(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044995
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ド・ディオンアクスル構造
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20230327BHJP
B60G 11/04 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B60G9/04
B60G11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153155
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎一
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301BA01
3D301BA02
3D301CA22
3D301CA47
3D301DA04
3D301DB21
(57)【要約】
【課題】ドライブシャフトの取付取外性を高めると共に、ド・ディオンチューブに捩り入力が加わることを回避して強度向上を図ったド・ディオンアクスル構造を提供する。
【解決手段】車幅方向に延出されたド・ディオンチューブ2と、ド・ディオンチューブ2の両端部に設けられたサスペンション取付部3と、車体フレーム4に搭載された動力源5からサスペンション取付部3に延出された一対のドライブシャフト6と、ドライブシャフト6によって回転される一対の出力シャフト7とを備え、サスペンション取付部3の内部に、ドライブシャフト6によって回転される入力ギヤ15と、入力ギヤ15と歯合し入力ギヤ15に対して後方にオフセットされた出力ギヤ16とが収容され、出力ギヤ16に出力シャフト7が接続され、出力シャフト7がドライブシャフト6に対して後方にオフセットされて、ド・ディオンチューブ2がストレート形状となっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延出されたド・ディオンチューブと、該ド・ディオンチューブの両端部に設けられたサスペンション取付部と、車体フレームに搭載された動力源から前記サスペンション取付部に延出された一対のドライブシャフトと、該ドライブシャフトによって回転され前記サスペンション取付部から車幅方向外方に延出された一対の出力シャフトと、を備えたド・ディオンアクスル構造であって、
前記サスペンション取付部の内部に、前記ドライブシャフトによって回転される入力ギヤと、該入力ギヤと歯合し前記入力ギヤに対して車体の前後又は上下にオフセットされた出力ギヤとが収容され、該出力ギヤに前記出力シャフトが接続され、前記出力シャフトが前記ドライブシャフトに対して車体の前後又は上下にオフセットされて、前記ド・ディオンチューブが動力源と干渉しないストレート形状となっている、ことを特徴とするド・ディオンアクスル構造。
【請求項2】
前記サスペンション取付部に、前記入力ギヤを収容する部分を覆うカバーが着脱自在に取り付けられており、該カバーが取り外されたとき、前記入力ギヤおよび前記ドライブシャフトが前記サスペンション取付部から取り外し可能に露出する、ことを特徴とする請求項1に記載のド・ディオンアクスル構造。
【請求項3】
前記ドライブシャフトと前記入力ギヤとの間に等速ジョイントが介設され、該等速ジョイントの少なくとも一部が前記サスペンション取付部の内部に収容されており、前記カバーが取り外されたとき、前記等速ジョイントがグリスアップ可能に露出する、ことを特徴とする請求項2に記載のド・ディオンアクスル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバス等の車両の駆動輪に用いられるド・ディオンアクスル構造に係り、特に、ドライブシャフトの取外性、取付性を高めて整備性を向上させると共に、ド・ディオンチューブに捩り入力が加わることを回避して強度および剛性の向上を図ったド・ディオンアクスル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、トラックやバス等の車両に取り付けられた従来のド・ディオンアクスル構造1Jの斜視図を示し、
図2に、従来のド・ディオンアクスル構造1Jの概略斜視図を示す。ド・ディオンアクスル構造1Jは、車幅方向に延出されたド・ディオンチューブ2Jと、ド・ディオンチューブ2Jの両端部に設けられたサスペンション取付部3Jと、車体フレーム4に搭載された動力源(モーターユニット、エンジン、ディファレンシャル機構など)5から車幅方向左右のサスペンション取付部に延出された一対のドライブシャフト6Jと、ドライブシャフト6Jによって回転されサスペンション取付部3Jから車幅方向外方に延出された一対の出力シャフト7Jと、を備えている。サスペンション取付部3Jには、サスペンション装置として、例えばリーフスプリング8の中程が装着され、リーフスプリング8の両端部は車体フレーム4を構成するサイドレール4aに装着されている。左右のサスペンション取付部3Jを接続するド・ディオンチューブ2Jは、動力源5との干渉を避けるため、後方に湾曲されている(特許文献1参照)。
【0003】
図3に、従来のド・ディオンアクスル構造1Jを上方から見た平断面図を示す。ドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jとの間には等速ジョイント9Jが介設されている。等速ジョイント9Jは、入力側のドライブシャフト6Jと出力側の出力シャフト7Jとの速度を維持しつつ、両者の角度を自在に変更して回転力を伝達する継手である。等速ジョイント9Jは、一部がサスペンション取付部3Jの内部に収容されており、そこから露出した部分に図示しないブーツ(等速ジョイントブーツ)が装着されている。サスペンション取付部3Jには、車幅方向外方に向けてスピンドル10Jが設けられており、スピンドル10Jにはベアリング11を介してハブ12が回転自在に装着されている。ハブ12には、出力シャフト7Jの先端が回転不能に装着されていると共に、ホイール13およびタイヤ14が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図3に示すように、従来のド・ディオンアクスル構造1Jにおいては、ドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jとが等速ジョイント9Jを介して直列に連結されているため、ドライブシャフト7Jを整備点検する際、ドライブシャフト7J、等速ジョイント9J及び出力シャフト7Jが一体となった全長の長いアセンブリシャフト20Jの出力シャフト7Jの部分をサスペンション取付部3Jから車幅方向内方に引き抜く必要があり、整備性が悪いという問題があった。
【0006】
例えば、車検時等においては、ドライブシャフト6Jをサスペンション取付部3Jから取り外して点検整備し再び組付ける必要があるが、ドライブシャフト6Jが等速ジョイント9Jを介して出力シャフト7Jと直列に連結されているため、ドライブシャフト6Jのみを取り外すことが極めて困難である。また、一旦取り外したものを再び取り付けることも困難であり、整備性に課題がある。加えて、ドライブシャフト6Jが簡単には取り外せないため、車検時等における等速ジョイント9Jへのグリスアップも困難であった。
【0007】
また、
図3に示すド・ディオンアクスル構造1Jにおいては、等速ジョイント9Jにおけるドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jとの作動角を小さくしてトルク損失率を小さくすることが好ましく、ドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jとを出来るだけ一直線上に配置して、ドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jとの前後方向のオフセットを極力小さくするケースが多い。これにより、
図1および
図2にも示すように、ド・ディオンチューブ2Jが駆動源5と干渉しないように後方に湾曲された形状となる(特許文献1参照)。
【0008】
しかし、ド・ディオンチューブ2Jを湾曲形状とすると、
図2に示すように、走行時に左右のサスペンション取付部3Jに加わる車重(矢印W)と左右のタイヤ14からスピンドル10Jに加わる路面反力(矢印R)とが湾曲形状のド・ディオンチューブ2Jを介して伝達されるため、ド・ディオンチューブ2Jにねじり方向の入力が加わってしまう。よって、走行中に左右のホイール13のアライメントの変動を規定範囲内に抑えるためには、湾曲形状のド・ディオンチューブ2Jを強固な構造とする必要があり、コストアップ、重量アップを招いていた。
【0009】
また、ド・ディオンチューブ2Jは、車体フレーム4に対する左右のホイール13の位置および姿勢(アライメント)を定めるものであるため、高い精度で製造する必要がある。ここで、湾曲形状のド・ディオンチューブ2Jを、左右のホイール13のアライメントが所定の公差以内に入るような高精度で製造するためには、ストレート形状のド・ディオンチューブ2(
図4参照)と比べて生産工程が増え、コストが増大する。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、ドライブシャフトの取外性、取付性を高めて整備性の向上を図ると共に、ド・ディオンチューブに捩り入力が加わることを回避して強度および剛性の向上を図ったド・ディオンアクスル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく創案された本発明によれば、車幅方向に延出されたド・ディオンチューブと、ド・ディオンチューブの両端部に設けられたサスペンション取付部と、車体フレームに搭載された動力源からサスペンション取付部に延出された一対のドライブシャフトと、ドライブシャフトによって回転されサスペンション取付部から車幅方向外方に延出された一対の出力シャフトと、を備えたド・ディオンアクスル構造であって、サスペンション取付部の内部に、ドライブシャフトによって回転される入力ギヤと、入力ギヤと歯合し入力ギヤに対して車体の前後又は上下にオフセットされた出力ギヤとが収容され、出力ギヤに出力シャフトが接続され、出力シャフトがドライブシャフトに対して車体の前後又は上下にオフセットされて、ド・ディオンチューブが動力源と干渉しないストレート形状となっている、ことを特徴とするド・ディオンアクスル構造が提供される。
【0012】
本発明に係るド・ディオンアクスル構造においては、サスペンション取付部に、入力ギヤを収容する部分を覆うカバーが着脱自在に取り付けられており、カバーが取り外されたとき、入力ギヤおよびドライブシャフトがサスペンション取付部から取り外し可能に露出するようになっていてもよい。
【0013】
本発明に係るド・ディオンアクスル構造においては、ドライブシャフトと入力ギヤとの間に等速ジョイントが介設され、等速ジョイントの少なくとも一部がサスペンション取付部の内部に収容されており、カバーが取り外されたとき、等速ジョイントがグリスアップ可能に露出するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るド・ディオンアクスル構造によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)サスペンション取付部の内部において、ドライブシャフトによって回転される入力ギヤと、出力シャフトに取り付けられた出力ギヤとが歯合されているので、その歯合を外すことでドライブシャフトを出力シャフトから切り離して取り外すことができる。よって、ドライブシャフトの取外性および取付性が高まり、整備性が向上する。
(2)左右のサスペンション取付部の内部に収容された入力ギヤとそれに歯合する出力ギヤとが車体の前後又は上下にオフセットされ、入力ギヤを回転させるドライブシャフトと出力ギヤに取り付けられた出力シャフトとが車体の前後又は上下にオフセットされることで、左右のサスペンション取付部を接続するド・ディオンチューブが動力源と干渉しないストレート形状となっている。よって、走行時に、左右のサスペンション取付部に加わる車重と左右のタイヤからの路面反力とが、ストレート形状のド・ディオンチューブを介して伝達されることになり、従来の湾曲形状のド・ディオンチューブ(
図2、
図3参照)と比べると、ド・ディオンチューブへの捩り方向の入力が無くなり、強度および剛性的に有利となり、軽量化を推進できる。
(3)ストレート形状のド・ディオンチューブは、左右のホイールのアライメントが所定の公差以内に入るような高精度で製造する際、従来の湾曲形状のド・ディオンチューブと比べて生産工程が減り、低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】トラックやバス等の車両に取り付けられた従来例に係るド・ディオンアクスル構造の斜視図である。
【
図2】従来例のド・ディオンアクスル構造の概略を示す斜視図である。
【
図3】従来例のド・ディオンアクスル構造を上方から見た平断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るド・ディオンアクスル構造を上方から見た平断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るド・ディオンアクスル構造の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(ド・ディオンアクスル構造1の概要)
本発明の一実施形態に係るド・ディオンアクスル構造1を
図4、
図5を用いて説明する。本実施形態に係るド・ディオンアクスル構造1は、車幅方向に延出されたド・ディオンチューブ2と、ド・ディオンチューブ2の両端部に設けられたサスペンション取付部3と、車体フレーム4(
図1参照)に搭載された動力源(モーターユニット、エンジン、ディファレンシャル機構など)5からサスペンション取付部3に延出された一対のドライブシャフト6と、ドライブシャフト6によって回転されサスペンション取付部3から車幅方向外方に延出された一対の出力シャフト7と、を備えている。
【0018】
図4、
図5に示すように、サスペンション取付部3の内部には、ドライブシャフト6によって回転される入力ギヤ15と、入力ギヤ15に歯合する出力ギヤ16とが収容されている。入力ギヤ15、出力ギヤ16は夫々車幅方向に沿ったシャフト18、7を有し、それらシャフト18、7が図示しないベアリングを介してサスペンション取付部3の内部に回転自在に支持されている。出力ギヤ16は入力ギヤ15に対して車体の後方にオフセットされており、出力ギヤ16に接続された出力シャフト7がドライブシャフト6に対して車体の後方にオフセットされている。このオフセットにより、左右のサスペンション取付部3を接続するド・ディオンチューブ2は、動力源5との干渉を避けつつ、ストレート形状とすることが可能となっている。以下、各構成要素について説明する。
【0019】
(ド・ディオンチューブ2)
図4、
図5に示すように、左右のサスペンション取付部3の間には、動力源5との干渉を避けつつ、ストレート形状に形成されたド・ディオンチューブ2が架け渡されている。ド・ディオンチューブ2は、本実施形態においては四角筒状に形成されているが円筒状でもよい。
図3に示す従来例のド・ディオンチューブ構造1Jにおいては、ドライブシャフト6Jと出力シャフト7Jが一直線状に配置されているため、ド・ディオンチューブ2Jを車体の後方に湾曲する形状として動力源5との干渉を避ける必要があったが、
図4に示す本実施形態のド・ディオンチューブ構造1においては、ドライブシャフト6に対して出力シャフト7が後方にオフセットされているため、ド・ディオンチューブ2をストレート形状としても動力源5との干渉を避けることができる。
【0020】
(サスペンション取付部3)
図4、
図5に示すように、ストレート形状のド・ディオンチューブ2の両端部には、サスペンション取付部3が設けられている。サスペンション取付部3には、車幅方向外方に向けてスピンドル10が設けられており、スピンドル10にはベアリング11を介してハブ12が回転自在に装着されている。ハブ12には、スピンドル10の内部に回転自在に支持された出力シャフト7の先端が回転不能に装着されていると共に、ホイール13およびタイヤ14が取り付けられている。この構成によれば、
図4に示すタイヤ14が受ける路面反力は、ホイール13、ハブ12、ベアリング11を介してスピンドル10に加わり、
図5に矢印Rで示すように、出力シャフト7を上方(鉛直上方)に押し上げる力として作用する。
【0021】
図4、
図5に示すように、サスペンション取付部3は、入力ギヤ15を収容する前部サスペンション取付部3aと出力ギヤ16を収容する後部サスペンション取付部3bとから成り、後部サスペンション取付部3bの上部には、サスペンション取付座17が設けられている。サスペンション取付座17には、サスペンション装置として、例えば、
図1に示すように、両端が車体フレーム4のサイドレール4aに装着されたリーフスプリング8の中程が取り付けられている。この構成によれば、リーフスプリング8に加わる車重は、
図5に矢印Wで示すように、サスペンション取付部3のサスペンション取付座17に加わり、サスペンション取付座17を出力ギヤ16、出力シャフト7の鉛直上方に配置することで、出力シャフト7を下方(鉛直下方)に押し下げる力として作用する。
【0022】
(等速ジョイント9)
図4に示すように、ドライブシャフト6と入力ギヤ15に取り付けられたシャフト18との間には、等速ジョイント9が介設されている。等速ジョイント9は、ドライブシャフト6と入力ギヤ15に取り付けられたシャフト18との速度を維持しつつ、両者の角度を自在に変更して回転力を伝達する継手である。等速ジョイント6は、一部がサスペンション取付部3の内部に収容されており、そこから露出した部分に図示しないブーツ(等速ジョイントブーツ)が装着されている。等速ジョイント9は、ドライブシャフト6と入力ギヤ15に取り付けられたシャフト18との作動角を小さくすることでトルク損失率を小さくできるところ、本実施形態においては、双方のシャフト6、18が平面視で一直線状に配置されている。
【0023】
(カバー19)
図5に示すように、サスペンション取付部3には、入力ギヤ15を収容する部分を覆うカバー19が着脱自在に取り付けられている。詳しくは、カバー19は、入力ギヤ15を収容する前部サスペンション取付部3aの下部に着脱自在に取り付けられており、カバー19が取り外されたとき等速ジョイント9がグリスアップ可能に露出する。また、カバー19が取り外された後、入力ギヤ15を出力ギヤ16との歯合から外すことで、入力ギヤ15、入力ギヤ15のシャフト18、等速ジョイント9およびドライブシャフト6がサスペンション取付部3から下方に取り外し可能に露出する。
【0024】
(作用・効果)
図4に示すように、本実施形態に係るド・ディオンアクスル構造1によれば、サスペンション取付部3の内部において、ドライブシャフト6によって回転される入力ギヤ15と、出力シャフト7に取り付けられた出力ギヤ16とが歯合されているので、
図5に示すように、その歯合を外すことでドライブシャフト6を出力シャフト7から切り離して取り外すことができ、ドライブシャフト6の取外性、取付性が高まり、整備性が向上する。
【0025】
詳しくは、
図5に示すように、カバー19を取り外すことで、等速ジョイント9のブーツ(図示せず)で覆われた部分がグリスアップ可能に下方に露出する。よって、車検時等において、等速ジョイント9に容易にグリスアップでき、整備性が向上する。また、カバー19が取り外された後、入力ギヤ15を出力ギヤ16との歯合から外すことで、入力ギヤ15、入力ギヤ15のシャフト18、等速ジョイント9およびドライブシャフト6を、アセンブリシャフト20として下方に取り外すことが可能となり、ドライブシャフト6、等速ジョイント9の分解整備が容易となる。
【0026】
ド・ディオンアクスル構造1は、車体フレーム4 に対する左右のホイール13の取付位置(アライメント)を定めるものであるため(
図1参照)、適正な車両姿勢や走行性能を確保するためには高い組立精度が要求される。ここで、
図3に示す従来例のド・ディオンアクスル構造1Jにおいては、ドライブシャフト6J、等速ジョイント9Jおよび出力シャフト7Jが一直線状に連結されたアセンブリシャフト20Jとなってその全長が長いため、ド・ディオンチューブ2Jを分解して例えば左部品と右部品とに切り離さなければ、アセンブリシャフト20Jをサスペンション取付部3から引き抜くことができない。しかし、一旦分解したド・ディオンチューブ2Jを組み立てると、誤差が生じ易く、高い組立精度を満足できず、左右のホイール13のアライメントが規定範囲から外れるケースも考えられる。
【0027】
これに対し、
図4に示す本実施形態に係るド・ディオンアクスル構造1によれば、
図5に示すように、サスペンション取付部3からカバー19を取り外すことで、ドライブシャフト6、等速ジョイント9、入力ギヤ15のシャフト18、入力ギヤ15から成るアセンブリシャフト20を、出力シャフト7を取り外すことなくサスペンション取付部3から容易に取り外すことができ、この際、ド・ディオンチューブ2やサスペンション取付部3やスピンドル10を分解する必要はない。よって、ドライブシャフト6や等速ジョイント9を含むアセンブリシャフト20を取り外しても、ド・ディオンチューブ2、サスペンション取付部3およびスピンドル10の組立精度が製造時の状態に保たれる。この結果、
図4に示すスピンドル10にベアリング11およびハブ12を介して装着された左右のホイール13のアライメントは、アセンブリシャフト20の着脱に起因して変化することはなく、製造時の規定範囲内に保たれる。
【0028】
また、
図5に示すように、左右のサスペンション取付部3を接続するド・ディオンチューブ2がストレート形状となっているため、走行時に、左右のサスペンション取付部3に加わる車重(矢印W)と左右のタイヤ14からスピンドル10に加わる路面反力(矢印R)とがストレート形状のド・ディオンチューブ2を介して伝達されることになり、従来の
図2、
図3に示す湾曲形状のド・ディオンチューブ2Jと比べると、ド・ディオンチューブ2への捩り方向の入力が無くなり、強度および剛性的に有利となり、軽量化を推進できる。
【0029】
すなわち、
図4に示すように、左右のサスペンション取付部3の内部に収容された入力ギヤ15とそれに歯合する出力ギヤ16とが車体の前後にオフセットされ、入力ギヤ15を回転させるドライブシャフト6と出力ギヤ16に取り付けられた出力シャフト7とが車体の前後にオフセットされることで、左右のサスペンション取付部3を接続するド・ディオンチューブ2が動力源5と干渉しないストレート形状となっている。このため、
図5に示すように、左右のスピンドル10に加わる路面反力(矢印R)と左右のサスペンション取付部3に加わる車重(矢印W)とがストレート形状のド・ディオンチューブ2を介して伝達されることになり、ド・ディオンチューブ2への捩り方向の入力が無くなり、強度および剛性的に有利となる。
【0030】
詳しくは、
図4に示すタイヤ14が受ける路面反力は、ホイール13、ハブ12、ベアリング11を介してスピンドル10に加わり、
図5に矢印Rで示すように、出力シャフト7を鉛直上方に押し上げる力として作用する。他方、
図1に示すリーフスプリング8に加わる車重は、
図5に矢印Wで示すように、サスペンション取付部3のサスペンション取付座17に加わり、サスペンション取付座17を出力ギヤ16、出力シャフト7の中心線の鉛直上方に配置することで、出力シャフト7を鉛直下方に押し下げる力として作用する。よって、
図4に示すように、上方から見たとき、ド・ディオンチューブ2の中心線を出力シャフト7の延長線上に合わせることで、出力シャフト7を上方に押し上げる路面反力(矢印R)と、出力シャフト7を下方に押し下げる車重(矢印W)とが、上方から見たド・ディオンチューブ2の中心線に沿って伝達され、ド・ディオンチューブ2への捩り方向の入力が無くなる。よって、強度および剛性的に有利となり、軽量化を推進できる。
【0031】
また、
図4、
図5に示すストレート形状のド・ディオンチューブ2は、左右のホイール13のアライメントが所定の公差以内に入るような高精度で製造する際、
図2、
図3に示す従来の湾曲形状のド・ディオンチューブ2Jと比べて生産工程が減り、低コストで製造できる。
【0032】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0033】
例えば、
図4、
図5において、出力ギヤ16が入力ギヤ15に対して下方(或いは斜め後方下方)にオフセットされ、出力シャフト7がドライブシャフト6に対して下方(或いは斜め後方下方)にオフセットされ、このオフセットによってド・ディオンチューブ2が動力源5との干渉しないストレート形状となっていてもよい。
【0034】
また、
図4、
図5に示す入力ギヤ15の歯数よりも出力ギヤ16の歯数を多くして減速効果(リダクション効果)を得るようしてもよく、入力ギヤ15の歯数を出力ギヤ16の歯数よりも多くすることで増速効果を得るようしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、トラックやバス等の車両の駆動輪に用いられるド・ディオンアクスル構造1において、ドライブシャフト6の取外性、取付性を高めて整備性を向上させると共に、ド・ディオンチューブ2に捩り入力が加わることを回避して強度および剛性の向上を図ったド・ディオンアクスル構造に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ド・ディオンアクスル構造
2 ド・ディオンチューブ
3 サスペンション取付部
4 車体フレーム
4a サイドレール
5 動力源
6 ドライブシャフト
7 出力シャフト
9 等速ジョイント
15 入力ギヤ
16 出力ギヤ
19 カバー