(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045026
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】アルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20230327BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20230327BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20230327BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20230327BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230327BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20230327BHJP
C22F 1/043 20060101ALI20230327BHJP
C22F 1/047 20060101ALI20230327BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/00 D
C22C21/00 J
C22F1/04 Z
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
B23K1/00 S
B23K1/19 F
C22F1/043
C22F1/047
C22F1/00 623
C22F1/00 626
C22F1/00 627
C22F1/00 614
C22F1/00 630M
C22F1/00 651A
C22F1/00 641A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153199
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 達也
(72)【発明者】
【氏名】柳川 裕
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】浦濱 敬史
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 稔英
(57)【要約】
【解決課題】窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、優れたろう付性を発揮し得るブレージングシートを提供する。
【解決手段】不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、心材と、該心材の片面または両面にクラッドされているろう材とを有し、前記心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMgの含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材と、該心材の片面または両面にクラッドされているろう材とを有し、
前記心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMg含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下である
ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項2】
前記ろう材が、さらに1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項3】
前記心材が、さらに0.70質量%以下のFe、0.70質量%以下のSi、1.60質量%以下のMn、0.50質量%以下のCuのうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項4】
前記心材が、さらに3.00質量%以下のZnを含有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項5】
表面が酸によりエッチング処理されてなることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上または両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10m2以下となるように
行うことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【請求項7】
前記中間焼鈍または最終焼鈍を前記ろう材用鋳塊を厚さ10μm~50μmに圧延した状態で行うことを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金ブレージングシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の熱交換器や機械用部品などのアルミニウム製品は、アルミニウム材(アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。以下同じ。)からなる多数の部品を有している。
上記アルミニウム製品は、細かな接合部を多数有しており、係る接合部を形成する接合方法としてろう付接合が広く用いられている。これ等のアルミニウム製品の多くは、心材と、心材の少なくとも一方の面上に設けられたろう材とを有するアルミニウム材である、いわゆるブレージングシートによりろう付されている。
【0003】
アルミニウム材(アルミニウム合金材を含む)をろう付接合するには、ろう付時に、ろう材の表面を覆っている酸化皮膜を破壊しつつ、溶融したろう材を接合対象となる相手材に接触させ、相手材の表面を覆う酸化皮膜を破壊する方法が求められ、このような方法として、大別して、フラックスを使用する方法(フラックスろう付法)と、真空中で加熱する方法(真空ろう付法)とが実用化されている。
【0004】
これ等の方法のうち、フラックスろう付法は、接合予定部、つまりろう付によって接合しようとする部分の表面にフラックスを塗布してろう付を行う方法である。
しかしながら、フラックスろう付法においては、ろう付前にフラックスを塗布する作業を行い、さらにろう付が完了した後にフラックスやその残渣を除去する作業を行う必要があることから、アルミニウム製品の製造コストの増大を招いていた。また、ろう付が完了した後にフラックスやその残渣が十分に除去できていないと、その後表面処理等を行った場合などに、十分な表面品質が得られない場合がある。
【0005】
一方、真空ろう付法は、接合予定部の表面にフラックスを塗布せずに真空中でろう付を行う方法である。
しかしながら、真空ろう付法は、フラックスろう付法に比べて生産性が低く、十分なろう付品質が得られ難い。また、真空ろう付法に用いるろう付炉は、一般的なろう付炉に比べて設備費やメンテナンス費の増大を招き易い。
【0006】
そこで、接合予定部の表面にフラックスを塗布せずに不活性ガス雰囲気中でろう付を行う、いわゆるフラックスフリーろう付法が提案されている。フラックスフリーろう付法に用いられるブレージングシートは、積層構造を成す少なくとも一つの層に、酸化皮膜を脆弱化する、あるいは酸化皮膜を破壊する作用を有する元素を有しており、この種の元素としては、Mgが多用されている。
【0007】
しかしながら、Mgは比較的酸化され易く、ろう材表層のMgは外部から侵入する酸素と反応して、容易にMgO皮膜を形成する。
このMgO皮膜は、Al2O3皮膜よりも非常に強固であるため、MgO皮膜が成長し厚く形成されたブレージングシートは、ろう付時にMgO皮膜が破壊されず、溶融ろうが表面に濡れ拡がり難いことから、良好なろう付性を発揮し難い。
すなわち、ブレージングシート表面のAl2O3皮膜の厚さが薄くても、MgO皮膜が厚い場合にはろう付不良が発生し易くなる。
【0008】
このような状況下、特許文献1には、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、該心材の片面または両面にクラッドされた、4.0~13.0質量%のSiを含有するアルミニウム合金のろう材とからなり、ろう付加熱により、ろう付加熱前の酸化皮膜に対する体積変化率が0.99以下であるX原子を含有する酸化物粒子が表面に形成されるアルミニウム合金ブレージングシートが提案されている。
【0009】
また特許文献2には、質量%で、Si:5.0~13.0%、Mg:0.1~3.0%を含有するAl-Si-Mg系ろう材が芯材にクラッドされて最表面に位置し、ろう付前のAl-Si-Mg系ろう材表面の酸化皮膜の平均膜厚が150Å以下であり、かつ酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚が20Å以下であるブレージングシートを用い、減圧を伴わない酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中で、ブレージングシートにおけるAl-Si-Mg系ろう材とろう付対象部材とを接触密着させ、密着部分においてフラックスレスで前記Al-Si-Mg系ろう材により前記芯材と前記ろう付対象部材とをろう付接合することを特徴とするアルミニウム材のフラックスレスろう付方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-069474号公報
【特許文献2】特開2013-215797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、特許文献1記載のブレージングシートは、ろう材表面の酸化皮膜が厚くなるとこれを十分に破壊することができず、溶融ろうが表面に十分に濡れ拡がらない結果、所望の新生面を露出させることができず、ろう付不良を生じ易いことが判明した。
特許文献1には、ろう材表面の酸化皮膜の厚さを30nm以下とすることで酸化皮膜が破壊され易くなるとの記載もあるが、酸化皮膜を構成する元素によって酸化皮膜の破壊のされ易さは変動することから、単に酸化皮膜の厚さを制御するだけでは、必ずしもろう付不良の発生を抑制し難い。
【0012】
また、本発明者等が検討したところ、特許文献2に記載のブレージングシートは、ろう付加熱前のMgO皮膜の厚さは薄くても、ろう材中にMgが含まれているため、ろう付加熱中にMgO皮膜が形成し成長することが判明した。
すなわち、特許文献2に記載のブレージングシートは、ろう溶融時には既に酸化皮膜が厚く形成されていることから、酸化皮膜が破壊されず、溶融ろうが表面に濡れ拡がることができないため、ろう付性の低下を招くことが判明した。
【0013】
このような状況下、本発明は、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、優れたろう付性を発揮し得るブレージングシートおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、心材と、該心材の片面あるいは両面にクラッドされているろう材とを有し、前記心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMgの含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下であるアルミニウム合金ブレージングシートにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)不活性ガス雰囲気中または真空中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材と、該心材の片面あるいは両面にクラッドされているろう材とを有し、
前記心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMgの含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下である
ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート、
(2)前記ろう材が、さらに1.00質量%以下のBiを含有することを特徴とする上記(1)に記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(3)前記心材が、さらに0.70質量%以下のFe、0.70質量%以下のSi、1.60質量%以下のMn、0.50質量%以下のCuのうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(4)前記心材が、さらに3.00質量%以下のZnを含有することを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(5)表面が酸によりエッチング処理されてなることを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上または両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10m2以下となるように
行うことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法、および
(7)前記中間焼鈍または最終焼鈍を前記ろう材用鋳塊を厚さ10μm~50μmに圧延した状態で行うことを特徴とする上記(6)に記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、アルミニウム合金ブレージングシートを構成するろう材の表面からの距離(μm)に対するMg濃度の関係を示す図であり、
図1(b)は、
図1(a)に破線で示す部分の部分拡大図である。
【
図2】本出願の実施例および比較例で作製したミニコア試験体の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、不活性ガス雰囲気中でのろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材と、該心材の片面あるいは両面にクラッドされているろう材とを有し、
前記心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMg含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下である
ことを特徴とするものである。
【0019】
先ず、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートについて説明する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材と、該心材の片面(いずれか一方の主表面)あるいは両面(両方の主表面)にクラッドされているろう材とを有するものである。
【0020】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材は、0.10~0.50質量%のMgを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0021】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はMgを含有する。心材に含有されるMgは、ろう付加熱中にろう材中へ徐々に拡散し、ろうの溶融(具体的にはAl-Si-Mgの三元共晶の部分溶融)開始と同時に、ろう材表面に向けて急速に拡散して、ろう材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を容易に脆弱化し、これを破壊することができる。
上記Mgの大部分はろう材ではなく心材から供給されるため、ろう材表面でのMgOの形成を抑制しつつ、ろう材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を容易に脆弱化することができる。
また、Mgは、マトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。
心材中のMg含有量は、0.10~0.50質量%であり、0.10~0.45質量%が好ましく、0.15~0.40質量%がより好ましい。
心材中のMg含有量が、上記範囲内にあることにより、ろう材中へMgが十分な量拡散および溶出してろう材表面のアルミニウムの酸化皮膜を脆弱化することができるとともに、心材の固相線温度(融点)の低下を抑制して、ろう付時における心材溶融を抑制することができる。
【0022】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はFeを含有してもよい。
心材がFeを含有する場合、心材中のFe含有量は0.70質量%以下が好ましく、0.05~0.50質量%がより好ましく、0.10~0.40質量%がさらに好ましい。
心材中のFe含有量が0.70質量%以下であることにより、耐食性の低下および粗大晶出物の発生を容易に抑制しつつ、他の金属元素と金属間化合物を形成して所望の強度向上効果を容易に発揮することができる。
【0023】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はSiを含有してもよい。
心材がSiを含有する場合、心材中のSi含有量は0.70質量%以下が好ましく、0.10~0.65質量%がより好ましく、0.20~0.60質量%がさらに好ましい。
心材中のSiの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の融点低下による局部溶融を容易に抑制しつつ、固溶強化および金属間化合物の微細析出強化により、心材の強度を容易に向上させることができる。
【0024】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はMnを含有してもよい。
心材がMnを含有する場合、心材中のMn含有量は1.60質量%以下が好ましく、0.40~1.60質量%がより好ましく、0.60~1.50質量%がさらに好ましい。
心材中のMnの含有量が上記範囲内にあることにより、鋳造時における粗大晶出物の生成による圧延加工性の低下を容易に抑制しつつ、心材の強度を容易に向上させ、心材の電位を調整してその耐食性を容易に向上させることができる。
【0025】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はCuを含有してもよい。
心材がCuを含有する場合、心材中のCu含有量は0.50質量%以下が好ましく、0.05~0.45質量%がより好ましく、0.10~0.40質量%がさらに好ましい。
心材中のCuの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の融点低下による局部的な溶融を抑制し、心材の強度を容易に向上させつつ、心材の電位を調整してその耐食性を容易に向上させることができる。
【0026】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はZnを含有してもよい。
心材がZnを含有する場合、心材中のZn含有量は3.00質量%以下が好ましく、0.50~2.50質量%がより好ましく、1.00~2.00質量%がさらに好ましい。
心材中のZnの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の自然電位を卑にして、心材を長期間に亘って犠牲陽極として容易に機能させることができる。
【0027】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はTiを含有してもよい。
心材がTiを含有する場合、心材中のTi含有量は0.20質量%以下が好ましく、0.05~0.20質量%がより好ましく、0.05~0.18質量%がさらに好ましい。
心材中のTiの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の腐食を層状に進行させ、深さ方向への腐食の進行を容易に抑制することができる。
【0028】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はZrを含有してもよい。
心材がZrを含有する場合、心材中のZr含有量は、0.50質量%以下が好ましく、0.05~0.30質量%がより好ましく、0.10~0.20質量%がさらに好ましい。
心材中のZrの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の腐食を層状に進行させ、深さ方向への腐食の進行を容易に抑制することができる。
【0029】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はCrを含有してもよい。
心材がCrを含有する場合、心材中のCr含有量は、0.50質量%以下が好ましく、0.05~0.30質量%がより好ましく、0.10~0.20質量%がさらに好ましい。
心材中のCrの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の腐食を層状に進行させ、深さ方向への腐食の進行を容易に抑制することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材はVを含有してもよい。
心材がVを含有する場合、心材中のV含有量は、0.50質量%以下が好ましく、0.05~0.30質量%がより好ましく、0.10~0.20質量%がさらに好ましい。
心材中のVの含有量が上記範囲内にあることにより、心材の腐食を層状に進行させ、深さ方向への腐食の進行を容易に抑制することができる。
【0030】
本出願書類において、心材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置により測定した値を意味する。
【0031】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、上記心材の片面または両面にろう材がクラッドされており、ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、Mgの含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0032】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材はSiを含有する。
ろう材中に含有されるSiは、Alの融点を下げて流動性を高め、ろうの機能を発揮させる。
ろう材中のSi含有量は、6.00~13.00質量%であり、6.70~12.80質量%が好ましく、9.00~12.50質量%がより好ましい。
ろう材中のSiの含有量が上記範囲内にあることにより、十分な流動性を発揮し得るとともに、心材またはその他の被接合部へのエロージョンを抑制することができる。
【0033】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材中のMg含有量は0.05質量%未満に制限される。
ろう材に含有されるMgは、ろう付加熱中にろう材の表面を覆うアルミニウムの酸化皮膜を容易に脆弱化し、これを破壊することができるが、本出願書類においては、ろう材表面におけるMgO皮膜の形成を抑制するために、ろう材中のMg含有量が制限される。
ろう材中のMg含有量は、0.05質量%未満(0.00質量%以上0.05質量%未満)であり、0.00~0.04質量%が好ましく、0.00~0.02質量%がより好ましい。
ろう材中のMg含有量が0.05質量%未満であることにより、ろう材表面におけるMgOの生成を抑制しつつ、ろう付け時には心材からろう材中に十分な量のMgが拡散および溶出してろう材表面のアルミニウムの酸化皮膜を脆弱化することができる。
【0034】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材はBiを含有してもよい。
ろう材中のBi含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.005~1.00質量%がより好ましく、0.01~0.40質量%がさらに好ましく、0.010~0.20質量%が一層好ましく、0.01~0.10質量%がより一層好ましい。
ろう中のBi含有量が上記範囲内にあることにより、ろうの表面張力を低下させ、ろうの流動性を容易に高めることができる。
【0035】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材は、SrおよびNaから選ばれる一種または二種を含有してもよい。
ろう材中のSr含有量は、0.100質量%以下が好ましく、0.070質量%以下がより好ましく、0.050質量%以下がさらに好ましい。
ろう材中のSr含有量の下限値は特に制限されないが、0.003質量%以上であることが好ましい。
ろう材中のNa含有量は、0.300質量%以下が好ましく、0.200質量%以下がより好ましく、0.100質量%以下がさらに好ましい。
ろう材中のNa含有量の下限値は特に制限されないが、0.002質量%以上であることが好ましい。
【0036】
SrおよびNaの含有量が各々上記範囲内にあることにより、ろう付後に形成される接合部において、凝固したろうの組織を微細化し、接合強度を好適に向上させることができる。
【0037】
ろう材中に含有されるSrおよびNaの合計含有量は、0.002~0.600質量%が好ましく、0.003~0.400質量%がより好ましく、0.005~0.200質量%がさらに好ましい。
【0038】
本出願書類において、ろう材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置により測定することができる。
【0039】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値は、150atm%×nm以下であり、110atm%×nm以下であることが好ましく、70atm%×nm以下であることがより好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下であることにより、ろう材表面のMgO皮膜の厚さが所定厚さに制御され、ろう付時にこのMgO皮膜を容易に破壊して、溶融ろうが表面に濡れ拡がり、良好なろう付性を容易に得ることができる。
【0040】
本出願書類において、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用い、アルゴンイオンでろう材表面をスパッタ処理して深さ1nmごとにMg濃度を測定する操作を繰り返したときにおける、深さ30nmまでのMg濃度の積算値を意味する。
上記深さ1nmごとのMg濃度は、上記XPS測定時における、スパッタレート(スパッタ深さ/スパッタ時間)およびスパッタ時間から特定され、係るスパッタレート(スパッタ深さ/スパッタ時間)は、厚さが既知のSiO2薄膜をスパッタしながらO濃度を測定したときの、O濃度測定値が0になるまでの時間に基づいて算出する。
【0041】
本発明者等の検討によれば、ろう付加熱中のMgO皮膜の形成および成長の過程を鋭意検討した結果、以下の知見を得るに至った。
すなわち、所定量のMgを含有する心材に対して、Mgの含有割合が制限されたろう材をクラッドしたブレージングシートをろう付け加熱すると、Mgは心材からろう材に拡散していき、ろう材内部からろう材表面に到達すると雰囲気中の酸素と反応してMgOを形成する。
そうすると、ろう材表面近傍の金属Mg濃度が減少するため、ろう材内部との金属Mg濃度差が大きくなって、ろう材内部の金属Mgがろう材表面近傍へ移動し易くなる。
ろう材表面近傍に金属Mgが到達するとさらに雰囲気中の酸素と反応してMgOを形成することになり、ろう材表面から30nmの深さまでのごく表層部にMg濃縮層が形成される。
図1(a)は、上記アルミニウム合金ブレージングシートを構成するろう材の表面からの距離(μm)に対するMg濃度の関係を示す図であり、
図1(b)は、
図1(a)に破線で示す部分の部分拡大図である。
図1(a)に示すように、表面(材料表面からの距離が0μmの位置)付近におけるMgの含有割合が制限されたアルミニウム合金ブレージングシートであっても、
図1(b)に示すように、ろう材表面から30nmの深さまでのごく表層部にMg濃度が高いMg濃縮層が形成されていることが分かる。
【0042】
本発明者等は、このように所定量のMgを含有する心材に対してMgの含有割合が制限されたろう材をクラッドしたブレージングシートであって、ろう材表面におけるMg濃縮層中のMg積分値が予め所定値以下に制御されたアルミニウム合金ブレージングシートを採用することにより、ろう付け時におけるろう材表面のMgO皮膜の厚さを制御しつつ、ろう付け時に酸化アルミニウム皮膜およびMgO皮膜を容易に脆弱化して、好適にろう付けし得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0043】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材と、該心材の片面または両面にクラッドされているろう材とを有するものである。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートとしては、(1)心材の片面にのみろう材がクラッドされている二層材の形態(心材/ろう材)、(2)心材の両面にろう材がクラッドされている三層材の形態(ろう材/心材/ろう材)、(3)心材の片面にろう材がクラッドされているとともに他の面に犠牲陽極材がクラッドされている三層材の形態(ろう材/心材/犠牲陽極材)を挙げることができる。
【0044】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材の片面または両面にクラッドされるろう材のクラッド率(アルミニウム合金ブレージングシートの厚さに対するろう材の厚さの割合)は、3~30%が好ましく、5~25%がより好ましく、7~20%がさらに好ましい。
【0045】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートが、(2)心材の両面にろう材がクラッドされている三層材の形態を採る場合、心材の両面に各々形成されるろう材の組成やクラッド率は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0046】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートが、(3)心材の片面にろう材がクラッドされているとともに他の面に犠牲陽極材がクラッドされている三層材の形態を採る場合、犠牲陽極材としては、アルミニウムからなるものであるか、あるいは、8.00質量%以下のZnを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるものが好ましい。
【0047】
上記犠牲陽極材を構成するアルミニウムの純度は、特に制限されないが、99.0質量%以上が好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。
【0048】
犠牲陽極材に係るアルミニウム合金は、Znを含有することが好ましく、犠牲陽極材に含有されるZnは、電位を卑にする効果があり、犠牲陽極材と心材の電位差を形成することで、犠牲防食効果を発揮する。犠牲陽極材中のZn含有量は、8.00質量%以下が好ましく、3.00質量%以下がより好ましい。
【0049】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、上記犠牲陽極材はFeを含有してもよい。
犠牲陽極材がFeを含有する場合、犠牲陽極材中のFe含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.05~0.80質量%がより好ましく、0.100~ 0.700質量%がさらに好ましい。
犠牲陽極材中のFeの含有量が上記範囲内にあることにより、強度を向上し易くなるとともに、熱間圧延時の変形抵抗が高くなり、心材との変形抵抗の差を小さくことができる。
【0050】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、上記犠牲陽極材はMnを含有してもよい。
犠牲陽極材がMnを含有する場合、犠牲陽極材中のMn含有量は、1.80質量%以下が好ましく、0.10~1.50質量%がより好ましく、0.20~1.20質量%がさらに好ましい。
犠牲陽極材中のMnの含有量が上記範囲内にあることにより、ろう付時再結晶によりできる犠牲陽極材の結晶粒のサイズを調整することができる。
【0051】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、上記犠牲陽極材はMgを含有してもよい。
犠牲陽極材がMgを含有する場合、犠牲陽極材中のMg含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.05~1.00質量%がより好ましく、0.10~0.80質量%がさらに好ましい。
犠牲陽極材中のMgの含有量が上記範囲内にあることにより、犠牲陽極材の強度を容易に高めることができる。
【0052】
本出願書類において、犠牲陽極材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置(XPS)により測定した値を意味する。
【0053】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、犠牲陽極材のクラッド率(アルミニウム合金ブレージングシートの厚さに対する犠牲陽極材の厚さの割合)は、3~30%が好ましく、5~25%がより好ましく、7~20%がさらに好ましい。
【0054】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、熱交換器の伝熱媒体となるフィンや、冷媒などが通る流路構成材となるチューブや、チューブと接合されて熱交換器の構造を形作るプレートなどの形成材として使用される。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがフィン材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.04~0.20mm程度であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがチューブ材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.15~0.50mm程度であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがプレート材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.80~5.00mm程度であることが好ましい。
【0055】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう材の表面が酸によりエッチング処理されてなるものであってもよい。
上記エッチングにより、表面に形成されたアルミニウムの酸化皮膜やMgO皮膜を予め脆弱化しまたは除去することができる。
上記エッチング処理の詳細は、後述するとおりである。
【0056】
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートを提供することができる。
【0057】
次に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法について説明する。
本発明に係る製造方法は、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上または両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10m2以下となるように
行うことを特徴とするものである。
【0058】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、先ず、心材、ろう材および必要に応じ犠牲陽極材に用いる各々所望の成分組成を有するアルミニウム合金を、それぞれ溶解、鋳造することによって、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊および必要に応じ犠牲陽極材用鋳塊を作製する。これら溶解、鋳造の方法は、特に限定されるものではなく通常の方法が用いられる。
【0059】
次いで、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊および必要に応じ犠牲陽極材用鋳塊を、適宜、均質化処理することが好ましい。均質化処理の好ましい温度範囲は、400~600℃であり、均質化処理時間は2~20時間である。
【0060】
次いで、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊および必要に応じ犠牲陽極材用鋳塊を、面削したり熱間圧延して所定の厚さにした後、所定の鋳塊を所定の順に重ね合わせ、積層物とする。
【0061】
上記心材用鋳塊、ろう材用鋳塊および必要に応じ犠牲陽極材用鋳塊は、各々、得ようとするアルミニウム合金ブレージングシートを構成する、心材、ろう材および犠牲陽極材の組成に対応した組成を有している。
【0062】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記積層物に対し、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間に1回以上の中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理を施す。
【0063】
熱間加工では、所定の鋳塊を所定の順に積層した積層物を、400~500℃で熱間圧延する。熱間圧延では、例えば、2~8mmの板厚となるまで圧延を行う。
【0064】
冷間加工では、熱間加工を行って得られた熱間圧延物を、冷間で圧延する。冷間加工では、冷間での圧延を、複数回のパスで行う。
【0065】
冷間加工において、冷間での圧延のパス間における1回または2回以上の中間焼鈍は、加熱温度が、200~500℃となるように行うことが好ましく、250~400℃となるように行うことがより好ましい。
中間焼鈍では、中間焼鈍温度まで昇温し、中間焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、中間焼鈍温度に達した後、中間焼鈍温度で一定時間保持後、冷却を開始してもよい。中間焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。
【0066】
冷間圧延後、得られた冷間圧延物に対し、適宜最終焼鈍を行う。
最終焼鈍は、加熱温度が、300~500℃となるように行うことが好ましく、350~450℃となるように行うことがより好ましい。
最終焼鈍では、最終焼鈍温度まで昇温し、最終焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、最終焼鈍温度に達した後、最終焼鈍温度で一定時間保持後、冷却を開始してもよい。最終焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。
【0067】
上記中間焼鈍および最終焼鈍時における雰囲気は特に限定されないが、大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気中にて実施することが好ましい。大気中より酸素濃度が低い雰囲気中にて加熱することにより、ろう材表面における酸化皮膜の成長を抑制することができる。
【0068】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法において、上記 中間焼鈍または最終焼鈍は、上記ろう材用鋳塊を、厚さ10μm~50μmに圧延した状態で行うことが好ましく、厚さ20μm~50μmに圧延した状態で行うことがより好ましい。
【0069】
中間焼鈍または最終焼鈍時におけるろう材用鋳塊の厚さを上記範囲内に制御することにより、心材用鋳塊からろう材用鋳塊表面に拡散するMg濃度を低減させることができ、MgO皮膜の生成および成長を抑制して、所望のろう付特性を容易に発揮することができる。
【0070】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理における加熱を、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10m2以下となるように行う。
【0071】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍における加熱を、上記拡散量Dの値が、7.0×10-10m2以下となるように行い、5.0 ×10-10m2以下となるように行うことが好ましく、2.0 ×10-10m2以下となるように行うことがより好ましい。
上記拡散量Dの下限値は特に制限されないが、上記拡散量Dは、通常、1.0 ×10-16m2以上である。
上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍における加熱を、上記拡散量Dの値が、7.0×10-10m2以下となるように行うことにより、心材用鋳塊から前記ろう材用鋳塊の表層に拡散するMgの拡散量を制限することができる。
【0072】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍および最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍時に加熱することにより、心材中に含有されるMgがろう材表層に向かって拡散するが、その拡散量は、式(I)で求められる拡散量Dが7.0×10-10m2以下となるように中間焼鈍および最終焼鈍時における温度および時間を制御することにより、容易に制御することができる。
【0073】
常法によれば、加熱処理によって最終的に到達した温度と、その温度に保持される時間を制御すれば、適切な拡散効果が得られると考えられる。
しかしながら、本発明に係る製造方法で得られるアルミニウム合金ブレージングシートは、上述したように、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下になるように制御されてなるものであり、係るMg積分値を適切な値に制御するためには、中間焼鈍および最終焼鈍時における全ての過程における入熱量の合計値を適切に制御する必要があり、係る必要を満たす上では、上記式(I)で求められる拡散量Dが、7.0×10-10m2以下、好ましくは5.0×10-10m2以下、より好ましくは2.0 ×10-10m2以下となるように制御する必要がある。
【0074】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、必要に応じ、酸を用いてブレージングシートの表面をエッチング処理してもよい。
エッチング処理を行うことにより、熱間圧延時の加熱や、冷間圧延のパス間および最終パスの後の加熱時に形成されたアルミニウムの酸化皮膜やMgO皮膜を脆弱化または除去することができる。
【0075】
上記エッチング処理を行う時期は、熱間圧延を行った後、ブレージングシートを用いてろう付を行うまでの間であれば、特に限定されない。
例えば、熱間圧延後のクラッド板にエッチング処理を施してもよいし、冷間圧延の途中のクラッド板にエッチング処理を施してもよい。また、中間焼鈍後または最終焼鈍後にエッチング処理を施してもよい。
さらに、前述した最終焼鈍が完了した後、酸化皮膜を有する状態でブレージングシートを保管し、ろう付を行う直前にエッチング処理を施してもよい。
ろう付を行う際に上記酸化皮膜が脆弱化または除去されていれば、ブレージングシートを用いたろう付時におけるろう付性を向上させることができる。
【0076】
上述したように、エッチング処理を施すことにより、ろう材表面に形成されるMgO皮膜を脆弱化または除去すること、すなわち、ろう材表面におけるMg濃度を低減することができる。
例えば、自動車用熱交換器に用いられるフィン材のような板厚の薄い材料では、設備制約上、焼鈍工程よりも前にエッチング処理工程が位置する場合がある。このような場合においても、エッチング処理によりろう材表面のMg濃度を減じる効果はあり、さらにその後の焼鈍工程の処理条件を適切化することで、酸化皮膜を脆弱化し、ろう付性を容易に向上させることができる。
【0077】
ブレージングシートのエッチング処理に用いる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、フッ酸等の水溶液を使用することができる。これらの酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。酸化皮膜をより効率よく除去する観点からは、酸として、フッ酸と、フッ酸以外の酸とを含む混合水溶液を使用することが好ましく、フッ酸と硫酸との混合水溶液またはフッ酸と硝酸との混合水溶液を使用することがより好ましい。
【0078】
エッチング処理時におけるエッチング量は、0.05~2.00g/m2であることが好ましい。エッチング量を0.05g/m2以上、より好ましくは0.10g/m2以上とすることにより、ブレージングシート表面の酸化皮膜を十分に除去し、ろう付性をより向上させることができる。
ブレージングシートのろう付性向上の観点からは、エッチング量に上限は存在しない。しかし、エッチング量が過度に多くなると、処理時間に見合ったろう付性向上の効果を得にくくなるおそれがある。エッチング量を2.00g/m2以下、より好ましくは0.50g/m2以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
【0079】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、 このようにして、アルミニウム合金ブレージングシートを得ることができる。
得られたアルミニウム合金ブレージングシートの詳細は、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの説明で詳述したとおりである。
【0080】
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートを容易に製造することができる。
【0081】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例0082】
(実施例1)
(1)連続鋳造により、表1に示す化学成分を有する心材用鋳塊と複数のろう材用鋳塊を各々作製した。
次いで、心材用鋳塊を均質化した後面削を施し、心材用鋳塊の板厚を所定の厚さとした。次いで、複数のろう材用鋳塊に各々熱間圧延を行い、ろう材用鋳塊の板厚を所定の厚さとした。
このようにして得られた心材用鋳塊および複数のろう材用鋳塊を、ろう材1用鋳塊/心材用鋳塊/ろう材2用鋳塊の順で積層し、心材用鋳塊の両面上にろう材1用鋳塊およびろう材2用鋳塊が各々積層された三層構造の積層物を得た。
得られた積層物に熱間圧延を行って心材用鋳塊とろう材用鋳塊とを接合することにより、板厚2.6mmのクラッド材を作製した。
(2)(1)で得られたクラッド材に、冷間圧延を施して厚さ0.17mmの冷間圧延物を得た。
次いで、得られた冷間圧延物に対し、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が1.0×10-10m2となるように、大気雰囲気下において、加熱温度および加熱時間を制御しつつ加熱する中間焼鈍を施した。
得られた中間焼鈍物に冷間圧延処理を施して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々12.6%(ろう材1)および11.3%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
上記試験材の作製条件を表3に示す。
【0083】
得られた試験材のろう材1の表面から30nmの深さまでのMg積分値を、X線光電子分光分析装置(XPS、ULVAC-PHI社製 PHI 5000 VersaProbe III)で測定した。結果を表4に示す。
また、得られた試験材のろう材1の表面における酸化皮膜の厚さを、XPS(X線光電子分光法)で測定した。この場合、各試験材のろう材表面について、深さ方向のO(酸素)を測定し、その半値幅を酸化皮膜の厚さとした。結果を表4に示す。
【0084】
<ろう付性評価>
得られた試験材を用い、以下の方法によりコルゲートフィン型熱交換器のコアを模擬したミニコア試験体を作製し、フィンの接着率に基づいてろう付性の評価を行った。
本評価においては、先ず、
図2に示すように、上記各実施例または比較例で得られた試験材からなる両面にろう材を有するブレージングシートからなるコルゲートフィン1と、このコルゲートフィン1を挟持する2枚の平板2、2とを有するミニコア試験体を作製した。
具体的には、得られた試験材を所定の寸法に切断した後、コルゲート加工を施し、長さ35mm、高さ3mm、頂部のピッチ4.5mmのコルゲートフィン1-1を得た。
また、JIS A3003合金の板材を切り出して、長さ35mm、幅30mm、板厚1.0mmの2枚の平板1-2を得た。
上記コルゲートフィン1および2枚の平板2、2をアセトンにより脱脂したのち、コルゲートフィン1を2枚の平板2、2で挟持して組立体を作製した。
得られた組立体を、不活性ガス雰囲気中で、150℃から400℃に到達するまでの所要時間が3分間、400℃から600℃に到達するまでの所要時間が5分間となる加熱条件で600℃まで加熱した。
次いで、600℃の温度を3分間保持してろう材を溶融させ、心材からなるコルゲートフィンと平板とをろう付した。ろう付雰囲気は、露点-60℃、酸素濃度1ppmであった。
上記加熱処理後のミニコア試験体からコルゲートフィン1を切除し、2枚の平板2、2に存在するフィレットの痕跡に基づいて、以下の方法により接合率を算出した。
まず、2枚の平板2、2に個々に存在するフィレットの痕跡について、各平板2の幅方向dにおける長さを測定し、これ等の合計L1を算出した。これとは別に、2枚の平板2、2とコルゲートフィン1とが完全に接合されたと仮定した場合の各フィレットにおいて平板2の幅方向dにおける長さの合計L0を算出した。そして、長さL0に対する長さL1の値の割合を接合率(%)として算出した。
なお、長さL0は、例えば、コルゲートフィン1の幅(平板2の幅方向における長さ)と、コルゲートフィン1-2の頂部の数とを掛け合わせることにより算出できる。
ただし、本実施例においては、組み付け不良による接着率のばらつきを排除するため、幅方向端部の2本の
図2に示す例における、図中破線で示す両端の2本)は接合率の算出から除外した。
【0085】
得られた接合率に基づいて、接合率が60%以上である場合には、ろう付性が良好である(〇)と判断し、接合率が60%未満である場合にはろう付性が不良である(×)と判断することにより、ろう付性を評価した。結果を表4に示す。
【0086】
(実施例2)
拡散量Dの値が2.7×10-10m2となるように、中間焼鈍時における加熱温度および加熱時間を制御した以外は、実施例1と同様に処理して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々12.6%(ろう材1)および11.3%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
得られた試験材を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0087】
(実施例3)
拡散量Dの値が6.7×10-10m2となるように、中間焼鈍時における加熱温度および加熱時間を制御した以外は、実施例1と同様に処理して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々12.6%(ろう材1)および11.3%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
得られた試験材を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0088】
(比較例1)
拡散量Dの値が13.5×10-10m2となるように、中間焼鈍時における加熱温度および加熱時間を制御した以外は、実施例1と同様に処理して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々12.6%(ろう材1)および11.3%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
得られた試験材を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0089】
(実施例4)
(1)実施例1(1)と同様の方法で板厚2.6mmのクラッド材を作製した。
(2)(1)で得られたクラッド材に、冷間圧延を施して厚さ0.30mmの冷間圧延物を得、得られた冷間圧延物に対し、70℃のエッチング液(0.1%弗酸および1.0%硫酸を含む)を用いてエッチング処理を施した。
次いで、得られたエッチング処理物にさらに冷間圧延を施して厚さ0.17mmの冷間圧延物を得た。
その後、得られた冷間圧延物に対し、下記式(I)
D=ΣD0・exp(-Q/(RTn))・Δtn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍および最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間Δtn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D0=1.24×10-4(m2/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が1.0×10-10m2となるように、酸素濃度を0.2体積%以下に制御した雰囲気下において、加熱温度および加熱時間を制御しつつ加熱する中間焼鈍を施した。
得られた中間焼鈍物に冷間圧延処理を施して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々12.6%(ろう材1)および11.3%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
得られた試験材を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0090】
(実施例5)
連続鋳造により作製した、各々表2に示す化学成分を有する、心材用鋳塊、ろう材1用鋳塊およびろう材2用鋳塊を用いて、中間焼鈍時における雰囲気を酸素濃度0.2体積%以下に制御した雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様に処理して、ろう材1/心材/ろう材2の三層構造からなり、心材の両面上に設けたろう材のクラッド率が各々11.9%(ろう材1)および12.1%(ろう材2)である、厚さ0.10mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験材を得た。
得られた試験材を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表4より、実施例1~実施例5で得られたアルミニウム合金ブレージングシートの試験材は、心材が、0.10~0.50質量%のMgを含有し残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、ろう材が、6.00~13.00質量%のSiを含有するとともにMg含有量が0.05質量%未満に制限され、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるとともに、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が150atm%×nm以下であることから、ろう付性評価を行ったときに全て「〇」評価となり、いずれも良好なろう付性(接合性)を示すことが分かる。
【0096】
一方、表4より、比較例1で得られたアルミニウム合金ブレージングシートの試験材は、ろう材表面から30nmの深さまでのMg積分値が195atm%×nmと高いことから、ろう付性評価を行ったときに「×」評価となり、ろう付性
(接合性)に劣ることが分かる。
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートおよびその製造方法を提供することができる。