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  • 特開-ガス濃度検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045095
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ガス濃度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20230327BHJP
   G01M 3/38 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01M3/38 K
G01M3/38 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153309
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
(72)【発明者】
【氏名】小松 泰直
(72)【発明者】
【氏名】大貫 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【テーマコード(参考)】
2G059
2G067
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC13
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG06
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM01
2G059NN01
2G067BB12
2G067CC04
2G067DD10
2G067DD11
2G067DD17
2G067EE06
2G067EE08
2G067EE10
(57)【要約】
【課題】ガス濃度の検出精度を高める。
【解決手段】所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置は、受光信号に含まれる変調周波数の変調周波数信号を出力する変調周波数信号復調部204と、受光信号に含まれる変調周波数の2倍の周波数の2倍周波数信号を出力する2倍周波数信号復調部205と、2倍周波数信号を変調周波数信号で除算して除算信号を出力する除算部206と、レーザ光を検出対象空間内で走査して得られる除算信号に基づいた検出ガスの濃度分布パターンと、あらかじめ設定された、検出ガスの漏洩によって生じる濃度分布の漏洩パターンとの相関関係を求める相関演算部210と、相関関係に基づいて、検出ガスの漏洩を検出する漏洩検出部(閾値判定部212)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置であって、
上記受光信号に含まれる上記変調周波数の変調周波数信号を出力する変調周波数信号復調部と、
上記受光信号に含まれる上記変調周波数の2倍の周波数の2倍周波数信号を出力する2倍周波数信号復調部と、
上記2倍周波数信号を上記変調周波数信号で除算して除算信号を出力する除算部と、
上記レーザ光を上記検出対象空間内で走査して得られる上記除算信号に基づいた検出ガスの濃度分布パターンと、あらかじめ設定された、検出ガスの漏洩によって生じる濃度分布の漏洩パターンとの相関関係を求める相関演算部と、
上記相関関係に基づいて、検出ガスの漏洩を検出する漏洩検出部と、
を備えたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
請求項1のガス濃度検出装置であって、さらに、
複数回の走査について、走査位置ごとに上記除算信号の平均値を算出し、定常的なノイズパターンを求めて記憶するノイズ標準パターン記憶部と、
上記走査位置ごとに、新たな走査によって得られた上記除算信号と上記ノイズパターンとの差分を求める差分算出部と、
を備え、
上記相関演算部は、上記差分に応じた上記検出ガスの濃度分布パターンに基づいて、上記相関関係を求めるように構成されたことを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項3】
請求項2のガス濃度検出装置であって、
上記ノイズ標準パターン記憶部が上記平均値を求める際の各除算信号の位置は、走査位置ごとの除算信号のパターンのパターンマッチングによって較正されることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項4】
請求項3のガス濃度検出装置であって、
上記パターンマッチングは、動的計画法によって行われることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項5】
請求項3のガス濃度検出装置であって、
上記パターンマッチングは、上記検出対象空間内の所定の走査位置に設置された所定の濃度の検出ガスを有するサンプルについての上記除算信号をマーカーとして行われることを特徴とするガス濃度検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光を用いたガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定波長のレーザ光がある種の気体に吸収されやすいことを利用してガスの有無や濃度を検出することができる。具体的には、例えば、検出ガスの吸収波長のレーザ光を所定の周波数の信号で周波数変調(および振幅変調)し、検出対象空間を通過させた光を検出して得られる信号に含まれる上記所定の周波数の信号fとその倍の周波数の信号2fを求め、信号2fを信号fで除算することによって、検出ガスの濃度を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これによって、光学系の受光効率や光源の出力が未知である場合や変動する場合でも、検出ガスの分圧光路長積のみに比例する信号を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-010877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように所定の周波数の信号と倍の周波数の信号とに基づいてガスの濃度を検出する手法では、光学系の受光効率や光源の出力が変動する場合などでも検出ガスの分圧光路長積のみに比例する信号を得ることは、原理的には可能であるものの、実際には、種々の要因によって検出誤差を生じ得る。そのため、例えば検出ガスの漏洩を検出することは困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、検出ガスの漏洩検出精度をより容易に高め得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、
所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置であって、
上記受光信号に含まれる上記変調周波数の変調周波数信号を出力する変調周波数信号復調部と、
上記受光信号に含まれる上記変調周波数の2倍の周波数の2倍周波数信号を出力する2倍周波数信号復調部と、
上記2倍周波数信号を上記変調周波数信号で除算して除算信号を出力する除算部と、
上記レーザ光を上記検出対象空間内で走査して得られる上記除算信号に基づいた検出ガスの濃度分布パターンと、あらかじめ設定された、検出ガスの漏洩によって生じる濃度分布の漏洩パターンとの相関関係を求める相関演算部と、
上記相関関係に基づいて、検出ガスの漏洩を検出する漏洩検出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、漏洩パターンに対応する濃度分布であるかどうかに応じて漏洩が検出できるので、誤って漏洩が生じていると誤認する可能性を容易に低くできる一方、漏洩の検出感度を高くすることも容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出ガスの漏洩検出精度をより容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス濃度検出装置100の外観構成を示す斜視図である。
図2】ガス濃度検出装置100の要部の機能的構成を示すブロック図である。
図3】受光信号の例を示すグラフである。
図4】検出信号および各部で処理された信号の例を示すグラフである。
図5】走査位置が較正された信号の例を示すグラフである。
図6】ノイズが除去された信号の例を示すグラフである。
図7】濃度の漏洩パターンの例を示すグラフである。
図8】正規化相互相関係数の例を示すグラフである。
図9】漏洩検出の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、メタンガスの濃度を検出する検出装置の例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0011】
ガス濃度検出装置100は、図1に示すように、検出装置本体部110が仰角走査部120に仰角方向に走査駆動可能に設けられるとともに、仰角走査部120は、雲台130に鉛直軸周りに走査駆動可能に設けられている。なお、走査方向はこれに限らず何れか一方でもよいし、他の走査方向でもよく、検出対象空間の所望の領域を走査可能に設けられればよい。以下の説明では、仰角は一定にして、鉛直軸周りに所定の角度の範囲で回転させて走査したときに、回転角度が所定の角度ごとの位置について、すなわち所定の分解能で実際上連続的にメタンガスの濃度を検出する例を説明する。
【0012】
検出装置本体部110は、例えばメタンガスの吸収波長のレーザ光を10kHzの信号で変調して集光レンズ111を介して出射し、種々の反射物で反射して戻る光、すなわち検出対象空間を通過した光を再度集光レンズ111を介して受光し、メタンガスの濃度(分圧を光路に沿って積分した分圧光路長積)を求めるようになっている。より詳しくは、例えば図2に示すように構成されている。
【0013】
レーザ発振器201は、例えば半導体レーザ素子によってメタンの吸収波長を中心波長とする赤外線を出射するようになっている。
【0014】
変調部202は、上記レーザ光を例えば10kHzの変調信号で周波数変調、または周波数変調および振幅変調するようになっている。
【0015】
受光器203は、上記のように変調され、検出対象空間を通過して戻るレーザ光を受光して受光信号を出力するようになっている。
【0016】
変調周波数信号復調部204、および2倍周波数信号復調部205は、それぞれ位相敏感検波などによって上記受光信号に含まれる上記変調周波数(10kHz)の変調周波数信号、および上記変調周波数の2倍の周波数(20kHz)の2倍周波数信号を抽出して出力するようになっている。すなわち、種々の周波数のレーザ光がメタンの存在する空間を通過して受光器203で受光されると、受光器203から出力される受光信号(例えば電圧)は、図3に曲線Aで示すようになる。そこで、10kHzの変調信号によって、レーザ発振器201が発信するレーザ光を同図に曲線Bで示すように周波数が変動するように周波数変調すると、受光器203から出力される受信信号には、周波数が20kHzで電圧が同図に曲線Cで示すように変化する2倍周波数信号が含まれる。また、受光器203から出力される受信信号には周波数が10kHzの変調周波数信号も含まれる。そこで、変調周波数信号復調部204、および2倍周波数信号復調部205によって、例えば変調部202から出力される変調信号の参照によって周波数敏感検波を行うことなどにより上記変調周波数信号、および2倍周波数信号が抽出される。
【0017】
除算部206は、上記2倍周波数信号を変調周波数信号で除算(振幅比を算出)して、除算信号を出力するようになっている。すなわち、上記2倍周波数信号は、レーザ光の光路中のメタンガスの濃度に応じたものとなる一方、変調周波数信号はメタンガスの影響は受けないので、上記除算演算によって、光学系の受光効率や光源の出力の変動などに影響されることのないメタンガスの濃度が検出される。
【0018】
上記除算部206から出力される除算信号では、上記のように光学系の受光効率や光源の出力の変動の影響は除去され得るが、レーザ光の走査位置ごとに異なる種々の要因によるノイズが含まれ得る。そのようなノイズのうち、各走査位置で定常的なノイズ(ベースノイズ)は、複数回の走査によって得られた除算信号を平均化することなどによって求めることができる。そこで、そのような定常的なノイズパターンを記憶させておき、各走査位置ごとに、除算信号と定常的なノイズパターンとの差分をとることによって、検出信号の精度を高めることができる。
【0019】
ただし、例えば本実施形態のように雲台130の回転による走査などによって、実際上連続的に検出が行われる場合、除算信号に対応する走査位置と、記憶されている定常的なノイズパターンに対応する走査位置との対応関係は、雲台130の回転角度や走査時間を基準として求めてもよいが、回転走査する際の機械的なバックラッシや機械精度の影響によって正確に対応させることが容易でないことがある。
【0020】
そこで、例えば動的計画法(Dynamic Programming)やパターンマッチングなどによって、図4に破線で示すようにずれた走査位置をシフトするなどして補正(較正)した後に、減算することによって、上記のような走査位置のずれを除去したり低減したりすることができる。また、所定の走査位置に対応して既知の濃度のメタンガスを有するサンプルなどのマーカーを設置して、パターンマッチングなどを容易にできるようにしてもよい。
【0021】
具体的には、例えば除算部206から出力される除算信号と、ノイズ標準パターン記憶部208に記憶されているノイズパターン(メタンガスの漏洩がない場合の平均データパターン)とに基づいて、DPマッチング部207で動的計画法によるマッチング処理によって走査位置のずれ等が補正された後、差分算出部209によって、ノイズ標準パターン記憶部208に記憶されている定常的なノイズパターンが減算される。これによって、例えば図5に実線で示すように走査位置のずれ等が補正された信号から、同図に破線で示すような定常的なノイズパターンが減算されて、図6に示すようにノイズが除去または低減されたSN比の高い信号を得ることができる。
【0022】
また、上記のようにDPマッチング部207で走査位置のずれなどを補正された信号は、ノイズ標準パターン記憶部208に記憶されている定常的なノイズパターンとも走査位置の対応程度が高いので、例えば雲台130による回転によって走査される場合の各回転位置について直近の3回の走査での補正された除算信号の移動平均を算出することなどにより、適切なノイズパターンを更新することができる。
【0023】
なお、走査位置を示すインデックスとしては、回転角度に限らず、定速で回転走査する場合の走査時間を基準にするなどしてもよい。
【0024】
上記のようにノイズが除去または低減されて差分算出部209から出力される信号は、例えば所定の閾値と比較することによってメタンガスの濃度が高い領域を検出することができるが、さらに、所定の漏洩パターンと比較することによって、より確実にメタンガスの漏洩を検出することができる。すなわち、メタンガスの漏洩が生じている場合、メタンガスの濃度はピンポイント的な狭い領域で高くなるだけではなく、拡散によって、ある程度の領域に亘る所定の濃度分布が生じることになる。そこで、例えば図7に示すような漏洩時に生じる濃度の漏洩パターンを標準漏洩パターン記憶部211に記憶させておき、相関演算部210によって、差分算出部209から出力される信号との相関関係、例えば下記(数1)により図8に示すような正規化相互相関係数を求め、閾値判定部212(漏洩検出部)によって、図9に示すように所定の閾値と比較することによって、漏洩の有無や場所を検出することができる。このような検出によれば、検出信号にレベルの高い部分があったとしても、漏洩パターンに対応する濃度分布でなければ、誤って漏洩が生じていると誤認する可能性を容易に低くできる一方、検出信号のレベルが低くても、漏洩パターンに対応する濃度分布が生じていれば、漏洩を検出でき、漏洩の検出感度を高くすることが容易にできる。
【0025】
【数1】
【0026】
なお、標準漏洩パターン記憶部211には、1通りの漏洩パターンが記憶されるのに限らず、風向や風速などに応じた複数通りの漏洩パターンが記憶されて、それぞれとの相関関係が求められるようにしたり、実際の風向や風速などに応じて選択的に相関関係が求められるようにしたりしてもよい。
【0027】
(その他の事項)
上記の例では、レーザ光の走査によって分解能に応じた連続的な位置の濃度を検出する例を示したが、これに限らず、所定の回転角度ごとや、あらかじめ設定された所定の検出位置ごとなどの離散した位置について検出されるようにしても、実質的に連続したパターンの特定が可能な程度に連続した検出がされていればよい。そのような場合でも、定常的なノイズの除去や漏洩検出などのメカニズムは同様である。
【符号の説明】
【0028】
100 ガス濃度検出装置
110 検出装置本体部
111 集光レンズ
120 仰角走査部
130 雲台
201 レーザ発振器
202 変調部
203 受光器
204 変調周波数信号復調部
205 2倍周波数信号復調部
206 除算部
207 DPマッチング部
208 ノイズ標準パターン記憶部
209 差分算出部
210 相関演算部
211 標準漏洩パターン記憶部
212 閾値判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9