(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045075
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】探傷装置及びそれに用いられるセンサ用治具
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153265
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】399039719
【氏名又は名称】東日本電気エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市倉 庸宏
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】岸本 剣一郎
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC10
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC09
2G047DB10
2G047EA10
2G047GJ14
(57)【要約】
【課題】内部損傷を容易に発見でき、検査精度のばらつきが生じにくく、短時間で多くの地上子を検査することが可能な探傷装置及びそれに用いられるセンサ用治具を提供することを目的とする。
【解決手段】
探傷装置1では、スライド部材27をガイド部材25に沿って移動させ、超音波探傷器5のセンサを測定箇所に配置させて、センサから超音波を照射することで、エコーの強さ及びエコーの伝播時間を測定することができ、この測定値によって、被検査側面部8の測定箇所の内部損傷の有無を容易に検査することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路の軌道上に設置される略平板状の地上子の側面部の内部損傷を検査する探傷装置であって、
前記地上子の上面に位置決めされて、前記地上子の被検査側面部に沿って延びるベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、被検査側面部に沿って延びるガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って移動可能に案内されるスライド部材と、
前記地上子の前記被検査側面部に対応する上面に対向して、前記スライド部材に保持されるセンサと、を備えることを特徴とする探傷装置。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記センサを前記被検査側面部に対応する上面に押圧する付勢部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記地上子に位置決めするための、前記地上子の幅に応じて調整可能な調整部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記センサは、超音波を照射するセンサであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項5】
鉄道線路の軌道上に設置される略平板状の地上子の側面部の内部損傷を検査する探傷装置のセンサ用治具であって、
前記地上子の上面に位置決めされて、前記地上子の被検査側面部に沿って延びるベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、被検査側面部に沿って延びるガイド部材と、
前記ガイド部材に沿って移動可能に案内され、前記地上子の前記側面部の前記内部損傷を測定するセンサを保持するスライド部材と、を備えることを特徴とするセンサ用治具。
【請求項6】
前記スライド部材は、前記センサを前記被検査側面部に対応する上面に押圧する付勢部材を備えることを特徴とする請求項5に記載のセンサ用治具。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記地上子に位置決めするための、前記地上子の幅に応じて調整可能な調整部材を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のセンサ用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上子の内部損傷を検査する探傷装置及びそれに用いられるセンサ用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道線路の軌道内には、自動列車停止装置(ATS)、自動列車制御装置(ATC)又は自動列車運転装置(ATO)等の車上子との間で情報を送受信して、列車の運行を制御するための地上子が設けられている。ところで、安全な列車運行のために、地上子の適切な検査が行われている(例えば、特許文献1参照)。地上子の検査には、周期的に(2年に1回)、地上子に損傷が存在していないか目視で検査を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上子の目視検査は、列車が走行していない時間(終電から始発までの短時間)に行われているが、地上子は鉄道線路の軌道内に多く存在しており、短時間に多くの地上子を目視にて検査することは困難である。目視検査では、損傷の見落しが生じる虞があり、また、内部損傷を確認することができないとうい問題ある。さらに、目視を行う作業員によっては、検査精度にばらつきが生じることがある
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、内部損傷を容易に発見でき、検査精度のばらつきが生じにくく、短時間で多くの地上子を検査することが可能な探傷装置及びそれに用いられるセンサ用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る探傷装置は、鉄道線路の軌道上に設置される略平板状の地上子の側面部の内部損傷を検査する探傷装置であって、前記地上子の上面に位置決めされて、前記地上子の被検査側面部に沿って延びるベース部材と、前記ベース部材に設けられ、被検査側面部に沿って延びるガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動可能に案内されるスライド部材と、前記地上子の前記被検査側面部に対応する上面に対向して、前記スライド部材に保持されるセンサと、を備えることを特徴とする。
請求項2に係る探傷装置は、前記スライド部材は、前記センサを前記被検査側面部に対応する上面に押圧する付勢部材を備えることを特徴とする。
請求項3に係る探傷装置は、前記ベース部材は、前記地上子に位置決めするための、前記地上子の幅に応じて調整可能な調整部材を備えることを特徴とする。
請求項4に係る探傷装置は、前記センサは、超音波を照射するセンサであることを特徴とする。
請求項5に係るセンサ用治具は、鉄道線路の軌道上に設置される略平板状の地上子の側面部の内部損傷を検査する探傷装置のセンサ用治具であって、前記地上子の上面に位置決めされて、前記地上子の被検査側面部に沿って延びるベース部材と、前記ベース部材に設けられ、被検査側面部に沿って延びるガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動可能に案内され、前記地上子の前記側面部の前記内部損傷を測定するセンサを保持するスライド部材と、を備えることを特徴とする。
請求項6に係るセンサ用治具は、前記スライド部材は、前記センサを前記被検査側面部に対応する上面に押圧する付勢部材を備えることを特徴とする。
請求項7に係るセンサ用治具は、前記ベース部材は、前記地上子に位置決めするための、前記地上子の幅に応じて調整可能な調整部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、スライド部材をガイド部材に沿って移動することで、センサを地上子の被検査側面部に対応する上面(測定箇所)に適宜配置することができ、センサによって、その測定箇所の内部損傷の有無を検査することができる。
請求項2及び6に係る発明によれば、付勢部材によって、センサを、地上子の、被検査側面部に対応する上面に、一定の力で押圧することができるので、検査精度のばらつきを抑えることができる。
請求項3及び7に係る発明によれば、調整部材は、地上子の幅に応じて調整することができるため、様々な地上子に対応することができる。
請求項4に係る発明によれば、超音波を照射するセンサとすることで、超音波のエコーの大きさ、エコーの戻ってくる時間(伝播時間)に基づいて、地上子の損傷を容易に発見することができ、損傷の見落しを防ぐことができる。
請求項5に係る発明によれば、スライド部材をガイド部材に沿って移動させることで、センサを地上子の被検査側面部に対応する上面(測定箇所)に適宜配置させることができる。その結果、センサによる地上子の内部損傷の有無を適切に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る探傷装置を地上子に取付けた状態の概略図である。
【
図2】
図1に示すセンサ用治具の図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
【
図3】
図1に示すセンサ用治具のガイド部材の部分下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る探傷装置の構成を
図1~
図3に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、探傷装置1は、鉄道線路9の軌道上に設置される略平板状の地上子7の側面部の内部損傷を検査するものであり、作業員が持ち運ぶことができる程度の大きさ及び重量を有する装置である。探傷装置1は、
図1及び
図2に示すように、センサ用治具3と、超音波探傷器5とを備える。
【0010】
図2に示すように、センサ用治具3は、超音波探傷器5のセンサ43(探触子、後述参照)による測定を補助するものであり、ベース部材21と、調整部材23,23と、ガイド部材25と、スライド部材27とを備える。ベース部材21は、長方形状の板部材である。ベース部材21は、その両端の上面に、ガイド部材25を支持する一対の支持部29,29を備える。調整部材23,23は、地上子7の側面に当接して、ベース部材21を地上子7の上面に対して位置決めするブロックであり、ベース部材21の下面に対して取付位置を変更できるように、その下面に取り付けられている。これにより、調整部材23,23の取付位置(間隔)を調整することで、様々な地上子7の幅に対応することができる。
【0011】
ガイド部材25は、地上子7の被検査側面部8(
図1参照)に沿って延びて、スライド部材27を案内する2本のシャフトであり、支持部29,29の間に設けられている。
【0012】
スライド部材27は、超音波探傷器5のセンサ43を支持し、移動させるものであり、ガイド部材25に沿って移動可能に案内される。スライド部材27は、
図2に示すように、ブロック本体31と、スライド操作するための操作部33と、超音波探傷器5のセンサ43を保持するホルダ35と、ホルダ35に保持されたセンサ43を地上子7に押圧する付勢部材37とを備える。ブロック本体31には、ブロック本体31からベース部材21の側方へ延出される延出部39が一体に形成されている。操作部33は、ブロック本体31の上部に設けられている。延出部39には、ロッド41が取り付けられている。ロッド41は、ベース部材21の上面に対して垂直に、ベース部材21の側部近傍まで延びている。ロッド41の一端(地上子7の上面に対向する側)には、ホルダ35が取付けられている。付勢部材37は、ばね、ゴム等の弾性部材(図示では、圧縮ばね)であり、ブロック本体31の延出部39とホルダ35との間に配置されるようにロッド41に巻回されて、ホルダ35を、延出部39から離れる方向に付勢する。
【0013】
超音波探傷器5は、地上子7の被検査側面部8に超音波を照射し、被検査側面部8の内部損傷(き裂、傷)から反射されるエコーの強さ、エコーが戻ってくる時間(伝播時間)から内部損傷の大きさ及び損傷位置を検知するものである。超音波探傷器5は、超音波を照射するセンサ43と、モニター45とを備える。センサ43は、
図3に示すように、スライド部材27のホルダ35に保持されている。モニター45は、センサ43からのエコーの強さ、伝播時間を表示するものであり、作業員が持ち運ぶことができる程度の大きさ及び重量のものである。センサ43とモニター45とは、ケーブル47によって繋がれている。
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る探傷装置1の使用方法について説明する。
まず、探傷装置1のベース部材21を、地上子7の被検査側面部8に沿うように、地上子7の上面に設置する。このとき、地上子7の幅に応じて、調整部材23,23をベース部材21の下面に対する取付位置を変更して、センサ用治具3を地上子7の上面に位置決めさせる。このとき、ホルダ35に装着された超音波探傷器5のセンサ43は、地上子7の、被検査側面部8に対応する上面に対向するように配置され、付勢部材37によって、その上面に押圧されている。
【0015】
そして、操作部33を操作して、スライド部材27をガイド部材25に沿って移動させ、超音波探傷器5のセンサ43を測定箇所(検査箇所)に配置させる。そして、地上子7の測定箇所、すなわち、測定する被検査側面部8に対応する上面に対して、超音波を照射する。その結果、モニター45には、照査された超音波によるエコーの強さと、エコーの伝播時間とが表示され、これらに基づいて、被検査側面部8に内部損傷の有無を検査する。そして、順次、スライド部材27をガイド部材25,25に沿って移動させ、被検査側面部8の測定箇所に、センサ43を配置して、内部損傷の検査を行う。
【0016】
以上、上記構成を有する一実施形態の探傷装置1によれば、次のような作用効果を得ることができる。
探傷装置1では、スライド部材27をガイド部材25に沿って移動させ、超音波探傷器5のセンサ43を測定箇所に配置させて、センサ43から超音波を照射することで、エコーの強さ及びエコーの伝播時間を測定することができ、この測定値によって、被検査側面部8の測定箇所の内部損傷の有無を検査することができる。
【0017】
超音波探傷器5のセンサ43は、付勢部材37によって、地上子7の、被検査側面部8に対応する上面に、一定の力で押圧されているので、超音波探傷器5のセンサ43から照射される超音波が乱れず、検査精度のばらつきを抑えることができる。
【0018】
超音波探傷器5のモニター45に表示されるエコーの強さ及び伝播時間を見ることで、地上子7の内部損傷の有無を容易に発見することができるので、地上子7の内部損傷の見落しを防ぐことができる。
【0019】
探傷装置1(センサ用治具3及び超音波探傷器5)は、作業員が持ち運ぶことができる程度の大きさ及び重量のものであるため、地上子7の検査後、他の地上子の設置場所に容易に運ぶことができ、短時間で多くの地上子7を検査することができる。
【0020】
センサ用治具3の調整部材23,23は、地上子7の幅に応じて、調整部材23,23の間隔を適宜変更できるので、様々なタイプの地上子に対応することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…探傷装置、3…センサ用治具、7…地上子、8…被検査側面部、9…鉄道線路、21…ベース部材、25…ガイド部材、27…スライド部材、43…センサ