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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045066
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153252
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】荒川 直輝
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA26
3D030DA35
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DB02
(57)【要約】
【課題】全体をより効率よく暖めることが可能なステアリングホイールを得る。
【解決手段】ステアリングホイール10は、凹部1121を有するリム部11と、リム部11に、一部が凹部1121に収容された状態で巻き付けられて固定される表皮体14と、を備えている。さらに、ステアリングホイール10は、リム部11における凹部1121以外の部位の表面112aと表皮体14との間に介在する発熱体132を備えている。そして、ステアリングホイール10は、発熱体132に熱的に接続された状態で、一部が凹部1121に収容される熱伝導シート12を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するリム部と、
前記リム部に、一部が前記凹部に収容された状態で巻き付けられて固定される表皮体と、
前記リム部における前記凹部以外の部位の表面と前記表皮体との間に介在する発熱体と、
前記発熱体に熱的に接続された状態で、一部が前記凹部に収容される熱伝導シートと、
を備える、
ステアリングホイール。
【請求項2】
前記表皮体は、複数枚の表皮材と、前記表皮材の互いに隣り合う端部同士を重ね合わせた重ね合わせ部と、前記重ね合わせ部を接合する接合部と、を備えており、
前記重ね合わせ部が前記凹部に収容されている、
請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記熱伝導シートは、前記凹部の一方側および他方側に配置された発熱体に熱的に接続されており、前記重ね合わせ部を跨ぐようにした状態で前記凹部に収容されている、
請求項2に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールとして、下記の特許文献1に開示されているように、リム部と表皮体との間にシート状の発熱体を介在させることで、冬季の屋外に駐車していた車両を始動して運転するとき等に生じる不具合(ハンドルが冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感等)を軽減できるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-19614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術のように、リム部と表皮体との間にシート状の発熱体を介在させる場合、生産要件や設計要件等の種々の制約により発熱体が存在しない部位が形成されてしまう。そのため、ステアリングホイールの全体を効率よく暖めることができなかった。
【0005】
そこで、本開示は、全体をより効率よく暖めることが可能なステアリングホイールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のステアリングホイールは、凹部を有するリム部と、前記リム部に、一部が前記凹部に収容された状態で巻き付けられて固定される表皮体と、前記リム部における前記凹部以外の部位の表面と前記表皮体との間に介在する発熱体と、前記発熱体に熱的に接続された状態で、一部が前記凹部に収容される熱伝導シートと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、全体をより効率よく暖めることが可能なステアリングホイールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態にかかるステアリングホイール装置を、ステアリングシャフトの軸方向に沿って運転者側から見た図である。
図2】一実施形態にかかるステアリングホイールを、ステアリングホイールの中心軸と直交する平面で切断した状態を示す断面図である。
図3】一実施形態にかかるステアリングホイールの一部を示す分解斜視図である。
図4】一実施形態にかかるステアリングホイール装置の表皮体が取り外された状態を、ステアリングシャフトの軸方向に沿って運転者側から見た図である。
図5】一実施形態にかかるシート状ヒータ部材を示す平面図である。
図6】一実施形態にかかるステアリングホイールの凹部近傍を、ステアリングホイールの中心軸を含む平面で切断した状態を示す断面図である。
図7】一実施形態にかかるステアリングホイールの第2の製造方法を説明するための図である。
図8】一実施形態にかかるステアリングホイールおよび比較例にかかるステアリングホイールのヒータ作動時における温度分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、ステアリングシャフトに取り付けたステアリングホイール装置を運転者(乗員)側から見た状態で上下方向を規定して説明する。また、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を背面側(前側)、車両の後側すなわち後側下方を正面側(後側:手前側)として説明する。
【0010】
まず、ステアリングホイール装置1の全体構成について説明する。
【0011】
本実施形態にかかるステアリングホイール装置1は、図1に示すように、ステアリングホイール10とスポーク部20とボス部30とを備えている。このステアリングホイール装置1は、自動車(車両)等に装備されるハンドルとしての機能を有しており、通常、自動車(車両)等に傾斜した状態で取り付けられるステアリングシャフト2に装着されている。
【0012】
ステアリングホイール10は、本実施形態では、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態で略円環状をしており、ステアリングホイール10の中心軸Cに垂直な平面で切断した断面形状が略円形をしている(図1および図2参照)。このステアリングホイール10は、自動車(車両)等のハンドルのグリップ部(把持部)を構成するものである。なお、ステアリングホイール10の詳細な説明については後述する。
【0013】
スポーク部20は、ステアリングホイール10とボス部30とを連結する部材であり、本実施形態では、ステアリングホイール10とボス部30とが3本のスポーク部20によって連結されている。各スポーク部20は、ステアリングホイール10の後述するリム芯金111とボス部30の後述するボスプレート31とを連結する金属製のスポーク芯金21と、スポーク芯金21を被覆する樹脂製のスポーク被覆部22と、を備えている。
【0014】
スポーク芯金21は、ボスプレート31から円環状のステアリングホイール10の径方向外側に向けて、放射状に延びるように設けられている。本実施形態では、3つのスポーク芯金21が、ボスプレート31からそれぞれ右方向、左方向および下方向に延びるように設けられており、それぞれのスポーク芯金21がリム芯金111の内周側と連結している。なお、スポーク芯金21は、すべてのスポーク部20が備えている必要はなく、一部のスポーク部20を、スポーク芯金21を用いずにフィニッシャやカバー体などにより構成することも可能である。
【0015】
一方、スポーク被覆部22は、少なくともスポーク芯金21の正面側(後側:手前側)を覆うように設けられている。このスポーク被覆部22は、例えば、軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたもので形成することができる。
【0016】
また、ボス部30は、スポーク芯金21が連結される金属製のボスプレート31と、ボスプレート31の車体側となる背面側(前側)に取り付けられる金属製のボス32と、ボスプレート31の乗員側に装着される樹脂製のパッド体33と、を備えている。
【0017】
ボスプレート31は、略平板状をしており、本実施形態では、厚さ方向をステアリングシャフト2の軸方向に略一致させた状態でステアリングホイール10よりも背面側(前側)に配置されている。このように、ステアリングホイール10よりも背面側(前側)にボスプレート31を配置することで、ボスプレート31の正面側(後側:手前側)にエアバッグ装置等を配置する空間が確保されるようにしている。
【0018】
一方、ボス32は、略円筒状をしており、ボスプレート31の略中央部から背面側(前側)に突出するようにした状態でボスプレート31に一体的に固着されている。そして、このボス32がステアリングシャフト2に取り付けられている。具体的には、ボス32には図示せぬセレーション構造が形成されており、このセレーション構造にステアリングシャフト2を歯合させることで、ボス32がステアリングシャフト2に取り付けられるようにしている。
【0019】
また、パッド体33は、ボスプレート31を正面側(後側:手前側)から覆う部材であり、このパッド体33としては、例えば、エアバッグ装置や衝撃吸収体が収納されたものを用いることができる。なお、パッド体33に、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などを一体的に組み込むようにすることも可能である。
【0020】
次に、ステアリングホイール10の全体構成について説明する。
【0021】
ステアリングホイール10は、リム部11と、リム部11に巻きつけるようにして取り付けられる表皮体14と、を備えている。
【0022】
リム部11は、内側に配置される金属製のリム芯金111と、リム芯金111の外周を覆う樹脂製のリム被覆部112と、を備えており、ステアリングホイール10の中心軸Cに垂直な平面で切断した断面形状が略円形をしている(図2および図3参照)。
【0023】
リム芯金111は、本実施形態では、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態で略円環状をしており、ステアリングホイール10の中心軸Cに垂直な平面で切断した断面形状が逆U字状をしている(図2および図3参照)。なお、リム芯金111の形状は、断面逆U字状のものに限らず様々な形状とすることが可能である。
【0024】
一方、リム被覆部112は、リム芯金111の全体を覆うように形成されており、ステアリングホイール10の中心軸Cに垂直な平面で切断した断面形状が略円形をしている。このリム被覆部112も、例えば、軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたもので形成することができる。また、リム被覆部112は、上述したスポーク被覆部22と一体に形成することも可能であるし、スポーク被覆部22とは別体に形成することも可能である。
【0025】
さらに、本実施形態では、リム被覆部112の外周側には、凹部1121が中心軸Cを全周に亘って囲うように形成されており、この凹部1121に表皮体14の一部が収容されるようにしている(図3および図4参照)。本実施形態では、リム被覆部112の外周側には、4つ(複数)の凹部1121が、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見たときに略円環状のステアリングホイール10の周上にほぼ等間隔で配置されるように形成されている。さらに、4つ(複数)の凹部1121は、いずれも、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態における略円環状のステアリングホイール10の径方向(ステアリングシャフト2を中心とする円の径方向)に延在するように形成されている。言い換えると、4つ(複数)の凹部1121は、いずれも、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態で、ステアリングホイール10の中心軸Cと略直交する方向に延在するように形成されている。
【0026】
このような構成をしたリム部11は、例えば、複数の金型を用いたインサート成形により形成することができる。なお、凹部1121は、インサート成形時に同時に形成されるようにするのが好ましいが、インサート成形後にリム被覆部112を加工することで、リム被覆部112に凹部1121が形成されるようにしてもよい。
【0027】
表皮体14は、運転者(乗員)により直接把持される部分であり、ステアリングホイール装置1の加飾部としての機能を有している。この表皮体14は、例えば、天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されており、この表皮体14をリム被覆部112の外周に巻き付けながら貼り付けることで、表皮体14がリム部11に取り付けられている。このとき、リム被覆部112の外周の前面が表皮体14によって覆われるようにしている。
【0028】
本実施形態では、一方向に細長い略長方形状をした表皮材141を4枚(複数枚)接合することで1枚の環状の表皮体14を形成している。このような表皮体14は、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、4枚(複数枚)の表皮材141を長手方向に沿って一直線上に配置し、各表皮材141の互いに隣り合う端部1411を同方向に折り曲げて重ね合わせた状態で縫製などにより接合することで、4枚の表皮材141が接合された1枚の細長いシート状部材を形成する。そして、1枚のシート状部材の端部同士(長手方向の一方側に配置された表皮材141の一方側の端部1411と長手方向の他方側に配置された表皮材141の他方側の端部1411)を同方向に折り曲げて重ね合わせた状態で縫製などにより接合することで、環状に接合された1枚の表皮体14を形成する。このとき、縫合部(接合部)142aをそれぞれ有する4つ(複数個)の重ね合わせ部142が同一方向(環状に結合された表皮体14の径方向内側)に突出するようにする。
【0029】
そして、環状に接合された1枚の表皮体14の4つ(複数個)の重ね合わせ部142を4つ(複数)の凹部1121にそれぞれ挿入させた状態で、表皮体14をリム被覆部112の外周に巻き付けながら貼り付けることで、表皮体14をリム部11に取り付けている。こうすることで、表皮体14の端部1411(重ね合わせ部142)が浮き上がってしまうことを抑制し、ステアリングホイール10(ステアリングホイール装置1)の見栄えを向上させることができるようにしている。
【0030】
ここで、本実施形態では、冬季の屋外に駐車していた車両を始動して運転するとき等に生じる不具合(ステアリングホイール10が冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感等)を軽減できるようにしている。
【0031】
具体的には、リム部11と表皮体14との間に、発熱体としての電熱線132を有するシート状ヒータ部材13を介在させることで、始動から間もないとき(まだ各種機関が充分に温まっていないとき)にも、ステアリングホイール10を温めることができるようにしている。こうすることで、冬季の屋外に駐車していた車両を始動して運転するとき等に生じる不具合(ステアリングホイール10が冷たいことに起因する操作のしづらさや不快感等)を軽減できるだけでなく、暖房の使用を抑制して電力の消費を抑制することもできるようにしている。
【0032】
シート状ヒータ部材13は、伸縮性を有するシート状基材131と、シート状基材131よりも伸縮性が低い電熱線(発熱体)132と、を備えている。
【0033】
シート状基材131は、マット(ステアリング用マット)などとも呼ばれるものであり、本実施形態では、一方向に細長い略長方形状をした4枚(複数枚)のシート状基材131が用いられている。
【0034】
このシート状基材131は、伸縮性を持たせることができればよく、任意の材質により形成することができる。例えば、発泡ウレタンや発泡PEシートなどの合成樹脂を用いてシート状基材131を形成することができる。また、シート状基材131の延伸率を任意の延伸率とすることが可能である。例えば、10%~15%延伸するシート状基材131とすることができる。さらに、シート状基材131の厚さも任意に設定することが可能である。本実施形態では、ステアリングホイール10を温めるヒータとしての性能を考慮し、シート状基材131の厚さが1.0mm以下となるようにしている。
【0035】
一方、電熱線132は、通電により発熱するものであり、図示せぬ制御回路や給電源などに直接または間接的に接続されている。このように、本実施形態では、電熱線132が発熱回路の一部を構成している。なお、発熱回路が温度センサを備えるようにし、温度センサによってステアリングホイール10の温度を調整できるようにするのが好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、電熱線132は、シート状基材131の一面(リム部11側の面)に波状に蛇行した状態で固定されている。なお、電熱線132は、少なくとも一部がシート状基材131内に埋め込まれていてもよいし、シート状基材131の両面に固定されていてもよい。
【0037】
そして、この電熱線132に通電すると電熱線132が発熱し、電熱線132で発生した熱がステアリングホイール10に伝達されて、ステアリングホイール10が温められるようになっている。この電熱線132は、通電により発熱してステアリングホイール10を温めることができればよく、任意の材質により形成することができる。例えば、ニクロム線等を用いて電熱線132を形成することができる。
【0038】
ところで、リム部11と表皮体14との間に電熱線132を介在させる場合、生産要件や設計要件等の種々の制約により電熱線132を配置することができない部位ができてしまう。
【0039】
例えば、本実施形態のように、リム部11に形成した凹部1121に表皮体14の重ね合わせ部142を挿入させるようにする場合、重ね合わせ部142の近傍に所定のクリアランスを設けた状態で電熱線132を配置する必要がある。
【0040】
そのため、本実施形態では、シート状基材131の端部131aに所定のクリアランスを持たせた状態で電熱線132をシート状基材131に固定させている。すなわち、一方向に細長いシート状基材131の表面に、発熱体としての電熱線132が配置される領域である発熱体配置領域R1と、発熱体としての電熱線132が配置されない領域である発熱体非配置領域R2とが形成されるようにしている。
【0041】
このとき、例えば、重ね合わせ部142から片側5mmのクリアランスで電熱線132を配置できたとしても、表皮体14の厚みを2mmとすると、電熱線132が配置されない領域の幅W1が、(表皮厚み2mm+一方側の端部132aまでのクリアランス5mm)+(表皮厚み2mm+他方側の端部132aまでのクリアランス5mm)で、14mmとなってしまう。そして、5mm以下のクリアランスとすることは現状では難しいので、現実的には、電熱線132が配置されない領域の幅W1はさらに広くなってしまう。
【0042】
そのため、従来のステアリングホイールでは、重ね合わせ部142の近傍における比較的広い領域が効率よく暖めることができない領域となってしまっており、ステアリングホイールの全体を効率よく暖めることができなかった。
【0043】
そこで、本実施形態では、ステアリングホイールの全体をより効率よく暖めることができるようにしている。
【0044】
具体的には、熱伝導性が比較的高いカーボンシート(熱伝導シート)12を用いて、電熱線(発熱体)132で発生した熱を電熱線132が配置されない領域に効率よく伝達できるようにしている。
【0045】
本実施形態では、リム部11に表皮体14を固定した状態で、表皮体14の裏面14aの全体がカーボンシート(熱伝導シート)12で覆われるようにしている。こうすることで、カーボンシート(熱伝導シート)12が電熱線(発熱体)132に熱的に接続された状態となるようにしている。そして、カーボンシート(熱伝導シート)12の一部が凹部1121に収容されるようにしている。
【0046】
このとき、カーボンシート(熱伝導シート)12は、凹部1121の一方側および他方側に配置された電熱線(発熱体)132に熱的に接続されている。
【0047】
こうすることで、凹部1121によって分断された一方側の電熱線(発熱体)132と他方側の電熱線(発熱体)132とがカーボンシート(熱伝導シート)12を介して熱的に接続されるようにしている。そして、凹部1121の近傍の電熱線(発熱体)132が配置されていない領域の全体にカーボンシート(熱伝導シート)12が配置されるようにしている。
【0048】
さらに、本実施形態では、カーボンシート(熱伝導シート)12が、重ね合わせ部142を跨ぐようにした状態で凹部1121に収容されるようにしている。
【0049】
こうすることで、重ね合わせ部142の縫合部(接合部)142aよりも先端側がカーボンシート(熱伝導シート)12によって挟持されるようにしている。こうすれば、重ね合わせ部142の縫合部(接合部)142aよりも先端側が開いてしまうことを、カーボンシート(熱伝導シート)12によって抑制することができるようになる。
【0050】
このような構成をしたステアリングホイール10は、例えば、下記のようにして製造することができる。
【0051】
まず、リム部11の表面(凹部以外の部位の表面112aおよび凹部1121の内面1121a)にカーボンシート(熱伝導シート)12に接着剤等の接合部材を用いて貼り付ける。
【0052】
次に、シート状ヒータ部材13をカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aにおけるリム部11の凹部1121以外の部位の表面112aと対応する部位に張り合わせて固定する。このシート状ヒータ部材13は、接着剤等の接合部材を用い、例えば、下記のようにしてカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aに貼り付けられている。
【0053】
まず、シート状ヒータ部材13の短手方向の一端を接着剤でカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aに固定する。次に、一端をカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aに固定した状態で、シート状ヒータ部材13の短手方向の他端を引っ張りながらカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aにシート状ヒータ部材13を巻き付ける。そして、他端を接着剤でカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aにおけるシート状ヒータ部材13の一端が固定された位置の近傍に固定する。このとき、シート状ヒータ部材13の短手方向中央部には接着剤が塗布されていないので、シート状ヒータ部材13は皺などを伸ばしながらカーボンシート(熱伝導シート)12の表面12aに巻き付けることができる。また、接着剤は、シート状ヒータ部材13の固定の際にカーボンシート(熱伝導シート)12との圧接によって拡がり、接着剤が塗布されていなかった部位にも充填されるようになっている。
【0054】
次に、シート状ヒータ部材13およびカーボンシート(熱伝導シート)12が貼り付けられたリム部11を覆うように表皮体14を張り合わせる。こうして、ステアリングホイール10を形成する。
【0055】
なお、ステアリングホイール10は、例えば、下記のようにして製造することも可能である。
【0056】
まず、表皮体14の裏面14aにおける重ね合わせ部142以外の部位に、シート状ヒータ部材13を接着剤等の接合部材を用いて貼り付けて固定する。
【0057】
次に、シート状ヒータ部材13が固定された表皮体14の裏面14aの全体を覆うようにカーボンシート(熱伝導シート)12を接着剤等の接合部材を用いて貼り付けて固定する。こうすることで、発熱体付表皮体15を形成する。
【0058】
そして、発熱体付表皮体15を、カーボンシート(熱伝導シート)12側が内側となるようにした状態で、リム部11の表面(凹部以外の部位の表面112aおよび凹部1121の内面1121a)に接着剤等の接合部材を用いて貼り付ける(図7参照)。このとき、カーボンシート(熱伝導シート)12によって挟持された重ね合わせ部142が凹部1121に挿入されるようにする。こうして、ステアリングホイール10を形成する。
【0059】
このような方法でステアリングホイール10を製造した場合、カーボンシート(熱伝導シート)12で重ね合わせ部142を挟持した状態で、表皮体14をリム部11に固定することになる。すなわち、カーボンシート(熱伝導シート)12によって重ね合わせ部142の剛性を高めた状態で、表皮体14をリム部11に固定することになる。さらに、重ね合わせ部142の先端の開きが抑制された状態で、表皮体14をリム部11に固定することになる。そのため、表皮体14のリム部11への巻き付け作業性の向上を図ることができるようになる。
【0060】
さらに、本実施形態では、リム部11の凹部以外の部位の表面112aにもカーボンシート(熱伝導シート)12を貼り付けているため、表皮体14自体の剛性も高められ、表皮体14のリム部11への巻き付け作業性のより一層の向上を図ることができるようになっている。
【0061】
なお、ステアリングホイール10は、上述した方法以外の方法で製造することも可能である。
【0062】
そして、上述したカーボンシート(熱伝導シート)12を用いたステアリングホイール10とすれば、カーボンシート(熱伝導シート)12を用いていない場合と比較して、ステアリングホイールの全体をより効率よく暖めることができるようになる。
【0063】
なお、図8は、サーモグラフィを用いてステアリングホイールのヒータ作動時における表面温度を測定した結果を、4つの領域に分けた図である。この図8の左側には、カーボンシートを用いていないステアリングホイールの温度分布を示している。そして、図8の右側には、カーボンシートを用いたステアリングホイール、すなわち、本実施形態で示したステアリングホイール10の温度分布を示している。なお、図8では、色の濃い領域の方が色の薄い領域よりも高温の領域となっている。
【0064】
図8を見ると、本実施形態で示したステアリングホイール10の方が、カーボンシートを用いていないステアリングホイールよりも凹部1121に相当する部分の温度が高くなっていることが確認される。
【0065】
このことから、本実施形態で示したステアリングホイール10の方が、電熱線132が配置されていない部分をより効率よく暖められることが確認できる。
【0066】
さらに、図8からは、本実施形態で示したステアリングホイール10の方が、カーボンシートを用いていないステアリングホイールよりも、凹部1121が形成されていない部位の温度も高くなっていることが確認される。
【0067】
このことから、本実施形態で示したステアリングホイール10の方が、昇温性能の優れたステアリングホイールであることが確認できる。
【0068】
以下では、上記実施形態で示したステアリングホイール10の特徴的構成およびそれにより得られる効果を説明する。
【0069】
本実施形態にかかるステアリングホイール10は、凹部1121を有するリム部11と、リム部11に、一部が凹部1121に収容された状態で巻き付けられて固定される表皮体14と、を備えている。さらに、ステアリングホイール10は、リム部11における凹部1121以外の部位の表面112aと表皮体14との間に介在する電熱線(発熱体)132を備えている。そして、ステアリングホイール10は、電熱線(発熱体)132に熱的に接続された状態で、一部が凹部1121に収容されるカーボンシート(熱伝導シート)12を備えている。
【0070】
こうすれば、電熱線(発熱体)132で生じた熱をカーボンシート(熱伝導シート)12を介してより効率よく凹部1121および凹部1121に収容される表皮体14の一部に伝達することが可能になる。すなわち、電熱線(発熱体)132が配置されていない部位である凹部1121および凹部1121を、より効果的に暖めることができるようになる。
【0071】
このように、本実施形態にかかるステアリングホイール10とすれば、ステアリングホイール10の全体をより効率よく暖めることができるようになる。
【0072】
このとき、表皮体14が、複数枚の表皮材141と、表皮材141の互いに隣り合う端部1411同士を重ね合わせた重ね合わせ部142と、重ね合わせ部142を接合する縫合部(接合部)142aと、を備えていてもよい。そして、重ね合わせ部142が凹部1121に収容されるようにしてもよい。
【0073】
このように、複数枚の表皮材141を用いて表皮体14を形成するようにすれば、曲がった形状(例えば円環状等)のリム部11に表皮体14を固定する際に、表皮体14に皺が発生してしまうことを抑制することが可能になって、ステアリングホイール10の見栄えを向上させることが可能になる。
【0074】
また、カーボンシート(熱伝導シート)12が凹部1121の一方側および他方側に配置された電熱線(発熱体)132に熱的に接続されるようにしてもよい。さらに、カーボンシート(熱伝導シート)12が重ね合わせ部142を跨ぐようにした状態で凹部1121に収容されるようにしてもよい。
【0075】
こうすれば、凹部1121によって分断された一方側の電熱線(発熱体)132と他方側の電熱線(発熱体)132とがカーボンシート(熱伝導シート)12を介して熱的に接続されることになる上、凹部1121の近傍の電熱線(発熱体)132が配置されていない領域の全体にカーボンシート(熱伝導シート)12を配置することが可能になる。その結果、ステアリングホイール10の広範囲に熱を効率よく伝達させることができるようになって、ステアリングホイール10の全体をより一層確実に暖めることができるようになる。
【0076】
さらに、重ね合わせ部142の縫合部(接合部)142aよりも先端側をカーボンシート(熱伝導シート)12によって挟持することが可能になる。その結果、重ね合わせ部142の縫合部(接合部)142aよりも先端側が開いてしまうことを、カーボンシート(熱伝導シート)12によって抑制することができるようになる。
【0077】
また、カーボンシート(熱伝導シート)12で重ね合わせ部142を挟持した状態で、表皮体14をリム部11に固定するようにした場合には、カーボンシート(熱伝導シート)12によって重ね合わせ部142の剛性を高めることができるようになる。そのため、表皮体14のリム部11への巻き付け作業性の向上を図ることができるようになる。
【0078】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態で、ステアリングホイール10の中心軸Cと略直交する方向に凹部1121を延在させたものを例示したが、ステアリングホイール10の中心軸Cと略直交する方向と交差する方向に凹部1121を延在させるようにすることも可能である。例えば、インストルメントバネルとの統一感を演出するために、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って見た状態で、水平方向に延在するように凹部1121を形成することが可能である。
【0080】
また、スポーク部20や凹部1121は、ステアリングホイール装置1のデザインなどに応じて、その位置や数を任意に設定することが可能である。
【0081】
また、ステアリングホイール10の形状も円環状とする必要はなく、様々な形状とすることが可能である。
【0082】
また、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【0083】
また、カーボンシート(熱伝導シート)12は、リム部11の凹部1121以外の部位の表面112aのほぼ全体を覆うように配置する必要はなく、電熱線(発熱体)132に熱的に接続された状態で一部がリム部11の凹部1121内に配置されていればよい。
【0084】
例えば、電熱線(発熱体)132に熱的に接続された状態で一部をリム部11の凹部1121内に配置させつつ、電熱線132が疎になる領域にカーボンシート(熱伝導シート)12を貼り付けるようにすることが可能である。こうすれば、ステアリングホイール10の温度ムラの発生を抑制し、より均一な温度分布となるようにすることができる。
【0085】
また、表皮体14と電熱線(発熱体)132との間にカーボンシート(熱伝導シート)12を介在させるようにしてもよい。
【0086】
また、発熱体や表皮体、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 ステアリングホイール
11 リム部
112a 凹部以外の部位の表面
1121 凹部
132 電熱線(発熱体)
14 表皮体
141 表皮材
1411 端部
142 重ね合わせ部
142a 縫合部(接合部)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8