装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1つに記載の工具交換装置において、
前記制御部は、前記工具マガジンの回転角度と前記深さ方向変位との関係を表す第2モデルに基づいて、前記変位方向を判定する、工具交換装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1つに記載の工具交換装置において、
前記制御部は、前記変位方向が前記軸方向であると判定された場合には、前記工具マガジンを正逆交互に小刻みに回転させる一方、前記変位方向が前記周方向であると判定された場合には、前記工具マガジンを前者に比較して大きく回転させた後に停止させる、ように前記工具マガジンの回転を制御する、工具交換装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1つに記載の工具交換装置において、
前記工具マガジンには、基準部が設けられており、
前記光測長器は、前記基準部に対して光を照射することによって、前記基準部の変位を検出しており、
前記制御部は、前記基準部の変位に基づいて、前記内面の前記深さ方向変位をゼロセットする、工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の工作機械の工具交換装置は、鉛直方向に延びる中心軸を有し、中心軸回りに回転可能な円板状のマガジン本体と、マガジン本体の外周部において周方向に配設され、工具ホルダが着脱可能に構成された多数のチャックと、を有する工具マガジンを備える。チャックは、工具ホルダの着脱方向がマガジン本体の径方向に対して所定角度だけ傾いている。かかる構成によれば、工具マガジンがコラム等と接触することなく、工具マガジンの外径を大きくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工具交換時間を短縮するために、スピンドルと工具マガジンとの間で工具ホルダを高速で受け渡したり、工具マガジンを高速で回転させたりすることがある。このとき、工具ホルダが工具マガジンに対して位置ずれしたり傾いたりすることがある。このような工具ホルダの工具マガジンに対する姿勢不良は、工具ホルダのスピンドルへの装着不良等の原因になり得る。
【0005】
詳細には、被加工物を生産するためには、多くの工程を経る必要があり、1つのワークに対して、頻繁に工具交換を行う必要がある。工具交換時間は、生産性と直結しており、全体の生産速度及び生産個数に、多大な影響を与える。工具交換時間は、全体の生産時間の1/2以上を占めることもある。したがって、工具交換時間の短縮は、生産性の観点から、非常に重要である。
【0006】
工具交換時間を短縮するためには、スピンドルと工具マガジンとの間における工具ホルダの受け渡しを、高速で行うことが望まれる。しかしながら、工具マガジンにおける工具ホルダの把持部(チャック)は、一般的に、シンプルな構造にあり、工具ホルダの姿勢を拘束できない。
【0007】
このため、工具マガジンに把持された工具ホルダは、姿勢不良を起こしやすい。工具ホルダの工具マガジンに対する姿勢不良は、工具ホルダのスピンドルへの装着不良(例えば、芯不良や傾き等)の原因となり、最終的には、加工精度不良の原因となり得る。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工具マガジンに把持された工具ホルダの姿勢不良をより正確に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る工具交換装置は、外周部に工具ホルダが着脱可能に把持される工具マガジンと、上記工具マガジンよりも外周側に配置された光測長器と、を備え、上記工具ホルダは、上記工具マガジンに把持されたときに上記外周側に臨む部分に、楕円球状に形成された溝部が設けられており、上記溝部は、上記工具マガジンの軸方向と周方向とで、深さ方向への曲率が互いに異なっており、上記光測長器は、上記工具マガジンに把持された上記工具ホルダにおける上記溝部の内面に対して光を照射することによって、上記内面の深さ方向変位を検出しており、上記工具ホルダが上記工具マガジンに対して上記軸方向及び上記周方向の少なくとも一方に変位したとき、上記内面が上記深さ方向に変位する。
【0010】
かかる構成によれば、溝部が楕円球状に形成されているので、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向及び周方向の少なくとも一方に変位したとき、すなわち工具ホルダの工具マガジンに対する姿勢不良が生じたとき、溝部の内面は、工具マガジンの径方向、すなわち溝部の深さ方向に変位する。
【0011】
ここで、工具ホルダは、工具マガジンに対して深さ方向(径方向)にほとんど変位しない。工具ホルダは、通常、肉厚が全周に亘って厚い円筒形状であり、且つ、工具マガジンにおける把持点に位置するので、熱変形や把持変形が起きにくい。また、工具マガジンは、通常、円盤状である。このため、工具ホルダは、工具マガジンに対して、深さ方向(径方向)に変位しにくい。
【0012】
つまり、光測長器は、溝部の内面の深さ方向変位を検出することを通じて、工具ホルダの工具マガジンに対する軸方向変位及び周方向変位を含む変位量を検出する。
【0013】
さらに、溝部の深さ方向への曲率が軸方向と周方向とで互いに異なるので、光測長器により検出される深さ方向変位の大きさは、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向に変位した場合と周方向に変位した場合とで、互いに異なる。具体的には、軸方向及び周方向のうち、深さ方向への曲率の大きい方に工具ホルダが変位したとき、深さ方向変位は比較的小さい。一方、軸方向及び周方向のうち、深さ方向への曲率の小さい方に工具ホルダが変位したとき、深さ方向変位は比較的大きい。
【0014】
このように、光測長器により検出される深さ方向変位の大きさに基づいて、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、推定することができる。
【0015】
したがって、工具マガジンに把持された工具ホルダの姿勢不良をより正確に検出することができる。
【0016】
一実施形態では、上記溝部は、上記周方向における上記深さ方向への曲率の方が、上記軸方向における上記深さ方向への曲率よりも小さい。
【0017】
工具ホルダの工具マガジンに対する周方向変位は、通常、工具ホルダの工具マガジンに対する軸方向変位よりも、検出することが難しい。具体的には、工具マガジンの回転半径が小さい場合、工具マガジンの回転を周方向変位に含んでしまうので、周方向変位を検出することが難しくなる。また、工具ホルダが円筒状の場合、工具ホルダの側面のR形状を周方向変位に含んでしまうので、周方向変位を検出することが難しくなる。
【0018】
かかる構成によれば、溝部は、周方向における深さ方向への曲率が小さくなるように、形成されている。これにより、工具ホルダが工具マガジンに対して周方向に変位したとき、光測長器により検出される深さ方向変位が大きく現れるので、周方向変位を検出しやすくなる。
【0019】
一実施形態では、上記深さ方向変位に基づいて、上記工具ホルダの上記工具マガジンに対する変位方向を判定する制御部を備える。
【0020】
かかる構成によれば、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、ユーザが手計算しなくても、制御部によって知ることができる。
【0021】
一実施形態では、上記制御部は、上記溝部の中心を基準とした場合における、上記深さ方向変位と、上記工具ホルダの上記工具マガジンに対する軸方向変位及び周方向変位と、の関係を表す第1モデルを有し、上記制御部は、上記第1モデルに基づいて、OKゾーン及び判定ゾーンを設定し、上記OKゾーンは、上記深さ方向変位がゼロを含む領域であり、上記判定ゾーンは、上記深さ方向変位が少なくとも上記OKゾーンよりも大きな領域であり、上記制御部は、上記深さ方向変位が上記OKゾーンに含まれるとき、上記変位方向の判定を行わず、上記深さ方向変位が上記判定ゾーンに含まれるとき、上記変位方向を判定する。
【0022】
かかる構成によれば、光測長器により検出される深さ方向変位がゼロ付近の領域を、OKゾーンとして、変位方向を判定しない。これにより、変位方向の判定において、軸方向及び周方向における曲率の重なり(干渉)部分を排除することができる。軸方向の曲率と周方向の曲率とは、深さ方向変位が大きくなるに従ってその差が広がって、互いに干渉しなくなる(重ならなくなる)。光測長器により検出される深さ方向変位が少なくともOKゾーンよりも大きな領域、すなわち、軸方向及び周方向における曲率が互いに干渉しない領域を、判定ゾーンとして、変位方向を判定する。これにより、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、より正確に、推定するこができる。
【0023】
一実施形態では、上記制御部は、上記第1モデルに基づいて、NGゾーンをさらに設定し、上記NGゾーンは、上記深さ方向変位が上記判定ゾーンよりも大きな領域であり、上記制御部は、上記深さ方向変位が上記OKゾーンに含まれるとき、上記工具交換装置の作動を続行し、上記深さ方向変位が上記判定ゾーンに含まれるとき、上記変位方向を判定するとともに上記変位方向に応じた処置を行い、上記深さ方向変位が上記NGゾーンに含まれるとき、上記工具交換装置の作動を停止し、上記変位方向に応じた処置は、上記工具ホルダの上記工具マガジンに対する姿勢修正を含む。
【0024】
かかる構成によれば、光測長器により検出される深さ方向変位がOKゾーンに含まれるとき、工具ホルダの工具マガジンに対する変位(位置ずれ)は小さいので、工具マガジンをそのまま作動する。光測長器により検出される深さ方向変位がNGゾーンに含まれるとき、工具ホルダの工具マガジンに対する変位(位置ずれ)はもはや修正不能な量なので、工具マガジンを停止する。光測長器により検出される深さ方向変位が判定ゾーンに含まれるとき、工具ホルダの工具マガジンに対する変位(位置ずれ)は修正可能な量かもしれないので、工具ホルダの工具マガジンに対する変位方向を判定した後に、判定された変位方向に応じた処置を行い、場合によっては、工具ホルダを姿勢修正する。このように、深さ方向変位に応じて各ゾーンを設定することによって、光測長器により検出される深さ方向変位に応じた適切な対応をとることができる。
【0025】
一実施形態では、上記制御部は、上記工具マガジンの回転角度と上記深さ方向変位との関係を表す第2モデルに基づいて、上記変位方向を判定する。
【0026】
かかる構成によれば、第2モデルの態様は、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向に変位した場合と周方向に変位した場合とで、互いに異なる。したがって、得られた第2モデルの態様に基づいて、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、簡単に判定することができる。
【0027】
一実施形態では、上記制御部は、上記変位方向が上記軸方向であると判定された場合には、上記工具マガジンを正逆交互に小刻みに回転させる一方、上記変位方向が上記周方向であると判定された場合には、上記工具マガジンを前者に比較して大きく回転させた後に停止させる、ように上記工具マガジンの回転を制御する。
【0028】
かかる構成によれば、工具ホルダの工具マガジンに対する変位方向に応じて、最適な姿勢修正(位置調整)方法を適用することができる。
【0029】
一実施形態では、上記工具マガジンには、基準部が設けられており、上記光測長器は、上記基準部に対して光を照射することによって、上記基準部の変位を検出しており、上記制御部は、上記基準部の変位に基づいて、上記内面の上記深さ方向変位をゼロセットする。
【0030】
かかる構成によれば、工具マガジンの回転に従って光測長器が基準部の変位を検出する度に、溝部の内面の深さ方向変位のゼロ点を更新することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、工具マガジンに把持された工具ホルダの姿勢不良をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、工具交換装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII矢視図であって、工具マガジンに把持された工具ホルダを示す図である。
【
図4】
図4は、第1モデルを示すグラフであって、深さ方向変位と軸方向変位及び周方向変位との関係を表す。
【
図5】
図5は、工具ホルダが工具マガジンに対して軸方向に変位した場合における第2モデルを示すグラフであって、工具マガジンの回転角度と深さ方向変位との関係を表す。
【
図6】
図6は、工具ホルダが工具マガジンに対して周方向に変位した場合における第2モデルを示すグラフであって、工具マガジンの回転角度と深さ方向変位との関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0034】
図1は、工具交換装置1を示す。
図1に示すように、工具交換装置1は、例えばNCフライス盤等の工作機械に適用される。工具交換装置1は、モータ2と、工具マガジン10と、光測長器としてのレーザ測長器20と、制御部21と、を備える。工具マガジン10は、中心軸C回りに回転可能な円板状である。工具マガジン10の外周部には、工具Tを保持するための工具ホルダ30が、着脱可能に把持される。以下、工具マガジン10を基準として、工具マガジン10の軸方向をZ、工具マガジン10の径方向をR、工具マガジン10の周方向をθで示す。
【0035】
工具マガジン10は、マガジン本体11と、複数の工具把持部としてのチャック12と、を有する。マガジン本体11は、円板状に形成されいる。マガジン本体11は、モータ2の駆動軸に連結されている。マガジン本体11は、モータ2の駆動によって、中心軸C回りに回転可能である。
【0036】
各チャック12は、マガジン本体11の外周部において、周方向に等間隔で配列されている。各チャック12は、軸方向に見て略U字状に形成されており、その開口が外周側へ向くようにマガジン本体11に固定されている。各チャック12には、工具ホルダ30が着脱可能に把持される。
【0037】
図2は、
図1におけるII矢視図であって、工具マガジン10のチャック12に把持された工具ホルダ30を示す。
図2に示すように、各チャック12は、一対のアーム13によって周方向両側から工具ホルダ30を挟むようにして、工具ホルダ30を把持する。工具ホルダ30は、例えば略筒状に形成されている。
【0038】
各アーム13の周方向内側には、テーパ状の凸部(爪部)14が設けられている。工具ホルダ30の外周面31には、凸部14に対応するテーパ状の凹部(溝部)32が設けられている。凸部14と凹部32とは、互いに嵌合する。
【0039】
図1に示すように、工作機械の工具スピンドル(主軸)3は、工具マガジン10と平行に配置されている。工具スピンドル3には、工具ホルダ30が着脱可能に装着される。工具スピンドル3は、工具Tを保持した状態の工具ホルダ30を回転させることによって、ワーク(図示せず)の加工を行う。
【0040】
工具交換装置1は、工具マガジン10と工具スピンドル3との間で、工具ホルダ30の受け渡しを行う。詳細には、モータ2の駆動により工具マガジン10が回転することで、チャック12が、受け渡し位置P1に移動する。一方、工具スピンドル3も、NC軸等によって、加工位置(図示せず)から受け渡し位置P1に移動する。
【0041】
工具ホルダ30は、受け渡し位置P1において、工具マガジン10と工具スピンドル3との間で、受け渡される。詳細には、工具スピンドル3に装着された工具ホルダ30が空のチャック12に把持(装着)されるとともに、別のチャック12に把持(装着)された工具ホルダ30が離脱して工具スピンドル3に装着される。
【0042】
図1,2に示すように、工具ホルダ30は、工具マガジン10のチャック12に把持されたときに外周側(径方向外側)に臨む対面部(部分)33に、溝部40が設けられている。なお、対面部33は、仕上げ加工されている。
【0043】
図2に示すように、溝部40は、工具マガジン10の径方向を深さ方向とするように、楕円球状に形成されている。溝部40の開口縁41の輪郭は、軸方向に延びる長軸及び周方向に延びる短軸を有する楕円形状である。詳細には、溝部40の開口縁41は、軸方向に延びる2つのR50曲線及び周方向に延びる2つのR12曲線で、構成されている。
【0044】
図3は、溝部40を立体的に示す。溝部40は、軸方向と周方向とで、深さ方向(径方向)への曲率が互いに異なる。詳細には、溝部40は、周方向における深さ方向への曲率の方が、軸方向における深さ方向への曲率よりも小さい。
【0045】
より詳細には、溝部40の軸方向における深さ方向への曲率は、R50である。溝部40の周方向における深さ方向への曲率は、R12である。溝部40の内面42は、軸方向において、中央部で最も深くなる一方、両端部で最も浅く(ゼロに)なる。同様に、溝部40の内面42は、周方向において、中央部で最も深くなる一方、両端部で最も浅く(ゼロに)なる。ここで、内面42とは、溝部40の内側面及び内底面を構成する球面をいう。
【0046】
溝部40の中心Oは、溝部40の軸方向における中央部且つ周方向における中央部に位置する。換言すると、溝部40の中心Oは、真ん中のR50曲線と真ん中のR12曲線との交点である。溝部40の中心Oは、溝部40における最奥部である。
【0047】
図1に示すように、レーザ測長器20は、工具マガジン10よりも外周側(径方向外側)に配置されている。
図1,2に示すように、レーザ測長器20は、工具マガジン10のチャック12に把持された工具ホルダ30における溝部40の内面42の中心Oに対して、径方向(深さ方向)にレーザ光(Lで示す)を照射する。
【0048】
詳細には、
図1に示すように、モータ2の駆動により工具マガジン10が回転することで、チャック12に把持された工具ホルダ30が測長位置P2に移動する。工具ホルダ30の対面部33(溝部40)は、測長位置P2において、レーザ測長器20に臨む。測長位置P2において、工具ホルダ30とレーザ測長器20との離間方向は、径方向である。
【0049】
レーザ測長器20は、溝部40の内面42にレーザ光を照射したときの反射光に基づいて、溝部40の内面42の深さ方向(径方向)における基準位置からの距離である深さ方向変位(径方向変位)drを、検出する。なお、基準位置は、工具交換装置1の設置時に初期設定される。
【0050】
図1に示すように、工具マガジン10のチャック12の先端には、基準部Sが設けられている。レーザ測長器20は、基準部Sに対してレーザ光を照射する。基準部Sは、仕上げ面、溝部又はマーカ部等で構成されている。基準部Sは、チャック12ではなく、マガジン本体11に設けてもよい。また、基準部Sは、工具マガジン10に取り付けられた測定用治具等に設けられてもよい。
【0051】
詳細には、モータ2の駆動により工具マガジン10が回転することで、基準部Sが測長位置P2に移動する。基準部Sは、測長位置P2において、レーザ測長器20に臨む。測長位置P2において、基準部Sとレーザ測長器20との離間方向は、径方向である。
【0052】
レーザ測長器20は、基準部Sにレーザ光を照射したときの反射光に基づいて、基準部Sの深さ方向変位(径方向変位、図示せず)を検出する。
【0053】
制御部21は、例えばマイクロコンピュータ及びプログラムで構成される。制御部21は、モータ2及びレーザ測長器20に接続されている。
【0054】
制御部21は、基準部Sの深さ方向変位(径方向変位)に基づいて、溝部40の内面42の深さ方向変位(径方向変位)drをゼロセットする。すなわち、制御部21は、溝部40の内面42の深さ方向(径方向)における基準位置(ゼロ点)を更新する。
【0055】
溝部40が楕円球状に形成されているので、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して基準位置から軸方向及び周方向の少なくとも一方に変位したとき、すなわち工具ホルダ30の工具マガジン10に対する姿勢不良が生じたとき、溝部40の内面42は深さ方向(径方向)に変位する。
【0056】
ここで、工具ホルダ30は、工具マガジン10に対して深さ方向(径方向)にほとんど変位しない。工具ホルダ30は、通常、肉厚が全周に亘って厚い円筒形状であり、且つ、工具マガジン10における把持点(チャック12)に位置するので、熱変形や把持変形が起きにくい。また、工具マガジン10は、通常、円盤状である。このため、工具ホルダ30は、工具マガジン10に対して、深さ方向(径方向)に変位しにくい。
【0057】
つまり、レーザ測長器20は、溝部40の内面42の深さ方向変位(径方向変位)drを検出すること通じて、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する軸方向変位dz及び周方向変位dθを含む変位量を検出する。
【0058】
さらに、溝部40の深さ方向への曲率が軸方向と周方向とで互いに異なるので、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drの大きさは、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向に変位した場合と周方向に変位した場合とで、互いに異なる。
【0059】
具体的には、深さ方向への曲率の大きな軸方向に工具ホルダ30が変位したとき、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drは、比較的小さい。一方、深さ方向への曲率の小さな周方向に工具ホルダ30が変位したとき、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drは、比較的大きい。
【0060】
制御部21は、レーザ測長器20により検出された深さ方向変位(径方向変位)drに基づいて、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向(軸方向or周方向)を、判定する。
【0061】
制御部21は、第1モデルM1を有する。第1モデルM1は、
図4に示すように、溝部40の中心(最奥部)Oを基準とした場合において、レーザ測長器20により検出される溝部40の内面42の深さ方向変位(径方向変位)drと、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する軸方向変位dz及び周方向変位dθと、の関係を表す。第1モデルM1は、溝部40の内面42を転写することで得られる。
【0062】
図4に示すように、第1モデルM1は、R50曲線及びR12曲線を含む。横軸は、軸方向変位dz[mm]及び周方向変位dθ[mm]である。軸方向変位dzは、R50曲線に対応する。周方向変位dθは、R12曲線に対応する。縦軸は、深さ方向変位dr[μm]である。
【0063】
図4に示すように、制御部21は、第1モデルM1に基づいて、深さ方向変位(径方向変位)drに応じて、「OKゾーン」、「判定(Judgment)ゾーン」及び「NGゾーン」を設定する。
【0064】
OKゾーンは、深さ方向変位(径方向変位)drがゼロを含む領域である。判定ゾーンは、深さ方向変位drが少なくともOKゾーンよりも大きな領域である。NGゾーンは、深さ方向変位drが判定ゾーンよりも大きな領域である。
【0065】
本実施形態では、深さ方向変位drが、3μm未満のときにOKゾーン、3μm以上25μm未満のときに判定ゾーン、25μm以上のときにNGゾーンとなるように設定されている。
【0066】
また、制御部21は、第1モデルM1に基づいて、軸方向変位dz及び周方向変位dθに応じて、「OKゾーン」、「判定(修正)ゾーン」及び「NGゾーン」が設定されている。本実施形態では、軸方向変位dz及び周方向変位dθが、0.5mm未満のときにOKゾーン、0.5mm以上0.8mm未満のときに判定ゾーン、0.8mm以上のときにNGゾーンとなるように設定されている。
【0067】
制御部21は、第2モデルM2を有する。第2モデルM2は、
図5,6に示すように、工具マガジン10の回転角度Φと、深さ方向変位(径方向変位)drと、の関係を表す。
【0068】
図5は、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向にのみ変位した場合を示す。横軸は、工具マガジン10の回転角度Φ[°]である。縦軸は、深さ方向変位dr[μm]である。
図5に示すように、第2モデルM2において、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向にのみ変位した場合に得られるグラフ(曲線)M2zは、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して全く変位していない場合に得られるグラフ(曲線)M2oに対して、縦軸方向に単に平行移動しただけある(深さ方向変位drが単に変化しただけである)。
【0069】
図6は、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して周方向にのみ変位した場合を示す。横軸は、工具マガジン10の回転角度Φ[°]である。縦軸は、深さ方向変位dr[μm]である。
図6に示すように、第2モデルM2において、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して周方向にのみ変位した場合に得られるグラフ(曲線)M2θは、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して全く変位していない場合に得られるグラフ(曲線)M2oに対して、横軸方向に単に平行移動しただけである。
【0070】
なお、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向の両方に変位した場合、
図5,6に示すグラフM2z,M2θ同士を合成したグラフが得られる。
【0071】
制御部21は、第2モデルM2に基づいて、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向(軸方向or周方向)を、判定する。
【0072】
制御部21は、変位方向が軸方向であると判定された場合(
図5参照)には、工具マガジン10(モータ2)の回転を制御することによって、工具マガジン10を正逆交互に小刻み(例えば±2°程度)に回転させる。これにより、工具マガジン10及び工具ホルダ30を含む系全体に小さな揺れが起きて、チャック12の一対のアーム13におけるテーパ状の凸部14が、工具ホルダ30の外周面31におけるテーパ状の凹部32に嵌合しやすくなる(
図2参照)。そして、工具ホルダ30は、軸方向に位置調整される。
【0073】
一方、制御部21は、変位方向が周方向であると判定された場合(
図6参照)には、工具マガジン10(モータ2)の回転を制御することによって、工具マガジン10を前者(変位方向が軸方向であると判定された場合)に比較して大きく(例えば90°以上)回転させた後に停止させる。これにより、工具ホルダ30に周方向への慣性力が与えられ、周方向への位置ずれが抑制される。工具ホルダ30が周方向に位置ずれしている場合、工具ホルダ30は、工具マガジン10に保持される上で、しっくりくる位置に移動しやすい。そして、工具ホルダ30は、周方向に位置調整される。
【0074】
深さ方向変位(径方向変位)drがOKゾーンに含まれるとき、すなわち、深さ方向変位drが3μm未満のとき、軸方向変位dz及び周方向変位dθは、0.5mm未満のOKゾーンに含まれる。このとき、制御部21は、変位方向の判定を行わず、工具交換装置1の作動を続行する。なお、深さ方向変位(径方向変位)drがOKゾーンに含まれるときには、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する姿勢に問題がないことが、本願発明者等によって確認されている。
【0075】
深さ方向変位drがNGゾーンに含まれるとき、すなわち、深さ方向変位drが25μm以上のとき、軸方向変位dz及び周方向変位dθは、0.8mm以上のNGゾーンに含まれる。このとき、制御部21は、変位方向の判定を行わず、工具交換装置1の作動を停止する。具体的には、制御部21は、モータ2の駆動を停止することによって、工具マガジン10の回転を停止する。
【0076】
深さ方向変位drが判定ゾーンに含まれるとき、すなわち、深さ方向変位drが3μm以上25μm未満のとき、制御部21は、変位方向を判定するとともに、判定された変位方向に応じた処置を行う。当該変位方向に応じた処置は、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する姿勢修正を含む。
【0077】
深さ方向変位drが判定ゾーンのうち3μm以上5μm未満のとき、制御部21は、変位方向が軸方向であると判定する。そして、制御部21は、工具マガジン10を正逆交互に小刻みに回転させることによって、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する軸方向への姿勢修正(位置調整)を行う。制御部21は、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがOKゾーンに含まれるようになるまで、これを数回繰り返す。
【0078】
なお、繰り返しの結果、深さ方向変位drがOKゾーンに含まれれば、通常動作へ移行する一方、深さ方向変位drがOKゾーンに含まれなければ(姿勢修正できなければ)、工具マガジン10の回転を停止する(工具交換装置1の作動を停止する)。繰り返し回数は、任意に設定可能である。
【0079】
深さ方向変位drが判定ゾーンのうち5μm以上13μm未満のとき、制御部21は、変位方向が周方向であると判定する。そして、制御部21は、工具マガジン10を大きく回転させた後に停止させることによって、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する周方向への姿勢修正(位置調整)を行う。制御部21は、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがOKゾーンに含まれるようになるまで、これを数回繰り返す。
【0080】
なお、深さ方向変位drが5μm以上13μm未満のとき、周方向にのみ誤差が発生していると仮定すると、最大取付誤差は0.8°であり、妥当な範囲である。一方、深さ方向変位drが5μm以上13μm未満のとき、軸方向にのみ誤差が発生していると仮定すると、最大取付誤差は0.8mmであり、工具マガジン10のチャック12のアーム13と工具ホルダ30とのテーパ嵌合(凸部14、凹部32)の観点から、考えられない誤差量となる。この場合、テーパ状の凸部14及び凹部32の片方にゴミが付着したものと断定できる。このとき、工具ホルダ30は工具マガジン10のアーム13に単に挟まれているだけの状態であり、軸方向に(あるいは周方向にも)かなりの誤差が発生していると考えられる。
【0081】
深さ方向変位drが判定ゾーンのうち13μm以上25μm未満のとき、制御部21は、先ず、第2モデルM2に基づいて、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向を、判定する。そして、制御部21は、第2モデルM2に基づいて変位方向が周方向であると判定した場合、工具マガジン10を大きく回転させた後に停止させることによって、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する周方向への姿勢修正(位置調整)を行う。制御部21は、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがOKゾーンに含まれるようになるまで、これを数回繰り返す。一方、制御部21は、第2モデルM2に基づいて変位方向が軸方向であると判定した場合、モータ2の駆動を停止することによって、工具マガジン10の回転を停止する(工具交換装置1の作動を停止する)。
【0082】
なお、変位方向(誤差方向)をより正確に判定する方法として、以下の方法がある。工具マガジン10を楕円球状の溝部40の周方向における曲率R12よりも大きく旋回(回転)させることによって、溝部40の周方向における楕円形状を、線で認識することができる。これにより、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する取付位置をより正確に把握することができるとともに、誤差方向(軸方向or周方向)を特定することができる。
【0083】
以上、本実施形態によれば、溝部40の深さ方向(径方向)への曲率が軸方向と周方向とで互いに異なるので、
図4に示すように、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位(径方向変位)drの大きさは、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向に変位した場合と周方向に変位した場合とで、互いに異なる。
【0084】
このように、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drの大きさに基づいて、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、推定することができる。
【0085】
したがって、工具マガジン10に把持された工具ホルダ30の姿勢不良をより正確に検出することができる。
【0086】
工具ホルダ30の工具マガジン10に対する周方向変位dθは、通常、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する軸方向変位dzよりも、検出することが難しい。具体的には、工具マガジン10の回転半径が小さい場合、工具マガジン10の回転を周方向変位dθに含んでしまうので、周方向変位dθを検出することが難しくなる。また、工具ホルダ30が円筒状の場合、工具ホルダ30の側面のR形状を周方向変位dθに含んでしまうので、周方向変位dθを検出することが難しくなる。
【0087】
本実施形態によれば、溝部40は、周方向における深さ方向への曲率が小さくなるように形成されている(R12)。これにより、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して周方向に変位したとき、
図4に示すように、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位dzが大きく現れるので、周方向変位dθを検出しやすくなる。
【0088】
工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、ユーザが手計算しなくても、制御部21によって知ることができる。
【0089】
レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがゼロ付近の領域を、OKゾーンとして、変位方向を判定しない。これにより、変位方向の判定において、軸方向及び周方向における曲率の重なり(干渉)部分を排除することができる。軸方向の曲率と周方向の曲率とは、
図4に示すように、深さ方向変位drが大きくなるに従ってその差が広がって、互いに干渉しなくなる(重ならなくなる)。レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drが少なくともOKゾーンよりも大きな領域、すなわち、軸方向及び周方向における曲率が互いに干渉しない領域を、判定ゾーンとして、変位方向を判定する。これにより、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、より正確に、推定するこができる。
【0090】
レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがOKゾーンに含まれるとき、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位(位置ずれ)は小さいので、工具交換装置1をそのまま作動する。レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drがNGゾーンに含まれるとき、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位(位置ずれ)はもはや修正不能な量なので、工具交換装置1を停止する。レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drが判定ゾーンに含まれるとき、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位(位置ずれ)は修正可能な量かもしれないので、工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向を判定した後に、判定された変位方向に応じた処置を行い、場合によっては、工具ホルダ30を姿勢修正する。このように、レーザ測長器20により検出される深さ方向変位drに応じて各ゾーンを設定することによって、深さ方向変位drに応じた適切な対応をとることができる。
【0091】
図5,6に示すように、第2モデルM2の態様は、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向に変位した場合と周方向に変位した場合とで、互いに異なる。したがって、得られた第2モデルM2の態様に基づいて、工具ホルダ30が工具マガジン10に対して軸方向及び周方向のいずれに変位したのか(あるいは両方に変位したのか)を、簡単に知ることができる。
【0092】
工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向に応じて、最適な姿勢修正(位置調整)方法を適用することができる。
【0093】
工具マガジン10の回転に従ってレーザ測長器20が基準部Sの変位を検出する度に、溝部40の内面42の深さ方向変位drのゼロ点(基準位置)を更新することができる。
【0094】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0095】
工具ホルダ30の工具マガジン10に対する変位方向の判定、又は工具マガジン10の回転制御による工具ホルダ30の姿勢修正は、制御部21の命令によらず、ユーザ自身がマニュアルで行ってもよい。
【0096】
本実施形態では、溝部40の軸方向における深さ方向への曲率をR50、溝部40の周方向における深さ方向への曲率をR12としたが、これに限定されない。例えば、溝部40の軸方向における深さ方向への曲率をR12、溝部40の周方向における深さ方向への曲率をR50としてもよい。また、曲率の数値は、任意に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、工具交換装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0098】
R 深さ方向(径方向)
Z 軸方向
θ 周方向
dr 深さ方向変位(径方向変位)
dz 軸方向変位
dθ 周方向変位
M1 第1モデル
M2 第2モデル
R50 曲率(曲線)
R12 曲率(曲線)
Φ 回転角度
OK OKゾーン
NG NGゾーン
JUD 判定ゾーン
L レーザ光
T 工具
S 基準部
O 中心
1 工具交換装置
3 工具スピンドル
10 工具マガジン
11 マガジン本体
12 チャック
20 レーザ測長器(光測長器)
21 制御部
30 工具ホルダ
33 対面部(部分)
40 溝部
41 開口縁
42 内面