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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004499
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】カットバケット
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20230110BHJP
   E02D 11/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
E02D13/00
E02D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106200
(22)【出願日】2021-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】517150641
【氏名又は名称】一般社団法人先端地盤技術グループ
(71)【出願人】
【識別番号】512256454
【氏名又は名称】KSコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】木村 英明
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050DB08
(57)【要約】
【課題】既存杭を掘削した跡の空間の底面を平坦化することにより、カットドラムの内側に取り込んだコンクリートの破砕片や切削済みの鉄筋片を、安全且つ確実に掬い出せるカットバケットを提供する。
【解決手段】カットドラム2と、該カットドラム2の内側2aの上部において径方向に沿って設けられ、上向きに屈曲しているアーム4aと、該アーム4aの底面に沿って取り付けられた複数のアームビットv1~v9と、を備え、前記複数のアームビットv1~v9ごとの先端が仮想の同一平面Fに位置している、カットバケット1a。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットドラムと、
上記カットドラムの内側の上部において径方向に沿って設けられ、上向きに屈曲しているか、あるいは、水平方向に直線状であるアームと、
上記アームの底面に沿って取り付けられた複数のアームビットと、を備えたカットバケットであって、
上記複数のアームビットごとの先端が仮想の同一平面に位置している、
カットバケット。
【請求項2】
前記仮想の同一平面は、前記カットドラムの中心軸に対して直交している、
請求項1に記載のカットバケット。
【請求項3】
前記アームビットは前記アームの中心に対して非対称に配置される、請求項1又は2に記載のカットバケット。
【請求項4】
前記アームビットは前記中心で分割される第1部分と第2部分とを備え、前記第1部分に第1-1アームビットと第1-2アームビットが配置され、前記第2部分に第2-1アームビットが配置され、
前記中心から前記第1-1アームビットまでの第1-1距離<前記中心から前記2-1アームビットまでの第2-1距離<前記中心から前記第1-2アームビットまでの第1-2距離である、
請求項3に記載のカットバケット。
【請求項5】
前記複数のアームビットは、それぞれ前記カットドラムの中心軸に対して、異なる傾斜角度で前記アームの底面に取り付けられている、
請求項1~4のいずれかに記載のカットバケット。
【請求項6】
前記複数のアームビットにおいて、前記カットドラムの中心側に配置されるアームビットは、前記カットドラムの外周側に配置されるアームビットに比べて、前記カットドラムの中心軸との傾斜角度が小さい、
請求項1~5のいずれかに記載のカットバケット。
【請求項7】
上向きに屈曲している前記アームの屈曲点は、前記カットドラムの中心軸から外れている、
請求項1~6のいずれかに記載のカットバケット。
【請求項8】
前記カットドラムの上側にスクリューが取り付けられている、請求項1~7の何れかに記載のカットバケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に垂直姿勢で打設された鉄筋コンクリート製の既存杭を掘削して撤去するために用いられるカットバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
土中の既存杭を、掘削して撤去するため、既存杭と同じ軸方向で且つほぼ同径である円筒形のカットドラムと、このカットドラムの内側の上部に径方向に沿って取り付けた上向きに屈曲するアームと、このアームの底面に交換可能に取り付けた複数のアームビットと、バケットドラムの下端面に交換可能に取り付けた複数のドラム切削ビットと、を備えたカットバケットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成されたカットバケットによれば、土中に打設された既存杭を、容易に且つ低施工費および短工期より、安全に掘削して撤去することが可能となる、とされている。
しかし、前記カットバケットを用いた場合、複数の前記アームビットが側面視で翼板に山形状に配置されているため、既存杭頂面が、円錐形状または上向きの凸形状になり易い。その結果、カットドラムの内側に取り込んだコンクリートの破砕片を、ケリーバーの下端に吊り下げたケーブルリフトシャベル等で掬い出す際に、該シャベルの開閉操作が困難となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3205279号公報(第1~5頁、図1~3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、既存杭を掘削した跡の空間の底面を平坦化することにより、カットドラムの内側に取り込んだコンクリートの破砕を、安全且つ確実に掬い出せるカットバケットを提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、既存杭中に埋設されていた鉄筋の切削面を含む既存杭の頂面をほぼ同一平面となるように、カットドラムの内側上部に複数のアームビットを配置する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明のカットバケットは、カットドラムと、このカットドラムの内側の上部において径方向に沿って設けられ、上向きに屈曲しているか、あるいは、水平方向に直線状であるアームと、かかるアームの底面に沿って取り付けられた複数のアームビットと、を備えたカットバケットであって、
上記複数のアームビットごとの先端が仮想の同一平面に位置している。
【0007】
また、本発明の第2の局面によるカットバケットは、前記仮想の同一平面は前記カットドラムの中心軸に対して直交している。
更に、本発明の第3の局面によるカットバケットは、前記アームビットは前記アームの中心に対して非対称に配置される。
本発明の第4の局面によるカットバケットは、前記アームビットは前記中心で分割される第2部分と第2部分とを備え、前記第1部分に第1-1アームビットと第1-2アームビットが配置され、前記第2部分に第2-1アームビットが配置され、
前記中心から前記第1-1アームビットまでの第1-1距離<前記中心から前記2-1アームビットまでの第2―1距離<前記中心から前記第1-2アームビットまでの第1-2距離である。
【0008】
本発明の第5の局面によるカットバケットは、前記複数のアームビットは、それぞれ前記カットドラムの中心軸に対して、異なる傾斜角度で前記アームの底面に取り付けられている。
【0009】
また、本発明の第6の局面によるカットバケットは、前記複数のアームビットにおいて、前記カットドラムの中心側に配置されるアームビットは、前記カットドラムの外周側に配置されるアームビットに比べて、前記カットドラムの中心軸との傾斜角度が小さい。
加えて、本発明の第7の局面によるカットバケットは、上向きに屈曲している前記アームの屈曲点は、前記カットドラムの中心軸から外れている。
本発明の第8の局面によるカットバケットは、前記カットドラムの上側にスクリューが取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
前記本発明のカットバケットによれば、前記複数のアームビットごとの先端が仮想の同一平面に位置しているため、既存杭の頂面(底面)が、複数のアームビットの先端ごとの位置に対応した平坦面状となり易く、前記第2の局面のカットバケットによれば、前記頂面が水平面状になり易い。その結果、ケリーバーの下端に吊り下げたパワーシャベルなどによって、前記カットドラムの内側に取り込んだコンクリートの破砕片を、容易、確実、且つ安全に地表側へ掬い出すことが可能となる。
【0011】
第3の局面のカットバケットによれば、アームの中心に対してアームビットが非対称に配置されるため、各アームビットが既存杭の頂面に対して異なる部位に当接し、重複することがない。これにより、効率よく既存杭の頂面を破壊できることとなる。
第4の局面のカットバケットによれば、アームの回転中心からみたとき、第1-1アームビットの回転軌跡と第1-2アームビットの回転軌跡との間に第2―1アームビットの回転軌跡が位置することとなる。これにより、既存杭の頂面の同じ部位へ異なるアームビットが当接することが防止できる。換言すれば、既存杭の頂面に対して各アームビットをより均等に分配でき、当該頂面の破壊を効率的に行える。
【0012】
前記第5の局面のカットバケットによれば、前記複数のアームビットは、カットドラムの中心軸に対する傾斜角度を適宜選択することにより、アームビットごとの先端を同一平面に容易に配置することが可能となる。
更に、前記第6の局面のカットバケットによれば、アームが中央で上側に屈曲しているとき、複数の前記アームビットは、前記カットドラムの中心側ほど垂直姿勢に近付き、前記カットドラムの外周側ほど該カットドラムの中心軸に対して大きな傾斜角度の姿勢となる。アームビットの先端を仮想平面上に配置させるため、回転速度が比較的遅い中心側のアームビットの軸方向の長さが比較的長くなり、且つ回転速度が比較的速い外周側のアームビットの軸方向の長さが比較的短くなる。これにより、各アームビットの耐久性(寿命)を均一化できる。
【0013】
加えて、前記第7の局面のカットバケットによれば、上向きに屈曲した前記アームは、側面視でその屈曲点が前記カットドラムの中心軸から外れた左右非対称であるため、該アームの底面に沿って取り付ける複数のアームビットの取り付ける形態を、自在で且つ多様に配設することが容易となる。
第8の局面のカットバケットによれば、カットドラム上側にスクリューが取り付けられているので、カットバケットにより破壊された既存杭の材料を容易に排出でき、もって既存杭の除去作業が向上する。
【0014】
尚、前記カットドラムは、厚肉の鋼管からなり、その外径は、撤去すべき既存杭の外径に近似しているか、あるいは既存杭の外径よりも若干小径である。
また、前記カットドラムは、その内側(中空部)の上端側に径方向に沿って架設した複数本の支持梁と、係る支持梁の上面における上記カットドラムの中心付近に上向きに突設したケリーバーソケットとを介して、垂設されたケリーバーの下端に吊り下げられ、且つ昇降可能とされている。
更に、前記上向に屈曲したアームは、側面視で左右対称の山形状の形態のほか、左右非対称のへ字形状を呈する形態も含んでいる。
加えて、前記カットドラムの下端面側には、互いに同じ形状および姿勢である複数のドラムビットが互いに等間隔で且つ交換可能にして取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は、本発明による一実施形態であるカットバケットを示す平面図、(B)は、その垂直断面図。
図2図1(B)のカットバケットにおけるアーム付近を示す部分拡大図。
図3】(A)は、異なる実施形態のカットバケットを示す平面図、(B)は、その垂直断面図。
図4図3(B)のカットバケットにおけるアーム付近を示す部分拡大図。
図5】(A)は、更に異なる実施形態であるカットバケットを示す平面図、(B)は、その垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(A)は、本発明による一実施形態のカットバケット1aを示す平面図、図1(B)は、その垂直断面図、図2は、図1(B)中のアーム4a付近を示す部分拡大図である。
カットバケット1aは、図示のように、全体が円筒形状のカットドラム2と、その内側(中空部)2aにおける上端側の開口部に沿って平面視が十字形状に取り付けられた支持梁3と、該支持梁3のうち、一方の直線部分の直下の位置に側面視で左右対称の山形形状に設けられたアーム4aと、該アーム4aの底面に沿って該底面に取り付けられた複数のアームビットv1~v9と、を備えている。
【0017】
前記カットドラム2は、厚肉の鋼板を円筒形に曲げ加工した後、その継ぎ目に沿って溶接したしたものであって、例えば、厚みが約5~8cm、外径が約60~150cm、軸方向の長さ(高さ)が約1~2mである。
また、前記支持梁3における交差部の上面には、全体が円柱形で、径方向に沿ってピン孔hが貫通しているケリーバーソケット5が溶接等により立設されている。該ソケット5は、地表側の適所に配置したマルチドリル機に垂直姿勢で昇降および回転可能なケリーバー(何れも図示せず)の下端に一体的に連結される。
【0018】
更に、前記アーム4aは、その屈曲部(屈曲点)4xが平面視で、カットドラム2の中心軸Sと一致するように、前述した位置に溶接付けで取り付けられている。因みに、屈曲部4xを挟んだアーム4aの左右両側の各辺(第1部分4a1と第2部分4a2)は、支持梁3の底面(水平線)に対し、約5~20度の範囲で傾斜しており、左右両側の各辺間に挟まれた下側の角度は、約140~170度である。
加えて、前記カットドラム2の下端面2bには、互いに同じ形状および寸法である複数のドラムビットVが、円周方向に沿って、同じ向きおよび姿勢にして、支持材6ごとを介して、等間隔で且つ交換可能にして取り付けられている。
【0019】
複数の前記アームビットv1~v9は、図2に示すように、アーム4aの底面の長手方向に沿って該底面から斜め下向きの姿勢で、且つ交換可能に取り付けられている。係る複数のアームビットv1~v9は、カットドラム2の中心軸S、即ちアーム4aの回転中心4xからの距離が互いに相違しており(回転中心4xに対して非対称)、アームビットv1~v9の順序で前記中心軸Sから順次離れた位置に取り付けられている。
換言すれば、中心4x側からアーム4aの第1部分4a1に順に配置された第1-1アームビットv1と第1-2アームビットv2と、同じく中心4x側から第2部分4a2配置された第2-1アームビットv5との位置関係は次のようになる。即ち
中心4xから第1-1アームビットv1までの距離L1-1 < 中心4xから第1-2アームビットv2までの距離L2-1 < 中心4xから第1-2アームビットv2までの距離L1-2。
その結果、平面視におけるアームビットv1~v9ごとの回転軌跡は、相互に重なることなく、互いに平行な同心円を描くことになる。
また、カットドラム2の中心軸Sに対するアームビットv1~v9の軸方向(長手方向)に沿った傾斜角度θnは、図2に示すように、最も中心側のアームビットv1の傾斜角度θ1から最も外周側のアームビットv9の傾斜角度θ9に向かって順次大きくなっている。
【0020】
更に、図1(B)に示すように、アームビットv1~v9ごとの下端(先端)は、カットドラム2の中心軸Sと直交する仮想の同一(単一)平面(水平面)Fに位置するように取り付けられている。
尚、上述した先端ごとが同一平面Fに位置する点と、前記傾斜角度θnの順序の点を満たせば、アームビットv1~v9の軸方向に沿った長さは、図1(B),図2に示した形態よりも可及的に短くしても良い。また、アームビットvnの総数は特に限定されない。
【0021】
以上のようなカットバケット1aによれば、複数の前記アームビットv1~v9の先端が仮想の同一平面Fに位置しているため、掘削後の既存杭の底面(頂面)が、前記アームビットv1~v9の先端ごとの位置に対応した平坦面状となり易くなる。その結果、何れも図示しないケリーバーの下端に吊り下げたパワーシャベルなどによって、前記カットドラム2の内側2aに取り込んだコンクリートの破砕片を、容易、確実、且つ安全に地表側へ掬い出すことが可能となる。更に、撤去の対象となる既存杭のうち、掘削して搬出したコンクリートの容積を、比較的正確に計算できるため、補作された空間の穴埋めに必要な土壌、モルタル、あるいはコンクリートの総量を過不足なく算出できると共に、施工コストの算出精度も高め易くなる。
【0022】
図3(A)は、異なる形態のカットバケット1bを示す平面図、図3(B)は、その垂直断面図、図4は、そのアーム4b付近を示す部分拡大図である。
カットバケット1bは、図示のように、前記と同様のカットドラム2、支持梁3、ケリーバーソケット5、および、複数のドラムビットVを備えている。該カットバケット1bが前記カットバケット1aと相違するのは、支持梁3のうち、一方の直線部分の直下の位置に側面視で左右非対称のヘの字形状に設けられたアーム4bを設けると共に、該アーム4bの底面の長手方向に沿って、該底面に複数のアームビットv1~v8を、交換可能に取り付けていることである。
【0023】
図3(B),図4に示すように、前記アーム4bは、その屈曲部4xの右側に位置する右辺が屈曲部4xの左側に位置する左辺よりも長い左右非対称のヘの字形状を呈している。即ち、アーム4bの屈曲部4xは、前記カットドラム2の中心軸Sから外れ、且つその外側に位置している。因みに、該アーム4bのうち、図示において、屈曲部4xの右側に位置する長辺の前記支持梁3の底面(水平線)に対する下向きの傾斜角度は、約5~10度であり、屈曲部4xの左側に位置する短辺の支持梁3の底面に対する下向きの傾斜角度は、約10~15度である。
【0024】
また、複数の前記アームビットv1~v8は、カットドラム2の中心軸Sに対する傾斜角度θnを、図3(B)で例示するように、アームビットv5,v1,v6,v2,v7,v3,v8,v4の順序で順次大きくなる形態としても良い。
あるいは、図4に示すように、前記傾斜角度θnを、前記カットバケット1aの場合と同じく、アームビットv1,v5,v2,v6,v3,v7,v4,v8の順序に従って、順次大きくなる形態としても良い。係る形態の場合、平面視におけるアームビットv1~v8の先端面ごとの幅(長さ)wnは、w1<w5<w2<w6<w3<w7<w4<w8の関係で順次大きくなる。
【0025】
以上のようなカットバケット1bによれば、前記カットバケット1aにより得られる効果に加えて、側面視で左右非対称のアーム4bを用いることにより、該アーム4bの底面に沿って取り付ける複数のアームビットv1~v8の取り付け態様を、自在且つ多様な形態にして配設することが容易となる。
尚、前記アーム4bのうち、側面視が比較的長い長辺側は、軸方向に沿って緩くカーブしているか、その中間部分に1箇所以上の僅かな屈曲部を有していても良い。また、アームビットvnの総数は、前記条件下であれば、特に限定されない。
【0026】
図5(A)は、更に異なる形態のカットバケット1cを示す平面図、図5(B)は、その垂直断面図である。
カットバケット1cは、図示のように、前記と同様のカットドラム2、支持梁3、ケリーバーソケット5、および、複数のドラムビットVを備えている。該カットバケット1cが前記カットバケット1a,1bと相違するのは、支持梁3の一方の直線部分の真下に、これと平行で且つ水平方向に沿って直線状であるアーム4cを、カットドラム2の内側2aに溶接等により設けた構成である。該アーム4cと支持梁3の一方との間には、複数の連結材7が配置されている。
【0027】
図5(B)に示すように、前記水平姿勢であるアーム4cの底面には、該底面の長手方向に沿って、複数のアームビットv1~v7が、前記底面から斜め下向きの姿勢で、且つ交換可能に取り付けられている。係る複数のアームビットv1~v7も、それらの下端(先端)が前記水平な平面Fに位置している。更に、複数のアームビットv1~v7は、カットドラム2の中心軸Sからの距離が互いに相違しており、アームビットv1~v7の順序で前記中心軸Sから順次離れた位置に取り付けられている。そのため、平面視におけるアームビットv1~v7ごとの回転軌跡は、互いに平行な同心円を描くことになる。
【0028】
更に、複数の前記アームビットv1~v7は、それらの軸方向の長さや形状が、互いにほぼ同様である。そのため、複数のアームビットv1~v7の製作、アーム4cへの取り付け、および、交換作業を比較的容易に行うことが可能となる。
尚、前記複数のアームビットvnの総数は、前記条件下であれば、特に限定されない。
【0029】
以上のようなカットバケット1cによれば、前記カットバケット1aにより得られる効果を一層確実に得られると共に、複数のアームビットv1~v7の軸方向の長さや形状が、互いにほぼ同様であるため、係る複数のアームビットv1~v7の製作、アーム4cへの取り付け、および、交換作業を比較的容易且つ迅速に行えるので、メンテナンスに要する手間を低減することも可能となる。
【0030】
本発明は、前述した各形態に限定されるものではない。
例えばカットバケットの上縁にスクリューを設けることもできる。
図1に示すカットドラムの上縁を軸方向上側へ膨出させ、その中へスクリューを設置する。このスクリューはソケットに固定されてカットバケットと共回りする。アームビットが破壊した既設杭のコンクリート片がこのスクリューにより効率よく排出される。
【0031】
上記の各例において、前記支持梁3は、前記カットドラム2の径方向に沿って、平面視で一直線状に、あるいは、3本以上の直線部分をカットドラム2の中心軸Sに対して互いに点対称となるように配置した形態としても良い。
前記上向に屈曲したアームは、側面視で前記カットドラム2の中心軸S側ほど上向きに傾斜するか、または、上向きに緩く湾曲し、且つカットドラム2の外周側ほど水平姿勢になるか、または、水平姿勢に近似する形態としても良い。
前記仮想の同一平面Fは、前記カットドラム2の中心軸Sに対して、90度±1~2度以内の範囲でほぼ直交するものとしても良い。
【0032】
前記カットバケット1cの場合、前記支持梁3における一方の直線部分と前記水平姿勢のアーム4cとを兼用させ、前記支持梁3における一方の直線部分の底面に対し、前記複数のアームビットv1~v7を直に取り付けるようにした形態としても良い。
前記ケリーバーソケット5の外形状は、四角柱以上の正多角柱、あるいは、これらの変形多角柱を呈する形態ものであっても良い。
以上の他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、既存杭を掘削した跡の空間の底面を平坦化することにより、カットドラムの内側に取り込んだコンクリートの破砕片を、安全且つ確実に掬い出せるカットバケットを提供できる。
【符号の説明】
【0034】
1a~1c カットバケット
2 カットドラム
4a~4c アーム
4x 屈曲部(屈曲点)
v1~v9 アームビット
F 仮想の同一平面
S カットドラムの中心軸
θ1~θ9 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5