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特開2023-45077インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造
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  • 特開-インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045077
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造
(51)【国際特許分類】
   E21F 16/02 20060101AFI20230327BHJP
   E03F 5/04 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E21F16/02
E03F5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153268
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100221855
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 康造
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳顕
(72)【発明者】
【氏名】青木 亘
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA09
2D063CA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造を提供する。
【解決手段】既存監視員通路と既存円形水路を有する自動車用トンネルにおける、インバート改築区間左側路肩部31に設置する監視員通路縦壁付き円形水路は、円形水路部70と監視員通路縦壁部71とが一体のプレキャストコンクリート製で、円形水路部の断面形状は既存円形水路と同一であり、円形水路部の水路中心及び水路天端位置と、既存円形水路の水路中心及び水路天端位置とは、水流及び視線誘導の点から連続性を有し、監視員通路縦壁部は、改築区間前後の既存監視員通路の縦壁下端を、既存円形水路部下端の設置位置まで延長した断面形状と同一であり、かつ円形水路部の水路左側部に接して円形水路部と一体に形成され、監視員通路縦壁部の縦壁の前面位置と、既存監視員通路の縦壁の前面位置とは、視線誘導の点から連続性を有する、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤ぶくれによりインバート改築が必要となった、既存監視員通路と既存円形水路を有する自動車用トンネルにおける、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造であって、
前記左側路肩部に設置する監視員通路縦壁付き円形水路は、円形水路部と監視員通路縦壁部とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造で構成され、
前記円形水路部は、正方形断面の中心部に所定内径の円形水路、左に水路左側部、右に水路右側部、下に水路基部及び上に水路頂部を備え、前記水路頂部の中央でかつ円形水路の中心直上には、排水呑口を有し、前記円形水路部の断面形状は改築区間前後の前記既存円形水路と同一であり、
前記監視員通路縦壁付き円形水路の前記円形水路部の水路中心及び水路天端位置と、改築区間前後の前記既存円形水路の水路中心及び水路天端位置とは、水流及び視線誘導の点から連続性を有し、
前記監視員通路縦壁部は、改築区間前後の前記既存監視員通路の縦壁下端における前面側下端及び背面側下端を、前記既存円形水路部下端の設置位置まで延長した断面形状と同一であり、かつ前記円形水路部の前記水路左側部に接して前記円形水路部と一体に形成され、
前記監視員通路縦壁部の前記縦壁の前面位置と、改築区間前後の前記既存監視員通路の前記縦壁の前面位置とは、視線誘導の点から連続性を有することを特徴とする、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
供用後のトンネルにおいて、何らかの原因により盤ぶくれが生じて、路盤が浮き上がる場合がある。盤ぶくれの対策工としては、盤ぶくれが生じた箇所に対してインバートを施工するのが最も効果的である。供用中のトンネルにおいてインバートを施工する場合は、掘削、インバートコンクリートの打設・養生および埋め戻しを片側ずつ行う、いわゆる半割施工を採用するのが一般的であるが、長大トンネルのインバート改築区間の左側路肩には円形水路、監視員通路、管路工、水道管など多くの施設があり、工事が煩雑であり、規制期間の短縮が求められる。本発明は、高速道路トンネルのような自動車用トンネルのインバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルにおいて盤ぶくれが生じた場合、盤ぶくれが生じた箇所に対して、掘削、インバートコンクリートの打設・養生および埋め戻しを片側ずつ行う半割施工を採用するのが一般的であるが、長大トンネルのインバート改築区間の左側路肩には円形水路、監視員通路、管路工、水道管など多くの施設があり工事が煩雑であり、インバート改築により撤去・再構築が必要となるが規制期間が限られるなどの制約があり舗装工も含めた施工期間の短縮が問題となっている。
【0003】
特許文献1(段落22、図8、9参照)では、トンネル内の道路面の路面下を上下両車線にわたって例えば幅6mの長さづつ抜き掘り(抜き掘り箇所を符号62で示す)してインバートを施工する。特に路肩部の改築施工は、側溝72の設置、縁石75の設置、側道コンクリート73及び側道コンクリート76の打設等を個別に行っている。
特許文献2(段落31、図3参照)では、トンネル1a内の片側の走行路線2を交互通行とし、この工事区間でインバート修復工事を行っている。走行路線2の鋪装2c下の下部地盤2eを掘り下げ土砂を除去し、インバート16を構成してPC版23からなる走行路線2を設置し、左側路肩部においては、現場打ちコンクリート20から形成したブロックを接続し、その上部に監視員通路11及び矩形水路13bを、それぞれ別体で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-221707号公報
【特許文献2】特開2017-8619号公報
【特許文献3】実用新案登録第3092202号公報
【特許文献4】特開2014-25278号公報
【特許文献5】特許第4618740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
供用後のトンネルにおいて盤ぶくれが生じた場合、盤ぶくれが生じた箇所に対して、掘削、インバートコンクリートの打設・養生および埋め戻しを片側ずつ行う半割施工を採用するのが一般的であるが、長大トンネルのインバート改築区間の左側路肩には円形水路、監視員通路、管路工、水道管など多くの施設があり工事が煩雑であるという課題がある。さらに、インバート改築により撤去・再構築が必要となるが規制期間の短縮という課題がある。
【0006】
特許文献1(段落22、図8、9参照)では、トンネル内の道路面の路面下を上下両車線にわたって例えば幅6mの長さづつ抜き掘り(抜き掘り箇所を符号62で示す)してインバートを施工する。特に路肩部の改築施工は、側溝72の設置、縁石75の設置、側道コンクリート73及び側道コンクリート76の打設等を個別に行っている。路肩部の改築施工は多くの施設工事から構成され煩雑であるが、再構築の際の規制期間の短縮のための対策の記載はない。
特許文献2(段落31、図3参照)では、トンネル1a内の片側の走行路線2を交互通行とし、この工事区間でインバート修復工事を行っている。走行路線2の鋪装2c下の下部地盤2eを掘り下げ土砂を除去し、インバート16を構成する端部ブロック19・中ブロック18・支柱ブロック17上に、PC版23からなる走行路線2を設置している。
左側路肩部においては、端部ブロック19に現場打ちコンクリート20から形成したブロックを接続し、監視員通路1の前面壁に矩形水路13bを設置している。監視員通路11及び矩形水路13bをそれぞれブロック化して設置しているが、監視員通路11及び矩形水路13bは分離されて施工されている。
【0007】
特許文献3(段落1、4~6、15、図16~25)では、背面に監視員通路18を形成するようにした擁壁構造であり、トンネル内監視員通路を形成する擁壁部材2は、道路5より高く立ち上る起立壁部3と、道路5に向かって起立壁部3の下部前面に突出形成される底壁部4とで構成され、底壁部4に水路6を長さ方向に貫通して形成し、道路排水を水路6に導くための導水溝7を底壁部4の上面に開口させたもので、導水溝7は起立壁部3に若干近接した位置に垂直に形成されている。そして、擁壁部材2をプレキャストコンクリート製とすることで、トンネル側壁の下方に一体的に連接された監視員通路を的確に造成できるトンネル内監視員通路の擁壁構造であり、路肩部の現場での工程を極力減らして工期を大幅に短縮できことが記載されている。
【0008】
上記トンネル内監視員通路を形成する擁壁部材2を、自動車用トンネルのインバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造として使用することは記載されていない。
自動車用トンネルのインバート改築を行う左路肩施設の既存構造は、トンネル内監視員通路と該トンネル内監視員通路の縦壁下方に接した円形水路である(以下、改築施設という)。該改築施設の円形水路は、正方形形状の躯体内の中心に所定内径の水路を形成し、水路と躯体外面との厚みは上下左右とも同じ値であり、監視員通路の縦壁は上下同一厚さで円形水路の躯体側面に接している。
一方、特許文献3の底壁部4の上面に開口させた導水溝7は、通常水路の中央直上に設置されるのが技術常識であることから、当該技術常識を考慮すると、底壁部4上面の導水溝7を対称軸として形成された円形水路6としての躯体は、「起立壁部3に若干近接した」寸法だけ、起立壁部3直下に入り込んでいると理解できる。そして、円形水路6としての躯体をトンネル側壁側に所定幅拡幅して底壁部4とし、当該底壁部4の背面から前記所定幅に「起立壁部3に若干近接した」寸法だけ加算した幅で、当該底壁部4の上端面から上方に起立させた起立壁部3であるといえる。
改築施設の縦壁は円形水路躯体側面に接していることから、特許文献3を改築施設に採用して、特許文献3の起立壁部3の前面を改築区間前後の縦壁の前面に合わせると、改築区間前後の円形水路中心と特許文献3の底壁部4の円形水路6中心は、偏心することとなり、水路断面に段差及び断面減少を生じ、流量の減少及びごみなどの詰まりの原因になる。また路面上に現れる呑口や円形水路上面端部にも平面的なずれが生じ運転者に違和感を生じさせる。一方、特許文献3を改築施設に採用して、特許文献3の水路6を改築区間前後の円形水路に合わせると、改築施設の縦壁前面と特許文献3の起立壁部3前面は、一致しないことになる。
【0009】
特許文献4(段落7、14~32、図1~3)には、略直方体形状のコンクリート製の側溝部11と、該側溝部11の上面11aの右(左の誤記)側縁に該右(左の誤記)側縁から上方に向かって延設された略矩形板状のコンクリート製の擁壁部12とを一体に備えた側溝ブロック10であり、側溝部11には略矩形状断面の通水孔11eを有し、天版部分Paの厚さTaと底版部分Pbの厚さTb(最小値)と左(右の誤記)側版部分Pcの厚さTcと右(左の誤記)側版部分Pdの厚さTdの厚さ関係はTd>Tc>Ta>Tbであり、右(左の誤記)側版部分Pdの厚さTdと擁壁部12の厚さT12の厚さ関係はTd>T12で、側溝部11の右(左の誤記)側面11dに横向きの力が直接的に作用しても該右(左の誤記)側版部分Pdに亀裂等の損傷を生じることを抑制でき、該損傷によって通水孔11e内を流れる雨水等が漏出することを回避できる、逆アーチ形のインバートTUbを有している道路トンネルTUに適用できる側溝ブロックが記載されている。
【0010】
特許文献4(段落7)が解決しようとする課題は、道路トンネル等のトンネル内に側溝及び監視員通路を構築した場合でも側溝部に亀裂等の損傷を生じ難い「側溝及び監視員通路を構築するための擁壁付き側溝ブロック」を提供することであり、特許文献4の側溝部11と擁壁部12とを一体に備えた側溝ブロック10を自動車用トンネルのインバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造として使用することは記載されていない。
自動車用トンネルのインバート改築を行う左路肩施設の既存構造は、トンネル内監視員通路と該トンネル内監視員通路の縦壁下方に接した円形水路である(以下、改築施設という)。該円形水路は、正方形形状の躯体内の中心に所定内径の水路を形成し、水路と躯体外面との厚みは上下左右とも同じ値であり、監視員通路の縦壁は円形水路の躯体側面に接している。
一方、特許文献4の略矩形状断面の通水孔11eは、側溝部11において、天版部分Paの厚さTaと底版部分Pbの厚さTb(最小値)と左(右の誤記)側版部分Pcの厚さTcと右(左の誤記)側版部分Pdの厚さTdの厚さ関係がTd>Tc>Ta>Tbの関係位置に開口し、通水孔11eの位置は、側溝部11において特に上下方向で中心から偏心している。
改築施設の縦壁は円形水路躯体側面に接していることから、特許文献4を改築施設に採用して、特許文献4の擁壁部12を改築区間前後の縦壁に合わせると、改築施設の円形水路中心と特許文献4の側溝部11の略矩形状断面の通水孔11eの中心は、偏心することとなり、水路断面に段差及び断面減少を生じ、流量の減少及びごみなどの詰まりの原因になる。また路面上に現れる呑口や円形水路上面端部にも平面的なずれが生じ運転者に違和感を生じさせる。一方、特許文献4を改築施設に採用して、特許文献4の通水孔11eを改築施設の円形水路に合せて接続しても、水路形状が異なり、接続できない。
【0011】
特許文献5(段落8、9、17、18、20、図1~6)には、路面排水を取入れて排水する横長である矩形水路5aを内部に有する水路ブロック5であり、監視員通路4側の側壁5cを水路ブロック5の上面壁5bより上方へ一体で延ばし、この側壁5cを監視員通路4の自動車道路面側の縦壁4aとして構成し、自動車道路用トンネル1の基礎1aの部分にインバート6が形成されたトンネルに適用して、プレキャストコンクリート水路ブロックの据付け工程を簡略化し、さらにトンネルの掘り下げ深さの低減を図り、建設の迅速化と低コスト化を実現可能とし、また舗装機械の使用の便を向上させて建設コストおよび建設時間を大幅に低減せしめたことが、記載されている。また、図6(B)右側には、従来の円形水路7aを有する水路ブロック7の上面壁7bに側壁7cを設けた水路ブロック7を、右側路肩施設として掘り下げ深さの深いインバート6上に設けたものが、記載されている。
【0012】
自動車用トンネルのインバート改築を行う左路肩施設の既存構造は、トンネル内監視員通路と該トンネル内監視員通路の縦壁下方に接した円形水路である(以下、改築施設という)。該円形水路は、正方形形状の躯体内の中心に所定内径の水路を形成し、水路と躯体外面との厚みは上下左右とも同じ値であり、監視員通路の縦壁は円形水路の躯体側面に接している。
一方、特許文献5の矩形水路5aは横長であり、監視員通路4側の側壁5cは水路ブロック5の上面壁5bより上方へ一体で延ばして縦壁4aとしたものである。
改築施設の縦壁は円形水路躯体側面に接していることから、特許文献5を改築施設に採用して、特許文献5の監視員通路4の側壁5cを改築区間前後の縦壁に合わせると、改築施設の円形水路中心と矩形水路5aの中心は、偏心することとなり、水路断面に段差及び断面減少を生じ、流量の減少及びごみなどの詰まりの原因になる。また路面上に現れる呑口や水路上面端部にも形状差や平面的なずれが生じ運転者に違和感を生じさせる。一方、特許文献5を改築施設に採用して、特許文献5の矩形水路5aを改築施設の円形水路に合せて接続しても、水路形状が異なり、接続できない。
【0013】
このような先行技術の問題点等に鑑みて、本発明は、自動車用トンネルのインバート改築に伴う左側路肩部分の急速施工技術として、
(a)監視員通路壁の施工と円形水路の施工を同時作業とする、
(b)改築区間前後の既存円形水路と既存監視員通路壁に接続するので、改築に伴う左側路肩部分の円形水路と監視員通路壁の連続性を有し、
(c)水路内空及び排水呑口において段差が無く、位置及び形状が同一で、ごみ等の詰まりがなく連続した清掃が可能である、
(d)監視員通路壁前面や水路天端面の視線誘導の連続性を確保した、
(e)水路天端上で舗装機械が稼働可能な幅を有し、
(f) 円形水路の前面がインバート改築区間とその前後の既存区間とで連続性を有するため、将来のそれら区間全体の舗装改良工事を行う際に舗装幅が同一のため施工性に優れた、
インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明(請求項1)は、「盤ぶくれによりインバート改築が必要となった、既存監視員通路と既存円形水路を有する自動車用トンネルにおける、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造であって、前記左側路肩部に設置する監視員通路縦壁付き円形水路は、円形水路部と監視員通路縦壁部とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造で構成され、前記円形水路部は、正方形断面の中心部に所定内径の円形水路、左に水路左側部、右に水路右側部、下に水路基部及び上に水路頂部を備え、前記水路頂部の中央でかつ円形水路の中心直上には、排水呑口を有し、前記円形水路部の断面形状は改築区間前後の前記既存円形水路と同一であり、前記監視員通路縦壁付き円形水路の前記円形水路部の水路中心及び水路天端位置と、改築区間前後の前記既存円形水路の水路中心及び水路天端位置とは、水流及び視線誘導の点から連続性を有し、前記監視員通路縦壁部は、改築区間前後の前記既存監視員通路の縦壁下端における前面側下端及び背面側下端を、前記既存円形水路部下端の設置位置まで延長した断面形状と同一であり、かつ前記円形水路部の前記水路左側部に接して前記円形水路部と一体に形成され、前記監視員通路縦壁部の前記縦壁の前面位置と、改築区間前後の前記既存監視員通路の前記縦壁の前面位置とは、視線誘導の点から連続性を有することを特徴とする、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造。」を特徴としている。
【0015】
盤ぶくれによりインバート改築が必要となった、既存監視員通路と既存円形水路を有する自動車用トンネルにおける、インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造であって、左側路肩部に設置する監視員通路縦壁付き円形水路は、円形水路部と監視員通路縦壁部とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造で構成されることにより、監視員通路壁の施工と円形水路の施工を同時作業とすることができる。
円形水路部は、正方形断面の中心部に所定内径の円形水路、左に水路左側部、右に水路右側部、下に水路基部及び上に水路頂部を備え、前記水路頂部の中央でかつ円形水路の中心直上には、排水呑口を有し、円形水路部の断面形状は改築区間前後の既存円形水路と同一に構成している。したがって、監視員通路縦壁付き円形水路の円形水路部の水路中心及び水路天端位置と、改築区間前後の既存円形水路の水路中心及び水路天端位置とは、水流及び視線誘導の点において連続性を有する。さらに、水路内空及び排水呑口において、段差が無く、位置及び形状が同一のためごみ等の詰まりがなく連続した清掃が可能である。また、円形水路部は既存円形水路の各寸法と同一であることから、水路天端上で舗装機械の稼働が確保されている。
監視員通路縦壁部は、改築区間前後の既存監視員通路の縦壁下端における前面側下端及び背面側下端を、既存円形水路部下端の設置位置まで延長した断面形状と同一であり、かつ円形水路部の水路左側部に接して円形水路部と一体に形成されている。したがって、監視員通路縦壁部の縦壁の前面位置と、改築区間前後の既存監視員通路の縦壁の前面位置とは、視線誘導の点から連続性を有する。
【発明の効果】
【0016】
インバート改築区間左側路肩部の急速施工構造として、左側路肩部に設置する監視員通路縦壁付き円形水路は、円形水路部と監視員通路縦壁部とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造で構成することにより、監視員通路壁の施工と円形水路の施工を同時作業とすることができ、工期短縮が可能である。
円形水路部の断面形状は改築区間前後の既存円形水路と同一に構成することにより、円形水路部の水路中心及び水路天端位置と、既存円形水路の水路中心及び水路天端位置とは、水流及び視線誘導の点において連続性を有する。そして、水路内空及び排水呑口において、段差が無く、ごみ等の詰まりがなく連続した清掃が可能である。さらに、円形水路部は既存円形水路の各寸法と同一であることから、水路天端上で舗装機械の稼働が確保されている。
監視員通路縦壁部は、改築区間前後の既存監視員通路の縦壁下端を延長した断面形状と同一であり、かつ円形水路部と一体に形成されていることから、監視員通路縦壁部の縦壁と、改築区間前後の既存監視員通路の縦壁とは、視線誘導の点から連続性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】インバート改築区間の既存円形水路と既存監視員通路の側面図
図2】インバート改築区間への監視員通路縦壁付き円形水路設置側面図
図3】プレキャストコンクリート製監視員通路縦壁付き円形水路の立体図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、自動車用トンネルにおいて、走行方向に向かって左側、右側といい、トンネル頂部方向を上、トンネル路盤方向を下といい、さらに監視員通路の壁及び円形水路において、走行車線側を前面、トンネル側壁側を背面といい、位置及び形状等の表記に使用する。
【0019】
図1は、盤ぶくれによりインバート改築が必要となった、既存監視員通路4と既存円形水路5を有する自動車用トンネル1における、既存の左側路肩部31の側面図である。
供用中のトンネルにおいてインバート6を施工する場合は、掘削、インバートコンクリートの打設・養生および埋め戻しを片側ずつ行う、いわゆる半割施工を採用するのが一般的であるが、長大トンネルのインバート改築区間の左側路肩31には、特に既存監視員通路4及び既存円形水路5がある。既存監視員通路4は、縦壁4aと基礎4bとで構成し、縦壁4aの下端(図1において点線表示)において基礎4bと一体に施工されている。基礎4bの下部には既存円形水路5の下端位置まで均しコンクリート4cが打設されている。そして、既存監視員通路4の基礎4b及び均しコンクリート4cの前面側に隣接して既存円形水路5がある。さらに、管路工、水道管など多くの施設があり、工事が煩雑であり、規制期間の短縮が求められる。本発明は、自動車用トンネル1のインバート改築に伴う左路肩施設急速施工技術に関するものである。
【0020】
このような先行技術の問題点等に鑑みて、本発明は、自動車用トンネルのインバート改築に伴う左側路肩部分の急速施工技術として、
(a)監視員通路壁の施工と円形水路の施工を同時作業とする、
(b)改築区間前後の既存円形水路と既存監視員通路壁に接続するので、改築に伴う左側路肩部分の円形水路と監視員通路壁の連続性を有し、
(c)水路内空及び排水呑口において、段差が無く位置及び形状が同一のためごみ等の詰まりがなく連続した清掃が可能である、
(d)監視員通路壁前面や水路上面の視線誘導の連続性を確保した、
(e)水路天端上で舗装機械が稼働可能な幅を有する、
(f) 円形水路の前面がインバート改築区間とその前後の既存区間とで連続性を有するため、将来のそれら区間全体の舗装改良工事を行う際に舗装幅が同一のため施工性に優れた、
インバート改築に伴う左路肩施設急速施工構造に関するものである。
【0021】
図2に、インバート改築区間左側路肩部31の急速施工構造として、左側路肩部31に設置した監視員通路縦壁付き円形水路7の側面図を示す。左側路肩部31に設置する監視員通路縦壁付き円形水路7は、円形水路部70と監視員通路縦壁部71とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造で構成している。当該円形水路部70と監視員通路縦壁部71とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造を使用することにより、監視員通路壁の施工と円形水路の施工を同時作業とすることができ工期短縮が可能である。
【0022】
円形水路部70と監視員通路縦壁部71とが一体に形成されたプレキャストコンクリート構造の監視員通路縦壁付き円形水路7の円形水路部70の水路中心、水路天端位置及び監視員通路縦壁部71の壁前面部の前面位置は、改築区間前後の既存円形水路5の水路中心、水路天端位置及び改築区間前後の既存監視員通路の縦壁4の前面位置とは、水流及び視線誘導の点から連続性を有する構成としている。当該構成により、改築区間前後の既存円形水路と既存監視員通路壁は、改築に伴う左側路肩部分の監視員通路縦壁付き円形水路7の円形水路部70と監視員通路縦壁部71と連続性を有することができる。
【0023】
円形水路部70は、水路の流れの連続性から、インバート改築が必要となった既存円形水路5と同一の内径の円形水路7aを有し、円形水路部70の水路左側部7b1、水路右側部7b2、水路基部7c及び水路頂部7dの各寸法は、インバート改築が必要となった既存円形水路5の各寸法と同一である。監視員通路縦壁部71は、視点誘導の連続性から、円形水路部70の水路左側部7b1に接して、円形水路部70の水路基部7cの下端から、既存監視員通路4の上端部まで、所定形状を有する縦壁7eとして構成している。当該構成により、インバート改築が必要となった既存円形水路5と既存監視員通路壁4に接続する際、改築に伴う左側路肩部分31の連続性を有し、円形水路7a及び排水呑口7dwにおいても、段差、位置及び形状により清掃の連続性のある構造となっている。また、監視員通路縦壁部71の円形水路部70に対する位置は、インバート改築が必要となった既存監視員通路壁4と既存円形水路5に対して位置同一とすることで、監視員通路壁の視線誘導が確保されている。さらに、円形水路部70はインバート改築が必要となった既存円形水路5の各寸法と同一であり、水路天端上で舗装機械の稼働が確保されている。
【0024】
具体的な一実施例を記載する。
円形水路部70は、インバート改築が必要となった既存円形水路5と同一寸法であり、一例として、円形水路7aの内径φ200mm、水路左側部7b1の最小厚さ125mm、水路右側部7b2の最小厚さ125mm、水路基部7cの最小厚さ125mm及び水路頂部7dの最小厚さ125mmの、断面正方形形状のプレキャストコンクリート構造である。水路頂部7dの中央には排水呑口7dwが一例として幅60mmで設けられている。
【0025】
監視員通路縦壁部71の断面形状は、縦壁7e前面側において、監視員通路の天端から水抜孔7ew(図指省略)上端まで鉛直直線であり、水抜孔7ew上端にて内装余裕幅としてハンチ(一例としてL3=30mm)を水路側に円形水路部70の水路左側部7b1の上方延長線まで形成して視線誘導を形成する縦壁7e前面とし(一例としてL1=1000mm)、前記円形水路部70の水路左側部7b1の上端部から水路基部7cの下端設置位置まで、水路左側部7b1に接した鉛直直線(一例としてL2=450mm)で形成して縦壁の下端とし、縦壁7eの監視員通路の天端は、所定の水平幅を有し(一例としてL4=170mm)、縦壁7e背面側において、監視員通路の天端から水路基部7cの下端設置まで鉛直直線とし(一例としてL6=1450mm)、水路基部7cの下端設置で縦壁7eは所定の下部幅(一例としてL5=200mm)を有する形状である。当該断面形状は、改築区間前後の前記既存監視員通路4の縦壁4a下端における前面側下端及び背面側下端(図1の点線を参照)を、鉛直下方に前記既存円形水路部5下端の設置位置(図1の均しコンクリート4cの下端位置)まで延長した断面形状と同一である。
円形水路部70と監視員通路縦壁部71とが一体に形成された、監視員通路縦壁付き円形水路7は、一例として、長さL=2000mm、幅W=650mm、高さH=1450mmであり、連結する端面には3箇所の連結金物を設けた(図番省略)、監視員通路縦壁付き円形水路7としての自立性、背面側土圧等への安定性が確保され、必要な配筋がなされたプレキャストコンクリート製品である。図3を参照。
【0026】
監視員通路縦壁付き円形水路7の施工手順は、以下のとおりである。
自動車用トンネル1のインバート改築を行った後、インバート上に路床を形成し、路床上に監視員通路縦壁付き円形水路7の基礎を構築する。次に、改築区間前側の既存円形水路5及び既存監視員通路壁4に対して、所定区間を設けて、基礎上にプレキャストコンクリート監視員通路縦壁付き円形水路7を止水パッキングを介して設置する。その後、改築区間始点側の既存円形水路5及び既存監視員通路壁4と監視員通路縦壁付き円形水路7との間の所定区間に型枠を設置して、場所打ちコンクリートにて連結する。そして、次の監視員通路縦壁付き円形水路7を設置し、図3の端面に図示する連結金物(図番省略)により連結し、当該設置・連結を改築区間終点側まで繰り返し、改築区間の施工を完了する。
監視員通路縦壁付き円形水路7を施工後、監視員通路縦壁部71背面側に既存監視員通路4と同様な改築監視員通路72を設置するが、既存監視員通路4のように大きな基礎4bを設けることなく容易に構築することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 自動車用トンネル
2 トンネル側壁
3 走行車線
31 左側路肩部
4 既存監視員通路
4a 縦壁
4b 基礎
4c 均しコンクリート
5 既存円形水路
6 インバート
7 縦壁付き円形水路
70 円形水路部
71 監視員通路縦壁部
72 改築監視員通路
7a 円形水路
7b1 水路左側部
7b2 水路右側部
7c 水路基部
7d 水路頂部
7dw 排水呑口
7e 縦壁
7ew 縦壁排水孔
図1
図2
図3