(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045062
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー用モノリスカラム及び液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20230327BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20230327BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20230327BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230327BHJP
G01N 30/88 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
B01J20/281 G
B01J20/281 X
B01D15/20
B01J20/32 Z
B01J20/22 D
B01J20/26 H
B01J20/26 L
G01N30/88 D
G01N30/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153245
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501155803
【氏名又は名称】株式会社 京都モノテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】孫 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】水口 博義
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA14
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA05
4G066AB05A
4G066AB06A
4G066AB06B
4G066AB06D
4G066AB07A
4G066AB09B
4G066AB13A
4G066AC25B
4G066AC33B
4G066AD06B
4G066BA09
4G066CA54
4G066EA01
4G066FA03
4G066FA12
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA38
(57)【要約】
【課題】生体物質の非特異吸着が少なく、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よくそれぞれの大きさにより分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを提供する。
【解決手段】アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾されたモノリス型担体を含む、液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾されたモノリス型担体を含む、液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【請求項2】
芳香族化合物が下記式(1)で表される構造を有する、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【化1】
上記式(1)中、Rは水酸基を1つ以上有する2価の芳香族基、Xは水酸基を1つ以上有する脂肪族基を表す。
【請求項3】
式(1)中、Rがフェノール、ビスフェノール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレンから選ばれる少なくとも1種の芳香族基の水素原子2つを除いた残基である、請求項1又は2に記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【請求項4】
式(1)中、Xが炭素数2以上8以下のジオール、トリオール及びテトラオールから選ばれる少なくとも1種の脂肪族基の水素原子1つを除いた残基である、請求項1~3のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【請求項5】
モノリス型担体は、直径2nm以上100nm以下のメソ孔を有する骨格と、前記骨格間に直径100nm以上10000nm以下の連続孔を有する多孔質連続体である、請求項1~4のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【請求項6】
芳香族化合物による修飾量が10重量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを製造する方法であって、
アルデヒド、水酸基を有するアミン化合物及び芳香族アルコールを含有する混合溶液を調整する工程と、モノリス型担体を前記混合溶液に浸漬した後、前記混合溶液を反応させて前記モノリス型担体をアルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾する工程と、洗浄工程と、乾燥工程とを有する、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品市場は近年大きく成長しており、これに伴って、バイオ医薬品精製の処理能力の向上が求められている。従来の粒子充填カラムには、負荷圧の関係で、高速処理が困難という欠点があった。
これに対し、マイクロメーターサイズの連続細孔とナノメーターサイズのメソ孔を同時に備えたモノリスと呼ばれる多孔質連続体は、低負荷圧で高分離能のカラムの作製が可能であり、上記欠点を補い得る多孔質担体として注目されている。
【0003】
このようなモノリスカラムとしては、多孔質シリカゲルを用いた無機系のモノリスカラムが主に利用されている。しかし、シリカゲルをそのまま用いた場合、表面に存在するシラノール基(Si-OH)の強い極性のため、生体物質との間に強い相互作用が生じ、その結果、溶離できなかったりピークテーリングという現象が生じたりすることが知られている。そのため、シリカゲルの表面を何らかの方法で修飾する必要がある。
例えば、特許文献1では、抗体の分離・精製において、カラム担体の表面を抗体と特異的に結合するタンパク質で修飾する方法が開示されている。
【0004】
また、最近では、脂質二重膜に包まれた構造を有する小胞顆粒であるエクソソームが注目されている。エクソソームは生体内のあらゆる組織に存在し、その内部にはサイトカイン等の様々なタンパク質やmicroRNA(miRNA)などが含まれており、生体内における細胞間コミュニケーションを媒介する機能や癌等の疾患との関連性が注目され、世界中で研究が進められている。この結果、様々な疾患におけるエクソソームの病態関与が解明され始めており、診断や治療、そして新たなドラッグデリバリーシステムとしての研究も行われており、今後の臨床応用が期待されている。
エクソソームの分離・精製には、主に超遠心法、ポリマー(PEG)沈降法が用いられているが、超遠心法及びポリマー(PEG)沈降法は、夾雑物が多く精製の程度が悪いため、多検体を同時に分離することが困難という課題がある。
また、特許文献2では、免疫沈降法によりエクソソームを分離・精製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-1462号公報
【特許文献2】国際公開第2016/088689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなタンパク質での修飾は、用いるタンパク質が高価であることに加え、粒子に結合した抗体の回収時に用いるpH2~4の酸性溶液が、回収後の抗体の凝集や変性を引き起こす原因ともなり、より安価で酸性溶液を用いずに精製できるカラム用粒子の開発が課題となっている。
また、現在開発・実用化されている抗体医薬品の原薬として使用されるIgGは、製造工程や保存中に二量体や凝集体を形成する場合があることが知られており、副作用を引き起こすリスクが懸念されている。このような観点から、IgG製剤の品質を管理するうえで、単量体、二量体及び凝集体の分離や定量評価は不可欠となっているが、特許文献1に開示の技術では、これらの分離能が不充分であるという課題がある。
【0007】
更に、例えば、エクソソームの分離・精製において、超遠心法やポリマー(PEG)沈降法を用いた場合、夾雑物が多く精製の程度が悪いため、多検体を同時に分離することが困難であるという課題がある。
また、特許文献2のような分離・精製法では、超遠心法やポリマー(PEG)沈降法よりも精度を高めることができるがコストが高いという課題がある。また、カラムとの相互作用(非特異吸着)を低減させるために、通常、移動相に高い濃度の塩を添加する必要であるが、塩の濃度が高すぎると、生体物質の変性や破壊を引き起こす課題がある。
【0008】
本発明は、生体物質の非特異吸着が少なく、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よくそれぞれの大きさにより分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾されたモノリス型担体を含む液体クロマトグラフィー用モノリスカラムである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、モノリス型担体の表面を特定の構造を有する芳香族化合物で表面修飾することによって、生体物質の非特異吸着を低減できることを見出した。また、中性付近の低塩濃度の移動相を用いても、たんぱく質、抗体、抗体二量体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よくそれぞれの大きさにより分離、精製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
<モノリス型担体>
本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムは、モノリス型担体を含む。
上記モノリス型担体は、連続孔と骨格とを備えた多孔質連続体であることが好ましい。
上記モノリス型担体を含むことで、分離能を向上させることができる。
【0012】
上記モノリス型担体は、直径2nm以上100nm以下のメソ孔を有する骨格と、前記骨格間に直径100nm以上10000nm以下の連続孔とを有する多孔質連続体であることが好ましい。
また、上記モノリス型担体は、メソ孔を有する骨格と連続孔とが共連続構造をした無機系多孔質連続体であることが好ましい。
上記構造を有することで、分離能をより向上させることができる。
【0013】
上記メソ孔の直径は、2nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましい。
上記メソ孔の直径は、例えば、ガス吸着式細孔径分布測定装置を用いる窒素吸着法等のガス吸着法により測定することができる。
【0014】
上記連続孔の直径は、100nm以上であることが好ましく、1000nm以上であることがより好ましく、10000nm以下であることが好ましく、4000nm以下であることがより好ましい。
上記連続孔の直径は、例えば、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティックス社製)を用いる方法や自動ポロシメーター(マイクロメリティックス社製)等を用いる水銀圧入法により測定することができる。
【0015】
上記モノリス型担体の比表面積は特に限定されないが、30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、400m2/g以下であることが好ましく、200m2/g以下であることがより好ましい。
上記比表面積は、例えば、ガス吸着式細孔径分布測定装置により測定することができる。
【0016】
上記多孔質連続体は、シリカを主成分とする反応溶液を相分離を伴うゾル-ゲル転移を起こさせることにより得られる。ゾル-ゲル反応に用いられるゲル形成を起こす網目成分の前駆体としては、金属アルコキシド、錯体、金属塩、有機修飾金属アルコキシド、有機架橋金属アルコキシド、及びこれらの部分加水分解生成物、部分重合生成物である多量体を用いることができる。水ガラスほかケイ酸塩水溶液のpHを変化させることによるゾル-ゲル転移も、同様に利用することができる。
【0017】
更に具体的には、上記目的達成の手段は、水溶性高分子、熱分解する化合物を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行う。その後、生成物が固化した後、次いで湿潤状態のゲルを加熱することにより、ゲル調製時にあらかじめ溶解させておいた低分子化合物を熱分解させ、次いで乾燥し加熱して製造することが好ましい。
【0018】
ここで、水溶性高分子は、理論的には適当な濃度の水溶液と成し得る水溶性有機高分子であって、加水分解性の官能基を有する金属化合物によって生成するアルコールを含む反応系中に均一に溶解し得るものであれば良い。具体的には高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩又はカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であって水溶液中でポリカチオンを生ずるポリアリルアミン及びポリエチレンイミン、あるいは中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にカルボニル基を有するポリビニルピロリドン等が好適である。また、有機高分子に代えてホルムアミド、多価アルコール、界面活性剤を用いてもよく、その場合多価アルコールとしてはグリセリンが、界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類が最適である。
【0019】
加水分解性の官能基を有する金属化合物としては、金属アルコキシド又はそのオリゴマーを用いることができ、これらのものは例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数の少ないものが好ましい。また、その金属としては、最終的に形成される酸化物の金属、例えばSi、Ti、Zr、Alが使用される。この金属としては1種又は2種以上であっても良い。一方オリゴマーとしてはアルコールに均一に溶解分散できるものであればよく、具体的には10量体程度まで使用できる。具体的には、テトラメトキシシラン等を用いることができる。
【0020】
また、酸性水溶液としては、通常塩酸、硝酸等の鉱酸0.001モル濃度以上のもの、あるいは酢酸、ギ酸等の有機酸0.01モル濃度以上のものが好ましい。
【0021】
相分離・ゲル化にあたっては、溶液を室温40~80℃で0.5~5時間保存することにより達成できる。相分離・ゲル化は、当初透明な溶液が白濁してシリカ相と水相との相分離を生じ、ついにゲル化する過程を経る。この相分離・ゲル化で水溶性高分子は分散状態にありそれらの沈殿は実質的に生じない。
【0022】
あらかじめ共存させる熱分解性の化合物の具体的な例としては、尿素あるいはヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の有機ア
ミド類を利用できるが、加熱後の溶媒のpH値が重要な条件であるので、熱分解後に溶媒を塩基性にする化合物であれば特に制限はない。
共存させる熱分解性化合物は、化合物の種類にもよるが、例えば尿素の場合には、反応溶液10gに対し、0.05~0.8g、好ましくは0.1~0.7gである。また、加熱温度は、例えば尿素の場合には40~200℃で、加熱後の溶媒のpH値は、6.0~12.0が好ましい。
また、熱分解によってフッ化水素酸のようにシリカを溶解する性質のある化合物を生じるものも、同様に利用できる。
【0023】
上記方法では、水溶性高分子を酸性水溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行うと、溶媒リッチ相と骨格相とに分離したゲルが生成する。生成物(ゲル)が固化した後、適当な熟成時間を経た後、湿潤状態のゲルを加熱することによって、反応溶液にあらかじめ溶解させておいたアミド系化合物が熱分解し、骨格相の内壁面に接触している溶媒のpHが上昇する。そして、溶媒がその内壁面を浸食し、内壁面の凹凸状態を変えることによって細孔径を徐々に拡大する。
シリカを主成分とするゲルの場合には、酸性あるいは中性領域においては変化の度合は非常に小さいが、熱分解が盛んになり水溶液の塩基性が増すにつれて、細孔を構成する部分が溶解し、より平坦な部分に再析出することによって、平均細孔径が大きくなる反応が顕著に起こるようになる。
【0024】
巨大空孔を持たず3次元的に束縛された細孔のみを持つゲルでは、平衡条件としては溶解し得る部分でも、溶出物質が外部の溶液にまで拡散できないために、元の細孔構造が相当な割合で残る。これに対して巨大空孔となる溶媒リッチ相を持つゲルにおいては、2次元的にしか束縛されていない細孔が多く、外部の水溶液との物質のやり取りが十分頻繁に起こるため、大きい細孔の発達に並行して小さい細孔は消滅し、全体の細孔径分布は顕著に広がることがない。
【0025】
なお、加熱過程においては、ゲルを密閉条件下に置き、熱分解生成物の蒸気圧が飽和して溶媒のpHが速やかに定常値をとるようにすることが有効である。
【0026】
溶解・再析出反応が定常状態に達し、これに対応する細孔構造を得るために要する、加熱処理時間は、巨大空孔の大きさや試料の体積によって変化するので、それぞれの処理条件において実質的に細孔構造が変化しなくなる、最短処理時間を決定することが必要である。
【0027】
加熱処理を終えたゲルは、溶媒を気化させることによって、溝内において、管壁に密着した乾燥ゲルとなる。この乾燥ゲル中には、出発溶液中の共存物質が残存する可能性があるので、適当な温度で熱処理を行い、有機物等を熱分解することによって、目的の無機系多孔質体を得ることができる。なお、乾燥は、30~80℃で数時間~数十時間放置して行い、熱処理は、200~800℃程度で加熱する。
【0028】
<芳香族化合物>
上記モノリス型担体は、アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾されたものである。
上記構造を有することで、生体物質の非特異吸着が少なく、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よく分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムとすることができる。
本明細書において、「表面修飾」とは上記モノリス型担体の表面の少なくとも一部に上記芳香族化合物が化学的に結合しているか、又は、物理的に吸着している状態を意味する。
【0029】
上記芳香族化合物は、アルデヒドに由来するセグメントを有する。
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。
なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0030】
上記芳香族化合物における上記アルデヒドに由来するセグメントの含有量は3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
【0031】
上記芳香族化合物は、芳香族アルコールに由来するセグメントを有する。
上記芳香族アルコールとは、芳香族環を有するアルコールである。
上記芳香族環としては、単環構造の芳香族炭化水素、縮合環構造の芳香族炭化水素等が挙げられる。上記単環構造の芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼンが挙げられる。上記縮合環構造の芳香族炭化水素としては、インデン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。なかでも、縮合環構造の芳香族炭化水素が好ましく、生体物質をより効率よく分離、精製できることからナフタレンがより好ましい。
また、上記芳香族アルコールは、1価のアルコールであってもよく、2価以上の多価アルコールであってもよい。なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることから、芳香族多価アルコールであることが好ましく、芳香族ジオールであることがより好ましい。
【0032】
上記芳香族アルコールとしては、例えば、フェノール、ナフトール、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、3-ヒドロキシフタル酸、1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることから1,5-ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0033】
上記芳香族化合物における上記芳香族アルコールに由来するセグメントの含有量は30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。
【0034】
上記芳香族化合物は、水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する。
上記水酸基を有するアミン化合物は、第1級アミンでもよく、第2アミンでもよく、第3級アミンでもよいが、第1級アミンが好ましい。
また、上記水酸基を有するアミン化合物としては、R-NH2で表される化合物であることが好ましい。上記Rは、脂肪族アルコールの水素原子1つが除かれた1価の基を表す。
上記脂肪族アルコールは、1価のアルコールであってもよく、2価以上のポリオールであってもよい。なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることから2価以上のポリオールであることが好ましく、ジオール、トリオール、テトラオールであることがより好ましく、ジオールであることが更に好ましい。
上記脂肪族アルコールとしては、生体物質をより効率よく分離、精製できることから炭素数2以上であるものが好ましく、炭素数3以上であるものがより好ましく、炭素数8以下であるものが好ましく、炭素数7以下であるものがより好ましい。
【0035】
上記水酸基を有するアミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、1-メチルアミノ-2,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0036】
上記芳香族化合物における上記水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントの含有量は15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、60重量%以下であることが好ましく、55重量%以下であることがより好ましい。
【0037】
上記芳香族化合物は、アルデヒドに由来するセグメント等の各セグメントを有していればよく、アルデヒドに由来するセグメント等の各セグメントを繰り返し単位として有するものであってもよい。また、アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントが一体となった構造を繰り返し単位として有するものであってもよい。なかでも、アルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントが一体となった構造を繰り返し単位として有するものが好ましい。
【0038】
上記芳香族化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。このような構造を有することで、生体物質をより効率よく分離、精製できる。
なお、下記構造中、上記芳香族アルコールに由来するセグメントは-R-部分であり、上記水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントは-N(-X)-部分であり、上記アルデヒドに由来するセグメントは-CH2-部分に該当する。
【0039】
【0040】
上記式(1)中、Rは水酸基を1つ以上有する2価の芳香族基を表し、Xは水酸基を1つ以上有する脂肪族基を表し、nは1以上10以下の整数を表す。
【0041】
上記水酸基を1つ以上有する2価の芳香族基は、水酸基を1つ以上有する芳香族炭化水素から水素原子2つを除いた残基を意味する。
上記水酸基を1つ以上有する芳香族炭化水素としては、フェノール、ナフトール、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、3-ヒドロキシフタル酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることからフェノール、ビスフェノール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0042】
上記水酸基を1つ以上有する脂肪族基は、水酸基を1つ以上有する脂肪族炭化水素から水素原子1つを除いた残基を意味する。
上記水酸基を1つ以上有する脂肪族炭化水素としては、炭素数2以上のものが好ましく、炭素数3以上のものがより好ましく、炭素数8以下のものが好ましく、炭素数7以下のものがより好ましい。
また、上記水酸基を1つ以上有する脂肪族炭化水素としては、1価のアルコールであってもよく、2価以上のポリオールであってもよい。なかでも、生体物質をより効率よく分離、精製できることから2価以上のポリオールであることが好ましく、ジオール、トリオール、テトラオールであることがより好ましく、ジオールであることが更に好ましい。
上記水酸基を1つ以上有する脂肪族炭化水素としては、プロパンノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1-ブタノール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3,4-ブタンテトラオール、1-ペンタノール、1,2-ペンタンジオール、1-ヘキサノール、1,2-ヘキサンジオール、1-ヘプタノール、1,2-ヘプタンジオール、1-オクタノール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0043】
本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムにおける、上記芳香族化合物による修飾量は10重量%以下であることが好ましい。
上記修飾量が10重量%以下であると、修飾前後のカラムの細孔径の変化を抑えることができる。
上記修飾量は、0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、8.0重量%以下であることがより好ましい。
上記修飾量とは、本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムにおける上記芳香族化合物の含有割合を意味し、例えば、熱重量分析により測定することができる。具体的には、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを白金パンに入れ、空気雰囲気下(流量100ml/分)で温度30℃から1000℃まで加熱した後の減少重量を測定し、減少した重量分を表面修飾した芳香族化合物の重量として修飾量を測定することができる。
【0044】
(液体クロマトグラフィー用モノリスカラム)
本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの平均細孔径は特に限定されないが、2nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましい。
上記平均細孔径は、例えば、ガス吸着式細孔径分布測定装置により測定することができる。
【0045】
また、上記モノリス型担体と本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの平均細孔径の変化率[((モノリス型担体の平均細孔径)-(液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの平均細孔径))×100/(モノリス型担体の平均細孔径)]は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0046】
(液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの製造方法)
本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製する方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、まず、上述した方法によりモノリス型担体を作製する。次いで、アルデヒド、芳香族アルコール、水酸基を有するアミン化合物を含有する混合溶液を調製する工程を行う。その後、得られたモノリス型担体を混合溶液に浸漬して、混合溶液を反応させてモノリス型担体を芳香族化合物によって表面修飾する工程を行う。その後、洗浄工程、乾燥工程を行うことで、本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製することができる。
【0047】
上記混合溶液を調製する工程において用いるアルデヒド、芳香族アルコール及び水酸基を有するアミン化合物としては、上述した芳香族化合物を構成する成分と同様のものを用いることができる。
【0048】
上記混合溶液中における、アルデヒド、芳香族アルコール及び水酸基を有するアミン化合物の配合比は、芳香族アルコール1モルに対して、アルデヒドを1モル以上とすることが好ましく、1.5モル以上とすることがより好ましく、6モル以下とすることが好ましく、5モル以下とすることがより好ましい。また、芳香族アルコール1モルに対して水酸基を有するアミン化合物を0.5モル以上とすることが好ましく、0.8モル以上とすることがより好ましく、5.0モル以下とすることが好ましく、4.0モル以下とすることがより好ましい。
上記範囲とすることで、生体物質をより効率よく分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製できる。
【0049】
また、上記混合溶液を調製する工程では、アルデヒド、芳香族アルコール及び水酸基を有するアミン化合物を用いてもよいが、アルデヒド及び芳香族アルコールが反応して得られる化合物と水酸基を有するアミン化合物とを組み合わせて用いてもよい。また、アルデヒド及び水酸基を有するアミン化合物が反応して得られる化合物と芳香族アルコールとを組み合わせて用いてもよく、芳香族アルコール及び水酸基を有するアミン化合物が反応して得られる化合物とアルデヒドとを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記混合溶液を調製するための溶媒は、上記原料を溶解できるものであれば特に限定されない。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の通常樹脂を溶解するために用いられる溶媒が挙げられる。
【0051】
上記溶媒の添加量は特に限定されないが、アルデヒド、芳香族アルコール及び水酸基を有するアミン化合物を含む原料の合計を100重量部としたとき、3000重量部以上であることが好ましく、4000重量部以上であることがより好ましく、400000重量部以下であることが好ましく、300000重量部以下であることがより好ましい。
【0052】
上記表面修飾する工程では、モノリス型担体を混合溶液に浸漬して、混合溶液を反応させてモノリス型担体を芳香族化合物によって表面修飾する。
モノリス型担体を浸漬した後、混合溶液の反応を進行させることで、モノリス型担体をアルデヒドに由来するセグメント、芳香族アルコールに由来するセグメント及び水酸基を有するアミン化合物に由来するセグメントを有する芳香族化合物によって表面修飾することができる。
【0053】
上記表面修飾する工程では、混合溶液にモノリス型担体を浸漬した後、超音波を印加することが好ましい。
【0054】
上記反応における反応温度は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。
【0055】
上記反応における反応時間は、0.1時間以上であることが好ましく、0.2時間以上であることがより好ましく、20時間以下であることが好ましく、10時間以下であることがより好ましい。
【0056】
上記洗浄工程としては、アルコール、ケトン、エーテル等により洗浄する方法、オートクレーブを用いて洗浄する方法等を用いることができる。なかでも、アルコールによる洗浄が好ましく、エタノールによる洗浄がより好ましい。
【0057】
上記乾燥工程としては、自然乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法を用いることができる。
乾燥温度は、使用する媒体の種類によって適宜変更することができ、具体的には、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。
【0058】
本発明の液体クロマトグラフィー用モノリスカラムは、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よく分離、精製できることから、これらの生体物質の分離、精製するためのカラムとして好適に用いることができる。
上記液体クロマトグラフィーとしては、例えば、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)等が挙げられる。なかでも、高速液体クロマトグラフィー用のカラムとして特に好適である。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、生体物質の非特異吸着が少なく、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よく分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0061】
(実施例1)
(モノリス型担体の作製)
水溶性高分子であるポリエチレンオキシド(アルドリッチ製 商品番号85,645-2)0.90g及び尿素0.90gを0.01規定酢酸水溶液10gに溶解し、この溶液にテトラメトキシシラン4mlを攪拌下で加えて、加水分解反応を行った。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を内径4mmのガラスチューブ内に注入し40℃の恒温漕中に保持したところ約30分後に固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、密閉条件下で130℃に1時間保ってゲル化させた。この処理の後、ゲルを40℃で3日間乾燥し、100℃/hの昇温速度で800℃まで加熱し、直径3mmの棒状の無機系多孔質体を得た。
得られた無機系多孔質体について、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティックス社製)及び自動ポロシメーター(マイクロメリティックス社製)を用いて確認したところ、中心孔径1.5μm(=1500nm)程度の揃った連続孔が3次元網目状に絡み合った構造で存在していることが確かめられた。更に、窒素吸着法により確認したところ、その連続孔の内壁に直径30nm程度の細孔(メソ孔)が多数存在していることが確かめられた。
得られた棒状の無機系多孔質体を長さ160mmに切断することにより円柱状のモノリス型担体を得た。
【0062】
(モノリス型担体の表面修飾)
ホルムアルデヒド水溶液(37wt%)0.7142gと、3-アミノ-1,2-プロパンジオール0.4091gと、1,5-ジヒドロキシナフタレン0.3596gを250mlのエタノールに溶解し得、混合溶液を作製した。得られた混合溶液に、上記で得られたモノリス型担体(シリカモノリス、長さ16cm、直径3mm)に浸漬し、100kHzの超音波槽にて20分間処理した。その後、混合溶液を50℃として4時間反応させた。更に、溶液を除去してモノリス型担体を取り出し、エタノールで3回洗浄した。最後に、モノリス型担体を120℃で5時間真空乾燥することにより、モノリス型担体を表面修飾した液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製した。
得られた液体クロマトグラフィー用モノリスカラムについて、表面修飾層を固体13C-NMRにより測定したところ、160ppm付近に芳香族(Ph)-OHに対応するピークが検出され、70ppm付近に脂肪族C-OHに対応したピークが検出された。また、60ppmの付近に、C-Nに対応するピークも検出された。また、上記原料を反応させることでナフトオキサジン樹脂が形成されることが知られており、これらのことから、上記液体クロマトグラフィー用モノリスカラムは下記式(2)で表される芳香族化合物によって表面修飾されているといえる。
【0063】
【0064】
また、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの表面と内部とを飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析したところ、未修飾のモノリス型担体に比べ、アルコール性水酸基(C-OH)成分及びC-N成分が顕著に増加していることが確認された。
【0065】
(実施例2)
実施例1と同様にしてモノリス型担体を作製した。
【0066】
(モノリス型担体の表面修飾)
ホルムアルデヒド水溶液(37wt%)1.0713gと、2-アミノ-1,3-プロパンジオール1.6136gと、フェノール0.3169gを250mlのエタノールに溶解し得、混合溶液を作製した。得られた混合溶液に、上記で得られたモノリス型担体(シリカモノリス、長さ16cm、直径3mm)に浸漬し、100kHzの超音波槽にて20分間処理した。その後、混合溶液を50℃として4時間反応させた。更に、溶液を除去してモノリス型担体を取り出し、エタノールで3回洗浄した。最後に、モノリス型担体を120℃で5時間真空乾燥することにより、モノリス型担体を表面修飾した液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製した。
得られた液体クロマトグラフィー用モノリスカラムについて、表面修飾層を固体13C-NMRにより測定したところ、160ppm付近に芳香族(Ph)-OHに対応するピークが検出され、70ppm付近に脂肪族C-OHに対応したピークが検出された。また、60ppmの付近に、C-Nに対応するピークも検出された。また、上記原料を反応させることでベンゾオキサジン樹脂が形成されることが知られており、これらのことから、上記液体クロマトグラフィー用モノリスカラムは下記式(3)で表される芳香族化合物によって表面修飾されているといえる。
【0067】
【0068】
また、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムの表面と内部とを飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析したところ、未修飾のモノリス型担体に比べ、アルコール性水酸基(C-OH)成分及びC-N成分が顕著に増加していることが確認された。
【0069】
(実施例3)
(モノリス型担体の作製)
水溶性高分子であるポリエチレンオキシド(アルドリッチ製 商品番号85,645-2)0.90g及び尿素0.90gを0.01規定酢酸水溶液10gに溶解し、この溶液にテトラメトキシシラン4mlを攪拌下で加えて、加水分解反応を行った。数分攪拌したのち、得られた透明溶液を内径4mmのガラスチューブ内に注入し40℃の恒温漕中に保持したところ約30分後に固化した。
固化した試料をさらに数時間熟成させ、密閉条件下で105℃に1時間保ってゲル化させた。この処理の後、ゲルを40℃で3日間乾燥し、100℃/hの昇温速度で800℃まで加熱し、直径3mmの棒状の無機系多孔質体を得た。
得られた多孔質体について、実施例1と同様に確認したところ、中心孔径1.5μm(=1500nm)程度の揃った連続孔が3次元網目状に絡み合った構造で存在していることが確かめられた。また、その連続孔の内壁に直径10nm程度の細孔(メソ孔)が多数存在していることが確かめられた。
得られた棒状の無機系多孔質体を長さ160mmに切断することにより円柱状のモノリス型担体を得た。
【0070】
(モノリス型担体の表面修飾)
実施例1と同様にして、モノリス型担体を表面修飾した液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを作製した。
【0071】
(比較例1)
実施例1と同様にしてモノリス型担体を作製し、表面修飾処理を行わずに、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムとした。
【0072】
(比較例2)
実施例3と同様にしてモノリス型担体を作製し、表面修飾処理を行わずに、液体クロマトグラフィー用モノリスカラムとした。
【0073】
(評価)
得られた液体クロマトグラフィー用モノリスカラムについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0074】
(修飾量の測定)
得られた液体クロマトグラフィー用モノリスカラム5.5mgを白金パンに入れ、空気雰囲気下(流量100ml/分)で温度30℃から1000℃まで加熱した。熱重量分析装置(TG-DTA6300、日立ハイテックサイエンス社製)を用いて測定し減少重量を測定し、重量の減少分を表面修飾した芳香族化合物の重量として修飾量を求めた。
【0075】
(非特異吸着量)
表面修飾前後のモノリス型担体と生体物質との相互作用を評価するため、タンパク質の非特異吸着量を評価した。
具体的には、得られた液体クロマトグラフィー用モノリスカラム0.5gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度5mg/mLのリン酸緩衝液(pH7.4)50mLに投入し、24時間室温で撹拌した。その後、遠心分離を行って上澄み液を回収した。回収した上澄みに、予め調製したBradford試薬(トリフェニルメタン系色素であるCBB G-250 0.01wt%、リン酸17wt%、エタノール3.95wt%)を添加し、20分間攪拌した。その際、溶液の色は赤紫色から青色に変化した。次に、上記青色液の595nmにおける吸光度を分光光度計で測定し、検量線から上記上澄み液の中のBSA濃度を同定することによって、カラムに吸着したBSA量を算出した。
【0076】
(カラム分離性能)
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製 Nexera)によりカラム分離性能を評価した。
なお、測定条件は以下の通りとした。
<測定1>
移動相:30%アセトニトリル-70%水
流量:0.8ml/min.
測定温度:40℃
試料:ウラシル、トルエン、ナフタレン
すべての試料の溶出時間が同じでピークが完全に重なった。これによりこのカラムには疎水的な相互作用がないことを確認できた。この時の溶出時間をT0とした。
<測定2>
移動相:20mMリン酸バッファー+400mMNaCl(pH7.0)
流量:0.8ml/min.
測定温度:40℃
また、実施例1については、NaCl濃度を50mMとして同様に分離性能を評価した。
評価基準は以下の通りとした。
○:分子量の異なる成分間のピークがきれいに分離しており、溶出時間はすべてT0より短く、分子量の大きな成分ほど溶出時間が短かかった。
×:溶出時間がすべてT0より長く、きれいに分離できなかった。
【0077】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、生体物質の非特異吸着が少なく、生体物質の変性や破壊が生じにくく、たんぱく質、抗体、エクソソーム、遺伝子等の生体物質を効率よくそれぞれの大きさにより分離、精製できる液体クロマトグラフィー用モノリスカラムを提供できる。