(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045013
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】家具用の板部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47B 96/20 20060101AFI20230327BHJP
A47B 96/18 20060101ALI20230327BHJP
A47B 13/08 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
A47B96/20 A
A47B96/18 E
A47B96/18 F
A47B96/20 E
A47B96/20 C
A47B13/08 A
A47B13/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153184
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】301042505
【氏名又は名称】コバヤシ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
【テーマコード(参考)】
3B053
【Fターム(参考)】
3B053PA00
3B053PB01
3B053PB03
3B053PC03
3B053PC05
3B053QB01
3B053QC02
(57)【要約】
【課題】 良好な使用感の維持を容易にしつつ環境にも配慮した家具用の板部材を提供する。
【解決手段】 板状の本体10の外面に表面材20を被覆した家具用の板部材1であって、本体10は、厚み方向に貫通する貫通孔17が形成され、表面材20は、貫通孔17の一方の開口端を覆うように、微粘着性の接着剤により本体10に接着されており、貫通孔17の他方の開口端から棒状の押圧部材100を挿入して表面材20を押圧することにより表面材20を剥離可能に構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の本体の外面に表面材を被覆した家具用の板部材であって、
前記本体は、厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記表面材は、前記貫通孔の一方の開口端を覆うように、微粘着性の接着剤により前記本体に接着されており、
前記貫通孔の他方の開口端から棒状の押圧部材を挿入して前記表面材を押圧することにより前記表面材を剥離可能に構成されている家具用の板部材。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記表面材の縁部により覆われている請求項1に記載の家具用の板部材。
【請求項3】
前記本体は、周縁がエッジバンドで覆われており、
前記エッジバンドは、前記本体の外面から突出する突出部を有しており、
前記表面材は、前記突出部との間で少なくとも一部に隙間が生じるように配置されている請求項1または2に記載の家具用の板部材。
【請求項4】
前記突出部の内周側には、内方に向けて突出高さが徐々に低くなるように湾曲する湾曲部が形成されている請求項3に記載の家具用の板部材。
【請求項5】
間隔をあけて対向配置した一対の面板の周囲をエッジバンドで覆った後に一対の前記面板の間に芯材を注入して板状の本体を形成する第1のステップと、
形成された前記本体に貫通孔を形成する第2のステップと、
前記本体の外面に表面材を被覆する第3のステップとを備え、
前記第3のステップは、前記貫通孔の一方の開口端を覆うように、前記表面材を微粘着性の接着剤により前記本体に接着する家具用の板部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具用の板部材およびその製造方法に関し、より詳しくは、机の天板や収納棚の棚板などに使用される家具用の板部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家具用の板部材として、例えば、特許文献1に開示された化粧パネルが知られている。この化粧パネルは、表裏面を構成する一対の化粧板の間に発泡樹脂からなる芯材層が設けられており、芯材層の外周にエッジバンドが取り付けられて構成されている。一対の化粧板およびエッジバンドは、いずれも芯材層に接着剤で固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の化粧パネルは、机の天板等として使用すると、表面に損傷や汚れなどが生じて使用感が悪化するおそれがある。従来は、このような問題が大きくなると、化粧パネル自体を新たなものに取り替えて対応していたが、廃棄される量が多くなることで環境負荷が大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、良好な使用感の維持を容易にしつつ環境にも配慮した家具用の板部材およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、板状の本体の外面に表面材を被覆した家具用の板部材であって、前記本体は、厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、前記表面材は、前記貫通孔の一方の開口端を覆うように、微粘着性の接着剤により前記本体に接着されており、前記貫通孔の他方の開口端から棒状の押圧部材を挿入して前記表面材を押圧することにより、前記表面材を剥離可能に構成されている家具用の板部材により達成される。
【0007】
この家具用の板部材において、前記貫通孔は、前記表面材の縁部により覆われていることが好ましい。
【0008】
前記本体の周縁がエッジバンドで覆われ、前記エッジバンドが前記本体の外面から突出する突出部を有する構成の場合、前記表面材は、前記突出部との間で少なくとも一部に隙間が生じるように配置することができる。この構成において、前記突出部の内周側には、内方に向けて突出高さが徐々に低くなるように湾曲する湾曲部が形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、間隔をあけて対向配置した一対の面板の周囲をエッジバンドで覆った後に一対の前記面板の間に芯材を注入して板状の本体を形成する第1のステップと、形成された前記本体に貫通孔を形成する第2のステップと、前記本体の外面に表面材を被覆する第3のステップとを備え、前記第3のステップは、前記貫通孔の一方の開口端を覆うように、前記表面材を微粘着性の接着剤により前記本体に接着する家具用の板部材の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な使用感の維持を容易にしつつ環境にも配慮した家具用の板部材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る家具用の板部材の平面図である。
【
図2】
図1に示す家具用の板部材の要部断面図である。
【
図3】
図2に示す表面材の一部を剥離した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す表面材の一部を剥離した状態を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る家具用の板部材の平面図である。
【
図6】
図5に示す家具用の板部材の要部断面図である。
【
図7】
図6に示す表面材の一部を剥離した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る家具用の板部材の平面図である。本実施形態の家具用の板部材は、机やテーブル等の天板として使用される場合の一例を示すものである。また、
図2は、
図1に示す天板1の要部断面図である。
図1および
図2に示すように、天板1は、板状の本体10と、本体10の外面を被覆する表面材20とを備えており、全体として平面視矩形状に形成されている。天板1は、本実施形態のように平板状であることが好ましいが、一部または全体が湾曲する形状であってもよい。
【0013】
本体10は、一対の面板12,13の間に芯材15を備えており、一対の面板12,13および芯材15の周縁全体がエッジバンド14により覆われて構成されている。
【0014】
一対の面板12,13は、厚みが薄い(例えば3mm程度)平板状の部材であり、ABS樹脂やポリスチレン樹脂等の合成樹脂や、木質材料等により形成することができる。
【0015】
エッジバンド14は、可撓性を有するテープ状の部材であり、例えば、各種エラストマーや、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂により形成される。エッジバンド14の幅方向の両側縁部は同方向に屈曲しており、この屈曲部分が一対の面板12,13の外側にそれぞれ係合することにより、一対の面板12,13の外面側に突出する突出部14a,14bが形成されている。突出部14a,14bの内周側には、内方に向けて突出高さが徐々に低くなるように円弧状に湾曲する湾曲部14c,14dがそれぞれ形成されている。
【0016】
芯材15は、一対の面板12,13よりも大きな厚み(例えば20mm程度)を有しており、発泡ポリスチレンや発泡ABS等の発泡樹脂により形成されている。
【0017】
使用時に下面側となる面板13の内面側には、取付部材16が接着等により固定されている。取付部材16は、例えばABS樹脂やパーティクルボード等かなる板状部材であり、タッピングビスや木ネジ等を螺合することにより、脚部を有する支持フレーム(図示せず)を面板13に固定することができる。取付部材16の厚みは、例えば5mm程度である。
【0018】
表面材20は、厚みが薄い(例えば、約1mm)矩形平板状の部材であり、例えば、メラミン化粧板やポリエステル合板など種々の素材により形成することができる。表面材20は、上面側の面板12の外面に、微粘着性の接着剤からなる微粘着層を介して接着される。微粘着層は、天板1の使用時には本体10に対する表面材20の接着状態が確実に維持される一方、表面材20を剥離する際には本体10から表面材20を引き?がし可能な適度な粘着力を有しており、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを使用することができる。
【0019】
上記の構成を備える天板1において、本体10の角部には、厚み方向に貫通して一対の面板12,13にそれぞれ開口する貫通孔17が形成されている。貫通孔17は、使用時に上面側となる一方の開口端が表面材20の縁部により覆われており、使用時に下面側となる他方の開口端が開放されている。
【0020】
上記の構成を備える天板1は、下記のように製造することができる。まず、一対の面板12,13を間隔をあけて対向配置した状態で、一対の面板12,13の周囲をエッジバンド14で覆うことにより、一対の面板12,13の間に閉鎖空間を形成する。ついで、エッジバンド14に形成した注入口(図示せず)から閉鎖空間内に発泡樹脂材料を注入した後、注入口を閉じて加熱硬化させることにより、本体10を形成する(第1のステップ)。一対の面板12,13およびエッジバンド14は、発泡樹脂材料により芯材15を形成する際の発泡型枠として使用できるため、本体10を容易に形成することができる。ついで、本体10の所定位置に貫通孔17を形成する(第2のステップ)。この後、貫通孔17の上面側の開口端を覆うように、表面材20を微粘着性の接着剤により本体10の外面に接着する(第3のステップ)。こうして、天板1を容易に製造することができる。天板1の製造方法は、必ずしも上記の方法に限定されるものではなく、例えば、板状の芯材15の両面に一対の面板12,13を貼り合わた後に貫通孔17を形成し、貫通孔17を表面材20で剥離可能に覆うことにより、天板1を形成することもできる。
【0021】
本実施形態の天板1は、表面材20が微粘着性の接着剤で本体10に接着されているため、表面材20に大きな傷や汚れなどが生じて使用感が低下した場合に、後述するように貫通孔17を利用して表面材20を本体10から容易に剥離することができる。したがって、表面材20を新たなものに取り替えて、使用感を良好に維持することができる。また、本体10は継続して使用できるため、もとの表面材20を廃棄するだけでよく、天板1の全体を廃棄する必要がないことから、廃棄量を抑制して環境負荷を低減することができる。取り替え後の表面材20は、同じ種類のものであってもよいが、色や質感などを変えることでバリエーションを楽しむこともできる。
【0022】
表面材20を剥離する際には、
図3に示すように、棒状の押圧部材100を貫通孔17に下方から挿入して表面材20を押圧することにより、表面材20を部分的に押し上げて剥離することができる。この後、表面材20の剥離箇所を起点として、
図4に矢印で示すように引き上げることにより、表面材20の全体を本体10から引き剥がす。貫通孔17の形成位置は、表面材20の縁部を押し上げ可能な位置であることが好ましく、これによって表面材20の取り替えを迅速容易に行うことが可能である。本発明における表面材20の縁部とは、押圧部材100による押圧によって表面材20の外周端を剥離可能な表面材20周縁の枠状部分をいう。この枠状部分の幅は、例えば10cmである。
【0023】
また、本実施形態においては、貫通孔17を1箇所のみに形成しているが、貫通孔17の数は特に限定されるものではなく、例えば、複数の貫通孔17を、表面材20の四隅に対応する箇所、表面材20の一辺に沿った複数箇所、表面材20の中心に対して相互に対称な箇所等に、それぞれ形成してもよい。貫通孔17の開口形状は、本実施形態では円形状としているが、楕円形状や多角形状等であってもよく、あるいは、専用の押圧部材100のみが貫通孔17に挿通可能となるように特殊な異形状に形成してもよい。
【0024】
表面材20を交換する際の剥離をより容易に行うため、エッジバンド14と表面材20との間に隙間を形成してもよい。
図5に示す天板1は、表面材20が、エッジバンド14の突出部14aで囲まれた上面側の面板12の外面よりも若干小さく形成されており、表面材20を面板12に接着した際に、突出部14aと表面材20との間に僅かな隙間Sが形成されている。隙間Sの大きさは、表面材20を引き剥がす際に使用するへら状または刃状のスクレーパを差し込み可能な程度の大きさであればよいが、大きすぎるとこの隙間にゴミ等が溜まりやすいため、例えば、1~5mm程度である。
【0025】
図6は、
図5の隙間Sの近傍を示す要部拡大図である。
図6に示すように、本体10の外面(面板12の外面)を基準としたときのエッジバンド14の突出部14aの突出高さH1は、微粘着層21を介して接着された表面材20の上面までの高さH2よりも高いことが好ましい。これにより、表面材20の周縁を突出部14aで保護することができるため、表面材20の角部の露出を防止して不意の剥離等を抑制することができる。
【0026】
表面材20を剥離する際には、
図7に示すように、スクレーパ110の先端部111を、隙間Sを介して面板12と表面材20との間に差し込み、スクレーパ110を、突出部14との当接部Cを支点として矢示のように回動させることで、梃子の原理で表面材20の縁部20aを剥離した後、剥離された縁部20aを持ち上げて表面材20の全体を剥離する。突出部14aの内周側には湾曲部14cが形成されているため、スクレーパ110を湾曲部14cに沿ってスムーズに移動させることができ、先端部111の差し込みや支点Cの移動を促して表面材20の縁部を容易に剥離することができる。
【0027】
隙間Sは、突出部14aとの間で表面材20の周縁全体に形成してもよく、あるいは、表面材20の周縁の一部のみに形成してもよい。
図5に示す表面材20は、下縁部および右縁部を突出部14aに沿って隙間が生じないように配置することで、表面材20の上縁部および左縁部と突出部14aとの間に隙間Sが形成されており、隙間Sの近傍に貫通孔17が形成されている。この構成によれば、貫通孔17への押圧部材100の挿入と、隙間Sへのスクレーパ110の差し込みとを併用して、表面材20を一箇所から確実に剥離することができる。これに対し、貫通孔17を隙間Sから離隔した箇所に形成して、表面材20を複数箇所から剥離することもできる。なお、隙間Sの形成のみによって表面材20を剥離できる場合には、貫通孔17を形成しないことも可能である。
【0028】
本発明の家具用の板部材は、上記のように天板として好適に使用することができるが、この用途に限定されるものではなく、例えば、収納棚などの棚板や、室内の仕切板(パーティション)等としても使用することができる。本実施形態の家具用の板部材は、本体10の一方の外面を表面材20で覆う構成にしているが、本体10の両面が表面材20で覆われた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 天板(家具用の板部材)
10 本体
12,13 面板
14 エッジバンド
14a 突出部
14b 湾曲部
17 貫通孔
20 表面材
100 押圧部材
S 隙間