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特開2023-45002半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045002
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20210101AFI20230327BHJP
【FI】
H01S5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153166
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】深町 俊彦
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA06
5F173AA44
5F173AB15
5F173AB23
5F173AB73
5F173AF52
5F173AH22
5F173AP33
5F173AR03
5F173AR23
5F173AR82
(57)【要約】
【課題】導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることが可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】一態様に係る半導体発光素子によれば、第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層に設けられ、前記活性層を導波する導波光の導波方向の横方向に前記導波光を閉じ込めながら前記導波光を導波させる導波層と、前記導波光の導波方向に沿って前記第2導電型半導体層に設けられた回折格子と、前記導波層上および前記回折格子上に設けられ、前記活性層を導波する導波光を縦方向に閉じ込める閉じ込め層とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型半導体層と、
前記第2導電型半導体層に設けられ、前記活性層を導波する導波光の導波方向の横方向に前記導波光を閉じ込めながら前記導波光を導波させる導波層と、
前記導波光の導波方向に沿って前記第2導電型半導体層に設けられた回折格子と、
前記導波層上および前記回折格子上に設けられ、前記活性層を導波する導波光を縦方向に閉じ込める閉じ込め層とを備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記閉じ込め層は、前記導波層よりも屈折率が小さな第2導電型半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記閉じ込め層は、前記活性層を導波する導波光に対して透明な透明導電層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記閉じ込め層は、前記活性層上のガイド層またはクラッド層の少なくともいずれか1つとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記回折格子は、抵抗層を備え、
前記抵抗層は、前記第2導電型半導体層の一部に位置し、前記第2導電型半導体層よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記回折格子は、前記導波層の両側に位置することを特徴とする請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記抵抗層は、
前記導波層が埋め込まれた第1開口部の両側に前記回折格子が形成された第1抵抗層と、
前記第1抵抗層上に積層され、前記導波層が埋め込まれた第2開口部が形成された第2抵抗層とを備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記回折格子は、前記回折格子の周期以上の距離だけ前記活性層の端面から後退していることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記回折格子は位相シフト部を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記位相シフト部の長さは、Nを正の整数、前記回折格子の実効屈折率をneff、λをブラッグ波長とした時、λ/(4・neff)・(2N-1)の関係を満たしていることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記位相シフト部の中心は、反射率が低い方の端面から前記活性層の端面間の距離の60%から80%の間の距離に位置することを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記回折格子の結合係数をκ、共振器長をLとすると、1≦κ・L≦3という条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記導波層はGaN、前記回折格子はAlNで構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項14】
前記回折格子は、最大公約数が1であって、次数が互いに異なる複数の高次回折格子を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項15】
前記複数の高次回折格子は、凸部と凸部の中心、凹部と凹部の中心、および凸部と凹部の中心、のいずれか少なくとも一つが一致している領域を備えることを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子。
【請求項16】
前記複数の高次回折格子のデューティは互いに異なることを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子。
【請求項17】
前記複数の高次回折格子は、結合係数が互いに等しくなるように配置されることを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子。
【請求項18】
第1導電型半導体層上に活性層および第2導電型半導体層を順次積層する工程と、
前記第2導電型半導体層に凹凸を形成する工程と、
前記凹凸が覆われるように前記第2導電型半導体層上に前記第2導電型半導体層よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい抵抗層を積層し、前記凹凸に嵌め合わされた回折格子を形成する工程と、
前記回折格子が形成された抵抗層に開口部を形成する工程と、
前記開口部が埋め込まれるように前記第2導電型半導体層を再成長させる工程とを備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1導電型半導体層上に活性層、第2導電型半導体層および前記第2導電型半導体層よりも抵抗が大きい抵抗層を順次積層する工程と、
回折格子が両側に設けられた開口部を前記抵抗層に形成する工程と、
前記回折格子および前記開口部が埋め込まれるように前記第2導電型半導体層を再成長させる工程とを備えることを特徴とする請求項18に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザの発振波長の安定化を図るため、DFB(Distributed Feedback)構造を用いることがある。
非特許文献1には、AlInGaNベースのn-ウェーブガイディング層とn-クラッディング層の間に1次の回折格子を形成した光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics Vol.45,No.46,2006,pp00.L1223-L1225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることが可能な半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられた第2導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層に設けられ、前記活性層を導波する導波光の導波方向の横方向に前記導波光を閉じ込めながら前記導波光を導波させる導波層と、前記導波光の導波方向に沿って前記第2導電型半導体層に設けられた回折格子と、前記導波層上および前記回折格子上に設けられ、前記活性層を導波する導波光を縦方向に閉じ込める閉じ込め層とを備える。
【0006】
これにより、活性層を導波する導波光を横方向および縦方向に閉じ込めつつ、回折格子を活性層に近づけて配置することが可能となる。このため、発光効率の低下を抑制しつつ、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることができ、半導体発光素子の出力の低下を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記閉じ込め層は、前記導波層よりも屈折率が小さな第2導電型半導体層である。
【0008】
これにより、閉じ込め層の格子定数と導波層の格子定数との不整合を抑制しつつ、活性層を導波する導波光を縦方向に閉じ込めることができ、発光効率の低下を抑制しつつ、半導体発光素子の信頼性の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記閉じ込め層は、前記活性層を導波する導波光に対して透明な透明導電層である。
【0010】
これにより、第2導電型半導体層の厚膜化を抑制しつつ、導波光の導波方向(共振器方向)に対して垂直方向の垂直横モードを透明導電層にて閉じ込めることが可能となる。また、電極とコンタクトをとるためのコンタクト層を透明導電層上に設ける必要がなくなるとともに、透明導電層を介して活性層に注入される電流の抵抗を低減することができる。このため、半導体発光素子の発熱を低減することが可能となるとともに、光伝搬時の光損失を低減し、スロープ効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記閉じ込め層は、前記活性層上のガイド層またはクラッド層の少なくともいずれか1つとして用いられる。
【0012】
これにより、回折格子を活性層に近づけて配置しつつ、光伝搬時の垂直横モードを閉じ込めることが可能となる。結果として、発光効率を向上させつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子は、抵抗層を備え、前記抵抗層は、前記第2導電型半導体層の一部に位置し、前記第2導電型半導体層よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい。
【0014】
これにより、活性層に注入される電流を抵抗層にて狭窄しつつ、活性層上にDFB構造を設けることが可能となるとともに、第2導電型半導体層の結晶欠陥の増大を抑制しつつ、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を増大させることが可能となる。このため、発光領域に電流を効率よく注入することを可能としつつ、光伝搬方向に対して水平方向の水平横モードを閉じ込めることが可能となる。更には、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることができる。このため、半導体発光素子の発熱を低減することが可能となり、半導体発光素子の出力を増大させることが可能となるとともに、発振波長の安定化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子は、前記導波層の両側に位置する。
【0016】
これにより、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を確保することが可能となる。また、活性層を導波する導波光を横方向に閉じ込めつつ、回折格子を活性層に近づけて配置することが可能となる。このため、半導体発光素子の信頼性を確保しつつ、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることが可能となり、発振波長の安定化を図ることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記抵抗層は、前記導波層が埋め込まれた第1開口部の両側に前記回折格子が形成された第1抵抗層と、前記第1抵抗層上に積層され、前記導波層が埋め込まれた第2開口部が形成された第2抵抗層とを備える。
【0018】
これにより、活性層を導波する導波光を横方向に閉じ込めつつ、回折格子を活性層に近づけて配置することが可能となるとともに、第2導電型半導体層の結晶欠陥の増大を抑制しつつ、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を確保した上で、活性層に注入される電流を狭窄させることが可能となる。このため、半導体発光素子の信頼性を確保しつつ、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることが可能となるとともに、半導体発光素子の発熱を抑制しつつ、半導体発光素子の閾値電流を低下させることができる。この結果、半導体発光素子の特性の劣化を抑制しつつ、半導体発光素子の出力を増大させることが可能となるとともに、発振波長の安定化を図ることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子は、前記回折格子の周期以上の距離だけ前記活性層の端面から後退している。
【0020】
これにより、活性層の端面の近傍に電流非注入領域を設けることができ、活性層の端面の発熱を抑制し、活性層の端面を保護することが可能となる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子は位相シフト部を備える。
【0022】
これにより、劈開位置に応じた特性のばらつきに対応しつつ、回折格子のSMSR(Side Mode Suppression Ratio)を向上させることができ、所望の発振波長の発光効率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記位相シフト部の長さは、Nを正の整数、前記回折格子の実効屈折率をneff、λをブラッグ波長とした時、λ/(4・neff)・(2N-1)の関係を満たしている。
【0024】
これにより、回折格子によって形成される定在波の山の中心と山の中心、谷の中心と谷の中心または山の中心と谷の中心とが一致する位置に位相シフト部を配置することができ、SMSRを向上させることができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記位相シフト部の中心は、反射率が低い方の端面から前記活性層の端面間の距離の60%から80%の間の距離に位置する。
【0026】
これにより、共振器に用いられる二つの端面の反射率が互いに異なる場合においても、SMSRを向上させつつ、低閾値化を図ることができ、発振波長の安定化を図りつつ、出力を向上させることができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子の結合係数をκ、共振器長をLとすると、1≦κ・L≦3という条件を満たす。
【0028】
これにより、半導体発光素子の低閾値化および高効率化を図りつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記活性層の第1端面の反射率は2%以下、前記活性層の第2端面の反射率は90%以上に設定される。
【0030】
これにより、発光効率の低下を抑制しつつ、半導体発光素子の特性のばらつきを低減することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記導波層はGaN、前記回折格子はAlNで構成される。
【0032】
これにより、青紫レーザダイオードを実現することが可能となるとともに、第2導電型半導体層の結晶欠陥の増大を抑制しつつ、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を確保することができる。また、熱抵抗の増大を抑制しつつ、活性層に注入される電流を狭窄させることが可能となり、半導体発光素子の発熱を抑制することが可能となる。更には、活性層を導波する導波光を横方向に閉じ込めることが可能となり、半導体発光素子の出力を増大させつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記回折格子は、最大公約数が1であって、次数が互いに異なる複数の高次回折格子を備える。
【0034】
これにより、活性層を導波する導波光の導波方向に回折格子の回折条件を一致させつつ、回折格子の周期を増大させることができる。このため、発振効率の低下を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることが可能となる。更には、回折格子の微細化に伴う製造の困難性を緩和しつつ、発振波長の安定した青紫レーザダイオードを実現することができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記複数の高次回折格子は、凸部と凸部の中心、凹部と凹部の中心、および凸部と凹部の中心、のいずれか少なくとも一つが一致している領域を備える。
【0036】
これにより、高次回折格子によって形成される定在波の電場の持つエネルギー密度の差を増大させることができ、ストップバンド幅を増大させることができる。このため、高次回折格子のSMSRを増大させることができ、導波光と高次回折格子との間の結合係数を増大させることができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記複数の高次回折格子のデューティは互いに異なる。
【0038】
これにより、高次回折格子の凹凸パターンを適正化することで、導波光と高次回折格子との間の結合係数を最大化することができる。また、半導体発光素子の製造工程において工程数の増大を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0039】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記複数の高次回折格子は、結合係数が互いに等しくなるように配置される。
【0040】
これにより、DFB構造を形成時に、複数の高次回折格子が用いられる場合においても、導波光と高次回折格子との間の結合係数の低下を抑制することができる。
【0041】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、第1導電型半導体層上に活性層および第2導電型半導体層を順次積層する工程と、前記第2導電型半導体層に凹凸を形成する工程と、前記凹凸が覆われるように前記第2導電型半導体層上に前記第2導電型半導体層よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい抵抗層を積層し、前記凹凸に嵌め合わされた回折格子を形成する工程と、前記回折格子が形成された抵抗層に開口部を形成する工程と、前記開口部が埋め込まれるように前記第2導電型半導体層を再成長させる工程とを備える。
【0042】
これにより、1回の抵抗層の成膜に基づいて、活性層を導波する導波光を横方向に閉じ込め可能としつつ、回折格子を活性層に近づけて配置することが可能となる。更には、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を確保しつつ、活性層に注入される電流の狭窄性を向上させることが可能となる。このため、製造工程の煩雑化を抑制した上で、第2導電型半導体層の結晶欠陥の増大を抑制が図れる。更には、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることが可能となるとともに、半導体発光素子の発熱を抑制しつつ、半導体発光素子の閾値電流を低下させることができる。この結果、発振波長の安定化を図ることが可能となるとともに、半導体発光素子の信頼性を確保しつつ出力を増大させることができる。
【0043】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、前記第1導電型半導体層上に活性層、第2導電型半導体層および前記第2導電型半導体層よりも抵抗が大きい抵抗層を順次積層する工程と、回折格子が両側に設けられた開口部を前記抵抗層に形成する工程と、前記回折格子および前記開口部が埋め込まれるように前記第2導電型半導体層を再成長させる工程とを備える。
【0044】
これにより、活性層を導波する導波光を横方向に閉じ込める導波層を開口部に形成するのと同時に導波層の両側に回折格子を形成することが可能となる。また、第2導電型半導体層の結晶欠陥の増大を抑制しつつ、第2導電型半導体層と回折格子との屈折率差を増大させることができる。このため、工程数の増大を抑制しつつ、DFB構造を有するインナーストライプ型半導体レーザを安定して形成することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様においては、導波光と回折格子との間の結合係数を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す斜視図である。
図2】(a)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、(b)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、(c)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の各層の屈折率を示す図である。
図3】(a)は、比較例に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、(b)は、比較例に係る半導体発光素子の構成を導波方向に沿って切断して示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る半導体発光素子の回折格子の高さと結合係数の関係を比較例の半導体発光素子と比較して示す図である。
図5】(a)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、(b)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、(c)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の各層の屈折率を示す図である。
図6】(a1)および(b1)は、第3実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の導波方向に沿って切断した断面図、(b2)は、(b1)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図7】(a1)は、第3実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図、(a3)は、(a1)の導波路の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。
図8】(a1)は、第3実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図、(a3)は、(a1)の導波路の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。
図9A】第4実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す斜視図である。
図9B】(a)は、第4実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、(b)は、(a)におけるX1-X1断面である。
図10】(a1)および(b1)は、第5実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の導波方向に沿って切断した断面図、(b2)は、(b1)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図11】(a1)および(b1)は、第5実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の導波方向に沿って切断した断面図、(b2)は、(b1)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図12】(a1)は、第5実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図、(a3)は、(a1)の導波路の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。
図13】(a1)は、第5実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図、(a2)は、(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図、(a3)は、(a1)の導波路の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。
図14】(a)は、第6実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、(b)は、第6実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図である。
図15】第7実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図である。
図16】第7実施形態に係る半導体発光素子の構成を2次回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。
図17】(a)および(b)は、図15の回折格子の屈折率分布を示す図、(c)および(d)は、図15の導波路に形成される定在波の位相とエネルギーの関係を示す図である。
図18】複数の回折格子の相対的位置関係を変化させる場合に調整できるパラメータを図15に示した2次回折格子と3次回折格子を例に示す屈折率と導波方向の位置との関係図である。
図19A】第7実施形態に係る半導体発光素子の回折格子のデューティを変化させたときの格子間シフトとストップバンド幅の関係を示す図である。
図19B】第7実施形態に係る半導体発光素子のストップバンド幅の最大化方法を示す図である。
図20】第8実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図である。
図21】(a)および(b)は、第9実施形態に半導体発光素子の回折格子の屈折率分布を示す図、(c)および(d)は、第9実施形態である半導体発光素子の導波路に形成される定在波の位相とエネルギーの関係を示す図である。
図22】第9実施形態に係る半導体発光素子の回折格子のデューティを変化させたときの格子間シフトとストップバンド幅の関係を示す図である。
図23】第10実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図である。
図24】回折格子の高さと結合係数との関係を示す図である。
図25】(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図26】(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図27】(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図28】(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図29】(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図30】(a)は、第12実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図31】(a)は、第12実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図32】(a)は、第12実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
図33】(a)は、第12実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は、(a)の導波方向に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0048】
また、以下の説明では、波長444nm帯の青色レーザ光を出射可能な窒化物半導体レーザを例にとるが、波長405nm帯の青色レーザ光を出射可能なAlGaInN系半導体レーザであってもよいし、発光波長が390nm以下の近紫外レーザ光を出射可能なAlGaN系半導体レーザであってもよい。
【0049】
図1は、第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す斜視図、図2(a)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、図2(b)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、図2(c)は、第1実施形態に係る半導体発光素子の各層の屈折率を示す図である。なお、図2(b)は、図2(a)のX1-X1線の位置で切断した構成を示す。また、分かり易さの観点から、図1では、図2(a)の端面反射膜および図2(b)の電極を省略した。
【0050】
図1図2(a)および図2(b)において、半導体レーザLAは、n型窒化物半導体層E1、活性層15、p型窒化物半導体層E2、抵抗層RAおよび閉じ込め層E3を備える。活性層15は、n型窒化物半導体層E1上に積層されている。p型窒化物半導体層E2は、活性層15上に積層されている。窒化物半導体は、例えば、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)という組成を持つことができる。
【0051】
n型窒化物半導体層E1から活性層15への不純物の拡散を抑制するために、n型窒化物半導体層E1と活性層15との間にアンドープ窒化物ガイド層14を設けてもよい。p型窒化物半導体層E2から活性層15への不純物の拡散を抑制するために、p型窒化物半導体層E2と活性層15との間にアンドープ窒化物ガイド層16を設けてもよい。
【0052】
n型窒化物半導体層E1は、n型窒化物クラッド層12およびn型窒化物ガイド層13を備える。n型窒化物クラッド層12およびn型窒化物ガイド層13は、n型窒化物半導体基板11上に順次積層されている。
【0053】
p型窒化物半導体層E2は、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18Aを備える。p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18Aは、アンドープ窒化物ガイド層16上に順次積層されている。p型窒化物ガイド層18、18Aは、同一材料で構成することができる。p型窒化物半導体層E2は、導波層WAを備える。導波層WAは、活性層15を導波する導波光の導波方向D1の横方向D2に導波光を閉じ込めながら導波光を導波させる。導波層WAは、p型窒化物ガイド層18上のp型窒化物ガイド層18Aで構成することができる。
【0054】
抵抗層RAは、p型窒化物半導体層E2の一部に位置する。導波方向D1の縦方向D3におけるp型窒化物半導体層E2内の抵抗層RAの位置は、特に限定されない。例えば、抵抗層RAのトップ面の位置は、p型窒化物ガイド層18のトップ面の位置と等しくてもよいし、p型窒化物ガイド層18のトップ面の位置より低くてもよい。抵抗層RAのボトム面の位置は、p型窒化物ガイド層18のボトム面の位置と等しくてもよいし、p型窒化物ガイド層18のボトム面の位置より高くてもよい。
【0055】
抵抗層RAは、p型窒化物半導体層E2よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい。ここで、抵抗層RAは、屈折率導波型および利得導波型のいずれか少なくとも1つのファブリペロー共振器を構成可能とするとともに、DFB構造を持つようにp型窒化物半導体層E2の一部に配置することができる。抵抗層RAは、例えば、AlNからなる高抵抗層を用いることができる。
【0056】
抵抗層RAは、開口部KAおよび回折格子EAを備える。回折格子EAのピッチΛ1は、導波層WAを導波するレーザ光の発振周期に一致させることができる。回折格子EAは、導波層WAの両側に位置する。このとき、導波層WAの両側には凹凸が形成され、回折格子EAの凹凸を導波層WAの両側の凹凸に嵌め合わせることができる。このとき、p型窒化物ガイド層18Aを回折格子EAの凹部および開口部KAに埋め込むことで、回折格子EAの凸部と凹部の屈折率差を増大させつつ、p型窒化物半導体層E2に導波層WAを形成することができる。
【0057】
開口部KAおよび回折格子EAは、活性層15の端面MA、MBから後退している。回折格子EAは、回折格子EAの周期以上の距離だけ活性層15の端面MA、MBから後退させることができる。ここで、活性層15の端面MA、MBから開口部KAおよび回折格子EAを後退させることで、活性層15の端面MA、MBの近傍に電流非注入領域NJを設けることができる。このため、活性層15の端面MA、MBの発熱を抑制し、活性層15の端面MA、MBを保護することが可能となる。
【0058】
なお、回折格子EAの結合係数をκ、半導体レーザLAの共振器長をLとすると、1≦κ・L≦3という条件を満たすのが好ましい。これにより、半導体レーザLAの低閾値化および高効率化を図りつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0059】
閉じ込め層E3は、p型窒化物半導体層E2上に設けられている。このとき、閉じ込め層E3は、回折格子EAおよび導波層WA上に位置することができる。閉じ込め層E3は、p型窒化物半導体層E2よりも屈折率が低い。このとき、閉じ込め層E3は、活性層15を導波する導波光を縦方向E3に閉じ込めることができる。閉じ込め層E3は、例えば、p型窒化物クラッド層20を備えることができる。
【0060】
p型窒化物クラッド層20上には、p型窒化物コンタクト層21が積層されている。p型窒化物コンタクト層21は、活性層15に電流を注入する電極22とオーミックコンタクトをとることができる。
【0061】
p型窒化物コンタクト層21上には、開口部KAを介して活性層15に電流を注入する電極22が形成されている。電極22は、Ti/Pt/Auの積層構造とすることができる。Ti/Pt/Auの厚さは、例えば、100/50/300nmに設定することができる。
【0062】
また、各層に利用できる材料としては、例えば以下のものが挙げられる。n型窒化物半導体基板11としてはn型GaN基板、n型窒化物クラッド層12としてはn型Al0.02Ga0.98N層、n型窒化物ガイド層13としてはn型GaN層、アンドープ窒化物ガイド層14としてはIn0.02Ga0.99N層が挙げられる。また、活性層15には、In0.02Ga0.98N障壁層/In0.15Ga0.88N井戸層/In0.02Ga0.98N障壁層からなる単一量子井戸層が利用できる。更には、アンドープ窒化物ガイド層16には、In0.02Ga0.99N層、p型キャリアブロック層17には、p型Al0.22Ga0.78N層、p型窒化物ガイド層18、18Aには、p型GaN層、p型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21としては、p型Al0.02Ga0.98N層およびp型GaN層をそれぞれ用いることができる。
【0063】
n型窒化物クラッド層12の厚さは、例えば、700nm、ドナー濃度Nは、1×1017cm-3に設定することができる。n型窒化物ガイド層13の厚さは、例えば、50nm、ドナー濃度Nは、1×1017cm-3に設定することができる。アンドープ窒化物ガイド層14の厚さは、例えば、136nmに設定することができる。活性層15の量子井戸層の障壁層/井戸層/障壁層の厚さは、例えば、10/9/10nmに設定することができる。アンドープ窒化物ガイド層16の厚さは、例えば、135nmに設定することができる。p型キャリアブロック層17の厚さは、例えば、4nm、アクセプタ濃度Nは、1×1018cm-3に設定することができる。p型窒化物ガイド層18、18Aの合計の厚さは、例えば、150nm、アクセプタ濃度Nは、1×1018cm-3に設定することができる。p型窒化物クラッド層20の厚さは、例えば、700nm、アクセプタ濃度Nは、1×1018cm-3に設定することができる。p型窒化物コンタクト層21の厚さは、例えば、60nm、アクセプタ濃度Nは、1×1018cm-3に設定することができる。
【0064】
ここで、図2(c)に示すように、n型窒化物クラッド層12の屈折率は、n型窒化物ガイド層13の屈折率より小さい。また、n型窒化物ガイド層13の屈折率は、アンドープ窒化物ガイド層14の屈折率より小さく、アンドープ窒化物ガイド層14の屈折率は、活性層15の屈折率より小さくすることができる。
また、p型窒化物コンタクト層21の屈折率は、p型窒化物クラッド層20の屈折率より大きい。また、p型窒化物クラッド層20の屈折率は、p型窒化物ガイド層18の屈折率より小さくし、p型窒化物ガイド層18の屈折率は、アンドープ窒化物ガイド層16の屈折率より小さい。更には、アンドープ窒化物ガイド層16の屈折率は、活性層15の屈折率より小さくすることができる。また、p型キャリアブロック層17の屈折率は、p型窒化物ガイド層18の屈折率より小さくすることができる。
【0065】
半導体レーザLAの各端面MA、MBには、図2(a)に示すように、端面反射膜24、25が形成されている。このとき、端面MAの反射率は2%以下、端面MBの反射率は90%以上に設定するのが好ましい。これにより、半導体レーザLAの発光効率の低下を抑制しつつ、半導体レーザLAの特性のばらつきを低減することができる。
【0066】
このとき、端面反射膜24は、AlN/SiOの積層構造とすることができる。ここで、AlN/SiOの厚さは、例えば、30/300nmに設定することができる。端面反射膜25は、AlN/(SiO/Ta/SiOの積層構造とすることができる。ここで、AlN/(SiO/Ta/SiOの厚さは、例えば、30/(60/40)/10nmに設定することができる。
【0067】
また、p型窒化物クラッド層20の下の抵抗層RAに開口部KAおよび回折格子EAを設けることにより、導波層WAの両側に回折格子EAを設けることが可能となる。このため、活性層15を導波する導波光を横方向D2および縦方向D3に閉じ込めることが可能となる。また、回折格子EAを活性層15に近づけて配置することが可能となるとともに、p型窒化物ガイド層18Aの結晶欠陥の増大を抑制しつつ、p型窒化物ガイド層18Aと回折格子EAとの屈折率差を増大させることが可能となる。このため、半導体レーザLAの発光効率を向上させることができ、半導体レーザLAの出力を増大させることが可能となる。更には、半導体レーザLAの信頼性の低下を抑制しつつ、導波光と回折格子EAとの間の結合係数を増大させることができ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0068】
また、導波層WAをGaN、抵抗層RAをAlNで構成することにより、抵抗層RAの格子定数と導波層WAの格子定数との乖離を抑制しつつ、抵抗層RAの熱伝導率の低下を抑制することが可能となる。また、活性層15に注入される電流を狭窄させつつ、p型窒化物ガイド層18Aと回折格子EAとの屈折率差を確保することができる。このため、活性層15からの熱の放熱性の低下を抑制しつつ、発振波長の安定した青紫レーザダイオードを実現することが可能となる。更には、p型窒化物ガイド層18Aの結晶欠陥の増大を抑制しつつ、導波光と回折格子EAとの間の結合係数を増大させることができる。この結果、半導体レーザLAの発熱を抑制しつつ、発光効率を増大させることができ、半導体レーザLAの出力を増大させることが可能となるとともに、半導体レーザLAの信頼性の低下を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0069】
例えば、導波層WAをGaN、抵抗層RAをAlNで構成すると、レーザの発振波長444nmでは、導波層WAの屈折率は2.49となり、抵抗層RAの屈折率は2.18となる。このような材料を採用したため、回折格子EAのストップバンド幅を拡大し、SMSRを増大させることができる。具体的には、30~40dB程度のSMSRを確保することができる。これに対して、高濃度のAlまたはInの組成を持つAlInGaN系半導体で回折格子を構成した場合、回折格子のストップバンド幅は0.23nm程度となり、SMSRは10dB程度しか得られない。
【0070】
図3(a)は、比較例に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、図3(b)は、比較例に係る半導体発光素子の構成を導波方向に沿って切断して示す断面図である。
図3(a)および図3(b)において、半導体レーザLA´は、図2(b)の半導体レーザLAの抵抗層RA、開口部KA、回折格子EAの代わりにリッジRAおよび回折格子EA´を備える。半導体レーザLA´のそれ以外の構成は、半導体レーザLAと同様に構成することができる。
【0071】
本比較例における回折格子EA´は、活性層15の下層に位置する。このとき、回折格子EA´は、n型窒化物クラッド層12上のn型窒化物クラッド層12Aに形成することができる。n型窒化物クラッド層12、12Aは、同一材料で一体的に形成することができる。回折格子EA´は、n型窒化物ガイド層13で覆うことができる。
【0072】
回折格子EA´を形成する場合、例えば、GaN基板上に形成したn型Al0.02Ga0.98N層の表面にフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって周期(ピッチ:Λ)89.2nm、デューティ=0.5の凹凸を形成し、その上にn型GaN層を再成長させる。なお、デューティは、回折格子の1周期内の幅に対する凸部の幅の割合である。
【0073】
p型窒化物クラッド層20上にはp型窒化物クラッド層20Aが形成されている。p型窒化物クラッド層20、20Aは、同一材料で構成することができる。p型窒化物クラッド層20Aは、リッジRAを備える。リッジRAは、活性層15を導波する導波光の導波方向D1に沿って半導体レーザLA´の端面間に渡って設けられる。このとき、リッジRAは、活性層15を導波する導波光を導波方向D1の横方向D2および縦方向D3に閉じ込めることができる。この構成では、p型窒化物コンタクト層21は、リッジRAのトップ面上に形成される。
【0074】
図4は、第1実施形態に係る半導体発光素子の回折格子の高さと結合係数の関係を比較例の半導体発光素子と比較して示す図である。なお、H1は、図2(b)の構成の回折格子の高さと結合係数の関係、H2は、図3の構成の回折格子の高さと結合係数の関係を示す。
【0075】
図4において、図3の比較例と図2(b)の構成の結合係数について、文献(IEEE J.Quantum Electron.QE-11,p867,1975)に記載された方法と同様な方法を用いて矩形の回折格子の場合の比較を行った。この文献によると、例えばTEモードの場合、結合係数κは次式で与えられる。
【0076】
【数1】
【0077】
【数2】
【0078】
【数3】
【0079】
ただし、βは伝搬定数である。
図2(b)の構成と図3の比較例について、回折格子EA、EA´の高さが互いに等しい場合、図2(b)の構成の方が図3の比較例に対して結合係数が増大する。その結果、図2(b)の構成では、ストップバンド幅が大きくでき、より大きなサイドモード抑圧比(SMSR)を得やすくなる.また、図2(b)の構成において回折格子EAの高さが100nmではκ・L~1.4である。
【0080】
なお、上述した文献に記載された方法による見積もりに用いた屈折率は、図3の比較例ではn=2.48、n=2.49、n=2.48とし、図2(b)の構成ではn=2.18、n=2.49、n=2.48とした。また、図2(b)の構成と図3の比較例に共通な変数として、t=3μm、λ=444nm、デューティ=0.4とした。
【0081】
この半導体レーザLAは、222nmのSHG(Second harmonic generation)波を発生させる光源として用いることができる。222nmの紫外線は、殺菌用途として用いられる254nmの紫外線に比べて人間に対する安全性を向上させることができ、皮膚がんおよび角膜炎などの発症を防止することができる。
【0082】
図5(a)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、図5(b)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図、図5(c)は、第2実施形態に係る半導体発光素子の各層の屈折率を示す図である。なお、図5(b)は、図5(a)のX1-X1線の位置で切断した構成を示す。
【0083】
図5(a)および図5(b)において、半導体レーザLBは、図2(b)の半導体レーザLAのp型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21の代わりに透明導電層23を備える。半導体レーザLBのそれ以外の点は、図2(b)の半導体レーザLAと同様に構成することができる。
【0084】
透明導電層23は、活性層15で発生される光に対して透明な導電層である。透明導電層23は、活性層15上のガイド層またはクラッド層の少なくともいずれか1つとして用いられる。透明導電層23は、In、Sn、Zn、Ti、NbおよびZrから選択される少なくともいずれか1つの元素を含むことができ、これらの元素の酸化物とすることができる。例えば、透明導電層23は、ITO膜であってもよいし、ZnO膜であってもよいし、SnO膜であってもよいし、TiO膜であってもよい。ここで、図5(c)に示すように、透明導電層23の屈折率は、p型窒化物ガイド層18の屈折率より小さくすることができる。透明導電層23は、垂直横モードに対する光の閉じ込めが可能な範囲内で薄膜化されているのが好ましい。垂直横モードは、導波方向D1の縦方向D3の伝搬モードである。このとき、透明導電層23の厚さは、80nm以上120nm以下であるのが好ましい。透明導電層23上には、電極21が形成される。透明導電層23は、電極21と直接オーミックコンタクトをとることができる。
【0085】
ここで、透明導電層23の屈折率をp型窒化物ガイド層18の屈折率より小さくすることにより、p型窒化物半導体層E2の厚膜化を抑制しつつ、垂直横モードを透明導電層23にて閉じ込めることが可能となる。また、p型窒化物半導体層E2上に透明導電層23を積層することにより、電極22とコンタクトをとるためのp型窒化物半導体コンタクト層を透明導電層23上に設ける必要がなくなるとともに、透明導電層23を介して活性層15に注入される電流の抵抗を低減することができる。このため、半導体レーザLBの発熱を低減することが可能となるとともに、光伝搬時の光損失を低減し、スロープ効率を向上させることができる。
【0086】
図6(a1)、図6(b1)、図7(a1)および図8(a1)は、第3実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図である。また、図6(a2)および図6(b2)は、図6(a1)および図6(b1)の導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。また、図7(a2)および図8(a2)は、図7(a1)および図8(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。また、図7(a3)および図8(a3)は、図7(a1)および図8(a1)の導波路の位置で導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。なお、図6(a2)、図6(b2)、図7(a2)および図8(a2)は、図6(a1)、図6(b1)、図7(a1)および図8(a1)のA1-A1線の位置でそれぞれ切断した構成、図7(a3)および図8(a3)は、図7(a1)および図8(a1)のB1-B1線の位置でそれぞれ切断した構成を示す。
【0087】
この第3実施形態は、図2(b)の半導体レーザLAの製造に適用することができる。なお、図6(a2)、図6(b2)、図7(a2)、図7(a3)、図8(a2)および図8(a3)では、図2(b)のn型窒化物半導体基板11、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13およびアンドープ窒化物ガイド層14の図示を省略した。
【0088】
図6(a1)および図6(a2)において、エピタキシャル成長によって、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13、アンドープ窒化物ガイド層14、活性層15、アンドープ窒化物ガイド層16、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18をn型窒化物半導体基板11上に順次積層する。さらに、エピタキシャル成長またはスパッタなどの方法によって、抵抗層RAをp型窒化物ガイド層18上に積層する。エピタキシャル成長は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)であってもよいし、MBE(Molecular Beam Epitaxy)であってもよいし、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)であってもよい。
【0089】
次に、図6(b1)および図6(b2)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、抵抗層RAをパターニングし、導波方向D1に沿って回折格子EAが両側に設けられた開口部KAを抵抗層RAに形成する。このとき、開口部KAの両側には、導波方向D1に沿って回折格子EAの凹部と凸部を発振波長の周期で配置することができる。
【0090】
次に、図7(a1)、図7(a2)および図7(a3)に示すように、エピタキシャル成長によって、開口部KAに埋め込まれるようにp型窒化物ガイド層18Aをp型窒化物ガイド層18上に選択的に形成する。このとき、回折格子EAの凹部にp型窒化物ガイド層18Aを埋め込むことができ、回折格子EAの凹部と凸部の屈折率差を抵抗層RAの屈折率で規定することができる。また、開口部KAには、導波方向D1に沿って回折格子EAが両側に設けられた導波層WAが形成される。
【0091】
次に、図8(a1)、図8(a2)および図8(a3)に示すように、エピタキシャル成長によって、p型窒化物ガイド層18Aおよび抵抗層RA上にp型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21を順次形成する。
【0092】
これにより、図2(a)の導波層WAを開口部KAに形成するのと同時に導波層WAの両側に回折格子EAを形成することが可能となるとともに、p型窒化物ガイド層18Aと回折格子EAとの屈折率差を増大させることができる。このため、工程数の増大を抑制しつつ、DFB構造を有するインナーストライプ型半導体レーザを安定して形成することができる。
【0093】
図9Aは、第4実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す斜視図である。
図9A図9Bにおいて、半導体レーザLCは、図2(b)の半導体レーザLAのp型窒化物半導体層E2の代わりにp型窒化物半導体層E2´を備える。半導体レーザLCのそれ以外の点は、図2(b)の半導体レーザLAと同様に構成することができる。
【0094】
図9A図9Bに示すように、p型窒化物半導体層E2´は、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18A、18A´を備える。p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18A、18A´は、アンドープ窒化物ガイド層16上に順次積層されている。p型窒化物ガイド層18、18A、18A´は、同一材料で構成することができる。p型窒化物半導体層E2´は、導波層WA、WA´を備える。導波層WA、WA´は、活性層15を導波する導波光の導波方向D1の横方向D2に導波光を閉じ込めながら導波光を導波させる。導波層WA´は、p型窒化物ガイド層18A上のp型窒化物ガイド層18A´で構成することができる。
【0095】
抵抗層RA、RA´は、p型窒化物半導体層E2´の一部に位置する。抵抗層RA、RA´は、同一の材料で構成することができる。抵抗層RA、RA´は、互いに一体化されてもよい。導波方向D1の縦方向D3におけるp型窒化物半導体層E2´内の抵抗層RA、RA´の位置は、特に限定されない。
【0096】
抵抗層RA、RA´は、p型窒化物半導体層E2´よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい。抵抗層RA´は抵抗層RA上に積層される。ここで、抵抗層RA、RA´は、屈折率導波型および利得導波型のいずれか少なくとも1つのファブリペロー共振器を構成可能とするとともに、DFB構造を持つようにp型窒化物半導体層E2´の一部に配置することができる。抵抗層RA、RA´は、例えば、AlNからなる高抵抗層を用いることができる。
【0097】
また、導波層WA、WA´をGaN、抵抗層RA、RA´をAlNで構成することにより、抵抗層RA、RA´の格子定数と導波層WA、WA´の格子定数との乖離を抑制しつつ、抵抗層RA、RA´の熱伝導率の低下を抑制することが可能となる。更には、回折格子EAがある場合であっても、活性層15に注入される電流の狭窄性を向上させつつ、p型窒化物ガイド層18Aと回折格子EAとの屈折率差を確保することができる。このため、半導体レーザLCの発熱を抑制しつつ、青紫レーザダイオードを実現することが可能となる。また、p型窒化物ガイド層18Aの結晶欠陥の増大および活性層15からの熱の放熱性の低下を抑制しつつ、導波光と回折格子EAとの間の結合係数を増大させることができる。この結果、半導体レーザLCの温度上昇を抑制しつつ、発光効率を増大させることができ、半導体レーザLCの出力を増大させることが可能となる。結果として、半導体レーザLCの信頼性の低下を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることができる。
【0098】
なお、図9A図9Bの半導体レーザLCでは、図5に半導体レーザLBとして示した場合と同様に回折格子EAが両側に設けられた導波層WA上に回折格子が両側にない導波層WA´を積層した例を示したが、回折格子が両側にない導波層WA´上に回折格子EAが両側に設けられた導波層WAを積層してもよい。
【0099】
図10(a1)、図10(b1)、図11(a1)、図11(b1)、図12(a1)および図13(a1)は、第5実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す平面図である。また、図10(a2)図10(b2)、図11(a2)および図11(b2)は、図6(a1)および図6(b1)の導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。また、図12(a2)および図13(a2)は、図12(a1)および図13(a1)の回折格子の位置で導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。更に、図12(a3)および図13(a3)は、図12(a1)および図13(a1)の導波路の位置で導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。なお、図10(a2)、図10(b2)、図11(a2)、図12(a2)および図13(a2)は、図10(a1)、図10(b1)、図11(a1)、図12(a1)および図13(a1)のA1-A1線の位置でそれぞれ切断した構成を示している。また、図11(b2)、図12(a3)および図13(a3)は、図11(b1)、図12(a1)および図13(a1)のB1-B1線の位置でそれぞれ切断した構成を示す。
【0100】
この第5実施形態は、図9の半導体レーザLCの製造に適用することができる。なお、図10(a2)、図10(b2)、図11(a2)、図11(b2)、図12(a2)、図12(a3)、図13(a2)および図13(a3)では、図9のn型窒化物半導体基板11、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13およびアンドープ窒化物ガイド層14の図示を省略した。
【0101】
図10(a1)および図10(a2)において、エピタキシャル成長によって、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13、アンドープ窒化物ガイド層14、活性層15、アンドープ窒化物ガイド層16、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18Aをn型窒化物半導体基板11上に順次積層する。
【0102】
次に、図10(b1)および図10(b2)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、p型窒化物ガイド層18Aをパターニングし、導波方向D1に沿って発振波長の周期で凸部QTと凹部QBをp型窒化物ガイド層18Aに交互に形成する。
【0103】
次に、図11(a1)および図11(a2)に示すように、エピタキシャル成長またはスパッタによって、p型窒化物ガイド層18、18A上に抵抗層RA、RA´を順次形成する。抵抗層RA、RA´は、一度の成膜処理に基づいて一括形成することができる。このとき、p型窒化物ガイド層18Aの凹部QBが埋め込まれるように抵抗層RAを形成し、p型窒化物ガイド層18Aの凸部QTおよび抵抗層RAが覆われるように抵抗層RA´を形成することができる。
【0104】
次に、図11(b1)および図11(b2)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、抵抗層RA、RA´をパターニングし、導波方向D1に沿って設けられた開口部KA、KA´を抵抗層RA、RA´にそれぞれ形成する。このとき、開口部KA、KA´では、抵抗層RA、RA´がそれぞれ除去され、p型窒化物ガイド層18´の凸部QTと凹部QBが抵抗層RA、RA´から露出される。
【0105】
次に、図12(a1)、図12(a2)および図12(a3)に示すように、エピタキシャル成長によって、開口部KA、KA´に埋め込まれるようにp型窒化物ガイド層18、18A上にp型窒化物ガイド層18A´を選択的に形成する。このとき、開口部KAには図5で示したように、導波方向D1に沿って回折格子EAが両側に設けられた導波層WAが形成される。また、開口部KA´には、回折格子が両側に設けられていない導波層WA´が形成される。
【0106】
次に、図13(a1)、図13(a2)および図13(a3)に示すように、エピタキシャル成長によって、p型窒化物ガイド層18A´および抵抗層RA´上にp型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21を順次形成する。
【0107】
これにより、1回の抵抗層RA、RA´の成膜に基づいて、活性層15を導波する導波光を横方向に閉じ込め可能としつつ、回折格子KAを活性層15に近づけて配置することが可能となる。また、p型窒化物ガイド層18Aと回折格子KAとの屈折率差を確保しつつ、活性層15に注入される電流を開口部KA´の位置で狭窄させることが可能となる。このため、製造工程の煩雑化を抑制した上で、p型窒化物ガイド層18A、18A´の結晶欠陥の増大を抑制しつつ、導波光と回折格子KAとの間の結合係数を増大させることが可能となる。また、半導体レーザLCの発熱を抑制しつつ、半導体レーザLCの閾値電流を低下させることができる。この結果、コストアップを抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることが可能となるとともに、半導体レーザLCの信頼性を確保しつつ出力を増大させることができる。
【0108】
図14(a)は、第6実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図、図14(b)は、第6実施形態に係る半導体発光素子の構成を導波方向の横方向に沿って切断して示す断面図である。なお、図14(b)は、図14(a)のX1-X1線の位置で切断した構成を示す。
【0109】
図14(a)および図14(b)において、半導体レーザLDは、図2(b)の半導体レーザLAの抵抗層RAの代わりに抵抗層RDを備える。半導体レーザLDのそれ以外の点は、図2(b)の半導体レーザLAと同様に構成することができる。
【0110】
抵抗層RDは、p型窒化物ガイド層18内の縦方向D3の位置が抵抗層RAの縦方向D3の位置と異なる点以外は、抵抗層RAと同様に構成することができる。すなわち、抵抗層RDのトップ面は、p型窒化物ガイド層18のトップ面より低い位置に配置することができる。これにより、回折格子EAを活性層15により近づけることができ、導波光と回折格子EAとの結合係数を向上させることができる。
【0111】
図15は、第7実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図であって、説明用に同半導体発光素子内で形成される定在波の状態を模式的に示した図である。また、図16は、第7実施形態に係る半導体発光素子の構成を2次回折格子の位置で導波方向に沿って切断した断面図である。なお、図16は、図15のA1-A1線の位置で切断した構成を示す。
【0112】
図15において、半導体レーザLEは、図5(b)の半導体レーザLBのp型窒化物半導体層E2の代わりにp型窒化物半導体層E2´´を備える。p型窒化物半導体層E2´´は、抵抗層RAの代わりに抵抗層REを備える。半導体レーザLEのそれ以外の点は、図5(b)の半導体レーザLBと同様に構成することができる。
【0113】
抵抗層REは、p型窒化物半導体層E2´´の一部に位置する。導波方向D1の縦方向D3におけるp型窒化物半導体層E2´´内の抵抗層REの位置は、特に限定されない。抵抗層REは、p型窒化物半導体層E2´´よりも屈折率が小さくかつ抵抗が大きい。ここで、抵抗層REは、屈折率導波型および利得導波型のいずれか少なくとも1つのファブリペロー共振器を構成可能とする。また、高次のDFB構造を持つようにp型窒化物半導体層E2´´の一部に配置することができる。抵抗層REは、最大公約数が1であって次数が互いに異なる複数の高次回折格子を備える。抵抗層REは、例えば、AlNからなる高抵抗層を用いることができる。
【0114】
抵抗層REは、図15に示すように、開口部KE、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3を備える。開口部KE内には導波層WEが設けられる。2次回折格子EE2のピッチΛ2は、導波層WEを導波するレーザ光の発振周期の2倍となる長さに一致させることができる。3次回折格子EE3のピッチΛ3は、導波層WEを導波するレーザ光の発振周期の3倍となる長さに一致させることができる。2次回折格子EE2および3次回折格子EE3は、導波層WEの両側に位置する。このとき、導波層WEの一方の側にはピッチΛ2の凹凸が形成され、2次回折格子EE2の凹凸を導波層WEの一方の側の凹凸に嵌め合わせることができる。導波層WEの他方の側にはピッチΛ3の凹凸が形成され、3次回折格子EE3の凹凸を導波層WEの他方の側の凹凸に嵌め合わせることができる。このとき、p型窒化物ガイド層18Aを2次回折格子EE2の凹部(図の回折格子形成部のグレー部分)、3次回折格子EE3の凹部(図の回折格子形成部のグレー部分)および開口部KE(図の回折格子と導波層WEを囲白線部)に埋め込むことで、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3のそれぞれの凸部と凹部の屈折率差を増大させつつ、p型窒化物半導体層E2´´(図16参照)に導波層WEを形成することができる。
【0115】
ここで、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3は、以下の部分のいずれか少なくとも一つが一致している領域を備える。
1)2次回折格子EE2の凸部ST2の中心と3次回折格子EE3の凸部ST3の中心、2)2次回折格子EE2の凹部SB2の中心と3次回折格子EE3の凹部SB3の中心、3)2次回折格子EE2の凸部ST2の中心と3次回折格子EE3の凹部SB3の中心、4)2次回折格子EE2の凹部SB2の中心と3次回折格子EE3の凸部ST3の中心
【0116】
例えば、導波方向D1の位置PC1、PC3、PC5では、2次回折格子EE2の凸部ST2の中心と3次回折格子EE3の凸部ST3の中心が一致する。導波方向D1の位置PC2、PC4、PC6では、2次回折格子EE2の凹部SB2の中心と3次回折格子EE3の凸部ST3の中心が一致する。
【0117】
開口部KE、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3は、活性層15の端面MA、MBから後退した位置より形成されている。2次回折格子EE2および3次回折格子EE3は、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3のそれぞれの周期以上の距離だけ活性層15の端面MA、MBから後退させることができる。
【0118】
ここで、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の次数の最大公約数を1とすることにより、活性層15を導波する導波光の導波方向D1に回折条件を一致させつつ、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の周期を増大させることができる。このため、発振効率の低下を抑制しつつ、発振波長の安定化を図ることが可能となる。更に、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の微細化に伴う製造の困難性を緩和しつつ、発振波長の安定性の高い青紫レーザダイオードを実現することができる。
【0119】
すなわち、2次回折格子EE2は、面内(180°方向:図16の断面図ではD1方向、および、紙面方向垂直な方向)の方向だけでなく、90°の方向(図16におけるD3方向)にも発光光を回折する。3次回折格子EE3は、面内(180°)の方向の他、図16のD1軸に対して約70°の方向と約110°の方向にも発光光を回折する。しかしながら、2次回折格子EE2と3次回折格子EE3の次数の最大公約数は1となるため、面内(180°)の方向の回折のみ起こり、1次回折格子に比べてピッチを増大させつつ、1次回折格子と同様な効果を得ることができる。
【0120】
また、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の凸部と凸部の中心、凹部と凹部の中心および凸部と凹部の中心のいずれか少なくとも一つが一致している領域を設けることにより、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3によって形成される定在波VEの電場の持つエネルギー密度の差を増大させることができ、ストップバンド幅を増大させることができる。このため、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3で構成される複数の高次回折格子のSMSRを増大させることができ、導波光と高次回折格子との間の結合係数を増大させることができる。
【0121】
図17(a)および図17(b)は、図15に示した回折格子の屈折率分布を示している。同図の横軸は光の導波方向の位置であり、縦軸は屈折率の大きさを示す図である。図17(c)および図17(d)は、図15の導波路に形成される定在波の位相とエネルギーの関係を示す図である。同図の横軸は光の導波方向の位置であり、縦軸は振幅の大きさである。なお、図17(a)は、図15の2次回折格子EE2において、周期(ピッチ:Λ2)178.3nm、デューティが0.2であるときの導波方向D1の屈折率分布、図17(b)は、図15の3次回折格子EE3において、周期(ピッチ:Λ3)267.5nm、デューティが0.2であるときの導波方向D1の屈折率分布を示す。
【0122】
図17(a)および図17(b)において、2次回折格子EE2と3次回折格子EE3は、凸部の中心と凸部の中心が一致する点PC12、PC14と、凹部の中心と凸部の中心が一致する点PC11、PC13が存在する。このとき、同じ波長であっても、回折格子に対する定在波VE1、VE2の導波方向D1の位置によって振幅の大きさで示されている電場Eのエネルギー密度u=1/2εEが異なる。εは、電場Eが形成される媒質の屈折率である。定在波VE1、VE2のエネルギー密度uの差がストップバンド幅に相当する。このとき、2次回折格子EE2の凸部の中心と3次回折格子EE3の凸部の中心が一致する点PC12、PC14および2次回折格子EE2の凹部の中心と3次回折格子EE3の凸部の中心が一致する点PC11、PC13では、定在波VE1、VE2間の振幅の差分が増大している。つまり、定在波VE1、VE2のエネルギー密度uの差が増大する。言い換えると、2次回折格子EE2の凸部の中心と3次回折格子EE3の凸部の中心が一致する点PC12、PC14および2次回折格子EE2の凹部の中心と3次回折格子EE3の凸部の中心が一致する点PC11、PC13を設けることにより、ストップバンド幅を増大させることができ、導波光と高次回折格子との間の結合係数を増大させることができる。
【0123】
図18は、複数の回折格子の相対的位置関係を変化させる場合に調整できるパラメータを図15に示した2次回折格子と3次回折格子を例に示す屈折率と導波方向の位置との関係図である。
図18において、2次回折格子EE2と3次回折格子EE3の凹凸の相対的位置関係には無数の選び方がある。2次回折格子EE2と3次回折格子EE3の凹凸の相対的位置関係を変化させる場合、2次回折格子EE2と3次回折格子EE3との間の格子間シフトFKを変化させてもよいし、2次回折格子EE2のデューティDY2を変化させてもよいし、3次回折格子EE3のデューティDY3を変化させてもよいし、これらの変化を組み合わせてもよい。なお、格子間シフトFKとは、2次回折格子と3次回折格子との間の共振器端面からの物理的距離のズレであって、この格子間シフトによって共振器中に形成される波の位相のずれを形成するものである。
【0124】
図19Aは、第7実施形態に係る半導体発光素子の回折格子のデューティを変化させたときの格子間シフトとストップバンド幅の関係を示す図である。
図19Aにおいて、2次回折格子EE2のデューティDY2と3次回折格子EE3のデューティDY3を同じ値としたときに、格子間シフトFKを0.1~0.5の間で変化させた場合のストップバンド幅を見積もった。ここで、2次回折格子のデューティDY2と3次回折格子のデューティDY3は、◆印が0.1の場合、■印が0.2の場合、▲印が0.3の場合、×印が0.4の場合米印が0.5の場合を示している。
【0125】
この結果から、複数の回折格子の相対的位置関係によって、ストップバンド幅が変化することが判った。今回の見積もりでは、2次回折格子EE2のデューティDY2と3次回折格子EE3のデューティDY3が0.2かつ格子間シフトFKが0.5のときに最も大きいストップバンド値が得られた。
【0126】
図19Bは、第7実施形態に係る半導体発光素子のストップバンド幅の最大化方法を示す図である。
図19Bにおいて、2次回折格子EE2のデューティDY2と3次回折格子EE3のデューティDY3をそれぞれ変化させた場合、2次回折格子EE2のデューティDY2が0.3かつ3次回折格子EE3のデューティDY3が0.5かつ格子間シフトFKが0のとき、2次回折格子EE2のデューティDY2と3次回折格子EE3のデューティDY3をそれぞれ0.2と同じ値にした場合に比べて、さらに大きなストップバンド幅が得られることが判った。
【0127】
図20は、第8実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図である。
図20において、半導体レーザLFは、図15の半導体レーザLEの抵抗層REの代わりに抵抗層RFを備える。半導体レーザLFのそれ以外の点は、図15の半導体レーザLEと同様に構成することができる。
【0128】
抵抗層RFは、開口部KF、2次回折格子EF2および3次回折格子EF3を備える。開口部KFには導波層WFが設けられる。2次回折格子EF2および3次回折格子EF3は、導波方向D1に沿って導波層WFの両側に設けられる。2次回折格子EF2には位相シフト部SF2が設けられ、3次回折格子EF3には位相シフト部SF3が設けられる。
【0129】
ここで、半導体レーザLFは端面反射型のレーザであって、結晶劈開によって反射面を構成するが、劈開位置に応じて特性がばらつく。このとき、2次回折格子EF2に位相シフト部SF2を設け、3次回折格子EF3に位相シフト部SF3を設けることにより、劈開位置に応じた特性のばらつきに対応しつつ、回折格子のSMSRを向上させることができ、所望の発振波長の発光効率を向上させることができる。
【0130】
このような位相シフト分布帰還型レーザダイオードでは、位相シフト部がない回折格子を持つレーザダイオードと比較して、より大きなSMSRが得やすくなる。また、閾利得を下げることができ、窒化物半導体発光素子の特性をより向上させることができる。
【0131】
なお、位相シフト部の中心は、反射率が低い方の端面MAから端面MA、MB間の距離(L1+L2)の60%から80%の間の距離L1に位置するのが好ましい。特に、端面MAから位相シフト部の中心までの距離L1は、端面MA、MB間の距離(L1+L2)の70%(L1:L2=7:3)に設定するのが好ましい。これにより、回折格子によって形成される定在波の山の中心と山の中心、谷の中心と谷の中心または山の中心と谷の中心と一致する位置に位相シフト部を配置することができ、SMSRを向上させることができる。
【0132】
また、Nを自然数 (正の整数)、回折格子の実効屈折率をneff、λをブラッグ波長とすると、位相シフト部の長さはλ/(4・neff)・(2N-1)の式を満たすことが好ましい。これにより、回折格子によって形成される定在波の山の中心と山の中心、谷の中心と谷の中心または山の中心と谷の中心と一致する位置に位相シフト部を配置することができ、SMSRを向上させることができる。
【0133】
図21(a)および図21(b)は、第9実施形態の半導体発光素子の回折格子の屈折率分布を示す図である。また、図21(c)および図21(d)は、第9実施形態の半導体発光素子の導波路に形成される定在波の位相とエネルギーの関係を示す図である。なお、この第9実施形態では、図15の2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の組み合わせの代わりに、3次回折格子と5次回折格子の組み合わせを用いた。
【0134】
図21(a)および図21(b)において、3次回折格子のピッチは、レーザ光の発振周期の3倍に一致させることができる。5次回折格子のピッチは、レーザ光の発振周期の5倍に一致させることができる。また、3次回折格子と5次回折格子の組み合わせの場合においても、これらの回折格子の次数の最大公約数は1となるため、面内(180°)の方向の回折のみ起こる。このため、安定したレーザ発振を効率よく実現できるといった効果を得ることができる。
【0135】
図21(a)は3次回折格子の屈折率分布を示し、屈折率の低い部分は3次回折格子の凹部に対応し、高い部分は凸部に対応している。同様に(b)は5次回折格子の屈折率分布を示している。3次回折格子と5次回折格子の組み合わせでは、3次回折格子の凹部の中心と5次回折格子の凸部の中心が一致している点PC21、PC23と、3次回折格子の凸部の中心と5次回折格子の凹部の中心が一致している点PC22、PC24があることが判る。このとき、3次回折格子の凹部の中心と5次回折格子の凸部の中心が一致している点PC21、PC23と、3次回折格子の凸部の中心と5次回折格子の凹部の中心が一致している点PC22、PC24では、定在波VE3、VE4間の振幅の差分が増大し、定在波VE3、VE4のエネルギー密度uの差が増大する。このため、3次回折格子の凹部の中心と5次回折格子の凸部の中心が一致している点PC21、PC23と、3次回折格子の凸部の中心と5次回折格子の凹部の中心が一致している点PC22、PC24を設けることにより、ストップバンド幅を増大させることができる。結果として、導波光と高次回折格子との間の結合係数を増大させることができる。
【0136】
図22は、第9実施形態に係る半導体発光素子の回折格子のデューティを変化させたときの格子間シフトとストップバンド幅の関係を示す図である。
図22において、3次回折格子のデューティと5次回折格子のデューティを同じ値としたときに、格子間シフトを0.1~0.5の間で変化させた場合のストップバンド幅を見積もった。ここで、3次回折格子のデューティDY3と5次回折格子のデューティDY5は、◆印が0.1の場合、■印が0.2の場合、▲印が0.3の場合、×印が0.4の場合米印が0.5の場合を示している。
【0137】
この結果から、複数の回折格子の相対的位置関係によって、ストップバンド幅が変化することが判った。今回の見積もりでは、3次回折格子のデューティと5次回折格子のデューティが0.5かつ格子間シフトが0.5のときに最も大きいストップバンド値が得られた。
【0138】
なお、3次回折格子のデューティと5次回折格子のデューティは、互いに異なっていてもよい。例えば、3次回折格子のデューティが0.5かつ5次回折格子のデューティが0.1かつ格子間シフトが0.5という条件と、3次回折格子のデューティが0.5かつ5次回折格子のデューティが0.3かつ格子間シフトが0という条件の場合、図22でストップバンド値が最も大きくなった(3次回折格子のデューティと5次回折格子のデューティが0.5かつ格子間シフトが0.5)という条件の場合と同様のストップバンド値が得られた。
【0139】
図23は、第10実施形態に係る半導体発光素子の抵抗層の構成を示す平面図である。
図23において、半導体レーザLGは、図20の半導体レーザLFの抵抗層RFの代わりに抵抗層RGを備える。半導体レーザLGのそれ以外の点は、図20の半導体レーザLFと同様に構成することができる。
【0140】
抵抗層RGは、図20の開口部KE、2次回折格子EE2および3次回折格子EE3の代わりに、開口部KG、2次回折格子EG2、EG2´および3次回折格子EG3、EG3´を備える。
【0141】
開口部KG内には導波層WGが設けられる。2次回折格子EG2、EG2´および3次回折格子EG3、EG3´は、導波方向L1に沿って導波層WGの両側に位置する。このとき、3次回折格子EG3、EG3´は、2次回折格子EG2、EG2´よりも導波層WGの近くに配置することができる。これにより、高次回折格子を発光光の光分布のより近くに配置し、低次回折格子を光分布より遠くに配置することができる。このため、低次回折格子の結合係数と高次回折格子の結合係数を概ね同じ大きさにすることができ、発光光を180°方向に効率的に回折させることができる。
【0142】
図24は、回折格子の高さと結合係数との関係を示す図である。
図24において、文献(IEEE J.Quantum Electron.QE-11,p867,1975)によると、次数が大きくなるに従って同じ回折格子の高さでも結合係数が小さくなる。この文献に示される方法と同様な方法によって、TEモードかつ矩形回折格子の場合について、次数の異なる回折格子の結合係数を見積もった。その結果、図24に示すように次数(図中の“m”で表される数字)が大きくなるに従って、同じ回折格子の高さでも結合係数が小さくなることが判る。ここで、結合係数の見積もりに用いた屈折率は、n=2.48、n=2.49、n=2.48とした。また、この文献の方法と共通な変数として、ガイド層厚みt=3μm、発振波長λ=444nm、デューティ=0.4とした。
【0143】
図25から図29は、第11実施例に係る半導体発光素子の製造方法を示す。各図において(a)は、第11実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、(b)は各図の(a)に対応した導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。なお、図25(b)から図27(b)および図29(b)は、対応する各図(a)のA1-A1線の位置でそれぞれ切断した構成、図28(b)は、図28(a)のB1-B1線の位置で切断した構成を示す。
【0144】
図25(a)および図25(b)において、エピタキシャル成長によって、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13、アンドープ窒化物ガイド層14、活性層15、アンドープ窒化物ガイド層16、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18、18Aをn型窒化物半導体基板11上に順次積層する。
【0145】
次に、図26(a)および図26(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、p型窒化物ガイド層18Aをパターニングし、導波方向D1に沿って発振波長の2倍の周期で凸部QT2と凹部QB2をp型窒化物ガイド層18Aに交互に形成するとともに、導波方向D1に沿って発振波長の3倍の周期で凸部QT3と凹部QB3をp型窒化物ガイド層18Aに交互に形成する。このとき、凸部QT2と凹部QB2の配列と、凸部QT3と凹部QB3の配列は、導波方向D1の横方向D2に隣接させて配置することができる。
【0146】
次に、図27(a)および図27(b)に示すように、エピタキシャル成長またはスパッタによって、p型窒化物ガイド層18、18A上に抵抗層RH、RH´を順次形成し、2次回折格子EH2および3次回折格子EH3を形成する。抵抗層RH、RH´は、一回の成膜処理に基づいて一括形成することができる。このとき、p型窒化物ガイド層18Aの凹部QB2、QB3が埋め込まれるように抵抗層RHを形成し、p型窒化物ガイド層18Aの凸部QT2、QT3および抵抗層RHが覆われるように抵抗層RH´を形成することができる。
【0147】
次に、図28(a)および図28(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、抵抗層RH、RH´をパターニングし、導波方向D1に沿って設けられた開口部KH、KH´を抵抗層RH、RH´にそれぞれ形成する。このとき、開口部KH、KH´では、抵抗層RH、RH´がそれぞれ除去され、p型窒化物ガイド層18´の凸部QT2、QT3と凹部QB2、QB3が抵抗層RH、RH´から露出される。
【0148】
次に、図29(a)および図29(b)に示すように、エピタキシャル成長によって、開口部KH、KH´に埋め込まれるようにp型窒化物ガイド層18、18A上および抵抗層RH´上にp型窒化物ガイド層18A´を選択的に形成する。このとき、開口部KHには、導波方向D1に沿って2次回折格子EH2および3次回折格子EH3が両側に設けられた導波層WHが形成される。また、開口部KH´には、2次回折格子EH2および3次回折格子EH3が両側に設けられていない導波層WH´が形成される。
【0149】
次に、エピタキシャル成長によって、p型窒化物ガイド層18A´上にp型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21を順次形成する。
【0150】
これにより、1回の抵抗層RH、RH´の成膜処理に基づいて、活性層15を導波する導波光を横方向に閉じ込め可能としつつ、2次回折格子EH2および3次回折格子EH3を活性層15に近づけて配置することが可能となる。更に、p型窒化物ガイド層18Aと2次回折格子EH2および3次回折格子EH3との屈折率差を確保しつつ、活性層15に注入される電流を開口部KH´の位置で狭窄させることが可能となる。このため、導波光と2次回折格子EH2および3次回折格子EH3との間の結合係数を増大させることが可能となるとともに、半導体レーザの発熱を抑制しつつ、半導体レーザの閾値電流を低下させることができる。この結果、1次回折格子に比べてピッチを拡大しつつ、発振波長の安定化を図ることが可能となるとともに、半導体レーザの信頼性を確保しつつ出力を増大させることができる。
【0151】
図30(a)から図33(a)は、第12実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す平面図、図30(b)から図33(b)は、図30(a)から図33(a)の導波方向に沿ってそれぞれ切断した断面図である。なお、図30(b)から図33(b)は、図30(a)から図33(a)のA1-A1線の位置でそれぞれ切断した構成を示す。
【0152】
図30(a)および図30(b)において、エピタキシャル成長によって、n型窒化物クラッド層12、n型窒化物ガイド層13、アンドープ窒化物ガイド層14、活性層15、アンドープ窒化物ガイド層16、p型キャリアブロック層17およびp型窒化物ガイド層18をn型窒化物半導体基板11上に順次積層する。さらに、エピタキシャル成長またはスパッタなどの方法によって、抵抗層RIをp型窒化物ガイド層18上に積層する。
【0153】
次に、図31(a)および図31(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術に基づいて、抵抗層RIをパターニングし、導波方向D1に沿って2次回折格子EI2および3次回折格子EI3が両側に設けられた開口部KIを抵抗層RIに形成する。
【0154】
次に、図32(a)および図32(b)に示すように、エピタキシャル成長によって、開口部KIに埋め込まれるようにp型窒化物ガイド層18Aをp型窒化物ガイド層18上に選択的に形成する。このとき、2次回折格子EI2の凹部および3次回折格子EI3の凹部にp型窒化物ガイド層18Aを埋め込むことができ、2次回折格子EI2の凹部と凸部の屈折率差および3次回折格子EI3の凹部と凸部の屈折率差を抵抗層RIの屈折率で規定することができる。また、開口部KIには、導波方向D1に沿って2次回折格子EI2および3次回折格子EI3が両側に設けられた導波層WIが形成される。
【0155】
次に、図33(a)および図33(b)に示すように、エピタキシャル成長によって、p型窒化物ガイド層18A上にp型窒化物クラッド層20およびp型窒化物コンタクト層21を順次形成する。
【0156】
これにより、導波層WIを開口部KIに形成するのと同時に導波層WIの両側に2次回折格子EI2および3次回折格子EI3を形成することが可能となる。また、p型窒化物ガイド層18Aと2次回折格子EI2および3次回折格子EI3との屈折率差を増大させることができる。このため、工程数の増大を抑制しつつ、1次回折格子に比べてピッチが拡大されたDFB構造を有するインナーストライプ型半導体レーザを安定して形成することができる。
【符号の説明】
【0157】
E1 n型窒化物半導体層
E2 p型窒化物半導体層
E3 閉じ込め層
11 n型窒化物半導体基板
12 n型窒化物クラッド層
13 n型窒化物ガイド層
14、16 アンドープ窒化物ガイド層
15 活性層
17 p型キャリアブロック層
18 p型窒化物ガイド層
RA 抵抗層
20 p型窒化物クラッド層
21 p型窒化物コンタクト層
図1
図2
図3
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図9A
図9B
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